結論
レボリューション・メディスンズは、がんを増殖させるRASというたんぱく質を狙う飲み薬を開発・販売する企業である。筆者の結論は「割高」だ。2026年8月、主力のラソンク(ダラキソンラシブ)が転移性膵がんの治療薬として米国で承認され、科学的な仮説が初めて商売に変わった。しかし現在の時価総額は、肺がんや膵がんの初回治療でも広く成功する未来を相当に先取りしている。
効き目には重みがある。第3相試験では既治療の転移性膵がん患者の生存期間中央値が13.2カ月となり、対照の化学療法の6.7カ月を大きく上回った。10月には欧州の審査委員会が承認を勧告した。ただし欧州での正式承認ではなく、米国で発売した薬の四半期販売実績もまだ公表されていない。2026年7〜9月期の決算発表予定日は11月4日である。
2025年の売上は実質ゼロで、GAAP純損失は11.3億ドルだった。2026年6月末の現金・有価証券は39.4億ドルに増えたが、その主因は増資と転換社債であり、薬が生んだ現金ではない。2026年の営業費用予想だけで21〜22億ドルに達する。発売・製造・試験を同時に回すため、黒字化までに資金がさらに消える。
10年後の中立では、膵がん後治療、膵がん初回・補助療法、肺がんで年間87.4億ドルの売上を見込む。GAAP純利益25億ドルまで育っても、増分の研究投資と競争を差し引いた価値は今の市場評価に届かない。成功の可能性は高まったが、米国承認と広い多癌種独占は別物だ。筆者は治験の期待より、実際の処方と正味薬価を追いたい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、命を延ばす薬が必要かどうかではなく、その薬を十年後も自社が利益を出して売れるかを問う。膵がんの治療需要は消えず、ラソンクは生存利益を示した。この事実は、臨床上の価値を会社に帰属させる第一歩だ。ただし米国の承認は後治療に限られる。肺がんの一次治療、術後補助療法、長期の特許寿命を同時に当然視することはできない。
投資の元手は売上のない時代にも必要で、2025年には約11億ドルの赤字を出した。2026年には営業費用がさらに膨らむ。患者へ薬を届ける設備と仕組みを作るのにかかる金は、株主のものになる前に差し引くべき金である。オーナー利益を見る時は、会社の調整後利益ではなく、株式報酬とロイヤルティ負担を引いたGAAP利益を使う。将来の大きな粗利益を、今の自由に配れる現金と取り違えない。
十年先の堀は二つの方向に進みうる。変異をまたぐ治療成績、後治療から初回治療への進出、販売網が重なれば競争優位は広がる。逆に変異特異的な薬との比較で優位を失い、保険者から正味価格を引き下げられれば、先行者の立場は急に弱くなる。前者なら研究開発の増分利益率は資本コストを大きく上回るが、後者なら増資で得た資本を消費して終わる。
現時点では事業を十年間予測できる範囲が狭い。承認の成功確率が上がったことと、適正な買値が上がることは別だ。初めて薬が売れた企業として評価するが、複数の大型適応で勝ち残る費用と時間を差し引く。十分な安全域が生まれるまでは、科学への期待と株主の取り分を混同しない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は患者が薬を服用する期間の積み重ねだ。ラソンクはRASが働いている状態を直接阻む「RAS(ON)阻害薬」である。米国で認められた対象は、すでに全身治療を受けた転移性膵腺がんの成人、または多剤併用療法が適さない成人だ。2026年8月の発売価格は30日分の卸売取得価格が3万9,800ドル。ただしこれは保険者への値引き前で、会社に入る正味の価格とは異なる。膵がんの病勢が進めば服用は終わるため、年間患者数だけでなく服用月数が売上を決める。
次の売上候補は膵がんの一次治療と術後補助療法である。RASolute 303、304と、G12D変異を狙うゾルドンラシブの305、309などの試験が進む。2026年9月、ラソンクと化学療法の一次治療併用はFDAから画期的治療薬指定を受けたが、指定はその適応の承認ではない。一次治療で使われた患者は、後治療でも同じ薬を重複して売れるとは限らない。そのため後治療の市場は、早期治療への移行に合わせて一部縮む想定にした。
もう一つの柱は肺がんだ。幅広いRAS変異を狙うダラキソンラシブ、G12C型を狙うエリロンラシブ、G12D型を狙うゾルドンラシブを開発している。RASolve 301の第3相の初回解析は2027年を予定し、一次治療との併用も試験段階にある。肺がんでの承認や商業売上は、2026年10月時点ではまだない。大腸がんやG12V型阻害薬は追加の選択肢だが、中立の売上には独立の大型製品として加えず、過大評価を避ける。
会社の報告上は製品別の売上を開示する段階に至っていない。2025年の売上を三つの薬効・治療段階へ恣意的に配分せず、いずれもゼロとした。費用も薬剤ごとの正確な営業利益が公表されないため、2025年の研究費・管理費を全社共通費として扱う。2035年の各段階は患者の投薬月数と月当たり正味売上を掛け、そこから製造、販売、共同研究開発、全社研究費を引く。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社が簡単に奪えない強みは、RASの活性状態をとらえる独自の三者複合体技術と、それを人で検証した臨床データにある。膵がんの大半はRAS経路に依存するが、長く「薬で狙いにくい」とされてきた。2026年の第3相試験で生存利益が明確となり、幅広いRAS変異に使える米国初の承認薬を持った。医師が採用を検討する根拠は、広告や営業網より、この再現可能な治療利益だ。
しかし堀は完成していない。バーテックスの嚢胞性線維症薬のように、患者の大多数を十数年治療し続けた実績はない。ラソンクの発売から日が浅く、値上げの実績も、保険者が高い価格を受け入れ続ける証拠もない。がん細胞の耐性、薬剤中止につながる皮膚・消化器系の副作用も売上の継続期間を制限する。特許・規制上の独占があっても、競合する分子がより長い生存期間を示せば医師の選択は変わる。
資本効率を過去のROEで測ることはできない。2025年のROEは約マイナス69%で、研究費を払うだけの開発会社だった。将来は規模が出れば製造原価が低く、限界利益は大きい。その一方で、初回治療を獲得するには大規模な比較試験を続ける必要がある。2026年予想の株式報酬費用は2.7〜2.9億ドルで、社員の報酬も株主の取り分を薄める。
人工知能は化合物探索や試験設計を速めるが、人月・席・画面を売る事業ではないため「AIエージェント代替」の定型には当てはまらない。むしろ競合の研究速度を上げる側のリスクである。堀は現時点で普通と評価する。米国承認という強みは認めるが、十年後の寡占と継続的な値決め力まではまだ証明されていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
膵がんは需要が消えないが、治療できる患者の数には上限がある。米国がん協会は2026年の新規膵がん患者を約6.75万人と見積もる。その約9割が膵腺がんで、多くは診断時または経過中に進行する。ただし体力低下などで次の薬に進めない患者もいる。後治療の年間の候補は米国で約1.5万〜2.5万人と仮定し、患者一人の治療期間をおおむね5〜7カ月とする。これは会社が示した販売患者数ではなく、罹患数と臨床試験の治療期間から作った推定である。
世界の膵腺がんの年間診断数はおよそ50万人と会社は説明するが、全員が米国と同じ価格で薬を買えるわけではない。欧州では薬価交渉があり、アジアの一部市場の販売権はビーワン・メディシンズへ供与した。米国の卸売価格3万9,800ドルを世界の患者に一律に掛ける計算はしない。一次治療に進出できれば治療対象は大幅に広がるが、既治療の市場を食う分を引く必要がある。
膵がんの広域RAS阻害薬では2026年のラソンクが先行する。しかしG12D変異に狙いを絞る競合にはインサイトのINCB161734、アステラスのセチデグラシブ、ヴェラステム系のVS-7375、恒瑞医薬のHRS-4642などがある。先行する薬が市場全体を独占するとは限らない。肺がんではさらに厳しく、アムジェンのソトラシブ、ブリストル・マイヤーズ スクイブのアダグラシブに加え、イーライリリーのオロモラシブやロシュのジバラシブが競う。
長期の市場数量は、膵がんの患者数が高齢化で年1〜2%増えることを共通の土台とし、売上の差は主に適応範囲とシェアで生む。中立の2035年は、後治療で対象患者月の約3割、一次・補助で約2割、肺がんのRAS関連薬の対象月で1割台を取る仮説だ。競合の確定的な将来シェアは開示されていないため、各水準は推計であり、試験の結果が変われば大きく見直す。
資本政策と M&A
過去の資本配分は還元より資金確保だった。2023年に買収したEQRxは、主に約11億ドルの純現金を取り込む取引で、約5,500万株を対価として発行した。2026年4月には約17.25億ドルの株式と5億ドルの低利転換社債を発行した。6月末の自己資本は26.1億ドル、現金・有価証券は39.4億ドルに増えたが、同時に負債と潜在的な株式希薄化が増えた。比較に使う2025年の自己資本は16.3億ドルである。
2025年にロイヤルティ・ファーマと結んだ資金調達は最大20億ドルで、初期の二回の受取分に対し、ラソンクの世界売上の一定割合を将来渡す。2026年10月には2.5億ドルの融資が実行された一方、会社は承認を契機に選べた追加2.5億ドルのロイヤルティ売却を見送った。借金と売上連動の負担は、2035年のGAAP利益に含める。転換社債は2033年満期で、将来の株式転換もありうる。
配当・自社株買いに数字の約束はない。会社の2026年のGAAP営業費用予想は21〜22億ドルで、成長のための研究開発と販売網整備を優先する。2035年までの正味還元は、買い戻しから株式報酬による希薄化と新株の払込額を引く。楽観でのみ後半の自社株買いが大きく、失敗時は増資が続く。買収で薬を手に入れるより、既存のRAS資産の適応拡大に資本を集中できるかが経営の試金石となる。
なお2026年8月に約67.2万平方フィートの新本社賃貸契約を結び、全面稼働時の基本家賃は月約270万ドルから年3%上昇する。事業縮小時にもこの固定負担は残る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
米国での承認は、RASが長年治療しにくかったという壁を越えたことを意味する。ラソンクの第3相試験は、既治療の膵がんで生存期間中央値をほぼ倍にした。2026年10月の欧州医薬品庁の委員会勧告も、患者が地域を超えて薬にアクセスできる見通しを強める。薬は内服で、特定のG12C変異だけに限らず幅広いRAS変異を対象にできる。既存の化学療法に耐えられない患者にも選択肢が生まれた。
一次治療の併用療法まで認められれば、膵がんでの治療月数は一段と増える。ゾルドンラシブとの二剤併用で耐性を抑えられれば、一人が薬を服用する期間を延ばせる。2035年に後治療17万患者月、初回・補助27万患者月の売上は、米国に欧州などの採用を加えると届かない数字ではない。診断される患者の数が年1〜2%増えるだけでも、治療の選択肢が少ないがんでは実際の採用率が大きく伸びうる。
肺がんの市場は膵がんより広い。RAS変異の患者層に複数の経口薬を使い分けられれば、後治療と免疫療法との併用の双方に参入できる。臨床開発は複数の変異型をまたぎ、会社の技術の使い回しが効く。主力の特許と規制上の独占が守られる間に販売・治験の共通費を回収し、2035年に200億ドル超の売上を得る展開もある。この場合、2026年に調達した現金は資本を焼く費用でなく、幅広い薬の権利を保有するための先行投資だったことになる。
慎重な見方
承認されたのは市場全体ではない。2026年のラソンクが対象とするのは、すでに治療を受けた転移性膵がんの患者が中心である。膵がんは進行が速く、次の薬までたどり着かない患者も多い。投薬期間は無限には延びない。月額の卸売価格は高いが、保険者が払う正味価格は公表されておらず、欧州の制度下では米国と同じ薬価が通らない。発売直後の処方増加が、そのまま十年続くことはない。
一次治療で承認を取るには、現在の強い多剤併用化学療法への上乗せ効果を示さなければならない。副作用による減量や耐性の出現も障害となる。成功しても後治療のラソンク市場を自ら食う。G12D型にはインサイトやアステラスなどの選択的阻害薬が迫る。肺がんのG12C型にはアムジェンとブリストル・マイヤーズ スクイブが既に薬を売っており、イーライリリーとロシュも大規模な試験を進める。患者のシェアを長く維持できる保証はない。
さらに資金の出所はまだ株主と貸し手だ。2026年上期だけで10億ドルを超える純損失を計上し、4月には大幅な増資を行った。ロイヤルティ売却は開発費を前倒しで受け取る代わりに、成功した薬の利益を将来分ける契約である。株式報酬、転換社債、旧EQRxのワラントも一株当たりの成果を曇らせる。会社は薬を持てても、今の保有者がその価値を十分受け取れない可能性がある。
どちらに重みを置いたか
承認済みの後治療については肯定的な材料の方が強い。生存期間の改善が明瞭で、競合に先んじて処方できる状態になった。しかし評価の大半を左右する初回治療と肺がんは、まだ臨床試験と保険採用にかかっている。既治療の承認が、それらの成功確率を自動的に引き上げるわけではない。中立29%に対し、楽観側33%、悲観側38%と、やや慎重に寄せた。モデルナより承認実績は強いが、既存の大型黒字薬を持つバーテックスやリジェネロンほど事業の寿命を読めないためである。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 177.08 ドル373 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 −5.17 ドル−11 億ドル)。 今の値に割り戻すと 74.88 ドル158 億ドル、今との差 −60.9%、 期待の年率 −1.0%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 14% | 473.91 ドル999 億ドル | 12.57 ドル27 億ドル | +154.3% | +10.0% | 68.11 ドル144 億ドル |
| やや楽観 | 19% | 289.67 ドル611 億ドル | 4.03 ドル9 億ドル | +53.5% | +4.4% | 55.80 ドル118 億ドル |
| 中立 | 29% | 163.71 ドル345 億ドル | −7.82 ドル−17 億ドル | −18.5% | −2.0% | 45.21 ドル95 億ドル |
| やや悲観 | 23% | 28.05 ドル59 億ドル | −18.49 ドル−39 億ドル | −95.0% | −19.5% | 2.20 ドル5 億ドル |
| 悲観 | 15% | 11.80 ドル25 億ドル | −7.82 ドル−17 億ドル | −97.9% | −25.6% | 0.60 ドル1 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 177.08 ドル373 億ドル | −5.17 ドル−11 億ドル | −10.1% | −1.0% | 171.91 ドル363 億ドル |
今の株価時価総額 191.31 ドル403 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 14% 楽観:膵がん初回治療と肺がんの両方で世界的な主力薬になる 利益 62 億ドル · PER 16.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 473.91 ドル999 億ドル
2035年にはラソンクが後治療だけでなく、初回治療とその後の選択肢を作る中心薬になる。投薬月数は後治療17万、初回・補助27万に広がる。米国外での承認と保険採用が進み、欧州の低い薬価を含めても自社の膵がん売上は128.7億ドルとなる。ゾルドンラシブとの併用が耐性の発生を遅らせ、患者が飲み続けられる期間も延びる。後治療への乗り換えの重複は除いてある。
肺がんではエリロンラシブやゾルドンラシブの大規模試験が成功し、G12C・G12Dを中心に既存薬からシェアを奪う。アムジェンやイーライリリーも新薬を出すが、RAS(ON)技術の複数薬の使い分けが治療の選択肢として残る。投薬は31万患者月、売上74.4億ドルへ達する。全社売上203.1億ドルに対し、販管費と継続試験費の負担が相対的に軽くなり、営業利益78.4億ドル、純利益62億ドルを稼ぐ。
2026年の資金調達後、2031年以降の大きな利益を研究と還元に振り向ける。2035年までのGAAP利益累計は216.5億ドル、正味還元26.5億ドルで、過度な買収をせず自己資本は206.3億ドルになる。増収が2035年も二桁で続くとは考えず、その先は薬価交渉を受けつつ成熟する。
- 膵がん・承認済み後治療(ラソンク):数量 170,000(後治療で服用する延べ患者月(人・月、米国+海外の自社販売地域))× 価格 36,000(1患者月当たり会社に入る推定正味薬価(ドル、世界地域加重))→ 売上 61 億ドル・営業利益 49 億ドル。広域RAS先行を維持。後治療の世界採用が拡大
- 膵がん・初回/術後補助・併用治療(開発中):数量 270,000(追加適応に固有の延べ患者月(人・月、後治療との重複を控除))× 価格 25,000(1患者月当たり組合せ薬剤の自社正味売上(ドル))→ 売上 68 億ドル・営業利益 53 億ドル。初回治療・補助療法が定着、二剤併用も1月として数える
- 肺がん・RAS変異治療薬群(ダラキソンラシブ等):数量 310,000(RAS変異肺がんの延べ治療患者月(人・月))× 価格 24,000(1患者月当たり会社の推定正味薬価(ドル))→ 売上 74 億ドル・営業利益 56 億ドル。RAS変異肺がんの主力選択肢の一つへ
倍率:2035年の事業ROEは62÷206.3=30.1%。k8.5%、普通の堀で残存1/2だからRONIC19.3%。g4.0%は2035年以降の患者市場+1.5%、シェア+0.5%、正味薬価+2.0%に対応。翌期利益基準の正当化PERに(1+g)を掛けた上限は18.3倍。その88%の16.12倍を採用。特許・耐性・競争を考え、上限満額は使わない。2035年の成長は一桁台へ落ちる想定で2段階の追加高成長を重ねない。GAAP純利益はSBCとロイヤルティ費用を差引き済み。正味還元は2026年株式発行16.5億ドルと期間内SBC希薄化20億ドルを、後半の買戻し総額63億ドルから控除した26.5億ドル。
確率:承認済み後治療の生存利益が新たな適応でも再現され、耐性を抑える併用の利益が証明される。膵がんと肺がんの主要試験が広く成功するには複数の独立した条件が必要で、科学的に魅力的でも確率は14%に限る。
やや楽観 19% やや楽観:膵がんで優位を確立し肺がんも一部成功 利益 41 億ドル · PER 14.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 289.67 ドル611 億ドル
ラソンクは米国の後治療で早期に採用され、欧州でも処方が広がる。ただし米国外の薬価は低く、薬の恩恵がある患者全員を取れるわけではない。後治療は14万患者月、初回・補助では19万患者月が売上になる。ゾルドンラシブとの併用で一部の変異型には優位が生まれるが、初回治療の標準をすべて置き換えることはできない。
肺がんではG12D向け新薬に成功が見られ、G12C型ではイーライリリー、ロシュ、既存のアムジェンなどと市場を分け合う。18万患者月という数量は、巨大な肺がん市場の一部を取るだけでも届く。一方、寡占ではないため値決めは弱い。三領域を合算した売上は133.2億ドル。全社の研究・販売費48.5億ドルを引いて営業利益51.5億ドル、GAAP純利益41億ドルとなる。
早期の投資負担は重く、2026〜2028年には赤字が続く。2035年までのGAAP利益累計125.5億ドルに、後半の自社株買いから増資とSBCを引いた正味還元8.5億ドルを織り込む。会社は独立した販売体制を維持し、大きな買収より既存分子の適応追加に投資する。売上の長期成長は医療需要と価格の伸びに落ち着く。
- 膵がん・承認済み後治療(ラソンク):数量 140,000(後治療で服用する延べ患者月(人・月、米国+海外の自社販売地域))× 価格 33,000(1患者月当たり会社に入る推定正味薬価(ドル、世界地域加重))→ 売上 46 億ドル・営業利益 36 億ドル。医師に広く採用されるが欧州の値引きあり
- 膵がん・初回/術後補助・併用治療(開発中):数量 190,000(追加適応に固有の延べ患者月(人・月、後治療との重複を控除))× 価格 24,000(1患者月当たり組合せ薬剤の自社正味売上(ドル))→ 売上 46 億ドル・営業利益 34 億ドル。併用の一部だけが承認、単価は低め
- 肺がん・RAS変異治療薬群(ダラキソンラシブ等):数量 180,000(RAS変異肺がんの延べ治療患者月(人・月))× 価格 23,000(1患者月当たり会社の推定正味薬価(ドル))→ 売上 41 億ドル・営業利益 30 億ドル。G12Dは強くG12Cでは競合と分ける
倍率:2035年のROEは41÷133.3=30.8%、普通の堀なのでRONIC=8.5%+1/2×(30.8%−8.5%)=19.6%。g3.7%は2035年以降の患者市場+1.5%、シェア+0.3%、価格+1.9%に分解。翌期利益の正当化PERに(1+g)を掛けた上限は17.5倍で、臨床の成功が広いが価格競争が残るため85%の14.90倍。GAAPで株式報酬・融資費用を引き、2026年の株式払込16.5億ドル、期間内SBC20億ドルと買戻し45億ドルを相殺してpayoutは+8.5億ドル。
確率:承認済みの後治療が標準の選択肢となり、膵がんの初回治療と肺がんの双方で大部分ではなく一部に成功する。複数試験の結果がずれる確率を考え、上振れは19%とする。
中立 29% 中立:膵がんは成功し肺がんも市場の一部を取るが独占しない 利益 25 億ドル · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 163.71 ドル345 億ドル
2035年の売上の核は、まず承認済みの後治療である。世界で延べ10万患者月がラソンクを服用し、値引き後の平均薬価は月3万ドルとなる。米国の高い価格と欧州の低い価格を混ぜるため、2026年の米国卸値が名目物価並みに上がる前提は置かない。膵がんの後治療は30億ドルを売るが、初回治療に移った患者の一部は後治療の対象から外す。
初回・補助では一部の第3相試験が成功するが、全適応を獲得できるわけではない。14万患者月、32.2億ドルの売上とする。肺がんの開発もG12Dなどに勝ち筋があり、アムジェン、ブリストル・マイヤーズ スクイブ、イーライリリーの薬と並ぶ一角を得る。12万患者月で25.2億ドルにとどめる。全社売上は87.4億ドル、研究開発・販売網の費用を払った営業利益は33.0億ドル、純利益は25億ドルである。
2026〜2029年の累積赤字が大きく、2030年ごろから利益が育つ。2035年までのGAAP利益累計41.5億ドルに対し、既存の2026年増資と株式報酬から買戻しを引いた正味還元はマイナス16.5億ドル。自己資本74.3億ドルを事業と開発に回す。収益基盤は成立するが、特許や耐性、薬価の制約から、独占的な高成長を十年先にもう一度期待しない。
- 膵がん・承認済み後治療(ラソンク):数量 100,000(後治療で服用する延べ患者月(人・月、米国+海外の自社販売地域))× 価格 30,000(1患者月当たり会社に入る推定正味薬価(ドル、世界地域加重))→ 売上 30 億ドル・営業利益 22 億ドル。米国WAC39,800ドルより世界正味平均を低くする
- 膵がん・初回/術後補助・併用治療(開発中):数量 140,000(追加適応に固有の延べ患者月(人・月、後治療との重複を控除))× 価格 23,000(1患者月当たり組合せ薬剤の自社正味売上(ドル))→ 売上 32 億ドル・営業利益 23 億ドル。初回治療の一部適応のみ、後治療との重複は控除
- 肺がん・RAS変異治療薬群(ダラキソンラシブ等):数量 120,000(RAS変異肺がんの延べ治療患者月(人・月))× 価格 21,000(1患者月当たり会社の推定正味薬価(ドル))→ 売上 25 億ドル・営業利益 17 億ドル。肺がんRAS薬で十数%の採用を得る
倍率:2035年のROEは25÷74.3=33.6%。事業に必要な研究費・開発費を除外した見かけの資本利益率ではなく、GAAP利益÷帳簿自己資本を基本とする。普通の堀のRONICは8.5%+1/2×(33.6%−8.5%)=21.1%。g3.5%は2035年以降の罹患者市場+1.5%、シェア±0%、世界正味薬価+2.0%。翌期利益基準の正当化PERに(1+g)を掛けた上限17.3倍の80%で13.81倍。中立でも新薬の失敗率と今後の薬価交渉が残るため上限にしない。利益はSBCとロイヤルティ負担を引いたGAAP。期間の買戻し15億ドルとSBC15億ドルが相殺し、2026年の株式払込16.5億ドルが正味還元マイナスとなる。
確率:既承認の後治療は実販売が立ち上がるが、価格と投与期間は未確認。一次治療では複数試験のうち一部成功、肺がんは競争が激しくシェアを限る。中心を29%とし、成功を当然としない。
やや悲観 23% やや悲観:後治療の成功を残し、早期治療と肺がんでは競争負け 利益 6 億ドル · PER 9.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 28.05 ドル59 億ドル
ラソンクは後治療で一定の患者を救い続けるが、競合のG12D阻害薬が一部の変異で優れる結果を出す。医師の採用率は想定ほど高まらず、欧州の薬価交渉も厳しい。後治療は7.5万患者月、月平均2.6万ドルの正味売上にとどまる。膵がん初回治療では一部の適応しか追加できず、患者月は6.5万まで落ちる。RASの作用機序は生き残るが、製品ごとの違いが患者の選択に現れる。
肺がんではアムジェンとブリストル・マイヤーズ スクイブに加え、イーライリリーやロシュの薬が優位を築く。採用は5万患者月で、値引き競争が必要になる。全社売上41.1億ドルに対し、開発や販売の負担が残り、営業利益は8.0億ドル、GAAP純利益は6億ドル。治療の選択肢としては残るが、十年前に期待された広域RASの優位は細る。
2026年から2035年までの利益累計は赤字22.5億ドル。2026年の増資に加えて臨床を維持するため、さらに16億ドル程度の新株払込を受け、株式報酬も差し引く。正味還元はマイナス39億ドルとなり、自己資本32.8億ドルへ着地する。現金と売れる薬の権利は残るが、新しい資金の多くを回収できない。
- 膵がん・承認済み後治療(ラソンク):数量 75,000(後治療で服用する延べ患者月(人・月、米国+海外の自社販売地域))× 価格 26,000(1患者月当たり会社に入る推定正味薬価(ドル、世界地域加重))→ 売上 20 億ドル・営業利益 12 億ドル。米国外価格が伸びず後治療シェアを奪われる
- 膵がん・初回/術後補助・併用治療(開発中):数量 65,000(追加適応に固有の延べ患者月(人・月、後治療との重複を控除))× 価格 19,000(1患者月当たり組合せ薬剤の自社正味売上(ドル))→ 売上 12 億ドル・営業利益 6 億ドル。一部の初回治療試験のみ成功
- 肺がん・RAS変異治療薬群(ダラキソンラシブ等):数量 50,000(RAS変異肺がんの延べ治療患者月(人・月))× 価格 18,500(1患者月当たり会社の推定正味薬価(ドル))→ 売上 9 億ドル・営業利益 4 億ドル。G12C競争で値下げ、G12Dも劣勢
倍率:2035年のROEは6÷32.8=18.3%、普通の堀のRONIC13.4%、k8.5%。g2.5%は患者数+1.4%、シェア−0.4%、正味薬価+1.5%の合成。正当化PERの翌期利益換算上限は13.9倍だが、競争負けと後続試験の失敗を受けて約71%の9.86倍とする。中立の13.81倍より明確に低い。利益6億ドル÷kは約70.6億ドル。実質換金可能資産は推定18億ドルで、時価総額59.16億ドルはいずれの床・稼ぐ力をも超えない。GAAP利益累計−22.5億ドル、2026年既発行株式払込−16.5億ドル、追加増資−16億ドルとSBCの純影響−6.5億ドルをpayoutに算入した。
確率:承認済みの薬は消えないが、追加の大規模臨床試験は当初の成績を再現できないことがある。G12D競合との価格・耐性競争で後治療の伸びも鈍り、資金調達が続く筋書きに23%を割り当てる。
悲観 15% 悲観:広域RASの優位が崩れ、後治療の小さな薬剤会社に縮む 利益 3 億ドル · PER 10.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 11.80 ドル25 億ドル
膵がんの後治療でラソンクは残るが、より安全で効く変異別薬が広がり、保険者が薬価を引き下げる。後治療は5.5万患者月、月平均2.2万ドルの正味売上となる。初回・補助療法では大半の大規模試験が失敗し、わずかな適応しか取れない。膵がん初回治療の患者月は1万に縮む。肺がんも競合に及ばず1万患者月にとどまる。広域RAS阻害薬の研究基盤が、大手製薬に対する優位を生むという構想は崩れる。
全社売上は15.2億ドルまでしか育たない。開発計画の大半を中止し、人員を削減するので、2035年の共通費は3.5億ドルへ小さくなる。これは質の高い収益力ではなく、縮小後の事業を続ける最低限の費用である。営業利益3.4億ドル、GAAP純利益2.5億ドルを残しても、新薬が次々に生まれる企業ではない。2027〜2028年に大きく研究支出を切った結果、2026年からの純利益累計はマイナス25.1億ドルにとどめる。
2026年に実行済みの株式増資16.5億ドル以外に大きな公募増資をしない代わり、開発費を早期に抑える。自己資本は7.7億ドルしか残らず、見かけのROEは資本が削られたために高くなる。そこに大きな堀はない。売れる在庫や特許の価値は限定的で、今の株主が得られる価値は大きく減る。
- 膵がん・承認済み後治療(ラソンク):数量 55,000(後治療で服用する延べ患者月(人・月、米国+海外の自社販売地域))× 価格 22,000(1患者月当たり会社に入る推定正味薬価(ドル、世界地域加重))→ 売上 12 億ドル・営業利益 6 億ドル。承認薬は残るが競合へ患者が流れ薬価も下がる
- 膵がん・初回/術後補助・併用治療(開発中):数量 10,000(追加適応に固有の延べ患者月(人・月、後治療との重複を控除))× 価格 15,000(1患者月当たり組合せ薬剤の自社正味売上(ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。多くの試験が失敗し極小適応だけ存続
- 肺がん・RAS変異治療薬群(ダラキソンラシブ等):数量 10,000(RAS変異肺がんの延べ治療患者月(人・月))× 価格 16,000(1患者月当たり会社の推定正味薬価(ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。有効性・耐性競争に敗れほぼ商業化できない
倍率:2035年の見かけの帳簿ROEは2.5÷7.7=32.5%。低い帳簿純資産は損失で資本を食い潰した結果であり、持続的な堀の証拠ではない。k8.5%、普通の堀でもRONIC20.5%、g1.5%は患者市場+1.5%、シェア−1%、薬価+1%で、算式の上限は13.4倍。実際は研究を畳み優位が弱いため、上限の約74%で9.95倍とし、中立13.81倍より下げる。稼ぐ力2.5÷8.5%=29.4億ドルと、純現金・特許売却税後の床7億ドルを超えない時価総額24.875億ドル。新株発行の払込を差し引いたpayout−16.5億ドルと合わせても小幅な正の残価。GAAP利益を使い、SBCの純増は最終年までに規模縮小と一部の相殺買戻しで概ねゼロと想定する。
確率:承認薬の価値は残るものの、耐性と競合の長期生存成績で初回治療・肺がんの投資がほぼ失敗し、研究を畳む。2026年の承認により完全破綻の確率は下がったが、組織縮小・株主価値の大幅毀損はありうるため15%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
膵がん・承認済み後治療(ラソンク)
2026年8月に米国で承認されたダラキソンラシブの後治療。販売数量は一人を一年として数えず、実際に服用する患者月で測る。
| 数量後治療で服用する延べ患者月(人・月、米国+海外の自社販売地域) | 価格1患者月当たり会社に入る推定正味薬価(ドル、世界地域加重) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 0.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 100,000 | 30,000 | 30 | 22 |
取り方:2025年は未承認で製品売上ゼロのため数量と単価はゼロ。翌2026年8月26日のSEC 8-Kで米国卸売取得価格は30日3万9,800ドルと確認。2026年の米国膵がん新患6.753万人(米国がん協会)、膵腺がん比率約9割、進行例・次治療到達率・月5〜7カ月の継続を掛け、米国の後治療候補を年1.5万〜2.5万人と推定。欧州は価格を低くし、一部アジアはビーワン提携で直接売上にしない。2035年の患者月数は医療圏全体の候補月数×採用シェア、正味薬価は卸値から償還割引・地域価格差を引く。公表済みの実販売患者数・実現単価はまだない。2025年の研究費は製品に恣意配賦せず共通費。
膵がん・初回/術後補助・併用治療(開発中)
ラソンクとゾルドンラシブの初回治療・補助療法への展開。2026年10月時点では追加適応は未承認。
| 数量追加適応に固有の延べ患者月(人・月、後治療との重複を控除) | 価格1患者月当たり組合せ薬剤の自社正味売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 0.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 140,000 | 23,000 | 32 | 23 |
取り方:2025年販売ゼロ。米国がん協会の新規膵がん6.753万人と世界膵腺がん約50万人(会社2026年10月23日発表)から治療可能な進行例を求め、初回治療に入れる患者数×想定6〜9カ月×2035年の自社採用シェアで延べ患者月を推定。後治療ですでに数えた同一患者の同月売上は含めない。ラソンク+ゾルドンラシブ併用時も会社の収入は二重に足さず、1患者月あたりの合算実現単価とする。競合は化学療法、インサイトのINCB161734、アステラスのセチデグラシブ、恒瑞医薬HRS-4642など。2026年9月の画期的治療薬指定は承認ではない。
肺がん・RAS変異治療薬群(ダラキソンラシブ等)
非小細胞肺がんのRAS変異に向けた広域阻害薬、G12C型エリロンラシブ、G12D型ゾルドンラシブ。すべて2026年10月時点では肺がん適応の発売前。
| 数量RAS変異肺がんの延べ治療患者月(人・月) | 価格1患者月当たり会社の推定正味薬価(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 0.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 120,000 | 21,000 | 25 | 17 |
取り方:2025年の肺がん薬売上はゼロ。米国2026年の肺・気管支がん新患22.941万人(米国国立がん研究所SEER)に、非小細胞型約85%、RAS変異率を概ね25〜35%と見積もり、G12C約12%、G12D約5%、G12V約5%の型別市場を推計。欧州・その他市場も重ね、実際に投薬できる段階別の患者月×採用シェアを2035年の数量とする。競合はアムジェンのソトラシブ、BMSのアダグラシブ、リリーのオロモラシブ、ロシュのジバラシブ。自社薬併用では患者月を二重計上しない。ビーワンのアジア一部地域の販売権料は保守的に小さくし、直接患者売上へ加えない。
リスクと懸念
適応拡大の臨床失敗
2026年の米国承認は後治療と多剤併用が難しい患者に限られる。初回治療のRASolute 303、G12Dの305、術後補助の304、肺がんのRASolve 301などは別の成績と規制判断が必要だ。第3相で全生存期間の上乗せが出なければ、投資した研究費は戻らず、2035年の患者月数は中立からやや悲観へ下がる。
G12D・G12C阻害薬との競争と耐性
インサイト、アステラス、ヴェラステム、恒瑞医薬などは膵がんのG12D変異を狙う。肺がんG12Cではアムジェンとブリストル・マイヤーズ スクイブが先行し、イーライリリーやロシュも追う。選択的な競合薬が高い奏効率と長い無増悪期間を示せば、広域RASという売りは弱くなり、後治療のシェアと価格を同時に失う。
保険償還と高い薬価の持続性
米国の2026年発売時の卸売取得価格は30日3万9,800ドルだが、患者支援や保険償還を差し引いた実現単価はまだ公開されていない。欧州では薬価当局との交渉が必要で、2026年10月の委員会承認勧告は販売承認そのものではない。将来、適応が広がるほど価格交渉対象になりやすく、患者数が増えても売上は期待ほど伸びない恐れがある。
研究費・ロイヤルティ・借金の重なり
2026年のGAAP営業費用予想は21〜22億ドルで、2026年上期には11億ドル近い純損失を出した。ロイヤルティ・ファーマには、既受領二回分の対価としてラソンクの世界売上に段階的な取り分がある。転換社債と2026年10月実行の融資に加え、2030年前後の試験費用が重なれば、黒字化が遅くなり再増資が必要になる。
株式報酬と増資による取り分の低下
2026年4月の株式発行による資金調達は約17.25億ドルで、2026年の予想株式報酬費用も2.7〜2.9億ドルに上る。2033年満期の転換社債や旧EQRxのワラントも潜在株式となる。会社全体の価値を今の株主の利得と混同せず、正味還元から新株の払込と株式報酬による希薄化を差し引く必要がある。
副作用・生産・処方の持続性
ラソンクの臨床試験では皮膚症状、下痢、口内炎などが認められ、治療中断につながる例もある。長く薬を飲めるほど売上の患者月数は増すが、耐性や有害事象、他剤との相互作用があれば短くなる。発売直後は実世界での治療継続期間が未確定で、製造委託先の品質問題や供給制限も患者の採用を妨げうる。
固定賃料と経営の独立戦略
2026年に締結した新本社の長期賃貸は、全面稼働時の基本家賃が月約270万ドルで、その後年3%増える契約である。薬剤が外れて研究を縮小しても、賃料や契約解約費用は残る。欧州でも独自の販売網を整備するため、単独販売の成功なら利益が厚くなるが、処方が伸びない時は販売網の固定費が赤字を長引かせる。
今後の分かれ目
- 2026年11月4日公表予定の7〜9月期に、発売初月の正味薬価・患者月・出荷と実処方の違いが示されたら
- 2026年8月末の米国発売からの実売上で後治療の数量×価格を置き直す。卸売価格からの実際の割引率と在庫積み増しを分け、中立の売上を検証する。
- RASolute 303または305で初回治療の全生存期間が有意に延長され、追加承認が得られたら
- 膵がん初回・補助の対象患者月とシェアを上げる。同じ患者を後治療にも二重計上しないよう後治療の数量も修正し、やや楽観の確率を引き上げる。
- RASolve 301の2027年予定の解析で肺がんの全生存期間や無増悪期間の改善が確認されたら
- 肺がん治療の市場参入確率を引き上げる。ただしG12Cの既存薬と競合するため、承認後のシェアと正味価格は別に確認する。
- インサイトのG12D薬やリリーのG12C薬が直接比較に近いデータで優れた生存・安全性を示したら
- 該当変異型の患者月シェアを減らし、2035年の正味薬価も引き下げる。弱い堀としての残存超過利益を再評価し、やや悲観以上の重みを増す。
- 年間GAAP営業費用が会社予想22億ドルを超え続け、承認薬の販売立上がりが鈍かったら
- 収益化までの純損失累計を増やし、追加増資・ロイヤルティ売却の希薄化をpayout_okuのマイナスとして加える。資金調達を楽観材料と誤認しない。
- 欧州委員会の正式承認と主要国の薬価契約が成立し、実勢価格と治療継続が確認できたら
- 米国外の患者月と地域別実現単価を上方または下方に修正する。中国などビーワンへの供与地域では現地売上を直接計上せず受取ロイヤルティだけを扱う。
- 数年以内に臨床試験が相次いで失敗し研究停止と組織縮小が公表されたら
- 赤字の継続でなく費用の早期圧縮を織り込み、後治療薬だけの収益力と純現金・特許の税後換価額を比較して悲観の床を再計算する。
見ておくもの
- 米国ラソンクの四半期純売上、実処方患者月、実現薬価と30日3万9,800ドルの卸売値の差
- RASolute 303・304・305・309の症例登録、全生存・無増悪期間、FDAの追加適応
- RASolve 301の2027年予定解析と、肺がんG12C/G12Dでの競合との薬効差
- FDA承認後の欧州委員会正式判断、英国・カナダ等の保険償還と実現価格
- 2026年11月4日予定の2026年7〜9月期決算、米国発売初期の在庫と純売上の差
- GAAP研究開発費・株式報酬・純損失、キャッシュランウェイ、転換社債とロイヤルティ支払
- ビーワンへの地域ライセンスの現金収入・受取ロイヤルティ、会社の直接販売地域との切り分け
- 一人あたり服用月数、副作用による治療中断率、薬剤耐性、新しいG12D比較試験の結果
倍率と資本コストの決め方
臨床試験の効果と対象患者数から、膵がん後治療・初回補助・肺がんの延べ患者月数を分け、地域別の値引きを含む正味薬価を掛けた。中立では2035年売上87.4億ドル、GAAP純利益25億ドルを先に定めた。現在・過去・同業の市場PER/PBRは使わず、k8.5%、事業ROE33.6%、普通の堀のRONIC21.1%、長期g3.5%から正当化PER上限17.3倍を出し、利益の質を考えて13.81倍とした。2026年の株式発行は2025年末からの自己資本繰越しと正味還元に含む一方、基準株数は指定の直近加重平均210.9百万株に固定した。検索サイトの実発行済み214.2百万株との差は約1.6%で、価値を現在株価へ寄せる理由にはしない。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本8.0%にquality+0.5%を足し、資本コストを8.5%とする。βと市場倍率は使わない。2026年6月末に39.4億ドルの現金・有価証券があり、継続企業に重要な疑義を示す注記は確認できないため、赤字でも存続危機の追加上乗せは0。将来の臨床失敗や株式希薄化は確率・売上・正味還元で示す。