結論
ベクトン・ディッキンソン(BD)は、注射器・採血・静脈カテーテルの基本品(メディカル・エッセンシャルズ)、アラリス輸液ポンプとパイクシス薬剤キャビネット(コネクテッド・ケア)、製薬向けの充填済み注射器・ペン(バイオファーマ・システムズ)、ピュアウィックやバードの泌尿器・血管・外科(インターベンショナル)を持つ、病院向けの消耗品と機器の大手である。2026 年 2 月にバイオサイエンス・診断事業をウォーターズへ分離し、現金 40 億ドルを受け取って自社株買いと債務返済に充てた。分離後の 2025 年の売上は 185 億ドル、2026 年 4〜6 月期は 49.8 億ドル(為替を除いて +4.4%)。
数量 × 価格でセグメントごとに積むと、中立は 2035 年に売上 286 億ドル(年 +4.4%)、営業利益 60 億ドル(償却後で 21.0%)、純利益 43 億ドル。償却後の利益率が上がるのは、2015 年のケアフュージョンと 2017 年のバードの買収の無形資産の償却(年 14.5 億ドル)が減るためで、調整後の利益率はほぼ横ばいの 26% 前後と置いた。倍率は利益ベースの正当化 PER の 7〜10 割に置いた(moat は normal)。10 年の中立は、正当化 PER 16.6 倍(g 3.5%、RONIC 14.0%)の 8 割の 13.3 倍。今の GAAP の PER は 31 倍で、10 年後の中立の倍率より高い。確率で重ねた総合は、今の時価総額より 16% 下。結論は「やや割高」。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、BD は「10 年後も使われ続ける」確信が高い事業である。注射・点滴・採血・尿道カテーテルは、医療が続く限り毎日使われ、病院の採用と医師の習熟、品質の実績が切り替えの費用になる。技術で置き換わる速度が遅く、予測しやすい点を評価する。
オーナー利益は、GAAP の純利益(2026 年は 12 億ドル前後、リストラ・統合費用を戻した平年で約 20 億ドル)に、非現金の償却(年 14.5 億ドル)を足し、設備投資を引いた値が目安で、フリー・キャッシュフロー(年 24 億ドル前後)は純利益の約 1.2 倍。調整後の 1 株利益はこの償却と買収費用を戻しているので、バリュー投資の目では使わない。償却は買収の対価を後から費用にしたもので、現金は買収時に出ているため、GAAP の利益を基準にして買収の巧拙を見る。
資本配分は評価が分かれる。ケアフュージョン(2015 年)とバード(2017 年)に大きな対価を払い、ROE が 7% 前後と低いまま、のれんが自己資本を超えた。分離で重い事業を手放し、現金で借金を返す今の方針は筋がよい。安全域を測る。正当化 PER は 16.6 倍(g 3.5%、RONIC 14.0%、k 8.00%、moat は normal)。今の PER 31 倍は 10 年後の中立より高いが、10 年で利益が伸びる分を見込むと、価値は今を上回る。確率で重ねた総合は、今の時価総額より 16% 下。結論は「やや割高」。
何で稼ぐ会社か
2025 年の売上 185 億ドル(継続事業)の構成は、メディカル・エッセンシャルズ約 65 億ドル、インターベンショナル約 52 億ドル、コネクテッド・ケア約 45 億ドル、バイオファーマ・システムズ約 23 億ドル(9 か月の開示からの推定)。
メディカル・エッセンシャルズは、注射器・針・採血管・IV カテーテルなど、病院が毎日使い捨てる基本品で、BD が世界の首位級。単価は小さいが、安全針や逆流防止などの機能で病院の採用が固定され、規制上の登録と品質の実績が新規参入を阻む。2026 年 4〜6 月期の自然増は +3.2%。
コネクテッド・ケアは、アラリスの輸液ポンプ(病院の点滴の流量を制御し、電子カルテとつなぐ)、パイクシスの薬剤管理キャビネット、先進患者モニタリングの 3 本柱。機器に加えてソフトと消耗品が付き、更新サイクルは 7〜10 年。アラリスは過去の品質・規制の問題を経て、2027 年は更新の反動で売上に −2 ポイントの向かい風が出ると会社が見ている。
バイオファーマ・システムズは、製薬会社向けの薬剤充填済み注射器・ペン型・自動注入器(ネオパックなど)で、GLP-1 や抗体医薬の増加で伸びる。2026 年 4〜6 月期は +5.2%(ワクチンの弱さを含む)。インターベンショナルは、尿をとるピュアウィック、カテーテル、バード由来の末梢血管・ヘルニアメッシュ・組織再生で、2026 年 4〜6 月期は +5.5%。会社は生物学的製剤向けの送達、先進患者モニタリング、ピュアウィック、組織再生の 4 つが 2 桁で伸びているとしている。
優良さと弱いところ
優良さの核は、使い捨ての基本品と機器の「採用の固定」にある。病院は注射器・カテーテル・ポンプを医師と看護師の習熟、電子カルテとの連携、滅菌・品質の実績で選ぶので、価格だけでは切り替わらない。BD は世界で最大級の出荷量があり、規模の効果で単価を抑えられる。バイオファーマ・システムズは製薬との共同開発・薬事の承認に組み込まれ、一度採用されると数年は変わらない。
弱い所は 4 つ。①利益の質:調整後の営業利益率は 24.9%(2026 年 4〜6 月期、関税で −110bp)だが、GAAP の営業利益は購買会計の償却(年約 14.5 億ドル)、訴訟・製品関連費用(年約 2〜3 億ドル)、リストラ・統合費用を引くと平年で 15% 前後と、調整後と約 9 ポイント開く。②ROE が低い:自己資本 244 億ドルのうち、のれん・無形資産が 340 億ドルと自己資本を超え、GAAP の ROE は 7% 前後。③価格:病院の購買組織との契約で、名目の値上げが物価(3.5%)に届かない。④借金:純負債 161 億ドルは EBITDA の約 3 倍で、低い金利の古い債券が借り換えで 5% 台後半に上がる。
経営は、バイオ・診断の分離で事業を絞り込んだ点は評価できる。ただしケアフュージョンとバードの大型買収の消化に時間がかかり、アラリスの問題やヘルニアメッシュ関連の訴訟など、買収した事業の後始末が長く続いた。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
病院向けの医療用品・機器の市場は、世界の患者数と手術件数の増加(高齢化・慢性疾患)で、実質年 2〜3% で伸びる。国民医療費は米国で年 5.8% 伸びる予測(CMS)だが、病院の購買組織・保険者・政府が価格を抑えるので、機器・消耗品の価格は名目でも物価(3.5%)に届かない。業界ノートの医療機器(塊 D:画像診断・滅菌・病院向け消耗品)では数量 年 +3%・価格 年 +0.5% を中立としており、BD は薬剤送達と先進患者モニタリングで業界より高く置く。
競争の形:基本品はテルモ・ニプロ・中国勢と競り、中国の量による調達(VBP)で価格が下がった。BD の中国の売上は新 BD の約 4% に縮み、影響は小さくなった。コネクテッド・ケアはバクスター(スペクトラム)とアイシーユー・メディカル(プラム)が輸液ポンプで競り、パイクシスはオムニセルと争う。薬剤送達はステバノ・ゲレスハイマー・ショット・ウエストなど欧州のガラス専業との競争で、GLP-1 の注入ペンの需要は強いが、供給の拡大で単価は上がりにくい。インターベンショナルはメドライン・ホリスター(泌尿器)、メドトロニック・ジョンソン・エンド・ジョンソン(ヘルニア・外科)が競合。
今の景気の位置:2026 年は関税(BD は営業利益率に約 110bp)と、樹脂・石油価格の上昇(樹脂と成形品は原価の約 5%)が逆風。病院の設備投資は慎重で、アラリスの更新サイクルが 2027 年に反動を出す。構造の変化としては、GLP-1 が薬剤送達を押し上げる点が BD に追い風で、AI による病院業務の効率化は、ポンプ・薬剤キャビネットのソフトの価値を高める余地がある。BD は 2026 年 12 月 10 日に長期計画を示す予定で、そこが見直しの節目になる。
資本政策と M&A
2026 年 2 月にバイオサイエンス・診断事業をウォーターズとの統合(リバース・モリス・トラスト)で切り離し、BD の株主は 1 株につきウォーターズ株約 0.135 株(結合会社の 39.2%)を受け取り、BD は現金 40 億ドルを得た。うち 20 億ドルは加速型自社株買い、20 億ドルは債務返済に充てた(2026 年 4〜6 月期までの 9 か月で自社株買い 22.5 億ドル、配当 8.75 億ドル)。分離は成立済みなので筋書きに入れ、分離前の台帳の売上 218 億ドルではなく継続事業(185 億ドル)で書いた。
今後の資本政策は、純負債 161 億ドル(EBITDA の約 3 倍)の削減が先で、配当(年 12 億ドル弱)を保ちつつ、フリー・キャッシュフロー(9 か月で 17 億ドル、年 24 億ドル前後)で借金を EBITDA の 2.2 倍まで減らし、その後に自社株買いを再開する、と置いた。借金の金利は 2026 年 4〜6 月期の利息費用 1.3 億ドル(年 5 億ドル台、平均 3% 台)が、借り換えで約 5.75% に上がり、年 7 億ドル前後まで増える。株式報酬は年 3 億ドル規模で、還元から差し引く。M&A は大型の買収を一巡させて分離で整理した段階なので、小さな買収にとどめると置く。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
基本品と機器の「採用の固定」は、10 年後も崩れない。注射器・カテーテル・輸液ポンプは毎日使われる必需品で、病院は安全性と医師の習熟で選ぶ。BD は世界で最大の出荷量を持ち、規模の効果で単価を抑えられる。バイオ・診断を切り離した新しい BD は、基本品・機器・薬剤送達・泌尿器と血管という、成長が安定した 4 事業だけに絞られた。
成長の柱は 2 桁で伸びている。ネオパックなど生物学的製剤向けの薬剤送達は、GLP-1 や抗体医薬のペンと充填済み注射器の増加で、年 +7% 近く伸びる。ピュアウィック(女性用の尿集め機器)、組織再生、先進患者モニタリングも 2 桁。会社が示す中位 1 桁の成長に、これらが上乗せされる。
利益は、数字より実力が高い。GAAP の利益率は、ケアフュージョン(2015 年)とバード(2017 年)の無形資産の償却(年 14.5 億ドル)で押し下げられており、この償却は年々減る。償却が 8 億ドルに減るだけで、償却後の営業利益率は約 3 ポイント上がる。生産性(BD エクセレンスで工場の生産性が年約 8%)と、現金 40 億ドルによる借金の返済も利益を支える。
慎重な見方
利益の質が悪い。調整後の利益のうち、償却と買収の費用を戻した分が大きく、GAAP の純利益は 2026 年に 12 億ドル前後。リストラ費用が 9 か月で 6 億ドル(うち 4.5 億ドルは減損)と、毎年のように特別費用が出る。「調整後」は、特別費用が毎年出る会社の利益の見せ方として信用しにくい。
価格が物価に届かない。病院の購買組織・保険者・政府は、消耗品の値上げを許さず、BD の基本品は名目で年 1% 前後しか上がらない。物価 3.5% の下で費用(人件費・樹脂)は上がるので、関税(−110bp)も重なって利益率は圧迫される。2027 年はアラリスの更新の反動で低単位増にとどまり、会社も正式な見通しを出していない。
借金が重い。純負債は EBITDA の約 3 倍で、低い利率(平均 3% 台)の債券が約 5.75% に借り換わると、年の利払いは 5 億ドル台から 7 億ドル前後に増える。薬剤送達は欧州のガラス専業との競争、アラリスはバクスターとアイシーユー・メディカル、泌尿器はメドラインが追う。ヘルニアメッシュ関連の訴訟も続く。分離で身軽になっても、ROE 7% の会社に PER 31 倍はまだ高い。
どちらに重みを置いたか
事業の質(採用の固定・規模・薬剤送達の追い風)は高く、償却の減少は確実に起きるので、成長(名目で年 +4.4%)と利益率の改善(償却後 21.0%)を置いた中立に最大の確率(10 年 38%)を置いた。一方、利益の質・価格・借金・買収の前歴という慎重な指摘も強く、悲観を 10 年で 12%、やや悲観を 26% に厚くし、楽観は 6%・18% に抑えた。価格は物価に届かない前提を全セグメントに入れており、この厚さを織り込むと、確率加重の価値は今の時価総額を下回る。倍率は正当化 PER の 7〜10 割に置いた。10 年の中立は、正当化 PER 16.6 倍の 8 割の 13.3 倍。今の PER に寄せていない。確率で重ねた総合は、今の時価総額より 16% 下。結論は「やや割高」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 190.91 ドル525 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 105.60 ドル290 億ドル)。 今の値に割り戻すと 160.30 ドル440 億ドル、今との差 −20.0%、 期待の年率 +4.0%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 330.44 ドル908 億ドル | 135.74 ドル373 億ドル | +132.6% | +8.8% | 27.97 ドル77 億ドル |
| やや楽観 | 18% | 260.16 ドル715 億ドル | 124.46 ドル342 億ドル | +91.9% | +6.7% | 69.23 ドル190 億ドル |
| 中立 | 38% | 208.45 ドル573 億ドル | 113.54 ドル312 億ドル | +60.7% | +4.9% | 122.36 ドル336 億ドル |
| やや悲観 | 26% | 133.34 ドル366 億ドル | 93.16 ドル256 億ドル | +13.0% | +1.2% | 58.89 ドル162 億ドル |
| 悲観 | 12% | 86.43 ドル238 億ドル | 64.05 ドル176 億ドル | −24.9% | −2.8% | 18.06 ドル50 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 190.91 ドル525 億ドル | 105.60 ドル290 億ドル | +47.9% | +4.0% | 296.51 ドル815 億ドル |
今の株価時価総額 200.42 ドル551 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:薬剤送達と患者モニタリングが伸び、償却の減少で利益率が大きく上がる 利益 57 億ドル · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 330.44 ドル908 億ドル
2035 年の売上は 334 億ドル(2025 年から名目で年 +6.1%)。メディカル・エッセンシャルズ 99・コネクテッド・ケア 81・バイオファーマ・システムズ 52・インターベンショナル 102(億ドル)。薬剤送達は GLP-1・抗体医薬の注射剤の増加で年 +7% 台、ピュアウィックと組織再生が伸びて、インターベンショナルが成長を牽引する。アラリスはパイクシス Pro とのつなぎ込み(接続)で病院の更新を維持し、基本品は新興国の需要で数量が伸びる。償却の減少(購買会計 年 14.5 億ドル → 約 8 億ドル)と生産性で GAAP の営業利益率が 23% 台へ上がる。営業利益は 77 億ドル(23.2%)、純利益は 57 億ドル(純負債の利払い 年 7 億ドル前後。借り換え後の約 5.75%)。自己資本は 216 億ドル(償却は非現金で、還元が純利益を上回るので縮む)、10 年の還元は 373 億ドル。倍率は 正当化 PER 17.7 倍の 9 割、15.9 倍に置く。利益の質が高く、伸びも一番続く筋書き。上限の 9 割に置く。
- メディカル・エッセンシャルズ:数量 157(世界に出荷する基本品の点数(億点、推定))× 価格 0.63(1 点あたり売上(ドル。注射器の数十セントから静脈カテーテルの数ドルまでの平均))→ 売上 99 億ドル・営業利益 18 億ドル。世界の出荷点数と 1 点あたり売上
- コネクテッド・ケア:数量 340(稼働している接続機器の台数(万台、推定))× 価格 2,383(1 台あたり年間売上(ドル。機器の更新・ソフト・消耗品の合計))→ 売上 81 億ドル・営業利益 20 億ドル。稼働台数と 1 台あたり売上
- バイオファーマ・システムズ:数量 24.1(世界に出荷する充填済み製剤用の注射器・デバイス(億個、推定))× 価格 2.17(1 個あたり売上(ドル))→ 売上 52 億ドル・営業利益 17 億ドル。出荷個数と 1 個あたり売上
- インターベンショナル:数量 4,399(世界の使用・手技の件数(万件、推定))× 価格 231(1 件あたり売上(ドル))→ 売上 102 億ドル・営業利益 24 億ドル。使用・手技の件数と 1 件あたり売上
倍率:正当化 PER は 17.7 倍(g 3.5%、RONIC 17.2%。RONIC は k 8.00% に、事業の ROE 26.4% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 15.9 倍(9 割)に置いた。利益の質が高く、伸びも一番続く筋書き。上限の 9 割に置く。g の内訳:医療用の消耗品・機器の需要(高齢化・手技の増加)の実質 +2.0% × シェアの小さな低下 −0.5% × 価格 +2.0%(物価 3.5% に届かない。病院の購買組織が抑える)で名目 約 3.5%。検査の上限(4%)の内側。純利益は GAAP。
確率:会社が示す中位 1 桁の成長に薬剤送達の 2 桁成長が乗り、償却が想定より早く減る展開。BD は 2015 年(ケアフュージョン)・2017 年(バード)の買収の消化に時間がかかった歴史があり、上振れの確率は 6% に抑えた。
やや楽観 18% やや楽観:中位 1 桁の成長を保ち、利益率が 2 ポイント上がる 利益 49 億ドル · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 260.16 ドル715 億ドル
2035 年の売上は 309 億ドル(2025 年から名目で年 +5.2%)。メディカル・エッセンシャルズ 91・コネクテッド・ケア 75・バイオファーマ・システムズ 48・インターベンショナル 94(億ドル)。薬剤送達が年 +6.5%、インターベンショナルが年 +4.6% で伸び、機器は更新を保つ。生産性と償却の減少で営業利益率が 22% 台へ上がる。営業利益は 68 億ドル(22.1%)、純利益は 49 億ドル(純負債の利払い 年 7 億ドル前後。借り換え後の約 5.75%)。自己資本は 215 億ドル(償却は非現金で、還元が純利益を上回るので縮む)、10 年の還元は 342 億ドル。倍率は 正当化 PER 17.2 倍の 8.5 割、14.6 倍に置く。伸びと利益率はほぼ計画どおり。上限の 8.5 割に置く。
- メディカル・エッセンシャルズ:数量 148(世界に出荷する基本品の点数(億点、推定))× 価格 0.62(1 点あたり売上(ドル。注射器の数十セントから静脈カテーテルの数ドルまでの平均))→ 売上 91 億ドル・営業利益 16 億ドル。世界の出荷点数と 1 点あたり売上
- コネクテッド・ケア:数量 321(稼働している接続機器の台数(万台、推定))× 価格 2,336(1 台あたり年間売上(ドル。機器の更新・ソフト・消耗品の合計))→ 売上 75 億ドル・営業利益 17 億ドル。稼働台数と 1 台あたり売上
- バイオファーマ・システムズ:数量 22.7(世界に出荷する充填済み製剤用の注射器・デバイス(億個、推定))× 価格 2.13(1 個あたり売上(ドル))→ 売上 48 億ドル・営業利益 16 億ドル。出荷個数と 1 個あたり売上
- インターベンショナル:数量 4,155(世界の使用・手技の件数(万件、推定))× 価格 227(1 件あたり売上(ドル))→ 売上 94 億ドル・営業利益 22 億ドル。使用・手技の件数と 1 件あたり売上
倍率:正当化 PER は 17.2 倍(g 3.5%、RONIC 15.4%。RONIC は k 8.00% に、事業の ROE 22.8% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 14.6 倍(8.5 割)に置いた。伸びと利益率はほぼ計画どおり。上限の 8.5 割に置く。g の内訳:医療用の消耗品・機器の需要(高齢化・手技の増加)の実質 +2.0% × シェアの小さな低下 −0.5% × 価格 +2.0%(物価 3.5% に届かない。病院の購買組織が抑える)で名目 約 3.5%。検査の上限(4%)の内側。純利益は GAAP。
確率:中位 1 桁の成長が保たれ、費用削減が利益率に出る展開。バリュー投資の観点で、基本品の堀(病院との長期契約と数十年の採用実績)は広がりにくいが崩れにくいと見て 18%。
中立 38% 中立:中位 1 桁の成長、償却が減り GAAP の利益率が上がる 利益 43 億ドル · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 208.45 ドル573 億ドル
2035 年の売上は 286 億ドル(2025 年から名目で年 +4.4%)。メディカル・エッセンシャルズ 84・コネクテッド・ケア 69・バイオファーマ・システムズ 45・インターベンショナル 87(億ドル)。基本品は数量 年 +1.5%・価格 年 +1.2%(病院の購買組織の契約で物価に届かない)、機器は数量 +2.8%・価格 +1.5%(アラリスの更新サイクル)、薬剤送達は数量 +6.0%・価格 +0.8%、インターベンショナルは数量 +4.2%・価格 +1.0%。償却は購買会計の消化で年 14.5 億ドルから約 8 億ドルへ減り、償却後の営業利益率は 14% 台から 21% へ上がる(調整後の利益率はほぼ横ばいの 26% 前後)。営業利益は 60 億ドル(21.0%)、純利益は 43 億ドル(純負債の利払い 年 7 億ドル前後。借り換え後の約 5.75%)。自己資本は 216 億ドル(償却は非現金で、還元が純利益を上回るので縮む)、10 年の還元は 312 億ドル。倍率は 正当化 PER 16.6 倍の 8 割、13.3 倍に置く。中立は上限の 8 割。針・注射器・ポンプの基盤は堅いが、伸びは中位 1 桁で新しく投じる資本の稼ぎは先で薄れる。
- メディカル・エッセンシャルズ:数量 139(世界に出荷する基本品の点数(億点、推定))× 価格 0.61(1 点あたり売上(ドル。注射器の数十セントから静脈カテーテルの数ドルまでの平均))→ 売上 85 億ドル・営業利益 14 億ドル。世界の出荷点数と 1 点あたり売上。価格は物価に届かない(病院の購買組織の契約・競争。理由は how)
- コネクテッド・ケア:数量 303(稼働している接続機器の台数(万台、推定))× 価格 2,291(1 台あたり年間売上(ドル。機器の更新・ソフト・消耗品の合計))→ 売上 69 億ドル・営業利益 15 億ドル。稼働台数と 1 台あたり売上。価格は物価に届かない(病院の購買組織の契約・競争。理由は how)
- バイオファーマ・システムズ:数量 21.5(世界に出荷する充填済み製剤用の注射器・デバイス(億個、推定))× 価格 2.08(1 個あたり売上(ドル))→ 売上 45 億ドル・営業利益 14 億ドル。出荷個数と 1 個あたり売上。価格は物価に届かない(病院の購買組織の契約・競争。理由は how)
- インターベンショナル:数量 3,923(世界の使用・手技の件数(万件、推定))× 価格 222(1 件あたり売上(ドル))→ 売上 87 億ドル・営業利益 19 億ドル。使用・手技の件数と 1 件あたり売上。価格は物価に届かない(病院の購買組織の契約・競争。理由は how)
倍率:正当化 PER は 16.6 倍(g 3.5%、RONIC 14.0%。RONIC は k 8.00% に、事業の ROE 19.9% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 13.3 倍(8 割)に置いた。中立は上限の 8 割。針・注射器・ポンプの基盤は堅いが、伸びは中位 1 桁で新しく投じる資本の稼ぎは先で薄れる。g の内訳:医療用の消耗品・機器の需要(高齢化・手技の増加)の実質 +2.0% × シェアの小さな低下 −0.5% × 価格 +2.0%(物価 3.5% に届かない。病院の購買組織が抑える)で名目 約 3.5%。検査の上限(4%)の内側。純利益は GAAP。
確率:議論の落としどころで最大。基本品は年 +2.7%、機器は年 +4.3%、薬剤送達は年 +6.8%、インターベンショナルは年 +5.2% で、全体は年 +4.4%。会社が示す中位 1 桁の成長を長期で保つという置き方。
やや悲観 26% やや悲観:基本品の価格が下がり続け、中国・関税・値下げで成長が鈍る 利益 32 億ドル · PER 11.5 倍 · 株価時価総額 133.34 ドル366 億ドル
2035 年の売上は 247 億ドル(2025 年から名目で年 +2.9%)。メディカル・エッセンシャルズ 73・コネクテッド・ケア 60・バイオファーマ・システムズ 39・インターベンショナル 75(億ドル)。基本品は中国の国産化・関税・病院の購買組織で価格が下がり、メディカル・エッセンシャルズは数量 +0.5%・価格 +0.7% にとどまる。薬剤送達は欧州のガラス専業に押されて年 +5%、機器はアラリスの更新を取りこぼして数量 +1.8%。償却は減るが、訴訟と関税で営業利益率は 18〜19% にとどまる。営業利益は 46 億ドル(18.6%)、純利益は 32 億ドル(純負債の利払い 年 7 億ドル前後。借り換え後の約 5.75%)。自己資本は 223 億ドル(償却は非現金で、還元が純利益を上回るので縮む)、10 年の還元は 256 億ドル。倍率は 正当化 PER 15.3 倍の 7.5 割、11.4 倍に置く。競争と値下がりで、新しく投じる資本の稼ぎが薄れる。上限の 7.5 割に置く。
- メディカル・エッセンシャルズ:数量 126(世界に出荷する基本品の点数(億点、推定))× 価格 0.58(1 点あたり売上(ドル。注射器の数十セントから静脈カテーテルの数ドルまでの平均))→ 売上 73 億ドル・営業利益 10 億ドル。世界の出荷点数と 1 点あたり売上
- コネクテッド・ケア:数量 275(稼働している接続機器の台数(万台、推定))× 価格 2,180(1 台あたり年間売上(ドル。機器の更新・ソフト・消耗品の合計))→ 売上 60 億ドル・営業利益 12 億ドル。稼働台数と 1 台あたり売上
- バイオファーマ・システムズ:数量 19.6(世界に出荷する充填済み製剤用の注射器・デバイス(億個、推定))× 価格 1.98(1 個あたり売上(ドル))→ 売上 39 億ドル・営業利益 11 億ドル。出荷個数と 1 個あたり売上
- インターベンショナル:数量 3,563(世界の使用・手技の件数(万件、推定))× 価格 211(1 件あたり売上(ドル))→ 売上 75 億ドル・営業利益 15 億ドル。使用・手技の件数と 1 件あたり売上
倍率:正当化 PER は 15.3 倍(g 3.5%、RONIC 11.2%。RONIC は k 8.00% に、事業の ROE 14.3% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 11.4 倍(7.5 割)に置いた。競争と値下がりで、新しく投じる資本の稼ぎが薄れる。上限の 7.5 割に置く。g の内訳:医療用の消耗品・機器の需要(高齢化・手技の増加)の実質 +2.0% × シェアの小さな低下 −0.5% × 価格 +2.0%(物価 3.5% に届かない。病院の購買組織が抑える)で名目 約 3.5%。検査の上限(4%)の内側。純利益は GAAP。
確率:病院の購買組織と保険者の価格圧力が続き、基本品の価格が名目で下がり、中国の国産化・関税・ワクチンの低迷で成長が年 +2〜3% に鈍る展開。借金が重く、買収の消化に時間がかかった前歴もあるため 26% と厚く置いた。
悲観 12% 悲観:構造的に負ける(アラリス・基本品・薬剤送達でシェアを失い、訴訟が重くなる) 利益 19 億ドル · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 86.43 ドル238 億ドル
2035 年の売上は 199 億ドル(2025 年から名目で年 +0.7%)。メディカル・エッセンシャルズ 58・コネクテッド・ケア 48・バイオファーマ・システムズ 31・インターベンショナル 61(億ドル)。アラリスの更新でバクスターとアイシーユー・メディカルにシェアを失い、基本品は価格が名目で下がり(年 0%)、薬剤送達はステバノ・ゲレスハイマーに取られ、泌尿器はメドラインに価格で負け、ヘルニアメッシュ関連の訴訟費用が年 4 億ドル規模で重く、営業利益率は 14〜15% にとどまる。売上は年 +0.7% で横ばい近くになり、優良な会社ではなくなっている。営業利益は 29 億ドル(14.6%)、純利益は 19 億ドル(純負債の利払い 年 7 億ドル前後。借り換え後の約 5.75%)。自己資本は 238 億ドル(償却は非現金で、還元が純利益を上回るので縮む)、10 年の還元は 176 億ドル。倍率は 正当化 PER 12.5 倍の 10 割、12.5 倍に置く。構造的に負けた筋書きなので、長期の g を 2.4%(市場 +1.5% × シェア −1.0% × 価格 +1.9%)に下げた式の値そのままに置く(上限の割合は掛けない)。
- メディカル・エッセンシャルズ:数量 109(世界に出荷する基本品の点数(億点、推定))× 価格 0.54(1 点あたり売上(ドル。注射器の数十セントから静脈カテーテルの数ドルまでの平均))→ 売上 58 億ドル・営業利益 6 億ドル。世界の出荷点数と 1 点あたり売上
- コネクテッド・ケア:数量 237(稼働している接続機器の台数(万台、推定))× 価格 2,034(1 台あたり年間売上(ドル。機器の更新・ソフト・消耗品の合計))→ 売上 48 億ドル・営業利益 8 億ドル。稼働台数と 1 台あたり売上
- バイオファーマ・システムズ:数量 16.9(世界に出荷する充填済み製剤用の注射器・デバイス(億個、推定))× 価格 1.85(1 個あたり売上(ドル))→ 売上 31 億ドル・営業利益 8 億ドル。出荷個数と 1 個あたり売上
- インターベンショナル:数量 3,077(世界の使用・手技の件数(万件、推定))× 価格 197(1 件あたり売上(ドル))→ 売上 61 億ドル・営業利益 10 億ドル。使用・手技の件数と 1 件あたり売上
倍率:事業の ROE 8.0% が k 8.00% 以下なので PER は 1÷k=12.5 倍まで。これに対し 12.5 倍(10 割)に置いた。構造的に負けた筋書き(市場 +1.5%・シェア −1.0%・価格 +1.9% で長期の g は 2.4%)。ROE が k に届かず、ためた利益は額面より低い価値なので、PER は 1÷k に置く。g の内訳:医療用の消耗品・機器の需要(高齢化・手技の増加)の実質 +2.0% × シェアの小さな低下 −0.5% × 価格 +2.0%(物価 3.5% に届かない。病院の購買組織が抑える)で名目 約 3.5%。検査の上限(4%)の内側。純利益は GAAP。
確率:構造的に負けて優良ではなくなっている。アラリスの更新でバクスター・アイシーユー・メディカルにシェアを失い、薬剤送達で欧州のガラス専業(ステバノ・ゲレスハイマー)に取られ、泌尿器でメドライン・ホリスターに価格で負け、ヘルニアメッシュ関連の訴訟が重くなる。売上が横ばい近くになる。12% と厚くした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
メディカル・エッセンシャルズ
注射器・針・採血管・IV カテーテル・検体採取など、病院の「使い捨ての基本品」。BD の祖業。
| 数量世界に出荷する基本品の点数(億点、推定) | 価格1 点あたり売上(ドル。注射器の数十セントから静脈カテーテルの数ドルまでの平均) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 120 | 0.54 | 65 | 7 |
| 10 年後 中立 | 139 | 0.61 | 85 | 14 |
取り方:2025 年(9 月決算、継続事業)の売上は 9 か月の開示(47.60 億ドル、2026 年は 49.18 億ドル +3.3%)に第 4 四半期を按分して約 64.6 億ドルと推定した。出荷は 120 億点前後(推定)で 1 点あたり約 0.54 ドル。競合はテルモ・ニプロ・中国勢(注射器)で、BD は世界の注射器・採血・静脈カテーテルで首位級。価格は物価(3.5%)に届かない年 +1.2%:病院の購買組織(ヴィジエント・プレミアなど)との長期契約で値上げが小刻みで、樹脂価格の転嫁が遅れる。営業利益率は GAAP の償却後・リストラ除きで 11.5% と置いた(全社の調整後 24.9% から購買会計の償却と訴訟費用を引いて配分。基本品なので調整後でも全社平均より低い)。
コネクテッド・ケア
アラリス輸液ポンプ・パイクシス薬剤管理キャビネット・患者モニタリング(先進患者モニタリング)。
| 数量稼働している接続機器の台数(万台、推定) | 価格1 台あたり年間売上(ドル。機器の更新・ソフト・消耗品の合計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 230 | 1,974 | 45 | 7 |
| 10 年後 中立 | 303 | 2,291 | 69 | 15 |
取り方:2025 年の売上は 9 か月の開示(33.07 億ドル、2026 年は 34.75 億ドル +5.1%)に第 4 四半期を按分して約 45.4 億ドルと推定した。アラリスとパイクシスの稼働は合わせて 230 万台前後(推定)、1 台あたり年約 1,970 ドル。競合はアラリスがバクスター(スペクトラム)・アイシーユー・メディカル(プラム)・テルモ、パイクシスがオムニセル、モニタリングがマシモ・フィリップス。価格は物価に届かない年 +1.5%:病院は機器を更新年に値引き交渉し、ソフトの追加で一部を取り戻す程度。2027 年はアラリスの更新の反動で売上に −2 ポイントの向かい風(会社見通し)。営業利益率は償却後 16% と置いた。
バイオファーマ・システムズ
製薬会社向けの薬剤充填済み注射器・ペン型・自動注入器(ネオパックなど)。GLP-1 や抗体医薬の入れ物。
| 数量世界に出荷する充填済み製剤用の注射器・デバイス(億個、推定) | 価格1 個あたり売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 12.0 | 1.93 | 23 | 6 |
| 10 年後 中立 | 21.5 | 2.08 | 45 | 14 |
取り方:2025 年の売上は 9 か月の開示(16.22 億ドル、2026 年は 16.89 億ドル +4.1%)に第 4 四半期を按分して約 23.1 億ドルと推定した。出荷は約 12 億個(推定)、1 個あたり約 1.9 ドル。ワクチン向けが中国・米国で弱いが、生物学的製剤向けは 2 桁成長(会社)。競合はステバノ・ゲレスハイマー・ショット・ウエスト・テルモ(ガラスの注射器・ペン)。価格は物価に届かない年 +0.8%:製薬の大口契約で単価が下がり、高付加価値品(ネオパック)への切り替えで混ざり、実質は小幅な値下がり。営業利益率は買収の償却が小さく設備の稼働が高いため 26% と置いた(会社は開示せず、推定)。
インターベンショナル
泌尿器・集中治療(ピュアウィック・カテーテル)、末梢血管(バード)、外科(ヘルニア・組織再生)。
| 数量世界の使用・手技の件数(万件、推定) | 価格1 件あたり売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,600 | 201 | 52 | 7 |
| 10 年後 中立 | 3,923 | 222 | 87 | 19 |
取り方:2025 年の売上は 9 か月の開示(38.49 億ドル、2026 年は 41.01 億ドル +6.5%)に第 4 四半期を按分して約 52.3 億ドルと推定した。使用・手技は 2,600 万件前後(推定)で 1 件あたり約 200 ドル。競合はメドトロニック・ジョンソン・エンド・ジョンソン(外科・ヘルニア)、ホリスター・メドライン・クック・メディカル(泌尿器・カテーテル)、ボストン・サイエンティフィック・メリット(末梢血管)。価格は物価に届かない年 +1.0%:病院の購買組織の力が強い。営業利益率は 2017 年のバード買収の無形資産の償却を大きく含む償却後で 12.5% と置いた(償却前では 3 割に近い)。
リスクと懸念
利益の質:償却とリストラの「特別費用」が続く
2026 年 9 か月でリストラ 6.05 億ドル(うち減損 4.5 億ドル)、統合 1.23 億ドル、分離 0.73 億ドルの特別費用が出て、GAAP の純利益は調整後の 3 分の 1 に届かない。償却(年約 14.5 億ドル)は非現金だが、買収の対価を払った事実は変わらず、特別費用が毎年出るなら平年の利益は低い。本稿は GAAP を基準にし、リストラなどだけ戻している。
アラリスの更新の反動と品質・規制の問題
輸液ポンプのアラリスは更新サイクルが 7〜10 年で、2027 年は売上に −2 ポイントの反動が出ると会社が見ている。過去に品質と規制の問題(FDA の指摘)を経験した事業で、バクスター(スペクトラム)・アイシーユー・メディカル(プラム)に置き換えられると、コネクテッド・ケアの成長が止まり、パイクシス Pro の接続による囲い込みも弱まる。
価格が名目で物価に届かない
病院の購買組織(ヴィジエント・プレミアなど)・保険者・政府が消耗品の価格を抑える。BD の基本品は名目で年 1% 前後しか上げられず、物価 3.5% の下で人件費・樹脂の上昇を吸収できない。関税(営業利益率 −110bp)、樹脂の価格上昇(原価の約 5%)、中国の量による調達(VBP)も重なる。価格を下げる年が続けば、利益率は想定を下回る。
借金と借り換え
純負債は 161 億ドルで EBITDA の約 3 倍。利息費用は 2026 年 4〜6 月期で年 5 億ドル台(平均 3% 台の古い債券)だが、借り換えで約 5.75% に上がり、年 7 億ドル前後に増える。フリー・キャッシュフローが年 24 億ドル前後でも、配当(年 12 億ドル弱)と借金返済で自社株買いの余地は小さく、景気後退期に利益が落ちると財務の余裕が減る。
薬剤送達の競争と製薬の需要
GLP-1 や抗体医薬は追い風だが、ステバノ・ゲレスハイマー・ショット・ウエストなど欧州のガラス専業とテルモが競り、供給が増えれば単価が下がる。ワクチン向けは中国・米国で弱く、2026 年 4〜6 月期の成長は +5.2% にとどまった。製薬の最恵国待遇の価格合意などで製薬の収益が圧迫されれば、デバイスの価格交渉も厳しくなる。
訴訟(ヘルニアメッシュなど)と買収の消化
バード由来のヘルニアメッシュ関連の製品責任訴訟は年数億ドルの費用が出ており、結果次第で和解金が増える。ケアフュージョンとバードの大型買収ではのれんが自己資本を超え、ROE が 7% 前後と低いまま。新しい買収で価値を壊せば、償却の減少による利益率の改善が消える。
今後の分かれ目
- 2026 年 11 月の 2027 年の見通しと 12 月 10 日の長期計画で、中位 1 桁の成長と営業利益率の改善が示される
- 中立の確率を 5 ポイント上げ、やや悲観を同じだけ下げる。長期計画が低単位増を長く続ける内容なら、逆にやや悲観・悲観の確率を 5〜8 ポイント上げる。
- アラリスの更新が 2027 年で終わり、2028 年に売上が 4〜5% 増へ戻る
- やや楽観の確率を 5 ポイント上げる。コネクテッド・ケアの価格が年 +2% 以上に戻れば、10 年の営業利益率が想定より 1 ポイント上がる。
- 関税が緩和され、樹脂価格が下がる
- 営業利益率に約 1 ポイントの上振れが出て、純利益が 3 年で約 2 億ドル、10 年で約 5 億ドル増える。逆に関税が広がれば同じだけ下がる。
- ネオパックなど薬剤送達の成長が 2 桁で 3 年続き、ワクチンの弱さが解消する
- バイオファーマ・システムズの数量が年 +7% 台に乗り、楽観の確率を上げる。10 年の売上が約 15 億ドル、営業利益が約 4 億ドル上振れする。
- ヘルニアメッシュなどの訴訟で、数十億ドル規模の和解が確定する
- 純負債が増え、借金返済と自社株買いが数年遅れる。悲観・やや悲観の確率を 3〜5 ポイント上げ、倍率の前提(ROE)が下がる。
- アラリスを置き換える競合(バクスター・アイシーユー・メディカル)が大病院の更新で勝ち始める
- コネクテッド・ケアの数量が年 +1% 台に鈍り、やや悲観の筋書きに近づく。パイクシスとの接続が崩れれば悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 2026 年 11 月の 2027 年の正式な見通し(売上の伸び・調整後の利益率)と、12 月 10 日の長期計画(中期の成長と利益率の目標)
- アラリスの更新の状況(コネクテッド・ケアの四半期の成長。2026 年 4〜6 月期は +4.4%)と、パイクシス Pro の導入件数
- バイオファーマ・システムズの成長(ネオパック・生物学的製剤向けと、ワクチンの底打ち)
- 関税の影響(営業利益率 −110bp)と、樹脂・石油価格
- 購買会計の償却の推移(四半期 3.6 億ドル前後)と、GAAP の営業利益率(平年で 15% 前後からの改善)
- 純負債(161 億ドル)の削減ペースと、自社株買いの再開時期、金利が 5.75% に借り換わる速度
- ヘルニアメッシュなど訴訟の和解の動きと、リストラ費用の再発
倍率と資本コストの決め方
今の PER 31 倍を見る前に、数量と価格でセグメントを積み、純利益と自己資本を決めた。倍率は利益ベースの正当化 PER(RONIC は k に、事業の ROE が k を超える分の残る割合を足した値。moat は normal)の 7〜10 割に置いた。10 年の中立は、正当化 PER 16.6 倍(g 3.5%、RONIC 14.0%、k 8.00%)の 8 割の 13.3 倍。今の値段には寄せていない。総合は今の時価総額より 16% 下。結論は「やや割高」。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality 0% = 8.0%。アラリス・訴訟・分離後の統合などの個別のリスクは k に足さず、悲観・やや悲観の確率(合計 38%)と悲観の深さで表した。存続の危うい会社ではないので上乗せ 0。