結論
リジェネロンは、Sanofi と共同開発した抗体デュピクセント(アトピー性皮膚炎・喘息・COPD・蕁麻疹など)の世界の利益を折半し、自社で眼科薬アイリーア HD、皮膚がん薬リブタヨ、コレステロール薬プラルエントなどを売る中堅バイオである。2025 年は売上 143 億ドル、営業利益 37 億ドル(営業利益率 26%)、純利益 45 億ドル。2026 年 4〜6 月期は売上 42.9 億ドル(前年比 +17%)で、Sanofi の協業収益が 21.7 億ドル(+51%)に伸びた。
ただし利益の質は一様でない。利益の大半はデュピクセントの取り分で、2031 年前後の米国の薬価交渉の対象選定と 2030 年代前半以降の特許切れが見えている。もう 1 つの柱のアイリーアは、旧品が後発(アムジェンのパブブロなど)に侵食され 4〜6 月期に前年比 -45%、高用量の HD が 52% 伸びて穴を埋める途上にある。新薬は当たりと外れが混ざる(フィアンリマブの黒色腫試験は 2026 年 5 月に未達、イテペキマブは COPD で 2 本のうち 1 本が未達)。一方、現金・有価証券は 178 億ドルと時価総額の 2 割を超え、研究開発を自前で回せる。
数量 × 価格で 6 つの塊に分けて 10 年を積み上げると、中立では売上が 2035 年に 253 億ドル、純利益が 81 億ドルと今の約 1.8 倍。倍率は利益ベースの正当化 PER(k 8%・g 4%・ROE 23%・RONIC 15%)18.5 倍の 8 割台の 15.5 倍。確率で重みを付けた 10 年後の本質価値は 828 億ドルで、今の時価総額(813 億ドル・PER 18.1 倍)を約 2% 上回り、結論は「適正」。デュピクセントへの依存と薬価政策を理由に、やや悲観と悲観の合計を 40% と厚く置いている。価値の大半は中立以上の筋書きが占めるので、デュピクセントの特許切れと薬価交渉の読みに結論が左右される。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家なら、まず 10 年後を問う。免疫・眼科・腫瘍の抗体は 10 年後も必要とされ、リジェネロンは抗体の研究で今も強い。堀は、デュピクセントでは特許と Sanofi との協業に守られ、アイリーアでは HD で再構築する段階にあり、広がるというより入れ替わる。デュピクセントの特許切れ(2030 年代前半以降)が近づく 2035 年に、新薬がどれだけ穴を埋めているかが評価を決める。
オーナー利益を見る。2025 年の純利益 45 億ドルに対してフリーキャッシュフローは 41 億ドル、研究開発は売上の約 4 割で株式報酬も費用に入れており、株主のものになる利益は時価総額の 5% 台と、無リスク金利 5% に近い。配当と自社株買いの正味の還元は純利益の 7 割ほど。資本コスト 8.0% の物差しで見れば、利益の 5% 台という利回りは k に届かず、成長が続くことへの前払いが入っている。厚い純現金が安全域の一部になる。
安全域は、中立で 10 年後の時価総額が今の約 1.5 倍、還元を足して年率 7〜8% と、資本コスト 8.0% にほぼ並ぶ。やや悲観・悲観の合計は 40%。悲観の中身は景気でなく、デュピクセントの薬価と特許の早期の崩れ、アイリーアの消失、新薬群の外れ。経営は科学に強く、買収で価値を壊さない点は信頼できるが、研究開発費の大きさ(売上の 4 割)が打率の低下で報われないリスクは残る。事業の予測は、デュピクセントの足元は確かだが 10 年は難しく、確信度は中。事業への確信は中、安全域は薄め(今の値段は適正の範囲)。
何で稼ぐ会社か
売上の中身は大きく 4 つの収益源に分かれる。第 1 に Sanofi との協業。デュピクセントの世界売上(2025 年 約 178 億ドル、2026 年 4〜6 月期は 60 億ドルで +38%)は Sanofi が計上し、リジェネロンは利益の取り分を協業収益として受け取る(2026 年 4〜6 月期 21.7 億ドル)。Sanofi に返していた開発費の残高が 2026 年 4〜6 月期に完済されたので、7 月以降は取り分が上がる。2026 年 4 月には慢性特発性蕁麻疹でも承認を得た。第 2 に眼科。アイリーア HD の米国売上は 4〜6 月期 5.96 億ドル(+52%)で、初めて旧アイリーア(4.12 億ドル、-45%)を上回った。2026 年 4 月に最長 20 週間隔の投与が承認され、プレフィルドシリンジの承認を 2026 年末までに目指す。海外はバイエルが販売し、リジェネロンは利益の分配を受ける(2.76 億ドル、-33%)。
第 3 が腫瘍。リブタヨ(PD-1 抗体)は世界売上 4.89 億ドル(+30%)で、皮膚扁平上皮がんの術後補助療法が 2025 年末に承認された。多発性骨髄腫向けのリンゾフィク(二重特異性抗体)は 0.17 億ドルで立ち上がり始めた。第 4 が新薬。セムディシラン(重症筋無力症の C5 siRNA)は FDA の優先審査で目標が 2026 年 11 月、難聴の遺伝子治療 DB-OTO(Otarmeni)は EMA が迅速評価を受理、抗凝固の第 XI 因子抗体 2 本は末梢動脈疾患の第 3 相に入った。ほかにプラルエント、エヴキーザ、Sanofi 向けの製造収益がある。
費用は 2026 年の見通しで GAAP の研究開発費 65〜66 億ドル、販管費 28〜30 億ドル、売上総利益率 78〜79%。アイルランド・リムリック工場の原薬製造が 2026 年前半に一時止まったが、通常に戻った。
優良さと弱いところ
堀は 3 層ある。第 1 は科学の蓄積で、遺伝子改変マウスによる完全ヒト抗体の作成技術(ベロシミューン)が 20 年以上、新薬の種を安く生む。アイリーア・デュピクセント・リブタヨ・プラルエントはその産物で、ほかの会社より抗体の打率が高かったのが過去の優良さの源。第 2 は Sanofi との協業で、デュピクセントの販売費と臨床試験の費用が分担され、取り分はほぼ利益になる。第 3 は資本の余裕で、年 50 億ドル近い営業キャッシュフローと 178 億ドルの現金が、研究開発費を売上の 4 割近くまで使える余裕を生む。
資本効率は高い。2021 年の営業利益率は 56%(ROE 43%)、直近の 2025 年は 26% に下がり ROE は 14%。ただし ROE は余った現金を厚く抱えて薄まっている面が大きく、現金を除いた事業の ROE は 25% 前後と見る。経営はレナード・シュライファー(創業者・CEO)とジョージ・ヤンコプーロス(創業者・最高科学責任者)が長年率い、科学で勝つ文化が強い。大型の買収はほとんどなく、提携とライセンスで広げる点は価値を壊さない資本配分と言える。
弱点は 3 つ。第 1 にデュピクセントへの依存(利益の過半)と、その薬価・特許の期限。第 2 にアイリーアの後発(2026 年第 4 四半期から 4 社の後発が発売可能)。第 3 に直近の新薬の失敗の連続(フィアンリマブ・イテペキマブの COPD の食い違い)で、研究開発費が売上に見合うかが問われている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
デュピクセントが属する免疫・アレルギー(2 型炎症)の市場は、患者数が多く伸びも速い。アトピー性皮膚炎・喘息に加えて、COPD(2024 年承認)、好酸球性食道炎、慢性特発性蕁麻疹(2026 年 4 月承認)、水疱性類天疱瘡へ適応を広げ、治療患者が増える形で数量が伸びる。競合は、イーライリリーのレブリキズマブ、リリー・ガルデルマの抗体、アムジェンと協和キリンのロカチニマブなどの抗体、ヤヌスキナーゼ阻害薬と、将来の経口薬。COPD ではアストラゼネカの抗 IL-33 が先行する一方、リジェネロンのイテペキマブは 2 本のうち 1 本が未達で道が狭い。米国の薬価は、Medicare の交渉価格の対象選定が 2031 年前後になる可能性(Leerink の推定)と、2030 年代前半からの特許の期限(推定 2031〜2034 年)が見える。
眼科の市場は、加齢黄斑変性・糖尿病黄斑浮腫の抗 VEGF 注射。旧アイリーアは 2024 年末のアムジェンのパブブロに続き、2026 年第 4 四半期からアルボテック・テバ、サンド、フォルミコン、セルトリオンの後発が出られる(和解による)。会社は旧品が四半期ごとに低〜中 10% 台で減ると説明する。HD は高用量で投与間隔が長く、後発の直接の置き換えを受けにくい(当面)。競合は、ロシュのバビスモ(ファリシマブ)。
腫瘍は PD-1 抗体の市場で、キイトルーダ(メルク)・オプジーボ(ブリストル・マイヤーズ スクイブ)が圧倒的に大きく、リブタヨは皮膚がんなど狭い領域で高いシェアを取る。第 XI 因子の抗凝固は、ブリストルのミルベキサン、バイエルのアスンデキサン、ノバルティスのアベラシマブが競合で、患者数が桁違いに多い代わりに安全性の証明が壁。SCHEMA の領域の置き方(塊 B:売上 年 +4%、数量 +5%・価格 -1%)に比べ、デュピクセントの利益の取り分が上がる分と、アイリーアの縮みを分けて積み上げた。
資本政策と M&A
還元は自社株買いが中心で、2026 年上半期は 20 億ドル(残り枠 25 億ドル)、配当は四半期に約 1 億ドル(年約 4 億ドル)。2025 年の自社株買いは 34 億ドルで、株式報酬で増えた分を引いた正味の株数の減りは年 1〜2%。現金・有価証券 178 億ドルに対し借入 20 億ドル・リース 7 億ドルで、純現金は約 151 億ドル。借入は規模が小さく、借り換えで金利が上がっても利益への影響は誤差の範囲。
M&A は小さな買収と提携が中心。2023 年に難聴の遺伝子治療の会社デシベル(Decibel)を買い、DB-OTO を取り込んだ。ほかに遺伝子編集のインテリア(Intellia)などとの提携がある。大型買収は過去にほとんどなく、バリュー投資の観点では歓迎できる。リジェネロンが買われる側になる可能性は時価総額 813 億ドルで小さい。今後の見どころは、Sanofi への開発費の完済後に自社株買いを増やすか、第 XI 因子の第 3 相に資金を回すか、デュピクセントの減速に備えて大型の導入に動くかの 3 点。 なお、決算期末後に実行済みの自社株買い 19.6 億ドル(10-Q・2026 年 1〜6 月)は、今の株数(時価総額)に反映済みなので、10 年の還元(payout_oku)からは除いてある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
デュピクセントは世界で 2025 年の約 178 億ドルから 2026 年は 230 億ドル台に乗り、治療患者は 120 万人から年 +15% で増える。COPD・蕁麻疹・水疱性類天疱瘡へ適応が広がり、2 型炎症の市場はまだ浸透率が低い。Sanofi への開発費の返済が済み、取り分が上がる。リブタヨは術後補助療法で 30% 成長が続く。
アイリーア HD は 4〜6 月期に前年比 +52%、最長 20 週間隔とプレフィルドシリンジで旧品の穴を埋める。第 XI 因子(末梢動脈疾患・心房細動)が成功すれば、デュピクセントの特許切れの穴を埋めて余りある市場に出る。セムディシランは 2026 年 11 月に承認の見込み。純現金は 150 億ドルを超え、年 40 億ドルのキャッシュフローで自社株買いと研究開発の両方ができる。リジェネロンは過去にアイリーア・デュピクセントという 2 つの 100 億ドル薬を作った会社で、3 つ目が出ない理由はない。PER 18 倍は、これらの成長を織り込んでいない。
慎重な見方
デュピクセントの利益はリジェネロンの利益の過半で、薬価と特許の期限が 2031〜2034 年に見えている。Medicare の価格交渉の対象になれば米国の純価格が削られ、最恵国待遇型の政策で海外価格との差も縮む。競合の抗体・経口薬が皮膚炎・喘息に入り、COPD ではアストラゼネカが先行する。
アイリーアの旧品は 4〜6 月期に -45% で、2026 年第 4 四半期から後発が 4 社増える。HD も、高用量の後発やロシュのバビスモとの競争から無縁ではない。新薬の打率は悪化した:フィアンリマブは黒色腫の第 3 相で未達、イテペキマブは COPD の 2 本のうち 1 本が未達。研究開発費は売上の 4 割で、第 XI 因子の第 3 相には多額の資金がかかり、競合のミルベキサンなどが先行する。178 億ドルの現金は株主のものだが、研究開発の失敗で消える。ROE が 14% に下がったのはその兆候。
どちらに重みを置いたか
デュピクセントの成長は強気の見方が強い。ただし 10 年は特許・薬価・競合が重なるので、慎重な見方の言い分が強く、取り分の単価(取り分は完済の上昇を織り込んでも世界の純単価は年 +1〜1.5%)と 10 年の数量の伸びを抑えた。アイリーアの縮みは慎重な見方が正しく、旧品は大きく縮むとした。新薬の打率は慎重な見方が強い。確率は中立 33% を最大にし、楽観・やや楽観の合計を 28%、やや悲観を 25%、悲観を 15% に置いた。結論は「優れた抗体の研究会社だが、利益ベースの倍率(k 8.0%)に抑え、純現金を 1 ドルで数えると今の値段はほぼ適正」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,149 ドル1,182 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 381.89 ドル393 億ドル)。 今の値に割り戻すと 792.33 ドル815 億ドル、今との差 −3.3%、 期待の年率 +6.5%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,621 ドル2,694 億ドル | 618.09 ドル635 億ドル | +295.4% | +14.7% | 259.11 ドル266 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 1,811 ドル1,862 億ドル | 515.95 ドル530 億ドル | +184.1% | +11.0% | 465.41 ドル478 億ドル |
| 中立 | 32% | 1,223 ドル1,257 億ドル | 407.98 ドル419 億ドル | +99.1% | +7.1% | 521.87 ドル536 億ドル |
| やや悲観 | 25% | 596.30 ドル613 億ドル | 302.92 ドル311 億ドル | +9.8% | +0.9% | 224.81 ドル231 億ドル |
| 悲観 | 15% | 247.96 ドル255 億ドル | 153.11 ドル157 億ドル | −51.0% | −6.9% | 60.16 ドル62 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 1,149 ドル1,182 億ドル | 381.89 ドル393 億ドル | +87.0% | +6.5% | 1,531 ドル1,574 億ドル |
今の株価時価総額 819.09 ドル842 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:第 XI 因子などの新薬群が成功し、デュピクセントの穴を埋めて成長が続く 利益 143 億ドル · PER 18.8 倍 · 株価時価総額 2,621 ドル2,694 億ドル
2035 年、デュピクセントの治療患者は 255 万人、取り分は 1 人 6,800 ドルで協業収益 173 億ドル(特許切れは 2030 年代前半以降だが、次世代の製剤で守る)。第 XI 因子(末梢動脈疾患・心房細動)とセムディシラン・リンゾフィクが当たり、新薬群は患者 4 万人・80 億ドル。リブタヨは 15 万人で 68 億ドル。アイリーア HD は後発の HD が出ても 42 億ドル。売上は 399 億ドル、営業利益率 41%、純利益 143 億ドル。次の柱が立っているので、倍率は正当化 PER 20.6 倍の 9 割強(18.8 倍)に置く。
- Sanofi 協業:デュピクセントなどの抗体の利益分配:数量 255(デュピクセントの平均治療患者数(万人))× 価格 6,800(患者 1 人あたりのリジェネロンの取り分(ドル/年))→ 売上 173 億ドル・営業利益 149 億ドル。患者 255 万人・取り分 6,800 ドル
- 米国の眼科:アイリーア HD・アイリーア:数量 265(年間の投与回数(万回))× 価格 1,600(1 回あたり純価格(ドル))→ 売上 42 億ドル・営業利益 20 億ドル。投与 265 万回・1 回 1,600 ドル
- Bayer:海外のアイリーアの利益分配:数量 92.0(米国外の年間の投与回数(万回))× 価格 580(1 回あたりのリジェネロンの取り分(ドル))→ 売上 5 億ドル・営業利益 5 億ドル。海外の投与 92 万回
- 腫瘍:リブタヨ(セミプリマブ):数量 15.0(年間の治療患者数(万人))× 価格 45,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 68 億ドル・営業利益 28 億ドル。患者 15 万人
- 新薬群:リンゾフィク・セムディシラン・第 XI 因子・遺伝子治療ほか:数量 40,000(年間の治療患者数(人))× 価格 200,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 80 億ドル・営業利益 32 億ドル。患者 40,000 人
- その他:プラルエント・エヴキーザ・その他の製品と収益:数量 17.5(販売患者数(万人))× 価格 17,400(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 31 億ドル・営業利益 11 億ドル。患者 17.5 万人
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 37.1%(現金を除いた事業の ROE。この筋書きの事業の純利益 140.9 ÷ 事業の自己資本(自己資本 531 − 余った現金 151 億ドル))は先で薄れ、RONIC = k 8.00%(基本 8.0% + quality +0.0%)+ 1/2 ×(ROE − k)= 22.5%(堀は標準(1/2):デュピクセントとアイリーア HD は特許と共同開発の契約で守られるが、薬価交渉・特許切れ・後発(アイリーアの旧品)で高い利益率は 10 年は続かない)。g は 4.0%。 正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 20.6 倍 に対し、92% の 18.8 倍に置いた(楽観は式の値の 9 割強に置く。新薬群が当たり、デュピクセントの特許切れと薬価交渉が 2030 年代に来る前でも利益が伸びる筋書き。)。時価総額 = 純利益 143.0 億ドル × 18.8 倍 = 2694.1 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:10 年のうちに第 XI 因子(末梢動脈疾患・心房細動など)が当たり、デュピクセントの特許切れの穴を埋めて成長が続く展開。リジェネロンの過去の打率は高いが、直近の失敗(フィアンリマブ・イテペキマブ)が続き 1 割弱。
やや楽観 20% やや楽観:新薬群が半分成功し、デュピクセントの特許切れの傷が浅い 利益 107 億ドル · PER 17.4 倍 · 株価時価総額 1,811 ドル1,862 億ドル
2035 年、デュピクセントは患者 235 万人・取り分 6,200 ドルで協業収益 146 億ドル。新薬群は第 XI 因子の一部成功で 49 億ドル、リブタヨは 58 億ドル、アイリーア HD は 36 億ドル。売上は 322 億ドル、営業利益率 38%、純利益 107 億ドル。倍率は正当化 PER 19.8 倍の 9 割弱(17.4 倍)に置く。新薬群の成功が半分で、利益の質は現在と同じくらい保たれる。アイリーア HD は特許の延長と HD のシリンジ・間隔延長で守られ、後発の浸透が遅れる。デュピクセントの取り分の単価は交渉の影響が軽く、物価の約 1.3 倍に上がる。新薬群のうち、セムディシランとリンゾフィクが確実に伸びる。
- Sanofi 協業:デュピクセントなどの抗体の利益分配:数量 235(デュピクセントの平均治療患者数(万人))× 価格 6,200(患者 1 人あたりのリジェネロンの取り分(ドル/年))→ 売上 146 億ドル・営業利益 124 億ドル。患者 235 万人・取り分 6,200 ドル
- 米国の眼科:アイリーア HD・アイリーア:数量 250(年間の投与回数(万回))× 価格 1,450(1 回あたり純価格(ドル))→ 売上 36 億ドル・営業利益 16 億ドル。投与 250 万回・1 回 1,450 ドル
- Bayer:海外のアイリーアの利益分配:数量 88.0(米国外の年間の投与回数(万回))× 価格 500(1 回あたりのリジェネロンの取り分(ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 4 億ドル。海外の投与 88 万回
- 腫瘍:リブタヨ(セミプリマブ):数量 13.5(年間の治療患者数(万人))× 価格 43,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 58 億ドル・営業利益 23 億ドル。患者 13.5 万人
- 新薬群:リンゾフィク・セムディシラン・第 XI 因子・遺伝子治療ほか:数量 26,000(年間の治療患者数(人))× 価格 190,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 49 億ドル・営業利益 15 億ドル。患者 26,000 人
- その他:プラルエント・エヴキーザ・その他の製品と収益:数量 16.5(販売患者数(万人))× 価格 17,100(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 28 億ドル・営業利益 10 億ドル。患者 16.5 万人
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 30.4%(現金を除いた事業の ROE。この筋書きの事業の純利益 104.9 ÷ 事業の自己資本(自己資本 496 − 余った現金 151 億ドル))は先で薄れ、RONIC = k 8.00%(基本 8.0% + quality +0.0%)+ 1/2 ×(ROE − k)= 19.2%(堀は標準(1/2):デュピクセントとアイリーア HD は特許と共同開発の契約で守られるが、薬価交渉・特許切れ・後発(アイリーアの旧品)で高い利益率は 10 年は続かない)。g は 4.0%。 正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 19.8 倍 に対し、88% の 17.4 倍に置いた(やや楽観は式の値の 9 割弱に置く。デュピクセントの特許切れと薬価交渉が 2030 年代に来るので上限までは取らない。)。時価総額 = 純利益 107.0 億ドル × 17.4 倍 = 1861.8 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:新薬群が半分ほど成功し、デュピクセントは特許切れ前に価格交渉で小さく削られるだけの展開。
中立 32% 中立:デュピクセントの特許切れが近づき、新薬は一部だけ成功 利益 81 億ドル · PER 15.5 倍 · 株価時価総額 1,223 ドル1,257 億ドル
2035 年、デュピクセントの治療患者は 215 万人(2028 年から年 +3%)、取り分は 1 人 5,775 ドル(2031 年前後の薬価交渉の影響を織り込む)で協業収益 124 億ドル。第 XI 因子は部分的な成功で新薬群は 22 億ドル。リブタヨは 46 億ドル、アイリーア HD は 31 億ドル、他は 26 億ドル。売上は 253 億ドル(2025 年の 1.8 倍)、営業利益率 36%、純利益 81 億ドル。デュピクセントの特許切れ(2030 年代半ば)の後は利益が伸びない。倍率は正当化 PER(18.5 倍)の 8 割台の 15.5 倍。価格は物価並みに上がらず(デュピクセントの純単価は 10 年で約 1.17 倍)、米国の薬価交渉の影響と米国外の構成の変化が理由。価格について:アイリーアの 1 回あたり純価格が 10 年で 0.68 倍、海外の取り分が 0.37 倍になるのは、後発の浸透で旧品が崩れ、HD にも高用量の後発と競合(ロシュのバビスモ)が及ぶため。デュピクセントの取り分が 10 年で 1.24 倍と物価の 1.41 倍に届かないのは、2031 年前後の Medicare の価格交渉と、世界の患者に占める米国外・安い適応症の割合が増えるため。新薬群の 1 人あたり単価は、大きな市場の薬が増える分でほぼ横ばい。
- Sanofi 協業:デュピクセントなどの抗体の利益分配:数量 215(デュピクセントの平均治療患者数(万人))× 価格 5,775(患者 1 人あたりのリジェネロンの取り分(ドル/年))→ 売上 124 億ドル・営業利益 104 億ドル。患者 215 万人・取り分 5,775 ドル
- 米国の眼科:アイリーア HD・アイリーア:数量 240(年間の投与回数(万回))× 価格 1,300(1 回あたり純価格(ドル))→ 売上 31 億ドル・営業利益 13 億ドル。投与 240 万回・1 回 1,300 ドル
- Bayer:海外のアイリーアの利益分配:数量 82.0(米国外の年間の投与回数(万回))× 価格 430(1 回あたりのリジェネロンの取り分(ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 3 億ドル。海外の投与 82 万回
- 腫瘍:リブタヨ(セミプリマブ):数量 11.5(年間の治療患者数(万人))× 価格 40,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 46 億ドル・営業利益 18 億ドル。患者 11.5 万人
- 新薬群:リンゾフィク・セムディシラン・第 XI 因子・遺伝子治療ほか:数量 13,000(年間の治療患者数(人))× 価格 170,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 22 億ドル・営業利益 4 億ドル。患者 13,000 人
- その他:プラルエント・エヴキーザ・その他の製品と収益:数量 15.5(販売患者数(万人))× 価格 16,800(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 26 億ドル・営業利益 9 億ドル。患者 15.5 万人
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 22.5%(現金を除いた事業の ROE。この筋書きの事業の純利益 78.9 ÷ 事業の自己資本(自己資本 501 − 余った現金 151 億ドル))は先で薄れ、RONIC = k 8.00%(基本 8.0% + quality +0.0%)+ 1/2 ×(ROE − k)= 15.3%(堀は標準(1/2):デュピクセントとアイリーア HD は特許と共同開発の契約で守られるが、薬価交渉・特許切れ・後発(アイリーアの旧品)で高い利益率は 10 年は続かない)。g は 4.0%。 正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 18.5 倍 に対し、84% の 15.5 倍に置いた(中立は式の値の 8 割台に置く。デュピクセントの特許切れと薬価交渉が 2030 年代に来るので、2035 年の利益に高い倍率は付けない。)。時価総額 = 純利益 81.0 億ドル × 15.5 倍 = 1257.1 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:議論の落としどころ。デュピクセントは 2030 年代前半から薬価交渉・後発で削られ始め、新薬は第 XI 因子が部分的に成功する程度。
やや悲観 25% やや悲観:デュピクセントが薬価交渉と後発で削られ、新薬は小さく終わる 利益 48 億ドル · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 596.30 ドル613 億ドル
2035 年、デュピクセントは 2031 年前後の薬価交渉で取り分が 1 人 5,000 ドルまで下がり、患者も 180 万人にとどまって協業収益は 90 億ドル。新薬群は第 XI 因子が外れて 9.9 億ドル、アイリーアは 24 億ドル、リブタヨは 33 億ドル。売上は 182 億ドル、営業利益率 29%、純利益 48 億ドル。倍率は正当化 PER 15.8 倍の 8 割の 12.8 倍。デュピクセントの価格交渉に加え、競合の抗体・経口薬への切り替えで患者が減る。アイリーアは旧品が消え、HD も後発の高用量に食われる。新薬群は研究開発費に見合わず、営業利益率が現在より低く、特許切れの穴を埋められない。
- Sanofi 協業:デュピクセントなどの抗体の利益分配:数量 180(デュピクセントの平均治療患者数(万人))× 価格 5,000(患者 1 人あたりのリジェネロンの取り分(ドル/年))→ 売上 90 億ドル・営業利益 74 億ドル。患者 180 万人・取り分 5,000 ドル
- 米国の眼科:アイリーア HD・アイリーア:数量 225(年間の投与回数(万回))× 価格 1,050(1 回あたり純価格(ドル))→ 売上 24 億ドル・営業利益 9 億ドル。投与 225 万回・1 回 1,050 ドル
- Bayer:海外のアイリーアの利益分配:数量 78.0(米国外の年間の投与回数(万回))× 価格 340(1 回あたりのリジェネロンの取り分(ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 2 億ドル。海外の投与 78 万回
- 腫瘍:リブタヨ(セミプリマブ):数量 9.0(年間の治療患者数(万人))× 価格 37,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 33 億ドル・営業利益 11 億ドル。患者 9 万人
- 新薬群:リンゾフィク・セムディシラン・第 XI 因子・遺伝子治療ほか:数量 6,000(年間の治療患者数(人))× 価格 165,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 10 億ドル・営業利益 −1 億ドル。患者 6,000 人
- その他:プラルエント・エヴキーザ・その他の製品と収益:数量 14.0(販売患者数(万人))× 価格 15,800(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 22 億ドル・営業利益 7 億ドル。患者 14 万人
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 13.6%(現金を除いた事業の ROE。この筋書きの事業の純利益 46.4 ÷ 事業の自己資本(自己資本 454 − 余った現金 113 億ドル))は先で薄れ、RONIC = k 8.00%(基本 8.0% + quality +0.0%)+ 1/2 ×(ROE − k)= 10.8%(堀は標準(1/2):デュピクセントとアイリーア HD は特許と共同開発の契約で守られるが、薬価交渉・特許切れ・後発(アイリーアの旧品)で高い利益率は 10 年は続かない)。g は 4.0%。 正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 15.7 倍 に対し、81% の 12.8 倍に置いた(やや悲観は式の値の 8 割に置く。特許切れが早く、デュピクセントの特許切れと薬価交渉が 2030 年代に来る影響が利益に出始める。)。時価総額 = 純利益 48.0 億ドル × 12.8 倍 = 613.0 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:デュピクセントが 2031 年前後の薬価交渉で 3 割ほど削られ、新薬は小さい展開。バイオの 10 年では普通に起きる。
悲観 15% 悲観:デュピクセントを早く失い、新薬群の大半が外れる(もう優良ではない) 利益 17 億ドル · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 247.96 ドル255 億ドル
2035 年、デュピクセントは薬価交渉と後発の早期の参入で取り分が 1 人 4,200 ドルに下がり、患者も 135 万人で協業収益は 57 億ドル。アイリーアは 14 億ドルまで縮み、新薬群は 3 億ドルで大半が外れ、研究開発費は売上に見合わない。売上は 114 億ドル、営業利益は 16 億ドル(減損・リストラを含む)、純利益は 17 億ドル(受取利息が大半)。ROE が k 以下なので正当化 PER は 1 ÷ k = 12.5 倍で、その 9 割(11.3 倍)を事業の純利益 15.9 億ドルに掛け、余った現金 76 億ドル(今の半分)を足した約 255 億ドルで置く。
- Sanofi 協業:デュピクセントなどの抗体の利益分配:数量 135(デュピクセントの平均治療患者数(万人))× 価格 4,200(患者 1 人あたりのリジェネロンの取り分(ドル/年))→ 売上 57 億ドル・営業利益 43 億ドル。患者 135 万人・取り分 4,200 ドル
- 米国の眼科:アイリーア HD・アイリーア:数量 190(年間の投与回数(万回))× 価格 750(1 回あたり純価格(ドル))→ 売上 14 億ドル・営業利益 4 億ドル。投与 190 万回・1 回 750 ドル
- Bayer:海外のアイリーアの利益分配:数量 65.0(米国外の年間の投与回数(万回))× 価格 230(1 回あたりのリジェネロンの取り分(ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 1 億ドル。海外の投与 65 万回
- 腫瘍:リブタヨ(セミプリマブ):数量 6.5(年間の治療患者数(万人))× 価格 33,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 21 億ドル・営業利益 6 億ドル。患者 6.5 万人
- 新薬群:リンゾフィク・セムディシラン・第 XI 因子・遺伝子治療ほか:数量 2,000(年間の治療患者数(人))× 価格 150,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 −2 億ドル。患者 2,000 人
- その他:プラルエント・エヴキーザ・その他の製品と収益:数量 11.5(販売患者数(万人))× 価格 14,500(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 17 億ドル・営業利益 5 億ドル。患者 11.5 万人
倍率:悲観は稼ぐ力で置く(市場の PER・PBR は使わない)。この筋書きの ROE 4.5%(事業の純利益 15.9 ÷ 自己資本 430 億ドル)は k 8.0% 以下なので、正当化 PER は 1 ÷ k = 12.5 倍が上限。その 9 割の 11.2 倍を事業の純利益 15.9 億ドルに掛けて 179.4 億ドル、これに余った現金 75.5 億ドル(今の 151 億ドルの 0.5 倍。谷と失敗した導入・開発で食う)× 戻り方 1.0 を足して 254.9 億ドル。純利益 17.0 億ドルに対する実効の PER は 15.0 倍。g は 0%(市場の実質 +1% × シェア −3% × 価格 +2% の目安)。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:デュピクセントの独占が早く崩れ(薬価交渉+後発)、新薬群の大半が外れ、アイリーアも消える構造的な負け。単一の主力に利益の大半を依存する構造から、悲観を厚く 15% に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
Sanofi 協業:デュピクセントなどの抗体の利益分配
Sanofi と共同開発・販売する抗体(主力はデュピクセント)の世界の利益の取り分。リジェネロンの売上のうち最大の柱で、ほぼ利益になる。
| 数量デュピクセントの平均治療患者数(万人) | 価格患者 1 人あたりのリジェネロンの取り分(ドル/年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 120 | 4,667 | 56 | 46 |
| 10 年後 中立 | 215 | 5,775 | 124 | 104 |
取り方:2025 年の協業収益 約 56 億ドルを、デュピクセントの平均治療患者 約 120 万人(推定)で割った取り分 約 4,670 ドル。世界売上 約 178 億ドル(推定)の約 31% にあたり、会社が Sanofi に返していた開発費の残高が 2026 年 Q2 に完済されたので、2026 年後半から取り分が上がる。営業利益は協業の製造費(COCM)を引いた値。価格(取り分)は、世界の純単価が年 +1〜1.5%(米国の純価格は横ばい、米国外と安い適応症に広がる分で薄まる。3 年 1.11 倍・10 年 1.41 倍より低い)と、完済後の取り分の上昇で決める。
米国の眼科:アイリーア HD・アイリーア
加齢黄斑変性・糖尿病黄斑浮腫への硝子体注射。高用量のアイリーア HD に切り替わり、従来のアイリーアは後発(バイオシミラー)に侵食されている。
| 数量年間の投与回数(万回) | 価格1 回あたり純価格(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 237 | 1,900 | 45 | 20 |
| 10 年後 中立 | 240 | 1,300 | 31 | 13 |
取り方:2025 年の米国売上 約 45 億ドル(推定。HD 約 15・従来品 約 30)を、投与 約 237 万回(推定)で割った 1 回 約 1,900 ドル。2026 年 Q2 は HD 5.96 億ドル・従来品 4.12 億ドルで、HD が初めて従来品を上回った。価格は物価並みに上がらず、後発の値下げ圧力で下がる前提(理由は各筋書き)。
Bayer:海外のアイリーアの利益分配
バイエルが米国外で販売するアイリーアの利益のリジェネロンの取り分。欧州などで後発が入り縮んでいる。
| 数量米国外の年間の投与回数(万回) | 価格1 回あたりのリジェネロンの取り分(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 130 | 1,150 | 15 | 14 |
| 10 年後 中立 | 82.0 | 430 | 4 | 3 |
取り方:2025 年の Bayer 協業収益 約 15 億ドル(推定)を、米国外の投与 約 130 万回(推定)で割った取り分 約 1,150 ドル。2026 年 Q2 は 2.76 億ドルで前年比 -33%。後発の欧州発売と HD の海外展開の遅れで下がる前提。
腫瘍:リブタヨ(セミプリマブ)
皮膚がん・肺がんなどに使う PD-1 抗体。皮膚扁平上皮がんの術後補助療法が 2025 年末に承認された。
| 数量年間の治療患者数(万人) | 価格1 人あたり年間の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4.5 | 31,500 | 14 | 4 |
| 10 年後 中立 | 11.5 | 40,000 | 46 | 18 |
取り方:2025 年の世界売上 約 14 億ドルを、治療患者 約 4.45 万人(推定)で割った 1 人 約 3.15 万ドル。2026 年 Q2 は 4.89 億ドルで +30%。術後補助療法は治療期間が延びる分、1 人あたり売上が増える。価格は物価並み(3 年 1.11 倍・10 年 1.41 倍)を基本とし、競合(キイトルーダの皮下注と後発など)の分は数量側に入れる。
新薬群:リンゾフィク・セムディシラン・第 XI 因子・遺伝子治療ほか
多発性骨髄腫の二重特異性抗体(リンゾフィク)、重症筋無力症の C5 siRNA(セムディシラン)、抗凝固の第 XI 因子抗体、難聴の遺伝子治療など。
| 数量年間の治療患者数(人) | 価格1 人あたり年間の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 120 | 170,000 | 0 | −3 |
| 10 年後 中立 | 13,000 | 170,000 | 22 | 4 |
取り方:2025 年の売上 約 0.2 億ドル(推定。リンゾフィクの立ち上がり)。患者 約 120 人(推定)に 1 人 約 17 万ドルを置いた疑似の値。第 XI 因子は、成功すれば患者数が桁違いに多いので、数量は楽観で急に増える形にした。営業利益は発売費用で赤字。研究開発費の大半は全社の調整(adjust)に入れる。
その他:プラルエント・エヴキーザ・その他の製品と収益
コレステロールのプラルエント(米国)、エヴキーザ、他社向けの製造収益などの合計。
| 数量販売患者数(万人) | 価格1 人あたり年間の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 11.0 | 12,000 | 13 | 5 |
| 10 年後 中立 | 15.5 | 16,800 | 26 | 9 |
取り方:2025 年の合計 約 13 億ドルを、患者 約 11 万人(推定)で割った 1 人 約 1.2 万ドル。プラルエント 約 2.7・エヴキーザ 約 1.6・その他製品 約 3・その他収益 約 7.5 を混ぜた疑似の値で、製造受託の収益は数量に混ぜている。価格は物価並みを基本。
リスクと懸念
デュピクセントへの依存と薬価・特許
リジェネロンの利益の過半はデュピクセントの取り分。米国で 2031 年前後に Medicare の交渉対象に選ばれる可能性(推定)と、2030 年代前半以降の特許切れがあり、純価格の引き下げが数量の伸びを上回れば取り分は減る。後発(バイオシミラー)の米国での発売は 2030 年代半ばまでは来ないとの見方だが、確かではない。
アイリーアの後発
旧アイリーアは 4〜6 月期に -45%。2026 年第 4 四半期から 4 社の後発が発売可能になり、旧品はさらに縮む。HD への切り替えが想定より遅れる、高用量の後発やロシュのバビスモに HD が食われると、米国の眼科売上(2025 年 約 45 億ドル)が 3 年で半分近くまで落ちる。
新薬の打率の低下
フィアンリマブ(黒色腫の第 3 相で未達)、イテペキマブ(COPD の 2 本のうち 1 本が未達で追加試験なしの申請は難しい)と、近年の失敗が続く。研究開発費は売上の約 4 割(年 65 億ドル)で、第 XI 因子の第 3 相も加わり、当たらなければ利益率が回復しない。
薬価政策(最恵国待遇・関税)
米国のバイオ薬は Medicare の価格交渉に加え、海外価格に合わせる最恵国待遇型の政策の対象になりうる。デュピクセントの価格は海外より高く、純価格が下がればリジェネロンの取り分が直接減る。関税の猶予の条件も不確実。
製造・品質
2026 年前半にアイルランド・リムリック工場で原薬製造が一時止まり、売上総利益率が低下した(通常には戻った)。単一の工場の問題でも、アイリーアなど自社製造の薬の供給が止まれば、売上と信頼の両方に大きな損失になりうる。品質問題は規制当局の検査でも見つかりやすい。
現金の使い道
178 億ドルの現金・有価証券は時価総額の 2 割を超える。自社株買いで高い値段を払う、収益性の低い導入に使う、といった資本配分の失敗で現金が消えるリスクがある。第 XI 因子の第 3 相の費用が膨らむ点も含む。
今後の分かれ目
- デュピクセントが 2031 年前後に Medicare の価格交渉の対象に選ばれ、交渉価格が大きく下がったら
- 協業収益の単価が下がる。やや悲観・悲観の確率を上げ、取り分を 1 割下げて見る。
- 第 XI 因子の抗体が末梢動脈疾患の第 3 相で出血を増やさずに血栓を減らしたら
- 新薬群が桁違いの市場に乗る。10 年の楽観・やや楽観の確率を上げ、倍率を上げて見る。
- アイリーア HD のプレフィルドシリンジが 2026 年末までに承認され、HD の投与が後発に食われなかったら
- 米国の眼科売上が下げ止まる。やや悲観の確率を下げ、眼科の 3 年の売上を 1〜2 割上げて見る。
- セムディシランが 2026 年 11 月に承認され、重症筋無力症で処方が伸びたら
- 新薬群の売上が上方に動く。楽観の確率をわずかに上げる。
- イテペキマブが COPD で追加の第 3 相に進まず、ほかの新薬の失敗も続いたら
- 研究開発費の効率が下がる。悲観の確率を上げ、営業利益率を下げて見る。
- Sanofi への開発費の完済後も、取り分の上昇が計画どおり出なかったら
- 2026 年後半以降の利益が想定より低い。取り分を 5% 下げて見る。
見ておくもの
- デュピクセントの世界売上(Sanofi の四半期)と、リジェネロンの協業収益、COPD・蕁麻疹の伸び
- アイリーア HD と旧アイリーアの米国売上、後発の発売と値下がり、プレフィルドシリンジの承認
- セムディシランの承認(2026 年 11 月の目標)と第 XI 因子の第 3 相の進み方
- リブタヨの術後補助療法の処方、リンゾフィクの売上
- 薬価政策(Medicare の価格交渉・最恵国待遇・関税)
- 自社株買いの規模と現金・有価証券の推移
倍率と資本コストの決め方
今の PER 18.1 倍・時価総額 813 億ドルを見る前に、6 つの事業ごとに患者数(投与回数)× 1 人あたりの取り分で 10 年の売上を積み上げ、利益率・還元を置いてから倍率を決めた。倍率は利益ベースの正当化 PER(k 8%・g 4%、RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k))の 8〜9 割強に置き、悲観は ROE が k 以下なので 1 ÷ k の 9 割と余った現金の半分で置いた。業界ノートの成熟後の倍率(14〜20 倍)や今の PER には寄せず、純現金は 1 ドルを 1 ドルで足した。ROE は現金を除いた自己資本の利益率で測る(帳簿の ROE 14% は余った現金で薄まっている)。結論が適正に出るのは、k を 8.0% に置いても、貯まる純現金と自社株買いによる還元が価値を支えるためで、これは計算の結論として最終段で今の値段と比べた。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β 0.60 × 5%。基本 8.0% に quality 0 を足して 8.0%。前は β 0.60(下限)で k 6.0% としていたが、v2 では β を使わず 4 つの目安で見る。医薬品は景気に動きにくいが、デュピクセント(共同開発の利益分配)に利益が偏り、薬価交渉と特許切れが 10 年の間に来る構造を寿命と値決めで相殺した。純現金 151 億ドルで借金は無く、財務の堅さで k は下げない。個別のリスク(デュピクセントの競合・新薬の打率・薬価政策)は k に足さず、確率と悲観の深さで表した。事業は黒字で存続の疑いも無いので、上乗せ(extra)は使わない。k 8.0% なので g は 4% 以下(k − g ≥ 3.5%)。