結論
ノバルティスは心不全、免疫疾患、多発性硬化症、がんに新薬を供給するスイスの大手製薬会社である。筆者の結論は「割高」だ。新薬を次々に生み出す力は評価できるが、今の収益の多くは2030年代前半に特許の壁が薄くなり、買収による補充にも費用と失敗が伴う。
2025年は財務台帳で売上548億ドル、営業利益171億ドル、純利益141億ドルを稼いだ。キスカリ、ケシンプタ、プルビクトの成長がエンレストや既存がん薬の後発品流入を補っている。2026年7〜9月期も売上は4%増え、調整後営業利益は11%増えたが、アビディティ買収で得たデル・デシランの試験不達による減損などで会計上の純利益は70%落ちた。この違いは株主にとって見過ごせない。
製薬は患者数の増加だけで伸びるわけではない。独占販売期間には高い純価格が取れても、特許切れ後は数量が増えても会社に残る単価が下がる。免疫薬のコセンティクス、乳がん薬キスカリ、多発性硬化症薬ケシンプタも10年後は今の独占を保つとは限らない。新薬と放射性医薬品、RNA治療が穴を埋める速度が株主価値を決める。
10年後の中立では新薬の普及と特許切れがほぼ綱引きとなり、売上は約697億ドル、純利益は173億ドルを見込む。5つの筋書きに確率をつけ、株主への正味の還元とともに資本コスト8%で現在価値に直すと約1,821億ドルであり、財務台帳の時価総額約2,954億ドルを約38%下回る。会社の存続を疑う評価ではないが、長く保有するための安全域は乏しい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、治療法の価値と株式の価値を区別したい。ノバルティスの薬を必要とする患者は10年後も確実にいる。問題は、その患者を治療する薬から生まれる利益が、後発薬や競合ではなく現在の株主にどれほど残るかである。処方薬のブランドは強いが、特許に守られた価格を永久の権利として買うべきではない。
2025年のフリーキャッシュフローは財務台帳で177億ドル、純利益は141億ドルだった。数字だけなら現金創出は優良だが、その現金の大部分は毎年の配当、買い戻し、新薬候補の獲得に再投資される。高いROEは値上げの力だけでなく、自己資本を縮めた株主還元の結果でもある。株主が本当に得るのは、買収と必要な研究費を払った後に残る現金だ。
アビディティの買収と減損はよい検証材料である。120億ドルの投資は成功すれば長い治療権益を生むが、失敗した研究開発費は取り返せない。規模と科学力は新しい薬を育てる助けになる一方、投じた元本の安全を保証しない。評価では新薬が全面成功する筋書きだけでなく、買収が外れ、高い薬価を守れない場合も数える。
2035年の中立では純利益が今より増えても、本質価値は現在の時価総額に届かない。株式の価値は、最も勢いのある新薬の売上だけではなく、2030年代の競争と株主還元を通じて決まる。事業を長く持てる自信はあるが、今の値段で十分な安全域があるとは言い難い。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は、特許や承認で保護された薬を病院、医師、卸、保険制度を通じて販売することだ。患者に必要な量が増えれば売上が伸びるが、会社の受取単価は償還価格やリベート、後発品の参入で動く。2023年に後発薬事業サンドを分離し、今は革新的医薬品に集中した単一の報告事業である。主な収入源は会社が開示する四つの重点治療領域と既存品であり、心不全薬と新しい循環器薬は独占の期限が違うため分けて考える。
循環器・腎・代謝領域では心不全薬エンレストが2025年に77億ドル余を稼いだが、米国では後発品競争が始まった。代わる成長源は年2回投与の脂質低下薬レクビオ、腎疾患薬バンラフィア、将来の循環器開発薬である。免疫領域ではコセンティクス、イラリス、ゾレアが柱で、経口薬ラプシドの販路が広がる。ただし乾癬ではアッヴィのスキリージやリンヴォック、サノフィのデュピクセントが強い。
神経領域は自宅で使える多発性硬化症薬ケシンプタと、一度の投与で高額な遺伝子治療ゾルゲンスマ系からなる。2026年に買収したアビディティのRNA治療候補を含め、少数の患者に高い治療価値を届ける方向へ広がる。がん領域はキスカリ、白血病薬セムブリックス、放射性医薬品プルビクト、既存のタフィンラー・メキニストなどが支える。古いブランド群は特許切れ後も売上を残すが、利益を増やす柱にはなりにくい。
2025年の治療領域別売上は会社が公表しているが、製品群別の営業利益や実際の患者年数は開示しない。数量は代表薬の売上、治療市場、推定の実現単価から年間治療患者換算で組み立てた。これは患者数そのものの公式開示ではなく、薬の構成が変わると平均単価も動く指標である。
優良さと弱いところ
強みは一つの特許ではなく、治験の設計から多国の承認、製造、医師への浸透までを繰り返せることだ。キスカリでは早期乳がんの適応拡大、ケシンプタでは自宅投与、プルビクトでは放射性医薬品の供給網が競争力になった。こうした実行力は小規模な新興企業が簡単には再現できず、新薬開発へ再投資する土台になる。
ただし堀、つまり競争相手を遠ざける力は製品ごとに期限を持つ。エンレストでは後発品の流入で2026年7〜9月期の売上が前年同期比38%減った。薬価の値上げを自由に続けられる事業ではない。米国の薬価交渉や欧州の償還制度もあるため、価格決定力は特許期間内であっても限定的だ。コセンティクスやキスカリも2030年前後に重要な特許期限を迎える。
資本の稼ぐ力は高い。2025年のROEは30%台だが、自己資本が過去の自社株買いで縮んだ影響もある。営業利益から税を引き、自己資本と純有利子負債の合計で割った粗いROICは2割前後であり、8%の株主資本コストを上回る。だが買収先の開発薬まで含めた新規投資が同じ利回りになる証拠はない。2026年の大型買収直後の減損がその警告だ。
再投資の質を評価するうえで、調整後利益と会計上の利益を分ける必要がある。開発中の薬の減損や株式報酬も株主の負担だ。2023年の事業分離で利益率が高まった点を認めても、研究が長期にわたり当たり続ける恒久的な独占企業とはみなさない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
医薬品の需要は景気に左右されにくく、高齢化や診断率の上昇で治療人数は増える。IQVIAによれば世界のがん治療薬支出は2024年に2,520億ドルで、2029年には4,410億ドルへ拡大する見通しだった。ただしこれは主に表示価格で測った市場であり、ノバルティスのリベート後の純売上と単純に割り算して厳密なシェアにはできない。拡大する市場でも既存薬の独占は永続しない。
競争の強さは薬効ごとに違う。2025年のCDK4/6阻害薬の代表3品では、キスカリ約48億ドルに対しイーライリリーのベージニオは約57億ドル、ファイザーのイブランスは約41億ドルで、3品の売上に占めるキスカリは約33%だ。早期乳がんの新規処方ではシェアを伸ばしているが、キスカリの米国の基本特許期限は2031年とされる。免疫のコセンティクス約67億ドルもアッヴィのスキリージ約176億ドルに規模で劣る。
多発性硬化症の患者は世界で約310万人と報告され、薬剤市場は主要先進国で年200億ドル前後との業界推計がある。ケシンプタ約44億ドルは有力だが、ロシュのオクレバスが大きく、価格と投与の利便性で競う。脂質低下薬レクビオ約12億ドルに対してアムジェンのレパーサは約30億ドルで、処方や保険の採用余地は残る。
業界の最大の構造変化は、特許切れと薬価交渉の重なりだ。低分子薬は後発品参入後に数年で売上の大半を失い、抗体薬はバイオ後続品との競争が比較的緩やかでも値下げが続く。米国のメディケア交渉、最恵国待遇政策、薬価透明化と各国の財政圧力が純価格を抑える。AIは標的探索や臨床試験の効率を変えるが、この会社は人月、席課金、広告運用、情報販売を主な商品としないため、指定された「AIエージェント代替」の事業類型には該当しない。
資本政策と M&A
資本配分は研究開発と買収を優先し、余剰を配当と自社株買いで返す方針である。2025年は財務台帳で配当79億ドル、自社株買い93億ドル、株式報酬11億ドルだったため、正味の還元は約161億ドルとなる。2025年7月には最大100億ドルの新たな自社株買い枠を発表した。2026年9月末時点で約49億ドルが残っており、実施枠は確約された毎年の買い戻し額ではない。
2023年のサンド分離は低い成長率と収益性の事業を外し、収益構造を改善した。しかし買収の成果はまだ評価が割れる。2025年にトルマリン・バイオを取得し、2026年2月にはアビディティを約120億ドルで買収した。後者の主力開発候補デル・デシランは第3相の主要評価項目を達成せず、2026年7〜9月期に約19億ドルの減損が生じた。さらに循環器候補ペラカルセンにも試験不達がある。
最新の会社発表では2026年9月末の純負債は374億ドルへ増えた。2025年の財務台帳の238億ドルより重く、借り換え金利の上昇も長期利益から差し引く。会社は2025〜2030年の売上を現地通貨ベース年5〜6%伸ばす目標を掲げ、2026年通期の調整後営業利益見通しを横ばい〜低い1桁増へ引き上げた。配当は増配を続ける意向だが、10年間の還元総額に数字の約束はない。金利が5%前後へ借り換わる前提では、財務台帳による税前の追加利払い年約4億ドルを2035年の純利益に織り込む。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
新薬の成長力を過小評価してはいけない。2026年7〜9月期のキスカリは37%、ケシンプタは22%、セムブリックスは67%、レクビオは63%成長した。エンレストの後発品競争で大きな売上を失いながら、全社で増収を保ったのは製品を置き換える実力の証拠である。早期乳がん、再発型多発性硬化症、高コレステロール血症には治療を受けていない患者が多く、新しい適応で患者数も増やせる。
放射性医薬品のプルビクトは投与施設と同位体の供給体制が必要であり、薬の処方箋だけをまねても競争に参加しにくい。RNA医薬や遺伝子治療、経口の免疫新薬が成功すれば、コセンティクスやキスカリの特許切れを置き換えられる。会社は2025〜2030年に現地通貨ベース5〜6%の売上成長を計画し、8つの販売中の製品に大型化の可能性を見込む。2030年代にも複数の新薬が成長すれば、10年後の治療患者換算は大幅に増える。
2023年のサンド分離によって研究資源と販売費が成長薬に集中し、2025年の営業利益率は3割を超えた。売上の構成がさらに高付加価値薬へ移れば、研究開発費の増加を吸収して高い資本利益率を続けられる。アビディティには主要候補以外の筋疾患向け薬もあり、一度の臨床試験失敗で買収全体を無価値と断じるのは早い。
慎重な見方
今の成長薬に高い収益を永久に認めるのは危険だ。会社の2025年開示ではエンレストの米国独占が崩れ、コセンティクスの基本特許は2029年、キスカリとケシンプタは2031年、プルビクトとレクビオは2034年前後に期限を迎える。2035年の売上の多くは、今まだ承認されていない薬から稼ぐ必要がある。臨床試験の成功率も薬価も十年先まで確定していない。
実際、2026年7〜9月期はデル・デシランの試験不達で約19億ドルが減損され、別の循環器候補ペラカルセンも失敗した。調整後営業利益の増加だけを見れば、この損失は見えなくなる。買収価格が巨額になるほど新薬候補の価値を楽観的に見積もった時の損失が大きくなる。買収費用と増えた借金は、配当や買い戻しに使えた現金を先に奪う。
競争は一方通行に強まる。免疫薬ではアッヴィのスキリージがコセンティクスを上回り、乳がんではイーライリリーとファイザー、神経領域ではロシュが競う。薬価制度が変われば、処方数量が伸びても純価格が下がる。治験や供給網に優位があっても患者側の支払い能力を超える価格は取れない。2025年の高いROEは自社株買いで自己資本が薄い影響もあり、新規買収の利回りの保証ではない。
どちらに重みを置いたか
患者需要と研究開発基盤では成長を評価するが、十年間の利益の再現性は慎重に見る。エンレストの売上減を新薬が補った実績は重い一方、2030年代の特許切れと2026年の大型買収直後の減損は、置き換えが無償ではないことを示した。確率は楽観側30%に対してやや悲観・悲観を計37%とやや厚くし、中立33%を中心にした。これはAIによる事務作業の代替を恐れた調整ではなく、製薬固有の特許と治験のリスクである。現在の価格に安全域はないとの結論を優先する。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 122.96 ドル2,404 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 56.52 ドル1,105 億ドル)。 今の値に割り戻すと 95.42 ドル1,865 億ドル、今との差 −40.7%、 期待の年率 +1.3%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 281.16 ドル5,497 億ドル | 84.40 ドル1,650 億ドル | +127.4% | +10.0% | 36.56 ドル715 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 181.31 ドル3,545 億ドル | 74.17 ドル1,450 億ドル | +58.9% | +5.7% | 51.10 ドル999 億ドル |
| 中立 | 33% | 128.82 ドル2,518 億ドル | 63.43 ドル1,240 億ドル | +19.6% | +2.2% | 63.44 ドル1,240 億ドル |
| やや悲観 | 25% | 51.69 ドル1,011 億ドル | 40.41 ドル790 億ドル | −42.7% | −6.7% | 23.03 ドル450 億ドル |
| 悲観 | 12% | 26.21 ドル513 億ドル | 18.41 ドル360 億ドル | −72.2% | −14.2% | 5.36 ドル105 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 122.96 ドル2,404 億ドル | 56.52 ドル1,105 億ドル | +11.6% | +1.3% | 179.48 ドル3,509 億ドル |
今の株価時価総額 160.79 ドル3,143 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 楽観:がんとRNA医薬の新製品が特許切れを上回る 利益 298 億ドル · PER 18.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 281.16 ドル5,497 億ドル
キスカリの早期乳がんでの浸透が続き、2030年代には次世代のがん薬と放射性医薬品が新たな売上を作る。がん領域の年間治療患者換算は40万人から90万人へ伸びる。競合のイーライリリーやファイザーが強くても、広い適応と放射性医薬品の供給力でシェアを広げる。エンレストは後発薬に押されるが、循環器の新薬群とレクビオが代わりに育つ。
コセンティクスの独占が切れた後もラプシドなどが免疫領域を拡大させ、ケシンプタの特許期限後には神経・筋疾患のRNA治療が成功する。アビディティのデル・デシランの失敗は2026年の損失として受け止め、別の筋疾患候補が長期の販売に育つ。成長薬の混合比率が上がり、営業利益率は約35%になる。
2026年の会計利益を約102億ドルとし、その後は新薬上市で増え2035年に298億ドルとなる。期間合計2,257億ドルから、配当と株式報酬控除後の買い戻し1,650億ドルを返す。それでも残る利益は研究設備と買収で生かされ、資本効率を保つ。薬価規制を受けても数量成長が勝つ、成功例が重なる展開だ。
- エンレスト(心不全):数量 70.0(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 2,700(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 19 億ドル・営業利益 4 億ドル。特許切れでも一部売上を維持
- レクビオと循環器・腎の成長薬:数量 100(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 9,000(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 90 億ドル・営業利益 30 億ドル。循環器の新薬が複数成功
- 免疫(コセンティクス・イラリス・ゾレア・ラプシド):数量 85.0(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 28,000(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 238 億ドル・営業利益 90 億ドル。経口免疫薬が広がる
- 神経(ケシンプタ・ゾルゲンスマ系・RNA薬):数量 37.0(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 45,000(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 167 億ドル・営業利益 53 億ドル。RNA治療と遺伝子治療が成功
- がん(キスカリ・プルビクト・セムブリックス等):数量 90.0(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 52,000(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 468 億ドル・営業利益 206 億ドル。放射性医薬品・新適応が伸びる
- 既存ブランド薬群:数量 240(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 3,350(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 80 億ドル・営業利益 19 億ドル。後発品移行で縮小
倍率:資本コストk8.0%、長期g4.0%(患者数の実質増加約3%、市場シェア維持〜微増と競争による実質純価格低下を合算)で、2035年ROE27.9%を伸びに要る自己資本の利回りとした。moatはnormal、超過ROEの残存率1/2からRONIC17.95%、翌期利益ベースの正当化PERを当期換算すると20.21倍。新薬の連続成功と放射性医薬品の実行力を認め上限の90%の18.18倍。GAAP純利益を使用し買収償却・株式報酬の二重加算をしない。
確率:会社の成長薬が特許切れを上回り、RNA治療と放射性医薬品で複数の世界的成功が重なる展開。可能性はあるが、2026年の治験失敗後にこの連勝を基本形とはできず10%。
やや楽観 20% やや楽観:新薬の入れ替えが着実に成功する 利益 222 億ドル · PER 15.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 181.31 ドル3,545 億ドル
エンレストの売上は大幅に減るが、レクビオなど循環器新薬が十分に広がる。免疫ではコセンティクスの独占終了をラプシドと次世代薬が補い、神経ではケシンプタの後継薬と一部の希少疾患薬が育つ。がんではキスカリの早期乳がんでの優位を後発薬参入まで生かし、プルビクトやセムブリックスの次につながる放射性医薬品を発売する。
2025年と比べてがん領域の治療患者換算は約1.9倍となる。ただし平均単価は特許切れと医療保険の交渉で物価ほどは伸びない。アッヴィ、ロシュ、イーライリリーと競いながら、研究費を抑え過ぎずに売上を約850億ドルへ伸ばす。営業利益率は3割台前半となり、過去の最高益率を無条件には維持しない。
2026年は買収した開発薬の減損を含め利益が鈍るが、2030年以降に新薬の販売が増え、2035年の会計純利益は222億ドル近くに達する。10年の利益累計1,859億ドルに対し、正味の還元は1,450億ドルとする。借金を増やし続けず、株主の取り分を残す成功の筋書きである。
- エンレスト(心不全):数量 65.0(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 2,600(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 17 億ドル・営業利益 4 億ドル。低単価の後発品が増える
- レクビオと循環器・腎の成長薬:数量 78.0(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 9,000(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 70 億ドル・営業利益 21 億ドル。レクビオと新薬が台頭
- 免疫(コセンティクス・イラリス・ゾレア・ラプシド):数量 70.0(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 26,000(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 182 億ドル・営業利益 66 億ドル。コセンティクスの穴を補う
- 神経(ケシンプタ・ゾルゲンスマ系・RNA薬):数量 31.0(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 42,000(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 130 億ドル・営業利益 39 億ドル。新薬が徐々に患者を獲得
- がん(キスカリ・プルビクト・セムブリックス等):数量 77.0(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 48,000(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 370 億ドル・営業利益 148 億ドル。早期乳がんと新薬の裾野拡大
- 既存ブランド薬群:数量 245(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 3,300(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 81 億ドル・営業利益 20 億ドル。成熟品の低価格化
倍率:k8.0%、長期g3.5%(患者数増2%台、シェア横ばい、薬価は物価を下回る)で、2035年ROE25.5%、moat normalの残存率1/2からRONIC16.73%。当期利益換算の正当化PER18.19倍の86%として15.64倍。既存製品の特許期限と償還価格の抑制が残るため上限満額にはしない。GAAP純利益でありSBCは費用に含む。
確率:キスカリとケシンプタの処方拡大、プルビクトの適応拡大を評価する。大きな買収失敗を繰り返さず、2030年代も新薬が補充される展開を20%とした。
中立 33% 中立:薬の補充と特許切れがほぼ釣り合う 利益 173 億ドル · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 128.82 ドル2,518 億ドル
2026年の増収は小幅でもキスカリとケシンプタの患者数が増え、2025〜2030年の会社目標に近い拡大を一度は実現する。しかし2030年代に入るとキスカリ、ケシンプタ、コセンティクスの特許切れが重なり、後発薬への交代が売上を押し下げる。プルビクトやレクビオも2034年ごろから独占の先行きが難しくなるため、新薬群は数量を伸ばしても販売単価が物価ほど上がらない。
免疫と神経は既存の治療患者を守りながら、新しい適応と製品への入れ替えで微増にとどまる。がん領域は40万人相当の治療量が66万人相当へ増え、平均実現単価の上昇は約1割に限られる。エンレストと成熟薬は後発品に浸食され、全社売上は約697億ドル、営業利益率は31%弱となる。大手製薬としての経営基盤は残るが、恒久的な価格支配は得られない。
2026年は買収薬の減損を反映して会計純利益を約100億ドルと見込み、2031〜2032年の特許切れ後にいったん減益、その後2035年に173億ドルまで回復する。累計純利益1,539億ドル、正味の還元1,240億ドルで自己資本は約760億ドルに増える。大型買収の追加失敗は避けるが、既存薬の穴を完全には埋められない。
- エンレスト(心不全):数量 60.0(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 2,500(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 15 億ドル・営業利益 3 億ドル。特許切れで純価格・人数が低下
- レクビオと循環器・腎の成長薬:数量 70.0(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 8,000(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 56 億ドル・営業利益 14 億ドル。後継循環器薬が育つ
- 免疫(コセンティクス・イラリス・ゾレア・ラプシド):数量 61.0(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 23,500(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 143 億ドル・営業利益 50 億ドル。高単価薬の後発流入と新薬
- 神経(ケシンプタ・ゾルゲンスマ系・RNA薬):数量 27.0(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 39,000(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 105 億ドル・営業利益 32 億ドル。ケシンプタの補充は一部
- がん(キスカリ・プルビクト・セムブリックス等):数量 66.0(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 46,000(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 304 億ドル・営業利益 118 億ドル。新薬は増えるが旧主力の穴が大きい
- 既存ブランド薬群:数量 245(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 3,000(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 74 億ドル・営業利益 17 億ドル。価格下落で減収
倍率:k8.0%、2035年以降g3.0%(治療人数・投与拡大が実質約4%伸び、成熟薬の侵食と純価格下落で約1%差し引く)。2035年ROE22.8%は自己資本760.3億ドルに対するGAAP純利益173億ドルで、moat normalのRONIC15.38%。10年目の利益用の正当化PER16.58倍の83%として13.76倍。治験と特許切れの不確実性を利益の質に反映した。市場のPERは使わない。
確率:2030年までは会社の成長目標に近づくものの、その後の特許切れと価格下落が利益を押さえる。新薬の成否が混在する現実的な中心として33%。
やや悲観 25% やや悲観:特許切れと研究失敗が重なる 利益 75 億ドル · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 51.69 ドル1,011 億ドル
2028〜2032年の特許切れと公的保険の薬価交渉が重なり、新薬の承認は遅れ始める。免疫ではアッヴィのスキリージなどにシェアを奪われ、コセンティクスの患者数と純価格がともに弱い。神経ではロシュなどの治療法との競争に加え、ケシンプタの独占終了で単価が落ちる。キスカリやプルビクトも後発品と新しい治療法に置き換わり、がん領域の治療患者換算は48万人相当にとどまる。
エンレストと成熟薬は価格が下がり続け、成長薬が補充できるのは失われる売上の一部だけとなる。売上は約425億ドルへ減り、研究費や製造施設を急には減らせず営業利益率は23%弱まで落ちる。2026年の開発薬減損に続き、後の買収でも期待した利益を得られないため、資本の使い方は守りに変わる。
利益は2020年代後半を頂点に減り、2035年の純利益は75億ドルとなる。10年の累計純利益959億ドルから配当を主とする正味790億ドルを返し、買い戻しを絞る。後半には配当も減額し、配当を守るための無理な借り入れはせず、業界での優良さを失いかけた企業になる。
- エンレスト(心不全):数量 43.0(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 1,700(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 7 億ドル・営業利益 1 億ドル。後発品への交代
- レクビオと循環器・腎の成長薬:数量 50.0(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 6,500(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 33 億ドル・営業利益 5 億ドル。新薬の承認が遅い
- 免疫(コセンティクス・イラリス・ゾレア・ラプシド):数量 48.0(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 18,000(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 86 億ドル・営業利益 23 億ドル。競合へシェア流出
- 神経(ケシンプタ・ゾルゲンスマ系・RNA薬):数量 22.0(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 28,000(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 62 億ドル・営業利益 14 億ドル。ケシンプタ後継が不足
- がん(キスカリ・プルビクト・セムブリックス等):数量 48.0(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 39,000(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 187 億ドル・営業利益 58 億ドル。がん薬の競争が激化
- 既存ブランド薬群:数量 200(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 2,500(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 50 億ドル・営業利益 9 億ドル。数量・価格ともに低下
倍率:k8.0%、長期g1.5%(患者の実質需要増よりシェア喪失と薬価下落が勝る)、ROE11.9%、moat normalでRONIC9.95%。当期利益換算の正当化PER13.26倍に対し12.07倍を採用する。中立より低い倍率で、需要増でも株主の取り分が限られる構造を反映。GAAP純利益を維持する。
確率:エンレストの実際の侵食と2026年の買収薬減損は、2030年代に複数製品が同時に失速する可能性を示す。独占切れと研究失敗が重なる確率を25%。
悲観 12% 悲観:研究の連敗で大型薬の穴を埋められない 利益 50 億ドル · PER 10.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 26.21 ドル513 億ドル
新薬の開発失敗が続き、2026年のデル・デシランとペラカルセンの試験不達は始まりにすぎなかったと判明する。買収したRNA医薬が商業化に至らず、キスカリ、コセンティクス、ケシンプタ、プルビクトの特許切れの穴を埋められない。イーライリリー、アッヴィ、ロシュ、放射性医薬品の新興勢が患者を奪い、既存の薬にも厳しい薬価規制が広がる。後発品が使われるため医療需要は消えないが、ノバルティスが受け取る売上は縮む。
がん領域の治療患者換算は33万人まで減り、平均純価格も今より3割近く落ちる。免疫、神経、循環器でも新薬の販売失敗と低価格化が同時に起き、全社の製品群売上は約241億ドルに落ち込む。研究所と工場を縮小しても収益性は戻らず、営業利益率は26%程度、純利益は50億ドルにとどまる。これは景気の谷ではなく競争力を失う長期の姿だ。
2026年に約88億ドルの利益を残した後、2031〜2033年に開発費と減損で利益が小さくなり、10年累計は494億ドルに低下する。買い戻しを中止し2030年以降は配当も減らすため、正味還元は360億ドルとし、債務の返済を優先する。事業がなお黒字であるためゼロ評価にはしないが、継続投資による高収益の再現を前提にしない。
- エンレスト(心不全):数量 30.0(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 1,200(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。利益の大半を失う
- レクビオと循環器・腎の成長薬:数量 29.0(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 5,000(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 15 億ドル・営業利益 3 億ドル。新製品の失敗
- 免疫(コセンティクス・イラリス・ゾレア・ラプシド):数量 37.0(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 15,000(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 56 億ドル・営業利益 19 億ドル。免疫薬の競争力を失う
- 神経(ケシンプタ・ゾルゲンスマ系・RNA薬):数量 14.0(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 22,000(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 31 億ドル・営業利益 9 億ドル。RNA医薬の失敗・縮小
- がん(キスカリ・プルビクト・セムブリックス等):数量 33.0(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 30,000(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 99 億ドル・営業利益 32 億ドル。後発品と他療法へ移行
- 既存ブランド薬群:数量 170(推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算))× 価格 2,200(年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動))→ 売上 37 億ドル・営業利益 9 億ドル。成熟薬中心の販売に戻る
倍率:k8.0%、長期g0%(治療市場の拡大を失うシェアと後発品の値下げが打ち消す)、ROE8.4%、moat normalでRONIC8.20%。当期利益換算の正当化PER12.50倍に対し10.25倍に抑える。利益の質と新規再投資の不確実性を理由に安全域を厚くし、時価総額512.5億ドルは現在の自己資本461.3億ドルの暫定的な床も上回る。
確率:2031年以降の主要特許切れに新薬の失敗と薬価規制が重なり、研究・販売の競争力が長期低下する尾部事象。会社の存続は続くと見て12%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
エンレスト(心不全)
心不全治療薬エンレスト。米国で2025年から後発薬が入り、現金創出から急速に縮小する既存の柱。
| 数量推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算) | 価格年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 170 | 4,558 | 77 | 31 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 2,500 | 15 | 3 |
取り方:会社20-Fによるエンレストの2025年製品売上77.48億ドルを直接採用。2026年の世界心不全患者は6,400万人超と世界心臓連合が推定しており、170万人はその約2.7%に当たるが、実際に薬剤投与に適する割合とは異なる。同社は投与患者を公表しないため、年間治療患者170万人、リベート後の患者年価格4,558ドルを一組の推定尺度とした。2026年米国の後発品競争で第3四半期は前年同期比38%減。2035年は患者数・売上構成とも後発品へ移るため名目価格は物価上昇に逆行する。営業利益は製品群別に非開示であり、製造原価・研究開発の性格から置いた推定である。各群の推定合計196.5億ドルから共通研究・本社等25.8億ドルを控除すると財務台帳の170.7億ドルに一致する。
レクビオと循環器・腎の成長薬
脂質低下薬レクビオ、腎疾患薬バンラフィア、将来の循環器新薬候補。
| 数量推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算) | 価格年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 20.0 | 6,055 | 12 | −2 |
| 10 年後 中立 | 70.0 | 8,000 | 56 | 14 |
取り方:会社20-Fの循環器・腎・代謝売上89.59億ドルからエンレスト77.48億ドルを引いた12.11億ドルで、主にレクビオ11.98億ドルとバンラフィア0.13億ドル。2025年時点の年間治療患者換算20万人、平均純価格6,055ドルは推計で、レクビオの注射回数と実質受取価格をならした。アムジェンのレパーサは2025年30.16億ドルでレクビオの約2.5倍。両製品合計の売上に占めるレクビオの比率は約28%だが、その他の脂質低下治療を含めた市場シェアではない。2035年はレクビオの2034年ごろの米国独占切れと新規循環器薬の入れ替えを数量・混合単価に反映する。営業利益は製品群別に非開示であり、製造原価と研究開発費の配分から推定した。
免疫(コセンティクス・イラリス・ゾレア・ラプシド)
炎症性疾患や自己免疫疾患に長く使う薬。経口のラプシドが既存抗体薬の特許切れを補えるかが争点。
| 数量推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算) | 価格年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 44.0 | 23,393 | 103 | 38 |
| 10 年後 中立 | 61.0 | 23,500 | 143 | 50 |
取り方:会社20-Fの免疫領域102.93億ドル=コセンティクス66.68+イラリス18.83+ゾレア17.23+ラプシド0.19。長期投与の抗体薬と一部希少疾患薬の年間患者換算44万人、純価格2万3,393ドルは製品群を合わせた推定尺度。2025年の競合アッヴィのスキリージ175.62億ドル、リンヴォック83.04億ドルと比較し、コセンティクスとスキリージの二製品合計に対するコセンティクスの売上比率は約28%だが、免疫疾患全市場のシェアではない。2030年前後のコセンティクスのバイオ後続品、2026年の経口薬ラプシドの立ち上がりを別々に見積もる。営業利益は製品群別に非開示であり、製造原価と研究開発費の配分から推定した。
神経(ケシンプタ・ゾルゲンスマ系・RNA薬)
多発性硬化症薬と高額の遺伝子治療。2026年に取得した筋疾患RNA薬候補の開発リスクを含む。
| 数量推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算) | 価格年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 16.0 | 37,456 | 60 | 23 |
| 10 年後 中立 | 27.0 | 39,000 | 105 | 32 |
取り方:会社20-Fの神経領域59.93億ドル=ケシンプタ44.26+ゾルゲンスマ系12.32+エイモビグ3.35。年間患者換算16万人、平均純売上3万7,456ドルは推計で、高価な単回遺伝子治療の患者を年間治療単位として加えた混合指標である。2026年時点の世界の多発性硬化症患者は約310万人、ケシンプタは発売以来累積22.6万人以上に使用されたが、累積人数と年間投与数は同一視しない。ケシンプタ44.26億ドルは2025年の先進国MS薬市場約200億ドルと比較して売上規模で約22%に相当するが、地域と計上基準の違いで厳密なシェアではない。ロシュのオクレバスが最大級の競争相手。アビディティ買収薬の試験成否とケシンプタ2031年独占切れを数量に含める。営業利益は製品群別に非開示であり、製造原価と研究開発費の配分から推定した。
がん(キスカリ・プルビクト・セムブリックス等)
乳がん・白血病・前立腺がんなどの標的治療。放射性医薬品の製造と承認が新しい収益源となる。
| 数量推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算) | 価格年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 40.0 | 42,075 | 168 | 63 |
| 10 年後 中立 | 66.0 | 46,000 | 304 | 118 |
取り方:会社20-Fによるがん領域168.30億ドル。キスカリ47.83、タフィンラー・メキニスト22.15、ジャカビ21.10、プルビクト19.94、セムブリックス12.85などの製品売上を合算する。年間治療患者40万人、平均純売上4万2,075ドルは投薬期間や放射性医薬品の違いを均した推計。2025年のCDK4/6阻害薬の主要3品売上ではキスカリが約33%で、競合はイーライリリーのベージニオ約57億ドルとファイザーのイブランス約41億ドル。IQVIAの2024年世界がん薬支出2,520億ドルは表示価格ベースで、会社の純売上と厳密なシェア比較はできない。営業利益は製品群別に非開示であり、製造原価と研究開発費の配分から推定した。
既存ブランド薬群
サンドスタチン、エクスフォージ、ルセンティス、ディオバンなどの成熟ブランド。後発薬による単価低下が続く。
| 数量推定の年間治療患者換算(万人、製品群内で患者年を加算。単回治療は年間投与換算) | 価格年間治療患者換算1人当たりの平均純売上(米ドル、リベート後、品目構成で変動) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 300 | 4,152 | 125 | 43 |
| 10 年後 中立 | 245 | 3,000 | 74 | 17 |
取り方:会社20-Fが「既存ブランド」として公表した2025年売上124.57億ドルを採用。サンドスタチン12.13、エクスフォージ7.27、ルセンティス6.43、ディオバン6.04億ドルなどを含む。年間治療患者換算300万人、単価4,152ドルは複数の低価格薬を混ぜた推計であり、実患者数の公表ではない。後発品の浸透で2035年の実現単価を物価以下とした。六群の開示売上合計545.32億ドルと、正本とする添付財務台帳548.1億ドルの差2.78億ドルは集計範囲の差として明示し、架空の製品売上に配分しない。営業利益は製品群別に非開示であり、製造原価・研究開発の性格から置いた推定である。各群の推定合計196.5億ドルから共通研究・本社等25.8億ドルを控除すると財務台帳の170.7億ドルに一致する。
リスクと懸念
主力薬の特許切れ
エンレストはすでに米国で後発品競争に入り、2026年7〜9月期売上は38%減った。コセンティクスは2029年、キスカリとケシンプタは2031年、プルビクトとレクビオは2034年前後に重要な保護が薄くなる。販売量が残っても、薬価が大幅に下がればかつての利益率は維持できない。新薬による穴埋め率を四半期ごとに確かめる必要がある。
買収した開発薬の臨床失敗と減損
2026年2月に約120億ドルで取得したアビディティのデル・デシランは第3相試験の主要評価項目を満たさず、同年7〜9月期に約19億ドルの減損を計上した。さらに循環器候補ペラカルセンも主要評価項目に達しなかった。開発中の薬は承認まで売上を生まず、買収代金は先に現金や借金として確定する。大型買収を追加するほどこの非対称性は大きくなる。
薬価交渉と規制
米国のメディケア薬価交渉、最恵国待遇をめぐる政策、各国の償還交渉は新薬の実現価格を押し下げる。人口の高齢化で患者数が増えても、実現単価が毎年数%下がれば売上が伸びない。関税や供給拠点の現地化による費用増、販売対象の制約も利益率を損なうため、処方数量と純価格の寄与を分けて見る。
治療法の競争とシェア喪失
免疫ではアッヴィのスキリージ、乳がんではイーライリリーのベージニオとファイザーのイブランス、神経ではロシュのオクレバスが強い。新しい抗体、RNA薬、放射性医薬品が普及すれば、現在のブランド薬で取れた患者が競合に移る。医師の処方実績や安全性情報に強みはあるが、臨床上の差が覆れば特許期間中でも新規処方は失われうる。
放射性医薬品・遺伝子治療の製造難度
プルビクトは放射性同位体、治療施設、輸送時間の制約を受け、需要を取るだけでは販売できない。遺伝子治療やRNA薬も製造コストと規制審査が重い。供給網が堀になる半面、拡張投資の遅れや品質問題があれば承認適応を増やしても利益が伴わない。安全性シグナルや製造停止が生じた場合には数量と利益率を同時に引き下げる。
純負債の拡大と買い戻しの質
2025年財務台帳の純有利子負債は238億ドルだったが、2026年9月末の会社発表では374億ドルへ増えた。買収と年間配当、買い戻しの支出がフリーキャッシュフローを上回ったためだ。格付けは高いものの、長期金利5%前後の前提では借り換え後の利払いが増える。株式報酬による希薄化を相殺する買い戻しを株主への純還元と二重計上しない。
為替・ADRと株主の受取額
ノバルティスはスイスの企業で、NVSは普通株1株に対してADR1口の預託証券である。株式価値はADRの発行口数ではなく全普通株に属する。スイスフラン建ての配当や米ドル換算の会計数字は実際には為替で変わり、スイスの源泉徴収税とADR手数料も手取りに影響する。評価上は指定に従いドル円と為替を一定とするため、個々の投資家の税後受取額は別問題である。
今後の分かれ目
- 2027〜2029年のキスカリ売上が会社の想定するピーク100億ドル以上へ近づき、早期乳がんの新規処方で競合優位を保つなら
- がん領域の治療患者換算を増やし、やや楽観と楽観の比重を上げる。ただし2031年の基本特許期限は残し、2035年の価格を無制限には上げない。
- 2027〜2030年にラプシドや新しい免疫薬が拡大し、コセンティクスの後発品による売上減を相殺したなら
- 免疫領域の数量と価格の組み合わせを中立以上へ修正する。アッヴィのスキリージとのシェア比較も更新し、増分利益率を確かめる。
- アビディティ由来の筋疾患治療薬が承認され、買収投資を回収できる売上が確認されたなら
- 神経領域の新薬患者数を引き上げ、買収による追加減損の確率を下げる。研究開発費を差し引いた増分ROICも測り直す。
- 2027年以降もエンレストの後発品による侵食が続き、レクビオと循環器新薬の売上が追いつかなければ
- 循環器の販売数量を中立からやや悲観へ下げ、配当余力を再計算する。純価格の低下を物価上昇で相殺できるとは扱わない。
- 主要新薬の第3相試験不達が連続し、年間の減損や取得無形資産の償却が大幅に増えたなら
- 調整後ではなくGAAP純利益の道筋と買収費用を悪化させ、やや悲観・悲観の確率を上げる。新規買収の再投資利回りも下げる。
- 2027〜2030年に米国の純価格が政策で累計15%以上低下する一方、処方数量が伸びなかったなら
- 免疫とがんの平均純価格を引き下げ、営業利益率の悪化を悲観側に反映する。規制だけを理由に資本コストを二重に上乗せしない。
- 純負債が400億ドル以上にとどまり、正味の配当と買い戻しがフリーキャッシュフローを超え続けたなら
- 成長投資と還元を同時には続けられないと判断する。payoutを下げ、利払い増を純利益に含め、必要ならM&A失敗の確率を増やす。
見ておくもの
- 四半期のキスカリ・ケシンプタ・セムブリックス・プルビクト・レクビオの売上と数量成長、価格寄与
- エンレスト・コセンティクス・キスカリ・ケシンプタの特許期限と後発薬の参入時期
- 免疫新薬ラプシド、がんの放射性医薬品、筋疾患RNA薬の承認と患者数
- 治験第3相の主要評価項目達成率と買収した研究開発資産の減損額
- 2025〜2030年の売上成長目標5〜6%とGAAP営業利益率の差、調整後利益との差
- 純負債、借り換え金利、フリーキャッシュフロー、株式報酬控除後の正味株主還元
- 免疫でアッヴィ、乳がんでイーライリリーとファイザー、神経でロシュとの処方シェア比較
倍率と資本コストの決め方
価値の数字は今のNVS株価や市場のPERから逆算していない。2025年の治療領域別製品売上を起点に、患者年換算という明示した推定数量とリベート後の平均単価を別々に変えた。後発薬の数量・単価減と新薬の代替を織り込み、GAAP営業利益、純利益、正味還元、自己資本の道筋を合わせた。倍率はk8.0%、各筋書きの長期g、2035年ROEから出るRONICと堀の残存率1/2で計算した正当化PERの範囲内にした。2026年の買収減損を調整後利益で消さず、現在との比較は最後に行った。米国ADRは1口が普通株1株で、財務台帳の19.55億株は会社全体を近似するが2026年の実数より古い。比較時の市場価格差はこのずれも含む。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株共通の8.0%+quality 0.0%+distress 0.0%。製薬市場の薬価政策・治験失敗・買収の個別リスクは追加の割引率ではなく事業の数量・利益率と悲観確率で表す。存続の危機ではない。