結論
不二サッシは、ビルの窓とカーテンウォール(ガラス張りの外壁)を作り、取り付けまで引き受ける会社だ。国内で初めてビル用アルミサッシを作った老舗で、アルミ形材の外販と物流も持つ。筆者の結論は、今の値段はやや割安。時価総額は 91 億円で、2026 年 3 月期の純利益 20 億円の約 4.5 倍にすぎない。
理由は、利益の質が見かけほど悪くないことだ。営業利益率は 2〜3% と薄いが、2 期連続で計画を上回り、ROE は 8% を保つ。ビル新築が縮んでも、築 30 年を超えたビルの窓の取り替えが増える。
弱みも大きい。純有利子負債は 154 億円で、自己資本比率は 3 割に満たない。会社は利益の 2 割ほどしか配らず、残りを投資と借入返済に回す。その投資の稼ぎが資本コストを超えるかは、まだ証明されていない。
10 年後の中立は、純利益 20 億円台で、時価総額は今の約 2 倍になる。ただ、これは物価で名目が膨らむ分が大きい。悲観では赤字が続き、持っている土地と在庫が床になる。差は、値段の安さが借入の重さを上回る分である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、事業そのものは平凡だが、値段次第で買える。建材は競争が厳しく、堀は狭い。しかし、足元の利益に対して今の時価総額は 4.5 倍と低く、安全域がある。
オーナー利益は、見た目の純利益より少ない。設備更新と IT の投資が償却を上回り、借入の返済が進みにくいからだ。物価で名目の利益が膨らんでも、更新の投資も同じ率で膨らむ。筆者は、これを割り引いて見る。
経営への信頼は、まずまずだ。計画を達成し、増配も始めた。ただ、利益の 8 割を内部に残して、その稼ぎが資本コストを超えるという証拠はまだ薄い。配当を厚くし、余った現金で借入を減らす規律を示すほど、評価は上がる。
払ってよい値段は、中立の価値の 5 割強が目安だ。今の値段はそれより低く、悲観が当たっても土地と運転資本の床が下を支える。割安と言ってよいが、確信を持てるほどではない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は 4 つだ。建材が売上の 7 割、形材外販が 2 割強、環境と物流が各 3%。
建材は、ビル用サッシ、カーテンウォール、住宅用建材だ。設計から製造、施工管理、アフターサービスまでを一貫して請け負う。大型ビルの外壁は、風圧や地震の揺れに耐える試験が要る。同社は動風圧・層間変位の試験設備を持つ。顧客はゼネコンと建築主で、ビル新築とリニューアル(改修)が半々ほどだ。
形材外販は、アルミ形材を他社向けに作って売る。原料のアルミ地金の価格を乗せて売るので、売上は大きいが利益は薄い。2026 年 3 月期の営業利益率は 1.2% だった。
環境は、ごみ焼却灰を無害化するプラントの設計・施工。物流は、グループの不二倉業による倉庫と輸送で、利益率は 12% と高い。千葉の事業所に営業倉庫を新設し、物量が増えている。
全体の営業利益は 28 億円。セグメント利益の合計が 48 億円なので、全社費用が約 19 億円かかっている。大株主は文化シヤッターで、約 24% を持つ。シャッターを主力とする建築金物の大手で、同じ建築の現場に納める会社だ。
優良さと弱いところ
堀は、狭いが本物だ。カーテンウォールは、設計力・試験設備・施工の実績がそろわないと受注できない。1958 年に国内で初めてビル用アルミサッシを作った経歴と、大型ビルへの納入実績が信用になっている。住宅用は競合が強いが、非住宅のビル用では専門性で戦える。
とはいえ、価格を自由に決めるほどの力はない。競合は LIXIL、YKK AP、三協立山と大手がそろう。受注は入札や相見積が多く、アルミ地金の高騰を転嫁できるまでには時間差が出る。筆者がいちばん気にしているのは、この時間差で利益が削られる年があることだ。
経営は誠実に見える。前の中計は修正後の計画を全て達成し、今期も営業利益が計画を上回った。VE・CD 提案(原価を下げながら価値を上げる設計提案)が効き、建材の利益率は 4.6% から 5.2% に上がった。
弱点は、資本の使い方だ。利益の 8 割を内部に残し、投資に回す。IT 基盤の再構築は費用が膨らみ、会社自身が「一部遅れ」と認めている。ROE の中央値は 10 年で 6% 台。数字は改善中だが、資本コストの 9% には届かない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ビル用サッシの市場は、国内の非住宅の新築が土台だ。人口が減り、建設費が上がり、職人が不足している。工期が延びる案件が増え、売上が期ずれを起こす。足元でも、大型案件の着工が遅れて売上は 3% 減った。
それでも底は割れにくい。都心の再開発は続き、築 30〜40 年を超えたビルの窓の取り替えは今後増える。国土交通省の調査でも、非住宅の改修受注は増えている。カバー工法は既存の窓枠を残して新しい窓を重ねるので、工期が短く、ビルを使いながら施工できる。
競争は、LIXIL、YKK AP、三協立山が大手で、不二サッシは非住宅に絞った中堅にあたる。施工技能者の不足が共通の悩みで、同社は専門の会社を作って若手の育成を進める。
追い風は、環境規制だ。低炭素アルミ(再生材を使ったもの)と高断熱の窓は、建物の省エネ基準の強化で需要が増える。同社の Re サッシはここを狙う。
原料のアルミ地金は為替と LME 相場で動く。円安の局面は仕入れを押し上げ、形材外販の利益を直撃する。新築は縮むが、改修が補うのが 10 年の基本線である。
資本政策と M&A
還元は小さい。配当は 2026 年 3 月期に増配したが、配当性向は 2 割に届かない。中計 3 年の還元額は 10 億円から 11 億円以上に上げる程度だ。一方、成長投資は 90 億円から 100 億円に増やした。
会社は利益を借入返済と投資に回している。2026 年 3 月期は投資活動で 63 億円を使い、純有利子負債は 108 億円から 154 億円に増えた。本社の機能集約と IT 基盤の再構築が増額の主因だという。
資産の入れ替えも進む。遊休資産の売却は「概ね完了」、政策保有株の圧縮も続く。
PBR は 0.43 倍と会社も気にしており、中長期で 1 倍超えを目標にする。配当は 2027 年度に「現在の水準+α」を掲げる。
文化シヤッターが約 24% を持つ。TOB や非公開化の公表はない。同社が持つ土地・建物の簿価は 219 億円で、時価の開示はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今の時価総額は 91 億円で、2026 年 3 月期の純利益の 4.5 倍にとどまる。土地と建物の簿価だけで 219 億円あり、会社自身も PBR 0.43 倍を問題視している。利益は 2 期連続で計画を上回り、ROE は 8% を保った。
リニューアル需要は、築 30 年を超えたビルの増加で今後も伸びる。VE・CD 提案が定着すれば、建材の利益率は 5.4% の中計目標に届く。物流は営業倉庫の拡充で、利益率 15% を狙う。
借入は変動金利だが、純利益に対する利払いの余裕は 7 倍ほどあり、返済の見通しも立つ。文化シヤッターという建材同業の大株主がいることは、事業の安定にも、再編の余地にもなる。
中計の目標は、2027 年度に営業利益 33 億円。実現すれば純利益は 20 億円台の後半に乗り、今の値段は大きく見直される。配当は増え、PBR 1 倍超えという会社の目標も現実味を帯びる。さらに、遊休資産の売却と政策保有株の圧縮で得た資金を借入の返済に回せば、利払いの負担が軽くなり、純利益の伸びを後押しする。
慎重な見方
利益率は 2〜3% と薄く、12 年のうち最良の年でも 3.8%。わずかなコスト増や工期の遅れで、利益は簡単に消える。来期の営業利益予想はすでに 28% の減益で、利益の質は見かけほど安定しない。
新築は人口減と人手不足で縮む。リニューアルは単価が低く、新築ほど稼げない。形材外販はアルミ地金の転嫁が遅れ、利益率 1% 台に張りつく。全社費用が 19 億円かかり、セグメント利益のほとんどを吸い上げている。
純有利子負債は 154 億円で、自己資本比率は 3 割に届かない。2026 年 3 月期は 63 億円を投じ、借入が 46 億円増えた。しかも配当性向は 2 割弱と低く、利益のほとんどが内部に残る。それが資本コストを超えて稼げなければ、帳簿の厚みは積み上がるだけで価値は増えない。
安い PER は、新築の波と借入の重さへの正当な値引きだ。IT 基盤の再構築は一部遅れ、費用の上振れを会社自身が認めている。
どちらに重みを置いたか
事業の質では慎重な見方が当たるが、値段の安さが借入の重さを上回る。中立は営業利益率 2.5% 前後にとどめ、中計目標の 33 億円には届かないと置いた。確率は中立を最も厚くし、悲観側をやや厚く置いた。差が割安側に出るのは、中立の純利益 20 億円に対し、今の時価総額が約 4.5 倍と低いためで、借入の重さと資本の使い方の弱さはその分だけ割り引いて見ている。悲観の確率は、赤字の期が過去にあったことを踏まえ、1 割強にした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,761 円221 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 415 円52 億円)。 今の値に割り戻すと 1,055 円132 億円、今との差 +45.9%、 期待の年率 +11.6%(資本コスト 8.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,009 円503 億円 | 662 円83 億円 | +546.1% | +20.5% | 327 円41 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,984 円374 億円 | 558 円70 億円 | +389.9% | +17.2% | 708 円89 億円 |
| 中立 | 36% | 2,028 円254 億円 | 447 円56 億円 | +242.2% | +13.1% | 891 円112 億円 |
| やや悲観 | 26% | 451 円57 億円 | 319 円40 億円 | +6.6% | +0.6% | 200 円25 億円 |
| 悲観 | 11% | 330 円41 億円 | 120 円15 億円 | −37.8% | −4.6% | 49 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,761 円221 億円 | 415 円52 億円 | +201.0% | +11.6% | 2,176 円273 億円 |
今の株価時価総額 723 円91 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 計画どおり進み、リニューアルと高付加価値で利益率 4% に乗る 利益 40 億円 · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 4,009 円503 億円
ビル新築が 2020 年代後半も底堅く、さらにリニューアル(既存ビルの窓の取り替え)が伸びる。カバー工法(既存の窓枠を残して新しい窓を重ねる工法)と低炭素アルミの Re サッシ、高断熱サッシが定着し、建材の数量は今並みを保ち、値上げも物価を上回って通る。VE・CD 提案(原価を下げながら価値を上げる設計提案)が全案件に広がり、建材の利益率は 6% に届く。形材外販は加工品(精密加工・医療用マグネシウム合金)へ移り、物量の波を和らげる。海外はフィリピンの拠点と設計センターの人員増強が支え、設計の人手不足を補う。物流は千葉の営業倉庫が稼働して利益率が 14% に上がる。全社費用は IT 基盤の刷新で膨らむが、物価の伸びをやや超える程度に収まる。借入は返済が進み、配当も大きく増える。
- 建材(ビル用サッシ・カーテンウォール・住宅建材):数量 89.5(施工・出荷面積(万㎡、推定))× 価格 11(1 万㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 1,008 億円・営業利益 60 億円。リニューアルで数量を保ち、VE・CD で利益率 6%
- 形材外販:数量 3.2(出荷量(万トン、推定))× 価格 96(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 306 億円・営業利益 9 億円。加工品比率の回復
- 環境(飛灰処理プラント):数量 26.0(受注・完工件数(件、推定))× 価格 2.31(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 60 億円・営業利益 5 億円。飛灰処理の新規顧客
- 物流(倉庫・輸送):数量 79.2(取扱貨物量(万トン、推定))× 価格 0.70(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 55 億円・営業利益 8 億円。営業倉庫の拡充
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.3 倍。全体の PER 12.25 倍、時価総額 486 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の 2027 年度目標(営業利益 33 億円)は会社自身の来期予想(20 億円)よりかなり高い。その水準を 10 年かけて物価込みで超える姿で、利益率が 4% に達するのは過去 12 年に無く、確率は低い。
やや楽観 20% 計画に届かないが、利益率 3.5% 前後を保つ 利益 31 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,984 円374 億円
新築は人手不足で工期が伸び、数量は 2% ほど減る。一方、リニューアルが需要を埋め、値上げは物価並みに通る。建材の利益率は 5.5% で、中計の 27 年度目標 5.4% をわずかに超える。形材外販は加工品の立ち上がりが遅れ、利益率は 2% 台。物流は営業倉庫の効果が出て 13%。全社費用は物価で膨らむ。IT 基盤の刷新は遅れながらも終わり、費用の上振れは一巡する。純利益は 30 億円台まで戻り、配当は段階的に増える。ただし ROE は 7% 台で、資本コストの 9% には届かない。競合との競争は続き、アルミ地金の転嫁も後追いのままだが、大きな採算割れは避けられる。中計の 27 年度目標を物価込みで半分ほど満たした姿と言える。
- 建材(ビル用サッシ・カーテンウォール・住宅建材):数量 87.7(施工・出荷面積(万㎡、推定))× 価格 11(1 万㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 974 億円・営業利益 54 億円。中計目標をわずかに超える
- 形材外販:数量 3.1(出荷量(万トン、推定))× 価格 95(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 294 億円・営業利益 6 億円
- 環境(飛灰処理プラント):数量 23.0(受注・完工件数(件、推定))× 価格 2.24(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 52 億円・営業利益 4 億円
- 物流(倉庫・輸送):数量 72.6(取扱貨物量(万トン、推定))× 価格 0.68(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 49 億円・営業利益 6 億円
倍率:事業の純利益 31 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 361 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:最終年度の営業利益 33 億円には届いていないが、前中計は修正後の計画を全て達成し、今期も計画(20 億円)を営業利益で上回った実績がある。計画の半分以上を物価込みで達成する筋書きは、実績の延長線上にある。
中立 36% 新築は縮み、リニューアルが補う。利益率は 2.5% 前後 利益 21 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,028 円254 億円
国内の非住宅の新築は人口減と人手不足で緩やかに縮み、建材の数量は 10 年で 5% 減る。ただ、築 30 年を超えるビルの窓の取り替え需要は増え、建材全体では物価並みの値上げが通る。利益率は 4.8% で、2027 年度の目標 5.4% に届かない。形材外販はアルミ地金の価格を転嫁するだけの商売で、利益率は 1.5% にとどまる。物流と環境は安定。全社費用は 1.34 倍になる。減価償却は今の設備の分は据え置かれるが、IT 基盤と省力化への投資が物価の上がった値段で積み上がるため、償却は 10 年で 1.5 倍ほどに増える。投資は償却より多く現金が出るので、借入の返済は進みにくい。純利益は 20 億円前後。
- 建材(ビル用サッシ・カーテンウォール・住宅建材):数量 85.0(施工・出荷面積(万㎡、推定))× 価格 11(1 万㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 930 億円・営業利益 45 億円。数量 5% 減・利益率 4.8%
- 形材外販:数量 3.0(出荷量(万トン、推定))× 価格 94(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 286 億円・営業利益 4 億円
- 環境(飛灰処理プラント):数量 20.0(受注・完工件数(件、推定))× 価格 2.21(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 44 億円・営業利益 4 億円
- 物流(倉庫・輸送):数量 66.0(取扱貨物量(万トン、推定))× 価格 0.67(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 44 億円・営業利益 5 億円
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 247 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新築の縮みとリニューアルの伸びが相殺し、物価の分だけ利益が増える姿。2026/03 期の利益率 2.7% は計画を上回ったが、来期予想は 1.9% に下がっており、中立は 2.5% 前後に置くのが実績に近い。
やや悲観 26% 新築が落ち、価格競争で利益率が 1.5% に下がる 利益 8 億円 · PER 6.8 倍 · 株価時価総額 451 円57 億円
ビルの新築が 1 割以上減り、YKK AP・LIXIL・三協立山との価格競争が強まる。リニューアルは増えても、単価が低く利益率は新築ほど稼げない。建材の利益率は 3.8% に下がる。形材外販は加工品の物量が戻らず、ほぼ収支とんとん。人手不足で施工費が上がり、全社費用は膨らむ。金利が上がり、借入の利払いが利益を削る。純利益は 7 億円ほどで、2026 年 3 月期の 3 分の 1 にとどまる。人手不足で施工費が上がる一方、値上げは通りにくく、受注は選ぶ余裕がない。ROE は 2% 台まで落ちるが、配当は今の水準を維持する。借入は返済が進まず、IT と省力化の投資を絞って現金を守る守りの経営になる。大株主の文化シヤッターとの関係は続くが、再編の話が出るほどの変化は起きない。
- 建材(ビル用サッシ・カーテンウォール・住宅建材):数量 78.8(施工・出荷面積(万㎡、推定))× 価格 10(1 万㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 824 億円・営業利益 31 億円。数量 12% 減・価格競争
- 形材外販:数量 2.9(出荷量(万トン、推定))× 価格 90(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 259 億円・営業利益 2 億円
- 環境(飛灰処理プラント):数量 18.0(受注・完工件数(件、推定))× 価格 2.06(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 37 億円・営業利益 2 億円
- 物流(倉庫・輸送):数量 62.7(取扱貨物量(万トン、推定))× 価格 0.65(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 41 億円・営業利益 4 億円
倍率:事業の ROE は 2.3% で、資本コスト 8.5% を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)から見て、PER の上限 11.1 倍より低い 6.8 倍に置いた(上限の 6.1 割。構造的に利益の質が低い筋書きなので、7 割へは引き上げない)。
確率:建設費の高騰で新築の計画が遅れる、延期が続く局面は足元でも起きている。2027 年 3 月期の営業利益予想は 28% 減の 20 億円で、すでに減益を織り込んでおり、この筋書きは遠くない。
悲観 11% 新築の需要が崩れ、全社費用が重く赤字が続く 利益 −12 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 330 円41 億円
ビルの新築が 3 割近く減り、競合との価格競争で受注採算が割れる。建材の利益率は 2% まで下がり、全社費用 25 億円を吸収できない。形材外販は加工品の撤退で収支がゼロに近づく。借入は変動金利で重くなり、赤字の期が続く。減損で自己資本は減り、配当は大きく削る。国内の再開発が止まれば、リニューアルも先送りされる。稼ぐ力は小さいので、価値は持っている土地・建物と運転資本の床で決まる。ただし清算されない限り、少数株主はその価値を取り出せない。大株主の文化シヤッターが関与を強める可能性はあるが、少数株主に有利とは限らない。経営陣が事業の縮小や資産の売却に動けば、床の価値に近づくが、そこまで動かないまま低迷が長引く恐れもある。
- 建材(ビル用サッシ・カーテンウォール・住宅建材):数量 67.1(施工・出荷面積(万㎡、推定))× 価格 9.65(1 万㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 648 億円・営業利益 13 億円。数量 25% 減・採算割れ
- 形材外販:数量 2.6(出荷量(万トン、推定))× 価格 81(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 207 億円・営業利益 0 億円
- 環境(飛灰処理プラント):数量 16.0(受注・完工件数(件、推定))× 価格 1.90(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円
- 物流(倉庫・輸送):数量 59.4(取扱貨物量(万トン、推定))× 価格 0.60(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 36 億円・営業利益 3 億円
倍率:事業の ROE は赤字で資本コストを大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)ではなく、土地・建物と運転資本の売れる価値から借入を引いた床を取り、今の自己資本 255 億円に 0.18 倍を掛けた(床の 44 億円と同程度)。純有利子負債 154 億円を足した EV で見ても営業利益が赤字で倍率は意味を持たないので、売れる資産の床で測った。
確率:大型再開発が止まり、建材で採算割れの案件が続く筋書き。赤字の期は過去 20 年に 3 回ある。2001〜02 年のように営業利益率が赤字に沈んだ時期もあり、小さくない確率で置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建材(ビル用サッシ・カーテンウォール・住宅建材)
ビルの窓・外壁の設計・製造・施工。新築とリニューアル。
| 数量施工・出荷面積(万㎡、推定) | 価格1 万㎡あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 89.5 | 8.05 | 720 | 37 |
| 10 年後 中立 | 85.0 | 11 | 930 | 45 |
取り方:売上は有報の構成比 71% から約 720 億円。面積は開示がなく、1 ㎡あたり約 8 万円(アルミ窓・カーテンウォールの平均)で割った推定。数量は実質、物価・地金高・施工費の上昇は単価に入れた。
形材外販
アルミ形材と精密加工品の外販。
| 数量出荷量(万トン、推定) | 価格1 万トンあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.2 | 70 | 225 | 3 |
| 10 年後 中立 | 3.0 | 94 | 286 | 4 |
取り方:売上 225 億円を、1 トンあたり約 70 万円(地金込みの形材)で割った推定。単価の大半はアルミ地金の価格で、為替と LME 相場に連動する。
環境(飛灰処理プラント)
ごみ焼却灰の無害化プラントの設計・施工。
| 数量受注・完工件数(件、推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 1.65 | 33 | 3 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 2.21 | 44 | 4 |
取り方:売上 33 億円を年 20 件と推定し、1 件あたり約 1.65 億円とした。案件は自治体向けで、年ごとの振れが大きい。
物流(倉庫・輸送)
グループ会社の不二倉業による営業倉庫と輸送。
| 数量取扱貨物量(万トン、推定) | 価格1 万トンあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 66.0 | 0.50 | 33 | 4 |
| 10 年後 中立 | 66.0 | 0.67 | 44 | 5 |
取り方:売上 33 億円を、1 トンあたり数千円の保管・輸送料で割った推定。千葉の営業倉庫の新設で物量が増えている。
リスクと懸念
ビル新築の縮みと工期の遅れ
非住宅の新築は人口減と人手不足、建設費の高騰で縮む。大型案件の着工が遅れると売上が期ずれを起こし、2026 年 3 月期も売上は 3% 減った。来期の営業利益予想は 28% の減益。
アルミ地金の高騰と転嫁の遅れ
建材と形材外販の主原料はアルミ地金で、為替と LME 相場で動く。形材外販は転嫁の時間差で利益が消える年がある。建材も入札案件は固定価格で受けると原価が上振れる。
借入の重さと金利の上昇
純有利子負債は 154 億円で、自己資本比率は 3 割に届かない。変動金利の借入が多く、金利が上がるほど利益が削られる。2026 年 3 月期は投資のため借入が 46 億円増えた。
競合との価格競争
LIXIL、YKK AP、三協立山が大手で、受注は入札と相見積が多い。需要が弱い年には、採算割れの受注が増えるおそれがある。
IT 基盤の再構築と全社費用
IT 基盤の刷新は費用が上振れ、会社自身が「一部遅れ」と認める。全社費用は約 19 億円とセグメント利益の 4 割を占め、これが物価以上に膨らむと利益を食う。
資本の使い方
利益の 8 割を内部に残して投資するが、その稼ぎが資本コストを超える証拠はまだ薄い。配当を厚くしないままだと、自己資本の厚みが価値に変わらない。
今後の分かれ目
- リニューアルの受注が増え、建材の利益率が 5% を超え続けたら
- 中立の利益率を上げ、楽観・やや楽観の確率を上げる。VE・CD 提案が定着した証拠になる。
- ビル新築の着工が 2 年続けて 1 割以上減ったら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。数量の減りが構造的だと判断する。
- アルミ地金が急騰し、形材外販の利益率が 1% を割ったら
- 形材外販の中立の利益率を下げ、全体を少し悲観に寄せる。
- 純有利子負債が 150 億円を超えたまま減らず、配当性向が 2 割台にとどまったら
- 資本の使い方への信頼が下がる。ROE が資本コストに届かないまま積み上がるので、倍率を保守的に見る。
- 追加の株主還元(増配・自社株買い)と遊休資産の売却が出たら
- 還元の額が増え、価値が上がる。中立の払い出しを増やす。
見ておくもの
- 四半期の建材の受注高・受注残と、リニューアル比率
- アルミ地金(円建て)の相場と、形材外販の利益率
- 純有利子負債と支払利息、投資額(IT・省力化)
- 配当と追加還元の方針、政策保有株・遊休資産の売却
- 全社費用の推移
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。ROE が資本コストに届かない筋書きが多く、PER の上限は 1÷k の 11.1 倍。利益の質に応じて上限の 6〜9 割に置いた。今の PER(4.5 倍)や同業の倍率は使っていない。数量は実質、物価の 1.34 倍は価格にだけ入れた。償却は今の設備の分は据え置き、IT 投資と省力化の分だけ新しい値段で積んだ。リースは小さく、新リース会計の影響は軽い。数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→12.25 倍・やや楽観 PER 9.3→11.76 倍・中立 PER 8.3→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。