結論
リフトは、北米の配車を中心に、欧州のタクシー、法人送迎、自転車の共同利用をつなぐ交通仲介会社である。筆者は、利用者の増加と収益改善を認めながらも、今の値段はやや割高と見る。最大の理由は、10年後に乗客と車両の間に立つ仲介業者が、どれだけの手数料を残せるか読みにくいことである。
2025年の売上は63.2億ドル、営業損失は1.7億ドルだった。純利益28.4億ドルには約29億ドルの一時的な税効果が含まれ、継続的な稼ぐ力を表していない。2026年4〜6月期は売上18.4億ドル、営業利益約0.48億ドル、純利益約0.50億ドルへ改善した。乗車回数は前年同期比12%増、取扱高は23%増である。成長そのものは本物だが、売上が伸びても利益が十分残るかが次の課題だ。
2025年にフリーナウとTBRを買収し、2026年には英国のゲット事業も取り込んだ。2026年9月には、ナッシュビルでウェイモの自動運転車をリフトのアプリから手配できるようになった。協業の道は開けたが、ウェイモは自社アプリも持ち、乗客との接点を全面的に譲る理由はない。自動運転車の所有者が優位になると、リフトの取り分は削られる。
中立では2035年の売上を約119億ドル、営業利益を約9億ドル、純利益を約7億ドルと見る。10年後の時価総額は77億ドルになるが、株主還元と資本コストを含めた現在の本質価値は、確率加重で約49億ドルにとどまる。現在の時価総額約64億ドルとの差は約マイナス23%で、判定はやや割高である。北米の市場支配力がウーバーより弱く、事業の転換も始まったばかりなので、悲観側を厚く見た。配車という需要は残る。しかし、需要が残ることと、その利益が今の株主に十分帰属することは別の問題である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、リフトを持つ理由は10年後も人が都市を移動するからではない。その移動を手配する役割がリフトに残り、十分な利益が株主のものになると信じられるかである。乗車の需要はなくならないだろう。だが、今の事業の形が10年後も同じである保証はない。
リフトの二面市場には価値がある。乗客と運転手を集め、都市の規制に対応し、保険と決済をまとめる仕組みは簡単には作れない。反面、乗客はアプリを使い分け、運転手も複数社で働ける。ウーバーの大きな網に対して、リフトが値上げを続けられる証拠は弱い。これを強い独占のように評価するのは危険だ。
オーナー利益にも見かけの問題がある。2025年の純利益には約29億ドルの税効果があり、自由キャッシュフローには株式報酬や保険の運転資金の影響がある。税効果を除くと、まだ高い利益率を安定して稼ぐ企業ではない。長期で大切なのは、保険、開発、車両管理に必要な資金を支払った後で、どれだけの現金を継続して還元できるかである。
2025年末の自己資本が厚く見えることも安全域の根拠にはしない。その多くは将来の課税所得がなければ使えない税資産である。純現金も保険関連の預託資金と混同できない。悲観の床は、売れる資産と使える現金に絞る必要がある。
経営は買収によって地理的な弱さを補い、自社株買いによって希薄化の抑制を進めている。その方向は理解できるが、実績の評価にはまだ時間が要る。筆者なら、ウーバーとの規模の差と自動運転の主導権の不確かさに対して、かなり厚い安全域を求める。事業が大きく成長しても、必要な再投資と手数料の低下が利益を食えば、株主が受け取る価値は期待ほど増えないからである。
何で稼ぐ会社か
リフトの本業は、乗客と運転手を結びつける市場の運営である。乗客が支払った運賃のうち、運転手への支払いなどを除いた手数料が主な収入になる。運賃は時間帯、距離、運転手の供給、混雑によって変わり、乗車が増えるほど手数料収入も増える。2025年の取扱高185億ドルに対し、会計上の売上は63億ドルだった。売上には運転手向け車両賃貸なども含まれるため、この比率をすべて純粋な仲介手数料率と見ることはできない。
北米では通常の配車に加え、空港、通勤、医療機関向け送迎、企業の出張などを扱う。リフト・ピンクなどの会員制度、ドアダッシュや航空会社との提携、広告も乗車の機会を増やす。2026年4〜6月期には北米の配車の約30%が何らかの提携と結びついていた。利用者が増えれば運転手も集まりやすくなり、待ち時間が短くなる。ただし、運転手はウーバーにも登録でき、乗客も複数のアプリで運賃を比較できる。
2025年7月に買収したフリーナウは、欧州9か国のタクシーを中心とする配車基盤である。ロンドン、パリ、ベルリンなどで既存のタクシー事業者と組み、北米とは異なる許認可と営業の仕組みを持つ。2026年にはゲットの英国事業も買収し、ロンドンの法人向けタクシー配車を強化した。同年9月にはリフトのアプリが欧州でも使えるようになり、北米の旅行客を現地の運転手につなぐ仕組みが動き始めた。
残る事業には、シティバイクなどの自転車共同利用、スクーター、運転手向け車両賃貸、広告、法人向け高級送迎がある。2025年10月に取得したTBRの送迎網は、2027年からアルコーブというブランドで展開する予定だ。これらは配車の利用者を広げるが、車両の維持、保険、法人向けサービスの人手が必要で、すべてが軽い資本で稼げるわけではない。
会社は会計上、事業全体を単一の報告セグメントとしている。そのため、以下の北米配車、欧州タクシー、都市型交通・その他という区分は投資分析上の区分であり、会社が開示する部門別売上ではない。北米の乗車回数、買収後の欧州事業の稼働期間、自転車の利用実績を手掛かりに推定し、全社の開示値と突き合わせている。
優良さと弱いところ
リフトの堀、つまり競合が簡単にはまねできない強みは、都市ごとに形成した乗客と運転手の網にある。十分な運転手がいると待ち時間が短くなり、乗客が増えて運転手の稼働率も上がる。地図、決済、本人確認、保険、行政対応まで一体で運営するには規模が必要だ。医療機関や企業の送迎を引き受けるには信頼性も求められる。こうした仕組みには実際の価値がある。
しかし、その堀は広くない。米国ではウーバーが先行し、2024年3月のカード決済観測データでは配車支出の約76%を占めた。リフトは残り約24%である。これは乗車件数の正確なシェアではないが、規模の差は明らかだ。利用者が他社へ乗り換える費用はほぼなく、割引と待ち時間で選ばれやすい。値上げしても客が残る力は弱く、2025年の成長にも運転手への供給投資や販促の改善が寄与している。
資本効率は改善の途中にある。2024年の営業損失は約0.8億ドル、2025年は約1.7億ドルで、まだ通年の営業黒字を確立していない。2026年4〜6月期には黒字になったが、販売促進費は前年同期から大きく増えた。2025年の自由キャッシュフロー11.2億ドルは魅力的に見える。ただし、株式報酬約3.2億ドルと保険債務などの運転資金変動があり、その全額を毎年株主に渡せる利益とは考えない。
自己資本にも注意が必要だ。2025年末の32.7億ドルの大部分は、税務上の損失を将来の利益と相殺できる繰延税金資産によって支えられている。2026年6月末にも約28.8億ドルの税資産があるが、これは売却して現金にできる資産ではない。保険用に拘束された資金も通常の余剰現金ではない。
リフトは、客を乗せる実物の輸送を仲介する事業であり、人月販売や席課金の業務ソフトではない。したがって、AIエージェント代替の定型的な縮小モデルの直接対象ではない。ただし、予約の入口をAIが束ねる可能性はある。より重大なのは自動運転会社が車両と顧客の両方を握ることで、こちらは堀の寿命と悲観の筋書きに織り込む。総合評価は弱い堀である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の配車市場は、タクシーからアプリ配車への移行と、都市内の移動を自家用車から切り替える需要によって伸びてきた。空港、飲食、通勤、旅行、夜間の移動が中心である。自動車の所有費用や駐車場代が上がれば、利用回数を押し上げる可能性がある。一方、移動そのものは人口と景気に制約され、過去の2桁成長がいつまでも続くわけではない。
北米の主な競争相手はウーバーである。配車支出の観測シェアはウーバー約76%、リフト約24%で、ウーバーは配達事業も持つ。ウーバーは配車と配達の需要を運転手の網に重ね、より広い利用機会を提供できる。リフトは配車への集中でサービス改善を進めるが、規模と利用頻度では不利だ。2035年までの北米の配車乗車回数は、実質で現在の約1.65倍まで伸びる中立を考える。ただし、リフトのシェアは自動運転の直接配車とウーバーの競争で約24%から21%程度へ下がると見る。
欧州では、ウーバー、ボルト、地元タクシー会社の配車網が競争する。国や都市ごとにタクシーの許認可、運賃、運転手の雇用制度が違い、北米のモデルをそのまま持ち込めない。フリーナウには現地のタクシー事業者との関係があるが、統一された欧州全域の市場シェアは開示されていない。長期ではタクシーのデジタル予約の普及と旅行者の利用増が数量を支える。欧州の乗車回数は2025年の買収後5か月だけを起点にしているため、10年の倍率は見かけほど持続的な高成長を意味しない。
業界最大の転換は自動運転である。ウェイモは自社アプリで直接配車する一方、2026年9月にはナッシュビルでリフトとの共同配車を始めた。リフトはバイドゥの自動運転技術を欧州で導入する計画も進める。自動運転車が増えれば運転手不足が和らぎ、移動価格が下がって市場の乗車回数は増えうる。しかし、車両の所有者が自社アプリへ乗客を集めれば、仲介業者の取り分は小さくなる。
2035年の中立では、運賃の名目上昇は物価年3.5%を基本とする。その一部を仲介手数料率の低下が相殺する。数量の伸びだけでは利益は決まらず、保険料、販促費、車両運営費を引いてどれだけ残るかが大切だ。10年後のリフトは、今より大きな交通網になっている可能性が高い。ただし、ウーバーと自動運転会社に対して値決めの主導権を持つとは限らない。
資本政策と M&A
リフトの資本配分は、長年の赤字と株式報酬による希薄化から、買収と自社株買いを併用する段階へ移った。2025年にはフリーナウを約2.37億ドルで買収し、TBRを約1.15億ドルで取得した。2026年4〜6月期にはゲットの英国事業の取得を完了している。いずれも成立済みなので、2035年の事業の筋書きに含めた。未成立の大型買収を上乗せすることはしていない。
フリーナウの価値は、欧州のタクシーの許認可と営業網を得たことにある。TBRは高級送迎で法人顧客を獲得するための投資である。2026年10月に発表したアルコーブは、TBRを2027年から新ブランドにする構想であり、別の買収ではない。両事業とも成長余地はあるが、買収価格に見合う増分の利益をまだ実証していない。買収で生じたのれんや無形資産は、成長に失敗すれば減損が必要になる。
2025年の自社株買いは5.4億ドルで、株式報酬約3.2億ドルを引いた実質的な還元は約2.2億ドルだった。取締役会は2025年に計7.5億ドルの買い戻しを承認し、2026年2月にさらに10億ドルの枠を追加した。2026年上期の買い戻しは4.0億ドルで、6月末の2026年枠の残額は8.5億ドルである。配当実績はなく、配当額の約束もない。今後も還元の中心は自社株買いだが、枠の承認は実行義務ではない。
会社の2027年目標は、2024年からの取扱高の年平均成長約15%、取扱高に対する調整後EBITDA利益率約4%、FCF転換率90%超である。2026年7〜9月期の取扱高見通しは55.0〜56.7億ドル、調整後EBITDAは1.83〜2.03億ドルだった。9月末時点でこの見通しは維持された。GAAP営業利益と株式報酬後の実質還元について、同じ水準の長期保証はない。
2026年9月にはカリフォルニア州で、過去の運転手の雇用区分を巡る紛争について総額2.725億ドルの和解に合意した。裁判所の承認が必要で、2025年に既に2.1億ドルを引き当てているため、全額を新たな費用として二重計上しない。なお、かつて創業者に20議決権を与えていたB株は2025年に全株A株へ転換されており、現在はこの特別議決権による支配構造が解消している。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
リフトの最大の強みは、既に日常的に使われる配車網を持ち、乗客の移動という大きな市場に立っていることだ。2025年の乗車回数は約9.46億回に達し、2026年4〜6月期も前年同期比12%増だった。取扱高の伸びはさらに速く、利用者は3,000万人を超えた。運転手への補助金を減らしながら乗車回数を増やせれば、固定費の負担は薄まり、利益は売上以上に伸びる。2026年の営業黒字化は、この方向へ進み始めた証拠である。
北米ではウーバーに続く大きな独立系の配車網として、乗客にも運転手にも選択肢を与える価値がある。特定の企業だけが市場を握ることを避けたい自治体や企業にとっても、リフトを残す理由がある。ドアダッシュなどとの提携は、自社で配達網を作らずに利用者の接点を増やせる。空港や通勤に加え、医療送迎と法人契約を深めれば、乗車の頻度も上がる。
欧州の買収は事業の構造を変えうる。フリーナウはタクシーの既存の許認可と関係を持ち、ゲットはロンドンの法人需要に強い。リフトのアプリを欧州でも使えるようにすれば、北米の旅行者を新しい乗客として取り込める。アルコーブは高級送迎の利益を積み増す可能性がある。買収によって需要の入口が世界へ広がり、北米への依存が薄まる。
自動運転も必ずしも敵ではない。ウェイモとのナッシュビルでの協業は、リフトが自動運転車の手配と運営を担える実例である。バイドゥとの欧州計画も進めば、複数メーカーの車両を束ねる中立的な市場になれる。車両を自社で大量に買わず、需要と運営サービスから利益を得られれば、資本効率は改善する。2035年には売上が現在の3倍程度になり、営業利益率が2桁に達する余地がある。利益の拡大と株式報酬を上回る買い戻しが続けば、株主が受け取る価値は大きい。
慎重な見方
リフトはまだ、株主が10年安心して保有できる利益構造を証明していない。2025年は63億ドルを売り上げても営業赤字で、純利益の大半は税務上の一時益だった。2026年の利益改善は歓迎できるが、その利益は販促費、保険料、運転手への支払いによって簡単に削られる。2026年4〜6月期には販売促進費が前年同期から大きく増えた。成長を維持するために値引きが必要なら、利用者数だけでは堀の強さを証明できない。
ウーバーとの規模の差は構造的である。ウーバーは配車と配達を組み合わせ、利用者がアプリを開く回数を増やせる。リフトには同じ頻度の接点がない。乗客は複数のアプリを比較し、運転手も複数社へ移れるため、価格を自分だけで決める力は弱い。乗車回数を増やしても、補助金を使って奪った需要では十分な増分利益を残せない。
自動運転が普及すれば、競争の相手そのものが変わる。ウェイモやテスラが車両と顧客を自社で握れば、リフトに払う手数料は交渉で圧縮される。ウェイモがナッシュビルで協業していることは事実だが、自社アプリを同時に運営している。協業先が10年後も十分な手数料を払うとは限らない。リフトが車両の整備、充電、清掃、待機場まで引き受けるなら、従来の軽い仲介業から設備と運営費を持つ事業へ近づいてしまう。
欧州進出も万能ではない。国ごとに異なる規制、地元タクシーとの交渉、ウーバーやボルトとの競争があり、買収後の利益率はまだ確かめられていない。法人送迎は人手と品質管理が必要で、通常の配車より簡単に規模の利益が出るとは限らない。さらに運転手の雇用区分や保険の負担は、法改正と裁判の影響を受ける。
2025年末の自己資本の大半が税資産であることも厳しい。利益が出なければ、税資産を使えず減損する。現金の一部は保険のために拘束され、自由に買い戻しへ回せない。長年の赤字、株式報酬、2022年の大きな株価下落を振り返ると、成長よりも株主への取り分を慎重に見なければならない。
どちらに重みを置いたか
乗車の需要拡大と2026年の営業改善は、強気の見方を支える。しかし、ウーバーとの規模の差と自動運転による手数料の圧縮は、10年後の利益の質を大きく左右する。過去の通年営業赤字と税効果による純利益の歪みも、予測の確信度を下げる。
そこで楽観とやや楽観を合わせて28%、中立を32%、やや悲観と悲観を合わせて40%とし、下側を厚くした。競合のウーバーよりも、規模と事業の分散が弱い分だけ慎重である。現在の利益を一時益なしで測り、正当化PERと売れる資産の床で評価すると、本質価値は約49億ドルになる。現在の時価総額約64億ドルとの差はマイナス23%で、結論はやや割高である。楽観の利益率は魅力的だが、その実現には自動運転との共存と価格競争の沈静化という複数の条件が必要になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 23.99 ドル91 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 4.46 ドル17 億ドル)。 今の値に割り戻すと 13.03 ドル50 億ドル、今との差 −19.4%、 期待の年率 +6.4%(資本コスト 9.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 84.88 ドル323 億ドル | 13.15 ドル50 億ドル | +506.6% | +22.3% | 7.84 ドル30 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 45.12 ドル172 億ドル | 8.41 ドル32 億ドル | +231.3% | +14.3% | 10.71 ドル41 億ドル |
| 中立 | 32% | 20.27 ドル77 億ドル | 4.47 ドル17 億ドル | +53.1% | +4.8% | 7.92 ドル30 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 5.61 ドル21 億ドル | 1.58 ドル6 億ドル | −55.5% | −8.5% | 1.73 ドル7 億ドル |
| 悲観 | 16% | 2.15 ドル8 億ドル | −0.53 ドル−2 億ドル | −89.9% | −19.0% | 0.26 ドル1 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 23.99 ドル91 億ドル | 4.46 ドル17 億ドル | +76.1% | +6.4% | 28.45 ドル108 億ドル |
今の株価時価総額 16.16 ドル61 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 楽観:自動運転の需要を取り込み、世界的な配車網として利益率が大きく上がる 利益 23 億ドル · PER 14.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 84.88 ドル323 億ドル
北米では配車市場の乗車回数が実質で約2.0倍に伸び、リフトのシェアは23%前後を保つ。会社の北米乗車は年間16.2億回になる。名目運賃は物価に沿って上がり、車両の供給者に仲介手数料を奪われずに済む。ウェイモやバイドゥなどの自動運転車を自社の配車網で扱い、車両の保有リスクの大半を提携先に残せる。乗客と運転手の網が自動運転車にも広がる。
フリーナウとゲットの統合は成功し、欧州の乗車が大きく増える。北米の旅行者も共通のアプリを使い、欧州の都市間で利用頻度が上がる。アルコーブは法人向け高級送迎で利益を積み増す。都市型交通の車両維持費も利用増で吸収される。買収済み事業の拡大によって、欧州と法人向けが北米の価格競争を補う。
2035年の売上は194億ドル、営業利益は約29億ドル、純利益は22.7億ドルになる。10年の純利益累計は111.4億ドルで、2026年の約1.2億ドルから2034年の約21億ドルを経て2035年へ伸びる。株式報酬を差し引いた正味の株主還元は50億ドルとし、残りは成長と現金の蓄積に回す。自己資本は91.6億ドルになる。高い利益率が確立しても、10年より先は市場が成熟し、成長率は長期の名目4%へ落ち着く。
- 北米配車・法人向け配車:数量 16.2(北米の年間配車回数(億回。会社の実績から推定。2025年は8.30億回))× 価格 10(1乗車当たりの会計上の売上(ドル/回。運賃総額ではなく、手数料・関連収入の合計))→ 売上 165 億ドル・営業利益 30 億ドル。北米の市場乗車回数は実質約2.03倍、シェアは約23%。物価上昇をおおむね売上単価へ転嫁し、自動運転の仲介手数料も維持する。
- 欧州タクシー・フリーナウ・ゲット:数量 4.8(欧州の年間配車回数(億回。2025年は買収後5か月の連結期間のみ))× 価格 4.20(1乗車当たりの仲介売上(ドル/回))→ 売上 20 億ドル・営業利益 3 億ドル。フリーナウとゲットの既存事業が成長し、北米旅行者との相互送客が成功。2025年の数量は5か月分なので、伸びの一部は連結期間の差である。
- 都市型交通・車両サービス・法人高級送迎:数量 1.7(年間利用回数の換算値(億回。自転車・スクーターの実利用を中心とし、車両賃貸・広告・法人契約の収入を利用回数に換算))× 価格 5.40(1利用回数当たりの換算売上(ドル/回。法人・広告の収入を含むため純粋な乗車単価ではない))→ 売上 9 億ドル・営業利益 1 億ドル。都市型交通の利用増に加え、アルコーブの法人送迎と広告の単価が上がり、設備費を十分に吸収する。
倍率:資本コストkは9.0%。2035年のROEは22.7÷91.6=24.8%。堀はweakなので残存割合1/3を使い、RONIC=9.0%+1/3×(24.8%−9.0%)=14.3%。長期gは市場の実質数量成長約2%、シェアの維持、名目価格上昇3.5%から導き、上限の4.0%とした。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)×(1+g)=約15.0倍。実績のない高利益率が続く不確かさを残し、上限の95%で14.22倍とした。GAAP純利益を使い、株式報酬や買収償却を倍率で足し戻さない。
確率:北米のシェアを大きく失わず、欧州の買収が成功し、ウェイモなどの自動運転車を束ねる市場として取り分を維持できる展開。既存の提携と2026年の成長は根拠になるが、複数の条件が必要なので8%とする。
やや楽観 20% やや楽観:北米の成長が続き、欧州と法人向け事業が安定した利益を生む 利益 14 億ドル · PER 12.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 45.12 ドル172 億ドル
北米の配車市場は実質で約1.75倍となり、リフトのシェアは23%前後にとどまる。ウーバーとの競争は続くが、空港、通勤、医療送迎で乗車が増える。自動運転車は主要都市に広がり、一部の乗客はウェイモなどの自社アプリへ流れる。それでもリフトは複数の自動運転会社と提携し、乗車と車両管理の一部を引き受ける。名目運賃は上がるが、仲介手数料の一部を譲るため、売上単価の伸びは物価をやや下回る。
欧州ではフリーナウの既存の許認可とタクシー網が強みになり、ゲットの法人顧客を取り込む。アルコーブも高級送迎の契約を広げるが、通常の配車ほど利益率が高くなるわけではない。買収に伴う償却や統合費用を吸収し、全社として安定した黒字を確立する。
2035年の売上は157.5億ドル、営業利益は17.5億ドル、純利益は13.5億ドルになる。10年の純利益累計は69.5億ドルで、2026年の約1.2億ドルから2034年の約12.4億ドルを経て伸びる。買い戻しは続くが、株式報酬を控除した正味の還元は32億ドルとする。自己資本は67.7億ドルに増える。増分の利益が資本コストを上回る状態が続き、10年後も成長事業としての価値を維持する。
- 北米配車・法人向け配車:数量 14.0(北米の年間配車回数(億回。会社の実績から推定。2025年は8.30億回))× 価格 9.60(1乗車当たりの会計上の売上(ドル/回。運賃総額ではなく、手数料・関連収入の合計))→ 売上 134 億ドル・営業利益 19 億ドル。市場実質約1.75倍、シェア約23%。自動運転の普及で取り分は少し減るが、需要の増加で固定費を吸収する。
- 欧州タクシー・フリーナウ・ゲット:数量 4.0(欧州の年間配車回数(億回。2025年は買収後5か月の連結期間のみ))× 価格 3.90(1乗車当たりの仲介売上(ドル/回))→ 売上 16 億ドル・営業利益 2 億ドル。欧州のタクシー予約が増え、フリーナウとゲットの統合が進む。会社が運賃を自由に上げられないため単価は楽観より低い。
- 都市型交通・車両サービス・法人高級送迎:数量 1.5(年間利用回数の換算値(億回。自転車・スクーターの実利用を中心とし、車両賃貸・広告・法人契約の収入を利用回数に換算))× 価格 5.00(1利用回数当たりの換算売上(ドル/回。法人・広告の収入を含むため純粋な乗車単価ではない))→ 売上 8 億ドル・営業利益 1 億ドル。アルコーブの法人契約と自転車利用が増え、広告も補助的な利益を生む。
倍率:ROE=13.5÷67.7=19.9%。kは9.0%、moatはweakで残存割合は1/3、RONICは12.6%。10年後のgは市場数量の実質成長約2%にシェアの小幅低下と価格の名目上昇を合わせて3.8%。正当化PERの上限は約14.0倍となる。自動運転との協業で利益を確保するが、値決め力は依然として弱いため上限の91%、12.71倍とした。GAAP純利益を基準とし、株式報酬の費用を戻さない。
確率:2026年の配車回数と取扱高の成長、欧州進出、法人との提携の実績を評価する。ただし自動運転で現在の手数料率が完全に維持されるとは考えず、楽観より実現性の高い20%とした。
中立 32% 中立:配車の数量は増えるが、手数料率は薄まり、利益率は緩やかに改善する 利益 7 億ドル · PER 11.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 20.27 ドル77 億ドル
北米の市場乗車回数は2035年までに実質約1.65倍となる。リフトのシェアは約24%から21%へ下がり、会社の北米乗車回数は年間12億回になる。ウェイモとテスラが自社アプリから乗客を獲得するため、リフトはすべての成長を取り込めない。運賃の名目上昇は続くが、車両の供給者や運転手に渡す取り分が増える。北米の1乗車当たり売上は、物価上昇率を下回る伸びにとどまる。
欧州ではフリーナウとゲットの既存タクシー網を使って成長する。2025年は買収後の短い連結期間だったため、利用回数の増加は大きく見えるが、成熟した欧州のタクシー市場で無制限にシェアを取れるとは考えない。都市型交通と法人送迎も伸びるが、車両の保守やサービス品質の費用が残る。
2035年の売上は118.8億ドル、営業利益は9.1億ドル、純利益は6.9億ドルになる。営業利益率は約7.6%で、2025年の赤字から大きく改善する。2026年に始まったGAAP黒字化を定着させ、開発費、保険料、販促費を売上より遅い速度で増やせることが必要だ。10年の純利益累計は37.1億ドルで、正味の株主還元は17億ドルとする。残る利益が自己資本を増やし、2035年には50.3億ドルになる。長期の成長率は市場の実質成長と仲介手数料の低下を合わせて名目3.2%へ落ち着く。
- 北米配車・法人向け配車:数量 12.0(北米の年間配車回数(億回。会社の実績から推定。2025年は8.30億回))× 価格 8.60(1乗車当たりの会計上の売上(ドル/回。運賃総額ではなく、手数料・関連収入の合計))→ 売上 103 億ドル・営業利益 12 億ドル。市場の乗車回数は実質1.65倍、シェアは24%から21%へ低下。物価10年1.41倍に対し売上単価は1.19倍で、仲介の取り分低下を反映する。
- 欧州タクシー・フリーナウ・ゲット:数量 3.1(欧州の年間配車回数(億回。2025年は買収後5か月の連結期間のみ))× 価格 3.25(1乗車当たりの仲介売上(ドル/回))→ 売上 10 億ドル・営業利益 1 億ドル。フリーナウの連結期間が通年化し、ゲットの法人需要が上積みされる。ただしウーバーやボルトとの競争で単価の上昇は抑えられる。
- 都市型交通・車両サービス・法人高級送迎:数量 1.2(年間利用回数の換算値(億回。自転車・スクーターの実利用を中心とし、車両賃貸・広告・法人契約の収入を利用回数に換算))× 価格 4.50(1利用回数当たりの換算売上(ドル/回。法人・広告の収入を含むため純粋な乗車単価ではない))→ 売上 5 億ドル・営業利益 0 億ドル。自転車・スクーター利用と法人高級送迎が増えるが、車両更新と高品質な運営費が残る。
倍率:ROE=6.9÷50.3=13.7%。k9.0%、moat weakの残存割合1/3からRONIC=10.6%。長期gは北米市場の実質数量成長約1.8%、リフトのシェア低下年約1%、物価による名目単価上昇約3.5%、仲介手数料低下年約1%を合わせて約3.2%とした。ROEからgを逆算していない。正当化PER上限は(1−0.032÷0.106)÷(0.09−0.032)×1.032=約12.4倍。営業利益の実績がまだ短く、自動運転の取り分が読みにくいため、その90%の11.17倍とした。GAAP純利益を使い、株式報酬は費用として残す。
確率:北米の配車市場が成長し、2026年の営業改善も続く一方、ウーバーと自動運転会社との競争で取り分は低下する。欧州の買収を過大評価せず、営業利益率が徐々に改善する展開を中心の32%とした。
やや悲観 24% やや悲観:自動運転会社に取り分を譲り、成長しても利益が薄い 利益 2 億ドル · PER 8.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5.61 ドル21 億ドル
ウェイモ、テスラなどが主要都市で自社アプリを広げる。リフトは運転手の配車網を維持するが、乗客の獲得でウーバーに遅れる。北米の市場は実質で約1.52倍になるものの、リフトのシェアは18.5%へ下がる。自動運転車の運営を受託しても、車両の所有者が価格交渉を主導する。乗車回数は現在より増えるが、名目の売上単価はほぼ横ばいになる。
欧州のフリーナウとゲットは利益を生むものの、当初期待した市場シェアを取れない。ウーバー、ボルト、既存タクシー会社の競争で販促費が必要になる。アルコーブの高級送迎は伸びても、専門人材と車両手配の費用が重い。保険料と本社費は売上ほど減らず、利益の伸びを妨げる。
2035年の売上は79.7億ドル、営業利益は3.2億ドル、純利益は2.3億ドルにとどまる。10年の純利益累計は16.6億ドルで、正味の還元は6億ドルに縮む。自己資本は40.8億ドルになるが、ROEは5.6%にすぎず、資本コストを下回る。企業は存続していても、資本を十分な利回りで使えていない。株主にとっては、配車の需要拡大が利益の拡大につながらない厳しい10年間となる。
- 北米配車・法人向け配車:数量 9.7(北米の年間配車回数(億回。会社の実績から推定。2025年は8.30億回))× 価格 7.20(1乗車当たりの会計上の売上(ドル/回。運賃総額ではなく、手数料・関連収入の合計))→ 売上 70 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場実質1.52倍でもシェアは18.5%に低下。手数料率が下がり、売上単価は物価上昇を反映できない。
- 欧州タクシー・フリーナウ・ゲット:数量 1.9(欧州の年間配車回数(億回。2025年は買収後5か月の連結期間のみ))× 価格 3.00(1乗車当たりの仲介売上(ドル/回))→ 売上 6 億ドル・営業利益 0 億ドル。欧州事業の連結通年化後も競争が激しく、統合の利益は限定的。
- 都市型交通・車両サービス・法人高級送迎:数量 1.0(年間利用回数の換算値(億回。自転車・スクーターの実利用を中心とし、車両賃貸・広告・法人契約の収入を利用回数に換算))× 価格 4.20(1利用回数当たりの換算売上(ドル/回。法人・広告の収入を含むため純粋な乗車単価ではない))→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。都市型交通と法人送迎の需要は残るが、車両維持と人手の費用が利益を圧迫する。
倍率:ROE=2.3÷40.8=5.6%でk9.0%を下回る。再投資は資本コスト以上の価値を生まず、利益ベースのPER上限は1÷k=11.11倍である。手数料率の下落と保険・販促費の固定的な負担を踏まえ、上限より低い8.5倍とした。中立の11.17倍を下回る。赤字ではないためPERを使うが、ROEが低いので自己資本を額面で評価していない。
確率:自動運転車の直接配車が都市部で広がり、ウーバーとの価格競争が続く展開。乗車市場は大きくなるが、リフトの利益率の改善が止まる。会社の規模の弱さとGAAP利益の浅い実績を考慮し、24%とした。
悲観 16% 悲観:自動運転が配車の入口を奪い、税資産が減損して事業価値が現金に近づく 利益 −3 億ドル · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2.15 ドル8 億ドル
2035年にはウェイモ、テスラ、その他の自動運転会社が主要都市で乗客を直接つかんでいる。リフトは運転手による配車や、一部の自動運転車の管理を続けるが、仲介の主導権を失う。北米の配車市場は実質で1.4倍に拡大しても、リフトのシェアは14%程度まで下がる。名目売上単価も現在の約4分の3へ低下し、運転手の不足が解消されても利益を取り戻せない。
欧州ではフリーナウとゲットの競争力が落ち、ウーバーやボルトに顧客を奪われる。買収で取得したのれんや無形資産の価値も減る。自転車・スクーターと高級送迎は維持費が残り、規模が小さくなった会社を支えられない。保険の過去事故に関する支払いも続くため、事業を縮小しても資金流出がすぐには止まらない。
2035年の売上は43.0億ドル、営業損失は3.1億ドル、純損失は3.2億ドルとなる。2032年前後に繰延税金資産の一部約18億ドルを減損する展開を含め、10年間のGAAP純損益累計はマイナス26.5億ドルとした。買い戻しを縮小しても株式報酬による希薄化が残り、正味の還元はマイナス2億ドルになる。自己資本は5.7億ドルまで減る。
事業は小規模ながら存続し、北米の運転手の網と顧客の一部は残る。しかし、営業赤字が続くため利益に高い倍率を掛けることはできない。2025年末の純現金と売却可能な資産だけが下支えになり、税資産とのれんを帳簿価額で回収できるとは考えない。10年後の時価総額は約8.2億ドルとする。
- 北米配車・法人向け配車:数量 6.8(北米の年間配車回数(億回。会社の実績から推定。2025年は8.30億回))× 価格 5.40(1乗車当たりの会計上の売上(ドル/回。運賃総額ではなく、手数料・関連収入の合計))→ 売上 37 億ドル・営業利益 2 億ドル。北米市場は実質1.4倍でもシェアが14%へ低下。自動運転会社への取り分流出で名目売上単価も現在の75%に落ちる。
- 欧州タクシー・フリーナウ・ゲット:数量 1.3(欧州の年間配車回数(億回。2025年は買収後5か月の連結期間のみ))× 価格 2.60(1乗車当たりの仲介売上(ドル/回))→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。フリーナウとゲットの統合利益が実現せず、競争と固定費で赤字になる。
- 都市型交通・車両サービス・法人高級送迎:数量 0.9(年間利用回数の換算値(億回。自転車・スクーターの実利用を中心とし、車両賃貸・広告・法人契約の収入を利用回数に換算))× 価格 3.60(1利用回数当たりの換算売上(ドル/回。法人・広告の収入を含むため純粋な乗車単価ではない))→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。都市型交通の車両維持費と法人送迎の品質管理費が売上の縮小に追いつかない。
倍率:2035年がGAAP赤字であるため、正当化PERによる継続利益の評価は使わない。PBRの基準は悲観で積み上げた自己資本5.7億ドルではなく、現在のFY2025末自己資本32.7億ドルである。倍率0.25倍により時価総額は8.18億ドルとなる。これは2025年末の純現金約5.2億ドルと売却可能資産の保守的な税後価値約0.8億ドルを合わせた約6.0億ドルの床を上回る。自己資本に含まれる繰延税金資産約29億ドル、保険関連の拘束資金、のれんを無条件の床とはしない。過去の市場PBRを根拠にしたものではない。
確率:ウェイモ、テスラなどが自社アプリで乗客を直接獲得し、リフトの仲介網の価値が構造的に弱まる展開。運転手の網が競争優位を失う危険と、税資産・保険債務の不確かさを踏まえ16%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
北米配車・法人向け配車
米国とカナダを中心に、個人の乗車、空港、通勤、医療機関、法人向けの移動を仲介する。収益は乗車に伴う手数料と関連サービスから生じる。
| 数量北米の年間配車回数(億回。会社の実績から推定。2025年は8.30億回) | 価格1乗車当たりの会計上の売上(ドル/回。運賃総額ではなく、手数料・関連収入の合計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 8.3 | 7.20 | 60 | 2 |
| 10 年後 中立 | 12.0 | 8.60 | 103 | 12 |
取り方:2025年全社の乗車9.455億回、取扱高185.07億ドル、売上63.2億ドルを出発点とする。フリーナウの2025年7月末買収後の欧州乗車を約0.35億回、都市型交通などを約0.805億回と推定し、北米を約8.30億回とした。北米の市場規模は約34.6億乗車と推定し、リフトの数量シェアを24%とする。Bloomberg Second Measureの2024年3月の配車支出ではウーバー76%、リフト24%だが、これは乗車回数のシェアではなく近似の手掛かりである。平均取扱額を1回約20〜21ドル、売上の取り分を約34%と見て、関連収入込みの売上単価を7.20ドルとした。営業利益2.4億ドルは部門別非開示のため推定で、保険と販促費を負担した後、本社共通費の一部を引く前の基礎的な利益を表す。会社は単一報告セグメントであり、北米の独立した開示利益ではない。市場シェア資料:https://secondmeasure.com/datapoints/rideshare-industry-overview/
欧州タクシー・フリーナウ・ゲット
欧州の認可タクシーと利用者を仲介する。2025年7月末にフリーナウを買収し、2026年にはゲットの英国事業も取得した。
| 数量欧州の年間配車回数(億回。2025年は買収後5か月の連結期間のみ) | 価格1乗車当たりの仲介売上(ドル/回) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.4 | 2.40 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 3.1 | 3.25 | 10 | 1 |
取り方:フリーナウは2025年7月31日に買収完了。会社は買収後の売上と税前利益の寄与が全社に対して重要でないと開示しているため、2025年の連結対象5か月の乗車を約3,500万回と保守的に推定した。欧州主要都市のタクシー仲介では北米と異なり運賃総額を売上計上しない取引が多いと見て、1乗車の仲介収入を約2.4ドルとした。対象9か国・約200都市のタクシー乗車市場は年12億回程度と仮定するが、都市を統一した市場規模とシェアの公的な開示はない。競合はウーバー、ボルト、地元タクシーの配車網。2026年のゲット買収分は2025年の数字に含めない。営業損失は買収直後の統合費用と営業網の維持費を考慮した推定である。
都市型交通・車両サービス・法人高級送迎
シティバイクなどの自転車共同利用、スクーター、運転手向け車両賃貸、広告、法人送迎を扱う。2025年に取得したTBRは2027年からアルコーブのブランドで拡大する予定である。
| 数量年間利用回数の換算値(億回。自転車・スクーターの実利用を中心とし、車両賃貸・広告・法人契約の収入を利用回数に換算) | 価格1利用回数当たりの換算売上(ドル/回。法人・広告の収入を含むため純粋な乗車単価ではない) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.8 | 3.23 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.2 | 4.50 | 5 | 0 |
取り方:リフトの都市型交通事業は、2024年に運営する6つの米国自転車共同利用網だけで電動自転車約4,080万回の乗車を記録した。通常の自転車、スクーター、2025年の増加を含む実利用を年約8,000万回と推定し、これに車両賃貸や広告、TBRの小規模な売上を換算した。売上2.6億ドルと平均換算単価約3.23ドルは分析上の推定で、事業別の会社開示はない。都市型交通は市との契約、車両の購入・保守が必要であり、配車本体より資本が重い。2025年の3区分の売上合計は63.2億ドル、営業利益の推定合計は1.80億ドルで、共通費等の調整マイナス3.50億ドルを引くと全社の営業損失1.70億ドルになる。
リスクと懸念
自動運転会社が乗客の入口を直接握る
ウェイモは2026年9月にナッシュビルでリフトとの共同配車を始めたが、自社アプリも運営している。テスラも自社の配車網を目指している。ロボタクシーの車両供給者が利用者を直接獲得すると、リフトは単なる車両管理や補完的な配車の役割へ下がる。乗車市場が大きくなっても仲介の取り分が下がれば、株主の利益は減る。自動運転に伴う車庫、充電、清掃、整備の費用をリフトが負担するなら、資本の軽さも失われる。
ウーバーとの規模の差と価格競争
米国の配車支出はウーバーが約4分の3、リフトが約4分の1という観測結果がある。乗客も運転手も複数のアプリを利用でき、切り替えの費用は低い。リフトが利用者を増やすために割引や運転手への補助を厚くすれば、取扱高だけが伸び、営業利益は残らない。2026年4〜6月期の販売促進費は前年同期から大きく増えた。利用頻度、待ち時間、補助金を使わない成長が続くかが本当の堀を測る材料になる。
保険料、過去事故の準備金、現金の質
リフトは自動車事故の保険費用と過去の事故の請求額を見積もる必要がある。2025年末の保険準備金は約21.8億ドルで、別に保険関連の債務もある。2026年6月末には約20.6億ドルの拘束資金が存在した。事故の頻度や支払額が予想を上回れば追加の費用が発生する。自由キャッシュフローが大きくても、その一部が保険債務の積み上がりに伴う運転資金であれば、長期の株主還元には使えない。
運転手の雇用区分と各地の規制
運転手を個人事業主とみなすか従業員とみなすかは、配車会社の費用を大きく変える。カリフォルニア州で2026年9月に合意した2.725億ドルの和解は、過去の紛争を減らす効果があるが、将来の規制をなくすものではない。都市ごとの最低報酬、保険、タクシー許認可、空港手数料も利益を圧迫しうる。欧州では国によって労働法とタクシー規制が異なり、買収した網を統一するにも限界がある。
純利益の一時益と税資産の減損
2025年の純利益28.4億ドルは、約29億ドルの税効果を含み、営業損失1.7億ドルとは大きく異なる。2026年6月末にも約28.8億ドルの繰延税金資産が残る。将来の課税所得が予想を下回れば、この資産は利用できず、評価を引き下げる必要がある。自己資本比率や表面上のROEだけを見れば事業の強さを過大評価する。投資価値は、税効果を再び利益として数えず、将来のGAAP営業利益と現金の回収力で測る必要がある。
欧州進出と買収の資本配分
フリーナウ、ゲット、TBRは北米の弱さを補う可能性がある。しかし欧州にはウーバー、ボルト、各地のタクシー網があり、サービスと価格の統一は難しい。法人向け高級送迎にも人手と品質管理が必要である。買収先の顧客が想定ほど増えなければ、のれんや無形資産の減損が発生する。2025年と2026年の買収は成立済みだが、株主にとって成功かどうかは、買収価格を上回る増分の利益が10年先まで続くかで決まる。
株式報酬、買い戻し、財務の柔軟性
2025年の自社株買い5.4億ドルは大きいが、株式報酬約3.2億ドルを考えると正味の還元は小さくなる。会社は2026年に追加の10億ドルの買い戻し枠を設けたものの、実行額は事業や市場の状況次第である。2030年までに満期を迎える転換社債もあり、借り換え金利と株式への転換条件に注意が必要だ。成長投資と自社株買いを優先して保険の支払いに備える現金が薄くなれば、不況時の柔軟性を失う。
今後の分かれ目
- ウェイモなどの自動運転車がリフト経由の乗車を増やし、契約上の手数料率も維持できたら
- リフトが自動運転の時代にも需要の入口として残れる証拠になる。北米の数量と利益率を楽観側へ見直す。自動運転車を持つ側に取り分を奪われないことが確認できれば、利益の質に対する評価を上げる。
- 主要都市で自動運転車の直接予約が増え、リフトの北米配車シェアが20%を割ったら
- 自動運転による仲介の地位低下が進んでいると判断する。やや悲観と悲観の確率を引き上げ、乗車単価も下方修正する。市場の成長率が高くても、会社の取り分の縮小を優先して評価する。
- GAAP営業利益率が5%を超え、その水準が複数年続いたら
- 2026年に始まった利益改善が定着したと判断できる。株式報酬と保険費用を含めた利益で確認し、中立の収益力への確信を上げる。調整後EBITDAだけの改善では、同じ評価にはしない。
- フリーナウとゲットの欧州乗車回数が増え、欧州事業の営業利益が継続して黒字になったら
- 買収の増分利益が資本コストを上回る証拠になる。欧州の数量と利益率を上方修正し、北米だけに依存する事業という評価を弱める。ただし、買収による一時的な連結期間の増加と実質成長は分けて見る。
- 保険関連の準備金と拘束資金が取扱高より速く増え、営業キャッシュフローが減り始めたら
- これまでの自由キャッシュフローの質を再評価する。保険の見積もり変更が継続して利益を削る場合は、悲観側の利益率を下げる。現金の床も保険請求額を差し引いて確認する。
- 自社株買いが株式報酬を継続的に大きく上回り、買収を増やさず純現金も維持できたら
- 経営の資本配分をより高く評価できる。正味の株主還元を増やし、残る自己資本の利回りを確認する。ただし自社株買いの増加を、成長率や利益そのものの増加とはみなさない。
- 運転手の雇用区分が広い地域で変更され、最低報酬や保険の負担が恒常的に増えたら
- 運賃へ転嫁できる範囲を確認し、できなければ北米の営業利益率を引き下げる。過去の訴訟の和解と将来の費用増は別であり、双方を混同せずに筋書きへ反映する。
見ておくもの
- 四半期の乗車回数、アクティブ利用者、取扱高の成長率と、それぞれの伸びの差
- 北米の配車シェア、ウーバーとの平均待ち時間と運賃、乗客を獲得するための販促費
- 乗車1回当たりの売上と、取扱高に対する売上・営業利益の割合
- ウェイモなどの自動運転車がリフトのアプリで占める乗車比率、自社アプリによる直接予約の増加
- フリーナウ・ゲットの欧州乗車回数、欧州の収益性、アルコーブの法人契約の拡大
- GAAP営業利益率、株式報酬、営業キャッシュフロー、保険準備金、拘束資金の増減
- 自社株買いと株式報酬を差し引いた正味の還元、転換社債の借り換え、追加買収の額
- カリフォルニア州の和解の承認、運転手の雇用区分と保険規制の変化
- 2026年11月5日に発表予定の7〜9月期決算と、2027年の取扱高・調整後EBITDA目標の進捗
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額64.4億ドルや、2025年の見かけの純利益28.4億ドルから10年後の価値を逆算していない。まず北米配車、欧州タクシー、都市型交通の数量と1回当たり売上を別々に見積もり、保険・販促費・本社費を引いたGAAP営業利益を求めた。2025年の税効果約29億ドルは継続利益に含めていない。倍率はk9.0%、弱い堀の残存割合1/3、各筋書きのROEと事業から求めた長期gで正当化PERを計算した。10年目の利益に対する倍率は式の値へ(1+g)を掛けている。中立は正当化上限の90%であり、ウーバーや過去の市場PERから決めた数字ではない。悲観は赤字なのでPBRを使うが、分母は今の自己資本32.7億ドルであり、10年間に積み上がる利益を床にしていない。繰延税金資産、保険関連拘束資金、のれんは現金と同じ価値で扱わない。米国基準ではリース資産と負債がすでに計上されているため、追加の会計変更益を価値に含めていない。期間の正味還元は株式報酬と増資の払い込みを控除したものとし、現時点の株価に合わせた調整はしていない。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本8.0%に、事業の値決め力の弱さ+0.5%と技術による寿命の不確かさ+0.5%を加え、資本コストを9.0%とする。βや市場のPERは使わない。営業黒字化は始まっており、純現金もあるため、継続企業の存続そのものに対する特別な上乗せは不要と判断した。