結論
ネポンは、ビニールハウスやガラス温室を冬に暖める温風暖房機の老舗だ。1964年に発売し、翌年から全農と組んで全国の農家に売ってきた。売上の9割強がこの熱機器で、残りは汲み取り式の家で使う簡易水洗便器である。
筆者の結論は「ほぼ適正、ただし振れ幅が大きい」だ。時価総額は自己資本の3割ほどしかない。それでも割安と言い切れないのは、ここ3年の営業利益率が1%前後に沈み、純負債も12億円ほど抱えるからだ。
10年の見立ては、ハウスの面積が少しずつ減る中で、重油からヒートポンプへの置き換えをどれだけ取れるかにかかる。利益率が昔の3%前後に戻れば、今の値段は安い。戻らなければ、借金の利息が利益をさらに削る。筆者は、戻る方に少しだけ分があると見るが、確信は持てない。
安全域の目で見ると、帳簿の厚さは頼りにならない。頼れるのは、冬のハウスに暖房が要るという需要の長さと、全農と組んだ販路の強さだ。それを利益に変えられるかどうかが、この会社の値打ちを決める。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、これは「名の通った小さな会社が、稼ぐ力を失いかけている」姿だ。帳簿の自己資本は時価総額の3倍以上ある。だが帳簿の資産は、利益を生まなければ価値にならない。ここ3年の利益は、資本コストどころか借金の利息を払うのがやっとだった。
一方で、事業そのものが無くなる心配は小さい。冬に作物を育てる限り、ハウスの暖房は要る。脱炭素で機械を替える時期も来る。利益率が昔の3%前後に戻るだけで、今の値段は安くなる。
筆者は、オーナーとして長く持ちたい会社ではないと見る。値決めの力が弱く、良い年の利益も薄いからだ。安全域は帳簿の安さではなく、利益率の回復に賭けた分だけしかない。
逆に言えば、利益率が3%前後に戻る兆しが数字で見えた時が、この会社を見直す時だ。その時は、帳簿の安さが初めて意味を持つ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は、施設園芸用の温風暖房機だ。トマトやイチゴ、花をハウスで育てる農家は、冬の夜に室温を保たないと作物が育たない。そこで重油を燃やす暖房機を据え付ける。一度入れれば10〜15年は使い、壊れたら買い替える。この更新の需要が売上の土台である。
近年はヒートポンプが伸びている。電気で空気の熱をくみ上げる機械で、重油より燃料代が安く、二酸化炭素も減らせる。ネポンは重油の暖房機と組み合わせて動かす使い方を売り込んでいる。ほかにハウスの温度や湿度を自動で整える環境制御の機器、農業向けの遠隔監視のサービスも持つ。
販路は全農と各地の農協、農業資材の販売店だ。農家の買い替えは補助金と燃料の値段に左右されやすい。ビルや工場向けの温風暖房機も少しある。
もう一つの事業が衛生機器で、売上の1割弱だ。下水道の来ていない家で、少ない水で流せる簡易水洗便器を作る。仮設や災害用のトイレも扱う。安定はしているが、下水道の普及とともに先細る市場である。
季節の偏りも大きい。暖房機は秋から冬に据え付けるので、売上と利益は下期に集まり、上期は赤字になりやすい。
優良さと弱いところ
優良さは、名前と販路に偏っている。60年近く全農と組んできたことで、農家の間では「ハウスの暖房ならネポン」という通りのよさがある。修理や部品の網も全国にある。これは新しく来る会社にはすぐまねできない。
ただし、それが利益に表れていない。事業ごとの利益率は15%前後あるのに、本社と管理の費用が年11億円ほどかかり、それをほぼ食い尽くす。過去12年の営業利益率は最高でも5%台で、ここ3年は1%前後だ。鋼材や部品の値上がりを売値に移しきれなかった。客の農家は燃料代と作物の値段に挟まれており、機械の値上げに強く抵抗する。値決めの力は弱いと言わざるをえない。
資本効率も低い。ROEの過去10年の中央値は7%弱で、資本コストに届いた年はほとんどない。純負債は12億円ほどで、時価総額より大きい。会社も「営業利益率の改善」と「ROEの改善」を課題に挙げているが、まだ数字は出ていない。
経営の資本の使い方にも、まだ見るべき実績は少ない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のハウスの面積は、農家の高齢化と離農でゆっくり減っている。暖房機の数量もそれに沿って細るのが基本線だ。一方で、残る農家は規模を広げ、大きな温室に投資する。1台あたりの能力や制御の機能は上がり、単価は物価より少し速く上がりうる。
10年の大きな流れは脱炭素だ。国は施設園芸の化石燃料を減らす目標を掲げ、ヒートポンプや木質の燃料への切り替えに補助金を出している。燃料代の高い年ほど切り替えは進む。これは暖房機の会社には更新を早める追い風になる。
逆風は、空調の大手が農業向けのヒートポンプに入ってくることだ。家庭や業務の空調で量産する会社は、部品の調達と価格で強い。ネポンが重油の暖房機との組み合わせや制御で差をつけられなければ、伸びる部分を大手に取られる。
衛生機器は下水道と浄化槽の普及で数量が減り続ける。災害用のトイレは備蓄の需要が少し支えるが、柱にはならない。
全体として、数量は細り、単価と製品の中身で補う業界だ。勝ち負けは、ヒートポンプと制御の組み合わせで農家の燃料代をどれだけ減らせるかで決まる。ネポンにはその製品があり、販路もある。問題は、それを利益率に結びつける値決めの力である。
資本政策と M&A
還元は細い。2025年3月期は赤字で無配、2026年3月期は配当を戻したが、配当性向は3割ほどで総額は年0.1億円にとどまる。自社株買いの実績は目立たない。純負債を抱えるので、還元を厚くする余力は今のところ小さい。
大株主は佐藤商事が1割強、三井住友銀行が5%で、残りは創業家ゆかりの個人が多い。時価総額が10億円に届かない小さな会社で、買収の対象にはなりうる。ただ、利益率の低さと借金の重さを考えると、高い値段で買う会社が現れる理由は乏しい。株主優待は無い。
筆者は、まず借金を減らし、そのうえで還元を厚くする順番が正しいと見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
まず事業の寿命は長い。冬にハウスを暖める需要は、農家が減っても消えない。むしろ残る農家は規模を広げ、能力の大きい暖房機と制御の機器を入れる。ネポンは60年近く全農の販路を持ち、修理の網も全国にある。大型の更新が来れば、その恩恵をまず受けるのはこの会社だ。
次に脱炭素の追い風がある。重油の値段が高い年が続けば、ヒートポンプとの組み合わせへの切り替えが進む。国の補助金もそれを後押しする。単価の高い機械の比率が上がれば、売上は物価より速く伸びる。
最後に値段の安さだ。時価総額は自己資本の3割ほどしかない。利益率がここ3年の1%前後から、過去の中央値の3%前後に戻るだけで、利益は今の数倍になる。その時、今の値段は明らかに安すぎる。
衛生機器も、災害用のトイレの備蓄で小さいながら底堅い。
経営も課題を自覚している。利益率とROEの改善を公に掲げた以上、値上げと原価の見直しは進むはずだ。物価が年3%上がる世界では、値上げそのものが通りやすくなる面もある。
慎重な見方
利益率は戻らないかもしれない。ここ3年の低さは一時の不運ではなく、値決めの力の弱さの表れだ。鋼材や部品が上がっても、燃料代に苦しむ農家に値上げを通せない。この構図は物価の高い10年でも変わらない。
数量も細る。ハウスの面積は高齢化と離農で減り続ける。伸びるヒートポンプでは、空調の大手が量産の力で入ってくる。ネポンが取れるのは重油の暖房機の更新が中心で、そこは縮む市場だ。衛生機器は下水道の普及でさらに細る。
借金も重い。純負債は時価総額より大きく、借り換えのたびに金利は上がる。利益が薄いまま利息が増えれば、純利益はさらに削られる。帳簿の資産は稼がなければ価値にならず、清算されない限り株主の手には戻らない。
衛生機器も先細りで、下支えにはならない。
経営が利益率の改善を掲げるのは今に始まったことではない。掲げても数字が出てこなかった過去を見れば、計画を割り引いて見るべきだ。値段が安いのは、こうした弱さを映しているにすぎない。
どちらに重みを置いたか
数量が細り値決めの力が弱いという慎重な見方は、ここ3年の数字が裏づけており重い。一方で、事業が消える心配は小さく、利益率の回復と脱炭素の更新という上の筋も現実にある。確率は中立を軸に、やや慎重側に寄せた。ここ3年の利益の薄さを、筆者は一時の不運ではなく体質と見ている。上の筋が実るには、値上げが2年続けて通るという、まだ見えていない証拠が要る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,783 円17 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 247 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 973 円9 億円、今との差 +27.9%、 期待の年率 +10.3%(資本コスト 8.3%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 5,034 円48 億円 | 650 円6 億円 | +646.9% | +22.3% | 568 円5 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,029 円29 億円 | 432 円4 億円 | +354.8% | +16.4% | 692 円7 億円 |
| 中立 | 35% | 1,608 円15 億円 | 257 円2 億円 | +145.1% | +9.4% | 653 円6 億円 |
| やや悲観 | 22% | 382 円4 億円 | 6 円0 億円 | −48.9% | −6.5% | 85 円1 億円 |
| 悲観 | 13% | 204 円2 億円 | 31 円0 億円 | −69.1% | −11.1% | 31 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,783 円17 億円 | 247 円2 億円 | +166.7% | +10.3% | 2,030 円19 億円 |
今の株価時価総額 761 円7 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 脱炭素の更新を取り、利益率が昔の山を超える 利益 4 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 5,034 円48 億円
重油の高い年が続き、国の補助金も厚くなる。大きな温室を持つ農家が、重油の暖房機とヒートポンプの組み合わせに一斉に切り替える。ネポンは全農の販路と修理の網でこの更新の多くを取る。
台数は今より少し多い水準を保ち、単価は制御の機能が上乗せされて物価より速く上がる。利益率は4%台半ばと、過去の山に近づく。衛生機器も災害用の備蓄で底堅い。
利益が厚くなれば借金は返せる。それでもROEは資本コストに届くかどうかで、倍率は高くならない。
10年後の会社は、ハウスの脱炭素を担う機械の会社として見直されている。
衛生機器は小さいが、災害用の備蓄で利益を保つ。
- 熱機器:数量 6,300(暖房機・ヒートポンプ換算の出荷台数(台・年。推定))× 価格 168(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 106 億円・営業利益 20 億円。6,300台×168万(制御とヒートポンプで単価が物価より速く上がる)、セグメント利益率19%
- 衛生機器:数量 3,800(便器・トイレの出荷台数(台・年。推定))× 価格 13(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。3,800台×13.4万、セグメント利益率27%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.75 倍、時価総額 48 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ヒートポンプへの切り替えを取り、値上げも通る筋書き。過去12年で利益率が5%を超えたのは1年だけなので1割。
やや楽観 20% 利益率が過去の中央値の少し上に戻る 利益 2 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 3,029 円29 億円
鋼材の値上がりが落ち着き、値上げが少しずつ通る。ヒートポンプとの組み合わせの比率が上がり、1台あたりの単価は物価よりやや速く上がる。
台数はハウスの面積の縮小に沿って少し減るが、規模を広げる農家の大型の更新がそれを補う。利益率は3%台半ばに戻る。衛生機器は細るが利益は保つ。
借金の利息は増えるものの、利益の回復がそれを上回る。ROEは7%前後で、資本コストにはまだ届かない。
値段の安さは残るが、利益の回復で見た目ほどの割安ではなくなる。
ヒートポンプとの組み合わせでは、全農の販路と修理の網がものを言い、空調の大手との競り合いでも一定の取り分を保つ。
- 熱機器:数量 5,880(暖房機・ヒートポンプ換算の出荷台数(台・年。推定))× 価格 160(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 94 億円・営業利益 17 億円。5,880台×160万、セグメント利益率18.5%
- 衛生機器:数量 3,700(便器・トイレの出荷台数(台・年。推定))× 価格 13(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。3,700台×13.4万、セグメント利益率26%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 29 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げが少しずつ通り、利益率が3%台半ばに戻る筋書き。過去12年で3%を超えた年は半分ほどあるので2割。
中立 35% 数量は細り、利益率は2%前後まで戻る 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,608 円15 億円
ハウスの面積は高齢化でゆっくり減り、暖房機の台数は10年で1割弱細る。それでも冬に暖房は要り、更新の需要は続く。単価は物価並みに上がり、売上は名目で少し増える。
利益率は、ここ3年の1%前後から2%前後まで戻る。値上げは物価に少し遅れて通るが、昔の水準には届かない。衛生機器は台数が4分の3に減る。
借り換えで利息は増え、本社の費用も物価で膨らみ、純利益は1.3億円ほどにとどまる。ROEは4%前後で、資本コストを下回り続ける。
事業は続き、配当も細く続く。ただ、帳簿の資産は利益を生まず、株主にとっての価値は帳簿の半分ほどにとどまる。
- 熱機器:数量 5,520(暖房機・ヒートポンプ換算の出荷台数(台・年。推定))× 価格 155(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 86 億円・営業利益 15 億円。5,520台×155万(物価並み)、セグメント利益率18%
- 衛生機器:数量 3,525(便器・トイレの出荷台数(台・年。推定))× 価格 13(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。3,525台×13.4万、セグメント利益率25%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 15 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ハウスの面積の縮小に沿って台数が1割弱減り、利益率は過去の中央値の少し下の2%前後まで戻る筋書き。最も起こりやすい。
やや悲観 22% 利益は出ず、台数も細る 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 382 円4 億円
値上げは物価に追いつかず、利益率は1%前後に張り付く。ハウスの面積の縮小に加え、ヒートポンプの一部を空調の大手に取られ、台数は2割近く減る。
衛生機器は下水道の普及で細り、利益は出ない。本社の費用は物価で膨らむので、わずかな営業赤字に沈む。
配当はほぼ止まり、借金は減らない。稼ぐ力に見合う価値は、帳簿の自己資本の2割に届かない。
会社は存続するが、株主にとっては帳簿の資産が眠ったままの10年になる。
値上げの交渉では、燃料代に苦しむ農家と全農の側の声が強く、原価の上昇分を毎年少しずつ取りこぼす。
- 熱機器:数量 4,920(暖房機・ヒートポンプ換算の出荷台数(台・年。推定))× 価格 151(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 74 億円・営業利益 13 億円。4,920台×151万(物価に遅れる)、セグメント利益率17%
- 衛生機器:数量 3,000(便器・トイレの出荷台数(台・年。推定))× 価格 13(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。3,000台×13万、セグメント利益率22%
倍率:本社費が物価で膨らむ一方で台数が減り、わずかな営業赤字になるので今の自己資本24.4億に掛けるPBR。純負債12億が土地・投資有価証券の税後(3億弱)を上回り、純現金・売れる資産の床は無い。価値は利益率が戻る見込みの分だけで0.15倍。EV(時価総額+純負債)で見ても約16億と、今の自己資本を下回る。
確率:ここ3年の薄い利益率が続いて本社費の膨らみに負け、台数も2割近く減る筋書き。足元の数字がこれに近いので2割強。
悲観 13% 大手に押され、赤字が続く 利益 −4 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 204 円2 億円
空調の大手が量産のヒートポンプを農業向けに安く出し、伸びる部分の多くを取る。ネポンに残るのは縮む重油の暖房機の更新だけになる。台数は3分の2に落ち、値上げも通らない。
固定費を削りきれず、営業赤字が続く。借り換えの金利が上がり、利息の負担も重くなる。無配に戻り、借金の返済が経営の中心になる。
帳簿の資産は残るが、稼がない資産は清算されない限り株主に戻らない。価値は再建の見込みの分だけだ。
衛生機器も赤字に転じ、支えにならない。
最後は事業の切り売りや、取引先による救済のような再編が話題になりうる。
- 熱機器:数量 3,900(暖房機・ヒートポンプ換算の出荷台数(台・年。推定))× 価格 145(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 57 億円・営業利益 8 億円。3,900台×145万、セグメント利益率15%
- 衛生機器:数量 2,500(便器・トイレの出荷台数(台・年。推定))× 価格 13(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。2,500台×12.5万、セグメント利益率15%
倍率:赤字なので今の自己資本24.4億に掛けるPBR。純負債が売れる資産(土地・投資有価証券の税後で3億弱)を大きく上回るので、純現金・売れる資産の床は無い。価値は再建の見込みの分だけとし0.08倍。
確率:ヒートポンプを大手に取られ、重油の暖房機の更新も細って赤字が続く筋書き。過去20年に赤字の年が4回あり、借金も重いので1割強。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
熱機器
施設園芸用の温風暖房機・ヒートポンプ・環境制御機器、ビル・工場向けの温風暖房機。
| 数量暖房機・ヒートポンプ換算の出荷台数(台・年。推定) | 価格1台あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6,000 | 116 | 70 | 11 |
| 10 年後 中立 | 5,520 | 155 | 86 | 15 |
取り方:台数の開示は無いので推定。熱機器の売上69.5億を、ハウス用の温風暖房機とヒートポンプの平均単価を約116万とみて年6,000台とした。セグメント利益は有報で10.56億(利益率15.2%)。全社費用(本社・管理)は別に約11億あり、筋書きでは adjust_oku に置く。
衛生機器
下水道の無い家向けの簡易水洗便器、仮設・災害用トイレ。
| 数量便器・トイレの出荷台数(台・年。推定) | 価格1台あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,700 | 10 | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 3,525 | 13 | 5 | 1 |
取り方:台数は推定。衛生機器の売上4.66億を平均単価約10万とみて年4,700台とした。セグメント利益は有報で約1.21億(利益率26%)。
リスクと懸念
利益率が戻らない
ここ3年の営業利益率は1%前後だ。鋼材や部品の値上がりを売値に移せない状態が続けば、物価の高い10年で利益は増えず、借金の利息がさらに利益を削る。
ハウスの面積の縮小
農家の高齢化と離農で、国内のハウスの面積はゆっくり減っている。暖房機の更新の需要もそれに沿って細る。大規模な農家への集約が台数の減りを補えるかが分かれ目だ。
空調の大手の参入
農業向けのヒートポンプは伸びる分野で、空調の大手が量産の力で入ってくる。重油の暖房機との組み合わせや制御で差をつけられなければ、伸びる部分を取られる。
燃料の値段と補助金
暖房機の買い替えは、重油の値段と国の補助金に大きく左右される。補助金が切れる年や、燃料が安くなる年には、更新の需要が先送りされ、売上が谷に落ちる。
借金と金利
純負債は時価総額より大きい。借り換えのたびに金利は上がり、年0.2〜0.3億円ほど利払いが増えうる。利益が薄いので、この増え方は純利益に重く効く。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2年続けて3%を超える
- 値上げが通り始めた証拠になる。中立から楽観側へ見立てを寄せ、今の値段は安いと見てよい。
- ヒートポンプの売上が熱機器の3割を超える
- 脱炭素の更新を取れている。単価の上昇が数量の減りを補い、やや楽観の筋に近づく。
- 空調の大手が農業向けヒートポンプで値下げを仕掛ける
- 伸びる部分を取られ、重油の暖房機の更新だけが残る。やや悲観の筋に寄る。
- 再び赤字の年が出て無配に戻る
- 利益率の回復の筋が遠のく。借金の重さが前に出て、悲観側の確率を上げる。
- 大株主の再編や買収の提案が出る
- 利益率の低さから高い値段は付きにくいが、帳簿の資産を評価する買い手なら今の値段より上で決まりうる。
見ておくもの
- 熱機器の営業利益率
- ヒートポンプと環境制御の売上の比率
- 重油の値段と施設園芸の省エネ補助金
- 有利子負債の残高と支払利息
- 配当性向と自社株買い
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業のROE(中立5%前後)がk 8.25%を大きく下回るので、1÷k(10.8倍)を上限に、中立は利益の薄さを見て9割の9.7倍とした。本社の費用(約11億)は物価で1.34倍に、減価償却(年1.5億)は増やさずに置いた。悲観側は稼ぐ力(純利益÷k)で置き、悲観は赤字なので今の自己資本に掛けるPBRにした。PBR0.3倍という今の値付けも過去の倍率も使っていない。帳簿の安さは価値に足していない。新リース会計基準の影響は小さい(店舗を持たない製造業)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.8→12.75 倍・やや楽観 PER 10→12.12 倍・中立 PER 9.7→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%+quality 1.75%。2025/03期は赤字だが財務の存続に疑いはないので上乗せなし。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 8.25%。