結論
アジレント・テクノロジー(Agilent Technologies)は、液体クロマトグラフ・ガスクロマトグラフ・質量分析などの分析機器と、その消耗品・保守サービス、病理診断・ゲノム・核酸の受託製造を持つ会社である。2025 年 10 月期は売上 69.5 億ドル(+6.7%、自然増 +4.9%)、GAAP の営業利益 14.8 億ドル(21.3%)、純利益 13.0 億ドル(税率は 9% と低く、通常は 13〜15%)。3 つの部門は、製薬・診断向けの LDG(27.3 億ドル)、消耗品・保守の CrossLab(29.1 億ドル、営業利益率 32.5%)、化学・食品・環境向けの Applied Markets(13.1 億ドル)。
2026 年は上向きで、7 月期の四半期は売上 18.8 億ドル(自然増 +7.3%)、通期の見通しは売上 75 億ドル前後(自然増 +5.8〜6.0%)に引き上げた。製薬の国内回帰(リショアリング)の注文が上位 10 社のうち 5 社から入り、GLP-1 向けの売上は 70% 超伸び、中国も +9% に戻った。6 月にはバイオケア(病理の試薬・機器)を現金 9.5 億ドルで買い、純有利子負債は約 22 億ドル(利益の 1.6 倍)。
市場 × シェア × 価格で 3 部門を積むと、中立の売上は 2035 年 10 月期に 123 億ドル(今の約 1.75 倍、年 +5.8%)、営業利益率は GAAP で 21% から 27% へ上がり、純利益は 2035 年に 26 億ドル。資本コストは 8.0%、成熟後の PER は利益ベースの正当化 PER 17.4 倍(g 4%・ROE 18%・RONIC 13.1%)の 8 割の 13.9 倍に置き、2035 年の時価総額は 367 億ドルと今(493 億ドル)の約 4 分の 3。割り引くと今の値段の約 5 割にしかならない。バリュー投資の観点では、事業の質への確信は高いが、質の高さは今の PER 38 倍にすでに織り込まれている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家なら、まず 10 年後を問う。分析機器と消耗品は、製薬・食品・環境の検査がある限り必要で、事業が消える心配は小さい。堀は据え付け台数と規制に結びついた方法で、広がるというより今の強さを保つ形である。ただ機器そのものは競争的で、堀の厚いのは売上の 4 割強を占める消耗品・保守(CrossLab)だけとみる。
オーナー利益を見る。GAAP の純利益は 2026 年に 13〜14 億ドル、フリーキャッシュフローは 12〜16 億ドルで、時価総額 488 億ドルに対しては 2.5〜3.3%。無リスク金利(5%)を下回り、この差は 10 年間の成長と利益率の改善への前払いである。会社の調整後の利益(約 17.5 億ドル、株式報酬と買収の償却を戻した値)で見ても 3.6% で、足し戻しをしない GAAP で測る。
安全域では、中立の 10 年後の時価総額(327 億ドル)は今の約 3 分の 2 で、割り引けば今の約 4 割しか見合わない。楽観でも 10 年後 557 億ドル(今の 1.1 倍)は、割り引くと今の約 7 割(還元を足しても約 9 割)で、楽観の筋書きですら今の値段に届かない。事業への確信は高いが、払う値段に安全域が無い。買う側として魅力が出るのは、時価総額が今の 4 割ほどまで下がった所だろう。
何で稼ぐ会社か
3 つの部門で成り立つ。LDG(ライフサイエンス・診断市場、2025 年 27.3 億ドル、営業利益率 19.7%)は、製薬・バイオ医薬の研究・品質管理に使う液体クロマトグラフ(LC)と LC/MS(質量分析)、細胞の分析機、病理診断(ダコの免疫染色の機器と試薬)、がん薬の効き目を調べる同伴診断(キイトルーダ向けの PD-L1 検査など)、ゲノム解析の試薬、そして医薬品の原料になる核酸(オリゴ)の受託製造(特殊 CDMO。コロラド州の工場)を束ねる。2026 年 6 月に買ったバイオケア・メディカルは免疫染色の試薬・機器で、この部門に入る(売上は 2025 年に 0.9 億ドル超)。
CrossLab(ACG、29.1 億ドル、営業利益率 32.5%)は、カラム・ガス・バイアルなどの消耗品、保守契約、機器の修理、ラボの運用の代行で、アジレントの機器だけでなく他社の機器にも売る。使うたびに繰り返し売れるため、景気で売上が崩れにくく、会社の利益の半分強を稼ぐ。新しい機器は保証が切れる 12〜18 か月後から保守収入が付く。
Applied Markets(AMG、13.1 億ドル、22.9%)は、ガスクロマトグラフ・ICP-MS(金属の分析)・分光器を、化学・エネルギー・食品・環境(PFAS=有機フッ素化合物の検査)・先端材料(半導体・AI のインフラ向けは売上の 3〜4%)・法科学へ売る。景気と、中国や欧州の化学産業に左右される。
地域は米国・欧州・中国が大きく、中国は 1 割台半ばとみる(推定)。顧客は製薬・バイオが最大(推定で売上の 4 割台)で、診断・臨床、化学・環境・食品、大学・政府が続く。2026 年は価格が 3 四半期とも約 2% 上がり、経費削減の計画(イグナイト)と合わせて利益率が上がっている。
優良さと弱いところ
堀は 3 つ。第 1 は据え付け台数の多さと切り替えの費用で、製薬の品質管理に使う LC の方法は規制当局に届けた手順に結びついており、機器を他社に替えるには方法の再確認が要る。据え付けた機器の保守・消耗品が CrossLab の継続収入になる(国内回帰の対象 45 か所だけで約 1 万 5 千台が据え付け済み、と会社は説明する)。第 2 は規模と幅で、LC と LC/MS でサーモフィッシャー・サイエンティフィックと並ぶ 2 強に入り、ウォーターズ・サイエックス(ダナハーの傘下)・島津製作所・ブルカーが続く。ガスクロマトグラフでは世界最大級である。第 3 は価格を決める力で、2026 年は計画の 1% を上回る約 2% の値上げを 3 四半期続けた。
資本効率は良い。ROE は 2025 年 10 月期で 19.3%(税率が低かった分を戻すと 18% 前後)、フリーキャッシュフロー(11.5 億ドル)は営業 CF の約 7 割で、純利益とほぼ同じ。のれんは 50 億ドルあるが、買収は 1 件 10 億ドル前後に収まり、ダナハーのようにのれんが利益を薄めてはいない。営業利益率は 2009 年に 7.5% まで落ちたが、2021 年以降は 21〜25% を保つ。
弱みは 3 つ。LC と LC/MS の機器は競合が多く、機器そのものの価格は競争的である。大学・政府向けは 2026 年 7 月期に -3%、中国の機器は国産品の追い上げを受ける。核酸の受託製造は顧客数が少なく、特定の薬の売れ行きに左右される。経営は 2024 年からのパドレイグ・マクドネル氏の下で、規律のある買収(小さく買い、のれんを積み上げすぎない)と自社株買いを続けている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
主な市場は 3 つ。①ライフサイエンス・診断:製薬・バイオの研究開発費に連動する分析機器・試薬・病理診断(推定で世界 420 億ドル)、核酸の受託製造。バイオ医薬と GLP-1 薬の製造・品質管理が伸びを引っ張り、2026 年 7 月期の製薬向けは +12%、GLP-1 向けは +70% 超。米国の薬価政策(最恵国待遇・関税)に応じて、製薬会社が米国に工場を戻す動きが始まり、アジレントは 2030 年までに 10 億ドルの機会があり、その 3 分の 1 以上を取るとする。②分析ラボの消耗品・保守(推定 330 億ドル):据え付け台数に連動し、機器の売上より安定している。③化学・環境・食品・材料向けの分析機器(推定 130 億ドル):PFAS 規制で環境検査が +20%、半導体・AI は 2 桁、化学・エネルギーは 1 桁前半。
循環でいえば、2023〜24 年は製薬の在庫調整と中国の景気後退で売上が 68 億ドルから 65 億ドルへ減り、2025 年に自然増 +4.9%、2026 年は +6% 近くへ戻った局面。バイオ医薬の資金調達は 2026 年上半期で 600 億ドルと前の半期の 2 倍で、研究開発費は回復に入っている。他方、米国の大学・政府向けは国立衛生研究所(NIH)の予算の不確実さで -3%。
競争は、LC・LC/MS でサーモ・ウォーターズ・サイエックス・島津製作所。ウォーターズは 2026 年 2 月に BD のバイオサイエンス・診断事業を取り込み、売上は 64 億ドル規模でアジレントの 75 億ドルに迫る。病理診断はロシュ(ベンタナ)・ダナハー(ライカ・バイオシステムズ)、核酸の受託製造はニットー・アヴェシア・バッヘム・メルク KGaA などが競う。構造の変化は、①製薬の国内回帰、②中国の国産化(購買の国産優先)、③分析の AI 化・自動化、④関税。分かれ目は、製薬の研究開発費、核酸 CDMO の需要、中国、大学・政府の予算である。
資本政策と M&A
還元は配当(2025 年 2.8 億ドル、年 4〜5% 増)と自社株買い(2025 年 4.3 億ドル、2026 年は 9 か月で 3.0 億ドル)。発行株数は 2025 年 10 月末の 2.83 億株から 2026 年 7 月末の 2.82 億株へ減り、株式報酬(年 1.3 億ドル)の増える分を差し引いた正味の還元は年 5〜6 億ドル。フリーキャッシュフローは 2025 年 11.5 億ドル(営業 CF 15.6 億ドル − 設備投資 4.1 億ドル)。
M&A は小さく買う型で、2026 年 6 月のバイオケア(9.5 億ドル、売上の約 10 倍。免疫染色で LDG の診断を厚くする)が直近。のれんは 50 億ドルまで増え、買収の償却は GAAP の費用に入れる。純有利子負債は約 22 億ドル(時価総額の 4.5%、利益の 1.6 倍)で、純レバレッジは約 1 倍と低く、借り換えは新しい金利(約 5.75%)に切り替わる。会社は 2026 年の事業費に、核酸 CDMO の新ライン(Train C)を 2027 年春に動かす設備投資(年 4.5 億ドル)を入れる。
今後の鍵は、レバレッジに余裕があるうちに大型買収に動くのか、自社株買いを増やすのか。時価総額 488 億ドルは買われる側としては大きく、再編の可能性は低い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
製薬の研究開発と製造の投資が戻っている。2026 年 7 月期の製薬向けは +12%、バイオ医薬は 2 桁、GLP-1 向けは +70% 超で、バイオ医薬の資金調達は 2026 年上半期に 600 億ドルと前の半期の 2 倍になった。米国の薬価政策で製薬会社が米国に工場を戻す動きは、上位 10 社のうち 5 社から初回の注文が入り、2030 年までに 10 億ドルの機会(その 3 分の 1 以上を取る)が見込まれる。工場が新設されれば、LC・LC/MS・ICP-MS が据え付けられ、12〜18 か月後から CrossLab の保守・消耗品が付く。
核酸の受託製造(特殊 CDMO)は 7 月期に +30% で、中期は 2 桁半ば、新ライン(Train C)の能力の大半は予約済み。価格は 3 四半期とも約 2% で計画の倍、イグナイトの経費削減で営業利益率は今期だけで 100〜130bp 上がり、会社の長期目標(2028 年から自然増 5〜7%、利益率は年 50〜100bp 改善)の上側にいる。中国は +9% に戻り、食品・製薬・PFAS 検査の契約を取った。消耗品・保守が売上の 4 割強で、純レバレッジは 1 倍、フリーキャッシュフローの転換率は 96% と、安定と成長を併せ持つ。
慎重な見方
今の PER 38 倍は、過去 19 期の中央値(29.8 倍)を上回り、成長の回復と利益率の改善をすでに織り込んでいる。2025 年 10 月期の純利益は税率 9% の恩恵を含み、通常の税率(13〜15%)では 12 億ドル台。ROE は 18% で、成熟後の利益ベースの正当化 PER(RONIC 13.1%・g 4%)は 17.4 倍が上限で、中立はその 8 割の 13.9 倍にとどまる。バイオケアは売上の約 10 倍の 9.5 億ドルを払い、収益率が資本コスト(8.0%)を超えるかは数年先の話である。
2026 年 7 月期は診断が +6% で計画の高 1 桁に届かず、大学・政府は -3%、化学・エネルギーは 1 桁前半に鈍り、核酸 CDMO は 10 月期に前年の反動で横ばいが見込まれる。同伴診断はキイトルーダの特許切れ(2028 年)が近づく。関税の還付(7 月期に純 0.2 億ドル)は一度きりで、10 月期の見通しには入れていない。中国は国産品の追い上げ、ウォーターズは BD の統合で規模を増し、サーモは 2 強の一角として価格で攻める。機器は競争的で、2023〜24 年のように製薬が在庫調整に入れば売上は減る。成熟後の倍率が 14 倍弱へ縮めば、10 年後の時価総額は今の約 4 分の 3 で、割り引けば今の値段の半分ほど。
どちらに重みを置いたか
事業の勢いは強気の見方が強い。2026 年の勢い(見通しの引き上げ・製薬の注文・価格 +2%)は確かだが、10 年の先は、核酸 CDMO の需要の持続・中国の国産化・競合の再編という不確かさが大きく、楽観とやや楽観 32%、やや悲観と悲観 32% と、悲観側を少し厚くした。
値段の議論は慎重な見方が勝つ。事業の質を高く評価しても、利益ベースの正当化 PER(g 4%・ROE 18%・RONIC 13.1%・k 8.0%)は 17.4 倍が上限で、中立はその 8 割の 13.9 倍。今の 38 倍の 3 分の 1 ほど。楽観の筋書き(10 年後 619 億ドル)でも割り引くと今の値段に届かない。結論は「優れた事業だが、値段は高すぎる」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 124.11 ドル354 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 39.67 ドル113 億ドル)。 今の値に割り戻すと 84.49 ドル241 億ドル、今との差 −51.4%、 期待の年率 −0.6%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 217.19 ドル619 億ドル | 48.77 ドル139 億ドル | +53.0% | +4.3% | 26.60 ドル76 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 165.75 ドル472 億ドル | 44.21 ドル126 億ドル | +20.7% | +1.9% | 46.19 ドル132 億ドル |
| 中立 | 36% | 128.67 ドル367 億ドル | 41.05 ドル117 億ドル | −2.4% | −0.2% | 61.10 ドル174 億ドル |
| やや悲観 | 22% | 70.95 ドル202 億ドル | 35.44 ドル101 億ドル | −38.8% | −4.8% | 23.40 ドル67 億ドル |
| 悲観 | 10% | 40.00 ドル114 億ドル | 24.91 ドル71 億ドル | −62.7% | −9.4% | 6.49 ドル19 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 124.11 ドル354 億ドル | 39.67 ドル113 億ドル | −5.8% | −0.6% | 163.78 ドル467 億ドル |
今の株価時価総額 173.89 ドル496 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:製薬の国内回帰と GLP-1 の製造が 10 年続き、核酸 CDMO が第 2 の柱に育つ 利益 37 億ドル · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 217.19 ドル619 億ドル
製薬の国内回帰(約 10 億ドル)と GLP-1・バイオ医薬の製造が 10 年続き、LC・LC/MS の据え付け台数が増えて保守・消耗品が積み上がる。核酸の受託製造は 2 桁成長が続いて LDG の柱になり、シェアは 7.8% へ上がる。価格は +3%(物価に届かないが、機器のミックスと保守の値上げで近づく)。売上は 158 億ドル(LDG 75 億ドル、CrossLab 57 億ドル、Applied Markets 26 億ドル)、GAAP の営業利益は 45.9 億ドル(29.1%)、純利益は 37.4 億ドル。GAAP の営業利益率は年 0.8 ポイントで 29% へ。ウォーターズ・サーモとの競争は規模の利益で勝ち、中国は国産品と共存できる。M&A は年 5〜10 億ドルの小さな買収を続け、還元は 10 年で 139 億ドル。
- ライフサイエンス・診断市場(LDG・バイオケア含む):数量 56.0(数量=実質市場規模(2025 年価格の億ドル)× シェア)× 価格 134(価格指数(2025 年 = 100)。物価 3.5% より遅れて年 +2.5%)→ 売上 75 億ドル・営業利益 21 億ドル。市場 実質 年 +5.5%(2025 年の 420 億ドルから 717 億ドル)・シェア 7.8%(今 6.7%)・価格 年 +3.0%(指数 134)
- CrossLab(消耗品・保守・ラボ運用):数量 42.1(数量=実質市場規模(2025 年価格の億ドル)× シェア)× 価格 134(価格指数(2025 年 = 100)。物価 3.5% より遅れて年 +2.5%)→ 売上 57 億ドル・営業利益 21 億ドル。市場 実質 年 +3.0%(2025 年の 330 億ドルから 444 億ドル)・シェア 9.5%(今 8.8%)・価格 年 +3.0%(指数 134)
- Applied Markets(化学・食品・環境・材料):数量 19.1(数量=実質市場規模(2025 年価格の億ドル)× シェア)× 価格 134(価格指数(2025 年 = 100)。物価 3.5% より遅れて年 +2.5%)→ 売上 26 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場 実質 年 +3.3%(2025 年の 130 億ドルから 180 億ドル)・シェア 10.6%(今 10.1%)・価格 年 +3.0%(指数 134)
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 22.3%(この筋書きの純利益 37.4 ÷ 自己資本 168 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC = k 8.00%(基本 8.0% + quality +0.0%)+ 1/2 ×(ROE − k)= 15.1%(堀は普通:据え付け台数と規制に届けた方法に結びつく消耗品・保守(売上の 4 割強)は厚いが、機器そのものは競争的で、強い堀(2/3)とは見ない)。g は 4.0%(上限の 4% で止める。内訳の目安:市場の実質 年 3.0〜5.5% × シェアの横ばい × 価格 年 3.0%)。 正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 18.4 倍 に対し、90% の 16.6 倍に置いた(消耗品・保守が 4 割で質は高いが、機器は競争的で製薬・化学の循環と中国の国産化に振れる、業種共通の物差しどおり)。時価総額 = 純利益 37.4 億ドル × 16.6 倍 = 619.0 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:製薬の国内回帰・GLP-1・バイオ医薬の品質管理が 10 年続き、アジレントが取り分を増やす展開。条件が揃う必要があり 10%。
やや楽観 22% やや楽観:自然増 6.5%、機器と保守の据え付け台数が着実に積み上がる 利益 31 億ドル · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 165.75 ドル472 億ドル
自然増 6.5%、実質の市場の伸びは LDG 4.7%・CrossLab 2.6%・Applied Markets 2.5%、価格は +2.75%。LDG のシェアが 6.7% から 7.4% へ上がるのは、核酸の受託製造と病理診断(バイオケア)による。売上は 139 億ドル(LDG 64 億ドル、CrossLab 52 億ドル、Applied Markets 23 億ドル)、GAAP の営業利益は 38.6 億ドル(27.8%)、純利益は 31.1 億ドル。利益率は年 0.6 ポイントずつ改善し 27.8%。10 年で 126 億ドルを還元し、小さな買収も続ける。
- ライフサイエンス・診断市場(LDG・バイオケア含む):数量 48.9(数量=実質市場規模(2025 年価格の億ドル)× シェア)× 価格 131(価格指数(2025 年 = 100)。物価 3.5% より遅れて年 +2.5%)→ 売上 64 億ドル・営業利益 17 億ドル。市場 実質 年 +4.7%(2025 年の 420 億ドルから 665 億ドル)・シェア 7.3%(今 6.7%)・価格 年 +2.8%(指数 131)
- CrossLab(消耗品・保守・ラボ運用):数量 39.5(数量=実質市場規模(2025 年価格の億ドル)× シェア)× 価格 131(価格指数(2025 年 = 100)。物価 3.5% より遅れて年 +2.5%)→ 売上 52 億ドル・営業利益 19 億ドル。市場 実質 年 +2.6%(2025 年の 330 億ドルから 427 億ドル)・シェア 9.2%(今 8.8%)・価格 年 +2.8%(指数 131)
- Applied Markets(化学・食品・環境・材料):数量 17.2(数量=実質市場規模(2025 年価格の億ドル)× シェア)× 価格 131(価格指数(2025 年 = 100)。物価 3.5% より遅れて年 +2.5%)→ 売上 23 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場 実質 年 +2.5%(2025 年の 130 億ドルから 166 億ドル)・シェア 10.3%(今 10.1%)・価格 年 +2.8%(指数 131)
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 20.1%(この筋書きの純利益 31.1 ÷ 自己資本 155 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC = k 8.00%(基本 8.0% + quality +0.0%)+ 1/2 ×(ROE − k)= 14.0%(堀は普通:据え付け台数と規制に届けた方法に結びつく消耗品・保守(売上の 4 割強)は厚いが、機器そのものは競争的で、強い堀(2/3)とは見ない)。g は 4.0%(上限の 4% で止める。内訳の目安:市場の実質 年 2.6〜4.7% × シェアの横ばい × 価格 年 2.8%)。 正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 17.9 倍 に対し、85% の 15.2 倍に置いた(消耗品・保守が 4 割で質は高いが、機器は競争的で製薬・化学の循環と中国の国産化に振れる、業種共通の物差しどおり)。時価総額 = 純利益 31.1 億ドル × 15.2 倍 = 472.4 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:据え付け台数の増加と消耗品・保守の積み上げで、長期目標の中位(自然増 6〜6.5%)を保つ展開。22%。
中立 36% 中立:自然増 5.8%、利益率は GAAP で 27% 近くへ。堅い高品質の分析機器会社として評価 利益 26 億ドル · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 128.67 ドル367 億ドル
LDG は市場の実質 年 +4.0%(バイオ医薬・診断・核酸)と価格 +2.5% で売上 56 億ドル(シェア 7.0%)、CrossLab は実質 +2.3% で 48 億ドル(シェア 9.05%)、Applied Markets は PFAS と先端材料が化学の鈍さを相殺して実質 +1.6%、20 億ドル。価格は +2.5%(実績約 2% に近く、機器の競争と消耗品の契約で物価 3.5% に届かない)。売上は 123 億ドル(LDG 56 億ドル、CrossLab 48 億ドル、Applied Markets 20 億ドル)、GAAP の営業利益は 32.9 億ドル(26.7%)、純利益は 26.4 億ドル。GAAP の営業利益率は年 0.5 ポイントずつ上がり 21.3% から 26.7% へ(上の長期目標の下端に近い)。純利息は借り換えで 1.9 億ドル、税率 15%。10 年で 117 億ドルを正味で還元し(純利益の約 6 割)、残りは小さな買収と返済に回る。
- ライフサイエンス・診断市場(LDG・バイオケア含む):数量 43.5(数量=実質市場規模(2025 年価格の億ドル)× シェア)× 価格 128(価格指数(2025 年 = 100)。物価 3.5% より遅れて年 +2.5%)→ 売上 56 億ドル・営業利益 14 億ドル。市場 実質 年 +4.0%(2025 年の 420 億ドルから 622 億ドル)・シェア 7.0%(今 6.7%)・価格 年 +2.5%(指数 128)
- CrossLab(消耗品・保守・ラボ運用):数量 37.5(数量=実質市場規模(2025 年価格の億ドル)× シェア)× 価格 128(価格指数(2025 年 = 100)。物価 3.5% より遅れて年 +2.5%)→ 売上 48 億ドル・営業利益 17 億ドル。市場 実質 年 +2.3%(2025 年の 330 億ドルから 414 億ドル)・シェア 9.0%(今 8.8%)・価格 年 +2.5%(指数 128)
- Applied Markets(化学・食品・環境・材料):数量 15.4(数量=実質市場規模(2025 年価格の億ドル)× シェア)× 価格 128(価格指数(2025 年 = 100)。物価 3.5% より遅れて年 +2.5%)→ 売上 20 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 実質 年 +1.6%(2025 年の 130 億ドルから 152 億ドル)・シェア 10.1%(今 10.1%)・価格 年 +2.5%(指数 128)
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 18.2%(この筋書きの純利益 26.4 ÷ 自己資本 145 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC = k 8.00%(基本 8.0% + quality +0.0%)+ 1/2 ×(ROE − k)= 13.1%(堀は普通:据え付け台数と規制に届けた方法に結びつく消耗品・保守(売上の 4 割強)は厚いが、機器そのものは競争的で、強い堀(2/3)とは見ない)。g は 4.0%(上限の 4% で止める。内訳の目安:市場の実質 年 2.3〜4.0% × シェアの横ばい × 価格 年 2.5%)。 正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 17.4 倍 に対し、80% の 13.9 倍に置いた(消耗品・保守が 4 割で質は高いが、機器は競争的で製薬・化学の循環と中国の国産化に振れる、業種共通の物差しどおり)。時価総額 = 純利益 26.4 億ドル × 13.9 倍 = 366.7 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:市場の伸び(実質 3% 台前半)・シェアは横ばい・価格は物価にやや届かず、利益率は年 0.5 ポイント改善。36%。
やや悲観 22% やや悲観:中国の国産化と競合の再編で自然増 3.5%、利益率の改善が止まる 利益 19 億ドル · PER 10.7 倍 · 株価時価総額 70.95 ドル202 億ドル
中国の国産化で機器の売上が伸びず、ウォーターズ・サーモの再編で LC の価格競争が強まる。核酸の受託製造は顧客の集中と過剰能力で伸びが鈍る。数量は実質で LDG 2.8%・CrossLab 1.5%・Applied Markets 0.8%、価格は +2%。売上は 101 億ドル(LDG 44 億ドル、CrossLab 40 億ドル、Applied Markets 17 億ドル)、GAAP の営業利益は 24.2 億ドル(24.0%)、純利益は 18.9 億ドル。LDG のシェアは 6.5% へ下がる。利益率の改善は 21.3% から 24.0% で止まる。バイオケアなどの買収の収益が資本コストに届かず、のれんの一部を減損し、10 年で 101 億ドルを還元する。
- ライフサイエンス・診断市場(LDG・バイオケア含む):数量 36.0(数量=実質市場規模(2025 年価格の億ドル)× シェア)× 価格 122(価格指数(2025 年 = 100)。物価 3.5% より遅れて年 +2.5%)→ 売上 44 億ドル・営業利益 10 億ドル。市場 実質 年 +2.8%(2025 年の 420 億ドルから 554 億ドル)・シェア 6.5%(今 6.7%)・価格 年 +2.0%(指数 122)
- CrossLab(消耗品・保守・ラボ運用):数量 32.9(数量=実質市場規模(2025 年価格の億ドル)× シェア)× 価格 122(価格指数(2025 年 = 100)。物価 3.5% より遅れて年 +2.5%)→ 売上 40 億ドル・営業利益 14 億ドル。市場 実質 年 +1.5%(2025 年の 330 億ドルから 383 億ドル)・シェア 8.6%(今 8.8%)・価格 年 +2.0%(指数 122)
- Applied Markets(化学・食品・環境・材料):数量 13.8(数量=実質市場規模(2025 年価格の億ドル)× シェア)× 価格 122(価格指数(2025 年 = 100)。物価 3.5% より遅れて年 +2.5%)→ 売上 17 億ドル・営業利益 4 億ドル。市場 実質 年 +0.8%(2025 年の 130 億ドルから 141 億ドル)・シェア 9.8%(今 10.1%)・価格 年 +2.0%(指数 122)
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 14.7%(この筋書きの純利益 18.9 ÷ 自己資本 129 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC = k 8.00%(基本 8.0% + quality +0.0%)+ 1/2 ×(ROE − k)= 11.3%(堀は普通:据え付け台数と規制に届けた方法に結びつく消耗品・保守(売上の 4 割強)は厚いが、機器そのものは競争的で、強い堀(2/3)とは見ない)。g は 4.0%(上限の 4% で止める。内訳の目安:市場の実質 年 1.5〜2.8% × シェアの横ばい × 価格 年 2.0%)。 正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 16.2 倍 に対し、66% の 10.7 倍に置いた(消耗品・保守が 4 割で質は高いが、機器は競争的で製薬・化学の循環と中国の国産化に振れる、業種共通の物差しどおり)。時価総額 = 純利益 18.9 億ドル × 10.7 倍 = 202.2 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:中国の国産化と、ウォーターズ・サーモの再編で価格が下がり、核酸 CDMO も過剰になる展開。製薬の研究開発費が伸びない可能性もあり、22%。
悲観 10% 悲観:構造的に負ける(中国の国産化・核酸 CDMO の過剰・機器の値下げ・買収の失敗) 利益 10 億ドル · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 40.00 ドル114 億ドル
構造的に負ける。中国の売上(1 割台半ば)が国産品に置き換わって半減し、核酸の受託製造は能力過剰で価格が崩れ、機器は値下げが続き、買収で増やしたのれんの一部を減損する。数量は実質で LDG 1.0%・CrossLab 0.5%・Applied Markets -0.5%、価格は +1.5%。売上は 75 億ドル(LDG 30 億ドル、CrossLab 32 億ドル、Applied Markets 13 億ドル)、GAAP の営業利益は 14.0 億ドル(18.6%)、純利益は 10.0 億ドル。GAAP の営業利益率は 18.6%、純利息は 2.2 億ドル。優良企業ではなく普通の分析機器会社として評価され、増分の ROE 12%・g 3% の構造的に負けた会社の式の値は 13.5 倍だが、この筋書きの ROE(8.7%)は k 8.0% をわずかに上回るだけで正当化 PER の上限は 13.0 倍のため、その 9 割弱の 11.4 倍(自己資本 115 億ドル、PBR 約 1.0 倍)に置く。
- ライフサイエンス・診断市場(LDG・バイオケア含む):数量 26.0(数量=実質市場規模(2025 年価格の億ドル)× シェア)× 価格 116(価格指数(2025 年 = 100)。物価 3.5% より遅れて年 +2.5%)→ 売上 30 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 実質 年 +1.0%(2025 年の 420 億ドルから 464 億ドル)・シェア 5.6%(今 6.7%)・価格 年 +1.5%(指数 116)
- CrossLab(消耗品・保守・ラボ運用):数量 27.8(数量=実質市場規模(2025 年価格の億ドル)× シェア)× 価格 116(価格指数(2025 年 = 100)。物価 3.5% より遅れて年 +2.5%)→ 売上 32 億ドル・営業利益 10 億ドル。市場 実質 年 +0.5%(2025 年の 330 億ドルから 347 億ドル)・シェア 8.0%(今 8.8%)・価格 年 +1.5%(指数 116)
- Applied Markets(化学・食品・環境・材料):数量 10.9(数量=実質市場規模(2025 年価格の億ドル)× シェア)× 価格 116(価格指数(2025 年 = 100)。物価 3.5% より遅れて年 +2.5%)→ 売上 13 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 実質 年 -0.5%(2025 年の 130 億ドルから 124 億ドル)・シェア 8.8%(今 10.1%)・価格 年 +1.5%(指数 116)
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 8.7%(この筋書きの純利益 10.0 ÷ 自己資本 115 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC = k 8.00%(基本 8.0% + quality +0.0%)+ 1/2 ×(ROE − k)= 8.3%(堀は普通:据え付け台数と規制に届けた方法に結びつく消耗品・保守(売上の 4 割強)は厚いが、機器そのものは競争的で、強い堀(2/3)とは見ない)。g は 4.0%。 正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 13.0 倍 に対し、88% の 11.4 倍に置いた(構造的に負けた会社:核酸の受託製造が失敗し、買収ののれんの一部を減損し、中国の国産化で機器のシェアを失う。ROE が k をわずかに上回る程度で、上限の 9 割弱に置く)。時価総額 = 純利益 10.0 億ドル × 11.4 倍 = 114.0 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:構造的に負けて優良ではなくなる展開。中国の売上が半減、核酸 CDMO の失敗、機器の値下げ、買収の減損が重なる。10%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
ライフサイエンス・診断市場(LDG・バイオケア含む)
製薬・バイオ向けの LC・LC/MS・細胞分析、病理診断(ダコ、バイオケア)、同伴診断、ゲノム試薬、核酸の受託製造(特殊 CDMO)。景気と製薬の研究開発費に連動し、成長が最も高い。
| 数量数量=実質市場規模(2025 年価格の億ドル)× シェア | 価格価格指数(2025 年 = 100)。物価 3.5% より遅れて年 +2.5% | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 28.2 | 100 | 28 | 6 |
| 10 年後 中立 | 43.5 | 128 | 56 | 14 |
取り方:2025 年 10 月期の LDG の売上 27.26 億ドルに、2026 年 6 月に買ったバイオケア(売上 約 0.9 億ドル、営業利益率 約 22%)を足した pro forma 28.2 億ドル。市場は製薬・バイオ向けの分析機器(約 150 億ドル)+病理・同伴診断・ゲノム(約 180 億ドル)+核酸の受託製造(約 90 億ドル)の合計約 420 億ドル(担当の推定。出典なし)で、シェアは 6.7%。会計の営業利益率は 19.7%(バイオケアを足すと 19.9%)。価格は 2026 年の実績が約 2% なので、物価 3.5% より遅れて年 +2.5%(機器は競争で、消耗品・診断の試薬は契約で上げにくい)、残りを実質の数量とした。競合は LC・LC/MS がサーモフィッシャー・サイエンティフィック、ウォーターズ、サイエックス(ダナハー)、島津製作所、病理がロシュ・ライカ(ダナハー)、核酸の受託がニットー・アヴェシア・バッヘム・メルク KGaA。
CrossLab(消耗品・保守・ラボ運用)
カラム・ガス・バイアルなどの消耗品、保守契約、機器の修理、ラボ運用の代行。アジレント以外の機器にも売る。繰り返し売れる安定した部門で、利益率が最も高い。
| 数量数量=実質市場規模(2025 年価格の億ドル)× シェア | 価格価格指数(2025 年 = 100)。物価 3.5% より遅れて年 +2.5% | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 29.1 | 100 | 29 | 9 |
| 10 年後 中立 | 37.5 | 128 | 48 | 17 |
取り方:2025 年 10 月期の売上 29.08 億ドル、セグメント営業利益率 32.5%。市場は分析ラボの消耗品・マルチベンダーの保守・ラボ運用で約 330 億ドル(推定。出典なし)、シェア 8.8%。2026 年 7 月期は +6%(自然増 +5%)、営業利益率は 34.3%。数量は据え付け台数と稼働に比例して実質年 +2.6%、価格は契約更改で年 +2.5%(消耗品の値上げは物価に届かない)。競合はサーモフィッシャー・サイエンティフィック、ウォーターズ、島津製作所と、機器メーカーに属さない保守専業・消耗品メーカー(メルク KGaA・ウォーターズの消耗品など)。
Applied Markets(化学・食品・環境・材料)
ガスクロマトグラフ・ICP-MS・分光器を化学・エネルギー・食品・環境(PFAS)・先端材料(半導体・AI)・法科学へ売る。景気と中国・欧州の化学産業に左右される。
| 数量数量=実質市場規模(2025 年価格の億ドル)× シェア | 価格価格指数(2025 年 = 100)。物価 3.5% より遅れて年 +2.5% | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 13.1 | 100 | 13 | 3 |
| 10 年後 中立 | 15.4 | 128 | 20 | 5 |
取り方:2025 年 10 月期の売上 13.14 億ドル、セグメント営業利益率 22.9%(2026 年 7 月期は 24.9%)。市場は化学・エネルギー・食品・環境・材料向けの分析機器で約 130 億ドル(推定。出典なし)、シェア 10.1%。数量は PFAS 規制と先端材料で伸びる一方、化学・エネルギーは鈍く、実質年 +1.6%(10 年)。価格は競争が強く年 +2.5%。競合はサーモ、島津製作所、ブルカー、ウォーターズ(LC)。
リスクと懸念
製薬の研究開発と設備投資の循環
売上の 4 割台(推定)が製薬・バイオで、2023〜24 年のように在庫調整に入れば売上は 68 億ドルから 65 億ドルへ減った。2026 年は資金調達の回復(2026 年上半期に 600 億ドル)で戻っているが、金利が高いままで資金調達が止まれば、機器の発注が先送りされる。ただし消耗品・保守が 4 割あり、売上の落ち込みは機器だけにとどまる。
中国の国産化と米中の分断
中国は 1 割台半ば(推定)で、2026 年 7 月期は +9% と戻したが、通期の見通しは横ばいから 1 桁半ばに上げたばかり。政府調達の国産優先と、国産の LC・質量分析の台頭、関税・輸出規制が重なれば、機器と保守の両方が置き換えられる。製薬の CXO(受託研究)の 2 社と PFAS 検査の契約を取った勢いが続くかが分かれ目である。
核酸の受託製造(特殊 CDMO)の顧客集中
7 月期に +30% と伸びたが、10 月期は前年の反動と規制提出の時期で横ばいが見込まれる。顧客数が少なく、特定の薬の承認・売れ行きで受注が大きく動く。新ライン(Train C)は 2027 年春に稼働し 6〜8 四半期で満稼働の計画で、稼働率が上がらなければ減価償却と人件費だけが先行する。ニットー・アヴェシア・バッヘム・メルク KGaA が増設を進めれば価格も下がる。
競合の規模拡大(ウォーターズ・サーモ)
ウォーターズは 2026 年 2 月に BD のバイオサイエンス・診断事業を統合し、売上は 64 億ドル規模でアジレントの 75 億ドルに迫った。サーモフィッシャー・サイエンティフィックは分析機器・消耗品・受託研究(PPD)を束ねて顧客を囲い込む。LC・LC/MS の機器の価格競争が強まれば、2026 年の約 2% の値上げは続かない。
大学・政府の予算
2026 年 7 月期は -3%(中国の弱さと、政府の資金が国防に移った影響)。国立衛生研究所(NIH)の予算が恒常的に縮めば、LC/MS・ゲノム・細胞分析の売上が構造的に減る。売上に占める割合は 1 割弱とみられ、全体への影響は限られるが、サーモ・ダナハーなど競合の値引きの引き金になる。
買収の統合と資本配分
バイオケア(9.5 億ドル、売上の約 10 倍)の収益率が資本コスト(8.0%)を超えなければ価値は増えない。のれんは 50 億ドルで、ダナハーほどではないが、減損の可能性がある。純レバレッジが 1 倍と低く、余力があるぶん、次の買収が割高になるリスクがある。
倍率の縮み
今の PER 38 倍は過去 19 期の中央値(29.8 倍)を上回り、成熟後の倍率(利益ベースの正当化 PER の上限 17.4 倍、中立で置いたのは 13.9 倍)との差が大きい。事業が計画どおり進んでも、倍率が縮めば株価は伸びにくい。この会社は成長の質は高いが、倍率の縮みが最大の下振れ要因である。
今後の分かれ目
- 製薬の国内回帰が 2027 年の売上に変わり、受注残が積み上がったら
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。10 年の確率を楽観側へ 5〜10 ポイント動かし、中立の自然増も 6% から 7% 近くへ上げる。
- 製薬の設備投資が止まり、機器の受注が 2 四半期続けて減ったら
- 在庫調整の再来とみて、やや悲観・悲観の確率を上げる。CrossLab の継続収入が支えるので、純利益は 1〜2 割減にとどまる。
- 核酸の受託製造の新ライン(Train C)が計画どおり 2027 年春に動き、予約済みの能力が売上になったら
- LDG の自然増が 2 桁近くに上がり、中立の純利益が 3〜5% 増える。稼働が遅れれば減価償却だけが先行し、中立の営業利益率が 0.5 ポイント下がる。
- 中国の売上が 2 年続けて減り、国産品が製薬の購買に入ったら
- 売上の 1 割台半ばの半分が置き換わり、全社の自然増が 1 ポイント下がる。やや悲観の確率を 5 ポイント上げる。
- ウォーターズ・サーモが LC の機器で値引きを強めたら
- 約 2% の価格上昇が止まり、中立の価格を年 +1.5% へ下げて見る。純利益が 5% 下がり、CrossLab の保守契約でも割引が出る。
- 大型の買収(10 億ドル超)を割高な倍率で続けたら
- のれんと償却が増え、増分の ROE が下がるので倍率を 1〜2 倍下げて見る。自社株買いの優先が倍率を支える。
- 同伴診断の主力(キイトルーダ向け PD-L1 検査)が特許切れ(2028 年)で縮んだら
- 診断(LDG の一部)の売上が数%減るが、新しい薬の同伴診断(コンパニオン診断は 7 月期に +15% 近く)で補えるかが分かれ目になる。
見ておくもの
- 部門別の自然増(LDG・CrossLab・Applied Markets)と製薬・診断・化学・大学政府・中国の地域別の伸び
- 製薬の国内回帰の受注(注文を出した上位 10 社の数と受注残)
- 核酸の受託製造の売上(Train C の稼働率)と顧客の集中度
- GAAP と非 GAAP の営業利益率の改善幅(年 50〜100bp の目標)、価格の上昇(年約 2%)
- 純有利子負債・自社株買い・買収(バイオケアの統合)
- NIH の予算と米中の関税・輸出規制
- ウォーターズ(BD 統合後)・サーモの LC・LC/MS の受注とシェア
倍率と資本コストの決め方
今の PER 38 倍・時価総額約 488 億ドルを見る前に、LDG・CrossLab・Applied Markets の市場(実質の伸び)× シェア × 価格指数で 10 年後の売上と営業利益を積み、償却・事業整理(−3 億ドル)と利息・税率 15% を引いてから倍率を決めた。倍率は利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)、g 4%=市場の実質約 2% × シェア横ばい × 価格 年 +2.5% を上限で止める)の 7.5〜9 割(10 年の中立は上限 17.4 倍の 8 割で 13.9 倍)。k は 8.0%(quality 0)。ROE は帳簿の値。業界ノートの倍率や今の PER には寄せていない。悲観は ROE が k をわずかに超える程度なので上限の 9 割弱に置いた。結果は今の PER 38 倍の 3 分の 1 ほどで、割り引くと今の約 5 割。最後に今の値段と比べた。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β 1.16 × 5%。基本 8.0% に quality 0 を足して 8.0%。消耗品・保守が売上の 4 割強で景気に左右されにくい一方、機器は製薬・化学の設備投資で振れる。純有利子負債は時価総額の 4% で借金の上乗せは無い。個別のリスク(核酸の受託製造の顧客集中・中国・買収の統合)は k に足さず、悲観の確率とひどさで表した。存続は危うくないので上乗せ 0。
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読んだ資料
- Agilent 2025 年 10 月期 第 4 四半期・通期決算(セグメント・GAAP・2026 年見通し)
- Agilent 2026 年 7 月期 第 3 四半期決算(セグメント・貸借対照表・還元・通期見通し)
- Agilent 第 3 四半期決算説明会の要点(製薬 +12%・中国 +9%・国内回帰・価格・CDMO)
- Agilent による Biocare Medical の買収完了(9.5 億ドル、2026 年 6 月)
- Agilent 投資家説明会の長期目標(Bernstein の要約)
- Waters による BD の事業統合の完了(2026 年 2 月)
- Agilent の時価総額(2026-10-16 の終値と株数)