結論
ジンマー・バイオメットは、人工膝関節・股関節の売上でストライカーを上回る世界最大級の整形外科の機器会社である。2025 年の売上は 82.3 億ドル(自然増 +3.9%)で、膝 33.2 億・股 20.9 億・S.E.T.(スポーツ医学・肩・外傷・足など)21.5 億、手術ロボット ROSA・骨セメント・手術用品などの技術・データ 6.7 億ドル。GAAP の営業利益は 13.2 億ドル(16.1%)、純利益は 7.1 億ドルで、買収で積み上がった無形資産の償却が年約 6.5 億ドルかかる。
2026 年 4〜6 月期は売上 21.8 億ドル(自然増 +4.0%)、膝は +0.4% とほぼ横ばい(米国 +1.4%、海外 −1.5%)、股は +5.0%、S.E.T. は +6.4%(買収を除く自然増 +3.4%)、ROSA を含む技術は +21%。価格は 0.8 ポイントの逆風で、調整後の営業利益率は米国の営業体制への投資で 2.1 ポイント下がった。通期の自然増の見通しは 2.25〜3.25% に引き上げられた。
売上を膝・股の米国と海外、S.E.T.、技術の 6 つについて手術件数 × シェア × 価格で積むと、価格が名目で毎年わずかに下がる(病院の購買組織・中国の集中購買・病院の値下げ要求)ため、中立の売上は 2028 年に 91 億ドル、2035 年に 115 億ドル(年 +3.4%)と、物価の 3.5% を下回る。純利益は償却の固定費が薄まって 2035 年に 14.2 億ドル、利益ベースの正当化 PER 11.8 倍(ROE 11.1%・g 4.0%・堀は弱く、新しく投じる元手の稼ぎ RONIC は 9.7%)の 9.5 割の PER 11.2 倍(1÷k の 11.1 倍を下回らせない)で、時価総額は約 159 億ドル(今の約 0.87 倍)。膝でストライカーの Mako にシェアを取られ続け、価格も下がる筋書きでは、2035 年の時価総額は今の約 0.25 倍にとどまる。
確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を約 33% 下回り、「割高」。分かれ目は、ROSA とモノグラムで膝のシェアの流出を止められるか、価格の下落が年 1% 以内で収まるか、借入金(純負債 約 71 億ドル)を抱えたまま還元を続けられるかの 3 点である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ジンマー・バイオメットは「分かりやすいが、堀が少しずつ狭まっている」会社である。人工関節は 10 年後も必要とされ、高齢化で件数も増えるので、事業は存在し続ける。問いは今より強いかどうか。ロボットを入口にしたシェア争いでストライカーに押されてきた過去 10 年を見ると、堀は広がっていない。ROSA とモノグラムで流れを止めない限り、価格の下落とシェアの流出で売上は物価に追いつかない。
オーナー利益は、純利益に現金の出ない償却(年約 6.5 億ドル)を戻した額が近い(2025 年のフリーキャッシュフローは 11.7 億ドル)。ただし償却の元は 2015 年の高い買収であり、のれんは自己資本の 8 割近い。資本配分は、バイオメット買収で価値を壊し、直近の小型の買収と自社株買いで取り戻そうとしている途中で、評価は定まらない。
安全域は、中立で 10 年後の時価総額が今の約 0.87 倍で、配当・自社株買いの合計を足して初めて今を上回る水準で、悲観(ロボットで構造的に負け、価格も下がる筋書き)では今の 2.5 割まで下がりうる。確率で重みを付けた結論は「割高」で、確信度は高くない。
何で稼ぐ会社か
2025 年の売上 82.3 億ドルは、製品 4 区分と地域で見る。
膝(33.2 億ドル、売上の約 4 割)と股(20.9 億ドル)が中核。2026 年 4〜6 月期で、膝は米国 4.6 億・海外 3.7 億ドル、股は米国 2.9 億・海外 2.7 億ドルで、米国と海外がほぼ半々。人工関節は病院の手術件数に連動し、高齢化で件数が毎年伸びる市場だが、病院は購買組織を通じて 1 件あたりの価格を毎年下げさせ、インプラントは 4〜5 社の寡占である。ジンマーは売上ではストライカーを上回るが、膝では過去 10 年で約 3 ポイントのシェアを失ってきた(ストライカーが約 6.5 ポイント獲得。ジョンソン・エンド・ジョンソンのデピューが約 4 ポイント、スミス・アンド・ネフューが約 2 ポイント失った)。
S.E.T.(21.5 億ドル)は、スポーツ医学(靱帯・半月板)、エクストリミティ(肩・肘・足・足首)、外傷(骨折の固定具)、頭蓋顎顔面・胸部の総称。2025 年 4 月に約 11 億ドルで買ったパラゴン 28(足・足首)を含み、伸びが速い。
技術・データ・骨セメント・手術用品(6.7 億ドル)は、手術ロボット ROSA(膝・股・肩)、手術計画のソフト、骨セメント、手術用品。ROSA はインプラントの入口で、ストライカーの Mako に対抗する要である。2025 年 10 月に買ったモノグラム(半自律の膝ロボット、2027 年初に商用化の見込み)が次の手札。2026 年 4〜6 月期の米国の技術の売上は約 +53%。
優良さと弱いところ
優良さの核は 3 つある。第 1 に継続的な収入:膝・股の人工関節は手術 1 件ごとにインプラントと器具のセットを売る消耗品に近い収入で、医師が手技に習熟したメーカーの製品を使い続ける習慣が切り替えの費用になる(売上の約 85% が契約済み)。第 2 に寡占:世界の人工関節は 4〜5 社で、新規参入は規制と医師の教育で難しい。第 3 に現金:フリーキャッシュフローは 2025 年に約 11.7 億ドルで、純利益の 1.6 倍(償却が現金の出ない費用のため)。
弱点も明確である。第 1 にシェアの流出:ロボット(ストライカーの Mako)が医師の選択の入口になり、ジンマーは膝で過去 10 年に約 3 ポイント失った。第 2 に価格:病院の購買組織は直近 3 四半期で価格の下落を強め、第 2 四半期は 0.8 ポイントの逆風。第 3 に利益率:調整後の粗利率は 71.1%(−1.2 ポイント)、調整後の営業利益率は 25.7%(−2.1 ポイント)と、ストライカー(調整後 26〜27%)に及ばない。第 4 に資本効率:2015 年のバイオメット買収で純負債が 99 億ドルに膨らみ、のれんが 99 億ドル・無形資産が 45 億ドルに積み上がり、ROE は 5〜8% にとどまる。
経営は 2024 年に、中位の 1 桁台の自然増、調整後 1 株利益の売上の 1.5 倍以上の伸び、フリーキャッシュフローのさらに速い伸びを目標に掲げた。2025 年の自然増は +3.9%、2026 年の見通しは 2.25〜3.25%(上方修正後)にとどまる。目標を満たせるかは、ROSA でシェアの流出を止められるかにかかる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
整形外科のインプラント市場は、高齢化で手術件数が年 3% 前後伸びる安定した市場だが、価格は名目でほぼ横ばいから下落である(業界ノートの置き方)。医療費全体は年 5.8% で伸びるが、病院は償還の枠の中でインプラント費を抑える。
競争の軸はロボットである。ストライカーの Mako は膝・股・肩・脊椎に広がり、設置するほど同社のインプラントが売れる循環ができた(過去 10 年でシェア約 6.5 ポイント獲得)。ジョンソン・エンド・ジョンソンの Velys は Mako より約 56% 安いと推定され、スミス・アンド・ネフューの CORI も追う。ジンマーの ROSA は膝・股・肩に対応し、2026 年 4〜6 月期の米国の技術の売上は約 +53% と勢いがあるが、設置後に実際にジンマーのインプラントを選ばせられるかが問われる。モノグラムの半自律ロボットは 2027 年初の商用化を目指す。
価格は購買組織の交渉と外来手術センターへの移行(1 件あたりの償還が低い)で下がる。中国は集中購買で人工関節の価格が大きく下がり、ジンマーの中国の売上(全体の約 2%)は年約 20% 縮み、2027 年に和らぐ見込み。減量薬(GLP-1)が変形性関節症の患者を減らす可能性は、短期では数字に出ていない。S.E.T. は足・肩・スポーツ医学が年 6% 前後で伸びる成長市場で、ジンマーはパラゴン 28 で足の弱みを補った。
資本政策と M&A
資本配分は、配当を小さく据え置き、自社株買いと小〜中型の買収に使う形である。2025 年は配当 1.9 億ドル、自社株買い 4.9 億ドル、2026 年は自社株買いを最大 10 億ドルに増やす(上半期で 5 億ドル)。株数は 2024 年に −2.7%、2025 年に −2.5% 減り、株式報酬(年約 1.1 億ドルと推定)による増加を打ち消している。
買収は、2015 年のバイオメット(のれんと償却の元)が最大。直近はパラゴン 28(2025 年 4 月、約 11 億ドル)、モノグラム(2025 年 10 月、約 1.8 億ドル)、小型のエンボディ・オースグリッド。パラゴン 28 は中盤の 10% 台で伸び、通期の報告成長に約 1.1 ポイント寄与して期待を上回る。モンテリスは買収の成立を報道で確認できず、反映していない。
借入金は総額 74.8 億ドル(1 年以内の返済 12.0 億ドル)、現金 4.1 億ドル、純負債 約 71 億ドルで、自己資本 126 億ドルに対し、のれん・無形資産が約 144 億ドルと自己資本を超える。借り換えで金利が 5.75% 前後に上がると、利払いは年 1 億ドル前後増える(純利益に入れた)。フリーキャッシュフローは 2026 年に +8〜10% の見通し。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ROSA が膝のシェアの流出を止める。2026 年 4〜6 月期の米国の技術の売上は約 +53%、ROSA ショルダーは期待を上回って立ち上がり、次世代版が全面発売に入る。ロボットの設置が積み上がれば、数年遅れてインプラントの採用に表れる。モノグラムの半自律ロボットは 2027 年初に商用化され、価格の低いロボットで Velys の領域も取りにいける。
股は米国で +5.9% と市場を上回り、S.E.T. はパラゴン 28(足)と肩・スポーツ医学で年 6〜7% 伸びる。膝が市場並みに戻り、営業体制への投資が終われば、調整後の営業利益率は 2025 年の水準(約 27.8%)に戻り、GAAP の営業利益率は償却の薄まりで 20% に近づく(純利益は 2035 年に 21 億ドル、今の 3 倍)。ストライカーは調整後 26〜27% の営業利益率で、ジンマーは膝のシェアを守れば同じ水準へ戻れる。
買収したパラゴン 28・モノグラムを統合し、フリーキャッシュフロー(年 12 億ドル前後)で借入金を返しつつ自社株買いを年 10 億ドル以上続ける。今の PER 25.7 倍(GAAP)は、のれんと償却の重い GAAP の利益に対する倍率で、償却が薄まれば利益が伸びて倍率は下がる。
慎重な見方
成長が物価に追いついていない。2025 年の売上 82.3 億ドルは 2019 年の 79.8 億ドルと 6 年でほぼ同じで、2026 年 4〜6 月期の膝は +0.4%。米国の膝は +1.4% で、市場の +3% を下回り、シェアは今も流出している。価格は直近 3 四半期で下落が強まり(第 2 四半期 0.8 ポイント)、病院は手術 1 件あたりのインプラント費を下げさせ続ける。
ロボットの競争は、ストライカーの Mako が先行した設置の差を ROSA が埋めきれず、ジョンソン・エンド・ジョンソンの Velys が低価格で追う。ジンマーが ROSA を値引きで入れれば、ロボットの利益は出ない。営業体制への投資で調整後の営業利益率は 2.1 ポイント下がり、粗利率も 71.1% と −1.2 ポイント。S.E.T. の自然増は +3.4% と買収頼みで、パラゴン 28 の伸びが落ちれば減速する。
資本も弱い。純負債 71 億ドルを抱え、1 年以内に 12 億ドルが満期を迎え、借り換えで利払いが増える。のれんと無形資産が自己資本を超え、ROE は 5〜8% で、今の PER 25.7 倍(GAAP)は高い。ロボットでシェアを失う筋書きでは、2035 年の純利益は 9 億ドルにとどまり、のれんの減損も出る。
どちらに重みを置いたか
事業の質(寡占・継続収入・現金)は高く、中立でも名目 3% 台の売上が積み上がると見るが、強気の見方が頼る ROSA の巻き返しは設置が増えた段階で、シェアに戻った証拠がまだない。慎重な見方の指摘(過去 10 年のシェア流出・価格の下落の加速・利益率の低下)は数字で裏付けられるため、確率を悲観寄りに置いた。楽観 8%・やや楽観 20%・中立 36%・やや悲観 25%・悲観 11%。結論は「割高」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 74.22 ドル143 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 49.47 ドル95 億ドル)。 今の値に割り戻すと 63.50 ドル122 億ドル、今との差 −35.7%、 期待の年率 +2.3%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 136.00 ドル261 億ドル | 68.57 ドル132 億ドル | +107.0% | +7.5% | 16.37 ドル31 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 107.70 ドル207 億ドル | 62.85 ドル121 億ドル | +72.6% | +5.6% | 34.11 ドル66 億ドル |
| 中立 | 36% | 82.47 ドル159 億ドル | 54.53 ドル105 億ドル | +38.6% | +3.3% | 49.32 ドル95 億ドル |
| やや悲観 | 25% | 38.14 ドル73 億ドル | 38.45 ドル74 億ドル | −22.5% | −2.5% | 19.15 ドル37 億ドル |
| 悲観 | 11% | 23.41 ドル45 億ドル | 19.77 ドル38 億ドル | −56.3% | −7.9% | 4.75 ドル9 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 74.22 ドル143 億ドル | 49.47 ドル95 億ドル | +25.2% | +2.3% | 123.69 ドル238 億ドル |
今の株価時価総額 98.81 ドル190 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:ROSA とモノグラムでロボットの競争に勝ち、利益率が 20% 台に戻る 利益 21 億ドル · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 136.00 ドル261 億ドル
2035 年の売上は 142 億ドル(名目で年 +5.6%)。ROSA とモノグラムでロボットの競争に勝ち、膝のシェアは今から 3 ポイント前後戻り、米国の膝は 28.5 億ドル、股は米国 18.8 億ドル。S.E.T. はパラゴン 28 を軸に足・肩・スポーツ医学で 43.3 億ドル(年 +7.2%)、技術は 14.8 億ドル。価格は購買組織の圧力が一巡し、膝・股で年 0〜+0.2%。営業利益は 29.4 億ドル(20.7%)、純利益は 21.2 億ドル。ストライカーに並ぶ収益力に戻り、償却の薄まりで GAAP の利益が今の 3 倍になる。成熟後の PER は 12.3 倍(式の 13.0 倍の 9.5 割。ROE 16.2%・g 4.0%・k 9.0%)。
- 膝 米国:数量 55.8(米国の人工膝関節の手術件数(万件。約 120 万件 × ジンマーのシェア 約 31%、推定))× 価格 5,101(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 29 億ドル・営業利益 7 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
- 膝 海外:数量 68.4(米国外の人工膝関節の手術件数(万件。約 200 万件 × シェア 約 24%、推定))× 価格 3,063(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 21 億ドル・営業利益 4 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
- 股 米国:数量 41.5(米国の人工股関節の手術件数(万件。約 90 万件 × シェア 約 28%、推定))× 価格 4,538(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 19 億ドル・営業利益 5 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
- 股 海外:数量 61.2(米国外の人工股関節の手術件数(万件。約 150 万件 × シェア 約 26%、推定))× 価格 2,590(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 16 億ドル・営業利益 3 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
- S.E.T.(スポーツ医学・肩・外傷・足):数量 730(スポーツ医学・肩・外傷・足の手術・使用件数の合算(万件、推定))× 価格 594(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 43 億ドル・営業利益 8 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
- 技術・データ・骨セメント・手術用品:数量 596(ROSA の手術・骨セメント使用件数換算(万件、推定))× 価格 248(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 15 億ドル・営業利益 3 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
倍率:正当化 PER は 13.0 倍(g 4.0%、RONIC 11.4%。RONIC は k 9.00% に、事業の ROE 16.2% が k を超える分の 0.33 を足した値。moat は weak)。これに対し 12.3 倍(9.5 割)に置いた。堀は弱いので上限の 9.5 割に置く。ROE が k を上回る幅が小さく、式の値が 1÷k に近い。純利益は GAAP。
確率:ROSA・モノグラムでロボット競争に勝ち、営業利益率も戻る展開は、ストライカーの優位が 10 年続いた流れを覆す必要があるので 8%。
やや楽観 20% やや楽観:ロボットで互角に戻り、S.E.T. の伸びが利益を押し上げる 利益 18 億ドル · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 107.70 ドル207 億ドル
2035 年の売上は 128 億ドル(名目で年 +4.5%)。ロボットで互角に戻り、膝の流出は 2027 年に止まって米国の件数が年 +3.4%、価格は年 −0.1%。股は米国 16.9 億ドル、S.E.T. は 39.0 億ドル(年 +6.1%)、技術は 13.3 億ドル。営業利益は 25.1 億ドル(19.6%)、純利益は 17.5 億ドル。PER は 11.8 倍(式の 12.4 倍の 9.5 割。ROE 13.8%・g 4.0%)。ストライカーと膝・股のシェアを分け合う寡占が続き、ジンマーは ROSA とモノグラムで流出を止めるが、シェアを大きく取り戻すところまでは行かない。償却の固定費が売上に対して薄まる分、純利益は今の約 2.5 倍に増える。
- 膝 米国:数量 51.7(米国の人工膝関節の手術件数(万件。約 120 万件 × ジンマーのシェア 約 31%、推定))× 価格 4,950(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 26 億ドル・営業利益 6 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
- 膝 海外:数量 63.3(米国外の人工膝関節の手術件数(万件。約 200 万件 × シェア 約 24%、推定))× 価格 2,972(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 19 億ドル・営業利益 4 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
- 股 米国:数量 38.5(米国の人工股関節の手術件数(万件。約 90 万件 × シェア 約 28%、推定))× 価格 4,404(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 17 億ドル・営業利益 4 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
- 股 海外:数量 56.6(米国外の人工股関節の手術件数(万件。約 150 万件 × シェア 約 26%、推定))× 価格 2,513(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 14 億ドル・営業利益 3 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
- S.E.T.(スポーツ医学・肩・外傷・足):数量 677(スポーツ医学・肩・外傷・足の手術・使用件数の合算(万件、推定))× 価格 576(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 39 億ドル・営業利益 7 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
- 技術・データ・骨セメント・手術用品:数量 553(ROSA の手術・骨セメント使用件数換算(万件、推定))× 価格 240(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 13 億ドル・営業利益 3 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
倍率:正当化 PER は 12.4 倍(g 4.0%、RONIC 10.6%。RONIC は k 9.00% に、事業の ROE 13.8% が k を超える分の 0.33 を足した値。moat は weak)。これに対し 11.8 倍(9.5 割)に置いた。堀は弱いので上限の 9.5 割に置く。純利益は GAAP。
確率:ロボットで互角に戻り、S.E.T. が年 6% 前後で伸びる。ジンマーの強み(規模・寡占・継続収入)が保たれるので 20%。
中立 36% 中立:売上は年 +3% 台で物価に届かず、償却の薄まりで利益が伸びる 利益 14 億ドル · PER 11.2 倍 · 株価時価総額 82.47 ドル159 億ドル
2035 年の売上は 115 億ドル(名目で年 +3.4%。件数で年 +3.5%、価格で年 −0.1% 前後)。膝は件数が市場より 0.4 ポイント遅れ、米国 23.0 億・海外 16.9 億ドル(年 +2.2%・+1.4%)、股は米国 15.2 億・海外 12.8 億ドル。S.E.T. は 35.1 億ドル(年 +5.0%)、技術は ROSA・モノグラムの普及で 12.0 億ドル。営業利益は 21.4 億ドル(18.6%。償却は固定の 6.5 億ドルで売上比が薄まる)、純利益は 14.2 億ドル。借入金は返し続け、自社株買いは年 9〜10 億ドル。成熟後の PER は 11.2 倍(式の 11.8 倍の 9.5 割。ROE 11.1%・g 4.0%・k 9.0%。償却の戻しは上乗せしない)。
- 膝 米国:数量 47.8(米国の人工膝関節の手術件数(万件。約 120 万件 × ジンマーのシェア 約 31%、推定))× 価格 4,804(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 23 億ドル・営業利益 5 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
- 膝 海外:数量 58.5(米国外の人工膝関節の手術件数(万件。約 200 万件 × シェア 約 24%、推定))× 価格 2,884(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 17 億ドル・営業利益 3 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
- 股 米国:数量 35.6(米国の人工股関節の手術件数(万件。約 90 万件 × シェア 約 28%、推定))× 価格 4,274(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 15 億ドル・営業利益 4 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
- 股 海外:数量 52.4(米国外の人工股関節の手術件数(万件。約 150 万件 × シェア 約 26%、推定))× 価格 2,439(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 13 億ドル・営業利益 2 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
- S.E.T.(スポーツ医学・肩・外傷・足):数量 627(スポーツ医学・肩・外傷・足の手術・使用件数の合算(万件、推定))× 価格 559(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 35 億ドル・営業利益 6 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
- 技術・データ・骨セメント・手術用品:数量 512(ROSA の手術・骨セメント使用件数換算(万件、推定))× 価格 233(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 12 億ドル・営業利益 2 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
倍率:正当化 PER は 11.8 倍(g 4.0%、RONIC 9.7%。RONIC は k 9.00% に、事業の ROE 11.1% が k を超える分の 0.33 を足した値。moat は weak)。これに対し 11.2 倍(9.5 割)に置いた。堀は弱く ROE が k をわずかに上回るだけなので、中立の PER は式の値が 1÷k に近い 9.5 割に置き、1÷k は下回らせない。純利益は GAAP。
確率:議論の落としどころ。業界ノートの整形(件数 +4%・価格 横ばい)に、ジンマーの膝の流出と価格の下落を反映した。最大の確率だが、慎重な見方の裏付けが強いので 4 割を切る。
やや悲観 25% やや悲観:Mako と Velys にシェアを奪われ、価格の下落で成長が年 1% に鈍る 利益 9 億ドル · PER 8.3 倍 · 株価時価総額 38.14 ドル73 億ドル
2035 年の売上は 94 億ドル(名目で年 +1.3%)。Mako と Velys にシェアを奪われ続け、米国の膝の件数は年 +1.2%、海外は +0.6%。価格は年 −1.1% で、病院が償還の枠の中でインプラント費を下げ続ける。膝は米国 18.7 億・海外 13.7 億ドルと 10 年でほぼ増えず、股・S.E.T. も市場を下回る。営業利益は 15.2 億ドル(16.2%)、純利益は 8.8 億ドルで、2026 年上半期の GAAP 純利益の年換算(約 8.7 億ドル)とほぼ同じ。ROSA を値引きで入れる分、ロボットの利益は出ない。PER は 8.3 倍(ROE 6.6% が k 9.0% に届かず、1÷k の 11.1 倍の 7.5 割)。
- 膝 米国:数量 41.7(米国の人工膝関節の手術件数(万件。約 120 万件 × ジンマーのシェア 約 31%、推定))× 価格 4,476(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 19 億ドル・営業利益 4 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
- 膝 海外:数量 51.0(米国外の人工膝関節の手術件数(万件。約 200 万件 × シェア 約 24%、推定))× 価格 2,687(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 14 億ドル・営業利益 2 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
- 股 米国:数量 31.1(米国の人工股関節の手術件数(万件。約 90 万件 × シェア 約 28%、推定))× 価格 3,983(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 12 億ドル・営業利益 3 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
- 股 海外:数量 45.7(米国外の人工股関節の手術件数(万件。約 150 万件 × シェア 約 26%、推定))× 価格 2,273(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 10 億ドル・営業利益 2 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
- S.E.T.(スポーツ医学・肩・外傷・足):数量 548(スポーツ医学・肩・外傷・足の手術・使用件数の合算(万件、推定))× 価格 522(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 29 億ドル・営業利益 4 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
- 技術・データ・骨セメント・手術用品:数量 448(ROSA の手術・骨セメント使用件数換算(万件、推定))× 価格 218(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 10 億ドル・営業利益 2 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
倍率:事業の ROE 6.6% が k 9.00% 以下なので PER は 1÷k=11.1 倍まで。これに対し 8.3 倍(7.5 割)に置いた。値下がりとシェア流出で稼ぎが k に届かない筋書き。上限は 1÷k で、その 7.5 割に置く。純利益は GAAP。
確率:過去 10 年にシェアを約 3 ポイント失ってきた流れが続く展開は、実績の延長で起こりやすいので 25% に厚くした。
悲観 11% 悲観:ロボットで構造的に負け、のれんの減損で優良な会社でなくなる 利益 5 億ドル · PER 8.3 倍 · 株価時価総額 23.41 ドル45 億ドル
2035 年の売上は 82 億ドル(名目で年 -0.0%、10 年間ほぼ横ばいで実質では 3 割減)。ロボットの設置で Mako・Velys に負け、膝のシェアは 7 ポイント前後失い、米国の膝は 16.4 億ドル、価格は年 −2% 近くで下がる。のれんの減損 約 25 億ドルと再編の費用が出て、営業利益は 11.3 億ドル(13.7%)、純利益は 5.4 億ドル。配当は据え置きで、自社株買いはほぼ止まる。優良な整形企業でなくなり、g 2.6%・ROE 4.3% の式で 10.1 倍で測る(自己資本 125 億ドルに対し PBR 約 0.44 倍)。
- 膝 米国:数量 38.5(米国の人工膝関節の手術件数(万件。約 120 万件 × ジンマーのシェア 約 31%、推定))× 価格 4,255(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 16 億ドル・営業利益 3 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
- 膝 海外:数量 47.1(米国外の人工膝関節の手術件数(万件。約 200 万件 × シェア 約 24%、推定))× 価格 2,554(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 12 億ドル・営業利益 2 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
- 股 米国:数量 28.7(米国の人工股関節の手術件数(万件。約 90 万件 × シェア 約 28%、推定))× 価格 3,787(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 11 億ドル・営業利益 2 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
- 股 海外:数量 42.2(米国外の人工股関節の手術件数(万件。約 150 万件 × シェア 約 26%、推定))× 価格 2,160(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 9 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
- S.E.T.(スポーツ医学・肩・外傷・足):数量 507(スポーツ医学・肩・外傷・足の手術・使用件数の合算(万件、推定))× 価格 496(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 25 億ドル・営業利益 3 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
- 技術・データ・骨セメント・手術用品:数量 415(ROSA の手術・骨セメント使用件数換算(万件、推定))× 価格 207(1 件あたり収入(ドル))→ 売上 9 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量(万件)と 1 件あたり収入
倍率:事業の ROE 4.3% が k 9.00% 以下なので PER は 1÷k=11.1 倍まで。これに対し 8.3 倍(7.5 割)に置いた。構造的に負けた筋書き。ROE が k に届かず、ためた利益は額面より低い価値なので、1÷k の 7.5 割(稼ぐ力の 7.5 割)を床にとる。自己資本に PBR を掛けない。純利益は GAAP。
確率:リーマン級でなく構造の失敗。ロボットの設置で負け続け、価格の下落が年 2% 近くになり、のれん 99 億ドルのうち 25 億ドルの減損が出る。2015 年のバイオメット買収の後に利益が伸びなかった前例(2015〜2019 年の営業利益は 12〜14 億ドルで横ばい)があるので 11%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
膝 米国
人工膝関節(米国)。ROSA・Persona などのインプラントと器具のセット。
| 数量米国の人工膝関節の手術件数(万件。約 120 万件 × ジンマーのシェア 約 31%、推定) | 価格1 件あたり収入(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 37.0 | 5,000 | 19 | 4 |
| 10 年後 中立 | 47.8 | 4,804 | 23 | 5 |
取り方:2025 年の米国の膝 約 18.5 億ドル(上半期の米国比率 56% から推定)を、米国の人工膝関節の手術件数 約 120 万件(初回+再置換、推定)× ジンマーのシェア 約 31%(≒ 37 万件)で割った 1 件あたり約 5,000 ドル(件数・シェアは推定)。2026 年 4〜6 月期の米国の膝は +1.4% で市場の +3% を下回り、シェアは年 0.4 ポイント分ずつ流出していると置く。価格は物価の 3.5% に届かず年 −0.5%(中立で 10 年 0.96 倍):病院の購買組織と外来手術センターへの移行で、第 2 四半期の価格は −0.8 ポイントだった。競合はストライカー(Mako)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(Velys)、スミス・アンド・ネフュー(CORI)。
膝 海外
人工膝関節(米国外)。中国・欧州・日本など。
| 数量米国外の人工膝関節の手術件数(万件。約 200 万件 × シェア 約 24%、推定) | 価格1 件あたり収入(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 48.0 | 3,063 | 15 | 3 |
| 10 年後 中立 | 58.5 | 2,884 | 17 | 3 |
取り方:2025 年の海外の膝 約 14.7 億ドルを、海外の手術件数 約 200 万件(推定)× シェア 約 24%(≒ 48 万件)で割った 1 件あたり約 3,060 ドル。2026 年 4〜6 月期の海外の膝は −1.5%(中国・新興国が主因。中国は全体の約 2% で年約 −20%、2027 年に和らぐ見込み)。価格は中国の集中購買と欧州の入札で年 −1.0%(10 年 0.94 倍)。競合はストライカー・ジョンソン・エンド・ジョンソン・スミス・アンド・ネフューと、中国の国産メーカー。
股 米国
人工股関節(米国)。初回・再置換・骨折。
| 数量米国の人工股関節の手術件数(万件。約 90 万件 × シェア 約 28%、推定) | 価格1 件あたり収入(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 25.0 | 4,360 | 11 | 2 |
| 10 年後 中立 | 35.6 | 4,274 | 15 | 4 |
取り方:2025 年の米国の股 約 10.9 億ドルを、米国の人工股関節の手術件数 約 90 万件(骨折・再置換を含む、推定)× シェア 約 28%(≒ 25 万件)で割った 1 件あたり約 4,360 ドル。2026 年 4〜6 月期の米国の股は +5.9% と市場を上回り、シェアは増やせている。価格は年 −0.3%(10 年 0.98 倍):股は購買組織の影響が膝より小さいが、物価並みには届かない。競合はストライカー・ジョンソン・エンド・ジョンソン・スミス・アンド・ネフュー。
股 海外
人工股関節(米国外)。
| 数量米国外の人工股関節の手術件数(万件。約 150 万件 × シェア 約 26%、推定) | 価格1 件あたり収入(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 39.0 | 2,564 | 10 | 2 |
| 10 年後 中立 | 52.4 | 2,439 | 13 | 2 |
取り方:2025 年の海外の股 約 10.0 億ドルを、海外の手術件数 約 150 万件(推定)× シェア 約 26%(≒ 39 万件)で割った 1 件あたり約 2,560 ドル。価格は欧州の入札・中国の集中購買で年 −0.8%(10 年 0.95 倍)。競合は同じ 3 社と地場メーカー。
S.E.T.(スポーツ医学・肩・外傷・足)
スポーツ医学・エクストリミティ(肩・足・足首。パラゴン 28 を含む)・外傷・頭蓋顎顔面・胸部。
| 数量スポーツ医学・肩・外傷・足の手術・使用件数の合算(万件、推定) | 価格1 件あたり収入(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 400 | 538 | 22 | 3 |
| 10 年後 中立 | 627 | 559 | 35 | 6 |
取り方:2025 年の S.E.T. 21.5 億ドル(パラゴン 28 を約 8 か月含む)を、スポーツ医学・肩・外傷・足の手術・使用件数の合算(推定 約 400 万件)で割った 1 件あたり約 540 ドル。2026 年 4〜6 月期の自然増は +3.4%(報告 +6.4%)で、パラゴン 28 は中盤の 10% 台。2026 年はパラゴン 28 の通年化(約 +1 ポイント)が乗る。価格は新製品(肩・足の高単価)が外傷の入札の値下がりを相殺し年 +0.3%(10 年 1.04 倍)。競合はストライカー(外傷・四肢が最大)、ジョンソン・エンド・ジョンソン、スミス・アンド・ネフュー(スポーツ医学)。
技術・データ・骨セメント・手術用品
手術ロボット ROSA・手術計画ソフト・骨セメント・手術用品。
| 数量ROSA の手術・骨セメント使用件数換算(万件、推定) | 価格1 件あたり収入(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 300 | 222 | 7 | 1 |
| 10 年後 中立 | 512 | 233 | 12 | 2 |
取り方:2025 年の技術・データ・骨セメント・手術用品 約 6.66 億ドル(全体から膝・股・S.E.T. を引いた値)を、ROSA の手術・セメント使用件数換算(推定 約 300 万件)で割った 1 件あたり約 220 ドル。2026 年 4〜6 月期は +21.1%、米国の技術は約 +53%(ROSA ショルダーの立ち上がり)。ロボットは設置が先に増え、インプラントの採用が後から表れる。価格は年 +0.5%(10 年 1.05 倍):ROSA の値引き競争(Velys が Mako より約 56% 安い)で物価並みには届かない。
リスクと懸念
ロボットの競争(Mako・Velys)で膝のシェアが流出し続ける
ジンマーは膝で過去 10 年に約 3 ポイントのシェアを失い、ストライカーが約 6.5 ポイント獲得した。2026 年 4〜6 月期の米国の膝は +1.4% で市場の +3% を下回る。ROSA の設置が増えても、ジンマーのインプラントの採用に表れなければ、膝(売上の約 4 割)の件数は伸びない。膝のシェア 1 ポイントは約 1.1 億ドルの売上にあたる。
価格の下落が強まる
価格は直近 3 四半期で下落が強まり、第 2 四半期は 0.8 ポイントの逆風、通期の見通しは 0〜1 ポイントの下落。病院の購買組織・外来手術センターへの移行・中国の集中購買が重なる。価格が年 1.5% 下がれば、10 年で売上が 14% 減り、費用が物価で上がる分、利益率を直撃する。
利益率の低下と営業体制の投資
調整後の営業利益率は 2026 年 4〜6 月期に 2.1 ポイント下がり 25.7%、粗利率は 71.1%(−1.2 ポイント)。営業体制の投資が成長に結びつかなければ、ストライカーの 26〜27% に追いつけない。経営は 2026 年の粗利率を 70〜71% と見込む。
借入金・満期・金利
総借入は 74.8 億ドルで、1 年以内に 12.0 億ドルが満期を迎える。借り換えの金利は 5.75% 前後で、利払いは年 1 億ドル前後増える。のれんと無形資産が自己資本を超え、減損が出れば自己資本が大きく減る。フリーキャッシュフローから借入金を返す間は、自社株買いが細る。
買収の統合と資本効率
パラゴン 28(約 11 億ドル)・モノグラム(約 1.8 億ドル)は期待どおり進むが、2015 年のバイオメット買収のように、買った後に利益が伸びない前例がある。モノグラムのロボットは 2027 年初の商用化が前提で、承認や発売が遅れれば ROSA の穴を埋められない。
中国・新興国
中国は売上の約 2% だが年約 −20% で縮み、2027 年に和らぐ見込み。海外の膝は第 2 四半期に −1.5%。中国の国産化が進めば、海外の膝・股の価格と数量の両方が押される。海外の膝・股は合計で約 25 億ドル(売上の約 3 割)あり、新興国の手術件数の伸びで補えるかが問われる。
今後の分かれ目
- 2027 年までに米国の膝の件数が市場並み(年 +3% 以上)に戻り、ROSA の設置先でジンマーのインプラントの採用が確認できたら
- 膝のシェアの流出が止まり、楽観・やや楽観の確率を 10 年で 5〜8 ポイント上げる。膝(売上の約 4 割)が年 +3% 台に戻れば、10 年の売上の伸びは年 +4% 台になる。
- 価格の下落が 2027 年に年 1.5% を超えたら
- 売上の伸びが年 1% 台に落ち、やや悲観・悲観の確率を 5〜10 ポイント上げる。費用は物価で上がるので、利益率は 1〜2 ポイント下がる。
- モノグラムの半自律ロボットが 2027 年初に商用化され、Velys に近い価格で採用が広がったら
- ロボットの競争でジンマーが互角に戻る。技術の成長が年 +9% 以上を保ち、10 年の中立の確率を上げる。承認が遅れれば、やや悲観の確率を上げる。
- S.E.T. の自然増が 5% を超え、パラゴン 28 が中盤の 10% 台の成長を保ったら
- S.E.T.(売上の約 26%)が年 +6% 台で伸び、全体の伸びを押し上げる。パラゴン 28 が失速すれば、買収の資本効率が問われる。
- 借入金の返済が進み、純負債が 2028 年までに 50 億ドルを下回ったら
- 利払いが減り、10 年の純利益が中立の想定より約 3〜4% 上振れする。返済が遅れ、自社株買いが止まれば、同じだけ下げる。
- 中国の売上の減少が 2027 年に止まらず、海外の膝が −3% 以下に落ちたら
- 海外の膝(約 14.7 億ドル)が縮み、やや悲観の確率を上げる。2027 年に和らげば、海外は市場並みに戻る。
見ておくもの
- 米国の膝の自然増(市場の +3% との差)と ROSA の設置台数・採用率
- 価格の逆風(四半期ごとの下落幅。通期の見通し 0〜1 ポイント)
- 調整後の粗利率(71.1%)・営業利益率(25.7%)と、ストライカー(26〜27%)との差
- S.E.T. の自然増(+3.4%)とパラゴン 28 の成長(中盤の 10% 台)
- モノグラムの 510(k) と 2027 年初の商用化
- 純負債(約 71 億ドル)・満期・自社株買いの額(2026 年は最大 10 億ドル)
- 中国・海外の膝の売上(−1.5%)
倍率と資本コストの決め方
今の PER 25.7 倍(GAAP)・時価総額 183 億ドルを見る前に、膝・股の米国と海外、S.E.T.、技術の 6 つの手術件数 × 価格で 2028 年・2035 年の売上を積み、償却・特別費用・利払い・税を置いて純利益を出してから倍率を決めた。10 年の中立の PER 11.2 倍は、利益ベースの正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)(帳簿の ROE 11.1%・g 4.0%・堀は弱く RONIC 9.7%・k 9.0%)= 11.8 倍の 9.5 割(1÷k を下回らせない)。過去の PER の中央値(約 24 倍)にも今の値にも寄せていない。ROE にはのれんを除かず帳簿の値を使い(買収で足場を継ぎ足してきた会社のため)、純利益は GAAP のままで償却の戻しは上乗せしない。今の値段との比較は最後にした。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality +1.0% = 9.0%。ロボットでのシェア争い・価格圧力・買収の資本効率などの個別のリスクは k に足さず、やや悲観・悲観の確率(合計 36%)と悲観の深さで表した。存続は危うくないので上乗せ 0。