結論
バクスター インターナショナルは、点滴液(輸液)・輸液ポンプ・注射薬・外科用止血材を扱う医療用品・治療と、病院のベッド・患者モニタ・診断機器を扱うヘルスケアシステム・技術(旧ヒルロム)を持つ病院向けの老舗である。2025 年 1 月に腎臓ケア(Vantive)をカーライルへ売って事業を絞り、2026 年 4〜6 月期から区分を 2 つ(医療用品・治療、ヘルスケアシステム・技術)に組み替えた(旧「製薬」の注射剤は医療用品・治療に入る)。
2025 年は売上 112 億ドル、GAAP の営業利益 7 億ドル(営業利益率 6.2%)、純損失 10 億ドル。損失にはフロントラインケアののれん減損 4.9 億ドルと米国の繰延税金資産の評価引当 3.3 億ドルが入る。大容量輸液ポンプ Novum IQ は 2025 年 7 月から米国とカナダで出荷・設置を止めたままで(FDA はクラス I のリコールに分類)、再開の時期は示されていない。配当は年 0.2 億ドルほどまで削られた。
区分ごとに数量(市場の処置回数・手術件数・機器の台数)× シェア × 価格で積むと、中立は 2035 年に売上 168 億ドル・GAAP の営業利益 26 億ドル(15.6%)・純利益 18 億ドル。倍率は利益ベースの正当化 PER の 7〜10 割に置いた(moat は weak)。10 年の中立は、正当化 PER 16.6 倍(g 4.0%、RONIC 15.8%)の 8 割の 13.3 倍。確率で重ねた総合は、今の時価総額より 27% 上。結論は「やや割安」。ただし悲観(Novum が戻らず、訴訟と減損が重なる)を 15% 置くと、確率加重の価値は今の時価総額を上回る(+27%)。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、バクスターは「立派な事業が、経営の失敗で安く売られている会社」に見える。10 年後も、病院は点滴液を使い、ベッドとモニタを入れ替える。事業そのものは消えず、輸液の供給網と病院との契約という堀は、競合が簡単に壊せない。ただし堀が広がるとは言いにくい。ポンプで病院に定着しかけた機会を、品質問題でいったん失ったからだ。
オーナー利益で見ると、2026 年の GAAP の純利益はまだ 4〜5 億ドルほどで、投下した資本(自己資本 62 億ドル+純負債 73 億ドル)に対する税引き後の営業利益の利回りは 5% 前後と低い。経営が整った中立の筋書きで、2035 年に純利益 18 億ドル、事業の ROE 約 31% まで戻ると置くが、そのためには品質と供給で今後 3 年は失敗しないことが条件になる。資本配分は 2021 年のヒルロム買収で値を壊したと見る。
安全域は、悲観(ポンプが戻らず訴訟と減損が重なる)でも事業の売上は 118 億ドルを保ち、時価総額 80 億ドルと今の 131 億ドルの約 6 割に収まる点にある。一方、楽観と中立の差が大きいので、予測できる事業とは言えず、確信度は高くない。安全域を測る。正当化 PER は 16.6 倍(g 4.0%、RONIC 15.8%、k 8.50%、moat は weak)。確率で重ねた総合は、今の時価総額より 27% 上。結論は「やや割安」。
何で稼ぐ会社か
バクスターの稼ぎの柱は 3 つある。第 1 は輸液治療・基盤(2025 年の売上は推定で約 67 億ドル)で、点滴液のバッグ、輸液セット、輸液ポンプ(大容量の Novum IQ・Spectrum IQ、小型のシリンジ型)、注射薬(旧製薬)を病院へ売る。点滴液は重く運びにくいので地元の工場が要り、ノースカロライナのノースコーブ工場は米国の輸液バッグ供給の約 6 割を担ったと報じられた。病院とは購買組織(GPO)を通じた長期契約で、液・セット・ポンプを抱き合わせて売るのが型である。
第 2 は先進外科(同約 11.7 億ドル)。止血材・シーラント(ヘモパッチ・フロシールなど)で、手術件数が伸びる限り数量が増え、2026 年 4〜6 月期の有機成長は +12%、区分利益率も 28% 前後と、同社で最も質のよい成長部分である。
第 3 がヘルスケアシステム・技術(同約 30 億ドル)で、2021 年のヒルロム買収で入った病院用ベッド・患者モニタ・ケアの連携ソフト(ケア・コネクティビティ)と、診察用機器・診断のフロントラインケアからなる。のれんは 30.8 億ドルと大きいが、フロントラインケアは 2025 年 10〜12 月期に 4.85 億ドルを減損した。そのほか、Vantive 向けの製造・供給契約(MSA)が「その他」に残る(2026 年 4〜6 月期で 0.83 億ドル。数年で消える)。
収益の特徴は、数量が病院の稼働と入院・手術の件数で決まる安定した消耗品が大半で、価格は購買組織との交渉で物価に届かない一方、工場・物流・品質の維持費が高く、固定費の重い構造である。2026 年は売上 +3〜4%、調整後営業利益率 13〜14% の見通しで、2017〜2021 年の水準(GAAP で 15〜17%)より大きく低い。
優良さと弱いところ
堀は輸液の規模と病院との関係にある。点滴液は、地元に工場を持ち、安全規制(FDA の無菌製造)を満たし、全国の病院へ安定して届ける必要がある。2024 年のハリケーン・ヘリーンでノースコーブ工場が止まった時、米国の病院は輸液不足に陥り、競合の B. ブラウンやフレゼニウス カビが対応に動いても穴はすぐには埋まらなかった(工場は 2025 年 1 月に全 10 ラインが復旧)。この「代わりがすぐに利かない」性質が輸液の堀であり、病院は主要な輸液の供給元を容易に変えない。
しかし優良さは大きく傷んでいる。第 1 に品質と経営の実行力:Novum IQ の回収(重傷 79 人・死亡 2 人に関わると FDA が公表)と出荷停止の長期化、ハリケーンによる供給停止、投資家の集団訴訟、司法省の民事調査と、ここ数年のうちに問題が続いた。第 2 に資本効率:2025 年の営業利益率 6.2% に対し、同じ塊のベクトン・ディッキンソンは 15.5%、アボットは 18.6%。のれんと無形資産(合計約 89 億ドル)を、ヒルロムで買った割に稼げていない。第 3 に財務:純負債は約 73 億ドルで、配当を年 0.2 億ドルほどに削って返済を優先している。
弱みは構造というより「手当ての遅れ」で、治せるものが多い(ポンプの再開、フロントラインケアの立て直し、Vantive 切り離し後の固定費)。ただし、治るかどうかはまだ証明されていないので、筋書きの確率を悲観側に厚くした。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
医療機器の塊 D(画像・滅菌・病院向け消耗品)に属し、数量は病院の稼働と入院・手術の件数、価格は病院の購買組織との契約で決まる。業界ノートでは数量 +3%・価格 +0.5% の年 +3.5% が中立で、バクスターの輸液・病院機器もこれに近い。市場全体の医療費は年 5〜6% で伸びるが、病院の利益率は薄く、2026 年はメディケイドの縮小で価格を抑える圧力が強い。
輸液では、B. ブラウン、フレゼニウス カビ、ICU メディカル(スミス・メディカルの輸液ポンプ事業を 2022 年に買収)、ベクトン・ディッキンソンが競合する。点滴液は規制と運搬の都合で地域の供給元が決まり、価格は低いが安定している。大容量ポンプはベクトン・ディッキンソンのアラリスが首位(FDA の問題から復帰済み)、ICU メディカルが次とされ、バクスターは Novum IQ で 2025 年に 1 桁前半のシェア獲得を言っていたが、出荷停止でその勢いは止まった。ポンプは単体で儲けるより輸液セットの消耗品を抱き合わせる道具なので、止まった期間のシェアは競合に残る。
外科の止血材はジョンソン・エンド・ジョンソン(エチコン)、バクスター、ベクトン・ディッキンソンなどが競い、手術件数と症例の複雑さで伸びる。病院向けの設備(ベッド・モニタ)は、設備投資の波と保険の償還に左右され、ヒルロムは 2021 年の買収以降、期待ほど伸びていない。関税(2025〜2026 年)は原価を押し上げるが、2026 年 4〜6 月期は IEEPA 関税の還付が利益を一時的に押し上げた。全体として、業界は安定だが、バクスター固有の問題は業界の追い風を打ち消している。
資本政策と M&A
2025 年 1 月に腎臓ケア(Vantive)をカーライルへ売り、約 34 億ドルの現金(2025 年上半期の投資活動の入金)を得て返済に回した(売却益と非継続事業の損益は土台にしない)。その後も 2026 年上半期の有利子負債は 94.6 億ドル、現金 21.5 億ドル(純 73 億ドル)で、年末に純負債 ÷ EBITDA を約 3 倍へ下げる目標を掲げる。自社株買いは 2025 年・2026 年上半期ともゼロ(枠は 13 億ドル残る)。配当は大幅に削減済みで、年 0.2 億ドルほど。
買収の歴史はヒルロム(2021 年)が最大で、のれん 30.8 億ドルのうちフロントラインケアは 2025 年末に 4.85 億ドルを減損した。以後は返済を優先する方針で、大型買収は当面ない。バリュー投資の観点では、資本配分は最近 5 年で価値を壊した側(買収の割高・自社株買いの停止・減配)に評価され、改善の証拠はこれから出てくる段階にある。借り換えで金利が上がる(平均で約 3.3% から約 5.75% へ、推定)ので、返済が進まなければ利益が削られる。
株式報酬は年 1.5 億ドルほどあり、正味の還元はそれを引いて見る。まだ成立していない買収はなく、成立済みの売却だけが反映されている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
輸液は参入障壁の高い公共インフラに近い事業で、バクスターは米国の輸液バッグの約 6 割を担ってきた。2024 年のハリケーンで他社も代われないと示されたため、病院は安定供給を重視して契約を継続する。しかも悪い材料はほぼ織り込み済みである。2025 年は純損失でも、中身はフロントラインケアののれん減損 4.85 億ドルと税の評価引当 3.3 億ドルという非現金の項目で、2026 年は売上見通しを上方修正し、営業キャッシュ・フローから設備投資を引いた額は 2026 年上半期に 2.57 億ドルの黒字(前年は赤字)で、純負債も約 2 億ドル減った。
Vantive の売却で事業が絞られ、固定費の削減(事業再編費用は 2026 年上半期に 0.75 億ドル)が進み、先進外科は 12% 成長している。Novum IQ は補正策の検証試験が始まっており、再開すればポンプに抱き合わせる消耗品の数量が戻る。営業利益率が 2017〜2021 年の 15〜17% へ戻るだけで、純利益は今の数倍になる。借入金の返済で 2028 年には純負債 ÷ EBITDA が 2 倍を割り、資本配分も株主還元へ向かう。
慎重な見方
ここ数年、品質(ポンプのリコール)、供給(ハリケーン)、買収(ヒルロム)、財務(減配・無配当に近い)と問題が続いており、経営の実行力に疑いがある。Novum IQ は FDA の重傷 79 人・死亡 2 人の報告を受けてクラス I のリコールとなり、補正策は検証の初期段階で、再開時期を示せない。再開が遅れるほど、ベクトン・ディッキンソンのアラリスや ICU メディカルに病院を取られ、セット・液の抱き合わせも失う。
ヒルロムは 30.8 億ドルののれんを抱えるのに、フロントラインケアは減損、区分の営業利益率は前年の 18.9% から 17.4% へ下がった(上半期)。Vantive 切り離しで規模の利益が減り、固定費が残る。投資家の集団訴訟・司法省の調査・ヒルロムへの独禁法訴訟は費用が読めない。借入金は 94.6 億ドルで、借り換えで金利が平均で約 3.3% から 5.75% へ上がる(推定)ため、利益が削られる。調整後の利益(株式報酬・償却の戻し)は見かけが良いが、GAAP の純利益はまだ 4〜5 億ドルで、期待の PER は高すぎる。
どちらに重みを置いたか
立て直しの根拠(供給網・先進外科・Vantive 後の固定費の削減)は具体的だが、品質と訴訟の問題が数年続いたことと、ポンプの再開時期が見えないことは重い。そのため中立 36%・楽観側 23%(楽観 6%+やや楽観 17%)、悲観側 41%(やや悲観 26%+悲観 15%)と、悲観側に厚く寄せた。倍率は正当化 PER の 7〜10 割に置いた。10 年の中立は、正当化 PER 16.6 倍の 8 割の 13.3 倍。今の PER に寄せていない。確率で重ねた総合は、今の時価総額より 27% 上。結論は「やや割安」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 41.69 ドル214 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 20.65 ドル106 億ドル)。 今の値に割り戻すと 32.17 ドル165 億ドル、今との差 +25.4%、 期待の年率 +9.3%(資本コスト 8.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 80.12 ドル411 億ドル | 34.05 ドル175 億ドル | +345.1% | +16.1% | 6.85 ドル35 億ドル |
| やや楽観 | 17% | 60.70 ドル311 億ドル | 28.95 ドル149 億ドル | +249.5% | +13.3% | 15.24 ドル78 億ドル |
| 中立 | 36% | 46.63 ドル239 億ドル | 24.31 ドル125 億ドル | +176.6% | +10.7% | 25.54 ドル131 億ドル |
| やや悲観 | 26% | 28.75 ドル148 億ドル | 18.71 ドル96 億ドル | +85.1% | +6.3% | 12.34 ドル63 億ドル |
| 悲観 | 15% | 15.36 ドル79 億ドル | 0.43 ドル2 億ドル | −38.4% | −4.7% | 2.37 ドル12 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 41.69 ドル214 億ドル | 20.65 ドル106 億ドル | +143.0% | +9.3% | 62.34 ドル320 億ドル |
今の株価時価総額 25.65 ドル132 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:ポンプが戻り、先進外科が育ち、利益率が過去の水準を超える 利益 26 億ドル · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 80.12 ドル411 億ドル
2035 年の売上は 196 億ドル(2025 年から名目で年 +5.7%)。輸液治療・基盤は 109.8 億ドル(年 +5.1%:数量 +2.2%、価格 +2.8%。Novum の再開で病院を取り戻し、ポンプと消耗品を抱き合わせる)、先進外科は 33.9 億ドル(年 +11.2%:手術の増加とシェアの拡大)、ヘルスケアシステム・技術は 51.8 億ドル(年 +5.6%)。営業利益は 36.8 億ドル(18.8%)、純利益は 25.8 億ドル。ベクトン・ディッキンソンや ICU メディカルとの競争に勝ち、利益率はヒルロム前の 2017〜2021 年(15〜17%)を超えて 18〜19% まで上がる。返済の後に自社株買いが戻り、10 年の正味の還元は 174.7 億ドル。倍率は 正当化 PER 17.7 倍の 9 割、15.9 倍に置く。利益の質が高く、伸びも一番続く筋書き。上限の 9 割に置く。
- 輸液治療・基盤(点滴液・輸液セット・ポンプ・注射薬):数量 19.9(バクスターが供給する輸液・注射の処置回数(億回)= 世界の病院の処置回数(推定 160 億回)× シェア 10%)× 価格 5.52(1 回あたり収入(ドル。液・セット・ポンプのリース・注射薬の平均))→ 売上 110 億ドル・営業利益 24 億ドル。処置回数とバクスターのシェア・1 回あたり収入
- 先進外科(止血材・シーラント):数量 1,079(使用する手術の件数(万件)= 対象となる世界の手術(推定 4,000 万件)× シェア 12.5%)× 価格 315(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 34 億ドル・営業利益 11 億ドル。手術件数と 1 件あたり収入
- ヘルスケアシステム・技術(旧ヒルロム+フロントラインケア):数量 134(病院向け機器の出荷(万台・契約相当)= 世界の更新・新設需要(推定 1,000 万台)× シェア 10%)× 価格 3,853(1 台(契約)あたり収入(ドル。ソフト・保守を含む平均))→ 売上 52 億ドル・営業利益 11 億ドル。機器の出荷と 1 台あたり収入
- その他(Vantive 向けの供給契約):数量 0.2(Vantive 向け供給量(億個相当))× 価格 2.00(1 個あたり収入(ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。Vantive 向け供給量と単価
倍率:正当化 PER は 17.7 倍(g 4.0%、RONIC 19.7%。RONIC は k 8.50% に、事業の ROE 42.0% が k を超える分の 0.33 を足した値。moat は weak)。これに対し 15.9 倍(9 割)に置いた。利益の質が高く、伸びも一番続く筋書き。上限の 9 割に置く。g の内訳:輸液・病院機器の需要(処置の回数)の実質 +2.0% × シェア維持 × 価格 +2.0%(物価 3.5% より 1.5 ポイント低い)で名目 約 4.0%。検査の上限(4%)の内側。純利益は GAAP。式の ROE は、帳簿の ROE が 40% を超える筋書き(自社株買いで自己資本が縮んだ見かけ)では帳簿の値でなく、ROIC +(ROIC − 借入金利の税引き後 4.7%)× 純負債÷自己資本(1 倍まで)で出した値を使う(ROIC = 税引き後営業利益 ÷(自己資本+純負債)、純負債は今の 78 億ドルで置いた。SCHEMA_US §1)。
確率:Novum の再開と先進外科の拡大、ヒルロム後の立て直しがすべて当たる筋書き。ここ数年問題が続いたので 6% にとどめた。
やや楽観 17% やや楽観:ポンプが 2027 年に戻り、立て直しが着実に進む 利益 22 億ドル · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 60.70 ドル311 億ドル
2035 年の売上は 181.5 億ドル(年 +4.9%)。輸液治療・基盤は 102.6 億ドル(年 +4.3%:数量 +1.9%・価格 +2.4%)、先進外科は 30.6 億ドル(年 +10.1%)、ヘルスケアシステム・技術は 47.9 億ドル(年 +4.8%)。営業利益は 31.2 億ドル(17.2%)、純利益は 21.7 億ドル。ベクトン・ディッキンソンとの差はポンプで一部縮まるが、病院の購買組織が価格を抑えるため、物価を超える値上げはできない。返済を優先したあと還元が戻り、10 年の正味の還元は 148.5 億ドル。倍率は 正当化 PER 16.9 倍の 8.5 割、14.3 倍に置く。伸びと利益率はほぼ計画どおり。上限の 8.5 割に置く。
- 輸液治療・基盤(点滴液・輸液セット・ポンプ・注射薬):数量 19.3(バクスターが供給する輸液・注射の処置回数(億回)= 世界の病院の処置回数(推定 160 億回)× シェア 10%)× 価格 5.31(1 回あたり収入(ドル。液・セット・ポンプのリース・注射薬の平均))→ 売上 103 億ドル・営業利益 21 億ドル。処置回数とバクスターのシェア・1 回あたり収入
- 先進外科(止血材・シーラント):数量 1,002(使用する手術の件数(万件)= 対象となる世界の手術(推定 4,000 万件)× シェア 12.5%)× 価格 305(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 31 億ドル・営業利益 9 億ドル。手術件数と 1 件あたり収入
- ヘルスケアシステム・技術(旧ヒルロム+フロントラインケア):数量 128(病院向け機器の出荷(万台・契約相当)= 世界の更新・新設需要(推定 1,000 万台)× シェア 10%)× 価格 3,742(1 台(契約)あたり収入(ドル。ソフト・保守を含む平均))→ 売上 48 億ドル・営業利益 10 億ドル。機器の出荷と 1 台あたり収入
- その他(Vantive 向けの供給契約):数量 0.2(Vantive 向け供給量(億個相当))× 価格 2.00(1 個あたり収入(ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。Vantive 向け供給量と単価
倍率:正当化 PER は 16.9 倍(g 4.0%、RONIC 16.6%。RONIC は k 8.50% に、事業の ROE 32.9% が k を超える分の 0.33 を足した値。moat は weak)。これに対し 14.3 倍(8.5 割)に置いた。伸びと利益率はほぼ計画どおり。上限の 8.5 割に置く。g の内訳:輸液・病院機器の需要(処置の回数)の実質 +2.0% × シェア維持 × 価格 +2.0%(物価 3.5% より 1.5 ポイント低い)で名目 約 4.0%。検査の上限(4%)の内側。純利益は GAAP。式の ROE は、帳簿の ROE が 40% を超える筋書き(自社株買いで自己資本が縮んだ見かけ)では帳簿の値でなく、ROIC +(ROIC − 借入金利の税引き後 4.7%)× 純負債÷自己資本(1 倍まで)で出した値を使う(ROIC = 税引き後営業利益 ÷(自己資本+純負債)、純負債は今の 78 億ドルで置いた。SCHEMA_US §1)。
確率:再開の遅れは小さく、固定費の削減が進む筋書き。17% と置く。
中立 36% 中立:輸液の堀は保たれ、売上は年 4% で伸び、利益率はヒルロム前の水準へ戻る 利益 18 億ドル · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 46.63 ドル239 億ドル
2035 年の売上は 168.1 億ドル(名目で年 +4.1%)。輸液治療・基盤は 94.8 億ドル(年 +3.5%:市場の処置回数が年 +2%、Novum の停止で失ったシェアを補いきれず自社の数量は年 +1.5%、価格は購買組織との契約で物価 3.5% に届かず年 +2.0%)、先進外科は 28.1 億ドル(年 +9.1%:数量 +6.5%・価格 +2.5%)、ヘルスケアシステム・技術は 44.7 億ドル(年 +4.0%)、Vantive 向けは消える。営業利益は 26.2 億ドル(15.6%。償却は年 4.3 億ドルまで減る)、純利益は 18.0 億ドル、純負債は 49 億ドルで EBITDA の 1.4 倍。ROE は帳簿で 31%。10 年の正味の還元は 124.7 億ドル(返済のあと配当と自社株買い、株式報酬の分を引く)。倍率は 正当化 PER 16.6 倍の 8 割、13.3 倍に置く。中立は上限の 8 割。輸液の基盤は堅いが、ポンプの出荷停止とヒルロムの重荷から立て直す途中で、堀は薄い(moat=weak)。
- 輸液治療・基盤(点滴液・輸液セット・ポンプ・注射薬):数量 18.6(バクスターが供給する輸液・注射の処置回数(億回)= 世界の病院の処置回数(推定 160 億回)× シェア 10%)× 価格 5.11(1 回あたり収入(ドル。液・セット・ポンプのリース・注射薬の平均))→ 売上 95 億ドル・営業利益 19 億ドル。処置回数とバクスターのシェア・1 回あたり収入
- 先進外科(止血材・シーラント):数量 939(使用する手術の件数(万件)= 対象となる世界の手術(推定 4,000 万件)× シェア 12.5%)× 価格 300(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 28 億ドル・営業利益 8 億ドル。手術件数と 1 件あたり収入
- ヘルスケアシステム・技術(旧ヒルロム+フロントラインケア):数量 122(病院向け機器の出荷(万台・契約相当)= 世界の更新・新設需要(推定 1,000 万台)× シェア 10%)× 価格 3,669(1 台(契約)あたり収入(ドル。ソフト・保守を含む平均))→ 売上 45 億ドル・営業利益 8 億ドル。機器の出荷と 1 台あたり収入
- その他(Vantive 向けの供給契約):数量 0.2(Vantive 向け供給量(億個相当))× 価格 2.00(1 個あたり収入(ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。Vantive 向け供給量と単価
倍率:正当化 PER は 16.6 倍(g 4.0%、RONIC 15.8%。RONIC は k 8.50% に、事業の ROE 30.5% が k を超える分の 0.33 を足した値。moat は weak)。これに対し 13.3 倍(8 割)に置いた。中立は上限の 8 割。輸液の基盤は堅いが、ポンプの出荷停止とヒルロムの重荷から立て直す途中で、堀は薄い(moat=weak)。g の内訳:輸液・病院機器の需要(処置の回数)の実質 +2.0% × シェア維持 × 価格 +2.0%(物価 3.5% より 1.5 ポイント低い)で名目 約 4.0%。検査の上限(4%)の内側。純利益は GAAP。
確率:議論の落としどころ。ただし悲観側(やや悲観・悲観)が 41% と楽観側(23%)より厚い。数量は市場の伸びにシェア維持、価格は物価 3.5% に対し 2% 前後。
やや悲観 26% やや悲観:ポンプで負け続け、価格も押され、利益率が戻らない 利益 13 億ドル · PER 11.5 倍 · 株価時価総額 28.75 ドル148 億ドル
2035 年の売上は 144.0 億ドル(年 +2.5%)。輸液治療・基盤は 81.8 億ドル(年 +2.0%:数量 +0.8%・価格 +1.2%。ポンプを失って液・セットの抱き合わせも守り切れず、価格は購買組織に押される)、先進外科は 23.2 億ドル(年 +7.1%)、ヘルスケアシステム・技術は 38.6 億ドル(年 +2.5%)。営業利益は 19.6 億ドル(13.6%)、純利益は 12.8 億ドル。2027 年に集団訴訟・調査で約 5 億ドルの費用が出る。それでも事業の堀は残るので、ベクトン・ディッキンソンに近い普通の消耗品会社として、帳簿の ROE 22%・g 3.5% の式で測る。10 年の正味の還元は 96.0 億ドル。倍率は 正当化 PER 15.4 倍の 7.5 割、11.5 倍に置く。競争と値下がりで、新しく投じる資本の稼ぎが薄れる。上限の 7.5 割に置く。
- 輸液治療・基盤(点滴液・輸液セット・ポンプ・注射薬):数量 17.3(バクスターが供給する輸液・注射の処置回数(億回)= 世界の病院の処置回数(推定 160 億回)× シェア 10%)× 価格 4.72(1 回あたり収入(ドル。液・セット・ポンプのリース・注射薬の平均))→ 売上 82 億ドル・営業利益 15 億ドル。処置回数とバクスターのシェア・1 回あたり収入
- 先進外科(止血材・シーラント):数量 814(使用する手術の件数(万件)= 対象となる世界の手術(推定 4,000 万件)× シェア 12.5%)× 価格 285(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 23 億ドル・営業利益 7 億ドル。手術件数と 1 件あたり収入
- ヘルスケアシステム・技術(旧ヒルロム+フロントラインケア):数量 110(病院向け機器の出荷(万台・契約相当)= 世界の更新・新設需要(推定 1,000 万台)× シェア 10%)× 価格 3,493(1 台(契約)あたり収入(ドル。ソフト・保守を含む平均))→ 売上 39 億ドル・営業利益 7 億ドル。機器の出荷と 1 台あたり収入
- その他(Vantive 向けの供給契約):数量 0.2(Vantive 向け供給量(億個相当))× 価格 2.00(1 個あたり収入(ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。Vantive 向け供給量と単価
倍率:正当化 PER は 15.4 倍(g 4.0%、RONIC 12.9%。RONIC は k 8.50% に、事業の ROE 21.8% が k を超える分の 0.33 を足した値。moat は weak)。これに対し 11.5 倍(7.5 割)に置いた。競争と値下がりで、新しく投じる資本の稼ぎが薄れる。上限の 7.5 割に置く。g の内訳:輸液・病院機器の需要(処置の回数)の実質 +2.0% × シェア維持 × 価格 +2.0%(物価 3.5% より 1.5 ポイント低い)で名目 約 4.0%。検査の上限(4%)の内側。純利益は GAAP。
確率:品質問題の後遺症で病院の信頼が戻らず、ヒルロムの収益も伸びない筋書き。26% と厚くした。
悲観 15% 悲観:構造的に負ける(ポンプが戻らず、訴訟・減損・価格の下落が重なる) 利益 7 億ドル · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 15.36 ドル79 億ドル
2035 年の売上は 118.0 億ドル(年 +0.5%)。輸液治療・基盤は 67.0 億ドル(年 0%:数量 −0.5%・価格 +0.5%。ポンプを失い、ベクトン・ディッキンソンと ICU メディカルが病院を固め、購買組織に値を叩かれる)、先進外科は 17.4 億ドル(年 +4.0%)、ヘルスケアシステム・技術は 33.2 億ドル(年 +1.0%。さらに減損)。2027 年に訴訟・調査の和解で約 12 億ドルの費用、2029 年にヘルスケアシステム・技術ののれん約 18 億ドルの追加減損が出る。営業利益は 9.2 億ドル(7.8%)、純利益は 6.7 億ドル、配当は純利益の 3 割を戻すだけで自社株買いはなく、余った現金 6 億ドルは特別に還元する。還元の正味は、株式報酬で増える株の分が配当を上回って小さな正(増資はない)。事業の ROE 7%(帳簿)・g 3% の式で測る。
- 輸液治療・基盤(点滴液・輸液セット・ポンプ・注射薬):数量 15.2(バクスターが供給する輸液・注射の処置回数(億回)= 世界の病院の処置回数(推定 160 億回)× シェア 10%)× 価格 4.40(1 回あたり収入(ドル。液・セット・ポンプのリース・注射薬の平均))→ 売上 67 億ドル・営業利益 9 億ドル。処置回数とバクスターのシェア・1 回あたり収入
- 先進外科(止血材・シーラント):数量 672(使用する手術の件数(万件)= 対象となる世界の手術(推定 4,000 万件)× シェア 12.5%)× 価格 259(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 17 億ドル・営業利益 4 億ドル。手術件数と 1 件あたり収入
- ヘルスケアシステム・技術(旧ヒルロム+フロントラインケア):数量 100(病院向け機器の出荷(万台・契約相当)= 世界の更新・新設需要(推定 1,000 万台)× シェア 10%)× 価格 3,325(1 台(契約)あたり収入(ドル。ソフト・保守を含む平均))→ 売上 33 億ドル・営業利益 4 億ドル。機器の出荷と 1 台あたり収入
- その他(Vantive 向けの供給契約):数量 0.2(Vantive 向け供給量(億個相当))× 価格 2.00(1 個あたり収入(ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。Vantive 向け供給量と単価
倍率:事業の ROE 7.5% が k 8.50% 以下なので PER は 1÷k=11.8 倍まで。これに対し 11.8 倍(10 割)に置いた。構造的に負けた筋書き。事業の ROE が k に届かないので PER は 1÷k が上限で、その値に置く。余った純現金 6.0 億ドルは還元に足して自己資本から引いたので、時価総額には足さない。g の内訳:市場 +1.5%・シェア減・価格 +1.5% で約 3%(床の式は 1÷k なので g は使わない)。減損後の自己資本に対し PBR は 1 倍を割る。純利益は GAAP。
確率:リーマン級ではなく構造の失敗。Novum が戻らない、集団訴訟・司法省の調査の和解、フロントラインケアなどの追加の減損、価格競争が重なる筋書き。ここ数年問題が続いた会社なので 15% と、手本(アボット 10%・ベクトン・ディッキンソン 12%)より厚くした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
輸液治療・基盤(点滴液・輸液セット・ポンプ・注射薬)
病院向けの点滴液、輸液セット、輸液ポンプ(Novum IQ・Spectrum IQ)、注射薬(旧製薬)。2026 年 4〜6 月期から医療用品・治療に入る区分。
| 数量バクスターが供給する輸液・注射の処置回数(億回)= 世界の病院の処置回数(推定 160 億回)× シェア 10% | 価格1 回あたり収入(ドル。液・セット・ポンプのリース・注射薬の平均) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 16.0 | 4.19 | 67 | 12 |
| 10 年後 中立 | 18.6 | 5.11 | 95 | 19 |
取り方:2026 年 4〜6 月期の輸液治療・基盤は 17.45 億ドル(有機 +4%)、上半期は 33.61 億ドル。2025 年は、前年比から逆算して約 67 億ドル(開示された新区分の通期は未確認で推定)。世界の病院の輸液・注射の処置回数を推定 160 億回、バクスターのシェアを 10% とし、16 億回 × 1 回あたり約 4.19 ドル。区分の利益率は、2026 年上半期の医療用品・治療が 18.8%(前年 22.3%)で、輸液ポンプの停止と原価高で下がった。2025 年は 18.5% と置いた。価格は購買組織(GPO)の契約で物価に届かない(中立で年 +2.0%。10 年 1.22 倍)。数量は市場が年 +2%、シェアは Novum の停止で少し失い、自社の数量は年 +1.5%。競合はベクトン・ディッキンソン、ICU メディカル、B. ブラウン、フレゼニウス カビ。
先進外科(止血材・シーラント)
手術中の止血材・シーラント(ヘモパッチ・フロシールなど)。医療用品・治療に入る成長区分。
| 数量使用する手術の件数(万件)= 対象となる世界の手術(推定 4,000 万件)× シェア 12.5% | 価格1 件あたり収入(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 500 | 234 | 12 | 3 |
| 10 年後 中立 | 939 | 300 | 28 | 8 |
取り方:2026 年 4〜6 月期は 3.31 億ドル(有機 +12%)、上半期は 6.35 億ドル(+11%)。2025 年は上半期から逆算して約 11.7 億ドル(推定)。対象手術を推定 4,000 万件、シェア 12.5% で 500 万件、1 件あたり約 234 ドル。利益率は 28%(推定)。数量は手術の増加と使用場面の拡大で伸び(中立で年 +6.5%)、価格は病院の価格交渉で物価に届かず年 +2.5%。競合はジョンソン・エンド・ジョンソン(エチコン)、ベクトン・ディッキンソンなど。
ヘルスケアシステム・技術(旧ヒルロム+フロントラインケア)
病院用ベッド・患者モニタ・ケア連携ソフト(ケア・コネクティビティ)と、診察用機器・診断のフロントラインケア。
| 数量病院向け機器の出荷(万台・契約相当)= 世界の更新・新設需要(推定 1,000 万台)× シェア 10% | 価格1 台(契約)あたり収入(ドル。ソフト・保守を含む平均) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 3,010 | 30 | 5 |
| 10 年後 中立 | 122 | 3,669 | 45 | 8 |
取り方:2026 年 4〜6 月期は 8.01 億ドル(+4%。ケア連携 5.02 億ドル +5%、フロントラインケア 2.99 億ドル +2%)。上半期は 15.06 億ドル(+1%)。2025 年は逆算して約 30.1 億ドル(推定)。世界の病院向け機器の更新・新設を推定 1,000 万台、シェア 10% で 100 万台、1 台あたり約 3,010 ドル。利益率は上半期 17.4%(前年 18.9%、4〜6 月は 20.3%)で、2025 年は 17% と置いた。のれん 30.8 億ドル(フロントラインケアは 2025 年末に 4.85 億ドル減損)。価格は病院の設備投資の交渉で年 +2.0%(物価より低い)、数量は年 +2%(ケア連携は伸び、フロントラインケアは減る)。競合はストライカー(ベッド)、GE ヘルスケア・テクノロジーズ(モニタ)など。
その他(Vantive 向けの供給契約)
Vantive(旧腎臓ケア)へ売却後も製造・供給する製品。供給契約(MSA)の期間で減っていく。
| 数量Vantive 向け供給量(億個相当) | 価格1 個あたり収入(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.8 | 2.00 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.2 | 2.00 | 0 | 0 |
取り方:2026 年 4〜6 月期 0.83 億ドル(−15%)、上半期 1.59 億ドル。2025 年は約 3.6 億ドル(推定)。供給量 1.8 億個相当 × 1 個あたり 2.0 ドル。契約の期間(数年)で数量が毎年 2 割ずつ減り、価格は契約で据え置き(物価に連動しない)。利益率は上半期 8% 前後。この区分は成長の土台ではなく、減るだけの項目として置く。
リスクと懸念
Novum IQ の出荷停止の長期化
2025 年 7 月から米国・カナダで出荷・設置を停止。FDA はクラス I のリコールに分類し、補正策は検証試験の初期段階で再開の時期は不明。再開が遅れるほど、ベクトン・ディッキンソンのアラリスや ICU メディカルが病院を固め、輸液セット・液の抱き合わせも失う。費用が将来重くなる可能性を会社も認めている。
訴訟と司法省の調査
Novum に関する投資家の集団訴訟(2022 年 2 月〜2025 年 10 月の期間、2026 年 6 月に主任原告が決まった)、関連する株主代表訴訟、司法省の民事調査要請・召喚状、ヒルロムに対する独禁法訴訟がある。和解額と罰金は読めず、悲観では 10 億ドル超を置いた。
供給の脆さ(ハリケーンと一極集中)
米国の輸液バッグの約 6 割を担ったノースコーブ工場が、2024 年 9 月のヘリーンで止まり、全 10 ラインの復旧に約 4 か月かかった。同様の災害・品質問題が再発すれば、病院が他社の輸液へ切り替える口実になり、堀が削られる。
ヒルロム(ヘルスケアシステム・技術)の追加減損
区分ののれんは 30.8 億ドルで、フロントラインケアは 2025 年末に 4.85 億ドルを減損した。営業利益率は上半期 17.4% と前年を下回る。さらに伸びず病院の設備投資が冷えれば、追加の減損と自己資本の毀損が起きる。
借金と借り換えによる金利負担
有利子負債は 94.6 億ドル、現金は 21.5 億ドルで、年末に純負債 ÷ EBITDA を約 3 倍へ下げる目標。利払いは平均 3.3% 台(推定)で、借り換えで約 5.75% へ上がるため、返済が進まなければ純利益が削られる。流動性は借入枠 14 億ドルがある。
病院の購買力と価格の押し下げ
点滴液・セット・機器は購買組織との契約で、物価 3.5% に届かない価格が基本である。メディケイドの縮小で病院の利益が圧迫される 2026 年以降は、値下げ圧力が強まる恐れがある。価格が年 +1% に落ちれば、中立でも利益が 2 割近く減る。
関税とサプライチェーン
原材料・部品の関税は原価を押し上げる。2026 年 4〜6 月期は IEEPA 関税の還付が利益を一時的に押し上げたが、再発する前提ではない。製造の稼働が落ちた時の規模の効果の悪化(Vantive 切り離し後)も重なる。
今後の分かれ目
- Novum IQ の米国での出荷再開が 2027 年前半までに決まったら
- 輸液セットと液の抱き合わせが戻り、輸液治療・基盤の数量が年 +2% に乗る。楽観・やや楽観の確率を 10 年で 5〜10 ポイント上げ、悲観の確率を下げる。
- 2027 年を過ぎても出荷停止が続き、検証試験で追加の補正が出たら
- 病院が競合の機種へ固定され、シェアが戻らない。やや悲観・悲観の確率を 10 ポイント以上上げ、輸液治療・基盤の価格と数量を下げる。
- 集団訴訟・司法省の調査が、数億ドル規模の和解で終わったら
- 不確実性が消え、確率の悲観側を薄くできる。10 億ドルを超える罰金なら、2〜3 年の純利益が飛び、還元が先送りされる。
- 年末の純負債 ÷ EBITDA が約 3 倍を達成し、自社株買いを再開したら
- 資本配分が株主へ向かい、還元の値が増える。達成できなければ、利払いが利益を削り、確率を悲観側に寄せる。
- 先進外科の成長が有機 +10% を保ち、区分利益率が 30% に乗ったら
- 医療用品・治療の利益率を押し上げ、2035 年の営業利益が計画を上回る。楽観側の確率を上げる。
- ヘルスケアシステム・技術の利益率が 20% を超え、フロントラインケアの売上が回復したら
- ヒルロムの減損リスクが後退し、ヘルスケアシステム・技術の価値が戻る。逆に追加の減損が出れば、悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- Novum IQ の出荷再開の時期(FDA の承認・四半期決算での再開時期の言及)
- 区分の営業利益率(医療用品・治療・ヘルスケアシステム・技術)と調整後営業利益率 13〜14% の達成
- 純負債 ÷ EBITDA(年末に約 3 倍)と有利子負債の返済、借り換えの金利
- 集団訴訟・司法省の調査・独禁法訴訟の進展と和解額
- 先進外科の有機成長率(+10% 超を保てるか)とフロントラインケアののれん減損の再発
- ノースコーブ工場など主力工場の稼働と供給の障害
倍率と資本コストの決め方
今の株価と PERを見る前に、数量と価格でセグメントを積み、純利益と自己資本を決めた。倍率は利益ベースの正当化 PER(RONIC は k に、事業の ROE が k を超える分の残る割合を足した値。moat は weak)の 7〜10 割に置いた。10 年の中立は、正当化 PER 16.6 倍(g 4.0%、RONIC 15.8%、k 8.50%)の 8 割の 13.3 倍。今の値段には寄せていない。総合は今の時価総額より 27% 上。結論は「やや割安」。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality +0.5% = 8.5%。ノバム(Novum)の品質・訴訟・ヒルロムの減損は個別のリスクなので k に足さず、悲観・やや悲観の確率(合計 41%)と悲観の深さで表した。存続は危うくない(流動性 14 億ドルの借入枠、営業キャッシュ・フロー正)ので上乗せ 0。