結論
モリナ・ヘルスケアは、米国の低所得者向け公的医療保険メディケイドを主力とする保険会社である。筆者の結論は「適正」だが、安全域が十分に厚いとは言えない。事業は10年後も必要とされる一方、政府から受け取る保険料と実際の医療費のわずかな差で利益が大きく変わるからだ。
2025年は売上454億ドルに対し、純利益が4.7億ドルへ急減した。2026年も悪化が続き、9月までの純利益は1.12億ドルにとどまる。医療費率は92.1%まで上昇し、加入者は前年同期比14%減った。保険料の改定が医療費の増加に追いつかず、事業規模の拡大が利益につながらなくなった。
ただし、会社の競争力が消えたわけではない。州政府の保険契約を獲得する実績は強く、2027年には約6%の料率改定が見込まれる。医療費の伸びが落ち着けば利益率の回復余地は大きい。しかし州政府が料金を決める以上、回復した利益が長く守られる保証はない。
10年後の中立では、メディケイド加入者480万人を中心に、全社純利益が13.5億ドルになると考える。利益は現在より大きいが、過去の高い利益率を全面的には取り戻さない。5つの筋書きを資本コスト9.0%で割り引いた価値は約105億ドルで、基準時価総額107億ドルにほぼ並ぶ。上振れ余地はあるものの、その実現には公的保険の料金改定、契約獲得、医療費管理という複数の条件が必要である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、モリナは必要不可欠なサービスを提供しているが、利益を自由に決められる会社ではない。貧困層、高齢者、障害者の医療保険は10年後も社会に必要だろう。州政府が民間企業へ管理を委託する仕組みも、運営費を抑える必要がある限り残りやすい。ここまでは事業の寿命を長く評価できる。
問題は、その必要性から生まれる利益が株主のものになるかどうかである。保険料は州政府が決め、医療費は病院、医師、薬価、加入者の病状に左右される。過去の高いROEは確かな運営能力を示す一方、2025年の急落は利益の持続性が弱いことを示した。高い利益率が一度実現したからといって、同じ水準を永続させることはできない。
オーナー利益を考えると、設備投資が小さいことは魅力である。しかし加入者が増えるほど保険子会社には規制上の自己資本が必要になる。さらに買収や新規州契約の立ち上げに資金を使うため、会計上の純利益すべてを株主へ戻せるわけではない。保険料として受け取った現金には、将来の医療費を払う義務も付いている。
筆者が最も気にするのは、経営陣が利益率を取り戻した後の資本配分だ。資本コストを上回る州契約へ投資できるなら成長は価値を生む。逆に、利益率の薄い保険会社を高値で買い続ければ、売上が大きくなっても株主の価値は増えない。現在の評価には一定の回復を織り込めるが、利益の予測に幅がある以上、厚い安全域を求めたい会社である。
何で稼ぐ会社か
モリナの稼ぎ方は、政府や保険加入者から一定の保険料を受け取り、その範囲で病院、医師、薬局に医療費を支払うというものだ。医療費を抑えられれば差額が利益になるが、加入者が重症化したり、病院の利用が増えたりすると利益は急速に減る。売上の大きさよりも、保険料のうち医療費に消える割合が重要になる。
主力のメディケイドは、州政府が低所得者や障害者などの医療保険を民間企業へ委託する制度である。2025年末には456.8万人が加入し、年間保険料収入は322.4億ドルだった。州ごとの公募で契約を獲得し、医療機関とのネットワークを維持する。契約は一般に3〜5年程度で更新・再入札があり、一度獲得しても永続的な権利にはならない。
メディケアは高齢者と障害者向けの連邦制度である。モリナはメディケイドも利用する低所得高齢者への統合保険に強みを持つ。2025年の加入者は26.2万人、保険料収入は62.35億ドルだった。加入者当たりの単価が高いのは、医療費の大きい高齢者や複雑な病状の加入者を扱うためである。一方、採算の悪化した従来型の処方薬付きメディケア・アドバンテージ商品からは2027年に撤退する。
マーケットプレイスは、医療保険制度改革法に基づく個人向け保険市場である。2025年には65.5万人、保険料44.87億ドルを抱えた。しかし補助金の縮小と医療費の上昇を受け、2026年9月には26.7万人まで減った。会社は安値で加入者を集める方針を捨て、採算の良い州と契約に絞っている。
これらに付随する小規模な商業保険と介護支援相談がOtherに含まれる。モリナは大型の薬剤給付管理事業や全国規模の病院網を持たず、巨大な複合医療企業とは異なる。保険契約の獲得、加入者の健康管理、保険請求の審査を効率よく回すことが、利益を生む中心的な仕事である。
優良さと弱いところ
モリナの堀、つまり競争相手が簡単にはまねできない強みは、州政府からの信頼と医療機関との契約網にある。2019年以降の州契約の更新公募では約90%、新規公募では約80%の勝率を会社が示している。既存の加入者管理システム、医療費データ、病院との交渉実績があり、参入したばかりの保険会社より低い管理費で契約を運営できる。
ただし、強い値上げ力はない。州政府は保険料率を決め、契約を定期的に競争入札へかける。2026年のマーケットプレイスでは大幅な料金引き上げを進めたが、その結果として加入者も大幅に減った。これは値上げを自由に通せる証拠ではなく、採算を守るために顧客を手放さなければならないことを示す。
資本効率も安定していない。2018〜2024年はROEが20〜40%台に達した時期があり、利益率の高い州契約を集める力は確かだった。しかし2025年のROEは11.6%へ低下した。医療費の見積もりを誤ると、過去の高い利益の大部分が短期間で失われる。この変動を考えると、増分投資の利回りが常に資本コストを上回るとは言えない。
堀の幅は中程度と判断する。契約網と運営能力は10年後も価値を持つが、政府からの支払いは政治と財政によって変わり、契約自体も更新される。センティーンやエレバンスも同じ仕組みを利用できる。会社の強みは高い利益率を永続させる独占力ではなく、競争に勝って薄い利益を積み重ねる運営力である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の公的医療保険は、医療費の増加と加入資格の厳格化が同時に進む難しい局面にある。医療費の需要は高齢化と慢性疾患の増加で伸び続ける。一方、2025年の財政調整法はメディケイドの受給要件と財源を厳しくした。米議会予算局は、この法律によって2035年のメディケイド加入者が従来見通しより約1310万人減ると予測している。
2026年6月のメディケイド・児童医療保険の加入者は約7320万人で、前年から約510万人減った。会社自身も2029年まではメディケイド加入者全体が年2〜3%程度減ると見込む。市場が縮む中で成長するには、既存州での契約維持だけでは足りず、新たな州の契約獲得や高医療費の加入者への対応が必要になる。
競争相手はセンティーン、エレバンス・ヘルス、ユナイテッドヘルス、CVSヘルスのアエトナ、地域の非営利保険者である。ヘルスケア・マネジメント・アソシエイツの2026年3月調査では、対象のメディケイド管理医療市場でセンティーン17.9%、エレバンス10.6%、ユナイテッドヘルス8.4%、モリナ6.0%だった。集計対象に差はあるが、モリナが最大手ではなく、有力な挑戦者の位置にいることが分かる。
メディケア・アドバンテージ全体では2026年に約3520万人が加入し、ユナイテッドヘルスとヒューマナが約46%を占める。モリナは市場全体では小さいが、メディケイドとの二重資格者に絞った成長余地がある。個人保険のマーケットプレイスでは、補助金縮小後の2026年の有効加入者が約1920万人へ減り、センティーンやオスカー・ヘルスとの競争も厳しい。
業界全体の医療保険需要はなくならない。しかし医療費の増加が保険者の利益を保証するわけではない。保険料の改定が遅れると、売上が増えても利益は減る。モリナの2027年の料金改定見通しは回復の材料だが、その後も政府が医療費を十分に補償するかは別の問題である。
資本政策と M&A
経営陣は、州契約の獲得と小規模な保険会社の買収を組み合わせて成長してきた。マゼラン・コンプリート・ケア、アフィニティ・ヘルス・プラン、マイ・チョイス・ウィスコンシン、ブライト・ヘルスのメディケア事業などを取得した。2025年2月にはコネクティケアを3.5億ドルで買収し、約14万人の加入者を引き継いだ。2018〜2024年には8件の買収を通じて約100億ドルの保険料収入を取り込んだと会社は説明している。
過去の買収と州契約の獲得は売上成長に貢献したが、2025〜2026年の利益急減で、投資の最終的な利回りには疑問が残った。2025年には10億ドルの自社株買いを行ったが、その年の純利益は4.7億ドルだった。利益を超える買い戻しは自己資本を減らすため、規制資本を積む必要がある保険会社では慎重に評価すべきである。
2026年10月16日時点の自社株買い枠の残額は5億ドルで、期限は同年末である。会社は普通配当を定期的には支払っておらず、還元は自社株買いが中心となる。2026年9月末の親会社の現金・投資は約6.08億ドルだが、保険子会社は約30億ドルの法定最低資本を維持する必要がある。連結現金をすべて自由な還元原資とは見られない。
2026年5月の投資家説明会では、2029年の年間保険料収入640億ドル、調整後税引前利益率2〜3%を目標とした。この成長には新規契約と将来の買収が含まれる。未成立の買収効果は既存事業の価値に確定利益として加えず、実現性を筋書きで分けている。会社全体の買収合意、非公開化、上場廃止の予定は確認されていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
モリナは一時的な医療費の急騰で本来の稼ぐ力を隠されている。2018〜2024年には州契約を増やしながら高い利益率を維持した。州政府の公募に勝つ能力は今も残り、2025年にはフロリダ、ジョージア、テキサスなどで将来の保険料収入につながる契約を獲得した。フロリダの新契約だけでも、計画上の年間保険料は約60億ドルに達する。
2027年の料率改定は回復の始まりになりうる。2026年10月の説明では、会社は翌年のメディケイド料金について約6%の上昇を初期見通しとして示した。医療費の伸びは5.5〜6%と見込まれており、州の支払いがようやく費用に追いつく。費用がさらに落ち着けば、医療費率が1ポイント改善するだけで数億ドルの利益が戻る。
会社の2029年目標は年間保険料640億ドルで、2026年から大きな拡大を見込んでいる。既に獲得した契約だけでなく、新規州への参入と買収が成功すれば、従来の市場全体の加入者減少を上回る成長が可能になる。新しい契約では立ち上げ時の費用が先行するが、数年後には保険料収入に対する管理費の割合が下がる。
競合のセンティーンやエレバンスと比べて規模は小さいものの、複雑な加入者の医療費管理と州公募への集中が強みになる。2026年のマーケットプレイス縮小も、利益の出ない加入者を切る合理的な判断だ。2035年にメディケイド加入者630万人を確保し、全社の営業利益率が5%程度へ回復すれば、純利益は現在の数倍に拡大する。強い回復が長続きする場合、現在の時価総額から大きく上昇する余地がある。
慎重な見方
2025〜2026年の苦境は、一時的な費用増だけでは説明できない。メディケイド加入資格の見直しで健康な加入者が先に減り、残った加入者の医療費が上がりやすくなった。政府は保険料率を後追いで改定するため、医療費の構造的な増加を完全には補償できない。2026年9月までの医療費率92.1%は、保険料の大部分が医療費として消える状況を示している。
会社自身が2029年までメディケイド全体の加入者が年2〜3%減ると見込んでいる。さらに議会予算局は、連邦法の変更で2035年のメディケイド加入者が従来の予測より約1310万人少なくなると見ている。市場全体が縮む中で新規州契約を取り続ける前提は強気すぎる可能性がある。州政府は財政難になれば支払いを抑え、契約条件を厳しくできる。
会社が掲げる2029年の成長目標には、まだ獲得していない契約と将来の買収が含まれる。これらは今ある株主が確実に受け取れる利益ではない。2025年には10億ドルを自社株買いに使った一方、純利益と営業キャッシュフローが大きく悪化した。規制資本の積み増しや買収のために将来の自社株買いを停止することも考えられる。
競争相手のセンティーンは全国でより大きなメディケイド網を持ち、エレバンスも州政府との長い関係がある。モリナの契約勝率は過去の実績であって、今後の勝率を保証しない。医療費率が93%前後に固定され、管理費を十分に下げられなければ、売上が増えても利益はほとんど残らない。州契約を失った地域の管理体制はすぐには縮められず、損失が長引く可能性がある。保険会社として存続しても、以前のような優良企業には戻らない筋書きは十分に現実的である。
どちらに重みを置いたか
事業の存続と契約獲得能力については強気の見方を認める。しかし、2026年までの利益悪化と公的保険の加入者減少を考えると、利益率の完全回復を中心に置くのは危険である。
確率は楽観8%、やや楽観18%、中立32%、やや悲観27%、悲観15%とし、下側を42%にした。センティーンと同様に政府の支払いと医療費率への依存が強く、ユナイテッドヘルスのような大規模な事業分散もない。一方、純負債は小さく、契約獲得の実績があるため、センティーンほど極端な破綻的評価には寄せていない。
2029年の会社目標には買収と未獲得契約が含まれるため、その全額を中立に取り込んでいない。10年の加重価値は約105億ドルとなり、現状の基準時価総額とほぼ同じである。結論は「適正」だが、医療費率と州契約の変化によって評価が大きく動く会社である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 329.44 ドル169 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 103.86 ドル53 億ドル)。 今の値に割り戻すと 206.66 ドル106 億ドル、今との差 +0.9%、 期待の年率 +9.1%(資本コスト 9.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,143 ドル585 億ドル | 283.79 ドル145 億ドル | +596.7% | +25.8% | 114.14 ドル58 億ドル |
| やや楽観 | 18% | 619.92 ドル317 億ドル | 203.13 ドル104 億ドル | +301.9% | +18.2% | 148.15 ドル76 億ドル |
| 中立 | 32% | 305.22 ドル156 億ドル | 111.33 ドル57 億ドル | +103.4% | +8.8% | 133.30 ドル68 億ドル |
| やや悲観 | 27% | 88.94 ドル46 億ドル | 33.20 ドル17 億ドル | −40.4% | −5.7% | 32.98 ドル17 億ドル |
| 悲観 | 15% | 31.54 ドル16 億ドル | 0.00 ドル0 億ドル | −84.6% | −17.1% | 4.73 ドル2 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 329.44 ドル169 億ドル | 103.86 ドル53 億ドル | +111.6% | +9.1% | 433.29 ドル222 億ドル |
今の株価時価総額 204.78 ドル105 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 楽観:州契約の獲得と料金改定がかみ合い、高い資本効率を取り戻す 利益 38 億ドル · PER 15.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,143 ドル585 億ドル
州政府の料率改定が医療費の増加に十分追いつき、メディケイドの医療費率が持続的に改善する。新しい州契約を次々と獲得し、加入者は630万人へ増える。2035年の管理医療市場では、センティーンやエレバンスとの差を縮める有力な全国保険者となる。高医療費の加入者を適切に管理できるため、メディケイドの営業利益率は5%に回復する。
メディケアでは二重資格者向け保険が成功し、45万人まで加入者が増える。マーケットプレイスも採算の良い州で55万人まで回復し、かつての赤字成長を繰り返さない。既存の事業と相性のよい保険会社の買収も成功するが、買収の対価を支払うため、利益すべてが株主還元に回るわけではない。
全社営業利益は約57.35億ドル、純利益は38億ドルに達する。2026年から2035年までのGAAP純利益累計は約215.3億ドルとなり、正味145.3億ドルを還元する。自己資本は110.7億ドルへ増え、ROEは34%台に回復する。州契約を維持できる力と資本効率の高さが株主価値を大きく押し上げる筋書きである。
- メディケイド(低所得者向け公的医療保険):数量 6.3(保険加入者数(百万人)。米国のメディケイド管理医療市場の加入者数×獲得シェアに相当)× 価格 13,500(加入者1人当たりの年間保険料収入(ドル))→ 売上 851 億ドル・営業利益 43 億ドル。対象市場が縮む中で新規州契約を獲得。全国有力社の地位を強め、保険料率と医療費が均衡する。
- メディケア(高齢者・二重資格者向け保険):数量 0.5(メディケア保険加入者数(百万人))× 価格 45,000(加入者1人当たりの年間保険料収入(ドル))→ 売上 203 億ドル・営業利益 9 億ドル。二重資格者向け統合保険が拡大し、高医療費加入者の管理が改善する。
- マーケットプレイス(ACA個人保険):数量 0.6(個人医療保険の加入者数(百万人))× 価格 11,500(加入者1人当たりの年間保険料収入(ドル))→ 売上 63 億ドル・営業利益 2 億ドル。採算を重視した再成長。ACA補助制度の大幅な追加悪化はない。
- その他(介護支援相談・小規模商業保険):数量 0.0(保険・介護支援関連の加入者数(百万人))× 価格 19,000(加入者1人当たりの年間保険料相当収入(ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。相談業務のAI代替を効率化で吸収。数量は2025年を超えない。
倍率:資本コストk=9.0%、2035年ROE=38.0÷110.7=34.3%、moatはnormalで超過収益の残存割合は1/2。RONIC=9.0%+(34.3%-9.0%)÷2=21.7%。2035年以降のgは4.0%で、保険料の名目上昇約4%、市場の実質数量は横ばい、シェアの維持を前提とする。正当化PER=(1-g/RONIC)/(k-g)×(1+g)で約17.0倍。その約91%である15.4倍を採用。利益の質は上側の筋書きで高いが、政府料金と契約更新のリスクを残すため上限を使い切らない。純利益は株式報酬費用を控除したGAAPベース。
確率:州契約の高い勝率が続き、2027年からの料金改定が医療費増加を十分に補う。会社の2029年成長計画を上回る成果が2035年まで続くには、未獲得契約と買収の成功も必要である。複数の好条件が重なるため8%とする。
やや楽観 18% やや楽観:保険料の正常化と安定した新規契約で利益が回復する 利益 23 億ドル · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 619.92 ドル317 億ドル
州政府の料率が医療費の伸びを徐々に補う。メディケイドの加入者は2026年の減少を乗り越え、2035年には550万人となる。市場全体の加入者が減っても、フロリダやテキサスなどの大型州契約を維持し、地域競合からシェアを獲得する。医療費率は改善するが、センティーンなどとの入札競争が残るため、主力部門の営業利益率は3.5%にとどまる。
メディケアは従来型MAPDからの撤退後、二重資格者向けの統合保険へ集中する。加入者38万人となり、採算も改善する。マーケットプレイスでは安売りを避けながら40万人を維持し、利益率は2.5%まで戻る。
全社営業利益は約34.39億ドル、純利益は23億ドルとなる。2026年から2035年までの純利益累計150.3億ドルから正味104億ドルを還元し、自己資本は87億ドルとなる。ROEは26%台で、過去の良好な時期に近い。規模の拡大と資本効率の両方が評価できるが、政府への価格交渉力が強いわけではないため、利益率の上限は抑えられる。
- メディケイド(低所得者向け公的医療保険):数量 5.5(保険加入者数(百万人)。米国のメディケイド管理医療市場の加入者数×獲得シェアに相当)× 価格 12,900(加入者1人当たりの年間保険料収入(ドル))→ 売上 710 億ドル・営業利益 25 億ドル。契約更新を高い割合で勝ち抜き、州料金が医療費の伸びを補う。
- メディケア(高齢者・二重資格者向け保険):数量 0.4(メディケア保険加入者数(百万人))× 価格 41,000(加入者1人当たりの年間保険料収入(ドル))→ 売上 156 億ドル・営業利益 5 億ドル。二重資格者に集中して加入者数と収益性が改善する。
- マーケットプレイス(ACA個人保険):数量 0.4(個人医療保険の加入者数(百万人))× 価格 11,000(加入者1人当たりの年間保険料収入(ドル))→ 売上 44 億ドル・営業利益 1 億ドル。縮小した市場で無理な価格競争を避け、利益を優先する。
- その他(介護支援相談・小規模商業保険):数量 0.0(保険・介護支援関連の加入者数(百万人))× 価格 18,000(加入者1人当たりの年間保険料相当収入(ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。小規模な相談業務の数量は減るが、保険付帯業務は残る。
倍率:k=9.0%、ROE=23.0÷87.0=26.4%。標準の堀によりRONIC=9.0%+(26.4%-9.0%)÷2=17.7%。gは4.0%。その内訳は保険対象人口の実質伸びが小さく、シェアは概ね維持、保険料が医療費と物価に合わせて名目4%程度上がる構造である。正当化PERは約16.1倍。利益の質と政府契約の不確実性を考慮し、上限の約86%に当たる13.8倍を採用する。GAAP純利益を基準とし、株式報酬と買収償却を倍率側で足し戻さない。
確率:2027年の料率上昇を出発点に、医療費率の改善と州公募の成功が続く場合。会社の過去の実績が根拠になる一方、政府財政の制約から極端な高利益率は想定しない。18%とする。
中立 32% 中立:契約獲得力は残るが、利益率は過去の好況期に戻りきらない 利益 14 億ドル · PER 11.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 305.22 ドル156 億ドル
2027年以降、州政府の料率改定が医療費の増加に追いつき始める。メディケイド市場全体は縮小するが、モリナは州契約の獲得と既存地域での維持によって加入者を480万人まで戻す。センティーンの規模には及ばないものの、フロリダなどの高医療費の加入者を扱う能力を高める。主力の営業利益率は2.5%となり、過去の好況期には戻りきらない。
メディケアは二重資格者の需要を背景に31万人へ増える。マーケットプレイスは2026年の縮小後、28万人程度で落ち着く。全社の保険料収入は約738億ドルとなるが、会社の2029年目標を延長するだけの高成長は見込まない。政府からの料金改定と新規契約が、医療費と管理費の増加をおおむね補う形である。
全社営業利益は約21.01億ドル、GAAP純利益は13.5億ドルとなる。2026年から2035年の純利益累計91.3億ドルに対し、正味57億ドルを自社株買いなどで還元する。自己資本は75億ドル、ROEは18%である。堀は維持されるが、利益率と資本効率は2018〜2024年の高水準より低くなる。この姿が、10年後の最も自然な到達点と考える。
- メディケイド(低所得者向け公的医療保険):数量 4.8(保険加入者数(百万人)。米国のメディケイド管理医療市場の加入者数×獲得シェアに相当)× 価格 12,400(加入者1人当たりの年間保険料収入(ドル))→ 売上 595 億ドル・営業利益 15 億ドル。市場全体の加入者減少を新規州契約の獲得で補う。医療費率は緩やかに改善。
- メディケア(高齢者・二重資格者向け保険):数量 0.3(メディケア保険加入者数(百万人))× 価格 36,900(加入者1人当たりの年間保険料収入(ドル))→ 売上 114 億ドル・営業利益 3 億ドル。不採算商品から撤退し、二重資格者向け統合保険で小幅な成長。
- マーケットプレイス(ACA個人保険):数量 0.3(個人医療保険の加入者数(百万人))× 価格 10,000(加入者1人当たりの年間保険料収入(ドル))→ 売上 28 億ドル・営業利益 0 億ドル。2026年の縮小後の規模をおおむね維持。保険料の上昇は加入者の増加を伴わない。
- その他(介護支援相談・小規模商業保険):数量 0.0(保険・介護支援関連の加入者数(百万人))× 価格 17,400(加入者1人当たりの年間保険料相当収入(ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。AIエージェント代替を受ける相談業務の数量は2025年の約0.67倍。単価は1.16倍にとどまる。
倍率:k=9.0%、ROE=13.5÷75.0=18.0%、moatはnormal。RONIC=9.0%+(18.0%-9.0%)÷2=13.5%。2035年以降のgは3.5%とする。内訳はメディケイド全体の実質数量が横ばいから微減、会社のシェアが概ね維持、加入者1人当たり保険料は名目4%程度上がるというもの。数量の微減と価格上昇を合わせ、成熟後の名目成長を3.5%とする。正当化PER=(1-0.035/0.135)/(0.09-0.035)×1.035で約13.94倍。政府の値決め力が弱く利益率の変動も大きいため、その約82%に当たる11.4倍を採用。今の市場PERや同業の市場倍率は根拠にしていない。GAAP純利益で評価し、現金・投資の利息を二重加算しない。
確率:2026年の医療費率悪化を一時的な要素と構造的な要素に分ける。州の料率が改善する一方、メディケイドの加入者減少と政府財政の制約も続く。2029年の会社目標をそのまま達成する前提を避け、中立を32%とする。
やや悲観 27% やや悲観:州料金の不足が続き、加入者と利益率がともに低迷する 利益 5 億ドル · PER 9.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 88.94 ドル46 億ドル
メディケイドの受給資格の見直しが続き、健康な加入者の減少で医療費率が高止まりする。州政府の料率改定は毎年実施されるが、病院費用と在宅医療費の増加を十分には補わない。モリナは主要な州契約を維持するものの、新たな契約獲得はセンティーンや地域の保険者との競争で伸び悩む。加入者は400万人へ減り、主力の営業利益率は1.2%まで低下する。
メディケアでは採算の悪い地域から撤退し、加入者20万人となる。マーケットプレイスも18万人に縮小し、規模不足から再び小幅な営業赤字となる。管理費の削減だけでは医療費率を十分に補えず、全社の営業利益率は低いままになる。
全社営業利益は約7.51億ドル、純利益は4.5億ドルとなる。2026年から2035年の純利益累計30.4億ドルのうち17億ドルを正味還元し、自己資本は54.1億ドルとなる。ROEは約8.3%で資本コストを下回る。会社は存続するが、新しい契約に投じる資金が十分な超過利益を生まない。かつての高収益保険会社という評価は失われる。
- メディケイド(低所得者向け公的医療保険):数量 4.0(保険加入者数(百万人)。米国のメディケイド管理医療市場の加入者数×獲得シェアに相当)× 価格 11,200(加入者1人当たりの年間保険料収入(ドル))→ 売上 448 億ドル・営業利益 5 億ドル。資格見直しと州契約の競争で加入者減。医療費率が高止まりする。
- メディケア(高齢者・二重資格者向け保険):数量 0.2(メディケア保険加入者数(百万人))× 価格 34,500(加入者1人当たりの年間保険料収入(ドル))→ 売上 69 億ドル・営業利益 0 億ドル。高医療費の加入者が残り、利益率が低い。
- マーケットプレイス(ACA個人保険):数量 0.2(個人医療保険の加入者数(百万人))× 価格 9,300(加入者1人当たりの年間保険料収入(ドル))→ 売上 17 億ドル・営業利益 0 億ドル。補助制度縮小と競争で規模不足が続き、赤字。
- その他(介護支援相談・小規模商業保険):数量 0.0(保険・介護支援関連の加入者数(百万人))× 価格 16,500(加入者1人当たりの年間保険料相当収入(ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。AI代替と契約縮小により相談・支援関連の仕事が減る。
倍率:ROE=4.5÷54.1=8.3%でk=9.0%を下回る。新しく留保・再投資する資本が資本コストを稼げないため、PERの上限は1/k=11.1倍とする。長期の名目gは2.5%で、保険料の上昇約3.5%から加入者・シェアの実質減少を差し引く。事業の収益性悪化と州契約の不確実性を考え、上限より低い9.7倍を採用する。中立の11.4倍を下回る。
確率:州政府の支払いと医療費の不均衡が長く続き、加入者減少も止まらない場合。2025〜2026年の実績に近い状態が何度も起こる可能性を重く見る。中立より低い利益率と資本効率へ移る確率を27%とする。
悲観 15% 悲観:公的保険の制度縮小と契約喪失で、薄利の保険会社に変わる 利益 2 億ドル · PER 9.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 31.54 ドル16 億ドル
メディケイドの受給要件と州財政の制約がさらに厳しくなる。政府は料金を十分に引き上げず、センティーンやエレバンス、地域の非営利保険者との競争も激化する。モリナは重要な州契約をいくつか失い、メディケイド加入者は300万人へ減る。医療費率は高止まりし、主力の営業利益率は0.6%まで低下する。
メディケアでも高医療費の加入者を十分に管理できず、加入者は13万人に縮小する。マーケットプレイスは7万人となり、固定的な管理費を負担できず赤字が続く。2027〜2029年には契約撤退費用や買収資産の減損で損失を出し、その後も過去の利益率には戻らない。大規模な買収は停止し、株主への還元も行わない。
2035年の営業利益は約2.84億ドル、純利益は1.7億ドルにとどまる。2026年以降の利益と損失は期間全体でほぼ相殺し、純利益累計は約0億ドルとなる。自己資本は約40.7億ドルで、ROEは約4.2%に低下する。売却可能な純資産を慎重に見積もると、価値の床は約15億ドルと考える。事業は存続するが、資本を増やしても高い収益は得られない状態である。
- メディケイド(低所得者向け公的医療保険):数量 3.0(保険加入者数(百万人)。米国のメディケイド管理医療市場の加入者数×獲得シェアに相当)× 価格 9,800(加入者1人当たりの年間保険料収入(ドル))→ 売上 294 億ドル・営業利益 2 億ドル。州契約を失い、政府の料率不足で利益率が低く固定される。
- メディケア(高齢者・二重資格者向け保険):数量 0.1(メディケア保険加入者数(百万人))× 価格 31,000(加入者1人当たりの年間保険料収入(ドル))→ 売上 40 億ドル・営業利益 0 億ドル。高医療費加入者の負担が重く、利益を生めない。
- マーケットプレイス(ACA個人保険):数量 0.1(個人医療保険の加入者数(百万人))× 価格 8,500(加入者1人当たりの年間保険料収入(ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 0 億ドル。縮小と競争によって赤字が続く。
- その他(介護支援相談・小規模商業保険):数量 0.0(保険・介護支援関連の加入者数(百万人))× 価格 15,000(加入者1人当たりの年間保険料相当収入(ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。介護支援相談の事務工程がAIに代替され、規模も縮小する。
倍率:ROEは1.7÷40.7=4.2%となり、k=9.0%を大きく下回る。長期gは1.0%で、保険料の名目上昇が対象加入者の構造的減少によって相殺される。ROEが資本コスト未満のためPER上限は1/k=11.1倍。収益の低さと州契約の喪失を考慮し9.5倍とする。時価総額は1.7×9.5=16.15億ドル。別途見積もった売却可能な純資産の床15億ドルを上回り、事業の稼ぐ力だけで過大な価値を付けていない。
確率:政府の保険支出が強く抑制される中、複数州で契約を失い、医療費率の高止まりと資産減損が重なる構造的な負けを想定する。全国事業のすべてを失うわけではないが、以前の収益力を回復できない場合として15%を割り当てる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
メディケイド(低所得者向け公的医療保険)
州政府から加入者1人当たりの定額保険料を受け取り、医療費を負担する主力事業。契約獲得と医療費管理によって利益を稼ぐ。
| 数量保険加入者数(百万人)。米国のメディケイド管理医療市場の加入者数×獲得シェアに相当 | 価格加入者1人当たりの年間保険料収入(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4.6 | 7,058 | 322 | 9 |
| 10 年後 中立 | 4.8 | 12,400 | 595 | 15 |
取り方:2025年10-Kの期末加入者456.8万人と年間メディケイド保険料収入322.40億ドルを使用。年間収入を期末加入者で割った約7058ドルは実現単価の代理値であり、厳密な年間平均加入者単価ではない。2025年の医療利益26.52億ドル、医療費率91.8%を基礎とする。op_okuは2026年Investor Dayが示す2025年の部門調整後税引前利益率約2.8%を手掛かりにした配賦推定で、公式のGAAP部門営業利益ではない。2026年9月の加入者は437.2万人、医療費率は第3四半期93.0%。市場比較ではHMAの2026年3月の対象市場シェア6.0%、センティーン17.9%、エレバンス10.6%、ユナイテッドヘルス8.4%を使用。ただしHMAの集計対象と会社の全州加入者の母集団は完全には同じでない。2025年法による加入者減少の根拠はCBOの2026年予測。https://www.healthmanagement.com/blog/medicaid-managed-care-enrollment-declines-in-q1-2026-hma-analysis-of-state-trends-and-market-share/ https://www.cbo.gov/publication/62105
メディケア(高齢者・二重資格者向け保険)
高齢者や障害者を対象とする公的医療保険。特にメディケイドとメディケアの両方に加入する人の統合保険に成長余地がある。
| 数量メディケア保険加入者数(百万人) | 価格加入者1人当たりの年間保険料収入(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.3 | 23,800 | 62 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.3 | 36,900 | 114 | 3 |
取り方:2025年10-Kの加入者26.2万人、年間保険料62.35億ドルから年単価約2万3800ドルを算出した。高齢者・二重資格者の高い医療リスクと給付構成が単価に含まれる。医療利益4.75億ドル、医療費率92.4%。op_okuは2026年Investor Dayにある2025年の部門調整後税引前利益率約マイナス0.6%を手掛かりにした推定。2026年9月の加入者は22.2万人。2027年に採算の悪い従来型MAPDから撤退するため、過去の加入者数をそのまま外挿しない。2026年のメディケア・アドバンテージ市場3520万人、D-SNP市場約640万人はKFFのCMSデータによる。ユナイテッドヘルスとヒューマナがMA全体の約46%を占める。https://www.kff.org/medicare/medicare-advantage-in-2026-enrollment-update-and-key-trends/
マーケットプレイス(ACA個人保険)
政府補助を利用する個人や家族に医療保険を販売する。保険料の競争が激しく、補助制度や加入者の健康状態の変化で利益が大きく振れる。
| 数量個人医療保険の加入者数(百万人) | 価格加入者1人当たりの年間保険料収入(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.7 | 6,850 | 45 | −2 |
| 10 年後 中立 | 0.3 | 10,000 | 28 | 0 |
取り方:2025年10-Kの加入者65.5万人と年間保険料44.87億ドルから年単価約6850ドルを計算。医療利益4.23億ドル、医療費率90.6%。op_okuはInvestor Dayが示す2025年の調整後税引前利益率約マイナス4.1%を参考とした推定で、公式GAAP部門利益ではない。2026年9月の加入者は26.7万人まで減り、会社は2027年に展開州を7州へ絞る方針。KFFによる2026年のACAマーケットプレイス有効加入者は約1920万人。競合センティーンは2025年末に約554万人、オスカー・ヘルスは2026年6月末に約296万人の関連加入者を持つ。母集団・時点の違いがあるためシェアは概算とする。https://www.kff.org/affordable-care-act/how-has-aca-marketplace-enrollment-changed-across-states-in-2026/
その他(介護支援相談・小規模商業保険)
ウィスコンシン州の長期介護支援相談と、コネクティケア買収に伴う小規模な商業保険など。主力の医療保険に比べて事業規模は極めて小さい。
| 数量保険・介護支援関連の加入者数(百万人) | 価格加入者1人当たりの年間保険料相当収入(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 15,000 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 17,400 | 1 | 0 |
取り方:2025年10-KのOther加入者6000人、保険料収入0.90億ドルを使用。年単価1万5000ドルは保険部分の代理単価である。介護支援相談の独立した売上、時間課金の割合、件数は非開示であり、保険料から相談業務の単価を特定できない。Other全体が連結保険料の約0.2%なので、数量・価格の将来値は保守的な代理推定とする。AIエージェント代替に該当しうる相談・事務部分は、人月・工数型として中立の数量を約0.67倍、価格を約1.16倍に抑える。相談部分の2035年以降の名目成長は0%相当と考える。会社全体の長期成長は、売上のほぼ全額を占める保険引受事業から判断する。
リスクと懸念
医療費率の高止まり
最大のリスクは、政府から受け取る保険料より医療費が速く増えることだ。2025年の全社医療費率は91.7%、2026年9月までには92.1%となった。州政府の料金改定が後追いになるため、医療費率が1ポイント悪化するだけで利益が大きく減る。行動医療、在宅医療、高額薬剤、病院利用が継続して増えると、過去の高い利益率へ戻れない。
メディケイドの加入資格見直し
2025年の財政調整法により、就労要件や資格確認の厳格化が進む。会社自身は2029年まで市場の加入者が年2〜3%減少すると予想し、CBOも2035年に大幅な加入者減少を見込む。健康な加入者が先に減れば、残った加入者の平均医療費が上がる。市場縮小を新規州契約で補えない場合、数量と利益率の両方が悪化する。
州契約の失注と地域集中
メディケイドの契約は州ごとの競争入札であり、恒久的な営業権ではない。過去にはバージニア州の契約を失い、2025年6月末に終了した。フロリダなどの大型契約が成長を支える一方、更新で失注すれば売上が一度に減る。契約を失っても情報システムや人員の費用はすぐに減らせないため、売上以上に利益が落ちる可能性がある。
資本配分と買収の失敗
会社は過去に保険事業を多数買収し、売上規模を拡大した。しかし買収価格が安くても、取得後の医療費率が悪化すれば資本コストを上回る利回りを得られない。2025年には純利益を超える10億ドルの自社株買いを行い、自己資本が減った。将来の買収や株主還元が規制資本の余裕を圧迫すれば、低い収益力をさらに固定する危険がある。
マーケットプレイスの政策変更と加入者減少
ACAの保険料補助の縮小により、市場全体の加入者が減っている。モリナも採算を優先した値上げと地域撤退を進め、2026年9月の加入者は26.7万人となった。加入者が減ると固定的な管理費の負担が増し、残った人の医療費も高くなる可能性がある。保険料の引き上げだけでは利益を回復できない局面がある。
AIエージェント代替と保険審査の規制
主力の保険引受は人月販売や席課金ソフトではなく、AIエージェントによる直接代替の型には当たらない。一方、Otherに含まれる介護支援相談や保険請求の事務工程は自動化されやすい。中立ではOtherの数量を2025年の約0.67倍とした。AIは管理費を減らす可能性があるが、保険請求の自動否認が規制や訴訟を招く危険もある。会社がAIによる利益改善を実績で示すまでは大きな上振れを織り込まない。
規制資本と現金の制約
保険会社の現金には、将来の保険金請求を支払う役割がある。2026年9月末には連結で多額の現金・投資を保有していたが、保険子会社には約30億ドルの法定最低資本が必要だった。親会社への配当にも監督当局の制限がある。会計上は純現金に見えても、その全額を自社株買いや買収に使えるわけではない。利益率の悪化で規制資本の余裕が減れば、株主還元は後回しになる。
今後の分かれ目
- 2027年のメディケイド料率が約6%上がり、医療費の伸びが5.5%以下に落ち着いたら
- 料金と費用の不均衡が改善する。2028年の医療費率も低下するなら、中立からやや楽観への移行を検討できる。
- メディケイドの医療費率が2027年以降も93%以上に張り付いたら
- 料金改定が不十分と判断する。中立の営業利益率を下げ、やや悲観・悲観の確率を引き上げる。
- フロリダなどの新規大型州契約が計画どおり始まり、採算も黒字になったら
- 新規契約の獲得力が利益に結びついた証拠となる。メディケイド加入者の回復と増分資本利益率の改善を評価する。
- 2028年までに重要州で複数の契約を失い、メディケイド加入者が400万人未満になったら
- 市場全体の縮小をシェア拡大で補えないと判断する。10年後の数量を下げ、構造的な負けの筋書きを重くする。
- 2027年のメディケア事業が不採算MAPDからの撤退後も赤字を続けたら
- 高齢者向け保険の採算改善能力に疑問が生じる。メディケアの営業利益率と資本効率を下方修正する。
- 2029年の年間保険料収入が600億ドルを超え、調整後税引前利益率が2.5%以上になったら
- 会社の中期成長計画の達成が近づく。ただしGAAP利益、買収への投資額、株式報酬を確認してから長期価値を引き上げる。
- 利益回復前に大規模な自社株買いや高額買収を再開し、規制資本の余裕が低下したら
- 成長より資本保全を優先すべき局面と判断する。正味の株主還元と増分ROICを見直し、悲観の確率を高める。
見ておくもの
- 四半期ごとの全社医療費率とメディケイド医療費率。特に93%から低下するか
- 2027年のメディケイド料率改定と医療費トレンドの差
- メディケイドの既存州加入者の減少率と、新規州契約による加入者の増加
- フロリダの新規大型契約の立ち上げ費用、加入者、保険料収入、採算
- 州契約の再入札での勝率と失注による年間保険料収入の減少
- メディケアの二重資格者向け加入者数と、2027年MAPD撤退後の利益率
- マーケットプレイスの加入者数と医療費率。2027年の地域縮小が利益改善につながるか
- 2029年の会社目標に対するGAAP利益と正味の営業キャッシュフロー
- 親会社の現金・投資、保険子会社の法定資本余力、自社株買いの実施額
- 買収した保険事業の取得価格に対する実際の増分利益
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額から逆算せず、2025年の部門別加入者と保険料単価を出発点にした。2026年の加入者減少と医療費率悪化を反映し、2035年の部門別数量、単価、医療費管理後の営業利益を積み上げた。倍率は市場の過去PERや同業の市場評価を使わず、k=9.0%、事業ROE、RONIC、長期gから計算した利益ベースの正当化PERに対する利益の質で決めた。中立の正当化PERは約13.94倍、採用倍率は11.4倍である。余剰現金は独立して加算していない。2025年末の純現金は小さく、保険子会社の現金と投資は保険金支払いと規制資本に結び付くためである。10年の株主還元は配当・自社株買いから株式報酬と増資の影響を控除した正味額であり、自己資本の繰り越しと整合する。5つの筋書きの確率加重価値は約105.3億ドル、基準時価総額約107.1億ドルとの差は約マイナス1.7%で、5段階では「適正」となる。外部時価総額との約2%の差は主に表示株数の丸めである。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株共通の基本8.0%にquality+1.0%を加えた9.0%。センティーンの9.0%と同水準で、事業分散に優れるユナイテッドヘルスやエレバンスの8.5%より高い。ヒューマナやCVSヘルスの9.5%より低いのは、純有利子負債が小さく、医療保険以外の複雑な事業や大型薬剤給付管理事業を抱えないためである。存続そのものが危ない財務状態ではないのでextraは0とする。βと市場倍率は使用しない。