結論
横河ブリッジHDは、鋼の橋の設計・製作・架設で国内最大手の会社だ。システム建築や土木の鋼構造物も手がけ、2026年3月末には、コンクリート橋に強いビーアールHDを約240億円で買って傘下に入れた。筆者の結論は、本質価値は今の時価総額をやや上回る「やや割安」。理由は、老朽橋の補修需要が10年続くことと、還元の姿勢がはっきりしてきたことだ。
稼ぎの中身は二つに分かれる。新しい橋をつくる仕事は、国の予算と人手の制約で細っていく。老朽橋を直す保全の仕事は、築50年を超える橋が2040年に4分の3になる見通しで、量が増える。会社は保全を厚くする方向へ動いている。
不安は資本効率だ。自己資本は厚いが、ROEは6〜7%台で資本コストをかろうじて超える程度にとどまる。BRの買収額は、BRの純利益の約19倍になる。のれんの償却や減損が利益を削る恐れがある。2027年3月期は売上が4割近く増えるのに営業利益は減る計画で、買収の効果はまだ数字に出ていない。
悲観の姿は、2005年の談合事件のあとに入札価格が崩れ、赤字になった時期だ。新設が縮む中で入札競争が荒れれば、同じことが起こりうる。利益が計画どおりに戻る道と、買収が重荷になる道。筆者は前者がやや強いと見て、確率はわずかに悲観側へ寄せた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、まず見るのは「10年後もこの事業があるか」だ。橋は老朽化が進む一方で、直す仕事は増える。仕事が消える心配は小さい。ここは評価できる。
次に、堀と利益の質を見る。鋼橋の大手という地位は長続きするが、値段を決めるのは発注者で、堀は薄い。稼いだ利益は、鋼材・労務・入札の競争で削られやすい。値上げできる会社ではなく、利益の質は並みだ。
経営の資本の使い方は、評価が割れる。配当と自社株買いを増やし、政策保有株を売る姿勢は正しい。一方で、純利益の約19倍で買ったBRは、結果が出るまで保証がない。
安全域は、自己資本比率5割という財務の厚さと、赤字の期が20年で1度だけという実績にある。筆者は、中立の線で今の時価総額にやや余裕があると見る。ただし、買収の消化に失敗する下振れも小さくない。この手の会社は、ROEを資本コストより高く保てるかどうかが全てだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ口は、国土交通省・高速道路会社・鉄道会社などが発注する橋の工事だ。鋼橋の設計・製作・架設で最大手に位置し、橋梁事業で売上の半分強を稼ぐ。受注は入札で決まり、値段を自分で決める力は弱い。そのぶん、需要は景気より公共予算で動く。
システム建築は、工場・倉庫などの鉄骨建築だ。売上の約3割を占め、民間の設備投資に左右される。ここは橋梁より景気に敏感で、物流倉庫の建設が続く間は伸びる。エンジニアリング事業は水門や海洋構造物など橋以外の土木鋼構造物、先端技術事業は小さな研究開発型の事業だ。
2026年3月末に連結入りしたビーアールHDは、PC橋(コンクリートの橋)と補修・補強、コンクリート製品を手がける。傘下の極東興和が中核だ。横河は鋼橋、BRはコンクリート橋が得意で、両方をそろえて「総合橋梁エンジニアリング」を名乗る狙いがある。BRは売上約400億円、営業利益率は5%に届かない薄利の会社だ。2027年3月期から売上に載り、全体の売上を約2,000億円へ押し上げる。
工事の利益は、人手と鋼材の値段に左右される。受注時に決めた値段で数年かけて作るため、鋼材や労務が上がると利益が削られる。この数年の利益率の伸び悩みは、そこに原因がある。
優良さと弱いところ
堀は、規模と経験の厚みだ。長大橋や難工事をこなせる設計・施工の技術者は、一朝一夕には育たない。入札では技術評価が加点されるため、実績のある大手が有利になる。ただし値段は発注者が決める面が強く、堀は「受注の取りやすさ」にとどまり、「高い値段をつける力」にはならない。
収益性は並みだ。営業利益率は過去10年で6〜12%、ROEは中央値で約10%だった。2018年と2021年のような10%台の利益率は、受注を選べて、鋼材が落ち着いた時期の姿だ。足元は人件費と資材の上昇、新設の減少で、利益率は9%台に下がり、2027年3月期の計画は約6%まで下がる。
財務は堅い。自己資本比率は5割を超え、利払いの負担は軽い。BRの買収で純負債は約150億円に増えたが、営業利益で支払利息の28倍をまかなえる。
弱点は二つある。一つは、2005年に橋梁メーカー各社が入札談合で摘発された業界の体質だ。今は監視が厳しく、利益の取り方は変わった。もう一つは、資本の使い方だ。BRの買収は、のれんが約59億円と大きく、買値は純利益の約19倍。統合がうまくいって初めて資本コストを上回る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
橋の需要は、新設から保全へ重心が移っている。橋建協の統計では、道路橋の受注は1995年度の約86万トンから2018年度の約22万トンへ、金額で半分以下に減った。新しい橋を架ける場所が少なくなったからだ。国の財政が厳しい中で、この流れは変わらない。
一方、築50年を超える道路橋は2025年に約4割、2030年に5割強、2040年に約4分の3になる見通しだ。補修・補強・架け替えの量は増えていく。ただし、保全は1件あたりの金額が小さく、工事の数をこなす人手が要る。需要はあっても、受けきれずに伸びが止まる恐れがある。建設業の人手不足は、この領域の最大の制約だ。
競合は、鋼橋では宮地エンジニアリング、駒井ハルテック、川田工業、JFEエンジニアリングなどだ。互いに実力が近く、入札で値段が下がりやすい。ゼネコンも橋の部門を持つ。PC橋ではゼネコンや専業のPC会社が競う。
システム建築は、倉庫・工場の建設が民間投資で決まる。人口減で内需は細るが、物流施設の更新は続く。
業界の10年は、数量は新設が減り保全が増えて全体はほぼ横ばい、値段は物価並みに上がるのが標準だ。そのうえで、鋼橋の新設の入札競争が荒れるかどうかが、利益率を最も左右する。
資本政策と M&A
還元の方針は、配当は株主資本配当率(DOE)3.5%以上の累進配当、自社株買いは第7次中期経営計画(2025〜27年度)の3年で70億円以上だ。配当は増配が続き、2026年3月期の配当性向は5割台に乗った。政策保有株は2020年度から約100億円を売り、純資産の約9%まで下げたが、縮減を続ける方針だ。売却資金は還元と投資に回る。
最大の資本配分は、ビーアールHDのTOBだ。総額約241億円で、2026年3月に成立した。資金は短期借入が中心で、純負債が約150億円に増えた。のれんの償却と金利の上昇が、利益を数億円ずつ削る。
筆者は、この買収の狙い自体は理にかなうと見る。鋼とコンクリートの両方を扱えれば、保全の受注で有利になる。だが、BRの利益率は薄く、買値は高かった。統合の成果が見えるまでは、資本効率が6%台にとどまる局面が続く。
買われる側になる可能性は低い。時価総額は約1,100億円あるが、公共事業の入札を担う橋梁の最大手を丸ごと買う事業会社は見当たらない。
点検済み(費用点検):セグメント外の費用 43 億円が中立 36 億円なのは、今の数字に連結に入る前の PC 橋・補修(年 20 億円)の通年分が含まれるため。同じ範囲で比べると今の約 24 億円が中立 36 億円(のれん償却と買収後の本社費を含む、1.34 倍に近い)で据え置きではない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
老朽橋の保全は、まだ序の口だ。築50年超の橋は2040年に4分の3になる。道路・鉄道の管理者は、補修を先送りできなくなる。保全は新設より利益率が高く、鋼とPCの両方を扱える横河は、一度にまとめて受注できる。BRの統合で営業の情報を共有し、機材を共用すれば、BRの利益率は5%から7%台へ上がる余地がある。
資本政策も変わった。DOE3.5%以上の累進配当、70億円以上の自社株買い、政策保有株の売却。自己資本が厚く純負債が軽いので、還元を厚くしても財務は傷まない。ROEが9〜10%に戻れば、PERは14倍台を正当化できる。2018年と2021年には営業利益率が10%を超えた実績がある。人手不足で受注が絞られる中、大手は選別受注で採算を保てる。システム建築も物流施設の更新で伸びる。
時間は味方だ。橋の老朽化は止まらず、補修の仕事は毎年積み上がる。しかも、同業の大手は人手不足で受注を絞っており、値段の交渉力はむしろ高まっている。受注残が厚くなれば工事は平準化し、利益の振れも小さくなる。足元の利益の落ち込みは、買収の初年度と人件費の先行で説明がつく一時的な谷だ。
慎重な見方
新設は構造的に細る。2018年度の鋼橋受注は、ピークの1995年度の4分の1だ。国の財政が厳しく、新しい橋は増えない。保全は需要が増えても、1件あたりの金額が小さく、人手がなければ受けきれない。最大の制約は技術者の数で、受注を増やしても利益に結びつかない。
足元の数字も厳しい。2027年3月期は売上が約4割増えるのに営業利益は15億円減る計画だ。BRは薄利で、買収額は純利益の約19倍。のれん約59億円の償却と、短期借入の金利負担がかさむ。統合の効果が出なければ、のれんの減損もある。新設の入札競争が荒れれば、2005年の談合事件のあとのように、利益が一気に消える。ROEは6%台と資本コストすれすれで、規模を増やしても価値は増えない。
還元の厚みも見かけほどではない。配当性向が5割を超えれば、内部に残る利益は減り、成長に回す余力は小さくなる。政策保有株の売却益に頼った還元は、長くは続かない。さらに、公共工事は発注者の都合で工期や仕様が動く。計画どおりに利益が積み上がる保証はなく、今の計画の営業利益120億円すら届くかどうかは見通せない。
どちらに重みを置いたか
中立の線では、保全の増加と物価の分の値上がりで、利益は名目の成長を保つ。ROEは8%前後と資本コストをわずかに上回る程度で、倍率の伸びしろは小さい。強気の言い分は、統合の効果と還元に頼る分だけ、実現の確度に差がある。慎重な言い分は、足元の減益という事実の上に立つ。確率は、楽観と悲観の両側を薄くして中立に厚く置き、悲観をやや厚めに寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,693 円1,840 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,814 円712 億円)。 今の値に割り戻すと 3,609 円1,415 億円、今との差 +24.0%、 期待の年率 +8.4%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 8,345 円3,273 億円 | 2,244 円880 億円 | +263.8% | +13.8% | 847 円332 億円 |
| やや楽観 | 22% | 6,741 円2,644 億円 | 2,040 円800 億円 | +201.7% | +11.7% | 1,932 円758 億円 |
| 中立 | 38% | 5,217 円2,046 億円 | 1,887 円740 億円 | +144.0% | +9.3% | 2,699 円1,059 億円 |
| やや悲観 | 21% | 2,223 円872 億円 | 1,632 円640 億円 | +32.4% | +2.8% | 810 円317 億円 |
| 悲観 | 11% | 847 円332 億円 | 1,148 円450 億円 | −31.5% | −3.7% | 219 円86 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,693 円1,840 億円 | 1,814 円712 億円 | +123.5% | +8.4% | 6,508 円2,552 億円 |
今の株価時価総額 2,911 円1,142 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 保全が伸び、統合が効く 利益 194 億円 · PER 16.8 倍 · 株価時価総額 8,345 円3,273 億円
国と自治体の老朽化対策の予算が拡充され、保全の工事が10年で6割近く増える。横河は鋼とPCの両方で一括して受注し、保全の営業利益率が16%に上がる。BRの統合は機材の共用と営業情報の共有が進み、利益率が7%台に改善する。新設は縮むが、受注の選別で採算を保つ。システム建築は物流施設の更新で伸び、利益率10%を維持する。全体の営業利益率は9.5%前後。自己資本が1,800億円台に積み上がるなか、還元は10年で約880億円まで増え、ROEは10%台に乗る。2018年・2021年に営業利益率が10%を超えた力が、再び出る形だ。大型の補修工事を鋼とPCで一括して受ける案件が増え、ゼネコンとの競争でも優位に立つ。
- 鋼橋の新設:数量 29.0(鋼橋の製作・架設量(千トン・年、推定))× 価格 25(1 千トンあたり売上(億円・名目、設計・架設を含む))→ 売上 715 億円・営業利益 82 億円。29千トン×24.66億円、営業利益率11.5%
- 橋梁の保全・海外:数量 320(保全・海外の工事件数(件・年、推定))× 価格 1.66(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 532 億円・営業利益 85 億円。320件×1.66億円、営業利益率16%
- PC橋・補修(ビーアール・極東興和):数量 480(PC橋・補修・製品の工事件数(件・年、推定))× 価格 1.40(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 671 億円・営業利益 50 億円。480件×1.40億円、営業利益率7.5%
- システム建築:数量 195(施工する延床面積(千㎡・年、推定))× 価格 3.47(1 千㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 677 億円・営業利益 68 億円。195千㎡×3.47億円、営業利益率10%
- エンジニアリング・先端技術:数量 210(工事件数(件・年、推定))× 価格 1.66(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 347 億円・営業利益 31 億円。210件×1.65億円、営業利益率9%
倍率:事業の純利益 193 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)31 億円。全体の PER 16.76 倍、時価総額 3,273 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:老朽橋の保全が想定より早く伸び、BR の統合で利益率が上がり、還元も厚くなる、という全部が揃う必要がある。人手不足と入札の競争を考えると、揃う確度は低い。
やや楽観 22% 保全が堅調で利益率が緩やかに戻る 利益 165 億円 · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 6,741 円2,644 億円
保全の工事が10年で約4割増え、新設は1割強減る。横河は保全を軸に営業利益率を9〜10%に戻す。BRの統合は小さな効果にとどまり、PC・補修事業の利益率は6〜7%。システム建築は物流の更新で横ばいから微増。人手不足で受注は絞るが、値段は物価並みに上げられる。老朽橋の補修は予算が付き続け、受注残も厚みを保つ。営業利益は約240億円で、純利益は約165億円。還元は10年で約800億円、自社株買いと配当でROEは9%台に上がる。保全の営業利益率は15%台と、橋梁全体より高い。強気ほどの飛躍はないが、堅実に利益を積む10年だ。国の予算が付く保全を軸に、BRのPC・補修事業も営業の連携で受注の幅が広がる。
- 鋼橋の新設:数量 28.0(鋼橋の製作・架設量(千トン・年、推定))× 価格 24(1 千トンあたり売上(億円・名目、設計・架設を含む))→ 売上 675 億円・営業利益 74 億円。28千トン×24.12億円、営業利益率11%
- 橋梁の保全・海外:数量 295(保全・海外の工事件数(件・年、推定))× 価格 1.62(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 476 億円・営業利益 74 億円。295件×1.61億円、営業利益率15.5%
- PC橋・補修(ビーアール・極東興和):数量 440(PC橋・補修・製品の工事件数(件・年、推定))× 価格 1.37(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 601 億円・営業利益 39 億円。440件×1.37億円、営業利益率6.5%
- システム建築:数量 185(施工する延床面積(千㎡・年、推定))× 価格 3.42(1 千㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 633 億円・営業利益 60 億円。185千㎡×3.42億円、営業利益率9.5%
- エンジニアリング・先端技術:数量 200(工事件数(件・年、推定))× 価格 1.63(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 326 億円・営業利益 26 億円。200件×1.63億円、営業利益率8%
倍率:事業の純利益 164 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)31 億円。全体の PER 15.89 倍、時価総額 2,644 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:保全の需要増は確度が高く、利益率の回復も緩やかなら現実的。ただしBR の統合の成果と人手不足という二つの不確かさが残る。
中立 38% 保全が増え、新設は縮み、利益は物価並み 利益 137 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 5,217 円2,046 億円
新設の鋼橋は10年で約1割強減り、保全は約35%増える。値段は物価並みの3%で上がり、BRのPC・補修事業は件数が増えて売上が約570億円になる。営業利益率は、のれんの償却と本社費の増加で、今より少し低い8%前後に落ち着く。営業利益は約200億円、純利益は約137億円。受注の波で年ごとの振れはあるが、10年を均すと名目で年3%台の成長になる。鋼橋の最大手という地位は保たれ、大きな成功も大きな失敗もない、標準的な10年だ。保全の件数は増えるが、人手の制約で1社あたりの受注には限りがあり、伸びは需要の増加ほどには大きくならない。還元はDOE3.5%の維持と自社株買いで10年に約740億円。自己資本は約1,700億円で、ROEは8%前後と資本コストをわずかに上回る。
- 鋼橋の新設:数量 26.0(鋼橋の製作・架設量(千トン・年、推定))× 価格 24(1 千トンあたり売上(億円・名目、設計・架設を含む))→ 売上 627 億円・営業利益 66 億円。26千トン×24.12億円、営業利益率10.5%
- 橋梁の保全・海外:数量 270(保全・海外の工事件数(件・年、推定))× 価格 1.62(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 436 億円・営業利益 63 億円。270件×1.61億円、営業利益率14.5%
- PC橋・補修(ビーアール・極東興和):数量 420(PC橋・補修・製品の工事件数(件・年、推定))× 価格 1.37(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 574 億円・営業利益 32 億円。420件×1.37億円、営業利益率5.5%
- システム建築:数量 175(施工する延床面積(千㎡・年、推定))× 価格 3.42(1 千㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 599 億円・営業利益 54 億円。175千㎡×3.42億円、営業利益率9%
- エンジニアリング・先端技術:数量 190(工事件数(件・年、推定))× 価格 1.63(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 310 億円・営業利益 23 億円。190件×1.63億円、営業利益率7.5%
倍率:事業の純利益 136 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)31 億円。全体の PER 14.77 倍、時価総額 2,046 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は新設が減り保全が増えてほぼ横ばい、値段は物価並み、利益率は今より少し低い。確度が最も高い筋書きで、厚く置いた。
やや悲観 21% 新設の入札が荒れ、買収の効果が出ない 利益 82 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 2,223 円872 億円
新設が約2割減り、国の予算が絞られて入札の値段が下がる。物価の分を価格に転嫁しきれず、橋梁の利益率は10%前後に下がる。BRの統合は期待ほどの効果がなく、PC・補修は利益率3〜4%にとどまる。のれんの償却も続く。システム建築も民間投資が鈍り、利益率は6%台に下がる。保全は増えるが、人手不足で受けきれず、伸びは約15%にとどまる。営業利益は約120億円、純利益は約82億円。還元はDOEを維持するのがやっとで、10年に約640億円。ROEは5%台で資本コストに届かず、成長しても価値は増えない。優良な最大手という評価は残るが、利益の質は一段落ちる姿だ。受注の量は保てても、同じ仕事で稼げる利益が薄くなる。
- 鋼橋の新設:数量 23.0(鋼橋の製作・架設量(千トン・年、推定))× 価格 23(1 千トンあたり売上(億円・名目、設計・架設を含む))→ 売上 540 億円・営業利益 43 億円。23千トン×23.49億円、営業利益率8%
- 橋梁の保全・海外:数量 235(保全・海外の工事件数(件・年、推定))× 価格 1.58(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 371 億円・営業利益 45 億円。235件×1.58億円、営業利益率12%
- PC橋・補修(ビーアール・極東興和):数量 380(PC橋・補修・製品の工事件数(件・年、推定))× 価格 1.35(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 511 億円・営業利益 18 億円。380件×1.35億円、営業利益率3.5%
- システム建築:数量 160(施工する延床面積(千㎡・年、推定))× 価格 3.37(1 千㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 539 億円・営業利益 35 億円。160千㎡×3.37億円、営業利益率6.5%
- エンジニアリング・先端技術:数量 170(工事件数(件・年、推定))× 価格 1.61(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 273 億円・営業利益 14 億円。170件×1.61億円、営業利益率5%
倍率:ROE 5.6% が k 7.25% 以下で、RONIC=7.5%+1/2×(5.6%−7.5%)=6.6%、g 4% から正当化 PER=(1−4%÷6.6%)÷(7.5%−4%)=11.2 倍。稼ぐ力が資本コストに届かない分を見て 10.5 倍に置いた。 持ち合い株の含み益(評価差額金41億円×戻り方0.5)を余り資産として足している。
確率:新設の縮小は確実で、入札競争が荒れる素地は2005年の経験が示す。統合の効果が出ない可能性も、足元の減益計画を見ると小さくない。
悲観 11% 談合後のような価格の崩れ、買収も重荷 利益 45 億円 · PER 7.2 倍 · 株価時価総額 847 円332 億円
新設が約3割減り、入札競争が激化して、2006年以降のような価格の崩れが起こる。物価が3%続く中でも鋼橋の値段は上がらず、利益は鋼材と人件費に食われる。保全も、予算の制約と人手不足で期待ほど増えない。BRはのれんを全額減損し、PC・補修事業は利益がほぼ出ない。システム建築も民間投資の落ち込みで利益率が5%まで下がる。営業利益は約70億円、純利益は約45億円。還元は大きく絞られ、10年で約450億円。自己資本は、減損の分だけ削られて約1,340億円にとどまり、ROEは3%台に沈む。かつての最大手の堅実な会社という評価が外れ、利益の安定しない工事会社として見られる姿だ。
- 鋼橋の新設:数量 20.0(鋼橋の製作・架設量(千トン・年、推定))× 価格 23(1 千トンあたり売上(億円・名目、設計・架設を含む))→ 売上 461 億円・営業利益 28 億円。20千トン×23.04億円、営業利益率6%
- 橋梁の保全・海外:数量 230(保全・海外の工事件数(件・年、推定))× 価格 1.57(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 360 億円・営業利益 32 億円。230件×1.57億円、営業利益率9%
- PC橋・補修(ビーアール・極東興和):数量 300(PC橋・補修・製品の工事件数(件・年、推定))× 価格 1.33(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 398 億円・営業利益 8 億円。300件×1.33億円、営業利益率2%
- システム建築:数量 140(施工する延床面積(千㎡・年、推定))× 価格 3.19(1 千㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 447 億円・営業利益 22 億円。140千㎡×3.19億円、営業利益率5%
- エンジニアリング・先端技術:数量 150(工事件数(件・年、推定))× 価格 1.52(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 228 億円・営業利益 9 億円。150件×1.52億円、営業利益率4%
倍率:ROE 3.4% が k 7.25% を大きく下回り、RONIC=7.5%+1/2×(3.4%−7.5%)=5.5%、g 4% から正当化 PER=(1−4%÷5.5%)÷(7.5%−4%)=7.8 倍。稼ぐ力(純利益÷k)の範囲で 7.2 倍に置いた。純現金は無く、売れる資産(政策保有株など)の税後は稼ぐ力より小さいので床には使わない。 持ち合い株の含み益(評価差額金41億円×戻り方0.5)を余り資産として足している。
確率:新設が縮む産業で入札が崩れる例は2005年の談合事件のあとにある。人手不足とBRの減損が重なる確度は低いが、無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
鋼橋の新設
道路橋・鉄道橋の鋼橋を設計・製作・架設する、橋梁事業の柱。
| 数量鋼橋の製作・架設量(千トン・年、推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目、設計・架設を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30.0 | 18 | 540 | 65 |
| 10 年後 中立 | 26.0 | 24 | 627 | 66 |
取り方:橋建協の統計では道路橋の受注は 2018 年度で 21.5 万トン・3,361 億円、つまり 1 トンあたり約 156 万円だった。その後の鋼材と労務の値上がりで約 1.15 倍の 1 トン 180 万円(1 千トンで 18 億円)とし、橋梁事業の売上 781 億円のうち新設を約 7 割の 540 億円と置いて、横河の年間の新設量を約 3 万トンと推定した。開示は無く推定。数量は実質のトン数、物価は価格に入れる。
橋梁の保全・海外
老朽橋の補修・補強・架け替えと、海外の橋梁工事。
| 数量保全・海外の工事件数(件・年、推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 200 | 1.21 | 241 | 36 |
| 10 年後 中立 | 270 | 1.62 | 436 | 63 |
取り方:橋梁事業 781 億円のうち保全・海外を約 3 割の 241 億円と置いた(2021 年 3 月期上期の受注は新設 73%・保全 25%)。保全は大型の補修・架け替えが中心で 1 件あたり約 1.2 億円、年約 200 件と推定。開示は無く推定。件数が実質の数量で、物価は 1 件あたりの値段に入れる。
PC橋・補修(ビーアール・極東興和)
コンクリートのPC橋の新設と、構造物の補修・補強、コンクリート製品。2026年3月末に連結入り。
| 数量PC橋・補修・製品の工事件数(件・年、推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 400 | 1.02 | 408 | 20 |
| 10 年後 中立 | 420 | 1.37 | 574 | 32 |
取り方:ビーアールホールディングス(極東興和など)の 2025 年 3 月期の売上は 408 億円、営業利益は 19.5 億円(4.8%)。2026 年 3 月末に連結に入ったので 2026 年 3 月期の損益には載らず、ここは通年に直した仮の数。工事件数は開示が無く、1 件あたり約 1 億円・年約 400 件と推定した。
システム建築
工場・倉庫などの鉄骨建築。
| 数量施工する延床面積(千㎡・年、推定) | 価格1 千㎡あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 170 | 2.55 | 434 | 41 |
| 10 年後 中立 | 175 | 3.42 | 599 | 54 |
取り方:システム建築の 2026 年 3 月期売上は 434 億円、営業利益は 41 億円(9.4%)。1 平方メートルあたり約 25 万円(1 千㎡で 2.55 億円)として年の延床を約 17 万㎡と推定した。開示は無く推定。数量は面積、物価は 1 ㎡あたりの値段に入れる。
エンジニアリング・先端技術
水門・海洋構造物など橋以外の土木鋼構造物と、先端技術事業。
| 数量工事件数(件・年、推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 180 | 1.22 | 219 | 17 |
| 10 年後 中立 | 190 | 1.63 | 310 | 23 |
取り方:エンジニアリング事業 176 億円(営業利益 13 億円)と先端技術事業 43 億円(同 4 億円)の合計 219 億円。1 件あたり約 1.2 億円、年約 180 件と推定した。開示は無く推定。
リスクと懸念
新設橋梁の入札競争の悪化
新設の橋は国の予算の制約で減っていく。数が減れば、各社は残った案件に低い値段で応札する。2005年の談合事件のあと、横河も2006〜2008年に営業赤字になった。同じことが起これば、橋梁事業の利益率が5%を切り、利益の半分以上が消える。
BR買収の消化
買収額は約241億円で、BRの純利益の約19倍。のれんは約59億円で、毎年の償却が利益を削る。BRの営業利益率は5%に届かない。統合の効果が出ず利益率が改善しなければ、のれんの減損と、買収資金の短期借入の返済負担が自己資本の効率を下げる。
人手不足で受けきれない
保全の仕事は件数が増えるが、1件あたりの金額は小さい。現場を回す技術者が足りなければ、受注しても工期が延び、利益が出ない。人件費の上昇を価格に移せなければ、数量が伸びる環境でも利益が増えない。
鋼材と労務費の上昇
工事は受注時に値段を決め、数年かけて作る。受注から完成までの間に鋼材や労務費が上がると、その分は会社が負う。物価が年3%続く世界では、契約の中にスライド条項が入るかどうかが、利益率の分かれ目になる。
民間建築(システム建築)の景気
システム建築は売上の約3割で、工場・倉庫の設備投資に左右される。投資が減れば、橋梁で稼いだ利益を食う。利益率は9%台と橋梁並みで、景気の下振れでは不採算の案件が出やすい。
政府予算の上限
老朽化対策の需要は大きいが、財源は限られる。国と自治体の財政が厳しくなれば、補修を後回しにする案件が増える。需要はあるのに予算が付かない、という形で保全の伸びが止まりうる。
今後の分かれ目
- BR の営業利益率が2期続けて5%を超え、のれんの償却後も全社の営業利益が120億円を上回ったら
- 統合の効果が出ている。楽観・やや楽観の確率を上げてよい。
- 新設鋼橋の入札で、予定価格に対する落札率が大きく下がる案件が続いたら
- 入札競争が荒れ始めている。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 国の老朽化対策の予算が、規模を大幅に拡大する形で編成されたら
- 保全の数量が上振れる。人手が足りるかを確かめたうえで、楽観寄りに見直す。
- BR 関連ののれんの減損が出たら
- 買収が価値を壊した証拠になる。悲観側の確率を上げ、資本配分の評価を下げる。
- 自社株買いを70億円より大きく増やし、DOEを引き上げたら
- 資本効率の改善が進む。ROEが9%を超える道が開けるので、中立の線を上へ見直す。
見ておくもの
- 受注高と受注残(新設と保全の内訳)
- BR の営業利益率とのれんの償却・減損
- 新設鋼橋の入札の落札率
- DOE と自社株買いの実施額
- 建設業の技能者数と賃金の上がり方
倍率と資本コストの決め方
倍率は、資本コスト7.25%と長期の成長率4%から、利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)で決めた。RONICは k+残る割合1/2×(事業のROE−k)で、10年中立はROE約8%、RONIC約7.8%、正当化PERは約13.9倍。ROEが k を超えるので下限は 1÷k の13.3倍で、中立は13.5倍。堀は入札の産業で薄いため、強い堀にはしていない。やや悲観は ROE が k 以下になる分、悲観は稼ぐ力から置き、7割へ引き上げていない。今の株価や過去のPERは使っていない。10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形で置いた(新リース会計の影響は、本社・営業所が中心のため小さい)。純利益÷営業利益は過去の中央値0.71の近くに置いた。のれんの償却は全社費用に入れた。 持ち合い株の含み益(評価差額金41億円)は戻り方0.5で余り資産に足した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.4→16.76 倍・やや楽観 PER 13.6→15.89 倍・中立 PER 13.5→14.77 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。