結論
ノボ ノルディスクは、糖尿病治療で築いた世界的な製造・開発基盤を、肥満治療薬へ広げたデンマークの製薬大手である。筆者の結論は「やや割安」だ。イーライリリーとの競争で成長への期待は大きく後退したが、現在の企業価値は、なお残る稼ぐ力と長期の患者増加を十分には織り込んでいないと考える。
2025年の売上は467億ドル、純利益は155億ドルである。ウェゴビーとオゼンピックを中心としたGLP-1薬が利益の大部分を支える。ただし、2026年は数量が増えても実現価格が下がり、会社の調整後通期売上・営業利益見通しは、ともに為替一定で前年比0〜6%減となった。2026年2月には次世代薬カグリセマがリリーのチルゼパチドとの直接比較で主要評価項目を達成できず、既存の優位が永続しないことも明らかになった。
それでも、世界の肥満・糖尿病患者のうち新しい治療薬を使う人はまだ少ない。2026年に米国で発売した経口ウェゴビーは急速に普及し、2026年9月には2035年の新薬群売上について意欲的な長期目標を示した。供給能力、臨床データ、販売網を持つ企業として、今後も世界市場の有力な一角を占める可能性が高い。
10年後の中立では、売上約891億ドル、純利益249億ドルを見込む。数量拡大を認める一方、セマグルチドの特許切れと競争により、現在の高い利益率は低下すると考えた。5つの筋書きに確率を掛け、資本コスト8%で割り引いた本質価値は約2,229億ドルとなる。添付台帳の時価総額1,737億ドルに対して約28%の上値余地があり、総合判断は「やや割安」である。ただし悲観側の確率を43%と高めに見ており、優良企業だから安易に持てる銘柄ではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ノボは10年後にも必要とされる会社である。糖尿病と肥満は消える病気ではなく、薬の有効性が認められれば患者は長く治療を続ける。大量生産、承認取得、臨床実績という蓄積も残る。ただし、特定の薬が優れていることと、製薬会社全体が永続的に高収益を得ることは別だ。特許が切れ、より良い薬が現れれば、同じ工場や販売網を持っていても以前の利益は戻らない。
筆者が気にするのは、利益を成長へ再投資したときの実際の利回りである。2025年は純利益155億ドルに対し、添付財務のフリーキャッシュフローは89億ドルにとどまった。製造設備と研究開発への投資が重い時期であり、会計利益のすべてを配当可能な利益とは扱えない。増分ROICが資本コスト8%を十分に超えるなら、還元を抑えて投資することには意味がある。しかし、価格が半分になる市場での設備増強は、患者が増えるだけでは正当化できない。
中立の10年後には純利益249億ドル、自己資本約1,135億ドルを見込み、ROEは約22%となる。過去の異常に高いROEが薄れても、資本コストを上回る稼ぎが残る構造だ。2035年以降の成長には再投資が必要なので、利益がそのまま株主の手元へ戻るとは見ていない。配当と純粋な自社株買いの合計を、設備投資と開発費の余力を残して評価する。
安全域はあるが、大きすぎるわけではない。悲観では次世代薬が失敗し、セマグルチドが価格の安い一般的な薬となる。その場合、現在の利益率と資本効率は失われる。現値からの下落余地は大きい。それでも市場全体の患者増加が本物なら、中立以上で得られる価値も大きい。長く保有する株主にとっての判断材料は、四半期の成長率よりも、今後数年間の市場シェアと純価格の変化である。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は、肥満・糖尿病の治療に使われるGLP-1系医薬品である。肥満向けのウェゴビー、糖尿病向けのオゼンピックとリベルサスが主要製品で、主成分セマグルチドを複数の用途と投与方法に展開している。医薬品は一度承認されれば継続処方が期待できるが、収益は患者数だけでは決まらない。米国では保険者や薬剤給付管理会社との交渉後に残る純価格が重要で、販売数量が増えても売上が伸びないことがある。
2025年の肥満治療薬売上は約125億ドルで、会社は年間投与量から換算した約360万人への治療を開示している。2026年1月には経口ウェゴビーを米国で発売した。7月中旬には週間処方が26万件を超え、注射を避けたい患者に新しい選択肢を提供している。高用量の注射薬も発売され、既存製品の競争力を保つ努力が続く。次世代候補はカグリセマとゼナガムチドなどで、承認と臨床成績が今後の市場地位を決める。
糖尿病向けGLP-1製品は2025年に約230億ドルを売り、全社最大の収益源だった。中心のオゼンピックは腎臓や心血管への効果も評価される。ただし、リリーのムンジャロが強力な競争相手となり、ノボの糖尿病市場における金額シェアは低下した。既存のインスリンやその他の糖尿病薬は約83億ドルで、需要が安定する一方、薬価規制と後発薬の影響を受ける。
希少疾患は約30億ドルと小さいが、血友病、成長ホルモン不足など患者に不可欠な治療を担う。ノボセブンやソグローヤに加え、新しい血液疾患薬の投入が進む。ここは肥満薬と異なる疾病領域であり、利益源の分散に役立つ。ただし研究開発費が重く、足元の営業利益率は低い。経営は買収したアケロの肝疾患薬エフルキシフェルミンなどを通じ、肥満と関連する肝疾患にも事業を広げている。
分析上は、肥満治療、糖尿病GLP-1、インスリン・その他糖尿病、希少疾患の4つに分ける。会社が公表する正式な営業セグメントは「肥満・糖尿病」と「希少疾患」の2つであり、前者の製品別営業利益は非開示である。このため、製品売上は会社開示を使い、製品別の利益率と患者数の一部については推定を明示している。
優良さと弱いところ
ノボの競争上の強みは、薬そのものだけではない。100年を超える糖尿病治療の経験、製剤化と大量生産の技術、世界の医師との接点、規制当局が認めた臨床データが重なっている。2025年の世界GLP-1市場での数量シェアは約43%であり、肥満薬のブランド品市場では約59.6%だった。新規参入企業が同じ規模の製造・販売網を短期間で構築することは難しい。
しかし、その堀は以前ほど深くない。肥満薬のブランド品数量シェアは2024年の70.4%から低下している。リリーのチルゼパチドは減量効果で優位を示し、カグリセマも2026年2月の高用量直接比較では非劣性を証明できなかった。9月には別の低用量比較試験で良好な結果が出たが、異なる投与量の試験であり、2月の結果を取り消すものではない。医師と患者が治療効果を重視する市場では、知名度だけでシェアを守ることは難しい。
価格を決める力にも限界がある。特許期間中は高い粗利益率を確保できるが、米国の最恵国待遇政策、メディケアの薬価交渉、現金払い向けの価格引き下げが進む。2025年の高い売上には米国のリベート引当金の調整も影響した。今後は単純な値上げではなく、安くなった薬をより多くの患者に届けることで利益を守る経営へ移る。
資本効率はなお優れている。2025年のROEは約51%だが、これは自己資本が比較的小さかったことの影響も大きい。税引後営業利益を自己資本と純負債の合計で割ると、足元のROICは概算で30%台半ばとなる。ただし、買収と製造設備への投資で資本の必要額は増えている。今後の増分資本利益率は以前より低くなると考えるべきだ。
堀の評価は強い堀ではなく通常の堀とした。製造網とブランドは残るが、主要成分の特許期限と臨床上の競争がその価値を削るためである。また、薬の研究・製造・承認・患者への投与が価値の中心であり、人月課金や操作画面を売る事業ではない。指定されたAIエージェント代替型には該当しない。AIによる創薬効率化は機会となるが、競合にも同様に利用できるため、独占的な利益増加は見込まない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
肥満と糖尿病の治療薬市場は、今後10年も実質的な患者数の増加が期待できる。世界では肥満の人が10億人規模、糖尿病の人が数億人いるのに対し、GLP-1系の新しい薬を継続して使用する人はまだ一部に限られる。業界ノートでは2026年の世界利用者を約3,000万人、2036年の中立を約1.1億人と推定している。平均純価格は約3,700ドルから約2,300ドルに下がるため、市場の成長は値上げではなく利用者の増加が担う。
競争の中心はノボとイーライリリーの2社である。2026年4〜6月期のリリーのムンジャロとゼップバウンドの合計売上は約149億ドルに達し、数量増加が大きい。ノボは経口ウェゴビーで先行しているが、リリーも飲み薬を投入し、さらに強い効果を狙うレタトルチドを開発している。アムジェンのマリタイド、ファイザーなどの開発品、中国企業の低価格薬も競争を広げる。10年先は2社で市場を独占するより、後続企業にも一定のシェアを渡す可能性が高い。
価格の下落は一時的な景気循環ではない。米国では政府と保険者が薬価を引き下げ、米国外では公的保険への収載が販売数量を増やす代わりに平均単価を下げる。セマグルチドの成分特許は中国で2026年、欧州と日本で2031年、米国で2032年が主な期限である。製剤や投与装置など別の特許が残る可能性はあるが、2030年代には競合品と後発薬の存在を前提にしなければならない。
中立では、2035年の世界GLP-1・GIP利用者を約1.05億人と見る。ノボが肥満向けと糖尿病向けを合わせて約3,500万人相当へ供給し、世界数量の約3分の1を保持する展開である。残りはリリーが最大のシェアを取り、その他の企業も存在感を増す。これはノボが再び圧倒的な首位へ戻る予想ではなく、市場拡大の恩恵を一定程度受け続ける見通しだ。
糖尿病の従来薬は、患者数が安定しても価格が上がりにくい。インスリンは生活を支える必需品であり、供給の信頼性は重要だが、後発品や薬価上限が利益率を制限する。希少疾患は市場が小さく競争相手も製品ごとに異なるため、新薬の承認と供給体制による成長が中心となる。全社の将来は、肥満薬の数量拡大が価格の低下をどこまで上回れるかでほぼ決まる。
資本政策と M&A
経営は長年、配当と自社株買いを組み合わせて利益を株主へ返してきた。2020〜2025年には合計で3,060億デンマーククローネを還元した。2025年の添付財務では配当が78億ドル、自社株買いは約2億ドルである。製造設備と新薬開発への支出が増えたため、買い戻しより配当を優先する形へ変わった。
大型の資本配分では、2024年に親会社側が取得したカタレントから、製造拠点3か所を約117億ドルで取得した判断が重要だ。供給制約を解消する狙いは理解できるが、購入額は大きく、事後の稼働率と利益率で成否が決まる。2025年にはアケロ・セラピューティクスを現金約47億ドルで買収し、承認条件付きの追加対価も設定した。肝疾患の成長機会を得た一方、開発失敗時には投資回収が難しくなる。
2026年2月には最大150億デンマーククローネの自社株買い枠を発表したが、大きな事業開発機会があれば縮小できる。会社は有望な内部投資、配当、研究開発を補完する買収、自社株買いの順に資金を配る方針である。9月の2030年目標では、研究開発中の製品による2035年売上を1,500億デンマーククローネ超とし、営業利益率をおおむね維持する意欲を示した。これは保証された業績予想ではない。
支配構造にも注意が要る。ノボ・ホールディングスはA株とB株を合わせて資本の約28.1%を保有し、議決権の約77.3%を握る。長期投資を進めやすい反面、一般のADR保有者は経営方針や関連当事者取引にほとんど影響できない。2025年末の純有利子負債は約164億ドルまで増えており、投資の回収が遅れる場合には還元余力が制約される。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ノボには、肥満治療薬が普及する次の10年で、再び大きく成長できる条件が残っている。世界で薬物治療を必要とする人は非常に多く、現在のGLP-1利用者は潜在需要の一部にすぎない。経口ウェゴビーは2026年1月の米国発売後、7月には週間処方が26万件を超えた。注射への抵抗感が強い患者や、医療機関への通院が負担となる患者にも販売できる。高用量の注射薬では減量効果を高め、治療の選択肢を広げている。
次世代薬の評価も、単一の試験で決めるべきではない。カグリセマは2026年2月の高用量直接比較で主要評価項目を達成できなかったが、9月の別用量の糖尿病試験では良好な減量効果を示した。ゼナガムチドなどの新薬候補もあり、ノボはセマグルチドだけの会社で終わる必要はない。さらに、アケロから取得した肝疾患薬や希少疾患の新薬が育てば、2030年代の売上の構成は変わる。
製造能力も長期の武器になる。カタレントの製造拠点取得と既存工場への投資は、短期の現金創出力を弱めたが、需要が増える市場では供給の確実性が大きな競争力になる。会社は2030年までに経口GLP-1で治療できる人数を大幅に増やす能力を整える計画を掲げている。大量供給によって単位当たり費用が下がれば、薬価の下落にも耐えられる。
世界市場が2030年代も拡大し続け、ノボが患者の約3割を維持できるなら、既存の主力薬が後発品に置き換わっても売上は増える。強い開発力と新しい薬への切り替えが成功すれば、2035年には利益が現在の数倍に達する余地がある。過去のピーク時の独占を取り戻さなくても、十分に魅力的な事業を続けられる。
慎重な見方
もっとも大きな問題は、すでに競争上の優位が失われ始めていることだ。ノボの肥満薬ブランド市場の数量シェアは2024年の70.4%から2025年の59.6%へ低下した。イーライリリーはチルゼパチドで優れた減量効果を示し、2026年も売上を大きく伸ばしている。ノボが自社の次世代製品を成功させなければ、患者が増える世界市場でも自社の取り分は減る。
セマグルチドの特許期限も投資家に都合よく待ってはくれない。中国では2026年、欧州と日本では2031年、米国では2032年が主要な成分特許の期限である。製剤や用途に関する権利が残る可能性はあるが、それだけで現在の価格を維持できるとは限らない。インスリン市場では薬価交渉と後発薬が長年にわたり利益率を圧迫してきた。肥満薬でも同じ構造が生まれる可能性がある。
2026年上期の決算は、数量の増加がそのまま利益増加にならないことを示した。米国のリベート調整による一時的な利益を除けば、通期の調整後売上と営業利益は減少見通しである。さらに、第2四半期には開発中の医薬品に関する63億デンマーククローネの減損が発生した。新薬開発には大きな費用が必要であり、失敗による資本損失は実際に起きている。
経営は大型の製造投資と買収を重ねている。もし工場の能力が需要を上回る一方、薬価だけが下がれば、固定費負担が利益を圧迫する。アケロの買収も開発に失敗すれば価値を失う。ノボ・ホールディングスによる議決権支配があるため、少数株主は経営判断を変更させにくい。2035年に売上が今の半分近くまで落ち、収益性も普通の製薬会社以下となる危険は無視できない。
どちらに重みを置いたか
長期の患者数と市場の拡大では前向きな見方が強い。しかし、ノボ自身のシェアと価格については慎重な見方に重みがある。とくに2026年の競争結果と、2031〜2032年のセマグルチド特許期限は利益を大きく変えうる。
このため、楽観とやや楽観を合わせて27%、やや悲観と悲観を合わせて43%、中立を30%とした。イーライリリーよりも競争上の回復を証明する必要が大きく、下振れ側を厚くした判断である。それでも長期の数量拡大によって中立の価値が現在の時価総額を上回るため、加重平均の結論は約28%の割安となる。大きな成長機会を持つが、堀の回復を確実視しない「やや割安」である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 75.31 ドル3,350 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 25.58 ドル1,138 億ドル)。 今の値に割り戻すと 52.29 ドル2,326 億ドル、今との差 +30.7%、 期待の年率 +11.6%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 199.21 ドル8,860 億ドル | 43.84 ドル1,950 億ドル | +507.6% | +23.3% | 19.44 ドル865 億ドル |
| やや楽観 | 19% | 129.55 ドル5,762 億ドル | 34.85 ドル1,550 億ドル | +311.0% | +18.0% | 31.24 ドル1,389 億ドル |
| 中立 | 30% | 91.23 ドル4,058 億ドル | 27.43 ドル1,220 億ドル | +196.6% | +13.6% | 35.60 ドル1,583 億ドル |
| やや悲観 | 28% | 22.61 ドル1,006 億ドル | 18.55 ドル825 億ドル | +2.9% | +0.4% | 11.52 ドル513 億ドル |
| 悲観 | 15% | 7.09 ドル315 億ドル | 13.49 ドル600 億ドル | −48.5% | −9.1% | 3.09 ドル137 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 75.31 ドル3,350 億ドル | 25.58 ドル1,138 億ドル | +152.2% | +11.6% | 100.89 ドル4,487 億ドル |
今の株価時価総額 40.00 ドル1,779 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 楽観:経口薬と次世代薬が成功し、世界的な製造基盤が利益を大きく伸ばす 利益 457 億ドル · PER 19.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 199.21 ドル8,860 億ドル
2035年の世界GLP-1・GIP利用者は約1.45億人となり、ノボは肥満向けと糖尿病向けを合わせて約4,700万人相当を治療する。経口ウェゴビーが広く普及し、カグリセマとゼナガムチドの新製品も成功する。ノボはイーライリリーに単独首位を譲ったままでも、世界市場の約3割を守る。競争で価格は低下するが、販売数量の増加がそれを上回る。
肥満治療薬は910億ドル、糖尿病GLP-1は288億ドルへ伸びる。インスリンなどの従来薬も安定し、希少疾患では新薬の承認によって100億ドルの売上を得る。アケロから取得した肝疾患薬も成功し、2030年代の新薬売上目標を達成する。設備増強は予定した需要に使われ、量産効果が利益率を支える。全社の売上は1,410億ドル、営業利益は約609億ドルとなる。
2026年から2035年の純利益累計は2,850億ドルを見込み、配当と自社株買いから株式報酬を差し引いた正味の還元は1,950億ドルとする。研究開発と製造への投資を続けても、自己資本は約1,205億ドルまで増える。主力特許の期限を新薬が乗り越え、医薬品の高い資本効率を持続する筋書きである。
- 肥満治療薬(ウェゴビー・サクセンダ・次世代薬):数量 3,500(年間投与量から換算した肥満治療患者数(万人))× 価格 2,600(患者1年当たり平均純売上(ドル、リベート後))→ 売上 910 億ドル・営業利益 437 億ドル。経口薬と次世代薬が成功。年間患者は2025年の約9.7倍
- 糖尿病GLP-1薬(オゼンピック・リベルサスなど):数量 1,200(年間投与量換算の糖尿病GLP-1患者数(万人))× 価格 2,400(患者1年当たり平均純売上(ドル、リベート後))→ 売上 288 億ドル・営業利益 132 億ドル。新世代薬で特許切れの影響を補い、高い利益率を維持
- インスリン・その他の糖尿病治療:数量 3,500(GLP-1以外の糖尿病治療患者数(万人・年間投与量換算))× 価格 320(患者1年当たり平均純売上(ドル))→ 売上 112 億ドル・営業利益 31 億ドル。週1回製品の普及で単価と製品構成が改善
- 希少疾患(血友病・成長ホルモン・その他):数量 25.0(治療患者の年間投与等価数(万人、推定))× 価格 40,000(患者1年当たり平均純売上(ドル、製品構成を含む))→ 売上 100 億ドル・営業利益 30 億ドル。新しい血液疾患薬と内分泌薬が大型製品へ成長
倍率:資本コストk=8.0%、2035年のROE=457÷1205.1=37.9%。通常の堀の残存割合1/2を用いるとRONIC=8.0%+0.5×(37.9%−8.0%)=約23.0%。2035年以降のg=4.0%は、世界のGLP-1利用者が実質約5%増加し、ノボのシェアが約1%低下し、純価格がほぼ横ばいとなる想定から導いた。正当化PERは(1−4.0%÷23.0%)÷(8.0%−4.0%)×1.04で約21.5倍。その約90%である19.32倍とした。純利益はIFRS報告ベース相当の費用控除後で、株式報酬や研究開発費を足し戻さない。
確率:経口ウェゴビーが長期の普及を主導し、カグリセマとゼナガムチドなどから複数の大型薬が育つ。新規参入と特許切れがあっても世界GLP-1数量の約3割を保つ展開。2026年の競争でノボが劣勢を示した事実を考えると、すべてが成功する確率は1割未満とした。
やや楽観 19% やや楽観:首位復帰はできなくても、患者増加と新薬が売上を伸ばす 利益 335 億ドル · PER 16.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 129.55 ドル5,762 億ドル
世界のGLP-1利用者は2035年に約1.2億人となり、ノボは約4,000万人相当を治療する。肥満治療では経口薬と高用量ウェゴビーが数量を増やし、カグリセマも一部の患者に選ばれる。イーライリリーは引き続き最大の競合として存在するが、ノボは医師との関係と製造能力を生かして主要な供給者の地位を守る。
肥満治療薬の純単価は今より下がるものの、年間患者数は2,900万人へ増え、売上は696億ドルとなる。糖尿病GLP-1は既存品の特許切れを新薬で一部補い、231億ドルを維持する。インスリンや希少疾患でも製品構成を改善し、全社売上は約1,097億ドルへ拡大する。営業利益率は現在とほぼ同じ水準を保つが、特許切れ前の高収益を全面的に取り戻すわけではない。
2026年から2035年の純利益累計は約2,450億ドルとなる。配当と自社株買いによる正味の還元は1,550億ドルとし、自己資本は約1,205億ドルとなる。カタレントの製造設備とアケロの研究開発資産はおおむね計画通りに役立つが、将来の利益のすべてが新薬に集中することは避けられない。
- 肥満治療薬(ウェゴビー・サクセンダ・次世代薬):数量 2,900(年間投与量から換算した肥満治療患者数(万人))× 価格 2,400(患者1年当たり平均純売上(ドル、リベート後))→ 売上 696 億ドル・営業利益 313 億ドル。患者数が増加し、経口薬の普及が単価低下を補う
- 糖尿病GLP-1薬(オゼンピック・リベルサスなど):数量 1,100(年間投与量換算の糖尿病GLP-1患者数(万人))× 価格 2,100(患者1年当たり平均純売上(ドル、リベート後))→ 売上 231 億ドル・営業利益 102 億ドル。既存薬の後発品化を新薬の販売で補う
- インスリン・その他の糖尿病治療:数量 3,200(GLP-1以外の糖尿病治療患者数(万人・年間投与量換算))× 価格 285(患者1年当たり平均純売上(ドル))→ 売上 91 億ドル・営業利益 25 億ドル。数量はほぼ横ばいで高付加価値製品へ切り替わる
- 希少疾患(血友病・成長ホルモン・その他):数量 22.0(治療患者の年間投与等価数(万人、推定))× 価格 36,000(患者1年当たり平均純売上(ドル、製品構成を含む))→ 売上 79 億ドル・営業利益 20 億ドル。希少疾患の新薬が売上を増やし、研究開発費を吸収
倍率:k=8.0%、ROE=335÷1205.1=27.8%。通常の堀でRONIC=8.0%+0.5×(27.8%−8.0%)=17.9%。2035年以降のg=3.7%は、GLP-1世界利用者の増加約5%、シェアの低下約1%、純価格の低下約0.3%を合わせた長期の名目成長である。10年目利益に対する正当化PERは約19.1倍。その約86%の16.45倍とした。特許切れを新薬で概ね補えるが、完全な独占回復は見込まない。
確率:経口薬が新たな需要を作り、カグリセマなどの開発品の一部が商業的に成功する。リリーの優位と薬価下落を認めつつ、ノボが世界数量の3割強を保持する展開である。現在の販売網と工場を生かせる可能性は相応にあるが、次世代製品が期待通りに揃うとは限らない。
中立 30% 中立:患者数は増えるが、価格とシェアが低下して成熟した製薬会社になる 利益 249 億ドル · PER 15.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 91.23 ドル4,058 億ドル
2035年の世界GLP-1・GIP利用者は約1.05億人へ増える。ノボは肥満向け2,500万人と糖尿病向け1,000万人の年間患者相当量を供給し、世界数量の約3分の1を保持する。イーライリリーは依然として最大の競争相手で、後続企業も市場に入る。経口ウェゴビーは需要を広げるが、低価格の処方が増えるため、平均単価は現在を大幅に下回る。
肥満薬の売上は約563億ドル、糖尿病GLP-1は190億ドルとなる。セマグルチドの特許が切れた国では後発薬が普及し、ノボの既存品の価格は下がる。カグリセマ、ゼナガムチドなどの新薬は一部を補うが、従来ほどの独占的な利益は得られない。インスリンなどの従来薬は約78億ドル、希少疾患は約60億ドルとなり、全社売上は約891億ドルへ増加する。
営業利益は約323億ドル、純利益は249億ドルとなる。利益率は2025年から低下するが、製造設備の稼働率を維持し、規模の利益は残る。期間の純利益累計2,050億ドルから1,220億ドルを正味の株主還元に回し、自己資本は約1,135億ドルとなる。利益の成長はROEからではなく患者数と純単価から生まれ、資本効率はその成長に必要な再投資を支える役割に変わる。
- 肥満治療薬(ウェゴビー・サクセンダ・次世代薬):数量 2,500(年間投与量から換算した肥満治療患者数(万人))× 価格 2,250(患者1年当たり平均純売上(ドル、リベート後))→ 売上 563 億ドル・営業利益 233 億ドル。患者数約6.9倍、純単価は現在の約65%。世界市場で主要な地位を維持
- 糖尿病GLP-1薬(オゼンピック・リベルサスなど):数量 1,000(年間投与量換算の糖尿病GLP-1患者数(万人))× 価格 1,900(患者1年当たり平均純売上(ドル、リベート後))→ 売上 190 億ドル・営業利益 76 億ドル。特許切れで純価格が低下し、新薬が一部を補う
- インスリン・その他の糖尿病治療:数量 3,000(GLP-1以外の糖尿病治療患者数(万人・年間投与量換算))× 価格 260(患者1年当たり平均純売上(ドル))→ 売上 78 億ドル・営業利益 18 億ドル。患者数が緩やかに減り、価格は物価を下回る
- 希少疾患(血友病・成長ホルモン・その他):数量 20.0(治療患者の年間投与等価数(万人、推定))× 価格 30,000(患者1年当たり平均純売上(ドル、製品構成を含む))→ 売上 60 億ドル・営業利益 12 億ドル。新薬の一部が成功し、患者数と利益率が改善
倍率:k=8.0%、2035年ROE=249÷1135.1=21.9%。通常の堀として超過利益の残存割合1/2を使うとRONIC=8.0%+0.5×(21.9%−8.0%)=約15.0%。2035年以降のg=3.5%は、世界の患者数の実質増加約5%、ノボのシェア低下約0.5%、平均純価格の名目低下約1%を合わせた値である。成長率はROEから逆算していない。正当化PER=(1−3.5%÷15.0%)÷(8.0%−3.5%)×1.035で約17.6倍。特許切れと新薬開発の不確実性を踏まえ、その約85%に当たる14.98倍とした。純利益は調整後利益ではなく費用控除後を使用する。
確率:世界のGLP-1利用者が増加し、ノボが主要メーカーの一角を保つ一方、2026年以降の競争激化と2031〜2032年の特許切れが価格を押し下げる。経口薬と次世代薬は一部成功するが、リリーの市場優位を完全には覆さない。数量の根拠と構造的な価格下落の両方を反映した中心的な見通しである。
やや悲観 28% やや悲観:後発薬とリリーの優位で、増加する患者を収益へ結び付けられない 利益 78 億ドル · PER 10.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 22.61 ドル1,006 億ドル
世界のGLP-1市場は拡大するものの、2035年のノボの患者数は肥満向け1,250万人、糖尿病向け700万人にとどまる。イーライリリーと後続企業にシェアを奪われ、ノボの世界数量シェアは2割台前半へ低下する。経口ウェゴビーは広まるが、価格が安い製品が販売の中心となる。カグリセマと次世代薬の一部は承認されても、競合より優れた治療として高い価格を維持できない。
肥満薬の売上は225億ドル、糖尿病GLP-1は約95億ドルへ縮む。インスリンも低価格製品の比率が増え、約61億ドルになる。希少疾患の新薬も計画ほど伸びず、全社売上は約421億ドルとなる。工場の余剰能力、研究開発費、販売促進費が残るため、営業利益率は大きく低下する。アケロの買収資産では一部減損が発生する。
前半はまだ利益が高く、後半に特許切れと競争による減益が進む。減損を含めた10年間の純利益累計は約1,280億ドル、正味の還元は825億ドルとなる。自己資本は約760億ドルとなるが、2035年の純利益は78億ドルに縮小する。会社の存続や配当が直ちに危うくなるわけではないものの、以前の高い資本効率と価格決定力を失った姿である。
- 肥満治療薬(ウェゴビー・サクセンダ・次世代薬):数量 1,250(年間投与量から換算した肥満治療患者数(万人))× 価格 1,800(患者1年当たり平均純売上(ドル、リベート後))→ 売上 225 億ドル・営業利益 74 億ドル。新規参入でシェアが低下し、平均価格は現在の約52%
- 糖尿病GLP-1薬(オゼンピック・リベルサスなど):数量 700(年間投与量換算の糖尿病GLP-1患者数(万人))× 価格 1,350(患者1年当たり平均純売上(ドル、リベート後))→ 売上 95 億ドル・営業利益 29 億ドル。既存品の特許切れと競合薬への移行が進む
- インスリン・その他の糖尿病治療:数量 2,700(GLP-1以外の糖尿病治療患者数(万人・年間投与量換算))× 価格 225(患者1年当たり平均純売上(ドル))→ 売上 61 億ドル・営業利益 13 億ドル。低価格薬中心となり、数量と収益性が低下
- 希少疾患(血友病・成長ホルモン・その他):数量 16.0(治療患者の年間投与等価数(万人、推定))× 価格 25,500(患者1年当たり平均純売上(ドル、製品構成を含む))→ 売上 41 億ドル・営業利益 4 億ドル。研究開発費の負担が残り、新薬による改善は限定的
倍率:k=8.0%、ROE=78÷760.1=10.3%。通常の堀としてRONIC=8.0%+0.5×(10.3%−8.0%)=約9.1%。2035年以降のg=2.0%は、世界市場の実質数量増加が約4%続いてもノボのシェアが約1%減り、平均純価格も約1%下がる構造を反映した。正当化PERの上限は約13.3倍。構造的なシェア低下と薬価競争によりその約76%の10.09倍とした。中立の14.98倍より低く、悲観側を7割まで機械的に引き上げる扱いはしていない。
確率:セマグルチドの特許期限を迎え、世界的に純価格が下落する。リリーの臨床上の優位が続き、ノボの新薬の成功も限定される展開。2026年に見えたシェア低下と価格下落が長引く可能性は小さくない。完全な事業崩壊ではないため、悲観よりも高い28%を与えた。
悲観 15% 悲観:主要成分の競争優位を失い、設備と研究開発費が重荷になる 利益 38 億ドル · PER 8.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 7.09 ドル315 億ドル
2035年のノボは、かつてのGLP-1市場の中心企業ではなくなる。イーライリリーの新世代薬と低価格の後発薬が普及し、肥満向け患者は850万人、糖尿病GLP-1患者は550万人となる。市場全体の利用者は増えるが、ノボの取り分は約2割に縮小する。セマグルチドは十分な価格を取れず、カグリセマと後継候補も期待を下回る。
肥満薬の売上は119億ドル、糖尿病GLP-1は55億ドルとなる。インスリンは約46億ドル、希少疾患は約31億ドルとなり、全社売上は約251億ドルに縮む。工場の減価償却と設備維持費は簡単には削れず、研究開発の失敗や買収資産の減損も発生する。営業利益は約51億ドル、純利益は38億ドルとなる。会社は存続するが、高い利益率と成長企業としての評価を失う。
特許切れ以前の利益があるため、10年間の純利益累計は約920億ドルとする。ただし後半は利益が急減し、還元も縮小する。正味の株主還元は600億ドル、期末自己資本は約625億ドルとなる。工場、運転資本、医薬品の許認可には価値が残るが、買収による無形資産を帳簿通りに売却できるとは考えない。現在の自己資本約305億ドルを比較床としても、長期の価値が大きく失われる筋書きである。
- 肥満治療薬(ウェゴビー・サクセンダ・次世代薬):数量 850(年間投与量から換算した肥満治療患者数(万人))× 価格 1,400(患者1年当たり平均純売上(ドル、リベート後))→ 売上 119 億ドル・営業利益 36 億ドル。世界シェアが大幅に低下し、価格は現在の約40%
- 糖尿病GLP-1薬(オゼンピック・リベルサスなど):数量 550(年間投与量換算の糖尿病GLP-1患者数(万人))× 価格 1,000(患者1年当たり平均純売上(ドル、リベート後))→ 売上 55 億ドル・営業利益 15 億ドル。主要製品が後発薬と低価格競争にさらされる
- インスリン・その他の糖尿病治療:数量 2,300(GLP-1以外の糖尿病治療患者数(万人・年間投与量換算))× 価格 200(患者1年当たり平均純売上(ドル))→ 売上 46 億ドル・営業利益 7 億ドル。低価格供給が中心となり、利益率が低下
- 希少疾患(血友病・成長ホルモン・その他):数量 14.0(治療患者の年間投与等価数(万人、推定))× 価格 22,000(患者1年当たり平均純売上(ドル、製品構成を含む))→ 売上 31 億ドル・営業利益 3 億ドル。新薬が育たず、既存製品が細る
倍率:k=8.0%、ROE=38÷625.1=約6.1%で資本コストを下回る。2035年以降は市場数量の増加をシェア喪失と実現価格下落が相殺し、持続的な純利益成長g=0%とする。ROEがk以下のため正当化PERの上限は1÷k=12.5倍である。再投資による価値創出が難しい構造的敗北なので、その約66%の8.30倍を採用した。38億ドル×8.30倍で約315億ドルとなり、2025年末自己資本305.1億ドルを下回らない。時価総額はゼロにせず、残る事業の利益で評価している。
確率:セマグルチド特許切れ、競合による価格下落、新薬失敗、工場の過剰能力が重なる構造的な敗北。治療市場自体は残るため倒産は想定しないが、ノボが以前の優良企業ではなくなる危険を考える。主要な臨床試験での競争力低下が既に示されているため、確率は15%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
肥満治療薬(ウェゴビー・サクセンダ・次世代薬)
注射・経口ウェゴビーを中心とする肥満治療薬。将来のカグリセマ、ゼナガムチドなどの売上も成功の程度に応じてここへ含める。
| 数量年間投与量から換算した肥満治療患者数(万人) | 価格患者1年当たり平均純売上(ドル、リベート後) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 360 | 3,458 | 125 | 63 |
| 10 年後 中立 | 2,500 | 2,250 | 563 | 233 |
取り方:会社の2025年肥満薬売上823.47億デンマーククローネを、添付factsの全社売上467.4億ドルと会社の3090.64億デンマーククローネの売上から得る換算比率で約124.5億ドルとした。数量360万人は会社開示の年間投与量換算の患者数で、実際の個人数ではない。平均純売上は124.5億ドル÷360万人で約3,458ドル。会社が肥満薬単独の営業利益を出していないため、営業利益63億ドルは製品構成と費用負担からの推計である。2025年ブランド品数量シェア59.6%はIQVIAの処方数量ベースで、年間患者数ベースのシェアとは厳密には一致しない。中立の10年後は患者数が大幅に増える一方、経口薬と後発薬、米国の薬価政策で純単価が現在の約65%へ下がる。
糖尿病GLP-1薬(オゼンピック・リベルサスなど)
2型糖尿病のGLP-1治療が中心。オゼンピックが最大製品で、経口リベルサスや新しい代謝性疾患向けGLP-1治療を含む。
| 数量年間投与量換算の糖尿病GLP-1患者数(万人) | 価格患者1年当たり平均純売上(ドル、リベート後) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 800 | 2,877 | 230 | 113 |
| 10 年後 中立 | 1,000 | 1,900 | 190 | 76 |
取り方:会社開示の2025年GLP-1糖尿病薬売上1522.02億デンマーククローネを、factsと整合するドル換算で230.1億ドルとした。うちオゼンピックは1270.89億デンマーククローネ、リベルサスは220.93億デンマーククローネ。年間患者数は未開示。世界GLP-1市場の数量シェア約43%、2026年の業界利用者約3,000万人という業界ノートの推計、肥満向け360万人を手掛かりに、糖尿病向け約800万人と推定した。数量は処方数と年間投与換算患者数の混合推計であるため誤差が大きい。純単価2,877ドルは製品売上を推定患者数で割った値。営業利益は配賦推定。2031〜2032年の主要成分特許期限により、10年後の純単価は物価上昇に反して下がる。
インスリン・その他の糖尿病治療
トレシーバ、ノボラピッド、ヒトインスリン、週1回型インスリンなどの治療薬。数量は安定しやすいが薬価と後発品の制約が強い。
| 数量GLP-1以外の糖尿病治療患者数(万人・年間投与量換算) | 価格患者1年当たり平均純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,400 | 244 | 83 | 26 |
| 10 年後 中立 | 3,000 | 260 | 78 | 18 |
取り方:2025年の糖尿病事業売上2071.09億デンマーククローネからGLP-1売上1522.02億を除いた549.07億デンマーククローネをドル換算し、約83.0億ドルとした。インスリン自体は531.37億デンマーククローネであり、残りはその他の糖尿病関連製品である。会社が開示する2025年糖尿病治療患者4200万人から、推定GLP-1患者800万人を除き3400万人とした。平均純単価は約244ドル。今後は製品数量の安定と週1回製品への切り替えがあるが、米国の価格上限、後発品、低価格の海外供給により、価格は物価並みには上がらない。利益率は製品別非開示のため推計した。
希少疾患(血友病・成長ホルモン・その他)
ノボセブン、エスペロクト、ソグローヤ、アルヘモなど。将来のデネシミグやエタボピバットなどの新薬を含む。
| 数量治療患者の年間投与等価数(万人、推定) | 価格患者1年当たり平均純売上(ドル、製品構成を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 12.0 | 24,800 | 30 | 2 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 30,000 | 60 | 12 |
取り方:2025年の会社開示の希少疾患売上196.08億デンマーククローネをfactsのドル基準に換算し約29.8億ドルとした。内訳は希少血液疾患119.55億デンマーククローネ、希少内分泌疾患59.59億デンマーククローネ、その他である。患者実人数と年間単価は非開示である。希少血液疾患・内分泌疾患の患者母集団と製品構成から年間投与等価数を約12万人と仮定し、平均純単価を約2.48万ドルと推定した。会社開示の希少疾患営業利益率は2025年約6.2%であり、約1.8億ドルを使用した。肥満・糖尿病領域の製品別利益は非開示であるため、全社営業利益は指定されたfactsの204.2億ドルへ配賦した。なお会社のIFRS開示の全社営業利益を同じ換算率で換算すると約193億ドルで、添付factsと約11億ドルの差がある。差の会計上の原因は確認できておらず、指定に従いfactsを正としている。
リスクと懸念
セマグルチド特許切れと後発薬
オゼンピック、ウェゴビー、リベルサスの主要成分特許は、中国で2026年、欧州と日本で2031年、米国で2032年が主な期限である。製剤・用途・装置の特許が残っても、競合品の販売や価格交渉が進む。主力成分に依存する売上が一斉に低単価へ移れば、売上よりも営業利益が大きく減る。2030年代の新薬による補充率が企業価値を左右する。
イーライリリーと次世代薬の競争
チルゼパチドは体重減少効果で強い競争力を持ち、リリーは経口薬やレタトルチドも開発している。ノボのカグリセマは2026年2月の直接比較で非劣性を証明できなかった。異なる試験条件での良好な結果はあるが、次世代薬の商業的成功は確定していない。競争に負ければ、世界市場が拡大しても患者シェアと利益率が下がる。
米国の薬価政策と保険適用
メディケアの価格交渉、最恵国待遇、現金払い向け価格引き下げ、民間保険のリベートが純単価を押し下げる。保険適用の拡大は数量を増やす一方、1人当たりの売上を減らすことがある。価格の下落が数量増加より速ければ売上は縮小する。米国のリベート引当金の一時的な戻入れが決算を大きく動かすため、調整前後の利益を区別する必要がある。
製造設備と大型買収の投資回収
2024年のカタレント製造拠点取得には約117億ドルを使い、2025年のアケロ買収には約47億ドルの現金を投じた。工場の能力増強は需要が続けば有利だが、薬価下落や市場シェア喪失で稼働率が下がれば負担が大きい。アケロの肝疾患薬や他の開発品が失敗すると、将来の売上だけでなく、研究開発費と減損が株主利益を削る。
新薬開発・安全性と規制承認
GLP-1薬は慢性的に投与するため、安全性、治療中止率、投与のしやすさが利用者数を左右する。消化器症状、筋肉量、視覚への影響などは規制当局と医師が注意する論点である。2026年には開発中の薬に減損が生じ、別の心血管試験も主要評価項目を達成できなかった。新薬の研究費は確実に支出するが、承認や販売成功は保証されない。
支配株主・資本配分と借り換え
ノボ・ホールディングスは資本の約28%で議決権の約77%を支配する。長期投資を進めやすい反面、一般株主の経営への影響力は限られる。親会社側が取得したカタレントから製造拠点を買った取引では、少数株主も適正な取引条件を確認する必要がある。純負債の増加で借り換え費用も高まる。金利5.75%を想定した場合の利払い増加は、10年後の税前利益を年約3億ドル押し下げると見ている。
今後の分かれ目
- 2027〜2028年にカグリセマが承認され、その後の高用量試験でも競合に対する十分な減量効果が示されたら
- 次世代薬によってセマグルチドの特許切れを補える可能性が高まり、2035年の世界シェアを中立より上に修正する。やや楽観と楽観の確率を増やす。
- 経口ウェゴビーの継続処方が大幅に増え、注射薬からの単純な置き換えを超える新規患者を獲得できたら
- 肥満治療薬の数量を上方修正する。ただし平均純価格と利益率も同時に確認し、処方数の増加だけで売上と利益が同じ割合で増えるとは考えない。
- 米国の実現純価格が2年間でさらに20%以上下落し、利用者増加でも売上が減る状態になったら
- 価格決定力の低下が構造的だと判断し、やや悲観と悲観の確率を増やす。肥満薬と糖尿病GLP-1の10年後の利益率を引き下げる。
- 2031〜2032年の主要成分特許切れに先立ち、新薬群の売上が持続的に増え、既存品の失う利益を補える見通しが明確になったら
- 特許切れ後の収益予測の不確実性が下がるため、中立以上の確率を増やす。製造能力の転用が進むなら、投下資本利益率の維持も評価する。
- 製造拠点の稼働率が低下し、フリーキャッシュフローが純利益を大幅に下回る状態が続いたら
- 設備投資の回収が難しいと判断し、営業利益率と正味還元額を減らす。買収した無形資産の減損も悲観の筋書きへ反映する。
- 2030年までに世界の治療患者が6000万人を超え、同時に利益率がおおむね安定し、研究開発品の大型薬が複数育ったら
- 2026年9月の経営目標の実行力を評価し、長期の患者増加と新薬による利益補充の確信度を上げる。ただし株主還元と再投資の必要額を確認してから価値へ反映する。
見ておくもの
- ウェゴビー注射薬と経口薬の四半期処方数、治療継続率、新規患者の割合
- 世界GLP-1数量シェアと、米国・米国外別の実現純価格
- オゼンピック、ウェゴビー、リベルサスの特許期限と後発薬の承認状況
- カグリセマ、ゼナガムチド、エフルキシフェルミンの臨床試験と承認
- イーライリリーのムンジャロ、ゼップバウンド、経口薬、レタトルチドとの競争
- 会社の調整後業績と報告ベース業績の差、340B関連の引当金調整、減損
- 設備投資、工場稼働率、フリーキャッシュフロー、純有利子負債
- 配当と自社株買いから株式報酬を差し引いた正味還元額
- 2030年の患者数目標と2035年の研究開発品売上目標に対する進捗
- 2026年11月4日発表予定の2026年1〜9月期決算と通期見通し
倍率と資本コストの決め方
現在の株価・市場PERから倍率を逆算していない。まず2025年の会社開示に基づき、肥満、糖尿病GLP-1、インスリン・その他、希少疾患の数量と純単価を確認した。2035年の各筋書きは、世界市場の患者数、ノボのシェア、純価格、費用構造から組み立てている。中立の倍率はk8.0%、ROE21.9%、通常の堀から得るRONIC約15.0%、長期成長g3.5%による正当化PER約17.6倍の85%である14.98倍とした。
現在の時価総額は添付台帳の約1,737億ドルであり、別途調べた2026年10月28日の全種類株を含む時価総額は約1,665億ドルである。A株を除くB株だけの時価総額を使って割安に見せていない。10年後の5筋書きの時価総額は約315〜8,829億ドル、加重平均した現在価値は約2,229億ドルで、台帳比約28%の「やや割安」となった。2025年の営業利益は添付factsと会社IFRS開示の換算額に差があり、その原因は未確認であるため、指定どおりfactsの数字を採用した。金額は億ドル、利益は株式報酬と研究開発費を費用として扱い、利益と倍率で二重に足し戻していない。通常の借入金とリースの固定的な支払義務は、悲観でも消えないものとして考慮した。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本資本コスト8.0%にquality0.0%を加え、k=8.0%とした。事業が継続できなくなるほどの財務危機はないのでextra=0。特定製品の特許切れ、研究開発の失敗、支配株主によるガバナンスの危険は、倍率に任意のリスク上乗せをするのではなく、数量・価格・利益率と下振れ確率に反映した。