結論
ユナイテッド・セラピューティクスは、肺動脈性肺高血圧症と間質性肺疾患に伴う肺高血圧症の薬を主力とする米国の製薬会社である。筆者の結論は「適正」だが、今の時価総額には2027年以降の新薬の成功が既にかなり入っており、長期保有の安全域は薄い。2025年は売上32億ドル弱、純利益13.3億ドルであり、借入金のほぼない財務と高い現金創出力が下値を支える。
現在の稼ぎ頭は吸入薬タイバソで、2025年売上の約6割を占めた。ところが2026年4〜6月期は全社売上が前年同期比2%減り、タイバソも4%減った。リキディアのユトレピアやメルクのウィンレベアが市場に入り、既存の堀が競争にさらされている。10月の訴訟和解でユトレピアのPH-ILD適応は外れるが、PAH向けの競争は残る。
これを変えうるのが、肺線維症向けの吸入タイバソと、新しい経口薬ralinepagである。両者の第3相試験は成功し、FDAは申請を受理した。ただし承認前であり、発売しても患者の継続率、保険償還、併用薬との競争が収益を左右する。異種移植用の腎臓や心臓は事業の選択肢だが、未承認のため中立の売上には大きく数えない。
2035年の中立では売上約70億ドル、純利益21.6億ドル、時価総額約320億ドルを見込む。10年間の正味還元128億ドルも考慮し、資本コスト8%で現在に引き直した確率加重の価値は約272億ドルとなる。基準時点の時価総額約250億ドルに対する差は約9%で、判定は「適正」。事業の将来性と支払う値段の余裕は、分けて考えたい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、病気の重さよりも、10年後に患者がどの薬を選び、誰がその治療から現金を得るかを問いたい。タイバソは長く使われてきた有効な治療薬だが、同じ成分を別の吸入器で届ける競合が現れた。守られているPH-ILDの権利と、競争が続くPAHの事業は同じように評価できない。患者が増えても、薬価と販売シェアが落ちれば株主の取り分は減る。
一方、2026年までに得た臨床試験の成果は、単なる研究開発上の期待より価値がある。タイバソの肺線維症適応とralinepagが承認されれば、既存の顧客基盤から幅広い患者へ販路を延ばせる。ただしralinepagの売上の一部は自社のオレニトラムから移る。臓器製造は医療を変える可能性があるが、実用化前の研究費を先に払う株主にとって、確かなオーナー利益と同じ値段は払えない。
2025年は純利益13.3億ドルに対し、フリーキャッシュフロー10.4億ドルを生んだ。株式報酬を費用として扱い、自社株買いはその希薄化を引いた正味の還元で見る。こうした還元の実績があるため、余剰現金には価値を認められる。半面、株主の現金を研究開発や買収に回すなら、次の製品でも資本コストを超える収益を得る必要がある。
中立の2035年に事業が大きくなっても、臨床や特許の不確実性は消えない。十分な割安さがない現値で、承認、処方の伸び、薬価、資本配分のすべてを良い方に見込むのは慎重でありたい。事業そのものには長く生き残る力があるが、保有する値段には厳しい基準を残す。
何で稼ぐ会社か
売上の中心は、肺の血管を広げるトレプロスチニル製剤である。吸入薬タイバソDPIと霧化吸入薬タイバソの2025年売上は合計18.78億ドルで、うちDPIが12.93億ドルを占めた。慢性の重い病気を扱うため、医師の処方、専門薬局の指導、吸入器への習熟が続けて使う理由になる。一方、米国の専門流通業者が売上の大部分を取り扱い、薬価の実収額は保険者や給付制度の影響を受ける。
レモデュリンは持続点滴・皮下注射による重症PAH治療で、2025年売上は5.27億ドルだった。オレニトラムは経口製剤で4.97億ドルを売った。両者とも薬効の蓄積と投薬の継続性が強みだが、病状や患者の希望により、吸入製剤や競合する経口薬に切り替わりうる。ユニツキシンは小児の高リスク神経芽腫に使う抗体薬で、2.27億ドルと小さくても独自の市場を持つ。アドサーカと臓器評価サービス等の残りは約0.54億ドルである。
次の成長源は既存薬の用途拡大と新成分である。タイバソのIPF適応はTETON-1、TETON-2で肺活量の低下を抑え、2026年9月に追加申請が受理された。審査完了の見込みは2027年4月下旬だが、承認されるまでは売上ゼロの候補薬である。粉末型DPIを同じ適応で売るには追加の橋渡し試験を求められる可能性があり、霧化薬の承認が直ちにDPIの承認を意味しない。
ralinepagは1日1回服用する新しいプロスタサイクリン受容体作動薬である。第3相試験で病状悪化リスクを55%減らし、FDAの審査期限は2027年6月24日となった。経口薬の使いやすさは強みだが、既存のオレニトラムを一部置き換える点も見逃せない。さらに臓器移植を増やすため、遺伝子改変ブタ由来の腎臓・心臓、肺の体外灌流、再生医療に資金を投じている。臓器はまだ臨床開発段階で、本業の医薬品と同列の確実な収入源ではない。
優良さと弱いところ
この会社の堀、つまり競争相手が容易に奪えない強みは、希少肺疾患に集中した開発知識と治療現場への浸透である。タイバソにはPH-ILDの用途に関わる2042年までの特許があり、2026年の裁判所判断と和解でその有効性が具体的な形になった。病状が重い患者では、薬剤を変える際に用量調整や副作用への配慮が要る。専門医と薬局の習熟も単なる値下げ競争を鈍らせる。
ただし、独占が10年後まで無傷とは言えない。タイバソDPIの製剤特許には2030年と2035年の期限があり、レモデュリン、オレニトラムにも満了が近い権利がある。リキディアはユトレピアを2025年に発売し、2026年4〜6月期には1.70億ドルを売った。同じ期のタイバソは4.53億ドルで、両社の吸入薬売上に限ればタイバソ側が約73%を占めるが、これは疾患別の患者シェアではない。和解後もユトレピアのPAH販売は続く。
2025年のROEは18.8%、直近10年の中央値は17.5%で、利益率と資本効率は優秀である。ただし希少疾病の高薬価が営業利益率を押し上げており、新薬が競争に巻き込まれれば利益率も同時に縮む。タイバソDPIの技術提供元マンカインドには売上の10%のロイヤルティを支払う。薬剤の売上がそのまま全額、株主の利益になるわけではない。
2024年と2025年にはそれぞれ約10億ドルの自社株買いを実施し、株数も減らした。増分の利益を生む研究開発は費用処理されるため、表面上の投下資本利益率だけを見て新薬の再投資効率を判断するのは危うい。私は臨床試験の成功を高く評価するが、複数の販売製品にわたり値付け力が持続する強い堀とはまだ認定しない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
肺動脈性肺高血圧症(PAH)は会社推計で世界約50万人、米国約5万人に影響する希少疾患である。肺組織の病気に伴う肺高血圧症(PH-ILD)は米国で少なくとも3万人に及ぶ。診断率と高度治療の利用率が上がれば数量は伸びるが、患者全員が吸入薬や高価な経口薬の対象になるわけではない。メルクのウィンレベアは2025年売上14.4億ドルに育ち、病状を改善する別系統の薬として処方の組み合わせを変えている。
吸入トレプロスチニルの競争は既に激しくなった。リキディアのユトレピアは2026年4〜6月期に1.70億ドル、7〜9月期の暫定売上は2.23億ドルに達した。2026年10月13日の和解で、同薬はPH-ILDの表示と販促を取り下げる一方、PAH向けの販売を続ける。和解はユナイテッドのPH-ILDを守るが、PAHでの価格・利便性競争を消さない。インスメッドの吸入型TPIPも開発中で、2030年代の数量シェアを左右する。
肺線維症市場は既存のPAH市場とは異なる患者層を持つ。会社推計では米国の特発性肺線維症(IPF)患者は約10万人、進行性肺線維症(PPF)は約20万人であるが、病型の重複や治療適格率を差し引く必要がある。IPFではベーリンガーインゲルハイムのオフェブとジャスケイド、ロシュのピルフェニドン系が競争相手となる。ジャスケイドは2025年に米国でIPFとPPFの承認を得た。タイバソは異なる仕組みの吸入薬として併用される可能性がある一方、吸入負担と保険償還が利用者数の上限になる。
この領域に景気の大波は少ないが、医薬品の価格は一般物価の上昇をそのまま転嫁できない。米国の薬価交渉、メディケアの自己負担制度変更、特許満了後の後発品が、患者増加による売上の伸びを相殺する。基礎疾患の治療患者数は緩やかに増える一方、新適応の浸透で会社の数量シェアが跳ねる余地がある。これは創薬・製造・治験データで価値を作る事業であり、人月や席課金を置き換えるAIエージェント代替の型には該当しない。AIによる研究効率化は可能でも、臨床効果と許認可を省略できない。
資本政策と M&A
経営の資本配分は、自社株買いと新しい治療分野への投資に二分される。2024年と2025年にはそれぞれ約10億ドルを買い戻し、2025年のフリーキャッシュフローは10.4億ドルだった。2026年3月の20億ドル枠は、9月に残額を使う契約を結んでほぼ全額の利用を決めた。さらに10月22日、新たに20億ドルの買い戻し枠を2027年10月まで設定した。ただし新枠は実施義務ではなく、10年間の定額還元の約束もない。配当は実施していない。
2026年7月には再生胸腺細胞を開発するサイミューンを現金1.4億ドルで買い、条件達成で最大1.6億ドルの追加支払いを負う。異種臓器用の専用施設も2026年10月までに3拠点へ増やした。世界的な移植用臓器不足に向けた長期投資だが、承認までの費用と回収の時期は読みにくい。中立の企業価値には、この夢が大きな販売事業になる収入を含めていない。
財務は2025年末の台帳で純現金29.2億ドル、有利子負債ほぼゼロと強い。もっとも、新薬や設備への出費に必要な運転資金まで余剰現金とみなすべきではない。2021年に公益目的会社へ転換したため、取締役会は患者と社会の利益も考慮する。買収提案で目先の株主価格を最大化する義務だけではなく、非公開化の上乗せや支配権売却を価値の根拠にできない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
新薬の成否を全て未確定の夢として扱うのは、この会社の実績を過小評価する。タイバソは肺線維症の二つの第3相試験で肺機能の低下を有意に抑え、統合解析でも臨床的な悪化を減らした。ralinepagはPAH患者の病状悪化リスクを55%下げ、FDAは両方の申請を受理した。2027年の審査が順調なら、同じ専門医網で複数の新しい処方を獲得できる。臨床上の裏付けが既にあることは、まだ治験を始めていない新薬群との決定的な違いである。
IPFとPPFの米国患者は会社推計で合わせて約30万人に上る。2035年までに海外展開と適応拡大が進めば、これらの市場で年間6.5万人が吸入タイバソを利用しても不自然ではない。患者数が増えるほど薬価が多少下がっても粗利額は伸び、ralinepagの経口剤もPAHの高度治療に入り込む。ユトレピアとの和解はPH-ILDの特許の強さを示し、メルクのウィンレベアは併用薬として市場全体を広げる可能性がある。
研究費を先払いして開発した薬は、承認後には製造と販売の追加費用が比較的小さい。大幅な設備増設や大型買収が不要なら増分の資本収益率は高くなる。2026年の大規模な自社株買いは、経営が利益をため込むだけではない証拠でもある。10年で売上が現在の4倍以上に育ち、資本を株主に戻す道筋には十分な根拠がある。異種臓器の販売を大きく数えなくても、上値は広い。
慎重な見方
肺疾患の治療は一度処方が決まれば続くが、競合薬への乗り換えは実際に起きている。2026年4〜6月期にタイバソの売上が減少し、ユトレピアは同四半期だけで1.70億ドルを売った。7〜9月期の同社の暫定売上はさらに伸びた。訴訟和解でPH-ILD向け表示を外しても、利益の大きいPAH向けの販売は合法的に続く。メルクのウィンレベアは別の作用機序を持ち、インスメッドも新しい吸入薬を開発している。一本の薬効成分を様々な器具で売ること自体は、永久の堀ではない。
既存薬の特許は2028〜2035年にかけて段階的に期限を迎える。IPFで新適応を取得しても、吸入器を毎日使い続ける患者は限られる。ベーリンガーインゲルハイムの飲み薬ジャスケイドは既に承認され、薬価と治療順序の競争相手だ。TETONのデータが良くても、FDAの最終承認、処方医の採用、保険者による支払いは別の関門である。ralinepagもオレニトラムの売上を置き換えるだけなら、連結売上の純増は小さい。
さらに公益目的会社という形は、経営が移植用臓器や長い研究に現金を投じ続けることを後押しする。患者と社会への利益が大きくても、株主の採算が同じとは限らない。2026年の大きな買い戻しが将来も続く保証はない。新薬の普及が想定より遅れて既存の利益が減れば、利益率と現金創出は一緒に縮む。中立より下の筋書きを軽視できない。
どちらに重みを置いたか
試験で示した有効性と積極的な還元には実体があるため、楽観とやや楽観に合計35%を配した。ただし2026年に既存薬の減収が始まり、競合の数量も伸びている。新適応の承認を既定路線としても、その後の患者数と純価格を同時に言い当てるのは難しい。中立35%、やや悲観22%、悲観8%とし、上にも下にも偏り過ぎないが、右側の大きな上振れをやや厚く残した。
確率加重の価値は現値を約9%上回るが、評価区分では「適正」にとどまる。今の値段で買収価値や臓器製造の成功を加算しなければ安全域は大きくない。今後の判断はFDAの決定そのものより、発売後の純増患者と実収単価、そして研究投資後の正味還元にかかる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 927.25 ドル395 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 306.20 ドル130 億ドル)。 今の値に割り戻すと 637.89 ドル272 億ドル、今との差 +6.5%、 期待の年率 +8.8%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 2,463 ドル1,049 億ドル | 469.48 ドル200 億ドル | +389.7% | +19.7% | 351.87 ドル150 億ドル |
| やや楽観 | 23% | 1,381 ドル588 億ドル | 403.76 ドル172 億ドル | +198.1% | +13.6% | 410.57 ドル175 億ドル |
| 中立 | 35% | 750.42 ドル320 億ドル | 300.47 ドル128 億ドル | +75.5% | +6.9% | 367.81 ドル157 億ドル |
| やや悲観 | 22% | 197.63 ドル84 億ドル | 187.79 ドル80 億ドル | −35.6% | −5.5% | 84.79 ドル36 億ドル |
| 悲観 | 8% | 98.59 ドル42 億ドル | 131.46 ドル56 億ドル | −61.6% | −11.9% | 18.40 ドル8 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 927.25 ドル395 億ドル | 306.20 ドル130 億ドル | +106.0% | +8.8% | 1,233 ドル525 億ドル |
今の株価時価総額 598.72 ドル255 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 12% 楽観:肺線維症と経口新薬が二本柱になる 利益 53 億ドル · PER 19.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,463 ドル1,049 億ドル
2027年に肺線維症向けの霧化タイバソと経口ralinepagが承認され、PPFの追加試験と海外承認も順調に進む。2035年にはIPF・PPFで重複を除いた年間6.5万人に薬が届き、ralinepagの治療患者は3.5万人に伸びる。既存タイバソもPH-ILD特許に守られ、ユトレピアが残るPAHでは新しい剤型と医師網で数量を保つ。メルクのウィンレベアとの併用が増え、競合薬の浸透が市場全体を拡張する。
既存のオレニトラムを部分的に置き換えても、全社売上は約148億ドルとなり、新適応の高い製品利益が全社の収益性を押し上げる。研究費と異種臓器製造施設の支出は続くが、医薬品の営業利益を生む体制がそれを吸収する。2026年以降の発売立ち上げに時間がかかるため、10年間の純利益累計は295億ドルを見込み、正味の自社株買い200億ドルを株主へ返す。臓器移植用の未承認製品の本格販売は、この楽観の売上にもまだ加えない。
- タイバソ吸入薬(既存PAH・PH-ILD適応):数量 27.0(年間平均の治療患者数(千人、延べ患者年))× 価格 14(患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 36 億ドル・営業利益 21 億ドル。PH-ILDの保護と診断の進展で増患、価格は物価以下
- レモデュリン(点滴・皮下注射):数量 5.5(年間平均の持続投与患者数(千人))× 価格 12(患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 7 億ドル・営業利益 3 億ドル。重症治療が一部残る
- オレニトラム(経口トレプロスチニル):数量 5.5(年間平均の経口治療患者数(千人))× 価格 12(患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 7 億ドル・営業利益 3 億ドル。ralinepagとの併用・役割分担が進む
- ユニツキシン(小児神経芽腫):数量 1.1(年間投与患者数(千人))× 価格 39(患者1人当たり治療期間の平均実現純売上(万ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 2 億ドル。希少小児がんで緩やかな患者増
- アドサーカ・肺移植評価・その他:数量 2.4(医薬・臓器評価等の年間売上換算取引(千件))× 価格 3.00(換算取引1件当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。臓器評価サービスが拡大、未承認臓器は除く
- 吸入タイバソのIPF・PPF新適応(未承認):数量 65.0(既存PH-ILD処方を除く年間平均の新適応患者数(千人))× 価格 9.50(患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 62 億ドル・営業利益 30 億ドル。世界を含め6.5万人、PPF承認も成功
- ralinepag(新規PAH経口薬、未承認):数量 35.0(オレニトラムからの重複を除いた年間平均治療患者数(千人))× 価格 9.00(患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 32 億ドル・営業利益 16 億ドル。PAHで3.5万人、オレニトラム移行分控除
倍率:2035年の純利益52.55億ドルから余剰現金35億ドルの税引後利息0.49億ドルを除いた事業利益52.06億ドルで測る。事業に必要な自己資本は166−35=131億ドル、事業ROE約39.7%。k8.0%、普通の堀で超過ROE残存1/2、RONIC約23.9%、長期g4.0%(肺疾患の新規処方数量約2.0%+平均実収価格約2.0%)、正当化PER約21.64倍(来期利益に対する式を1.04倍して当期に合わせた)。二つの承認成功と処方網の広がりを評価して上限の約90%である19.48倍。GAAP純利益で株式報酬は戻さない。
確率:TETON二試験とralinepagの第3相は成功しており、承認確率の材料は強い。ただしIPF・PPF合計で6.5万人への普及、海外展開、価格維持が同時に進むには時間と保険償還が必要であり、12%の右側の尾とした。
やや楽観 23% やや楽観:新適応が順調に育ち既存収益を上回る 利益 34 億ドル · PER 16.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,381 ドル588 億ドル
タイバソのIPF承認が予定どおり進み、PPFでも有用性が確かめられる。米国の専門医への浸透は着実だが、海外では国ごとの薬価審査で立ち上がりが遅れる。2035年に肺線維症の新適応は年間4.5万人、ralinepagは2.3万人を治療する。PAHではリキディアのユトレピアが一定のシェアを取るものの、PH-ILDでの特許防衛と吸入薬の慣れがタイバソを支える。オレニトラムの一部は新薬へ移行する。
既存の肺高血圧症薬は名目で小幅に伸びるが、価格は一般物価の上昇を下回る。新薬の利益が研究費と臓器製造の開発負担を超え、全社売上は約102億ドル、営業利益は約43億ドルとなる。前半の発売準備を経て後半に利益が増えるので、期間の純利益累計は230億ドルとする。自社株買いは株式報酬を差し引いて172億ドルとなり、財務の余裕を保つ。
- タイバソ吸入薬(既存PAH・PH-ILD適応):数量 23.0(年間平均の治療患者数(千人、延べ患者年))× 価格 13(患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 29 億ドル・営業利益 16 億ドル。既存の吸入薬は数量が増え、価格は物価未満
- レモデュリン(点滴・皮下注射):数量 5.0(年間平均の持続投与患者数(千人))× 価格 11(患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 2 億ドル。患者数は横ばい、単価は保守的
- オレニトラム(経口トレプロスチニル):数量 5.3(年間平均の経口治療患者数(千人))× 価格 11(患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 3 億ドル。自社新薬への移行と価格低下を相殺
- ユニツキシン(小児神経芽腫):数量 1.0(年間投与患者数(千人))× 価格 37(患者1人当たり治療期間の平均実現純売上(万ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 1 億ドル。小児患者の治療利用が伸びる
- アドサーカ・肺移植評価・その他:数量 2.2(医薬・臓器評価等の年間売上換算取引(千件))× 価格 3.00(換算取引1件当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。既存契約終了後の臓器評価を含む
- 吸入タイバソのIPF・PPF新適応(未承認):数量 45.0(既存PH-ILD処方を除く年間平均の新適応患者数(千人))× 価格 8.50(患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 38 億ドル・営業利益 17 億ドル。新適応治療者4.5万人、海外は慎重
- ralinepag(新規PAH経口薬、未承認):数量 23.0(オレニトラムからの重複を除いた年間平均治療患者数(千人))× 価格 8.50(患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 20 億ドル・営業利益 9 億ドル。新規・追加処方2.3万人、既存薬と重複除外
倍率:余剰現金30億ドルの税引後利息0.42億ドルを除いた事業利益33.52億ドル、事業用自己資本99億ドルなので事業ROE約33.9%。k8.0%、普通の堀で超過ROEの半分を残し、RONIC約20.9%。長期g3.5%は市場の実質患者数増約1.7%と保険償還後の名目価格上昇約1.8%で、いずれも物価を丸ごと転嫁する想定ではない。翌期利益に対する式を1.035倍した正当化PER約19.15倍の87%を採り、16.66倍とした。承認成功後も競合が残るため上限を使い切らない。GAAP利益を用いる。
確率:IPFの第3相二本の成功とralinepagの申請受理から、少なくとも一方の発売が大きくなる見通しは強い。ただし患者の継続率・海外償還・価格は未確定で、楽観ほどの広い浸透を必要としない23%を配分した。
中立 35% 中立:IPFとralinepagが成功するが競合で値上げは抑えられる 利益 22 億ドル · PER 13.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 750.42 ドル320 億ドル
2027年のIPF向け霧化タイバソと経口ralinepagの承認後、患者は緩やかに増える。肺線維症向けは2035年に年間3.1万人が使うが、ジャスケイドなどの経口抗線維化薬が先に広がっており、吸入の煩わしさと保険償還が普及速度を抑える。PPFと米国外の承認は段階的に進む。ralinepagの治療者は1.8万人となるが、オレニトラムやレモデュリンの数量は減らしており、自社内の移行を二度数えない。
タイバソ既存適応ではPH-ILDの用途特許が支えとなる一方、PAHではユトレピアとウィンレベアの競争が続く。患者数は増えても、価格は一般物価ほど上げられない。全社売上は約70億ドル、営業利益は27億ドル台、純利益は21億ドル台となる。2027年までの立ち上げの時間差と研究投資を考え、10年間の純利益累計は170億ドルとする。経営は買い戻しを続けるが新薬の開発費も要り、正味の株主還元は128億ドル、余剰現金は25億ドルになる。
- タイバソ吸入薬(既存PAH・PH-ILD適応):数量 18.0(年間平均の治療患者数(千人、延べ患者年))× 価格 12(患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 21 億ドル・営業利益 11 億ドル。数量は1.2倍、純単価はインフレ以下
- レモデュリン(点滴・皮下注射):数量 4.1(年間平均の持続投与患者数(千人))× 価格 9.50(患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 2 億ドル。点滴から経口などへ移行して患者減
- オレニトラム(経口トレプロスチニル):数量 4.8(年間平均の経口治療患者数(千人))× 価格 9.50(患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 5 億ドル・営業利益 2 億ドル。ralinepagへの自社内移行で数量微減
- ユニツキシン(小児神経芽腫):数量 1.0(年間投与患者数(千人))× 価格 34(患者1人当たり治療期間の平均実現純売上(万ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 1 億ドル。小児希少がんの利用はほぼ横ばい
- アドサーカ・肺移植評価・その他:数量 1.8(医薬・臓器評価等の年間売上換算取引(千件))× 価格 2.70(換算取引1件当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。アドサーカ終了、臓器評価等が残る
- 吸入タイバソのIPF・PPF新適応(未承認):数量 31.0(既存PH-ILD処方を除く年間平均の新適応患者数(千人))× 価格 7.50(患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 23 億ドル・営業利益 10 億ドル。新適応3.1万人、承認後の普及を慎重に
- ralinepag(新規PAH経口薬、未承認):数量 18.0(オレニトラムからの重複を除いた年間平均治療患者数(千人))× 価格 7.50(患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 14 億ドル・営業利益 6 億ドル。PAH処方1.8万人、オレニトラムからの移行控除
倍率:全社GAAP純利益21.55億ドルから余剰現金25億ドルの税引後利息0.35億ドルを除くと事業利益21.20億ドル。自己資本113億ドルから同現金25億ドルだけを除く事業用自己資本88億ドルに対し、事業ROEは約24.1%。k8.0%、普通の堀で超過ROE残存1/2からRONIC約16.0%。長期g3.0%はPAH・線維症の実質治療者増約1.8%と純価格の名目増約1.2%であり、薬価交渉で物価を下回る。式(1−g/RONIC)/(k−g)×(1+g)の正当化PERは約16.75倍。その83%の13.90倍は、既存特許の満了と新薬の長期持続性の不確実性を割り引く。市場の過去の倍率は参照していない。
確率:TETONとADVANCE OUTCOMESの結果により承認と一部の処方獲得が妥当な中心ケースだが、2026年の競合増と既存薬の減収、DPIの適応追加試験を重く見る。承認を全患者の利用に直結させない35%が最大の確率である。
やや悲観 22% やや悲観:新薬は売れるが既存薬の穴を埋め切れない 利益 7 億ドル · PER 10.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 197.63 ドル84 億ドル
IPFの承認後に吸入薬の継続率が伸びず、PPFの追加試験も想定より難航する。2035年の新適応の治療者は1.5万人にとどまり、ralinepagは8000人に普及するが、その多くは既存のオレニトラムからの切り替えになる。PAHではユトレピアやインスメッドの吸入薬が処方を増やし、メルクのウィンレベアも治療の中心に近づく。タイバソの既存患者は減り、保険者との交渉によって実収価格も下がる。
小児がん薬の利益は残るが、古いトレプロスチニル製品の高い利益率は薄れる。全社売上は約35億ドルとほぼ横ばいに見えても、販促費や臓器研究費が残るため営業利益は10億ドル弱、純利益は7億ドルに減る。前半の高い利益と後半の失速を反映し、期間の純利益累計は90億ドルとする。正味還元は80億ドルに減らし、余剰現金も16.5億ドルまで使う。この段階ではまだ事業は存続するが、従来の高収益企業とは呼べない。
- タイバソ吸入薬(既存PAH・PH-ILD適応):数量 13.0(年間平均の治療患者数(千人、延べ患者年))× 価格 9.20(患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 12 億ドル・営業利益 6 億ドル。競争で患者・薬価とも減少
- レモデュリン(点滴・皮下注射):数量 3.0(年間平均の持続投与患者数(千人))× 価格 8.00(患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 1 億ドル。高齢薬の特許満了で減少
- オレニトラム(経口トレプロスチニル):数量 3.0(年間平均の経口治療患者数(千人))× 価格 7.50(患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 1 億ドル。ralinepagへ自社内移行
- ユニツキシン(小児神経芽腫):数量 0.9(年間投与患者数(千人))× 価格 31(患者1人当たり治療期間の平均実現純売上(万ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 1 億ドル。小児がんの需要は残る
- アドサーカ・肺移植評価・その他:数量 1.5(医薬・臓器評価等の年間売上換算取引(千件))× 価格 2.00(換算取引1件当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。既存のアドサーカが失効し関連サービス縮小
- 吸入タイバソのIPF・PPF新適応(未承認):数量 15.0(既存PH-ILD処方を除く年間平均の新適応患者数(千人))× 価格 6.50(患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 10 億ドル・営業利益 3 億ドル。新適応の浸透が遅れ1.5万人
- ralinepag(新規PAH経口薬、未承認):数量 8.0(オレニトラムからの重複を除いた年間平均治療患者数(千人))× 価格 7.00(患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 2 億ドル。承認後も8000人程度に限られる
倍率:利益の絶対額と営業利益率が2025年より大幅に低下するため中立より十分に低くする。期末余剰現金16.5億ドルの税引後利息0.231億ドルを控除した事業利益は6.769億ドル。事業用自己資本64.5億ドルに対するROEは約10.5%、k8%、普通の堀でRONIC約9.25%。長期g1.5%は診断患者の実質増約1.5%と競争で純実収価格が名目横ばいとなるため。正当化PER約13.1倍に対し、競合に優位性を失う利益の質と新薬普及の鈍さから10.0倍とする。GAAP利益にSBCの足し戻しはない。
確率:2026年にタイバソの減収が出たことと、ユトレピアのPAH競争が残ることを重視する。承認後の吸入継続率や償還が想定を下回る展開は十分にあり、22%を配した。個別の競争リスクをkには上乗せしていない。
悲観 8% 悲観:特許満了と新薬不振が重なり製薬の堀が崩れる 利益 1 億ドル · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 98.59 ドル42 億ドル
2027年以降、IPFの承認条件が厳しく、PPFの開発も遅れ、吸入薬の継続率は低い。ralinepagも投与対象が限られ、代わりにユトレピアや他社の新しい治療がPAHを取る。主力の古い製剤は特許満了と保険者の値下げ圧力で数量と価格を失う。2035年には既存タイバソの治療者が8000人となり、肺線維症の新適応は4000人、ralinepagは2000人にとどまる。独自薬を売る能力は残っても、かつての高収益の堀は失われる。
2026〜2028年にはなお黒字を稼ぐが、2029〜2032年に設備と開発資産の減損、再編費、赤字の年が重なる。2033〜2035年は小幅な黒字に戻り、10年間のGAAP純利益累計は減損込みで35億ドルとなる。最初に実施した買い戻し等の正味還元56億ドルを引くと自己資本は50億ドルまで痩せる。2035年の営業利益は約1.4億ドルに縮み、終価は利益の永続を期待せず、残った現金と売却可能な施設・債権を税後で回収する筋書きにする。
- タイバソ吸入薬(既存PAH・PH-ILD適応):数量 8.0(年間平均の治療患者数(千人、延べ患者年))× 価格 6.80(患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 5 億ドル・営業利益 1 億ドル。販売数と実収単価を大幅に失う
- レモデュリン(点滴・皮下注射):数量 2.0(年間平均の持続投与患者数(千人))× 価格 6.00(患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。古い持続投与が縮小
- オレニトラム(経口トレプロスチニル):数量 1.8(年間平均の経口治療患者数(千人))× 価格 5.00(患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。新薬への移行と後発品で縮小
- ユニツキシン(小児神経芽腫):数量 0.7(年間投与患者数(千人))× 価格 23(患者1人当たり治療期間の平均実現純売上(万ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。小児がん薬は存続する
- アドサーカ・肺移植評価・その他:数量 1.0(医薬・臓器評価等の年間売上換算取引(千件))× 価格 1.50(換算取引1件当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。残る肺評価等の最小規模
- 吸入タイバソのIPF・PPF新適応(未承認):数量 4.0(既存PH-ILD処方を除く年間平均の新適応患者数(千人))× 価格 5.00(患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。用途が限られ4000人のみ
- ralinepag(新規PAH経口薬、未承認):数量 2.0(オレニトラムからの重複を除いた年間平均治療患者数(千人))× 価格 5.00(患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。2000人のみ、採算はまだ出ない
倍率:競争で事業ROEは約1.7%に落ち、k8.0%に届かないため、利益を長期成長させるPERではなく資産回収を重視する。2025年末の自己資本71億ドルから、減損と正味還元を反映した2035年の自己資本50億ドルへ減る。売れる資産の税後の床42億ドルを優先し、50億ドル×PBR0.84=42億ドルで評価する。これは将来の蓄積純資本に1倍の床を掛けた値ではない。現金11億ドルを別に再加算せず二重計上を防ぐ。
確率:TETON二試験とralinepag試験が成功済みなので全面崩壊の確率は高くしない。ただし承認後の予想外の安全性、価格規制、競合による処方剥奪が重なれば既存の収益が失われる。8%とし、保有資産の回収を中心に残価を見る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
タイバソ吸入薬(既存PAH・PH-ILD適応)
タイバソDPIと霧化タイバソ。肺動脈性肺高血圧症(PAH)・間質性肺疾患に伴う肺高血圧症(PH-ILD)向けで、IPFの新適応は別区分。
| 数量年間平均の治療患者数(千人、延べ患者年) | 価格患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 15.0 | 13 | 19 | 12 |
| 10 年後 中立 | 18.0 | 12 | 21 | 11 |
取り方:2025年10-KのDPI12.925億ドルと霧化薬5.857億ドルの合計18.782億ドルを使用。会社は患者年と純単価を開示しない。PAHは米国約5万人、PH-ILDは少なくとも3万人という適応母数、専門吸入薬の採用率、リキディアの2026年上半期の処方・販売を照合し、当社の年間延べ治療者を約1.5万人と推定して平均実収12.52万ドルを逆算した。実績として確定なのは売上のみ。2026年4〜6月期はタイバソ4.526億ドルで前年比4%減。ユトレピアは同期間1.704億ドルで、両社の吸入薬売上に限る当社比率は約73%。2035年の単価は物価1.41倍より低く、同成分競合と米国の実現価格引き下げを反映する。製品ごとの営業利益は非開示なので本稿の配賦推計であり、全製品の配賦営業利益17.97億ドルと会社実績15.2億ドルの差2.77億ドルは本社・開発共通費に相当する。
レモデュリン(点滴・皮下注射)
重症PAHのための持続投与トレプロスチニルと専用ポンプ。患者の病状・機器の使いやすさと病院の供給網が数量を左右する。
| 数量年間平均の持続投与患者数(千人) | 価格患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5.0 | 11 | 5 | 3 |
| 10 年後 中立 | 4.1 | 9.50 | 4 | 2 |
取り方:2025年10-Kのレモデュリン売上5.268億ドル(ポンプを含む)を使用。患者数は非開示で、世界のPAH約50万人のうち持続投与が必要な重症者の一部とみて年間約5000人と推定し、単価10.536万ドルを逆算した。2026年4〜6月期は前年比6%減で、肺血管拡張薬や別剤型への切り替えを2035年の数量減に入れる。
オレニトラム(経口トレプロスチニル)
PAHの進行を遅らせる経口治療薬。ralinepag承認後には自社製品同士で処方が移る可能性がある。
| 数量年間平均の経口治療患者数(千人) | 価格患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5.0 | 9.94 | 5 | 3 |
| 10 年後 中立 | 4.8 | 9.50 | 5 | 2 |
取り方:2025年10-Kでオレニトラム売上4.969億ドル。会社は患者数を開示しないためPAH米国約5万人の治療可能集団から年間約5000人を推定し、単価9.938万ドルを算出した。2025年の増収は数量効果が約0.46億ドル。2035年は新経口剤ralinepagへの自社内の切り替えと特許期限により、患者数と実収単価の両方を控えめにする。
ユニツキシン(小児神経芽腫)
高リスク神経芽腫に用いる抗GD2抗体薬。小児患者の発生数が上限を決める比較的小さな医薬品事業。
| 数量年間投与患者数(千人) | 価格患者1人当たり治療期間の平均実現純売上(万ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.8 | 28 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 34 | 3 | 1 |
取り方:2025年10-Kでユニツキシン売上2.268億ドル。小児高リスク神経芽腫の治療対象と米国・カナダ・日本の承認地域から年間投与者を約800人と推定し、売上を割った実現純単価28.35万ドルとした。これは推定患者数であって会社の開示数ではない。新規症例は希少で、数量の10年増は限定的。
アドサーカ・肺移植評価・その他
アドサーカのPAH薬売上と肺の体外灌流などのその他収益。アドサーカ販売契約は2026年末に期限を迎える。
| 数量医薬・臓器評価等の年間売上換算取引(千件) | 価格換算取引1件当たりの平均実現純売上(万ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2.0 | 2.70 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.8 | 2.70 | 0 | 0 |
取り方:2025年10-Kのアドサーカ0.30億ドルとその他0.24億ドルの合計。異なる商材を含み一律の患者単価は存在しないため、年間換算2000取引×2.7万ドルという売上換算指数で扱う。2035年にはアドサーカ契約の期限を考慮して既存薬収入はほぼ消え、肺の体外灌流などの取引増のみを数える。臓器移植用の未承認製品の大型売上は含めない。
吸入タイバソのIPF・PPF新適応(未承認)
肺線維症患者へ霧化タイバソを使用する新用途。IPFはTETON第3相成功済みでFDA審査中、PPFは試験継続中。既存PH-ILDとは患者重複を除く。
| 数量既存PH-ILD処方を除く年間平均の新適応患者数(千人) | 価格患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 8.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 31.0 | 7.50 | 23 | 10 |
取り方:2025年末にはIPF・PPF向け適応の薬剤売上は未承認なのでゼロ。価格8万ドルは将来の設計用の仮の純単価であり実績価格ではない。会社のIPF米国約10万人、PPF約20万人という患者母数から、併存症・重複・治療適格率・吸入継続率を差し引く。2035年中立の3.1万人は適格患者の一部に加え海外展開を含む市場規模×シェアの推計。2026年9月にIPF申請受理、審査完了見込みは2027年4月下旬。ジャスケイドなどの競合と保険償還を価格に反映する。
ralinepag(新規PAH経口薬、未承認)
新たな1日1回のPAH治療薬。2026年に第3相成功、FDAの申請受理済みだが2025年時点の商業売上はない。
| 数量オレニトラムからの重複を除いた年間平均治療患者数(千人) | 価格患者1人・1年当たりの平均実現純売上(万ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 8.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 18.0 | 7.50 | 14 | 6 |
取り方:2025年末は未承認のため売上ゼロ。8万ドルは将来の設計用仮定で実績価格ではない。2026年8月にFDAが申請を受理し2027年6月24日を審査期限とした。世界PAH約50万人・米国約5万人のうち、治療中で経口プロスタサイクリンを要する患者、メルクのウィンレベア等との併用機会と処方シェアから2035年の患者年を推定する。自社オレニトラムからの移行は同剤の数量減で控除する。
リスクと懸念
既存タイバソとユトレピアの競争
2026年4〜6月期のタイバソ売上は4%減り、競合ユトレピアは1.70億ドルを売った。2026年10月の和解はPH-ILDの表示を保護するが、PAHではユトレピアの販売が続く。粉末製剤の利便性、処方医との関係、用量調整が患者移動を左右し、既存の吸入薬を2035年も高い価格で売り続けられるとは限らない。
IPF・PPF適応の承認と普及
TETON-1とTETON-2の結果は良好だが、2026年10月時点でタイバソはIPF向け未承認である。霧化薬のFDA審査は2027年4月下旬が目安で、DPIに広げるには追加試験が必要になる可能性がある。PPFも第3相の結果待ちだ。承認後の吸入負担、併用薬、医療保険の償還が患者数を左右するため、試験成功を全患者への普及と同一視できない。
ralinepagの商業化と自社製品の置き換え
ralinepagの第3相は病状悪化リスクを55%減らしたが、FDAの判断は2027年6月24日が期限で、まだ承認されていない。承認後にもメルクのウィンレベア、他社の経口PAH薬との比較が待つ。投与しやすい新薬が普及するほど、自社オレニトラムからの切り替えも増えるため、処方患者数の増加が必ずしも全社売上の同じ増加を意味しない。
特許の段階的満了と薬価政策
タイバソDPIの主要製剤特許は2030年と2035年に満了し、レモデュリンやオレニトラムの関連特許はそれより早く満了する。PH-ILDには2042年までの用途特許が残るが、PAHの競争条件は異なる。メディケアPart Dの割引や将来の薬価交渉が重なると、患者数が増えても実収単価が物価ほど上がらず、製品ごとの利益率が落ちる。
臓器製造への先行投資と公益目的会社
遺伝子改変ブタの腎臓・心臓や再生胸腺の開発は、臓器不足を解決しうる。しかし移植後の生存期間、安全性、感染症管理、保険償還に長期の試験が必要で、施設を整えても承認を得られる保証はない。公益目的会社の経営陣は患者や社会への利益も考慮するため、研究費が長く続き、株主の現金回収が遅れる可能性がある。
自社株買いと株式報酬の差額
2024〜2025年は合計約20億ドルの株式を買い戻したが、2025年は1.5億ドルの株式報酬費用も計上した。2026年にはさらに買い戻しを拡大したが、枠の設定は実施義務ではない。業績が悪化した時期や臓器開発に費用がかかる時期には還元を減らす可能性がある。評価では買い戻しの額面でなく、株式報酬の希薄化を差し引いた正味額だけを還元とする。
研究の集中と予想外の医療安全性
既存の売上の大半はトレプロスチニルに依存しており、吸入に伴う咳、のどの刺激、継続負担などが患者の離脱要因になる。新適応で重い副作用や期待した効果の持続性の問題が出れば、薬の表示や処方対象が絞られうる。専門流通業者への販売集中もある。医療上の必要性は景気より安定していても、製品の安全性リスクは株主利益を急変させる。
今後の分かれ目
- 2027年4月下旬のFDA審査で霧化タイバソのIPF適応が承認され、翌年の実治療患者が継続的に増えたら
- 中立の肺線維症治療患者3.1万人の達成確度が上がる。発売後の中止率と保険償還を確認して、やや楽観・楽観側の確率を高める。
- 2027年6月24日の審査でralinepagが承認され、オレニトラムからの単純な切り替えを超えて新規のPAH患者を獲得したら
- 経口薬の純増治療者数と利益率を上方修正する。競合のウィンレベアとの併用率も高まるなら、新薬の販売が既存薬の穴を上回る。
- ユトレピアのPAH向け販売が四半期3億ドル超へ拡大し、タイバソの既存適応が前年比二桁減収になったら
- 既存吸入薬の患者シェアと価格を下げ、やや悲観の確率を増やす。PH-ILDの保護をPAHの保護と取り違えない。
- 2027年後半のTETON-PPF結果も良好で、米国外の承認とDPIへの用途拡大が順調に進んだら
- 新適応の治療可能患者母数を広げ、肺線維症セグメントをやや楽観以上へ見直す。ただし適応同士の患者重複は二重計上しない。
- 2028〜2031年の後発品参入や薬価交渉により、既存タイバソの実収単価が3年で25%以上下がったら
- 数量が横ばいでも営業利益率を引き下げる。増分研究投資の採算が悪化するため、利益ベースの適正価値と還元額を同時に下方修正する。
- 異種移植腎臓の臨床試験で長期生存と再現性が示され、FDA承認と保険償還の道筋が具体化したら
- 現時点では価値をほぼ認めていない臓器事業を、手術件数と1件当たり利益で新たに評価する。それまでは成功を確定利益として算入しない。
- 自社株買いの実績が年20億ドル規模で続き、株式報酬と研究費を引いた後も純現金が維持されたら
- 正味還元と現金の戻りやすさを検証し、オーナー利益の見通しを上方修正する。買い戻しを行う時点の株主価値も別途点検する。
見ておくもの
- 2027年4月下旬:霧化タイバソのIPF適応に関するFDA判断と添付文書
- 2027年6月24日:ralinepagのFDA審査期限、承認後の新規患者・自社からの移行患者の内訳
- 2027年後半:TETON-PPF第3相の結果とDPIの追加試験要件
- 四半期のタイバソDPI・霧化タイバソの売上数量効果と実現価格・リベート
- リキディアのユトレピアPAH売上とメルクのウィンレベア販売の伸び
- 自社株買い実行額から株式報酬分を差し引いた正味還元、純現金残高
- 異種臓器の臨床試験の生存率・安全性・施設費と保険償還の進展
倍率と資本コストの決め方
現在の株価や市場のPERを使わず、2025年の薬剤別実績売上を起点に、2035年の治療患者数、患者1人当たりの実現純価格、競合によるシェア移動、営業利益を独立に考えた。既存PAHの患者を新薬ralinepagでも二重に数えないよう、レモデュリンとオレニトラムの縮小を織り込んだ。終価の倍率はk8%と数量・価格に由来するg、現金を除く事業ROEから出す正当化PERの83〜90%を使用し、現在の市場倍率や同業の過去の谷を根拠にはしていない。余剰現金は受取利息を利益から除いて別に加え、正味還元には株式報酬を差し引いた。最後に台帳上の時価総額約250億ドルと比較した結果、差は約9%で「適正」となった。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本8.0%+quality合計0.0%+存続危機による上乗せ0.0%=8.0%。個別のFDA審査、ユトレピア競争と臓器研究の失敗は資本コストに重ねず、製品別の数量・価格と悲観の確率で評価する。