結論
デクスコム(Dexcom)は、皮膚に貼るセンサーで血糖を連続で測る機器(CGM)の世界 2 強の一角で、もう 1 社はアボット・ラボラトリーズ(Abbott)。2025 年は売上 46.6 億ドル(+16%)、GAAP の営業利益 9.1 億ドル(19.6%)、純利益 8.4 億ドル、純現金は約 6 億ドル。2026 年 4〜6 月期は売上 13.1 億ドル(+13%)、粗利率 64.1%、GAAP の純利益 2.5 億ドルで、通期の売上見通しを 51.8〜52.5 億ドル(+11〜13%)へ引き上げた。2026 年 5 月の投資家説明会では、2030 年まで毎年 10% 以上の成長と、非 GAAP の営業利益率 29〜30% を掲げた。
売上は「利用者数 × 1 人あたり年収」で組み立てる。利用者は市場(世界の CGM 利用者)× シェアで、1 型・インスリン使用の 2 型・非インスリン使用の 2 型・市販品の 4 つに分ける。中立では、利用者が 2025 年の約 320 万人から 2035 年に約 980 万人へ増える一方、1 人あたり収入は競争入札・価格競争・安い層への広がりで今の 0.8〜0.9 倍に下がり、2035 年の売上は約 100 億ドル、純利益は約 22 億ドルとなる。
資本コストは 8.5%、倍率は利益ベースの正当化 PER(事業の ROE 26% が先で薄れた RONIC・g 4.0%)の 8 割、10 年後の中立で 13.7 倍。10 年後の中立の時価総額は 300 億ドルと今(329 億ドル)を下回り、確率加重の本質価値は今の値段の 6 割弱。バリュー投資の観点では、事業の質は高いが値段が先に走っている「割高」の会社と結論する。ただし、保険の拡大が早く価格も下がらなければ、結論は大きく変わる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、デクスコムは分かりやすく、10 年後も存在し、今より大きい可能性が高い事業である。糖尿病は増え続け、血糖を連続で測る価値はデータで示され(CONNECT 試験)、保険がそれを追いかけている。定期購入の消耗品で、粗利率は 64% から 67〜69% へ向かい、純現金で自己資本の ROE は 30%。堀は広がる方向だが、アボットが価格で同じ土俵に立つため、幅はそれほど広くない。
オーナー利益は、純利益から株式報酬(売上の 3% 台)を差し引いた GAAP の値で見る。調整後の利益は株式報酬を戻していて安く見えるので使わない。2025 年の GAAP の PER は 39 倍で、2026 年の見通しでも 35 倍前後。成長の割に ROE が高く、再投資は小さくて済み、還元に回せる割合は高い。経営は、2025 年の FDA の警告書の後に品質体制を直し、自社株買いも一貫している。
安全域が問題になる。資本コスト 8.5% で、中立の 10 年後の時価総額は今の 0.91 倍で、還元を足しても年率は資本コストを大きく下回る。楽観でも 1.6 倍。悲観では今の 2 割弱。上振れの幅より下振れの幅が大きいので、良い事業でも値段が高い。結論は「割高」で、より安く買える機会を待つ型の会社。
何で稼ぐ会社か
デクスコムは CGM に特化した会社で、売上の大半はセンサー(10 日から 15.5 日で貼り替える消耗品)の定期購入。利用者が増えるほど収入が積み上がり、一度使うと乗り換えにくい。米国が約 7 割(2025 年に約 33 億ドル)、海外が約 3 割(約 13 億ドル)。米国は薬局経由(保険)と、専門の医療機器卸(DME)経由、メディケア(出来高払いが売上の約 15%)に分かれる。
製品は G7(2022 年発売)と、2025 年 12 月に米国で出した G7 15 日(最長 15.5 日つけられる)が主力で、G6 は 2026 年 7 月で終わった。G7 15 日は会社が米国顧客の約半数を 2026 年内に移すことを目標にし、粗利率を押し上げる。2026 年にアイルランド工場が稼働し、G8(G7 より 50% 小さく、精度が高く、原価が低い。2027 年末〜28 年初の発売)が続く。市販品はステロ(Stelo)で、保険のない人向けに処方なしで買える。
使う人は 4 種類。1 型糖尿病(強化インスリン療法で CGM が標準)、インスリンを使う 2 型、インスリンを使わない 2 型(保険の対象が広がり始めたところ)、保険を使わず市販品を買う人(予防・健康管理を含む)。2025 年末に 350 万人超(二次情報)。米国では CGM の保険対象者の約 30% しか使っておらず、9M 人が対象なのに未使用というのが成長余地。ほかに、血糖から食事を指導するニュートリセンスの買収(売上は軽微)、インスリンの用量を支援するスマート・ベーサルがある。
優良さと弱いところ
優良さの核は 3 つ。第 1 に、定期購入の消耗品で収入の質が高いこと(ROE 30%、粗利率 64%、営業利益率は 19.6% から 2030 年に非 GAAP で 29〜30% を目標)。第 2 に、精度(MARD)とソフトの完成度で、米国の 1 型とインスリン使用者ではデクスコムが選ばれることが多い。第 3 に、純現金で転換社債 12.4 億ドルは 2028 年に現金で返せる財務。
堀は広がりつつある。G8 で原価が下がり、アイルランド工場で供給が増えれば、価格を下げても利益を保てる。保険の対象を広げるための臨床データ(CONNECT 試験で A1c が 0.9 ポイント改善など)を積み上げ、これを背に PBM と交渉する。ただし堀の幅は、アボット(リブレ)との比較で測る必要がある。リブレは利用者の数でデクスコムの約 2.5 倍、月 80 米ドル前後の低価格で、世界の 2 型・新興国で先行している。アボットの CGM は利益率が高く(35% 前後と推定)、デクスコムの方が小さい。
弱点は、単一の製品群に頼ること、アボットとの価格競争が構造的に続くこと、メディケアの競争入札(2028 年)、2025 年 3 月の FDA の警告書(G7 のセンサー被膜の変更を無許可で行い、精度に影響しうると指摘)と、2025 年 9 月の調査会社による精度・有害事象の指摘(株価は 2 日で約 12% 下落)、それに続く集団訴訟と株主訴訟(主張であって確定した事実ではない)、株式報酬が売上の 3% 台で GAAP の利益を削ること。資本配分は、自社株買い(2025 年 5.0 億ドル、2026 年 4〜6 月期だけで約 6 億ドル)を厚くしつつ買収は小さく、価値を壊していない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
CGM 市場は、糖尿病が多く、使う人が増える段階にある。世界の CGM 利用者は約 1,500 万人(アボットの 800 万人・デクスコムの約 320 万人・メドトロニック・中国勢の合計。ほぼ推定)。利用者の 4 つの層で、浸透と競争が違う。
1 型(世界で市場 450 万人の利用者):浸透が高く、伸びは人口と新興国の普及(年 +7% 前後)。インスリン使用の 2 型(市場 700 万人):基礎インスリンの人にも保険が広がり、最大の量。非インスリン使用の 2 型(市場 200 万人):大手 PBM が 700 万人超に保険を広げ、CMS の判断(2026 年末〜2027 年中ごろ)が次の山。CONNECT 試験で A1c の改善と、GLP-1 と併用した人の効果が示され、GLP-1 の普及が CGM を後押しする。市販品(市場 150 万人):ステロ、アボットのリブレ・リオとラインゴ、新興の勢力。
価格は下がる方向。メディケアは 2028 年から競争入札で月額レンタルになる(JP モルガンは費用の安いアボットに有利と見る)。PBM のリベート、15 日品の 1 日あたり単価の低下、安い層(2 型・市販)の比率上昇で、1 人あたり収入は名目で年 −1〜2%。会社の目標も「競争入札・競合の新製品・価格と構成の圧力」を前提に置く。
競争は 2 社が中心で、アボットがリブレで量を取り、デクスコムは精度で高単価を守る。メディケア部分はアボットが有利。メドトロニック(シンプレラ)は 3 番手で、中国勢(シノケアなど)は欧州・新興国で安い製品を出す。
資本政策と M&A
資本配分は自社株買い中心で、配当はない。2025 年の自社株買いは 5.0 億ドル、2026 年 4〜6 月期だけで約 6 億ドル、上期のフリーキャッシュフローは 6 億ドル超。株数は 3.77 億株(2026 年 6 月)で、株式報酬(年 1.6 億ドル前後)を打ち消して緩やかに減っている。正味の還元は自社株買い − 株式報酬で見る。
財務は純現金。現金と有価証券 19.5 億ドルに対し、転換社債 12.4 億ドル(元本 12.5 億ドル、クーポン 0.375%、2028 年 5 月償還、転換価格 約 162 米ドルで今の株価の約 2 倍)。転換価格が遠いので株には換わらず、現金で返す前提で負債として一度だけ数え、株数は増やさない。返済後の現金は約 7 億ドル。買収は小さく(ニュートリセンスの売上は軽微)、大型買収で価値を壊した過去はない。借入の利払いは低く、リファイナンスによる利益の変化はほぼない。
M&A の可能性は、買われる側としてはメドトロニックのような大手の関心がありうるが、時価総額 329 億ドルでは規模が大きい。TOB の筋書きは置かない。今後は、G8・アイルランド工場の設備投資を現金で賄いつつ、自社株買いを続ける想定。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
CGM はまだ入口にいる。米国でも保険の対象者の約 3 割しか使わず、9M 人が対象なのに未使用で、非インスリン 2 型は大手 PBM の保険で 700 万人超に広がる。CONNECT 試験で A1c が 0.9 ポイント改善し、GLP-1 のみの人で最も大きな改善が出たので、2027 年中ごろの CMS の適用が現実味を帯びる。会社の保険対象者の見通しは世界で 2,300 万人から 5,200 万人。利用者が毎年 13% 前後増え、会社の「毎年 10% 以上」の目標も 2025 年の +16%、2026 年の +11〜13% と実績が裏付ける。
利益率の改善が確実に進む。G7 15 日への移行で粗利率は 2026 年 4〜6 月期に 64.1%(前年 60.1%)、アイルランド工場と G8 で 67〜69% へ。営業利益率は GAAP で 2026 年 4〜6 月期に 24〜25%、2030 年には非 GAAP で 29〜30%。純現金の財務と 4〜6 月期だけで約 6 億ドルの自社株買いが株主に回る。価格の下落は、数量の増加と原価の低下で吸収できる。アボットは量では強いが、精度と使いやすさでデクスコムが 1 型・インスリン使用者の本命である立場は変わらない。ステロは市販の先行者で、予防・健康管理の新市場を開く。
慎重な見方
1 人あたり収入は構造的に下がる。2028 年からメディケアは競争入札と月額レンタルに変わり、売上の約 15% がその対象で、JP モルガンは費用の安いアボットが有利と見る。PBM は保険を広げる代わりにリベートを求め、15 日品は 1 日あたり単価が下がり、安い 2 型・市販品の比率が上がる。アボットのリブレは月 80 米ドル前後、利用者はデクスコムの約 2.5 倍で、同じ保険の対象になれば価格で競う力が強い。ステロにはアボットのリブレ・リオとラインゴが同時に出ており、市販品の利用者数も開示されていない。
今の値段が高い。GAAP の PER は 2025 年で 39 倍、2026 年の見通しでも 35 倍前後。会社の目標(毎年 10% 以上)を満たしても、資本コスト 8.5% の式では PER は 17〜18 倍が上限で、10 年後の時価総額は今の 1.6 倍止まり。2025 年 3 月に FDA が G7 の被膜変更を無許可としたとして警告書を出し、同年 9 月には調査会社が精度の苦情が市場シェアより 2 割多いと指摘し、株価が 2 日で約 12% 下がった。集団訴訟・株主訴訟も続いている(いずれも主張で、確定ではない)。単一の製品群で、アボットが勝てばシェアも利益率も落ち、競合に負けた時の利益は中立の 2 割。CMS の判断が 2027 年にずれれば、非インスリン 2 型の拡大は遅れる。
どちらに重みを置いたか
事業の質(粗利率・定期購入・精度・純現金)と市場の伸び(保険の拡大)は強気の見方が強く、中立を最大の確率(10 年 36%)に置いた。会社の目標(毎年 10% 以上)に沿うやや楽観に 10 年 22% を置き、楽観は少なめ(8%)にした。一方、慎重な見方の論点(競争入札・アボットの価格・1 人あたり収入の構造的な下落)は 2028 年に具体的な日程が来るので、やや悲観は 10 年 24%、悲観は 10 年 10% と厚めにした。こう置いても、資本コスト 8.5% の利益ベースの倍率と下がる 1 人あたり収入の下では、10 年の中立でも今の値段に届かず、確率加重の価値は今の 6 割弱で割高となる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 77.56 ドル296 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 23.24 ドル89 億ドル)。 今の値に割り戻すと 49.76 ドル190 億ドル、今との差 −36.5%、 期待の年率 +2.6%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 141.18 ドル540 億ドル | 29.07 ドル111 億ドル | +117.4% | +8.1% | 13.62 ドル52 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 105.70 ドル404 億ドル | 26.53 ドル101 億ドル | +68.8% | +5.4% | 29.09 ドル111 億ドル |
| 中立 | 36% | 78.57 ドル300 億ドル | 23.73 ドル91 億ドル | +30.6% | +2.7% | 36.83 ドル141 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 55.47 ドル212 億ドル | 21.06 ドル81 億ドル | −2.3% | −0.2% | 18.37 ドル70 億ドル |
| 悲観 | 10% | 14.10 ドル54 億ドル | 14.76 ドル56 億ドル | −63.2% | −9.5% | 2.89 ドル11 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 77.56 ドル296 億ドル | 23.24 ドル89 億ドル | +28.7% | +2.6% | 100.79 ドル385 億ドル |
今の株価時価総額 78.32 ドル299 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:CGM が糖尿病の外(予防・減量)まで広がり、G8 で原価が下がって利益率 30% に届く 利益 34 億ドル · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 141.18 ドル540 億ドル
2035 年の売上は 141.2 億ドル(年 +11.7%)。内訳は 1 型 38.8 億ドル、インスリン使用の 2 型 46.9 億ドル、非インスリン使用の 2 型 40.5 億ドル、市販品 15.0 億ドル。世界の CGM 利用者は 1,500 万人から 6,500 万人になり、非インスリン 2 型が 2,200 万人、予防・減量の市販品が 1,800 万人。保険の対象者は会社の見通しどおり 2030 年に 5,200 万人。G8(2027 年末〜28 年発売、G7 の半分の大きさ・原価も下がる)で粗利率が 70% 近くへ上がり、営業利益率は 30.2%(42.6 億ドル)、純利益 34.0 億ドル。1 人あたり収入は競争で 5〜12% 下がるが、量で補う。10 年目の成長は約 8% に落ち着く。アボットも伸びるが、デクスコムは精度の差で非インスリン 2 型の 2 割を取る。この筋書きで競合(アボット)の CGM 利益と並ぶ水準。
- 1 型糖尿病:数量 207(世界の 1 型の CGM 利用者(市場、推定)× デクスコムのシェア = デクスコムの利用者(万人、年平均))× 価格 1,876(利用者 1 人あたりの年間売上(米ドル))→ 売上 39 億ドル・営業利益 14 億ドル。市場 780 万人 × シェア 26.5%、1 人あたり年収は今の 0.95 倍
- インスリン使用の 2 型:数量 366(世界のインスリン使用の 2 型の CGM 利用者(市場、推定)× シェア = デクスコムの利用者(万人、年平均))× 価格 1,282(利用者 1 人あたりの年間売上(米ドル))→ 売上 47 億ドル・営業利益 16 億ドル。市場 1,700 万人 × シェア 21.5%、1 人あたり年収は今の 0.95 倍
- 非インスリン使用の 2 型:数量 440(世界の非インスリン 2 型の CGM 利用者(市場、推定)× シェア = デクスコムの利用者(万人、年平均))× 価格 920(利用者 1 人あたりの年間売上(米ドル))→ 売上 41 億ドル・営業利益 12 億ドル。市場 2,200 万人 × シェア 20%、1 人あたり年収は今の 0.92 倍
- 市販品(ステロなど):数量 342(世界の市販・自費の CGM 利用者(市場、推定)× シェア = デクスコムの利用者(万人、年平均))× 価格 440(利用者 1 人あたりの年間売上(米ドル))→ 売上 15 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場 1,800 万人 × シェア 19%、1 人あたり年収は今の 0.88 倍
倍率:正当化 PER は 17.6 倍(g 4.0%、RONIC 19.4%。RONIC は k 8.50% に、事業の ROE 30.2% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 15.9 倍(9 割)に置いた。利益の質が高く、伸びも一番続く筋書き。上限の 9 割に置く。g の内訳:市場年 +6.5%・シェア維持・1 人あたり収入の下落で、名目の長期 g は上限の 4.0%。事業の ROE は現金を除かない帳簿の値(のれんはほぼ無い)。純利益は GAAP。
確率:10 年間、保険の拡大・G8 の原価低下・予防や減量などの新市場がすべて当たる展開。糖尿病外の需要はまだ実証されておらず、アボットの追い上げも続くので 8%。
やや楽観 22% 楽観寄り:保険が非インスリン 2 型に広がり、会社の長期目標に近い成長が 2030 年以降も続く 利益 27 億ドル · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 105.70 ドル404 億ドル
2035 年の売上は 118.8 億ドル(年 +9.8%)。2030 年までは毎年 10% 前後の成長で会社の目標を満たし、その後 7〜8% に鈍る。内訳は 1 型 35.4 億ドル、インスリン使用の 2 型 40.2 億ドル、非インスリン使用の 2 型 31.8 億ドル、市販品 11.3 億ドル。G8 が計画どおり出て、粗利率は 2030 年に 67〜69%、営業利益率は 28.7%(34.1 億ドル)、純利益 27.3 億ドル。1 人あたり収入は 8〜16% 下がる。非インスリン 2 型は保険適用で 1,900 万人、デクスコムのシェアは 19%。アボットとは精度(MARD)とアプリで差をつけ、価格は追随しつつ利益率で並ぶ。
- 1 型糖尿病:数量 195(世界の 1 型の CGM 利用者(市場、推定)× デクスコムのシェア = デクスコムの利用者(万人、年平均))× 価格 1,817(利用者 1 人あたりの年間売上(米ドル))→ 売上 35 億ドル・営業利益 13 億ドル。市場 750 万人 × シェア 26%、1 人あたり年収は今の 0.92 倍
- インスリン使用の 2 型:数量 324(世界のインスリン使用の 2 型の CGM 利用者(市場、推定)× シェア = デクスコムの利用者(万人、年平均))× 価格 1,242(利用者 1 人あたりの年間売上(米ドル))→ 売上 40 億ドル・営業利益 13 億ドル。市場 1,580 万人 × シェア 20.5%、1 人あたり年収は今の 0.92 倍
- 非インスリン使用の 2 型:数量 361(世界の非インスリン 2 型の CGM 利用者(市場、推定)× シェア = デクスコムの利用者(万人、年平均))× 価格 880(利用者 1 人あたりの年間売上(米ドル))→ 売上 32 億ドル・営業利益 9 億ドル。市場 1,900 万人 × シェア 19%、1 人あたり年収は今の 0.88 倍
- 市販品(ステロなど):数量 270(世界の市販・自費の CGM 利用者(市場、推定)× シェア = デクスコムの利用者(万人、年平均))× 価格 420(利用者 1 人あたりの年間売上(米ドル))→ 売上 11 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 1,500 万人 × シェア 18%、1 人あたり年収は今の 0.84 倍
倍率:正当化 PER は 17.4 倍(g 4.0%、RONIC 18.5%。RONIC は k 8.50% に、事業の ROE 28.5% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 14.8 倍(8.5 割)に置いた。会社の目標どおりの伸びと利益率の筋書き。上限の 8.5 割に置く。g の内訳は中立と同じ。純利益は GAAP。
確率:CMS の保険適用が 2027 年に決まり、G8 の発売(2027 年末〜28 年初)が順調で、会社の目標を 2030 年まで達成して以降は 7〜8% に落ち着く展開。会社の実績と堀を見て 22%。
中立 36% 中立:浸透が続いて売上は年 8% 弱で伸び、1 人あたり収入の下落で 10 年後は 100 億ドル規模 利益 22 億ドル · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 78.57 ドル300 億ドル
2035 年の売上は 100.3 億ドル(年 +8.0%。数量で年 +12%、価格で年 −1.5% 前後)。内訳は 1 型 31.7 億ドル、インスリン使用の 2 型 35.2 億ドル、非インスリン使用の 2 型 24.5 億ドル、市販品 8.8 億ドル。世界の CGM 利用者は 5,000 万人(今の 3 倍強)。1 型の 7 割が使い、インスリン使用の 2 型が 1,450 万人、非インスリン 2 型が 1,600 万人、市販品が 1,300 万人。デクスコムの利用者は 320 万人から 977 万人(シェアはわずかに低下)。1 人あたり収入は競争入札・PBM の値引き・15 日品への移行・安い層への広がりで、今の 0.80〜0.90 倍。営業利益率は 27% 前後(27.4 億ドル)、純利益 22.0 億ドル。G8 で粗利率が 67% 前後に上がり、営業費は売上の伸びより緩く増える。競合のアボットも CGM を伸ばし(利益率 35% 前後と推定)、デクスコムは精度とソフトで住み分け、利益は競合に比べやや低い水準。
- 1 型糖尿病:数量 179(世界の 1 型の CGM 利用者(市場、推定)× デクスコムのシェア = デクスコムの利用者(万人、年平均))× 価格 1,778(利用者 1 人あたりの年間売上(米ドル))→ 売上 32 億ドル・営業利益 11 億ドル。市場 700 万人 × シェア 25.5%、1 人あたり年収は今の 0.90 倍
- インスリン使用の 2 型:数量 290(世界のインスリン使用の 2 型の CGM 利用者(市場、推定)× シェア = デクスコムの利用者(万人、年平均))× 価格 1,215(利用者 1 人あたりの年間売上(米ドル))→ 売上 35 億ドル・営業利益 11 億ドル。市場 1,450 万人 × シェア 20%、1 人あたり年収は今の 0.90 倍
- 非インスリン使用の 2 型:数量 288(世界の非インスリン 2 型の CGM 利用者(市場、推定)× シェア = デクスコムの利用者(万人、年平均))× 価格 850(利用者 1 人あたりの年間売上(米ドル))→ 売上 25 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場 1,600 万人 × シェア 18%、1 人あたり年収は今の 0.85 倍
- 市販品(ステロなど):数量 221(世界の市販・自費の CGM 利用者(市場、推定)× シェア = デクスコムの利用者(万人、年平均))× 価格 400(利用者 1 人あたりの年間売上(米ドル))→ 売上 9 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 1,300 万人 × シェア 17%、1 人あたり年収は今の 0.80 倍
倍率:正当化 PER は 17.1 倍(g 4.0%、RONIC 17.2%。RONIC は k 8.50% に、事業の ROE 25.9% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 13.7 倍(8 割)に置いた。堀は普通:アボットとの 2 社寡占だが、競争入札・PBM・アボットの値下げで 1 人あたり収入が名目で下がる事業で、強い堀(2/3)とは見ない。中立は上限の 8 割に置く。g の内訳:市場年 +6.7%・シェア年 −0.5%・1 人あたり収入は年 −1.6% で約 +4.5% だが、長期の g は上限の 4.0% に抑える。純利益は GAAP。
確率:浸透率の上昇が続く一方、価格が下がり続ける議論の落としどころ。世界の CGM 利用者が 1,500 万人から 5,000 万人へ増える前提は、保険の対象者が 2,300 万人から 5,200 万人に増える会社の見通しと整合する。価格は物価 3.5% に対し 1 人あたり収入が 10〜20% 下がる前提で、会社の目標より 1 割ほど低く置いて最大の 36%。価格が物価 3.5% に届かないのは、競争入札・PBM のリベート・アボットとの価格競争・15 日品の 1 日あたり単価の低下・安い層の比率上昇のため。
やや悲観 24% やや悲観:アボットとの価格競争で 1 人あたり収入が 3 割下がり、シェアも小さく削られる 利益 17 億ドル · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 55.47 ドル212 億ドル
2035 年の売上は 86.6 億ドル(年 +6.4%)。内訳は 1 型 29.5 億ドル、インスリン使用の 2 型 31.2 億ドル、非インスリン使用の 2 型 19.4 億ドル、市販品 6.5 億ドル。競争入札(2028 年〜)と PBM の値引き、アボットの価格攻勢で、1 人あたり収入は今の 0.70〜0.87 倍。非インスリン 2 型は保険適用が遅れ 1,450 万人、そのシェアは 16.5%。市販品はリブレ・リオなど低価格品との競争で 1 人あたり 3 割安。営業利益率は 24.5%(21.2 億ドル)、純利益 17.0 億ドル。G8 の原価低下は価格に吸収される。競合に負けた時の利益は、中立の約 8 割にとどまる。
- 1 型糖尿病:数量 172(世界の 1 型の CGM 利用者(市場、推定)× デクスコムのシェア = デクスコムの利用者(万人、年平均))× 価格 1,718(利用者 1 人あたりの年間売上(米ドル))→ 売上 30 億ドル・営業利益 9 億ドル。市場 700 万人 × シェア 24.5%、1 人あたり年収は今の 0.87 倍
- インスリン使用の 2 型:数量 266(世界のインスリン使用の 2 型の CGM 利用者(市場、推定)× シェア = デクスコムの利用者(万人、年平均))× 価格 1,174(利用者 1 人あたりの年間売上(米ドル))→ 売上 31 億ドル・営業利益 9 億ドル。市場 1,400 万人 × シェア 19%、1 人あたり年収は今の 0.87 倍
- 非インスリン使用の 2 型:数量 239(世界の非インスリン 2 型の CGM 利用者(市場、推定)× シェア = デクスコムの利用者(万人、年平均))× 価格 810(利用者 1 人あたりの年間売上(米ドル))→ 売上 19 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 1,450 万人 × シェア 16.5%、1 人あたり年収は今の 0.81 倍
- 市販品(ステロなど):数量 176(世界の市販・自費の CGM 利用者(市場、推定)× シェア = デクスコムの利用者(万人、年平均))× 価格 370(利用者 1 人あたりの年間売上(米ドル))→ 売上 7 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 1,100 万人 × シェア 16%、1 人あたり年収は今の 0.74 倍
倍率:正当化 PER は 16.6 倍(g 4.0%、RONIC 15.9%。RONIC は k 8.50% に、事業の ROE 23.3% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 12.5 倍(7.5 割)に置いた。競争入札と PBM の値引きが重なり、新しく投じる資本の稼ぎが薄れる。上限の 7.5 割に置く。g の内訳は中立と同じ。純利益は GAAP。
確率:価格の崩れがアボットとの競争・競争入札・PBM の値引き要求で続き、非インスリン 2 型の浸透も遅れる展開。CGM の需要は残るが利益の質が落ちる。複数の逆風が重なり得るので、慎重な見方に寄せて 24%。
悲観 10% 悲観:CGM が汎用品になり、アボット・中国勢に価格を崩され、普通の機器会社に落ちる 利益 5 億ドル · PER 11.7 倍 · 株価時価総額 14.10 ドル54 億ドル
2035 年の売上は 43.1 億ドル(年 -0.8%)。内訳は 1 型 18.9 億ドル、インスリン使用の 2 型 16.6 億ドル、非インスリン使用の 2 型 6.0 億ドル、市販品 1.7 億ドル。アボットのリブレが月 80 米ドル前後の価格で量を取り、中国勢(シノケアなど)が欧州・新興国で追い、メディケアの入札と PBM の値引きで 1 人あたり収入は 3 割下がる(1 型で 0.70 倍)。非インスリン 2 型はシェア 12%、市販品は 10% に縮む。営業利益率は 12.9%(5.6 億ドル)、純利益 4.6 億ドル。G8 の開発・工場の固定費が重く、ROE は 18% に落ちて優良な会社ではなくなる。競合に完全に負けた時の利益は、中立の約 2 割。普通の機器会社として式で測る(g 2.5%、k 9%)。
- 1 型糖尿病:数量 136(世界の 1 型の CGM 利用者(市場、推定)× デクスコムのシェア = デクスコムの利用者(万人、年平均))× 価格 1,382(利用者 1 人あたりの年間売上(米ドル))→ 売上 19 億ドル・営業利益 4 億ドル。市場 620 万人 × シェア 22%、1 人あたり年収は今の 0.70 倍
- インスリン使用の 2 型:数量 176(世界のインスリン使用の 2 型の CGM 利用者(市場、推定)× シェア = デクスコムの利用者(万人、年平均))× 価格 945(利用者 1 人あたりの年間売上(米ドル))→ 売上 17 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場 1,100 万人 × シェア 16%、1 人あたり年収は今の 0.70 倍
- 非インスリン使用の 2 型:数量 96.0(世界の非インスリン 2 型の CGM 利用者(市場、推定)× シェア = デクスコムの利用者(万人、年平均))× 価格 620(利用者 1 人あたりの年間売上(米ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 800 万人 × シェア 12%、1 人あたり年収は今の 0.62 倍
- 市販品(ステロなど):数量 60.0(世界の市販・自費の CGM 利用者(市場、推定)× シェア = デクスコムの利用者(万人、年平均))× 価格 275(利用者 1 人あたりの年間売上(米ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。市場 600 万人 × シェア 10%、1 人あたり年収は今の 0.55 倍
倍率:正当化 PER は 13.0 倍(g 2.5%、RONIC 11.4%。RONIC は k 8.50% に、事業の ROE 14.3% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 11.7 倍(9 割)に置いた。構造的に負けた筋書きなので、この筋書きの g は 2.5%(市場年 +4.3%・シェア年 −0.5%・1 人あたり収入は年 −1.3%)に下げ、式の値の 9 割に置く。G8 の固定費が重く、普通の機器会社として測る。純利益は GAAP。
確率:構造的に負ける展開。リブレは月 80 米ドル前後で量を取り、中国勢が追い、価格が 4 割下がって利益率が 10% 台前半まで落ちる。G7 の品質問題の再発や特許・訴訟、保険者の方針転換も重なる。リーマン級ではなく構造の失敗で、売上は今より小さい。単一製品の会社で、事業の存続が揺らぐことはないが優良ではなくなるので 10%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
1 型糖尿病
強化インスリン療法の 1 型。CGM が標準の治療で、米国・欧州は浸透が高く、新興国で普及が進む。
| 数量世界の 1 型の CGM 利用者(市場、推定)× デクスコムのシェア = デクスコムの利用者(万人、年平均) | 価格利用者 1 人あたりの年間売上(米ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 115 | 1,975 | 23 | 5 |
| 10 年後 中立 | 179 | 1,778 | 32 | 11 |
取り方:2025 年の売上 46.6 億ドルを 4 層に分けた推定(開示は無い)。1 型は世界の CGM 利用者 450 万人(推定)× シェア 25.6% = 115 万人、1 人あたり年約 1,975 米ドル(米国で薬局・DME 経由の消耗品を使い切る層。海外の入札は安い)。全体の利用者 約 320 万人(年平均)は、2025 年末の 350 万人超(二次情報)と整合。価格は物価 3.5% では上げず、中立で 10 年 0.90 倍(競争入札・PBM の値引き・15 日品の 1 日あたり単価の低下)。競合はアボット(リブレ。世界の 1 型でも利用が多い)、メドトロニック、シノケア。
インスリン使用の 2 型
基礎インスリン・強化インスリンを使う 2 型。最大の量で、保険の対象が広がっている。
| 数量世界のインスリン使用の 2 型の CGM 利用者(市場、推定)× シェア = デクスコムの利用者(万人、年平均) | 価格利用者 1 人あたりの年間売上(米ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 140 | 1,350 | 19 | 4 |
| 10 年後 中立 | 290 | 1,215 | 35 | 11 |
取り方:世界の同層の CGM 利用者 700 万人(推定)× シェア 20% = 140 万人、1 人あたり年約 1,350 米ドル(1 型より装着が少なく、海外の入札価格も含む)。リブレが月 80 米ドル前後(年約 1,000 米ドル弱)で量を取る層で、デクスコムは 2 割。価格は中立で 10 年 0.90 倍(PBM のリベート・競争入札・アボットとの価格競争)。競合はアボット(最大)、メドトロニック。
非インスリン使用の 2 型
インスリンを使わない 2 型(経口薬・GLP-1 のみ)。保険が広がり始め、最も伸びる層。
| 数量世界の非インスリン 2 型の CGM 利用者(市場、推定)× シェア = デクスコムの利用者(万人、年平均) | 価格利用者 1 人あたりの年間売上(米ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 35.0 | 1,000 | 4 | 1 |
| 10 年後 中立 | 288 | 850 | 25 | 7 |
取り方:世界の同層の保険ありの CGM 利用者 200 万人(推定)× シェア 17.5% = 35 万人、1 人あたり年約 1,000 米ドル(装着の間隔が長く、価格も低い)。大手 PBM の保険が 700 万人超に広がり(2026 年末)、CMS の判断が 2026 年末〜2027 年中ごろ。2026 年 1〜3 月期にデクスコムはこの層でシェアを最も伸ばした(会社の開示)。価格は中立で 10 年 0.85 倍(量を取るための値引き)。競合はアボット(保険のない層の市販品でも競う)。
市販品(ステロなど)
処方なしで買える市販の CGM(ステロ)。保険のない人・予防・健康管理の人向け。
| 数量世界の市販・自費の CGM 利用者(市場、推定)× シェア = デクスコムの利用者(万人、年平均) | 価格利用者 1 人あたりの年間売上(米ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 30.0 | 500 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 221 | 400 | 9 | 2 |
取り方:世界の市販・自費の CGM 利用者 150 万人(推定。アボットのリブレ・リオとラインゴ、ステロ、中国勢)× シェア 20% = 30 万人、1 人あたり年約 500 米ドル(月額定価は約 99 米ドル前後だが、断続的な購入の人が多い)。利用者数と単価は非開示で推定。価格は中立で 10 年 0.80 倍(競争と、価格の低い購入形態の増加)。競合はアボット(リブレ・リオ、ラインゴ)、新興の勢力。
リスクと懸念
アボットとの価格競争と構造的な 1 人あたり収入の下落
アボットのリブレは月 80 米ドル前後で、利用者はデクスコムの約 2.5 倍。同じ保険の対象になった層(インスリン使用・非インスリン 2 型)では価格で競う力が強い。中立でも 1 人あたり収入は 10 年で 1 〜 2 割下がる前提。悪化すれば(4 割下落)利益率が 10% 台前半に落ち、普通の機器会社になる。
メディケアの競争入札(2028 年)
CMS は 2028 年 1 月までに CGM とインスリンポンプを月額レンタル・競争入札に移す。デクスコムはメディケアの出来高払いが売上の約 15%。JP モルガンは費用の安いアボットに有利と見ており、入札で負ければ数量と価格が同時に下がる。民間保険が同じ価格を追従する可能性もある。
非インスリン 2 型の保険適用の遅れ
成長の最大の源泉は非インスリン 2 型への保険。大手 PBM は 700 万人超に広げたが、CMS の判断は 2026 年末〜2027 年中ごろで、記事により見方が異なる。先送りされれば 3 年の利用者が 94 万人から 65 万人へ減り、会社の「毎年 10% 以上」を満たせない。
品質・供給・単一製品への依存
2025 年 3 月に FDA が G7 のセンサー被膜の変更を無許可として警告書を出し、同年 9 月の調査会社の報告(精度の苦情が市場シェアより 2 割多い)で株価が 2 日で約 12% 下がり、集団訴訟・株主訴訟が続く(主張で確定ではない)。回収や追加の規制措置が起きれば信頼と費用に響く。事業は CGM に特化し、分散はない。アイルランド工場の立ち上げ(2026 年 7〜9 月期)で一時的に原価が上がる。
今の値段が高く、期待が先行している
GAAP の PER は 2025 年で 39 倍、2026 年の見通しでも 35 倍前後。会社の目標(毎年 10% 以上・営業利益率 29〜30%)が達成されても、資本コスト 8.5% の利益ベースの倍率は 14 倍前後。目標を満たしても 10 年後の時価総額は今の約 1.2〜1.6 倍までで、未達なら大きく下がる。
株式報酬と GAAP の利益
株式報酬は売上の 3% 台(年 1.6 億ドル前後)で、調整後の利益はこれを戻していて GAAP より高い。自社株買いは株式報酬で増えた株を打ち消す分が多く、正味の還元は見かけより小さい。株式報酬は売上が伸びる限り増え、利益率の改善(営業利益率 27% 前後)を一部相殺する。
今後の分かれ目
- CMS が 2027 年中ごろまでに非インスリン 2 型の CGM を保険の対象に決めたら
- 非インスリン 2 型の利用者が年 +30% 超で伸び、楽観・やや楽観の確率を 10 年で 5〜8 ポイント上げる。決まらなければ、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 2028 年の競争入札で、デクスコムの CGM が主要な地域で落札できなかったら
- メディケア部分(売上の約 15%)の数量が減り、民間保険の価格も下がり、10 年の悲観・やや悲観の確率を 5〜10 ポイント上げる。落札して価格の下落が 1 割以内なら中立が強まる。
- G7 15 日の移行が 2026 年末までに米国顧客の約半数に達し、粗利率が 66% を超えたら
- 営業利益率の上昇が中立の想定(27%)より速く進み、10 年の純利益が 5〜10% 上振れする。逆に原価が下がらず粗利率が 60% 台前半に戻れば、中立の純利益を同程度下げる。
- アボットが月 80 米ドルを下回る価格を出し、保険者が価格差を理由に切り替えを促したら
- 1 人あたり収入の下落が年 −3% 以上に加速し、10 年のやや悲観が最大の筋書きになる。精度で差が出る 1 型・インスリン使用では価格が守られ、影響は限定的。
- G8 が 2027 年末〜28 年初に予定どおり発売され、原価が G7 より 3 割以上低く、精度も上がったら
- 粗利率が 70% 近くへ上がり、価格を下げても利益率を保てる。10 年の楽観の確率が上がり、10 年の中立の営業利益率を 1〜2 ポイント上げる。
- センサーの回収・FDA の警告・精度に関する訴訟が再発したら
- シェアが数ポイント下がり、やや悲観・悲観の確率を 10 年で 5 ポイント上げる。k ではなく確率で織り込む。
見ておくもの
- 四半期の売上成長(米国・海外)と会社の通期見通し(51.8〜52.5 億ドル)
- CMS の非インスリン 2 型の保険適用の判断と、PBM の対象者数(700 万人超)
- G7 15 日への移行率(米国顧客の約半数)と粗利率(64% → 67〜69%)
- メディケアの競争入札の対象・日程・落札結果(2028 年)
- アボットのリブレの価格と利用者数(800 万人)、リブレ・リオとステロの競争
- G8 の臨床試験と発売時期、アイルランド工場の立ち上げ費用
- 自社株買いの額と純現金、転換社債(2028 年 5 月償還)の返済
倍率と資本コストの決め方
今の PER(GAAP 39 倍・2026 年見通しで 35 倍前後)と時価総額 329 億ドルを見る前に、1 型・インスリン使用の 2 型・非インスリン使用の 2 型・市販品の 4 層で「市場(世界の CGM 利用者)× シェア × 1 人あたり年収」を置いて 10 年の売上と利益を積み、税と純現金の受取利息を足してから倍率を決めた。成長は ROE から出さず、市場・シェア・価格の内訳で g を置いた(中立 4.0%)。倍率は利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)、g 4.0%)を上限に、中立 8 割・やや楽観 8.5 割・楽観 9 割・やや悲観 7.5 割の業種共通の物差しで置き(10 年の中立 13.7 倍)、過去の期末の PER(32〜265 倍)に寄せていない。会社の目標(毎年 10% 以上)に近い筋書きをやや楽観に置き、競争入札・アボットの価格攻勢を中立の 1 人あたり収入の下落に入れた。価格は物価 3.5% に届かない前提とし、理由を各層に書いた。結論が今の値段より低いのは、k 8.5% の式と下がる 1 人あたり収入の結果で、今の値段との比較は最後に行った。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality +0.5% = 8.5%。単一の製品群・競争入札・アボットとの価格競争は個別のリスクなので k に足さず、確率(やや悲観・悲観の合計 34%)と悲観の深さで表した。存続は危うくないので上乗せ 0。