結論
ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)は、抗凝固薬エリキュース(2025 年 144 億ドル、ファイザーと共同)、免疫がん薬オプジーボ・ヤーボイ(同 130 億ドル)、骨髄腫・貧血・リンパ腫の血液領域(レブロジル・ブレヤンジ・レブラミド・ポマリスト)、心臓・免疫・神経の新薬(キャムジオス・ソティクツ・コベンフィ)を持つ大手製薬である。2025 年の売上は 482 億ドルで、成長品が 264 億ドル(+17%)、旧主力が 218 億ドル(−15%)。2026 年は 4〜6 月期にエリキュースが +21% と伸び、通期の売上見通しを 490〜500 億ドルへ引き上げた。
問題は先にある。エリキュースは 2027 年に欧州で、2028 年 4 月に米国で後発薬が入り、オプジーボも 2028 年に米国の独占を失う。この 2 剤で 2025 年売上の 57%(276 億ドル)を占め、利益ではさらに高い比率になる。BMS は 2030 年までに最大 10 の新薬発売を掲げるが、肥満薬のような単独の柱はなく、ミルベキシアン(エリキュースの後継)・コベンフィのアルツハイマー病精神病・pumitamig(PD-L1 と VEGF の二重特異性抗体)の ミルベキシアンとコベンフィの重要な結果が 2027 年初めにずれ込み、pumitamig は大型試験が始まったばかりで、確かな材料は先にある。
数量 × 価格で 6 つの事業を積み上げると、中立は 2035 年に売上 403 億ドル・純利益 97 億ドル。倍率は利益ベースの正当化 PER(10 年の中立で 16.7 倍。g 4.0%・ROE 23.5%・k 8.5%)の 7 割、11.7 倍に置いた。崖が深い分、同業の製薬より低めにしている。悲観側の確率を厚くした確率加重の本質価値は、今の時価総額(1,218 億ドル)を約 22% 下回り、「やや割高」。崖の後に年 100 億ドル近い純利益が残る計算でも、k 8.5% の割り引きでは今の値段に届かない。悲観では今の 3 割ほどになり、買収が成功しない場合の下振れは大きい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家なら、まず 10 年後を問う。エリキュースとオプジーボが 2028 年に独占を失う事実は動かず、堀は「特許が守る間だけの独占」で、広がらない。10 年後も存在し今より強いと言えるのは、血液領域(レブロジル・ブレヤンジ・次世代の骨髄腫薬)とキャムジオスなど成長品で、これらが崖の穴を何割埋めるかが事業の質を決める。中立では、失う売上 265 億ドル分の 7 割を成長品と新薬で補う。
オーナー利益で見る。2025 年の GAAP 純利益 70 億ドルは仕掛かり研究開発費 37 億ドルと償却に削られ、事業の稼ぐ力を表さない。本稿は償却を足し戻し、平常の仕掛かり研究開発(年 20 億ドル)は費用として引いた純利益で書く。2026 年は約 124 億ドル、2028 年の中立は 94 億ドル、2035 年は 97 億ドル。ここから研究開発と買収の再投資を引いた株主のものになる利益は、配当 51 億ドルを賄って余る。
資本配分には厳しい目が要る。セルジーンの買収は旧主力の崖と減損で価値を壊し、近年の買収の成否もまだ半々。配当は誠実だが、自社株買いをしないのは負債が重いことの裏返しである。安全域の面では、中立の 2035 年の時価総額は今の約 0.93 倍、確率の重みをつけた本質価値は今の約 0.78 倍と薄く、悲観では今の 3 割ほどに下がる。ただし予測のしやすさは低く(ミルベキシアンなど 3 本の結果がまだ出ていない)、確信度は下げて見る。
何で稼ぐ会社か
売上の最大は、世界の抗凝固薬の標準薬エリキュース(2025 年 144 億ドル、+8%)。心房細動の脳卒中予防と静脈血栓症に使われ、ファイザーと費用と利益を分け合う。米国では 2026 年から Medicare の交渉価格が適用されたが、会社は 2026 年通期で +20〜25% と見込む(2025 年末の合意で米政府へ無償提供する代わりに関税の猶予を得た)。
免疫がんは、オプジーボ(2025 年 100 億ドル、+8%)とヤーボイ(29 億ドル、+15%)。オプジーボは点滴から皮下注のオプジーボ・キュバンティグ(Qvantig、2026 年 4〜6 月期に 2.6 億ドル、年換算 10 億ドル超)への切り替えで、2028 年の独占切れの後も守る作戦。血液領域では、貧血のレブロジル(23 億ドル、+31%)、CAR-T 療法のブレヤンジ(14 億ドル、+82%)、アベクマが成長し、骨髄腫の旧主力レブラミド(30 億ドル、−49%)とポマリスト(27 億ドル、−23%)は後発薬で縮む。
成熟した免疫・神経はオレンシア(37 億ドル、横ばい)とゼポジア(6 億ドル)。新薬群は、閉塞性肥大型心筋症のキャムジオス(11 億ドル、+77%、2026 年 4〜6 月期 +59%)、乾癬の飲み薬ソティクツ、統合失調症のコベンフィ(1.6 億ドル、処方の増量が遅く伸びは緩やか)、クラザティ(KRAS 阻害薬)など。開発では、血液凝固第 XI 因子阻害薬ミルベキシアン、特発性肺線維症のアドミルパラント、骨髄腫のアイベルドミド・メゼジゴマイド、ビオンテックと組む pumitamig に賭けている。
米国の販路は保険と薬剤給付管理会社で、価格は割引交渉で決まる。研究開発は売上の 2 割、販管費が 1 割半で、「生産性改善」の費用削減を続けている。
優良さと弱いところ
堀は 3 つ。第 1 に特許と治験の規模(エリキュースは心房細動の大規模試験で標準薬の地位を築いた)、第 2 に血液・免疫・がんの販売網と医師との関係(オプジーボの併用療法、骨髄腫薬の系列)、第 3 に CAR-T などの製造能力。ただし堀は「特許が守っている間」で、広がるより狭まる局面にある。
資本効率は見かけでは測れない。自己資本は 185 億ドルと小さく ROE 38% は意味を持たない(2019 年のセルジーン買収の償却と減損、2024 年のカルナ・レイゼバイオ買収の費用が積み上がった結果)。事業そのものの質は、非 GAAP の営業利益率が 3 割台後半と高い。GAAP の純利益 70 億ドルは、取得した仕掛かり研究開発の費用 37 億ドルと無形資産の償却で小さく見える。
経営の評価は割れる。2019〜2024 年に買収で 600 億ドル超を投じ、セルジーンの研究パイプラインのうち買収時に価値を置いた薬の多くは期待に届かず、2024 年に大きな減損を出した(純損失 90 億ドル)。一方、カルナを 140 億ドルで買ったコベンフィは発売後の処方の伸びが遅く、期待を下回る。弱点は 3 つ。エリキュースとオプジーボへの集中、次の柱が確定していないこと(ミルベキシアンの結果が 2027 年)、純負債 365 億ドルを抱えたまま配当(年約 51 億ドル)を続ける財務の余裕の小ささである。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
大手製薬の共通の構図は、特許切れ(2028〜2031 年)で主力が崖状に落ち、新薬と買収で補う競争である。業界ノートの置き方では、特許切れ後の売上は低分子で 8〜9 割、バイオ医薬で 4〜6 割落ち、失う売上の 6〜7 割を新薬で補うのが中立。BMS は低分子のエリキュースを失う側にいて、エリキュースは Medicare 交渉価格(2026 年)、直販プログラムでの深い割引、欧州の後発薬(2026〜2027 年)、米国の後発薬(2028 年 4 月)と、段階的に価格と数量を失う。米国の純価格は IRA と最恵国待遇で名目でも下がる前提を置く。
免疫がんは、メルクのキイトルーダ(2028 年に特許切れ)と同じ構図で、オプジーボとキイトルーダがどちらも皮下注へ移る競争に入った。キイトルーダの皮下注(Qlex)が先行し、オプジーボ・キュバンティグは切り替え率が勝負になる。PD-1 は 10 年後にバイオシミラーで価格が崩れ、PD-L1 と VEGF の二重特異性抗体(pumitamig、サミットのイボネシマブなど)が次の標準の座を争う。
血液領域は成長が強い。CAR-T(ブレヤンジのほか、ジョンソン・エンド・ジョンソンとレジェンドのカービクティ、ギリアドのイエスカルタ)は外来化と早期治療で数量が増える。レブロジルは骨髄異形成症候群の貧血で独占に近く、骨髄腫は新しい CELMoD 薬(アイベルドミド・メゼジゴマイド)への世代交代が進む。心血管では、エリキュースの後継を狙う第 XI 因子阻害薬を、バイエルのアスンデキシアンと、ジョンソン・エンド・ジョンソンと組む BMS のミルベキシアンが競い、先に読み出しを終えた方が有利になる。神経ではコベンフィの処方の伸びが遅く、同じムスカリン作動薬の競合(アッヴィのエムラクリジパムは失敗)が脱落したのは追い風でも、市場の立ち上がりは緩やか。分かれ目は、ミルベキシアンの結果(2027 年)、オプジーボ・キュバンティグの切り替え率、米国の薬価政策、BMS の次の買収の成否である。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、2025 年は配当 約 51 億ドル。自社株買いは 2024〜2025 年に実質行っておらず、株数は株式報酬でわずかに増えた(+0.4%)。フリーキャッシュフロー(2025 年 128 億ドル)の約 4 割を配当に使い、残りを負債の返済と買収に回す。
M&A は成長戦略の中心で、2019 年にセルジーンを約 740 億ドルで買って旧主力のレブラミドの崖を招き、2024 年にカルナ(約 140 億ドル)とレイゼバイオ(約 41 億ドル)、2025 年にビオンテックと pumitamig の共同開発(前払い 15 億ドル、総額で最大 110 億ドル規模)を結び、過去 2 年で 300 億ドル超を投じた。成功の証拠はブレヤンジ・レブロジル・キャムジオスだが、コベンフィとセルジーンの旧パイプラインは期待に届かなかった。今の純負債 365 億ドルは借り換えで約 5.75% になる(3 年で利払い −4 億ドル程度の影響)。
今後の鍵は、2028 年の穴(エリキュース 100 億ドル超とオプジーボ)を埋める買収を、バリュー投資の観点で割安に買えるか。時価総額は 1,200 億ドル台で買われる側になる可能性は小さく、買う側として年 50 億〜100 億ドル級を中立の筋書きに入れた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
エリキュースは 2026 年に +20〜25% と会社の見通しを上回り、直販プログラムでの深い割引で数量を守れば、後発薬が入っても米国の売上を一定程度残せる。オプジーボは皮下注のキュバンティグへの切り替えが進み(年換算 10 億ドル超)、切り替え後は新しい特許で 2030 年代まで守られる。成長品は強い。レブロジルは 31%、ブレヤンジは 82%、キャムジオスは 77%(2026 年 4〜6 月期も +59%)の伸びで、3 品だけで 2025 年の 48 億ドルが 2028 年に 100 億ドルを超えうる。
次の柱も数多い。ミルベキシアンはエリキュースと同じ市場(心房細動・脳卒中予防)に出る第 XI 因子阻害薬で、出血が少ないと示せれば、年 100 億ドル超になる。コベンフィはアルツハイマー病精神病で最初の薬になりうる。pumitamig は PD-L1 と VEGF を一度に抑える薬で、肺がんを皮切りに 5 つの大型試験が動く。2030 年までに最大 10 の新薬という計画が実現すれば、2035 年に新薬群だけで 270 億ドル規模に育つ。営業の費用削減(生産性改善)も続き、利益率は 3 割台後半に戻る。時価総額 1,200 億ドルは 2026 年の利益の 9 倍で、崖を織り込みすぎている。
慎重な見方
崖の深さを過小に見ている。エリキュースは 2026 年に Medicare の交渉価格が入っても伸びているのは一時的で、会社自身が 2027 年に 15〜20 億ドル減ると言い、2028 年 4 月に米国で後発薬が入れば、欧州に続いて数量も価格も一気に落ちる。オプジーボは 2028 年に米国の独占を失い、キイトルーダの皮下注が先行する中で、キュバンティグへの切り替え率が 3〜4 割を超える保証はない。この 2 剤で売上の 57%、利益ではそれ以上を占める。
埋める側の確度が低い。ミルベキシアンとコベンフィの読み出しは 2027 年にずれ込み、コベンフィの発売後の処方は増量が遅く、2026 年 4〜6 月期でも 0.6 億ドルにすぎない。セルジーンの旧パイプラインは期待に届かず 2024 年に大きな減損を出し、カルナ(140 億ドル)の価値もまだ証明されていない。ブレヤンジやキャムジオスは良いが、合計でも 2025 年の 25 億ドル程度で、失う 265 億ドルには遠い。さらに最恵国待遇・Medicare の交渉対象の拡大で、成長品の価格も物価に届かない。
財務も薄い。純負債 365 億ドルを抱え、配当(年約 51 億ドル)は純利益の半分に当たる。買収で穴を埋めようとして高く買えば、セルジーンの再来になる。今の PER が低いのは、2028 年以降の利益が 3〜4 割落ちると市場が見ているからで、割安に見えるだけという見方も成り立つ。
どちらに重みを置いたか
成長品の勢いと 2026 年の上方修正は強気の材料だが、10 年は慎重な見方が強い。成長品が埋める保証が薄く、買収の成功率が過去に半々だったため、楽観 7%・やや楽観 18%・中立 32%・やや悲観 28%・悲観 15% に寄せた(悲観・やや悲観で 43%)。結論は、利益ベースの正当化 PER の 7 割で置くと、中立でも今の時価総額をやや下回り、確率加重では「やや割高」。悲観では今の 3 割ほどまで下がるので、安全域は薄く、予測もしにくい。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 55.89 ドル1,140 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 33.06 ドル674 億ドル)。 今の値に割り戻すと 46.71 ドル952 億ドル、今との差 −25.9%、 期待の年率 +3.5%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 131.56 ドル2,683 億ドル | 58.85 ドル1,200 億ドル | +202.2% | +11.7% | 13.33 ドル272 億ドル |
| やや楽観 | 18% | 88.77 ドル1,810 億ドル | 46.59 ドル950 億ドル | +114.9% | +7.9% | 24.37 ドル497 億ドル |
| 中立 | 32% | 55.52 ドル1,132 億ドル | 34.33 ドル700 億ドル | +42.6% | +3.6% | 28.75 ドル586 億ドル |
| やや悲観 | 28% | 36.31 ドル740 億ドル | 25.50 ドル520 億ドル | −1.9% | −0.2% | 17.31 ドル353 億ドル |
| 悲観 | 15% | 18.46 ドル376 億ドル | 16.18 ドル330 億ドル | −45.0% | −5.8% | 5.20 ドル106 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 55.89 ドル1,140 億ドル | 33.06 ドル674 億ドル | +41.2% | +3.5% | 88.95 ドル1,814 億ドル |
今の株価時価総額 63.00 ドル1,285 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:10 の新薬計画がほぼ実現し、新薬群だけで 270 億ドルに育つ 利益 178 億ドル · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 131.56 ドル2,683 億ドル
2035 年、新薬群が 270 億ドルに育つ。ミルベキシアンが年 100 億ドル超(心房細動と脳卒中予防でエリキュースの後継を取る)、キャムジオスが 60 億ドル、コベンフィのアルツハイマー病精神病・pumitamig(肺がんなど)・アドミルパラントが合計 100 億ドル超。血液・細胞治療は 175 億ドル(レブロジル・ブレヤンジ・アイベルドミド・メゼジゴマイド)。エリキュースは 40 億ドルに、オプジーボ・キュバンティグ・ヤーボイは 80 億ドルへ縮むが、売上は 603 億ドル(2025 年の 1.25 倍)、営業利益 221 億ドル(37%)、純利益 178 億ドル。倍率は正当化 PER 18.8 倍の 8 割の 15.1 倍に置いた。
- エリキュース:数量 130(治療患者数(万人))× 価格 3,077(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 40 億ドル・営業利益 17 億ドル
- 免疫がん(オプジーボ・キュバンティグ・ヤーボイ):数量 50.0(治療患者数(万人))× 価格 16,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 80 億ドル・営業利益 38 億ドル
- 血液・細胞治療・その他成長品:数量 40.0(治療患者数(万人))× 価格 43,750(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 175 億ドル・営業利益 84 億ドル
- 成熟した免疫・神経(オレンシア・ゼポジア):数量 70.0(治療患者数(万人))× 価格 4,571(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 32 億ドル・営業利益 12 億ドル
- 旧主力の縮小品(レブラミド・ポマリスト・スプリセルほか):数量 10.0(治療患者数(万人))× 価格 6,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 2 億ドル
- 新薬群(キャムジオス・コベンフィ・ミルベキシアンほか):数量 90.0(治療患者数(万人))× 価格 30,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 270 億ドル・営業利益 94 億ドル
倍率:正当化 PER は 18.8 倍(g 4.0%、RONIC 26.2%。RONIC は k 8.50% に、事業の ROE 44.0% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 15.1 倍(8 割)に置いた。堀は普通:エリキュース・オプジーボなどの大型薬は特許で守られるが、2028 年に独占を失う崖が深く、崖の後の利益が新薬の成否に左右されるので強い堀(2/3)とは見ない。崖を新薬が埋める筋書き。上限の 8 割に置く。純利益は GAAP。
確率:ミルベキシアンがエリキュースの後継になり、キャムジオス・コベンフィ・pumitamig が同時に育ち、買収も成功する展開。10 年で全部が当たる必要があり 7%。
やや楽観 18% やや楽観:崖の穴を埋め切り、売上が今の水準に戻る 利益 133 億ドル · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 88.77 ドル1,810 億ドル
2035 年、新薬群は 220 億ドル(ミルベキシアン 70 億ドル、キャムジオス 50 億ドル、コベンフィ・pumitamig など)、血液・細胞治療は 152 億ドル。エリキュースは 32 億ドル、オプジーボ関連は 66 億ドル、成熟した免疫・神経は 28 億ドル。売上は 503 億ドル(今の 1.04 倍)、営業利益 166 億ドル(33%)、純利益 133 億ドル。倍率は正当化 PER 18.1 倍の 7.5 割の 13.6 倍に置いた。 10 年の純利益の累計は約 922 億ドル。本稿の純利益の足し算(2026・2027 年は 120・118 億ドル、2028 年に 113、2035 年に 133 億ドル。合計 1222 億ドル)は無形資産の償却を足し戻した値なので、償却 約 300 億ドル(年 30 億ドル × 10 年)を引いた帳簿の値で書く。
- エリキュース:数量 110(治療患者数(万人))× 価格 2,909(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 32 億ドル・営業利益 13 億ドル
- 免疫がん(オプジーボ・キュバンティグ・ヤーボイ):数量 45.0(治療患者数(万人))× 価格 14,667(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 66 億ドル・営業利益 30 億ドル
- 血液・細胞治療・その他成長品:数量 36.0(治療患者数(万人))× 価格 42,222(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 152 億ドル・営業利益 71 億ドル
- 成熟した免疫・神経(オレンシア・ゼポジア):数量 64.0(治療患者数(万人))× 価格 4,375(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 28 億ドル・営業利益 10 億ドル
- 旧主力の縮小品(レブラミド・ポマリスト・スプリセルほか):数量 9.0(治療患者数(万人))× 価格 5,556(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 5 億ドル・営業利益 2 億ドル
- 新薬群(キャムジオス・コベンフィ・ミルベキシアンほか):数量 75.0(治療患者数(万人))× 価格 29,333(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 220 億ドル・営業利益 66 億ドル
倍率:正当化 PER は 18.1 倍(g 4.0%、RONIC 21.8%。RONIC は k 8.50% に、事業の ROE 35.1% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 13.6 倍(7.5 割)に置いた。堀は普通:エリキュース・オプジーボなどの大型薬は特許で守られるが、2028 年に独占を失う崖が深く、崖の後の利益が新薬の成否に左右されるので強い堀(2/3)とは見ない。上限の 7.5 割に置く。純利益は GAAP。
確率:ミルベキシアンとキャムジオスが当たり、血液領域も伸びて、崖で失う売上をほぼ補う展開。BMS は 2030 年までの新薬計画と成長品の実績があり、一定の確度はある。
中立 32% 中立:穴の 7 割を埋め、売上は 403 億ドルで落ち着く 利益 97 億ドル · PER 11.7 倍 · 株価時価総額 55.52 ドル1,132 億ドル
2035 年、エリキュースは後発薬の底に近い 25 億ドルまで縮み、オプジーボ・キュバンティグ・ヤーボイは 55 億ドル(点滴はバイオシミラーで崩れ、キュバンティグが残る)。穴の 7 割を埋める:血液・細胞治療は 130 億ドル(レブロジル 55・ブレヤンジ 45・次世代の骨髄腫薬 25 ほか)、新薬群は 165 億ドル(キャムジオス 45・ミルベキシアン 35・コベンフィ 25・pumitamig 25・ソティクツ 15・アドミルパラント 15 ほか)、成熟した免疫・神経は 24 億ドル。売上は 403 億ドル、営業利益 119 億ドル(30%)、純利益 97 億ドル。倍率は正当化 PER 16.7 倍の 7 割の 11.7 倍に置いた。 10 年の純利益の累計は約 702 億ドル。本稿の純利益の足し算(2026・2027 年は 120・118 億ドル、2028 年に 94、2035 年に 97 億ドル。合計 1002 億ドル)は無形資産の償却を足し戻した値なので、償却 約 300 億ドル(年 30 億ドル × 10 年)を引いた帳簿の値で書く。
- エリキュース:数量 90.0(治療患者数(万人))× 価格 2,778(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 25 億ドル・営業利益 10 億ドル
- 免疫がん(オプジーボ・キュバンティグ・ヤーボイ):数量 40.0(治療患者数(万人))× 価格 13,750(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 55 億ドル・営業利益 25 億ドル
- 血液・細胞治療・その他成長品:数量 32.0(治療患者数(万人))× 価格 40,625(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 130 億ドル・営業利益 58 億ドル
- 成熟した免疫・神経(オレンシア・ゼポジア):数量 60.0(治療患者数(万人))× 価格 4,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 24 億ドル・営業利益 8 億ドル
- 旧主力の縮小品(レブラミド・ポマリスト・スプリセルほか):数量 8.0(治療患者数(万人))× 価格 5,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 1 億ドル
- 新薬群(キャムジオス・コベンフィ・ミルベキシアンほか):数量 60.0(治療患者数(万人))× 価格 27,500(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 165 億ドル・営業利益 41 億ドル
倍率:正当化 PER は 16.7 倍(g 4.0%、RONIC 16.0%。RONIC は k 8.50% に、事業の ROE 23.5% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 11.7 倍(7 割)に置いた。堀は普通:エリキュース・オプジーボなどの大型薬は特許で守られるが、2028 年に独占を失う崖が深く、崖の後の利益が新薬の成否に左右されるので強い堀(2/3)とは見ない。中立は上限の 7 割に置く。エリキュースとオプジーボ(売上の 57%)が 2028 年に独占を失う崖が深く、崖の後の利益が新薬の成否に左右される。純利益は GAAP。
確率:業界ノートの中立(失う売上の 6〜7 割を新薬で補う)に沿う。成長品の実績はあるが、新薬の確度は成功率で割り引く。
やや悲観 28% やや悲観:ミルベキシアンとコベンフィが外れ、買収の成功率も半々 利益 67 億ドル · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 36.31 ドル740 億ドル
2035 年、エリキュースは 18 億ドル、オプジーボ関連は 45 億ドル、血液・細胞治療は 115 億ドル、新薬群は 120 億ドル、成熟した免疫・神経は 20 億ドル。売上は 321 億ドル(今の 3 分の 2)、営業利益 82 億ドル(26%)、純利益 67 億ドル。買収の失敗で純負債は 245 億ドルが残り、配当は維持するが増やせない。ミルベキシアンの失敗で心房細動の市場をバイエルなどに譲り、コベンフィの伸び悩みも続くため、売上は 2028 年の 378 億ドルから 2035 年の 321 億ドルへさらに縮む。2030 年代前半の特許切れでも埋め合わせが足りない。倍率は正当化 PER 15.8 倍の 7 割の 11.1 倍に置いた。 10 年の純利益の累計は約 470 億ドル。本稿の純利益の足し算(2026・2027 年は 120・118 億ドル、2028 年に 66、2035 年に 67 億ドル。合計 770 億ドル)は無形資産の償却を足し戻した値なので、償却 約 300 億ドル(年 30 億ドル × 10 年)を引いた帳簿の値で書く。
- エリキュース:数量 70.0(治療患者数(万人))× 価格 2,571(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 18 億ドル・営業利益 7 億ドル
- 免疫がん(オプジーボ・キュバンティグ・ヤーボイ):数量 34.0(治療患者数(万人))× 価格 13,235(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 45 億ドル・営業利益 19 億ドル
- 血液・細胞治療・その他成長品:数量 27.0(治療患者数(万人))× 価格 42,593(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 115 億ドル・営業利益 48 億ドル
- 成熟した免疫・神経(オレンシア・ゼポジア):数量 52.0(治療患者数(万人))× 価格 3,846(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 20 億ドル・営業利益 7 億ドル
- 旧主力の縮小品(レブラミド・ポマリスト・スプリセルほか):数量 6.0(治療患者数(万人))× 価格 5,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 1 億ドル
- 新薬群(キャムジオス・コベンフィ・ミルベキシアンほか):数量 45.0(治療患者数(万人))× 価格 26,667(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 120 億ドル・営業利益 22 億ドル
倍率:正当化 PER は 15.8 倍(g 4.0%、RONIC 13.8%。RONIC は k 8.50% に、事業の ROE 19.1% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 11.1 倍(7 割)に置いた。堀は普通:エリキュース・オプジーボなどの大型薬は特許で守られるが、2028 年に独占を失う崖が深く、崖の後の利益が新薬の成否に左右されるので強い堀(2/3)とは見ない。崖を新薬が埋められない筋書き。上限の 7 割に置く。純利益は GAAP。
確率:ミルベキシアンが外れ、コベンフィも伸びず、買収で補っても成功率が半々にとどまる展開。セルジーン以降の買収の実績が下敷きで、起きても不思議はない。
悲観 15% 悲観:構造的に負け、新薬が軒並み外れて優良ではなくなる 利益 32 億ドル · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 18.46 ドル376 億ドル
2035 年、新薬が軒並み外れ(ミルベキシアンは出血の優位が示せず、コベンフィは処方が伸びず、pumitamig は第 3 相で既存薬に並べず)、薬価政策で成長品の価格も崩れる。エリキュースは 12 億ドル、オプジーボ関連は 30 億ドル、血液・細胞治療は 80 億ドル、新薬群は 75 億ドル。売上は 213 億ドル(今の 44%)、営業利益 44 億ドル。買収の減損を繰り返し、配当を 3 割減らす。純利益 32 億ドルに、構造的に負けた会社の式(k 8.5%・g −1%・ROE 15%)の約 11.8 倍をかけた水準(376 億ドル、今の約 3 割)。 10 年の純利益の累計は約 139 億ドル。本稿の純利益の足し算(2026・2027 年は 120・118 億ドル、2028 年に 23 億ドル(減損・再編費用を含む)、2029 年以降は 24〜25 億ドル前後で減損を繰り返し、2035 年に 32 億ドル。合計 約 438 億ドル)から、足し戻した償却 約 300 億ドル(年 30 億ドル × 10 年)を引いた帳簿の値。
- エリキュース:数量 50.0(治療患者数(万人))× 価格 2,400(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 12 億ドル・営業利益 4 億ドル
- 免疫がん(オプジーボ・キュバンティグ・ヤーボイ):数量 24.0(治療患者数(万人))× 価格 12,500(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 30 億ドル・営業利益 11 億ドル
- 血液・細胞治療・その他成長品:数量 19.0(治療患者数(万人))× 価格 42,105(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 80 億ドル・営業利益 30 億ドル
- 成熟した免疫・神経(オレンシア・ゼポジア):数量 42.0(治療患者数(万人))× 価格 3,333(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 14 億ドル・営業利益 4 億ドル
- 旧主力の縮小品(レブラミド・ポマリスト・スプリセルほか):数量 4.0(治療患者数(万人))× 価格 5,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 1 億ドル
- 新薬群(キャムジオス・コベンフィ・ミルベキシアンほか):数量 28.0(治療患者数(万人))× 価格 26,786(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 75 億ドル・営業利益 9 億ドル
倍率:正当化 PER は 11.8 倍(g -1.0%、RONIC 11.8%。RONIC は k 8.50% に、事業の ROE 15.0% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 11.8 倍(10 割)に置いた。堀は普通:エリキュース・オプジーボなどの大型薬は特許で守られるが、2028 年に独占を失う崖が深く、崖の後の利益が新薬の成否に左右されるので強い堀(2/3)とは見ない。構造的に負けた筋書き(g −1%・ROE 15%)なので、この筋書きの g での正当化 PER の値をそのまま使う(上限の割合は掛けない)。純利益は GAAP。
確率:10 年の間に、ミルベキシアン・コベンフィ・pumitamig が相次いで外れ、薬価政策で成長品の価格も崩れ、買収の減損を繰り返す展開。景気後退ではなく構造的な負けで、15%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
エリキュース
抗凝固薬エリキュース(ファイザーと共同)。心房細動の脳卒中予防・静脈血栓症の標準薬。
| 数量治療患者数(万人) | 価格1 人あたり年間の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 360 | 4,011 | 144 | 72 |
| 10 年後 中立 | 90.0 | 2,778 | 25 | 10 |
取り方:2025 年の売上 144 億ドルを、世界の治療患者 約 360 万人(推定)で割った純単価 約 4,000 ドル。2026 年は +20〜25% の見通しだが、2027 年は欧州の後発薬で 15〜20 億ドル減り、2028 年 4 月に米国で後発薬が入る。価格は Medicare の交渉価格(2026 年)と直販の割引・後発薬で物価に逆らって下がる(中立で 10 年 0.69 倍。物価並みなら 1.11 倍・1.41 倍)。数量は後発薬へ移り、中立で 2028 年に 270 万人、2035 年に 90 万人。
免疫がん(オプジーボ・キュバンティグ・ヤーボイ)
PD-1 阻害薬オプジーボとその皮下注キュバンティグ、CTLA-4 阻害薬ヤーボイ。
| 数量治療患者数(万人) | 価格1 人あたり年間の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 40.0 | 32,975 | 132 | 59 |
| 10 年後 中立 | 40.0 | 13,750 | 55 | 25 |
取り方:2025 年のオプジーボ 100 億ドル・キュバンティグ 2.4 億ドル・ヤーボイ 29 億ドルを、世界の治療患者 約 40 万人(推定)で割った純単価 約 33,000 ドル。2028 年に米国の独占が切れ(月は未確認)、バイオシミラーとキイトルーダの皮下注に押される。価格は点滴のバイオシミラーで崩れ、皮下注へ切り替えた分は保つので平均では下がる(中立で 10 年 0.42 倍)。数量は新規の適応で緩やかに増える(中立で 2035 年 40 万人)。
血液・細胞治療・その他成長品
貧血のレブロジル、CAR-T のブレヤンジ・アベクマ、成長品のロイヤルティと次世代の骨髄腫薬(アイベルドミド・メゼジゴマイド)など。
| 数量治療患者数(万人) | 価格1 人あたり年間の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 15.0 | 48,133 | 72 | 29 |
| 10 年後 中立 | 32.0 | 40,625 | 130 | 58 |
取り方:2025 年のレブロジル 23 億ドル・ブレヤンジ 14 億ドル・アベクマ 4 億ドルに、その他の成長品とロイヤルティ(約 31 億ドル。成長品の合計 264 億ドルとの差を含む)を足した 72 億ドルを、治療患者 約 15 万人(推定)で割った純単価 約 48,000 ドル。数量は CAR-T の外来化・レブロジルの適応拡大・骨髄腫の新薬で年 +14%(中立で 2028 年 22 万人、2035 年 32 万人)。価格は新薬へのミックス上昇で上がる一方、IRA 交渉と競合で物価に届かない(中立で 10 年 0.84 倍)。
成熟した免疫・神経(オレンシア・ゼポジア)
関節リウマチのオレンシア、多発性硬化症・潰瘍性大腸炎のゼポジア。
| 数量治療患者数(万人) | 価格1 人あたり年間の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 80.0 | 5,362 | 43 | 17 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 4,000 | 24 | 8 |
取り方:2025 年のオレンシア 37 億ドル・ゼポジア 6 億ドルの合計 43 億ドルを、治療患者 約 80 万人(推定)で割った純単価 約 5,400 ドル。成熟品で数量は横ばい、2030 年代にゼポジアとオレンシアが後発薬・バイオシミラーに押される。価格は物価に届かず(中立で 10 年 0.75 倍)、中立で 2035 年は 60 万人 × 4,000 ドル。
旧主力の縮小品(レブラミド・ポマリスト・スプリセルほか)
後発薬で崩れた骨髄腫薬レブラミド・ポマリスト、白血病薬スプリセル、アブラキサンなど。
| 数量治療患者数(万人) | 価格1 人あたり年間の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 60.0 | 12,233 | 73 | 40 |
| 10 年後 中立 | 8.0 | 5,000 | 4 | 1 |
取り方:2025 年のレブラミド 30 億ドル・ポマリスト 27 億ドル・スプリセル 5 億ドル・アブラキサン 4 億ドル・その他 8 億ドルの合計 73 億ドルを、治療患者 約 60 万人(推定)で割った純単価 約 12,000 ドル。レブラミドは 2026 年 1 月に後発薬の数量制限が外れ、ポマリストも後発薬が入って、2026 年の旧主力(エリキュースを除く)は約 30 億ドルへ落ちる。価格は後発薬との競合で崩れ(中立で 10 年 0.41 倍)、数量も減る。
新薬群(キャムジオス・コベンフィ・ミルベキシアンほか)
2022 年以降に発売した新薬(キャムジオス・ソティクツ・コベンフィ・クラザティ)と、今後の発売(ミルベキシアン・pumitamig・アドミルパラント)。
| 数量治療患者数(万人) | 価格1 人あたり年間の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 6.0 | 28,667 | 17 | −35 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 27,500 | 165 | 41 |
取り方:2025 年のキャムジオス 11 億ドル・ソティクツ 3 億ドル・コベンフィ 1.6 億ドル・クラザティ 2 億ドルなどの合計 17 億ドルを、治療患者 約 6 万人(推定)で割った純単価 約 28,700 ドル。研究開発(ミルベキシアン・pumitamig などの大型試験)の費用をこの事業に割り当てるので、今は営業赤字。中立で 2028 年は 20 万人 × 26,000 ドル(キャムジオス 28 億ドル・コベンフィ 7 億ドル・ソティクツ 6 億ドル・ミルベキシアン 3 億ドルなど)、2035 年は 60 万人 × 27,500 ドル(キャムジオス 45 億ドル・ミルベキシアン 35 億ドル・コベンフィ 25 億ドル・pumitamig 25 億ドル・ソティクツ 15 億ドルなど)。価格は物価並みに上がるが、IRA の交渉対象の拡大で一部が削られる。
リスクと懸念
エリキュースの崖(2027 年の欧州・2028 年 4 月の米国)
2025 年売上の 3 割(144 億ドル)、利益ではそれ以上を占める。会社自身が 2027 年に 15〜20 億ドルの減少を見込み、米国の後発薬が入る 2028 年は 3 割〜4 割を失う。直販の深い割引は数量を守るが利益率を削る。2026 年の +20〜25% は崖の前の一時的な伸びで、2027 年以降の水準を示さない。
オプジーボの独占切れとキュバンティグの切り替え
オプジーボ 100 億ドルは 2028 年に米国の独占を失う(月は未確認)。切り替え先のキュバンティグは 2026 年 4〜6 月期に 2.6 億ドルで、年換算 10 億ドル超にとどまる。メルクのキイトルーダ皮下注が先行し、点滴のバイオシミラーは価格を 7〜9 割崩す。切り替え率が 3〜4 割に届かなければ免疫がんが大きく縮む。
次の柱の確度(ミルベキシアン・コベンフィ・pumitamig)
ミルベキシアンの心房細動の結果は 2027 年 1〜3 月期、コベンフィのアルツハイマー病精神病は 2027 年初めにずれ込んだ。コベンフィは発売後の処方の増量が遅く、2026 年 4〜6 月期でも 0.6 億ドル。pumitamig は大型試験が始まったばかりで、確かな結果は数年先。1 つでも外れれば穴は埋まらない。
米国の薬価政策(IRA・最恵国待遇・関税)
エリキュースは 2026 年から Medicare の交渉価格が適用済みで、オプジーボやポマリストなども対象。成長品のキャムジオスも交渉対象になりうる。2025 年末にはエリキュースを米政府へ無償提供する代わりに 3 年間の関税猶予を得たが、最恵国待遇が民間保険へ広がれば純価格が 2 年で 1〜2 割下がる。
買収の失敗と純負債
2019 年のセルジーン買収(約 740 億ドル)は旧主力レブラミドの崖と 2024 年の大きな減損を招き、近年のカルナ(140 億ドル)の価値もまだ証明されていない。純負債は 365 億ドルで、借り換えで約 5.75% になる。穴を埋める買収で高く買えば、配当(年約 51 億ドル)の余裕がさらに狭まる。
旧主力の崩れと成長品の特許(レブラミド・ポマリスト・レブロジル・ブレヤンジ)
レブラミドは 2026 年 1 月に後発薬の数量制限が外れ、ポマリストも後発薬が入り、2026 年の旧主力(エリキュース除く)は約 30 億ドルへ落ちる。血液領域の成長は強いが、レブロジルの特許は 2030 年代前半、CAR-T は競合(カービクティ・イエスカルタ)が増え、10 年の終盤に次の崖が来る。
今後の分かれ目
- ミルベキシアンの心房細動の試験(2027 年 1〜3 月期)が、エリキュースに対する出血の優位を示して成功したら
- 新薬群の 2035 年の中立を 165 億ドルから 200 億ドル超へ見直し、10 年の楽観・やや楽観の確率を上げる。失敗なら新薬群の中立を 120 億ドル前後へ下げ、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- キュバンティグが 2027 年末に年換算 30 億ドルを超え、切り替え率が 3 割を超えたら
- 2028 年のオプジーボ関連の中立を 120 億ドルから 130 億ドル超へ見直し、免疫がんの 10 年の中立を 1 割上げる。切り替えが 2 割に届かなければ 1 割下げる。
- コベンフィのアルツハイマー病精神病(ADEPT)が 2027 年に成功し、統合失調症の処方も増量が進んだら
- コベンフィの 2035 年の中立を 25 億ドルから 40 億ドル超へ見直す。ADEPT が失敗すれば 10 億ドル以下へ下げる。
- 米国の最恵国待遇が民間保険に広がり、成長品の純価格が 2 年で 15% 以上下がったら
- やや悲観・悲観の確率を上げ、成長品(血液・細胞治療・新薬群)の価格を 1 割下げて見る。
- 2027 年に BMS が 100 億ドル超の大型買収を発表し、純負債が 450 億ドルを超えたら
- 買収の成否で分かれる。割安に買えて売上が 50 億ドル以上上乗せされれば中立を上げ、高値で買えばセルジーンの再来として悲観の確率を上げる。
- エリキュースの 2027 年の減少が 20 億ドルを超え、直販の割引でも数量を守れないと確認されたら
- 2028 年のエリキュースの中立を 90 億ドルから 75 億ドルへ下げ、3 年のやや悲観を厚くする。
見ておくもの
- エリキュースの四半期売上(2027 年の欧州の後発薬の影響と、直販プログラムの数量)
- オプジーボ・キュバンティグの売上と切り替え率、キイトルーダ皮下注との競争
- ミルベキシアン(心房細動 2027 年 1〜3 月期・脳卒中予防)とコベンフィ(ADEPT 2027 年初め)の読み出し
- レブロジル・ブレヤンジ・キャムジオスの四半期の伸び
- 純負債・配当の増額の有無と、大型買収の発表
- IRA の交渉対象の追加と最恵国待遇の民間保険への波及
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額 1,218 億ドル・今の PER(GAAP で 17 倍、2026 年の非 GAAP の利益で 9 倍弱)を見る前に、6 つの事業を患者数 × 1 人あたり純売上で積み上げ、営業利益率を置いた。倍率は利益ベースの正当化 PER の 7 割に置いた(10 年の中立は上限 16.7 倍(g 4.0%・ROE 23.5%・k 8.5%)の 7 割で 11.7 倍)。割合を下限の 7 割に置いたのは、崖が深く、崖の後の利益が新薬の成否に左右されるからだ。成長品の勢いにも今の安い PER にも寄せていない。結果は今の時価総額の約 0.78 倍。悲観・やや悲観の確率を 10 年で 43% と厚くし、崖の後の利益(中立で純利益 97 億ドル)を 2026 年の 124 億ドルより低く置いたうえの値で、今の値段に寄せて割り引いてはいない。純利益は償却を足し戻した値なので、倍率では足し戻さない。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality +0.5% = 8.5%。特許の崖・薬価政策・新薬の成否・買収などの個別のリスクは k に足さず、やや悲観・悲観の確率(合計 43%)と悲観の深さで表した。存続は危うくないので上乗せ 0。