結論
モデルナは、メッセンジャー RNA(mRNA)技術でコロナ・RSV・インフルエンザのワクチンと、がんの個別化ワクチンを開発する中堅バイオである。コロナ禍の 2021 年には売上 184 億ドル・営業利益 132 億ドルを稼いだが、2025 年は売上 19 億ドル、営業損失 31 億ドル、純損失 28 億ドルまで縮み、2026 年の売上も最大で前年比 +10% にとどまる。2025 年末の現金・投資 81 億ドルは、2026 年末に 47〜52 億ドルへ減る見込みで、会社は費用を絞って 2028 年の現金ベースの損益分岐を目指す。
株価が大きく動いたのは 2026 年 8 月である。メルクと共同のインテスメラン(個別化がんワクチン)が、黒色腫の術後補助療法の第 3 相(1,137 人)で再発なし生存と遠隔転移なし生存の両方を達成し、インフルエンザワクチン(mFLUSIVA)も米国で承認された。今の時価総額は 848 億ドルで、7 月の 230 億ドル前後から 3〜4 倍に上がった。
バリュー投資の観点では、数量 × 価格で 10 年を積み上げ、利益ベースの倍率を掛ける。コロナは接種回数も単価も細り、新ワクチンは公的調達で単価が上がらず、がんワクチンの成否で価値が大きく分かれる。確率で重みを付けた 10 年後の本質価値は 148 億ドルで今の時価総額の約 2 割にとどまり、結論は「割高」。楽観の筋書きで 10 年後に 1,390 億ドルになっても、現在価値は約 590 億ドルで今の値段に届かない。ただしがんワクチンの詳細(ESMO で 2026 年 10 月 24 日)が想定を超えれば、確率を動かす余地がある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家なら、まず 10 年後を問う。コロナ・RSV・インフルエンザのワクチンは 10 年後も必要とされ、mRNA の開発の速さは強みだが、コロナ禍の売上の巨大さは二度と来ない。堀は広がるのか、狭まるのかが見えにくい。インテスメランが成功すれば、メルクと折半でも大きな利益を生み、10 年後の姿を一変させる。だが、成功の確率と大きさを、今の時価総額が先に織り込んでいる。
オーナー利益は、2025 年に純損失 28 億ドル(株式報酬を費用として含む)で、フリーキャッシュフローも赤字。中立の 2035 年でも純利益は 14 億ドルと、時価総額 848 億ドルの 1.7% にとどまる。この会社の価値は、黒字の積み上げではなく、がんワクチンという「まだ開けていない箱」に拠っている。資本配分は、コロナ禍の利益を自社株買いと研究に使い、今は費用を絞る局面。
安全域は無い。楽観(確率 12%)でも 10 年後の時価総額は約 1,390 億ドルで、現在価値は約 590 億ドル。やや楽観(20%)の 456 億ドルを現在価値に直すと約 190 億ドルで、どちらも今の値段(848 億ドル)を下回る。楽観が確実に起きても今の値段に届かない。事業の確信度は低く、予測できない部分が大きい。わからない事業は確信度を下げ、安全域を厚く求める。
何で稼ぐ会社か
売上の大半は、コロナワクチンのスパイクバックス(2025 年から mNEXSPIKE も加わる)である。2026 年 4〜6 月期の売上は 1.45 億ドル(米国 0.87・海外 0.58)、1〜6 月期は 5.3 億ドルで、秋の接種期の第 3 四半期に下半期の売上の約 55% が集中する。接種回数は米国で下がり続け、価格の高い米国民間の比率が落ちている。2025 年の売上 19 億ドルを、コロナ 17 億ドル(約 3,100 万回・平均 55 ドル、推定)、RSV ワクチン mRESVIA などその他 2 億ドルに分けて置く。
次の柱は 2 つ。第 1 は新しい呼吸器ワクチンで、インフルエンザ(mFLUSIVA。2026 年 8 月に米国で承認)、インフルエンザとコロナの併用(mCOMBRIAX。欧州で承認、米国は FDA の指針待ち)、RSV(mRESVIA。豪州・メキシコで承認、欧州の共同調達で最大 2,400 万回分の契約)、CMV(サイトメガロウイルス)。第 2 が個別化がんワクチンのインテスメラン(メルクと損益を折半)。第 2b 相の 5 年データで再発・死亡のリスクが単独のキイトルーダより 49% 低く、第 3 相の黒色腫が成功し、肺がん・膀胱がん・腎がんなど 9 本の第 2/3 相が走る。詳細は 2026 年 10 月 24 日の欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で出る予定で、ハザード比は未公表。
このほか、希少疾患の mRNA 治療(プロピオン酸血症は登録が目標数に達し 2026 年にデータが出る見込み、メチルマロン酸血症は判断を先送り)がある。ノロウイルスワクチンは第 3 相の中間解析で成功基準に届かなかった。研究開発費は 2026 年に約 29 億ドルまで削り、販売管理費は約 10 億ドル、原価は 17 億ドル(9.5 億ドルの訴訟和解を含む)。2026 年 11 月 12 日に説明会がある。
優良さと弱いところ
堀は技術の蓄積と開発の速さにある。mRNA で薬を設計し、数か月で臨床に入れる仕組みと、コロナ禍で作った製造・規制対応の経験は他社に簡単には真似できない。ただし、堀が広いとは言えない。コロナワクチンはファイザー/ビオンテックと分け合い、ノババックス(サノフィが販売)のタンパク質ワクチンが安全性を売りに食い込む。インフルエンザは、サノフィ・CSL・GSK が長年の契約と流通を持つ。RSV はファイザー・GSK が先行する。
資本効率は、過去に 2021〜2022 年に営業利益率 50〜70%、ROE 40〜90% を稼いだが、需要の急減で 2023 年以降は 3 年連続で大きな赤字である。事業の質は、コロナ禍の一過性の売上と、継続する新製品の売上を分けて見る必要がある。経営は、2026 年に研究開発を前年より約 1 割、営業費用を 2027 年に 42〜46 億ドルまで絞り、現金の流出を止めようとしている。
弱点は 3 つ。第 1 にコロナへの依存(売上の 9 割)と米国の保健当局の mRNA への姿勢。第 2 に赤字が続き、現金が減る(2026 年末に 47〜52 億ドル)。第 3 にがんワクチンの成否が価値の大半を決めるが、メルクと折半で、承認後の採用も不確実。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
コロナワクチン市場は、パンデミックの 2021〜2022 年に年 1,000 億ドル超(ファイザー・モデルナの合計)から、2025 年に 100 億ドル未満へ縮み、今は毎年の追加接種(ブースター)の市場である。米国の接種率は下がり続け、米国の保健当局が mRNA ワクチンの推奨を絞る動きも続く。欧州は共同調達で単価を抑える。モデルナの米国シェアは 4 割前後(推定)、競合はファイザー/ビオンテックとノババックス/サノフィ。
インフルエンザは世界で年 70 億ドル前後の市場(推定)で、サノフィ・CSL セキルス・GSK・アストラゼネカが主要勢。mRNA は有効性の上乗せ(従来品に対する優位)を示せれば、高価格の併用ワクチンを足場に数%を取れる。RSV は、高齢者向けでファイザー(アブリスボ)・GSK(アレックスビー)が先行し、モデルナは後発。個別化がんワクチンは前例がなく、メルクの抗がん剤キイトルーダ(2028 年に米国の特許切れ)の延命と、術後補助療法という大きな市場(黒色腫・肺がん・腎がん・膀胱がんで高リスクの術後患者は年間数十万人)が背景にある。
業界ノートの置き方(塊 D)は売上 2026 年 19 億 → 2029 年 45 億 → 2036 年 90 億(数量 +10%・価格 −1%)で、この会社の分析では、2025 年の売上を 19 億ドル、2035 年の中立を 82 億ドルと置いた(がんワクチンが新たに 32 億ドル加わり、コロナは 16 億ドルに縮む)。方向は業界ノートと同じで、価格は −1% でなく名目で +0〜1% と置く。
資本政策と M&A
株主への還元は、2021〜2023 年に自社株買い(計 50 億ドル超)を行ったが、その後は停止している。配当はない。現金は 2025 年末に 81 億ドル、有利子負債は 13 億ドル(2025 年に 15 億ドルの借入枠のうち 6 億ドルを引き出し、9 億ドルが未使用)。2026 年は訴訟和解 9.5 億ドルを支払い、年末は 47〜52 億ドルの見込み。
買収は少なく、研究開発の提携が中心(メルクとのがんワクチンの損益折半が最大)。モデルナが買われる側になる可能性は、時価総額が 848 億ドルと大きく、技術の価値の見方が割れているため低い。今後の資本配分は、黒字化まで現金を使い切らない(借入枠か増資)ことが焦点で、株式報酬も年 9 億ドル前後と大きい(GAAP の費用として見る)。説明会は 2026 年 11 月 12 日。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
インテスメランは黒色腫の第 3 相で主要評価項目を両方達成し、第 2b 相の 5 年データ(再発・死亡のリスク −49%)が裏づけられた。承認は 2027 年、次に肺がん・膀胱がん・腎がんの第 2/3 相が続き、ジェフリーズは全世界のピーク売上を 540 億ドルと見る。メルクと折半でも、モデルナの取り分は年 200 億ドル超になりうる。個別化がんワクチンは再現できない技術で、先行者の利益が大きい。
ワクチン事業も底打ちしている。インフルエンザ(mFLUSIVA)は 2026 年 8 月に承認され、併用ワクチンも欧州で承認、RSV は欧州の共同調達で最大 2,400 万回分の契約を得た。2026 年の売上は最大 +10% に戻り、費用は 2027 年に営業費用 42〜46 億ドルまで絞られ、2028 年の現金ベースの損益分岐が見える。現金は 47〜52 億ドル残り、借入枠 9 億ドルもある。黒字化すれば、2035 年の売上は 270 億ドル、純利益は 100 億ドルを超える。
慎重な見方
コロナワクチンは接種率が毎年下がり、米国の保健当局が mRNA に不信を示し、競合のタンパク質ワクチンが安全性で攻める。売上 19 億ドルの 9 割がこの縮む市場で、新ワクチンは公的調達の入札で単価が上がらず、既存勢(サノフィ・CSL・GSK・ファイザー)の流通に割って入る必要がある。インフルエンザは一度 FDA に申請の受理を拒まれ、承認は得たが、併用ワクチンは米国の指針待ちで時期が見えない。
がんワクチンの第 3 相は、ハザード比がまだ公表されていない。第 2b 相の 5 年で −49% だったが、第 3 相でそれより小さければ、メルクの薬の価値は限られる。承認後も、病院が個別化がんワクチンの製造と投与を組み込めるか、保険が払うか、競合(ビオンテックなど)の動きは不確実。今の時価総額 848 億ドルは、2035 年に純利益 100 億ドル超を稼ぐ前提に近く、中立の筋書き(純利益 14 億ドル)の 4 倍。赤字は 2031 年まで続き、増資も必要になる。
どちらに重みを置いたか
がんワクチンの方向(成功)は強気の見方が強い。ただし成功の大きさは、ESMO の詳細が出るまで未確定で、慎重な見方が強い。ワクチン事業は、コロナの縮小の確かさで慎重な見方が強い。予測の中心を、黒色腫中心の中立(確率 33%)に置き、やや楽観・楽観を合計 32%、やや悲観・悲観を 35% とした。結論は「利益ベースの倍率で、確率で重みを付けた本質価値は今の時価総額の約 2 割(-83%)。割高」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 85.72 ドル333 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 2.93 ドル11 億ドル)。 今の値に割り戻すと 38.11 ドル148 億ドル、今との差 −81.2%、 期待の年率 −7.9%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 357.38 ドル1,390 億ドル | 24.42 ドル95 億ドル | +88.4% | +6.5% | 45.82 ドル178 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 117.28 ドル456 億ドル | 0.00 ドル0 億ドル | −42.1% | −5.3% | 23.46 ドル91 億ドル |
| 中立 | 33% | 50.41 ドル196 億ドル | 0.00 ドル0 億ドル | −75.1% | −13.0% | 16.64 ドル65 億ドル |
| やや悲観 | 22% | 11.85 ドル46 億ドル | 0.00 ドル0 億ドル | −94.2% | −24.7% | 2.61 ドル10 億ドル |
| 悲観 | 13% | 1.03 ドル4 億ドル | 0.00 ドル0 億ドル | −99.5% | −41.0% | 0.13 ドル1 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 85.72 ドル333 億ドル | 2.93 ドル11 億ドル | −56.3% | −7.9% | 88.65 ドル345 億ドル |
今の株価時価総額 202.63 ドル788 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 12% 楽観:インテスメランが黒色腫・肺がん・腎がん・膀胱がんに広がり、モデルナは大手に並ぶ 利益 102 億ドル · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 357.38 ドル1,390 億ドル
2035 年、インテスメランの治療患者は 9 万人(黒色腫 2.5 万人・肺がん 4 万人・ほか 2.5 万人)、モデルナの取り分は 1 人あたり 19 万ドル(薬価 38 万ドル前後の約半分)で 171 億ドル(全世界の売上で約 340 億ドル)。インフルエンザ・併用・RSV・CMV・希少疾患の新ワクチンは 6,500 万回・110 ドルで 72 億ドル、コロナは 3,500 万回・70 ドルで 25 億ドル。売上は 267 億ドルで営業利益は 128 億ドル(利益率 48%)、純利益 102 億ドル。成長は 2035 年以降も年 12% で続くが、倍率は利益ベースの正当化 PER 17.9 倍(ROE 32%・RONIC 16%・g 4.5%)の 9 割、16.1 倍に抑える。研究開発費を年 50 億ドル(共通費)まで使うため、純現金は 2030 年にマイナス 41 億ドル(借入枠と約 30 億ドルの増資で賄う想定)まで落ち、その後は黒字で積み上がる。
- コロナワクチン(スパイクバックス・mNEXSPIKE):数量 3,500(年間の接種回数(万回))× 価格 70(1 回あたりの純売上(ドル。米国民間と海外・公的調達の加重平均))→ 売上 25 億ドル・営業利益 14 億ドル。コロナ・併用で需要が広がる
- 新ワクチン(インフルエンザ・併用・RSV・CMV ほか):数量 6,500(年間の接種回数(万回))× 価格 110(1 回あたりの純売上(ドル))→ 売上 72 億ドル・営業利益 36 億ドル。複数の新ワクチンが当たる
- がんワクチン・希少疾患(インテスメラン・mRNA-3927 ほか):数量 90,000(年間の治療患者数(人))× 価格 190,000(1 人あたりのモデルナの取り分(ドル。全世界の売上の約半分))→ 売上 171 億ドル・営業利益 128 億ドル。黒色腫・肺がん・腎がん・膀胱がんに広がる
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 31.8%(この筋書きの純利益 101.7 ÷ 自己資本 319.9 億ドル。赤字の累積で自己資本が大きく減っているので ROE は高めに出る)は先で薄れ、RONIC = k 9.00%(基本 8.0% + quality +1.0%)+ 1/3 ×(ROE − k)= 16.6%(堀は弱い(1/3):コロナは縮み、がんワクチンの成否に価値が偏り、当たっても特許と競合で山の利益になりやすい)。g は 4.0%。 正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 15.2 倍 に対し、90% の 13.7 倍に置いた(楽観は式の値の 9 割弱に置く。赤字が続き、がんワクチンの成否で価値が大きく分かれ、利益の質は山型で不確か)。時価総額 = 純利益 101.7 億ドル × 13.7 倍 = 1390.2 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:第 3 相の成功を起点に、肺がん・腎がん・膀胱がんの術後補助療法でも成功し、ジェフリーズの想定(ピークの全世界売上 540 億ドル)の 6 割ほどが 2035 年までに実現する展開。複数の適応が同時に当たる必要があり、1 割強。
やや楽観 20% やや楽観:インテスメランは黒色腫と肺がんで成功し、新ワクチンも半分以上育つ 利益 37 億ドル · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 117.28 ドル456 億ドル
2035 年、インテスメランの治療患者は 4 万人(黒色腫 2 万人・肺がん 1.5 万人・ほか 0.5 万人)、取り分は 1 人あたり 18.5 万ドルで 74 億ドル。新ワクチンは 4,800 万回・105 ドルで 50 億ドル、コロナは 3,200 万回・66 ドルで 21 億ドル。売上は 146 億ドルで営業利益は 47 億ドル(利益率 32%)、純利益 37 億ドル。2030 年までの赤字で純現金は最も低い 2032 年にマイナス 32 億ドルまで落ち、借入枠 9 億ドルを超える約 20 億ドルは増資で賄う想定(株は増えるが会社全体の価値から引いて書く)で、、黒字化後の還元は借入の返済を優先して先送りする。倍率は利益ベースの正当化 PER 17.1 倍(ROE 27%)の 8.5 割、14.6 倍に置く。
- コロナワクチン(スパイクバックス・mNEXSPIKE):数量 3,200(年間の接種回数(万回))× 価格 66(1 回あたりの純売上(ドル。米国民間と海外・公的調達の加重平均))→ 売上 21 億ドル・営業利益 11 億ドル。価格は物価に追いつかない
- 新ワクチン(インフルエンザ・併用・RSV・CMV ほか):数量 4,800(年間の接種回数(万回))× 価格 105(1 回あたりの純売上(ドル))→ 売上 50 億ドル・営業利益 23 億ドル。新ワクチンが半分以上育つ
- がんワクチン・希少疾患(インテスメラン・mRNA-3927 ほか):数量 40,000(年間の治療患者数(人))× 価格 185,000(1 人あたりのモデルナの取り分(ドル。全世界の売上の約半分))→ 売上 74 億ドル・営業利益 53 億ドル。黒色腫と肺がんで成功
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 26.9%(この筋書きの純利益 36.5 ÷ 自己資本 135.6 億ドル。赤字の累積で自己資本が大きく減っているので ROE は高めに出る)は先で薄れ、RONIC = k 9.00%(基本 8.0% + quality +1.0%)+ 1/3 ×(ROE − k)= 15.0%(堀は弱い(1/3):コロナは縮み、がんワクチンの成否に価値が偏り、当たっても特許と競合で山の利益になりやすい)。g は 4.0%。 正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 14.7 倍 に対し、85% の 12.5 倍に置いた(やや楽観は式の値の 8 割台に置く。赤字が続き、がんワクチンの成否で価値が大きく分かれ、利益の質は山型で不確か)。時価総額 = 純利益 36.5 億ドル × 12.5 倍 = 456.2 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:メラノーマに加えて肺がんの術後補助療法が成功し、インフルエンザ・併用ワクチンが米国・欧州で一定の採用を得る展開。バイオの新薬群の標準的な打率に近い。
中立 33% 中立:インテスメランは黒色腫中心で売上 82 億ドル、利益率は 2 割ほど 利益 14 億ドル · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 50.41 ドル196 億ドル
2035 年、インテスメランの治療患者は 1.8 万人(黒色腫が中心)、取り分は 1 人あたり 18 万ドルで 32 億ドル。新ワクチンは 3,200 万回・105 ドルで 34 億ドル、コロナは 2,800 万回・58 ドルで 16 億ドル。売上は 82 億ドル(2025 年の 4.3 倍)、営業利益は 18 億ドル(利益率 22%)、純利益 14 億ドル。研究開発費を共通費 28 億ドルまで絞っても、2031 年まで赤字が残り、純現金は最も低い 2034 年にマイナス 38 億ドルまで落ち、2035 年もマイナス 36 億ドル(借入枠 9 億ドルを超える約 30 億ドルは増資で賄う想定。株は増えるが、会社全体の価値から引いて書く)。価格は物価(10 年で 1.41 倍)に追いつかない:コロナワクチンは競合(ファイザー・ノババックス)と公的調達の値下げ圧力、新ワクチンは公的調達の入札で 1.05 倍にとどめる。
- コロナワクチン(スパイクバックス・mNEXSPIKE):数量 2,800(年間の接種回数(万回))× 価格 58(1 回あたりの純売上(ドル。米国民間と海外・公的調達の加重平均))→ 売上 16 億ドル・営業利益 8 億ドル。数量・価格ともほぼ横ばい
- 新ワクチン(インフルエンザ・併用・RSV・CMV ほか):数量 3,200(年間の接種回数(万回))× 価格 105(1 回あたりの純売上(ドル))→ 売上 34 億ドル・営業利益 14 億ドル。新ワクチンが半分育つ
- がんワクチン・希少疾患(インテスメラン・mRNA-3927 ほか):数量 18,000(年間の治療患者数(人))× 価格 180,000(1 人あたりのモデルナの取り分(ドル。全世界の売上の約半分))→ 売上 32 億ドル・営業利益 23 億ドル。黒色腫中心
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 48.8%(この筋書きの純利益 14.3 ÷ 自己資本 29.3 億ドル。赤字の累積で自己資本が大きく減っているので ROE は高めに出る)は先で薄れ、RONIC = k 9.00%(基本 8.0% + quality +1.0%)+ 1/3 ×(ROE − k)= 22.3%(堀は弱い(1/3):コロナは縮み、がんワクチンの成否に価値が偏り、当たっても特許と競合で山の利益になりやすい)。g は 4.0%。 正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 16.4 倍 に対し、84% の 13.7 倍に置いた(中立は式の値の 8 割台に置く。2035 年はまだ立ち上がりの途中の利益で、赤字が続き、がんワクチンの成否で価値が大きく分かれ、利益の質は山型で不確か)。時価総額 = 純利益 14.3 億ドル × 13.7 倍 = 196.1 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:議論の落としどころ。黒色腫の術後補助療法で承認と採用が進み(米国・欧州・日本の高リスク患者の約 4 割)、肺がんなどの他の適応は一部が成功するにとどまる。新ワクチンは予定よりゆっくり広がり、コロナは縮む。
やや悲観 22% やや悲観:コロナが細り、インテスメランは黒色腫だけで小さく終わる 利益 5 億ドル · PER 9.6 倍 · 株価時価総額 11.85 ドル46 億ドル
2035 年、インテスメランは患者 8,000 人・14 億ドル、新ワクチンは 2,200 万回で 21 億ドル、コロナは 2,300 万回で 12 億ドル。売上は 46 億ドルで営業利益は 7 億ドル、純利益は 5 億ドル。研究開発を共通費 14 億ドルまで削り、プラットフォームの価値は小さくなる。2031 年まで赤字が続き、純現金は 2035 年にマイナス 26 億ドル(借入枠を超える約 17 億ドルは増資で賄う想定)。自己資本はほぼ尽きる。時価総額は式どおりの倍率(長期の成長率 2.5%・ROE 25%)で置き、小さい。
- コロナワクチン(スパイクバックス・mNEXSPIKE):数量 2,300(年間の接種回数(万回))× 価格 50(1 回あたりの純売上(ドル。米国民間と海外・公的調達の加重平均))→ 売上 12 億ドル・営業利益 6 億ドル。接種率の低下が続く
- 新ワクチン(インフルエンザ・併用・RSV・CMV ほか):数量 2,200(年間の接種回数(万回))× 価格 95(1 回あたりの純売上(ドル))→ 売上 21 億ドル・営業利益 8 億ドル。既存勢に押される
- がんワクチン・希少疾患(インテスメラン・mRNA-3927 ほか):数量 8,000(年間の治療患者数(人))× 価格 170,000(1 人あたりのモデルナの取り分(ドル。全世界の売上の約半分))→ 売上 14 億ドル・営業利益 7 億ドル。黒色腫の一部のみ
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 44.4%(この筋書きの純利益 4.8 ÷ 自己資本 10.8 億ドル。赤字の累積で自己資本が大きく減っているので ROE は高めに出る)は先で薄れ、RONIC = k 9.00%(基本 8.0% + quality +1.0%)+ 1/3 ×(ROE − k)= 20.8%(堀は弱い(1/3):コロナは縮み、がんワクチンの成否に価値が偏り、当たっても特許と競合で山の利益になりやすい)。g は 4.0%。 正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 16.2 倍 に対し、59% の 9.6 倍に置いた(やや悲観は式の値の 6 割弱に置く。利益が小さく、赤字が続き、がんワクチンの成否で価値が大きく分かれ、利益の質は山型で不確か)。時価総額 = 純利益 4.8 億ドル × 9.6 倍 = 46.1 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:コロナの接種率が下がり続け、インフルエンザは既存勢(サノフィ・CSL・GSK)に押されて小さくとどまり、インテスメランも黒色腫の一部に限られる展開。会社は費用を絞って生き延びる。
悲観 13% 悲観:mRNA の事業は縮み、もう優良ではない 利益 0 億ドル · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 1.03 ドル4 億ドル
2035 年のコロナは 1,500 万回で 6.8 億ドル、新ワクチンは 800 万回で 6.8 億ドル、インテスメランは 800 人で 1.2 億ドル。売上は 15 億ドルにとどまる。会社は 2027 年から研究開発を大きく削り、営業赤字を 2030 年に止めて、存続のための小さな黒字に落ち着く。純現金は 2026 年の 35 億ドルから 2028 年に 8 億ドルまで減って以降はほぼ横ばい。時価総額は、純利益 0.4 億ドルに対する利益ベースの上限(約 5 億ドル)で置き、自己資本の 2 割に満たない。
- コロナワクチン(スパイクバックス・mNEXSPIKE):数量 1,500(年間の接種回数(万回))× 価格 45(1 回あたりの純売上(ドル。米国民間と海外・公的調達の加重平均))→ 売上 7 億ドル・営業利益 2 億ドル。接種が大きく減る
- 新ワクチン(インフルエンザ・併用・RSV・CMV ほか):数量 800(年間の接種回数(万回))× 価格 85(1 回あたりの純売上(ドル))→ 売上 7 億ドル・営業利益 1 億ドル。採用が進まない
- がんワクチン・希少疾患(インテスメラン・mRNA-3927 ほか):数量 800(年間の治療患者数(人))× 価格 150,000(1 人あたりのモデルナの取り分(ドル。全世界の売上の約半分))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。利用が伸びない
倍率:悲観は稼ぐ力で置く(市場の PBR は使わない)。この筋書きの ROE 1.6%(純利益 0.4 ÷ 自己資本 25.2 億ドル)は k 9.0% 以下なので、正当化 PER は 1 ÷ k = 11.1 倍が上限で、その 9 割の 10.0 倍を純利益 0.4 億ドルに掛けて 4.0 億ドル。自己資本 25.2 億ドルに対する PBR 0.16 倍と低いが、自己資本の中身は研究設備・開発資産で、事業が縮む筋書きでは清算でも回収できず、期末の純現金(4 億ドル)と小さな黒字の事業価値しか価値が無い(SCHEMA §1-3 の「倒産に近い」の扱い)。g は −1%(市場の実質 −0% × シェア −3% × 価格 +2%の目安)。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:10 年の間に、保健当局の mRNA への不信が定着し、インフルエンザ・併用の採用が進まず、インテスメランも承認後の利用が伸びないか、競合のがんワクチンに置き換わる展開。確率は 1 割強。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
コロナワクチン(スパイクバックス・mNEXSPIKE)
売上の約 9 割を占める。接種期(秋)に売上が集中し、米国の接種率の低下で縮んでいる。
| 数量年間の接種回数(万回) | 価格1 回あたりの純売上(ドル。米国民間と海外・公的調達の加重平均) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,100 | 55 | 17 | −8 |
| 10 年後 中立 | 2,800 | 58 | 16 | 8 |
取り方:2025 年の売上 19 億ドルのうちコロナを約 17 億ドル(推定)とし、世界の接種回数約 3,100 万回(推定。米国の接種率の低下と欧州・日本の接種を合算)で割った 1 回あたりの純売上 約 55 ドル。米国の民間は 130〜150 ドルでも、公的調達・海外・米国政府向けが安く、加重平均は低い。営業利益は、原価・販売費・研究開発費のうちコロナに紐づく部分で、全社の営業損失 31 億ドルとの差は共通費(adjust)。価格は物価(10 年 1.41 倍)に追いつかないのが基本:競合のファイザーとノババックス/サノフィ、欧州の共同調達の値下げ圧力、米国の接種の絞り込みで 10 年 1.05 倍(中立)とする。
新ワクチン(インフルエンザ・併用・RSV・CMV ほか)
mFLUSIVA・mCOMBRIAX・mRESVIA と開発中の CMV。コロナ以外の呼吸器・感染症の mRNA ワクチン。
| 数量年間の接種回数(万回) | 価格1 回あたりの純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 200 | 100 | 2 | −10 |
| 10 年後 中立 | 3,200 | 105 | 34 | 14 |
取り方:2025 年は mRESVIA(RSV)と助成金・ライセンスで約 2 億ドル(推定)。接種回数は約 200 万回(推定)と置き、1 回あたり 100 ドルの平均で売上と合わせた。インフルエンザ・併用・CMV は開発・承認の途上で売上が無いため、営業損失は研究開発費の割り当て。インフルエンザは従来品が 20〜70 ドル、併用は 100 ドル超、RSV は 200 ドル前後の混合で 100 ドルと置く。価格は公的調達の入札と競合(サノフィ・CSL・GSK・ファイザー)で、10 年 1.05 倍(中立)にとどめる。
がんワクチン・希少疾患(インテスメラン・mRNA-3927 ほか)
メルクと損益を折半する個別化がんワクチン。黒色腫の術後補助療法が先行し、肺がん・膀胱がん・腎がんが続く。
| 数量年間の治療患者数(人) | 価格1 人あたりのモデルナの取り分(ドル。全世界の売上の約半分) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 170,000 | 0 | −10 |
| 10 年後 中立 | 18,000 | 180,000 | 32 | 23 |
取り方:2025 年はまだ売上が無い(承認前)ので、数量 0 に仮の単価を置く。患者 1 人あたりの全世界の薬価は、ジェフリーズが 26 万ドル(2027 年の発売時)と置き、物価(年 3.5%)で 2035 年に 38 万ドル前後。モデルナの取り分は損益の折半で、全世界の売上の約半分とみて 2027 年に 17 万ドル、2035 年に 18 万ドル(中立)。価格は物価(10 年 1.41 倍)に遅れる:メルクとの折半の取り分に、米国の最恵国待遇・IRA の圧力と製造費の負担が効き、10 年で約 1.06 倍にとどめる。営業損失は、臨床試験・製造準備の費用のうちがんワクチンに紐づく部分(約 10 億ドル)。
リスクと懸念
がんワクチンの成否が価値の大半を決める
インテスメランの黒色腫の第 3 相は成功したが、ハザード比などの詳細は 2026 年 10 月 24 日の ESMO まで未公表。第 2b 相の 5 年で −49% だった効果が第 3 相で縮めば、メルクの薬の価値が下がり、肺がんなどの他の適応にも波及する。承認後の採用(病院の製造・投与の仕組み、保険の支払い)も不確実で、価値の大半が一つの製品に乗る。
コロナワクチンの縮小と保健当局の姿勢
売上の 9 割がコロナで、米国の接種率は下がり続ける。米国の保健当局が mRNA ワクチンの推奨を絞る動きが続けば、接種回数がさらに 3〜5 割減る。会社も 2026 年の売上見通しに米国の接種率の低下を織り込むが、悲観では 2035 年の売上が今の 3 分の 1 まで下がる。
現金の減少と増資
現金・投資は 2025 年末の 81 億ドルから 2026 年末に 47〜52 億ドルへ減る。中立の筋書きでは赤字が 2031 年まで続き、借入枠 9 億ドルを超える分は増資で賄う(約 30 億ドル)。増資は株が増えて既存の株主の持ち分を薄め、株価が谷の時にはより多く薄まる。
新ワクチンの採用と価格
インフルエンザは、サノフィ・CSL・GSK の既存の契約と流通に割って入る必要がある。併用ワクチンは米国で FDA の指針待ち、RSV はファイザー・GSK が先行する。公的調達の入札で単価が抑えられ、10 年で 1.05 倍(物価は 1.41 倍)にとどまる前提で、それより悪いと売上が 3 割減る。
薬価政策(最恵国待遇・IRA)
米国の最恵国待遇の薬価と、インフレ抑制法(IRA)の交渉は、承認後のがんワクチンの薬価(取り分 18 万ドル)を下げうる。メルクのキイトルーダの 2028 年の特許切れと同じ時期に、併用の価格交渉が厳しくなる可能性がある。
訴訟と株式報酬
2026 年に 9.5 億ドルの訴訟和解を支払った。特許・製造をめぐる訴訟は今後も起きうる。また、株式報酬が年 9 億ドル前後と売上に比べて大きく、赤字の間は株の希薄化が続く(この分析は報酬を費用として扱う)。
今後の分かれ目
- ESMO(2026 年 10 月 24 日)で第 3 相のハザード比が 0.6 以下で、全生存への傾向も示されたら
- インテスメランの成功確率と採用が上方に動く。10 年の楽観・やや楽観の確率を上げ、肺がんなどの他の適応の成功確率も上げて見る。
- ハザード比が 0.75 を超える、または安全性の問題が出たら
- がんワクチンの価値が大きく縮む。10 年の悲観・やや悲観の確率を上げ、中立の患者数を 1.8 万人から半分にして見る。
- インフルエンザ・併用ワクチンが米国の接種推奨に載り、2027 年の売上が 30 億ドルを超えたら
- 新ワクチンの数量が上方に動き、2028 年の現金ベースの損益分岐が近づく。楽観・やや楽観の確率を上げる。
- 米国の保健当局がコロナの mRNA ワクチンの推奨をさらに外す、または接種率が 1 年で 2 割以上下がったら
- コロナの接種回数が下方に動く。やや悲観・悲観の確率を上げ、会社の費用削減の速さを再検討する。
- 2026 年 11 月 12 日の説明会で、2028 年の現金ベースの損益分岐の目標が先送りされたら
- 赤字が長引き、増資の規模が増える。中立の純現金の落ち込みを 1.5 倍にして見る。
- プロピオン酸血症(mRNA-3927)の登録試験が成功し、承認申請に進んだら
- 希少疾患の mRNA 治療というもう一つの柱ができる。がんワクチン・希少疾患の数量を 1 割ほど上げて見る。
見ておくもの
- ESMO(2026 年 10 月 24 日)でのインテスメランの第 3 相の詳細(ハザード比・安全性)と、承認申請の時期
- 2026 年 11 月 12 日の説明会:2027〜2028 年の売上・費用・現金の見通しと損益分岐の目標
- インフルエンザ・併用ワクチンの米国の接種推奨、併用の FDA の指針、欧州・カナダ・豪州の承認
- 米国のコロナワクチンの接種率と、保健当局の推奨の変化(秋の接種期の第 3 四半期の売上)
- 四半期末の現金・投資(2026 年末の 47〜52 億ドルの見込み)と借入枠の使用、増資の有無
- プロピオン酸血症のデータと、ノロウイルスワクチンの追加の試験の結果
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額 848 億ドルと、8 月の急騰(3〜4 倍)を見る前に、コロナ・新ワクチン・がんワクチンの 3 事業を数量 × 価格で積み上げ、事業の ROE(楽観 40%〜悲観 15%、VRTX と同じ物差しで領域をそろえた)と k 9.0%・g から利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 1/3 ×(ROE − k)、堀は弱い)を出し、楽観・やや楽観・中立は上限の 9 割・8.5 割・8.4 割、やや悲観は約 6 割に置いた。10 年の中立は 82 億ドルの売上・純利益 14 億ドル、倍率 13.7 倍(上限 16.4 倍の内側)で、純現金はマイナス。悲観は ROE が k 以下なので 1 ÷ k の 9 割で置いた。今の値段が先に織り込んでいるのは、楽観に近い筋書き(がんワクチンが複数の適応で成功)と読んだ。結論(割高)は計算の結果で、今の値段に寄せていない。逆に、今の値段が高いからといって、楽観の売上を引き下げていない。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 5% + β 1.11 × 5%。基本 8.0% に quality +1.0% を足して 9.0%。ワクチンは公的調達で単価が上がらず、利益が mRNA という 1 つの技術とがんワクチンの成否に偏る構造を値決めと寿命で見た。純現金で借金は無いが赤字で現金が減るため、財務の堅さで k は下げない。個別のリスク(コロナの縮小・がんワクチンの成否・保健当局の姿勢・赤字・増資)は k に足さず、確率と悲観の深さで表した。事業は赤字だが現金 47〜52 億ドルと借入枠 9 億ドルで 2028 年までは持つので、存続が危ない会社の上乗せ(extra)は使わない。k 9.0% なので g は 4% 以下(k − g ≥ 3.5%)で、楽観 4.0%・中立 3.5% を上限に置いた。