結論
ブラックストーンは、総運用資産 1.35 兆ドル(2026 年 6 月末、前年比 11% 増)、手数料を生む運用資産 9,616 億ドルを持つ世界最大のオルタナティブ運用会社である。不動産・プライベート・エクイティ(PE)・クレジット(保険を含む)・マルチアセットの 4 つの柱を持ち、収益の約 6 割は市場の値動きに左右されにくい管理報酬、残りが投資の成功報酬である。2026 年 4〜6 月期は手数料収入 30 億ドル(前年比 22% 増)、手数料関連利益 18 億ドル(22% 増)、分配可能利益 20 億ドル(26% 増)と勢いが強い。
この分析で最初に決めたのは、会社全体で見ることである。台帳の株数 7.8 億株は普通株だけで、普通株に交換できるホールディングスの単位(4.4 億)を含まない。会社全体の株数は約 12.4 億で、時価総額は約 1,325 億ドル(台帳の自動計算 832 億ドルの 1.6 倍)。純利益も単位の持ち分を足した会社全体で見る必要があり、2025 年は約 52 億ドル(普通株分の 30.2 億ドルを、経済的な持ち分約 58% で割り戻した推定)、2026 年は約 64 億ドルの見込みである。
バリュー投資の観点では、10 年後もこの事業は存在し、資金調達の規模と信頼の堀は今より厚いと見る。一方、個人向けの長期型ファンドで解約請求が膨らみ、BCRED は 2026 年 4〜6 月期に初めて解約を 5% に制限した。資本コスト 8.25%(基本 8.0% + quality 0.25%)で、利益ベースの正当化 PER(資本コストを超える稼ぎは新しく投じるお金では半分に薄れる)の上限の 9 割前後を当て、確率で加重した価値は今の時価総額の約 2% 下(適正)。10 年の期待の年率は約 6.7% で、資本コストをやや下回る。優良さへの評価は高いが、成功報酬と市場連動の振れが大きく、深い安全域は無い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず 10 年後を問う。世界の貯蓄を運用に回す流れは続き、資金の預け先として最上位の信頼を持つ会社は、10 年後も存在し、おそらく今より強い。堀は資金調達の規模と実績、販売網、ブランドの信頼で、価格を決める力はあまり強くない(私募の報酬率は競争で下がっている)。
オーナー利益は、純利益から株式報酬を費用として引いた値で見る。会社全体の GAAP 純利益は 2025 年に約 52 億ドル、2026 年は約 64 億ドルの見込みで、伸びに要る元手(ファンドへの自己投資)は小さく、純利益の 85〜90% を株主に返せる。株式報酬は GAAP に含まれる費用なので足し戻さない。
安全域では、2 つの問題がある。第 1 は利益の質で、成功報酬と評価益の比率が高い年は利益が山になり、悲観の年には半分以下に落ちる。第 2 は個人向けの解約で、BCRED が初めて制限をかけたことは、取引の流れが「いつでも出せる」前提で売られている商品の弱点を示した。資本コスト 8.25%、長期成長 4.0%、事業の ROE 40%・RONIC 24% の利益ベースの式で 10 年目の利益の約 20 倍が正当化され、利益の質からその 9 割の約 18 倍に置く。今の GAAP の PER(会社全体で約 22 倍)には届かないが、10 年で利益が 2 倍強になる前提で、価値は今の時価総額とほぼ等しい。確信は高いが、安全域は小さい。
何で稼ぐ会社か
ブラックストーンの収益は、管理報酬(手数料を生む資産 × 報酬率)、手数料関連の成功報酬、実現した成功報酬(キャリー)の 3 つからなる。管理報酬は 2025 年に 80 億ドルで、契約期間が 10 年前後の私募ファンドや、永続資本(手数料を生む分で 4,630 億ドル、全体の 48%)から入るため、景気が悪くても止まりにくい。
事業は 4 つの塊に分かれる。不動産(手数料を生む資産 2,794 億ドル・2025 年末)は、私募ファンドと個人向けの BREIT(約 570 億ドル)が柱で、2022 年以降の金利上昇で評価と出口が傷み、収益は 35.5 億ドルにとどまった。PE(2,410 億ドル)はバイアウトに加え、個人向けの BXPE、インフラ、生命科学、アジアなどを持ち、成功報酬が 17 億ドルと最大の稼ぎ手で、収益 50.6 億ドル。クレジット・保険(3,156 億ドル)は、保険会社のポートフォリオを運用する受託(約 2,900 億ドル)、私募のダイレクトレンディング、個人向けの BCRED で、収益は 34.4 億ドル。マルチアセット(856 億ドル)はヘッジファンドへ投資する運用で、収益 10.3 億ドル。
価格にあたる報酬率は、管理報酬ベースで不動産・PE 約 1%(私募は 1〜1.5%)、クレジット 0.5〜0.8% 前後。保険の受託は低報酬だが量が大きい。個人向けの商品(運用資産 3,240 億ドル)は機関投資家向けより報酬率が高く、成長の中心である。会社の費用は主に人件費で、設備投資は小さく、利益の大半を分配する。
優良さと弱いところ
優良さは 4 つの柱で見る。第 1 は資金調達力で、世界の大学基金・年金・保険会社・個人投資家が資金を預ける最上位の名前であり、2026 年はすでに 3 つのファンドが上限に達した。直近 12 か月の流入は 2,625 億ドル。第 2 は規模の経済で、投資先から得る情報(物流施設、データセンター、ソフト会社、与信)が他社の選別を上回る。第 3 は個人向けの販売網で、ゴールドマン・サックスの試算では個人向けの収益の約半分を握る。第 4 は資本の軽さで、手数料関連利益の営業利益率は 57% 前後、純利益の大半を株主に分配する。
弱い所は 4 つ。(1)成功報酬(キャリー)は出口の市場に左右され、2022〜2024 年に不動産と PE で大きく減った。(2)個人向けの商品は、解約が重なると取引の流れが止まる。BCRED は 2026 年 1〜3 月期に解約請求 7.9% の全額に応じ、4〜6 月期は約 10% の請求に 5% の上限をかけた。(3)新しい商品の報酬率は下がりやすく、2026 年組成のバイアウトファンドの平均は過去最低である。(4)ガバナンスは創業者のスティーブン・シュワルツマンと社長のジョン・グレイの二人体制で、後継は長期の論点。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界の運用資産は約 147 兆ドルで、そのうちオルタナティブは約 20 兆ドル前後と見られる。機関投資家はパッシブに預ける分の一部をオルタナティブへ移し、個人向けの長期型ファンド(永続型)は 4 年で 5 倍の 3,000 億ドル超に膨らんだ。エバーグリーン型の運用資産は 2025 年の 3.2 兆ドルから 2030 年に 5.2 兆ドルの見通し(Ropes & Gray)。
競争は上位に資金が集中する。2026 年 4〜6 月期でアポロの総運用資産は約 1.05 兆ドル、アレスは 6,713 億ドルで調達が過去最高(360 億ドル)、KKR の手数料関連利益は 12 億ドル(37% 増)、ブルックフィールドは手数料を生む資本 6,720 億ドル。アポロと KKR は保険会社を抱える形で、安定した資金源を持つ。ブラックストーンの総運用資産は 1.35 兆ドルで最大だが、成長率(11%)はアレス(17%)、アポロ、KKR に劣る。
業界の利益率は上位のオルタナティブで 55% 前後と高いが、新しい商品の報酬率の低下、個人向けの規制(確定拠出年金への組み入れ解禁も制度次第)、私募クレジットの信用事故(2025 年のファースト・ブランズ破綻など)がある。循環の位置としては、2026 年 4〜6 月期は実現した成功報酬が前年比で大きく伸びた山に近く、不動産の出口はこれから戻る途中にある。金利が 5% で続く世界では、レバレッジをかける買収の採算が悪く、資金は私募クレジット・インフラ・保険へ流れる。
資本政策と M&A
分配は、分配可能利益のほぼ全額を配当と自社株買いで返す方針で、2025 年は株主還元 62 億ドル、直近 12 か月は 69 億ドル。配当は四半期ごとに分配可能利益の大半を払うため、変動は大きい。普通株と交換できる単位が 4.4 億あり、単位の持ち主(創業者・経営陣)にも同額の分配が出る。株式報酬は年 10 億ドル超で、繰延制限株の付与で株数が毎年少しずつ増え、自社株買いは年 0.8 百万株と小さいため、正味の還元は見かけの 8〜9 割。
バランスシートは軽く、現金と財務投資 122 億ドルに対し社債(額面)132 億ドルでほぼ釣り合う。格付けは A+。ファンドへの自己投資(GP コミット)を持つが、会社の利益を押し上げる要素は成功報酬の評価益の積み上げ(純未実現成功報酬 75 億ドル)。買収は大型を避け、自社の商品を広げる有機的成長が中心で、買われる側になる可能性はほぼない。S&P 500 採用は 2023 年 9 月。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ブラックストーンは、世界の資金がパッシブから私募へ移る最大の受け皿である。直近 12 か月の流入は 2,625 億ドル、永続資本は 5,556 億ドル(+15%)で、手数料を生む運用資産の 48% が永続型になり、管理報酬の下振れは小さい。個人向けの運用資産は 3,240 億ドル(+16%)で、BXPE・BXINFRA の流入は回復し、2026 年 8 月からは永続型のマルチ戦略ヘッジファンド BXHF も始まる。保険の受託は 2,900 億ドル(+15%)、インフラは 900 億ドルで 40% 増と、低金利時代に頼った PE と不動産の外に収益の柱が広がっている。
不動産は 2022 年以降の底から戻りつつあり、物流施設の賃貸は 26% 増、ホテル稼働は 5% 増。成功報酬は PE のドローダウン資金(2026 年に使い始めた分)の投資が始まれば、2 年後に収益として上乗せされる。手数料関連利益の営業利益率は 57%、分配可能利益は 2 年で 1.5 倍になりうる。10 年で運用資産が 2 倍に、純利益が 3 倍になれば、利益ベースの倍率でも今の値段を大きく上回る。
慎重な見方
今の収益は山に近い。2026 年 4〜6 月期の実現成功報酬は 7.3 億ドルと前年の 2 倍近く、純実現益も 27% 増えたが、その大半は PE の出口の再開による一時的な戻りで、金利が 5% で続く世界では出口の市場が長く開かない年がある。
個人向けの商品は、売る時には「いつでも換金できる」と見えるが、市場が崩れると解約請求が集中する。BCRED は 1〜3 月期に 7.9% の解約請求に全額応じ、4〜6 月期は約 10% の請求に 5% の上限をかけた。2022 年に BREIT が同じ制限を受けた時、不動産の収益は 3 年減り続けた。私募クレジットの延滞率はまだ低い(1.76%)が、2025 年のファースト・ブランズ破綻のような事故が 1 件でも出れば、個人マネーの流れは止まる。
さらに報酬率は下がり続ける。新しい PE ファンドの平均報酬率は過去最低で、機関投資家は交渉力を持つ。成長率ではアレス(17%)に劣り、市場の取り分は少しずつ下がる。利益ベースで正当化される倍率(10 年目の利益の約 20 倍、置いたのは約 18 倍)は、今の GAAP の PER(約 22 倍)を下回り、安全域は小さい。
どちらに重みを置いたか
事業の質は強気の見方が強い(資金調達力・永続資本・個人向け)が、値段と利益の質は慎重な見方が強い。10 年の確率は楽観 10%・やや楽観 24%・中立 30%・やや悲観 22%・悲観 14% と、悲観側にやや厚く置いた(同じ領域のブラックロックより悲観が 2 ポイント厚い)。理由は、成功報酬と個人向けの解約という、ブラックロックに無い 2 つの振れがあるためである。10 年の構造的な負け 14% は、報酬の崩れと信用事故で優良な運用会社でなくなる筋書き。確率で加重した価値は今の時価総額を約 2% 下回り、結論は「適正」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 148.91 ドル1,852 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 55.41 ドル689 億ドル)。 今の値に割り戻すと 104.67 ドル1,302 億ドル、今との差 −11.9%、 期待の年率 +5.6%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 255.58 ドル3,179 億ドル | 67.45 ドル839 億ドル | +172.0% | +10.5% | 32.30 ドル402 億ドル |
| やや楽観 | 24% | 198.09 ドル2,464 億ドル | 61.18 ドル761 億ドル | +118.3% | +8.1% | 62.23 ドル774 億ドル |
| 中立 | 30% | 155.89 ドル1,939 億ドル | 56.76 ドル706 億ドル | +79.1% | +6.0% | 63.79 ドル794 億ドル |
| やや悲観 | 22% | 106.28 ドル1,322 億ドル | 50.09 ドル623 億ドル | +31.7% | +2.8% | 34.40 ドル428 億ドル |
| 悲観 | 14% | 40.44 ドル503 億ドル | 42.37 ドル527 億ドル | −30.3% | −3.5% | 11.59 ドル144 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 148.91 ドル1,852 億ドル | 55.41 ドル689 億ドル | +72.1% | +5.6% | 204.32 ドル2,541 億ドル |
今の株価時価総額 118.75 ドル1,477 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:個人マネーと保険が収益の中心になり、報酬率が保たれる 利益 174 億ドル · PER 18.3 倍 · 株価時価総額 255.58 ドル3,179 億ドル
2035 年末、手数料を生む運用資産は 2.9 兆ドル(年 12%)。個人向けの運用資産は 1 兆ドルを超え、エバーグリーン型の PE・インフラ・クレジットが毎年の流入の半分を担う。保険の受託は 1 兆ドル規模に増え、クレジット・保険が全体の 4 割を占める。報酬率は競争で下がるが、永続型の比率が上がり管理報酬が安定する。セグメント収益は 406 億ドル、営業利益は 207 億ドル、純利益は約 174 億ドル。10 年の正味の還元は 839 億ドル。堀は広がり、後継の体制も円滑に移る。2020 年代後半の景気後退でも解約請求は一時的で、資金は大手のブラックストーンに戻る。
- 不動産:数量 6,924(手数料を生む運用資産(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの収益率(管理報酬+成功報酬))→ 売上 92 億ドル・営業利益 66 億ドル。残高 年 9.5%
- プライベート・エクイティ:数量 7,158(手数料を生む運用資産(億ドル))× 価格 0.02(残高あたりの収益率(管理報酬+成功報酬))→ 売上 150 億ドル・営業利益 94 億ドル。永続資本と個人向けで残高 年 11.5%
- クレジット・保険:数量 12,223(手数料を生む運用資産(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの収益率(管理報酬+成功報酬))→ 売上 133 億ドル・営業利益 83 億ドル。保険と私募クレジットで残高 年 14.5%
- マルチアセット(ヘッジファンド等):数量 2,542(手数料を生む運用資産(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの収益率(管理報酬+成功報酬))→ 売上 31 億ドル・営業利益 21 億ドル。残高 年 11.5%
倍率:純利益は GAAP の親会社帰属、自己資本は帳簿の値(分配後の自己資本は薄く、ROE は高く出る)。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 8.25%(基本 8.0%+quality +0.25%)、事業の ROE 43.0%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 25.6% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=19.9 倍が上限。利益の質(成功報酬と自己投資が市場で大きく振れる)から、上限の 9.2 割の PER 18.3 倍に置いた(検査の上限は時価総額 3455 億ドル)。
確率:個人向けの永続型ファンドと保険の受託が定着し、成功報酬が平常の水準を保つ。10 年を通じて実現する確率は 1 割。
やや楽観 24% やや楽観:運用資産は年 10%、永続型が過半に 利益 136 億ドル · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 198.09 ドル2,464 億ドル
2035 年末、手数料を生む運用資産は 2.4 兆ドル(年 10%)。個人向けは 8,000 億ドル前後、保険の受託は 7,500 億ドル前後。クレジット・保険が運用資産の 4 割に。不動産は金利の落ち着きで 2020 年代後半に出口が戻り、PE のバイアウトは年 9.5% で伸びる。報酬率は年 0.5% ずつ下がる。セグメント収益は 327 億ドル、営業利益は 162 億ドル、純利益は約 136 億ドル。景気後退を 1〜2 回挟んで利益は 3〜4 割落ちる年があるが、ならすと年 10%。10 年の正味の還元は 761 億ドル。
- 不動産:数量 6,032(手数料を生む運用資産(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの収益率(管理報酬+成功報酬))→ 売上 77 億ドル・営業利益 54 億ドル。残高 年 8%
- プライベート・エクイティ:数量 5,973(手数料を生む運用資産(億ドル))× 価格 0.02(残高あたりの収益率(管理報酬+成功報酬))→ 売上 119 億ドル・営業利益 73 億ドル。残高 年 9.5%
- クレジット・保険:数量 10,249(手数料を生む運用資産(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの収益率(管理報酬+成功報酬))→ 売上 106 億ドル・営業利益 64 億ドル。残高 年 12.5%
- マルチアセット(ヘッジファンド等):数量 2,220(手数料を生む運用資産(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの収益率(管理報酬+成功報酬))→ 売上 25 億ドル・営業利益 17 億ドル。残高 年 10%
倍率:純利益は GAAP の親会社帰属、自己資本は帳簿の値(分配後の自己資本は薄く、ROE は高く出る)。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 8.25%(基本 8.0%+quality +0.25%)、事業の ROE 40.8%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 24.5% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=19.7 倍が上限。利益の質(成功報酬と自己投資が市場で大きく振れる)から、上限の 9.2 割の PER 18.1 倍に置いた(検査の上限は時価総額 2679 億ドル)。
確率:2030 年前後に個人向けと保険がおおむね想定どおり伸びる。規制も大きくは変わらない。起こりやすい。
中立 30% 中立:運用資産は年 8.5%、報酬率は年 1% 下がり、ROE は 40% 利益 110 億ドル · PER 17.6 倍 · 株価時価総額 155.89 ドル1,939 億ドル
2035 年末、手数料を生む運用資産は 2.1 兆ドル(年 8.5%)。クレジット・保険が年 10.5%(保険の受託の拡大で低報酬の比率が上がる)、PE 年 8%、不動産 年 6.5%、マルチアセット 年 8.5%。PE と保険の報酬率は競争と量の効果で年 1% ずつ下がり、収益率は今の 1.42% から 1.3% 台まで下がる。セグメント収益は 271 億ドル(2025 年の 130.8 億ドルから年 7.5%)、営業利益は 131 億ドル、純利益は約 110 億ドル(2025 年の約 52 億ドルの 2.1 倍)。この間に景気後退を 2 回挟み、成功報酬が半減する年が出る。10 年の正味の還元は 706 億ドル。優良な運用会社の地位は保つが、先行者の利益は薄れる。
- 不動産:数量 5,245(手数料を生む運用資産(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの収益率(管理報酬+成功報酬))→ 売上 67 億ドル・営業利益 46 億ドル。残高 年 6.5%・報酬率は横ばい
- プライベート・エクイティ:数量 5,203(手数料を生む運用資産(億ドル))× 価格 0.02(残高あたりの収益率(管理報酬+成功報酬))→ 売上 99 億ドル・営業利益 59 億ドル。残高 年 8%・報酬率 年 −1%
- クレジット・保険:数量 8,566(手数料を生む運用資産(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの収益率(管理報酬+成功報酬))→ 売上 84 億ドル・営業利益 50 億ドル。残高 年 10.5%・報酬率 年 −1%
- マルチアセット(ヘッジファンド等):数量 1,935(手数料を生む運用資産(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの収益率(管理報酬+成功報酬))→ 売上 21 億ドル・営業利益 14 億ドル。残高 年 8.5%・報酬率 年 −1%
倍率:純利益は GAAP の親会社帰属、自己資本は帳簿の値(分配後の自己資本は薄く、ROE は高く出る)。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 8.25%(基本 8.0%+quality +0.25%)、事業の ROE 39.6%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 23.9% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=19.6 倍が上限。利益の質(成功報酬と自己投資が市場で大きく振れる)から、上限の 9.0 割の PER 17.6 倍に置いた(検査の上限は時価総額 2155 億ドル)。
確率:議論の落としどころ。流入は堅調に続くが、報酬率の低下と、個人向けの商品の解約という波があり、利益の伸びは年 7〜8% にとどまる。
やや悲観 22% やや悲観:報酬率の低下が速く、個人向けの伸びが鈍る 利益 76 億ドル · PER 17.4 倍 · 株価時価総額 106.28 ドル1,322 億ドル
2035 年末、手数料を生む運用資産は 1.6 兆ドル(年 6%)。機関投資家の交渉力が増し、PE と保険の報酬率は年 2% ずつ下がる。個人向けは BCRED の解約と私募クレジットの信用事故で伸びが鈍り、保険の取り込みはアポロと KKR に取られる。セグメント収益は 195 億ドル、営業利益は 91 億ドル、純利益は約 76 億ドル(2025 年の 1.5 倍)、ROE 32%。10 年の正味の還元は 623 億ドル。優良な運用会社から普通のオルタナティブ運用会社へ近づき、アポロ・KKR・アレスにシェアを譲る。景気後退のたびに個人向けの調達が止まり、成功報酬の年ごとの振れも大きい。
- 不動産:数量 4,339(手数料を生む運用資産(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの収益率(管理報酬+成功報酬))→ 売上 51 億ドル・営業利益 34 億ドル。残高 年 4.5%・報酬率低下
- プライベート・エクイティ:数量 4,117(手数料を生む運用資産(億ドル))× 価格 0.02(残高あたりの収益率(管理報酬+成功報酬))→ 売上 71 億ドル・営業利益 41 億ドル。残高 年 5.5%・報酬率 年 −2%
- クレジット・保険:数量 6,505(手数料を生む運用資産(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの収益率(管理報酬+成功報酬))→ 売上 59 億ドル・営業利益 34 億ドル。残高 年 7.5%・報酬率 年 −1.8%
- マルチアセット(ヘッジファンド等):数量 1,462(手数料を生む運用資産(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの収益率(管理報酬+成功報酬))→ 売上 14 億ドル・営業利益 9 億ドル。残高 年 5.5%・報酬率 年 −2%
倍率:純利益は GAAP の親会社帰属、自己資本は帳簿の値(分配後の自己資本は薄く、ROE は高く出る)。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 8.25%(基本 8.0%+quality +0.25%)、事業の ROE 36.5%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 22.4% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=19.3 倍が上限。利益の質(成功報酬と自己投資が市場で大きく振れる)から、上限の 9.0 割の PER 17.4 倍に置いた(検査の上限は時価総額 1469 億ドル)。
確率:新しい商品の報酬率の低下、個人向けの解約の頻発、アレス・アポロ・KKR への取り分の移動が重なる展開。起きても不思議はない。
悲観 14% 悲観:構造的に負ける(報酬の崩れ・信用事故・個人マネーの離反) 利益 43 億ドル · PER 11.7 倍 · 株価時価総額 40.44 ドル503 億ドル
2035 年末、私募クレジットで大きな信用事故が起き、個人向けのファンドは償還制限の連鎖で信頼を失う。永続型の資金が流出し、機関投資家は報酬率の引き下げを強く求める。手数料を生む運用資産は 1.2 兆ドル(年 3%)、収益率は 1.0% まで下がる。保険の受託は規制の強化で伸びが止まる。セグメント収益は 126 億ドル、営業利益は 52 億ドル、純利益は約 43 億ドル(2025 年を下回る)。ROE 22%。10 年の正味の還元は 527 億ドル。優秀な運用担当は競合へ移り、もう優良な運用会社ではなくなっている。
- 不動産:数量 3,406(手数料を生む運用資産(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの収益率(管理報酬+成功報酬))→ 売上 35 億ドル・営業利益 21 億ドル。残高 年 2%・報酬率が 2 割下がる
- プライベート・エクイティ:数量 3,239(手数料を生む運用資産(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの収益率(管理報酬+成功報酬))→ 売上 45 億ドル・営業利益 23 億ドル。残高 年 3%・報酬率が 3 割以上下がる
- クレジット・保険:数量 4,672(手数料を生む運用資産(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの収益率(管理報酬+成功報酬))→ 売上 38 億ドル・営業利益 19 億ドル。残高 年 4%・信用事故後の報酬の崩れ
- マルチアセット(ヘッジファンド等):数量 1,043(手数料を生む運用資産(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの収益率(管理報酬+成功報酬))→ 売上 8 億ドル・営業利益 5 億ドル。残高 年 2%・報酬率が 3 割以上下がる
倍率:純利益は GAAP の親会社帰属、自己資本は帳簿の値(分配後の自己資本は薄く、ROE は高く出る)。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 8.25%(基本 8.0%+quality +0.25%)、事業の ROE 32.3%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 20.3% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=18.9 倍が上限。悲観は成功報酬が消え、報酬率が 1.0% まで下がる構造的な負けで、利益の質(成功報酬と個人マネーの離反)から、上限の 6.2 割の PER 11.7 倍に置いた(検査の上限は時価総額 812 億ドル)。
確率:私募クレジットの大きな信用事故、個人向けの償還制限の再発、報酬率の崩れ、規制の強化が重なる確率を 1 割強と置く。2008 年の再現ではなく構造的な負け。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
不動産
私募ファンドと個人向け BREIT などの不動産運用。管理報酬と成功報酬。
| 数量手数料を生む運用資産(億ドル) | 価格残高あたりの収益率(管理報酬+成功報酬) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,794 | 0.01 | 36 | 24 |
| 10 年後 中立 | 5,245 | 0.01 | 67 | 46 |
取り方:2025 年末の手数料を生む運用資産 2,794 億ドルで、セグメント収益 35.5 億ドル(管理報酬 27.8+手数料関連成功報酬 4.9+実現成功報酬 2.7)を割った率 1.27%。営業利益はセグメントの分配可能利益 23.6 億ドル(利益率 66%)。価格は残高に対する率で、残高自体が名目なので物価で掛けない(理由は anchoring_check)。
プライベート・エクイティ
バイアウト、成長投資、インフラ、生命科学、アジア、個人向け BXPE など。成功報酬が大きい。
| 数量手数料を生む運用資産(億ドル) | 価格残高あたりの収益率(管理報酬+成功報酬) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,410 | 0.02 | 51 | 29 |
| 10 年後 中立 | 5,203 | 0.02 | 99 | 59 |
取り方:2025 年末の手数料を生む運用資産 2,410 億ドルで、セグメント収益 50.6 億ドル(管理報酬 27.7+手数料関連成功報酬 5.5+実現成功報酬 16.7)を割った率 2.10%。営業利益は分配可能利益 29.1 億ドル(利益率 58%)。成功報酬が収益の 3 分の 1 を占め、年ごとの振れが大きい。
クレジット・保険
保険会社の資産を運用する受託、私募のダイレクトレンディング、個人向け BCRED。
| 数量手数料を生む運用資産(億ドル) | 価格残高あたりの収益率(管理報酬+成功報酬) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,156 | 0.01 | 34 | 20 |
| 10 年後 中立 | 8,566 | 0.01 | 84 | 50 |
取り方:2025 年末の手数料を生む運用資産 3,156 億ドルで、セグメント収益 34.4 億ドル(管理報酬 19.3+手数料関連成功報酬 7.9+実現成功報酬 3.9)を割った率 1.09%。営業利益は分配可能利益 19.6 億ドル(利益率 57%)。保険の受託は低報酬で量が大きい。
マルチアセット(ヘッジファンド等)
ヘッジファンドに投資する運用(BXMA)と、新しい永続型のヘッジファンド商品。
| 数量手数料を生む運用資産(億ドル) | 価格残高あたりの収益率(管理報酬+成功報酬) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 856 | 0.01 | 10 | 7 |
| 10 年後 中立 | 1,935 | 0.01 | 21 | 14 |
取り方:2025 年末の手数料を生む運用資産 856 億ドルで、セグメント収益 10.3 億ドル(管理報酬 5.3+実現成功報酬 4.9)を割った率 1.20%。営業利益は分配可能利益 6.6 億ドル(利益率 64%)。
リスクと懸念
個人向けの長期型ファンドの解約
BCRED は 2026 年 1〜3 月期に 7.9% の解約請求に全額応じ、4〜6 月期は約 10% の請求に 5% の上限をかけた。個人向けの運用資産は 3,240 億ドルで、解約が重なると調達が止まり、報酬率の高い収益が欠ける。2022 年の BREIT の制限は不動産収益を 3 年減らした。
成功報酬の振れ
成功報酬は出口の市場に左右され、2025 年の実現成功報酬は 28 億ドル、2026 年 4〜6 月期だけで 7.3 億ドル。山の年の利益をそのまま続くものとして値付けすると高くつく。悲観の年は半分以下に落ちるため、利益は数年の平均で見る必要がある。
私募クレジットの信用事故
2025 年のファースト・ブランズ破綻のような事故が運用資産で起きれば、評判と報酬の両方が傷つく。延滞率はまだ低い(1.76%)が、金利 5% が続く世界では借り手の返済負担が重い。保険の受託の一般勘定にも損失が及びうる。
報酬率の低下
2026 年組成のバイアウトファンドの平均報酬率は過去最低で、機関投資家は交渉力を持つ。保険の受託は低報酬で量が大きく、比率が上がると収益率が下がる。AI による運用費用の低下も報酬を押し下げ、機関投資家向けの交渉でさらに不利になりうる。
他社との競争
アポロ(総運用資産 約 1.05 兆ドル)・KKR(手数料関連利益 37% 増)・アレス(調達 過去最高)・ブルックフィールドは、保険や個人向けを軸に急成長している。ブラックストーンの総運用資産の伸び(11%)はこれらを下回り、シェアは少しずつ下がりうる。
株式報酬と見かけの分配
分配可能利益は株式報酬を足し戻した値で、GAAP の純利益より 3 割ほど大きい。株式報酬は年 10 億ドル超で、見かけの分配(直近 12 か月 69 億ドル)から引いた正味の還元はそれより小さい。普通株と単位の持ち主の分配を合わせた総額で見る必要がある。
経営の継承
創業者のスティーブン・シュワルツマン(1947 年生まれ)と社長のジョン・グレイの二人体制で、将来の継承は長期の論点になる。資本配分の規律と、個人向け・保険という新しい柱の経営が引き継がれるかが問われる。
今後の分かれ目
- BCRED の解約請求が 5% 未満に戻り、BXPE・BXINFRA の流入が続いたら
- 個人向けの流れが確認でき、楽観・やや楽観の確率を上げる。PER を 1 倍ほど上げて見る。
- BCRED の請求が 10% 前後で続き、BREIT・BXPE にも制限が広がったら
- 個人向けの流入が止まり、やや悲観・悲観の確率を上げる。収益の高い商品の比率が下がる。
- PE と不動産の出口(売却・上場)が年 2 割以上増えたら
- 成功報酬が戻り、10 年の中立の純利益を上げて見る。ただし山と見て倍率は上げない。
- 私募クレジットで大きな信用事故が出たら
- 悲観の確率を上げる。個人向けと保険の受託の両方に波及しうる。
- 新しい PE ファンドの平均報酬率が 1.4% を下回って続いたら
- 10 年後の収益率を下げ、やや悲観の確率を上げる。
- シュワルツマン氏の引退や社長の交代など、経営体制が変わったら
- 資本配分の規律の確信度に反映する。方針の継続が確認できれば確率は動かさない。
見ておくもの
- 手数料を生む運用資産の伸びと永続資本の比率(48%)
- 個人向け商品(BCRED・BREIT・BXPE・BXINFRA)の流入と解約請求
- 実現成功報酬と純実現益(出口の市場)
- クレジット・保険の運用資産と保険の受託の伸び
- 私募クレジットの延滞率と信用事故
- 新しい PE ファンドの報酬率
- 株式報酬と正味の還元(普通株と単位の合計)
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額(会社全体 1,325 億ドル、会社全体の GAAP の PER 約 22 倍)を見る前に、4 つの塊の手数料を生む運用資産 × 収益率から利益を積み上げ、ROE・g・k から利益ベースの正当化 PER を出した。倍率は利益ベース(k 8.25%・g 4.0%・ROE 40%・RONIC 23.9% の正当化 PER 19.6 倍の 9 割、中立の 10 年後 17.6 倍)。業界ノートの倍率の目安(全利益の PER 15〜20 倍・k 12〜13%)は古いので使わず、k は基本 8.0% に quality +0.25% を足した 8.25% とした。株数は普通株だけでなく交換できる単位を含む 12.4 億で、純利益も会社全体に直した(Inc 帰属 30.2 億ドル ÷ 経済的な持ち分約 58% = 約 52 億ドル。推定で、数 % の誤差を含む)。分配可能利益や調整後の数字は使わず、GAAP(株式報酬は費用)で置いた。価格は運用資産に対する収益率で、残高が名目で物価を含むため物価で掛けていない。利払いの変化(−1〜−2 億ドル)は純負債が小さく、他の誤差に埋もれる。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 5% + β 1.36 × 5%。k = 基本 8.0% + quality +0.25% = 8.25%。業界で最も強い堀(規模・ブランド・顧客基盤)で下げ幅は −0.5% までのところ、成功報酬の大きな振れの上乗せを小さな値引きで相殺した。保険(持ち株)が薄く利益が運用手数料中心で、アポロ・KKR(9.0%)より低く置く。
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読んだ資料
- Blackstone Reports Second Quarter 2026 Results(8-K)
- Blackstone Reports Fourth Quarter and Full Year 2025 Results(8-K)
- Blackstone Form 10-Q(2026-06-30)
- Blackstone Q2 2026 決算説明会の要約(Investing.com)
- Blackstone limits withdrawals from BCRED(Bloomberg 2026-06-04)
- Blackstone restricts flagship fund withdrawals(CNBC 2026-06-04)
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