結論
テクノフレックスは、ステンレスの蛇腹管(フレキシブル継手)を軸に、半導体工場の真空配管の工事までを手がける会社だ。売上の約 6 割が継手、約 3 割が防災・工事で、自動車部品は 1 割に満たない。分類は金属製品だが、中身は設備投資に乗る会社である。
筆者の結論は割高だ。いちばんの理由は、今の利益が半導体工場の建設ブームで押し上げられた水準にあることだ。2026 年の営業利益の予想は過去最高の 1.5 倍に達するが、工事の山は 10 年は続かない。
強みは確かにある。継手は競争相手が少なく、大口の顧客に偏らない。北海道の苫小牧に新しい工場を建て、需要が計画を超えたため第 2 工場も 2026 年 10 月に完成した。財務は純現金で、自己資本比率は 66% と厚い。
一方で弱みも見える。工事は発注の波に左右され、会社自身が有価証券報告書で半導体の投資サイクルによる変動を認めている。ティーエムアセットが株の過半を持つ支配株主で、市場に出回る株は少ない。
筆者は、継手の底堅さと真空機器の伸びを認めたうえで、10 年後の利益は今の予想から名目で伸びないと見る。物価が 3 割以上上がる中でのことだ。その場合、価値は今の値段をかなり下回る。強気の筋書きに寄っても、値段に届く程度にとどまる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず、10 年後も同じ利益を生み続けるかを問う。継手は設備の更新で続く。真空配管は、半導体の建設が続く限り続く。どちらも長く続くが、利益の水準まで続く保証はない。
次に、オーナーとして持ち続けたいかを考える。技術は確かで、財務は堅く、配当も守っている。経営者は大型買収に走らず、資本の使い方は落ち着いている。この点は好ましい。ただ、過半を持つ支配株主がいる。少数株主として持つ以上、その意向に付き合う覚悟が要る。
最後に、払う値段に安全域があるかを問う。安全域とは、予想が外れても元本が大きく傷まない余裕のことだ。今の利益は工事の山にあり、平らにならした利益で測ると、今の値段は高い。強気の筋書きに寄せても、やっと届くかどうかだ。事業は良いが、値段が先に走っている。こういう会社は、値段が下がってから拾うほうが報われやすいと筆者は考える。いまは待つ局面だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は継手事業だ。ステンレスの蛇腹管を使った継手で、建物の設備配管やプラントに使う。径の小さいフレキシブル継手、径の大きい伸縮管継手、半導体装置向けの真空機器の 3 つに分かれる。真空機器は利益率が高く、2025 年の増益に効いた。ビル設備用のフレキ継手では首位級とされる。
次に大きいのが防災・工事事業だ。消防設備の配管工事のほか、半導体工場に設置する真空配管の加工と施工を手がける。子会社の中野製作所は水道管・電柱の切断装置をつくる。北海道の先端半導体工場に関わる仕事が膨らみ、2025 年は売上が 3 割伸び、利益は 2 倍を超えた。
自動車・ロボット事業は金属の塑性加工部品で、自動車の駆動系や排気系、産業用ロボットの駆動軸をつくる。売上は全体の 8% で、2025 年に黒字へ戻ったばかりだ。介護事業は福祉用具のレンタルと住宅改修で、売上は全体の 7%、利益は小さいが安定している。
従業員は連結で約 800 人、顧客に 10% を超える相手先はない。製品の主な原料はステンレス鋼だ。中国とベトナムにも生産拠点を持つ。
優良さと弱いところ
強みは、ステンレスの薄肉加工と溶接の技術だ。蛇腹管は寿命が長く、納めた設備の更新需要が続く。有価証券報告書は、継手の競争相手は少ないとしている。半導体の真空配管では、純度や清浄度の要求が厳しく、実績のない会社は入りにくい。
一方で、値段を自分で決められる事業ばかりではない。建築設備用の継手は競合も多く、防災・工事は発注者の予算に左右される。筆者は、利益率の高い真空機器の比率がどこまで続くかが、会社の質を決めると見る。
資本効率は過去 10 年の ROE が 4% から 12% の範囲で、資本コストを下回る年が多かった。2025 年の 12% は工事の山と土地の売却益が重なった結果だ。自己資本比率は 66% で純現金。借金に頼らず、財務は強い。
経営の資本の使い方は堅実だ。大型の買収はなく、設備投資は北海道の工場に集中している。配当は性向 40% 以上を掲げ、実際に守っている。ただし、支配株主の持ち分が過半で、少数株主の意見が反映されにくい構造がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業績を決める需要は、建築・プラントの設備更新、半導体工場の建設、海外の設備投資の 3 つだ。建築とプラントは更新が中心で、数量は大きくは伸びない。これが継手の土台になる。
伸びを生むのは半導体だ。国内では北海道を含め、先端工場の建設が相次いでいる。工場の中には、ガスや薬液を運ぶ真空配管が大量に要る。テクノフレックスはその加工と施工、真空機器の供給の両方を手がける。第 2 工場の建設は、需要が計画を超えている証拠だ。
問題は、工場の建設は一巡する仕事だという点だ。装置が入った後の需要は、保守と増設に変わる。会社自身が防災・工事の課題として、半導体投資の周期による変動を挙げている。この波を 10 年の利益にそのまま延ばすことはできない。
競合は、海外にも真空配管や継手の専業メーカーがいる。国内の工場建設が続く間は国内勢に利があるが、中国や東南アジアの製品が価格で迫る動きは、一般の継手から広がりやすい。介護と自動車・ロボットは小粒で、全社の価値を左右する大きさではない。建築設備の継手は、ビルの新築や改修の件数が人口とともに頭打ちになる一方、老朽化した配管の更新が下支えになる。数量は実質で伸びず、価格の上昇で名目の売上が増える業界だと筆者は見る。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、配当性向 40% 以上を掲げる。2025 年は性向 40.5% で、2026 年の予想も上方修正に合わせて増やす方針だ。自社株買いの発表は見当たらない。
大株主はティーエムアセットで、役員とその親族の資産管理会社として長期保有する立場だと、大量保有報告書に記載がある。保有比率は 2019 年の 49% から、2026 年 5 月には 53% まで上がった。市場に出る株が少なく、買収の対象にもなりにくい。TOB(株式の公開買付け)の可能性は、外部の推計で 10 年以内に 15% 前後とされるが、支配株主が動かない限り実現しにくい。
資金の使い道は、北海道の工場への投資が中心だ。2025 年に大阪営業所の土地と建物を売って 6.6 億円の利益を出した。保有不動産の見直しは続くとみられる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
真空機器と継手の実力は、数字に出ている。2025 年は売上が 18% 伸び、営業利益は 78% 増えた。2026 年はさらに営業利益 60 億円を見込み、予想の上方修正を繰り返した。需要が計画を超えたため、北海道の第 2 工場まで建てた。この会社は、構造的に地位を上げている。
半導体の国内投資は北海道にとどまらず、全国で続く見通しだ。工場が増えるほど、真空配管の加工と施工は途切れない。いったん入った会社は、保守と増設で長く取引が続く。工事の山の後も、仕事が消えるわけではない。
継手は競争相手が少なく、海外の需要も伸びる。財務は純現金で自己資本比率が 66%、配当は性向 40% 以上を守る。営業利益率が過去 10 年の 7〜13% から 15〜19% に切り上がったのは、利益率の高い真空機器の比率が上がったためで、一時の波ではない。10 年かけて ROE が 10% を超えれば、倍率も 10 倍台の半ばまで上がりうる。
慎重な見方
今の利益は、半導体工場の建設ブームの結果だ。真空配管の工事は、工場ができたら終わる仕事である。会社自身が有価証券報告書で、防災・工事は半導体の投資サイクルによる変動が課題と書いている。2026 年の予想は、過去 10 年の最高の営業利益の約 1.5 倍にあたる。その水準が 10 年続く前提は置けない。
2025 年の純利益には、大阪の土地と建物の売却益も含まれる。見た目の ROE 12% は、本業だけの数字ではない。過去 10 年の ROE の中央値は 8% 台で、資本コストをわずかに上回る程度の会社だ。
需要が山を越えたとき、新設の工場は固定費として残る。海外の専業メーカーとの価格競争は、一般の継手から広がる。さらに、支配株主が過半を持つ構造で、少数株主が還元を求める力は弱い。今の値段は、山の利益を長く続く利益として払っている。工事が半分に減るだけで、利益は大きく崩れる。
純現金は 12 億円と薄く、時価総額に対して厚い余剰があるわけでもない。財務が強いという評価は、借金が少ないという意味にとどまり、株価の下支えにはならない。
どちらに重みを置いたか
事業の質と財務は強気の見方に理がある。しかし、10 年の利益に延ばす話になると、工事の山を平らにならす慎重な見方が強い。確率は中立を最も重くし、悲観側は工事の一巡と値下げ競争を無視できない重みで置いた。強気側は、真空機器の比率が上がる路線が実績で裏付けられているため、やや楽観に厚めに置いた。結果として、期待値は今の値段を大きく下回り、強気の筋書きでもようやく今の値段に届く程度になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 3,006 円552 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 856 円157 億円)。 今の値に割り戻すと 2,055 円377 億円、今との差 −41.6%、 期待の年率 +0.9%(資本コスト 7.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,281 円1,153 億円 | 1,319 円242 億円 | +115.9% | +8.0% | 608 円112 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,439 円815 億円 | 1,068 円196 億円 | +56.5% | +4.6% | 1,101 円202 億円 |
| 中立 | 38% | 3,407 円625 億円 | 877 円161 億円 | +21.7% | +2.0% | 1,628 円299 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,132 円208 億円 | 714 円131 億円 | −47.6% | −6.3% | 443 円81 億円 |
| 悲観 | 10% | 490 円90 億円 | 327 円60 億円 | −76.8% | −13.6% | 82 円15 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,006 円552 億円 | 856 円157 億円 | +9.7% | +0.9% | 3,862 円709 億円 |
今の株価時価総額 3,520 円646 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 半導体の投資が続き、真空配管が柱に育つ 利益 66 億円 · PER 17.5 倍 · 株価時価総額 6,281 円1,153 億円
国内で半導体工場の建設が相次ぎ、北海道の第 2 工場も稼働を続ける。真空配管の加工と施工は受注が途切れず、防災・工事は 10 年を通じて今より大きな事業になる。継手は真空機器の比率が上がり、海外の伸びも加わって出荷が大きく増える。値上げも通る。利益率の高い真空機器が混ざることで、全社の営業利益率は 16% 台まで上がる。自動車・ロボットは大口顧客の需要が戻り、小さいながら黒字が定着する。配当は利益の半分を目安に続く。ただし、真空配管は工場の建設が一巡すれば止まる仕事でもあり、この筋書きは建設の波が 10 年続くことが条件になる。
- 継手(フレキシブル継手・伸縮管継手・真空機器):数量 180(出荷本数相当(万本))× 価格 2.12(1 万本あたり売上(億円・名目))→ 売上 381 億円・営業利益 80 億円。真空機器の比率上昇、利益率 21%
- 防災・工事(消防配管・真空配管工事・切断装置):数量 255(工事・加工の作業量(千人日))× 価格 0.54(1 千人日あたり売上(億円・名目))→ 売上 137 億円・営業利益 23 億円。半導体工場向けが継続、利益率 17%
- 自動車・ロボット(金属塑性加工部品):数量 20.9(出荷個数相当(百万個))× 価格 1.74(1 百万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 37 億円・営業利益 2 億円。需要回復で黒字が定着、利益率 6%
- 介護(福祉用具のレンタル・販売、住宅改修):数量 2.4(利用者数(万人))× 価格 11(1 万人あたり売上(億円・名目))→ 売上 28 億円・営業利益 2 億円。高齢化で緩やかに増加、利益率 8%
倍率:事業の純利益 66 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.5 倍。全体の PER 17.52 倍、時価総額 1,153 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の半導体工場の建設が途切れず、海外の継手も伸び、利益率の高い真空機器が全社の柱になる。連続で当たる必要があり、確率は低めに置いた。
やや楽観 20% 真空と海外が伸び、利益率が一段上がる 利益 51 億円 · PER 16.1 倍 · 株価時価総額 4,439 円815 億円
真空機器と海外向けの継手が伸び続け、継手の売上は今の 2 倍を超える。国内の半導体工場の建設は山を越えても保守・増設の仕事が残り、防災・工事は今より 2 割ほど大きい規模で安定する。会社は配当性向 40% 以上を守りつつ、設備投資も続ける。自動車・ロボットは小幅の黒字、介護は高齢化で緩やかに伸びる。営業利益率は 15% 台と、2025 年の水準をやや上回る。ROE は 11% 近くまで上がるが、これは真空機器の比率が上がるためで、他の事業の効率が急に良くなるわけではない。海外の需要は円安が続く前提を置かず、為替は動かさない。会社は大型の買収には動かず、自己資本は配当後の積み上がりにとどまる。
- 継手(フレキシブル継手・伸縮管継手・真空機器):数量 155(出荷本数相当(万本))× 価格 2.06(1 万本あたり売上(億円・名目))→ 売上 319 億円・営業利益 64 億円。真空・海外の伸び、利益率 20%
- 防災・工事(消防配管・真空配管工事・切断装置):数量 213(工事・加工の作業量(千人日))× 価格 0.54(1 千人日あたり売上(億円・名目))→ 売上 114 億円・営業利益 18 億円。建設の山の後も保守・増設で安定、利益率 16%
- 自動車・ロボット(金属塑性加工部品):数量 18.5(出荷個数相当(百万個))× 価格 1.74(1 百万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 32 億円・営業利益 2 億円。小幅の黒字、利益率 5.5%
- 介護(福祉用具のレンタル・販売、住宅改修):数量 2.4(利用者数(万人))× 価格 11(1 万人あたり売上(億円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 2 億円。緩やかな増加、利益率 7.5%
倍率:事業の純利益 51 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.1 倍。全体の PER 16.07 倍、時価総額 815 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:真空機器と海外の継手は実績で伸びており、北海道の第 2 工場も需要超過で建てられた。この路線が 10 年続く筋書きで、確率は中立に次いで置いた。
中立 38% ブームは平らになり、普通の設備部品会社に落ち着く 利益 41 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 3,407 円625 億円
半導体工場の建設ブームは平らになるが、継手は建築とプラントの更新、海外の需要で伸び続ける。継手の出荷は今より 35% 増え、値上げは物価並みに通る。防災・工事は 2025 年の勢いが続かず、数量は 1 割増にとどまる。営業利益率は 14% 台で、2026 年の予想(19% 近く)には届かず、2025 年の 15% をやや下回る。自動車・ロボットは物価並みの伸びで、収益への寄与は小さいまま。介護は高齢化で数量が増える一方、値段は介護報酬の枠に縛られ、物価の 6 割ほどしか上がらない。10 年後の純利益は今期の予想とほぼ同じ名目額に落ち着く。物価が 3 割以上上がる中で利益が横ばいということは、実質では 4 分の 1 ほど目減りする姿だ。ROE は 9% 前後で、資本コストをわずかに上回る。
- 継手(フレキシブル継手・伸縮管継手・真空機器):数量 135(出荷本数相当(万本))× 価格 2.03(1 万本あたり売上(億円・名目))→ 売上 274 億円・営業利益 52 億円。出荷 35% 増、物価並みの値上げ、利益率 19%
- 防災・工事(消防配管・真空配管工事・切断装置):数量 187(工事・加工の作業量(千人日))× 価格 0.54(1 千人日あたり売上(億円・名目))→ 売上 100 億円・営業利益 15 億円。建設の山の後は 1 割増にとどまる、利益率 15%
- 自動車・ロボット(金属塑性加工部品):数量 16.9(出荷個数相当(百万個))× 価格 1.74(1 百万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 30 億円・営業利益 2 億円。物価並みの伸び、利益率 5%
- 介護(福祉用具のレンタル・販売、住宅改修):数量 2.3(利用者数(万人))× 価格 11(1 万人あたり売上(億円・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 2 億円。数量増・値段は報酬の枠、利益率 7%
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.4% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍。全体の PER 15.06 倍、時価総額 610 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今の利益は半導体工場の建設と真空機器の大型案件で押し上げられている。一方で継手の需要は建築・プラントの更新で底堅い。両方を踏まえ、今の水準が名目でほぼそのまま続くが実質では目減りする姿を中心に置いた。
やや悲観 24% 半導体の工事が引き、値下げ競争が強まる 利益 21 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,132 円208 億円
北海道を中心とした半導体工場の建設が一巡し、真空配管の工事は今の 8 割まで減る。会社は新設した苫小牧の工場を抱え、稼働率が下がって固定費が重くなる。継手は中国・東南アジアの製品との値下げ競争で、値上げが物価に追いつかなくなる。自動車・ロボットも利益が出にくい。営業利益率は 10% と、2020 年から 2024 年の平均並みに戻る。配当は利益の半分を目安に続くが、投資に使える現金は減る。ROE は資本コストを下回る。ブームの時に建てた設備が、需要の戻らない中で重荷になる姿だ。支配株主は保有を続け、買収や再編は起きない。
- 継手(フレキシブル継手・伸縮管継手・真空機器):数量 110(出荷本数相当(万本))× 価格 1.97(1 万本あたり売上(億円・名目))→ 売上 216 億円・営業利益 33 億円。出荷 1 割増、値上げは物価に届かず、利益率 15%
- 防災・工事(消防配管・真空配管工事・切断装置):数量 136(工事・加工の作業量(千人日))× 価格 0.52(1 千人日あたり売上(億円・名目))→ 売上 71 億円・営業利益 8 億円。工場建設の一巡で 2 割減、利益率 11%
- 自動車・ロボット(金属塑性加工部品):数量 15.3(出荷個数相当(百万個))× 価格 1.69(1 百万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。低採算に戻る、利益率 3%
- 介護(福祉用具のレンタル・販売、住宅改修):数量 2.2(利用者数(万人))× 価格 10(1 万人あたり売上(億円・名目))→ 売上 23 億円・営業利益 1 億円。緩やかな増加、利益率 6%
倍率:事業の ROE 5.5% が k 7.5% 以下なので PER の上限は 1÷k=12.5 倍。稼ぐ力(純利益÷k)の約 7 割で、8.5 倍に置く。
確率:有報は防災・工事が半導体投資の波で変動すると明記している。建設ブームは必ず一巡するので、この筋書きの重みは中立に近いところまで置いた。
悲観 10% 半導体の国内投資が止まり、継手も値下げに押される 利益 3 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 490 円90 億円
国内の半導体工場の計画が止まり、防災・工事は新設した北海道の工場の仕事が足りなくなる。真空配管の加工や真空機器も、海外の専業メーカーに押される。一般の継手は中国製との価格競争で値上げがほとんど通らず、利益率は 8% まで落ちる。自動車・ロボットは顧客の再編で縮み、赤字になる。工場の遊休と在庫の評価損で自己資本が減る。会社は配当を大きく減らし、残った財産の取り崩しで事業を続ける。それでも借金は少なく、純現金と工場・在庫の売却価値が株主の取り分の床になる。顧客が工事の発注者と大口の完成車メーカーに偏るため、一度崩れると立て直しに時間がかかる。ブームの時に膨らんだ人員と設備の整理にも費用が出る。
- 継手(フレキシブル継手・伸縮管継手・真空機器):数量 85.0(出荷本数相当(万本))× 価格 1.74(1 万本あたり売上(億円・名目))→ 売上 148 億円・営業利益 12 億円。出荷減・価格競争、利益率 8%
- 防災・工事(消防配管・真空配管工事・切断装置):数量 85.0(工事・加工の作業量(千人日))× 価格 0.46(1 千人日あたり売上(億円・名目))→ 売上 39 億円・営業利益 1 億円。半導体工事が半分に、利益率 3%
- 自動車・ロボット(金属塑性加工部品):数量 9.7(出荷個数相当(百万個))× 価格 1.50(1 百万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。顧客の縮小で赤字、利益率 −2%
- 介護(福祉用具のレンタル・販売、住宅改修):数量 2.1(利用者数(万人))× 価格 9.99(1 万人あたり売上(億円・名目))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。横ばい、利益率 4%
倍率:構造的に稼ぐ力を失い、純利益は 3 億円で利益では測れない。売れる資産で測り、今の自己資本 257 億円の 35%(約 90 億円)を株主の取り分とした。純現金 12 億円に、工場・土地・在庫の換金価値を加えた床と同じ水準。
確率:国内の半導体投資が止まり、配管の加工も海外勢に奪われる複合の筋書き。可能性は低いが、小さな会社で顧客が工事の発注者に偏るため、5% 未満にはできないと考えた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
継手(フレキシブル継手・伸縮管継手・真空機器)
ステンレスの蛇腹管でつくる配管の継ぎ目。建物・プラントの設備配管と、半導体装置向けの真空機器が柱。
| 数量出荷本数相当(万本) | 価格1 万本あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 1.51 | 151 | 28 |
| 10 年後 中立 | 135 | 2.03 | 274 | 52 |
取り方:継手事業の売上 151 億円を、小口径のフレキ(単価数千円)から大口径の伸縮管継手(単価数十万円)までの平均単価 1.5 万円と仮置きして、出荷本数 100 万本相当と逆算した(開示は無く推定)。真空機器の増加は数量、値上げと高付加価値化は価格に入れる。
防災・工事(消防配管・真空配管工事・切断装置)
消防設備の配管工事、半導体工場の真空配管の加工と施工、水道管・電柱の切断装置。
| 数量工事・加工の作業量(千人日) | 価格1 千人日あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 170 | 0.40 | 68 | 15 |
| 10 年後 中立 | 187 | 0.54 | 100 | 15 |
取り方:売上 68 億円を、資材と外注を含めた 1 人日あたり売上 4 万円と仮置きして、作業量 17 万人日(170 千人日)と逆算した(推定)。北海道の半導体工場向け案件の増加は数量、人件費の上昇は価格に入れる。
自動車・ロボット(金属塑性加工部品)
駆動系・操舵系・排気系の自動車部品、オートバイ部品、産業用ロボットアームの駆動軸。
| 数量出荷個数相当(百万個) | 価格1 百万個あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 16.1 | 1.30 | 21 | 1 |
| 10 年後 中立 | 16.9 | 1.74 | 30 | 2 |
取り方:売上 21 億円を、平均単価を百数十円と仮置きして、出荷 1,610 万個相当と逆算した(推定)。大口顧客の在庫調整が一巡した 2025 年は黒字に戻った。
介護(福祉用具のレンタル・販売、住宅改修)
福祉用具のレンタルと販売、介護用の住宅改修。主な客は個人。
| 数量利用者数(万人) | 価格1 万人あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2.1 | 9.08 | 19 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2.3 | 11 | 25 | 2 |
取り方:売上 19 億円を、利用者 1 人あたり年間約 9 万円と仮置きして、利用者 2.1 万人と逆算した(推定)。高齢化は数量、介護報酬の枠で上がりにくい値段は価格に入れる。
リスクと懸念
半導体工場の建設の一巡
防災・工事と真空機器は、半導体の設備投資の波に乗っている。会社自身も変動を課題として挙げる。建設が一巡すれば、北海道の新しい工場の稼働率が下がり、固定費が重くなる。2025 年の利益の伸びのうち、どこまでが続くかが最大の論点だ。
利益率の高い案件の偏り
2025 年の継手の増益は、利益率の高い真空機器の大型案件が国内にあったことが効いた。案件は毎年あるとは限らず、次の期に同じ規模が来なければ、継手の利益率は下がる。内訳は開示されておらず、外から見えにくい。
支配株主の存在
ティーエムアセットが株の過半を持つ。大量保有報告書は、役員とその親族の資産管理会社として長期保有するとしている。少数株主の立場では、還元や資本政策が支配株主の意向に沿うことになり、市場の需給も薄い。
海外勢の価格競争
継手は競争相手が少ないとされるが、中国や東南アジアの製品が価格で追い上げている。原料のステンレス鋼が急騰したときに、製品価格へ転嫁するのが遅れることも、会社は有価証券報告書でリスクに挙げている。
海外の生産拠点
中国とベトナムに生産拠点を持つ。法規制の変更、人件費の上昇、ストライキ、政治の混乱で、生産や出荷が止まる可能性がある。為替の変動も、海外子会社の利益の円換算に響く。
自動車・ロボット事業の再び赤字化
自動車・ロボット事業は、2024 年の大口顧客の在庫調整で赤字になり、2025 年に黒字へ戻ったばかりだ。顧客が少数で、車の生産が落ちたり、ロボットの需要が縮んだりすれば、すぐに利益が消える。全社の価値への影響は小さい。
小さな会社の災害と情報管理
生産と施工が少数の拠点に集中している。大規模な災害で操業が止まれば、出荷が遅れ、顧客の信頼にも響く。サイバー攻撃による情報漏えいも、有価証券報告書でリスクとして挙げられている。
今後の分かれ目
- 北海道の第 2 工場が満稼働で、真空配管の受注が 2027 年以降も伸び続けたら
- 防災・工事の筋書きを上方へ移し、やや楽観の確率を増やす。
- 半導体工場向けの工事の売上が前年を割り込み、新工場の稼働率が下がったら
- やや悲観側に重みを移す。固定費の重さで利益率が急に下がる。
- 継手の営業利益率が 20% を超えて 2 年続いたら
- 真空機器の比率が構造的に上がったとみて、継手の利益率を上方へ置き直す。
- 自社株買いや増配など、配当性向 40% を超える還元が出たら
- 自己資本の積み上がりが減り、ROE が上がる。倍率を少し上げる余地が出る。
- ティーエムアセットの持分がさらに増え、上場維持の方針が変わったら
- TOB など再編の可能性を考える。少数株主の取り分と価格を見直す。
- 中国・東南アジア勢が国内の半導体向けの真空配管で受注を取り始めたら
- 悲観側の筋書きが近づいたとみて、継手の価格の前提を下げる。
見ておくもの
- 防災・工事と継手の四半期ごとの売上と利益率
- 北海道第 1・第 2 工場の稼働状況
- 国内の半導体工場の新設計画と装置搬入の時期
- 真空機器の受注と大型案件の有無
- ティーエムアセットの保有比率の変動
倍率と資本コストの決め方
業種のノートの領域「自動車部品(ばね・プレス加工)」はこの会社の実態(自動車は売上の 8%)に合わないため、市場の見通しは使わず、有価証券報告書のセグメントから会社固有の数量×価格で積んだ。数量の単位は開示が無く仮置きの推定。倍率は資本コスト 7.5% と ROE から出した正当化 PER を上限とし、中立は ROE が k を上回るため下限の 1÷k に当たる。今の株価(PER 約 18 倍)は参照していない。同じ領域の会社と比べると quality を軽くしたが、理由は自動車依存が小さい点と純現金。悲観は純現金と売れる資産の床で測った。2026 年の予想(営業利益 60 億円)は工事の山とみて、10 年中立は 2026 年と同じ名目額に置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.5→17.52 倍・やや楽観 PER 12.8→16.07 倍・中立 PER 12.6→15.06 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5% を足した 8.0%。同じ領域の東プレ・ジーテクトは +1.0% だが、この会社は自動車への依存が 1 割未満で、純現金・顧客分散という点で借金と寿命の項が軽い。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。