結論
三洋工業は、ビルや学校、住宅の天井・壁・床を支える鋼製の下地材と、アルミ建材を作る建材メーカーだ。筆者の結論は、今の値段は割安というものだ。最大の理由は、時価総額 122 億円のうち、半分近い 66 億円が差し引き後の現金という点にある。
事業は地味だが堅い。自己資本比率は 73%、借金はほぼない。営業利益は直近で 18 億円と、2024 年 3 月期の 25 億円から減ったが、赤字の年は 2011 年 3 月期が最後だ。
現金を除いた事業だけを見れば、時価総額 56 億円で純利益 14 億円を買うことになる。買い物としては、かなり割安である。
ただし、住宅着工の低迷と鋼材の値上がりで、営業利益は 3 年連続の減益が見込まれる。株主の取り分も、現金が多い割にまだ薄い。それでも前期は配当と自社株買いで純利益の 1.4 倍を株主に戻した。この姿勢が続くかぎり、現金は株主の手元に回ってくる。反対に、成長投資の名で現金が使い切られれば、この割安さは消える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、三洋工業は「安全な事業と厚い現金を、安く買える会社」と映る。
事業は、景気で利益が増減する建材だが、赤字は 15 年出していない。借金がなく、現金が豊富で、自社の施工網も持つ。永続する新築需要に頼る事業ではないが、改修と耐震の需要が下支えする。
堀は厚くない。それでも、資本の使い方が改善に向かっている点を高く見る。前期の総還元は純利益の 1.4 倍で、配当だけでなく自社株買いにも動いた。経営が現金を持ちすぎていると自覚しているしるしだ。
気になるのは、成長投資の使い道だ。42.5 億円は小さな額ではない。収益の出る設備投資ならよいが、買収で現金が減るなら話は別になる。
筆者の見立てでは、中立の筋書きの価値が今の時価総額を大きく上回る。事業が 3 割の確率で今より悪くなる前提でも、現金と土地、運転資本が値段の下を支える。安全域は十分に取れる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、建築に使う金属の下地材である。2026 年 3 月期の売上 290 億円は、主に軽量壁天井下地、床システム、アルミ建材の三つで稼ぐ。
軽量壁天井下地は、石こうボードを貼る前に壁や天井の骨組みになる、薄い鋼材だ。JIS 規格品の「SICS」が普及品で、耐食性を高めためっき鋼板の製品や、屋外用の耐風圧天井もある。地震のとき落ちにくい、重さ 1 平方メートルあたり 2 キロ以下の軽量天井にも力を入れている。学校体育館では高いシェアを持つといわれる。
床システムは、事務所や学校で配線を床下に通す二重床などで、戸建住宅向けの鋼製床下地材もある。アルミ建材は、窓まわりや外装の部材だ。
三洋工業は、製品の開発から現場の施工までを自社と施工の協力会社で一貫してこなす。全国に販売と施工の網を持つ点が、仕入れて売るだけの商社と違う強みだ。連結の従業員は 383 人で、臨時を含めても 500 人に届かない。
本社費などの共通費は、全社で年 4 億円弱かかる。売上の中心は国内で、海外の比重は小さい。為替の影響を受けにくい点も、利益の読みやすさにつながる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、中ぐらいだ。下地材そのものは規格品で、値段で競われやすい。ただ、施工まで引き受ける体制と、体育館や耐震天井といった仕様の厳しい分野の実績が、価格競争から一歩距離を置く力になっている。
専門の中小メーカーは多いが、天井・壁・床・アルミまで一社で揃える会社は少ない。その品ぞろえと全国の施工網が、大手ゼネコンやハウスメーカーとの取引を支える。
資本の効率は高くない。過去 10 年の ROE(自己資本利益率)の中央値は 6.5% で、資本コストの手前にとどまってきた。手元の現金が積み上がっているのが一因だ。直近の営業利益率は 6.3% と、2024 年の 8.1% を下回る。
財務は強く、借金は 7 億円しかない。協力会社の持株会が 17% を持つ安定した株主構成で、2025 年には提案型の株主 TNN アドバイザーズが保有を 0% にした。
経営は、2025 年度から 3 か年の中期計画で、事業の基盤強化と資本の最適化を掲げる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要の中心は、ビルや商業施設、学校の新築・改修と、戸建住宅だ。国内の建築需要は、人口の減少とともに、長い目で縮む。野村総合研究所の予測では、新設住宅着工は 2025 年度の 71 万戸から、2030 年度に 80 万戸へ戻り、2040 年度に 61 万戸まで減る。10 年で見れば、中立では 2〜5% の減少にとどまる。
非住宅は、建築費の上昇で新築が絞られる一方、既存の建物を地震に強くする改修が増える。特定天井の落下を防ぐ規制の対象が広がり、軽量天井への入れ替えが需要を生む。三洋工業が地震対策用天井に力を入れる理由だ。
価格は、鋼材とアルミの値段に左右される。中国の鉄鋼の過剰生産が鋼材価格の天井を抑えているが、人件費と物流費は物価並みに上がる。転嫁が遅れると利益率が下がり、直近の 2 年がそうだった。
競争は、専門の中小メーカーが多く、規格品は値下げ圧力が強い。総合的に揃える会社は少なく、差が出るのは施工を含めた提案力と、仕様の厳しい分野の実績だ。
業界の構造変化は、施工の人手不足である。現場の職人が減るほど、組みやすい軽量化・システム化した製品に価値が出る。
資本政策と M&A
資本政策の中心は、現金の戻し方だ。2026 年 3 月期は配当が純利益の 46% で、さらに自社株買いを約 14 億円行った。合わせて約 20 億円と、純利益の 1.4 倍を株主に戻した。
中期計画「SANYO VISION 79」(2025〜2027 年度)は、資本の最適化を掲げる。最終年度に売上 350 億円・営業利益 22.5 億円をめざし、成長投資に 42.5 億円を見込む。直近の設備投資は 15 億円と、すでに膨らんでいる。
手元の現金は 73 億円。借金を引いた差し引き後の現金は 66 億円で、時価総額の半分に当たる。運転資金を除いても、40 億円強は事業に使い道が見えにくい。
株主構成は、協力会社の持株会が 17%、自己株式が 5% で、市場に出回る株は多くない。提案型の株主が 2025 年に退いたことで、圧力はひと段落した。
M&A は、これまで大きなものはない。成長投資の使い道が M&A なら、現金の価値が目減りしかねない点に注意が要る。株主優待は実施していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額 122 億円のうち、差し引き後の現金が 66 億円ある。残りの事業に払う値段は 56 億円で、純利益 14 億円の 4 倍にすぎない。事業が今の半分に縮んでも、現金で十分に元が取れる。
会社は現金を戻し始めている。前期は配当に加えて 14 億円の自社株買いを行い、総還元は純利益の 1.4 倍に達した。中期計画も資本の最適化を掲げており、この姿勢は続く。自己株式を減らせば、1 株の価値はさらに上がる。
事業の質も悪くない。耐震天井の規制強化で改修需要が出ているうえ、施工の人手不足で組みやすい軽量製品の価値は高まる。住宅は着工が減るが、2030 年度に向けて戻る予測もあり、非住宅や改修が補う。
中期計画の最終年度(2028 年 3 月期)は営業利益 22.5 億円をめざす。実現すれば、利益は今の 2 割増しになる。TNN が去ったあとも、協力会社の持株会が 17% を持つ安定株主構成で、経営は落ち着いて資本を戻せる。
慎重な見方
利益は 3 年連続で減る見通しで、足元の勢いは弱い。住宅着工の低迷で主力の下地材が減り、第 1 四半期の営業利益は前年を 8% 下回った。鋼材とアルミの値上がりを転嫁するのも遅れている。
現金が多いことは、それだけでは割安の根拠にならない。経営が現金を使い道に困り、成長投資の名のもとに買収や設備に投じれば、価値は目減りする。前期の設備投資 15 億円は、営業キャッシュフローの 9.6 億円を上回った。
利益の質も気になる。ROE は 6〜7% と、資本コストに届かない水準が続く。市場に出回る株は少なく、売買も薄いため、割安なまま放置される典型的な小型株だ。
10 年の目で見れば、人口減で新築は縮む。野村総合研究所の予測でも、2040 年度の着工は 61 万戸と、足元から 2 割近く減る。専門の中小メーカーとの価格競争が強まれば、営業利益率は 5% を割りうる。現金を除いた事業の価値は、見かけより小さい。
どちらに重みを置いたか
現金の厚さと還元の変化は、強気の言い分を裏づける。利益の減少と成長投資の使い道は、慎重な言い分に根拠がある。確率は中立 37%、やや悲観 26%、悲観 12% とし、楽観側は合計 25% に抑えた。それでも中立の価値は今の時価総額を大きく上回り、悲観でも現金と土地が下値を支える。大きな安全域のある割安と評価する。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 9,107 円256 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 3,850 円108 億円)。 今の値に割り戻すと 7,236 円203 億円、今との差 +65.6%、 期待の年率 +11.5%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 18,524 円520 億円 | 5,873 円165 億円 | +458.3% | +18.8% | 1,708 円48 億円 |
| やや楽観 | 18% | 14,167 円398 億円 | 4,841 円136 億円 | +335.0% | +15.8% | 3,422 円96 億円 |
| 中立 | 37% | 10,804 円304 億円 | 4,200 円118 億円 | +243.3% | +13.1% | 5,551 円156 億円 |
| やや悲観 | 26% | 3,482 円98 億円 | 3,488 円98 億円 | +59.5% | +4.8% | 1,812 円51 億円 |
| 悲観 | 12% | 2,976 円84 億円 | 890 円25 億円 | −11.5% | −1.2% | 464 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 9,107 円256 億円 | 3,850 円108 億円 | +196.5% | +11.5% | 12,957 円364 億円 |
今の株価時価総額 4,370 円123 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 耐震改修と住宅の持ち直しで、営業利益率が 8% 台に戻る 利益 27 億円 · PER 17.9 倍 · 株価時価総額 18,524 円520 億円
10 年後、地震対策用の軽量天井が公共施設と学校に広がり、改修の需要が新築の縮みを上回る。施工の人手不足で、組みやすい軽量・システム化製品が選ばれる。壁・天井下地の数量は今の水準を保ち、値段は物価より少し速く上がる。床システムとアルミ建材は、改修と省エネ窓の需要で 25% 伸びる。営業利益率は直近の最高 8.1% を超える 9% 前後に乗る。会社の中期計画(営業利益 22.5 億円)は軽々と超え、営業利益は 35 億円に達する。現金は戻され続け、配当は利益の 6 割を超える。ただし建築の需要に左右される事業であることは変わらず、ROE は 10% 台前半にとどまる。
- 壁・天井下地(鋼製下地材・耐震天井):数量 70.0(出荷重量(千トン))× 価格 3.45(1 千トンあたりの売上(億円))→ 売上 242 億円・営業利益 21 億円。数量 ×1.00・単価指数 ×1.38・利益率 8.5%
- 床システム・アルミ建材・その他:数量 41.2(出荷重量換算(千トン相当))× 価格 4.83(1 千トン相当あたりの売上(億円))→ 売上 199 億円・営業利益 20 億円。数量 ×1.25・単価指数 ×1.38・利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 27 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.8% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)42 億円。全体の PER 17.91 倍、時価総額 520 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:耐震天井の改修が広がり、住宅も 2030 年度の 80 万戸に向けて持ち直す姿。直近 2 年で利益率が 8.1% から 6.3% に下がったため、実現しても 10 年続く確率は低い。
やや楽観 18% 改修が下支えし、利益率が 7% 台に戻る 利益 22 億円 · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 14,167 円398 億円
壁・天井下地は、新築の縮みを耐震改修が補い、数量はほぼ今の水準にとどまる。鋼材の値上がりを数か月遅れで転嫁でき、営業利益率は 7.8% まで戻る。床システムとアルミは、省エネ改修で 12% 伸びる。営業利益は 29 億円、純利益は 22 億円。会社は設備投資を回収し、配当は利益の 5 割、自社株買いも続ける。成長投資の 42.5 億円は、自社工場の省人化に使われ、買収は小さなものにとどまる。成功ではあるが、過去最高の利益を大きく上回るほどではない。現金は引き続き厚く、ROE は 9% 近くに上がる。
- 壁・天井下地(鋼製下地材・耐震天井):数量 67.9(出荷重量(千トン))× 価格 3.40(1 千トンあたりの売上(億円))→ 売上 231 億円・営業利益 18 億円。数量 ×0.97・単価指数 ×1.36・利益率 7.8%
- 床システム・アルミ建材・その他:数量 37.0(出荷重量換算(千トン相当))× 価格 4.76(1 千トン相当あたりの売上(億円))→ 売上 176 億円・営業利益 16 億円。数量 ×1.12・単価指数 ×1.36・利益率 9.2%
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.2% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)42 億円。全体の PER 16.32 倍、時価総額 398 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:原材料の転嫁が進み、改修需要が新築の縮みを補う姿。中期計画の方向と一致するため、楽観側では厚めに置いた。
中立 37% 住宅は小さく縮み、改修が補う。利益率は今の水準 利益 18 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 10,804 円304 億円
壁・天井下地は、住宅の着工が 5% ほど減る一方、耐震天井の改修が補い、数量は今の 94% で落ち着く。値段は物価並みの 1.34 倍。営業利益率は 7% で、直近の 6.3% よりやや高いが、最高の 8.1% には届かない。床システムとアルミは数量が横ばいで、価格が物価並みに上がる。本社費は物価で増える。営業利益は 24 億円、純利益は 18 億円。会社は純利益の 7 割強を戻し、余った現金 42 億円は別に残る。成長投資で新しい設備は増えるが、償却費は取得時の値段のままで、利益率の足を引きにくい。自己資本は 250 億円に積み上がり、ROE は 7% 台にとどまる。
- 壁・天井下地(鋼製下地材・耐震天井):数量 65.8(出荷重量(千トン))× 価格 3.35(1 千トンあたりの売上(億円))→ 売上 220 億円・営業利益 15 億円。数量 ×0.94・単価指数 ×1.34・利益率 7.0%
- 床システム・アルミ建材・その他:数量 33.0(出荷重量換算(千トン相当))× 価格 4.69(1 千トン相当あたりの売上(億円))→ 売上 155 億円・営業利益 13 億円。数量 ×1.00・単価指数 ×1.34・利益率 8.5%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)42 億円。全体の PER 14.93 倍、時価総額 304 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:住宅の着工は 2030 年度に戻ったあと縮み、改修が補う。鋼材の転嫁は遅れ気味で、利益率は直近の水準にとどまるという落としどころ。
やや悲観 26% 専門メーカーとの競争で利益率が 5% 台に下がる 利益 11 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 3,482 円98 億円
新設住宅が 65 万戸を割り、非住宅の新築も建築費の高止まりで絞られる。専門の中小メーカーが規格品を値引きし、三洋工業は数量を 12% 落とす。鋼材の転嫁も遅れ、営業利益率は 5% 台に沈む。施工の労務費が上がり、採算が悪化する。営業利益は 14 億円、純利益は 11 億円まで減る。会社は配当を縮めるが、自社株買いは続けようとする。成長投資の一部は回収が遅れ、減損の恐れも出る。事業は残るが、株主の取り分は細る。構造的に負けた姿で、優良な会社とは言えなくなる。それでも借金はなく、現金が守りの役目を果たす。
- 壁・天井下地(鋼製下地材・耐震天井):数量 61.6(出荷重量(千トン))× 価格 3.20(1 千トンあたりの売上(億円))→ 売上 197 億円・営業利益 10 億円。数量 ×0.88・単価指数 ×1.28・利益率 5.2%
- 床システム・アルミ建材・その他:数量 30.4(出荷重量換算(千トン相当))× 価格 4.38(1 千トン相当あたりの売上(億円))→ 売上 133 億円・営業利益 9 億円。数量 ×0.92・単価指数 ×1.25・利益率 6.5%
倍率:事業の ROE は約 5% で資本コストを大きく下回る。長く続く ROE は約 6.5%、g 4% の正当化 PER は約 9.6 倍。構造的に負けた筋書きとして、約 7 割の 6.5 倍に置いた。稼ぐ力は 純利益÷k で約 130 億円、置いた時価総額は約 100 億円で、それを超えない。
確率:新築が縮み、専門の中小メーカーが値引きで数量を取りにくる姿。直近 2 年の利益率の低下が示す方向と一致するため、中立に次ぐ厚みを置いた。
悲観 12% 住宅の急減と値引き競争で、赤字寸前まで落ちる 利益 2 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 2,976 円84 億円
新設住宅が 55 万戸まで落ち込み、非住宅の新築も凍りつく。専門メーカーとの値引きが激化し、数量は 3 割近く減る。営業利益率は 2〜3% に落ち、本社費を賄うのがやっとになる。営業利益は 2 億円まで細る。成長投資の設備は稼働率が低く、減損が出る。配当は大きく縮み、自社株買いは止まる。借金はなく、現金と運転資本が会社を守る。それでも株主が受け取れる額は、現金の大半を使い道が決まらないまま抱え込まれる分だけ割り引かれる。2009〜2011 年の 3 期連続赤字が再び来た姿だ。業界の再編や、同業による買収提案が出る余地はあるが、その値段が現金の価値を映すとは限らない。
- 壁・天井下地(鋼製下地材・耐震天井):数量 50.4(出荷重量(千トン))× 価格 2.88(1 千トンあたりの売上(億円))→ 売上 145 億円・営業利益 4 億円。数量 ×0.72・単価指数 ×1.15・利益率 2.5%
- 床システム・アルミ建材・その他:数量 24.8(出荷重量換算(千トン相当))× 価格 3.85(1 千トン相当あたりの売上(億円))→ 売上 95 億円・営業利益 3 億円。数量 ×0.75・単価指数 ×1.10・利益率 3.0%
倍率:稼ぐ力(純利益 1.5 億円 ÷ k)より、床の売れる資産が大きい。床は現金の戻り分と土地・工場の売却、運転資本の回収を合わせた約 90 億円。今の自己資本 209 億円に 0.40 倍を掛けて 84 億円に置いた。清算されない限り現金の使い道は少数株主が決められないため、床は純現金を下回る。
確率:住宅の着工が急減し、値引き競争が重なる姿。2009〜2011 年の 3 期連続赤字の実例があるため、悲観の確率は 5% を超えて置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
壁・天井下地(鋼製下地材・耐震天井)
石こうボードを貼る前の骨組みになる鋼製の天井・壁下地、地震対策用の軽量天井。ビル・学校・住宅に使われる。
| 数量出荷重量(千トン) | 価格1 千トンあたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 70.0 | 2.50 | 175 | 12 |
| 10 年後 中立 | 65.8 | 3.35 | 220 | 15 |
取り方:会社の開示はセグメントを分けておらず、製品別の売上は推定。壁天井下地を売上の約 6 割(175 億円)、平均単価を加工品の相場から 1 トンあたり約 25 万円と置いて、出荷量を約 7 万トンとした。数量は重量、価格は 1 トンあたりの売上で物価の分を持つ。利益は全社の営業利益率 6.3% から、比率を推定して配分した。推定である。
床システム・アルミ建材・その他
事務所・学校の二重床、戸建住宅の鋼製床下地、窓まわりや外装のアルミ建材、施工。
| 数量出荷重量換算(千トン相当) | 価格1 千トン相当あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 33.0 | 3.50 | 116 | 10 |
| 10 年後 中立 | 33.0 | 4.69 | 155 | 13 |
取り方:残りの約 4 割(115 億円)を床・アルミ・その他とし、アルミは鋼材より単価が高いため 1 千トン相当あたり 3.5 億円と置いて数量を約 3.3 万トン相当とした。製品ごとの内訳は開示がなく、推定である。
リスクと懸念
住宅着工の低迷
主力の下地材は新設住宅着工と連動する。2026 年 3 月期は着工の低迷で売上が計画を下回った。野村総合研究所は 2040 年度の着工を 61 万戸と見る。回復が遅れれば、営業利益が 15 億円を割る年も出てくる。
鋼材・アルミ・物流費の転嫁遅れ
原材料や運賃が上がっても、値上げに数か月かかる。直近の 2 年は営業利益率が 8.1% から 6.3% に下がった。専門の中小メーカーが値段を据え置けば、転嫁はさらに遅れる。
成長投資の使い道
中期計画は成長投資に 42.5 億円を見込む。前期の設備投資 15 億円は営業キャッシュフローを上回った。収益の出る投資でなければ、現金が目減りし、割安の根拠が崩れる。
施工の人手不足
施工を協力会社に頼るため、職人の不足と労務費の上昇が直撃する。工期の遅れは売上の計上を後ろにずらし、採算も悪化させる。
市場の薄さ
協力会社の持株会が 17%、自己株式が 5% を占め、市場に出る株は少ない。売買が薄く、割安なまま放置されやすい。提案型の株主が去ったことで、値上がりの触媒が一つ減った。
改修需要の読み違い
耐震天井の改修需要は、規制の運用と建物所有者の資金に左右される。想定ほど出なければ、新築の縮みを補えない。
今後の分かれ目
- 営業利益が通期で 22 億円を超える
- 中期計画の最終年度の目標に近づく。楽観側の確率を上げてよい。
- 自社株買いや増配が続き、総還元が純利益を上回る年が続く
- 余った現金の戻り方が 1.0 であると確かめられる。価値の見方がさらに上向く。
- 成長投資が大型の買収に使われる
- 現金が事業に化ける。買収価格が事業の価値を超えるかを別に確かめ、割安の根拠を見直す。
- 新設住宅着工が 65 万戸を下回る
- 壁天井下地の数量が想定より速く縮む。やや悲観の確率を上げる。
- 耐震天井の規制対象が広がる
- 改修需要が新築の縮みを補う。壁天井下地の数量を引き上げてよい。
- TOB や大株主の動きが出る
- 現金の価値が価格に反映される。提案価格が現金と事業の価値を映しているかを別に確かめる。
見ておくもの
- 営業利益率(8% 台に戻るか、5% 台に下がるか)
- 新設住宅着工戸数と非住宅の改修案件
- 設備投資の額と使い道(買収の有無)
- 配当・自社株買いなど総還元の水準
- 鋼材・アルミ価格と値上げの浸透
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価・PER を見ず、壁天井下地と床・アルミを数量×価格で積んだ利益から置いた。資本コストは基本 7.5% に循環 +0.5% で 8.0%。中立の ROE は約 7.3% で k を少し下回り、式の PER は約 11.9 倍、置いたのは 9.5 倍。余った現金 42 億円は事業の利益と分けて足した。やや悲観・悲観は構造的な負けとして稼ぐ力と売れる資産の税後から置き、自己資本の厚さや過去の PBR の底は根拠にしていない。中立の営業利益率は 6.3% で、過去 12 年の最高 8.1% より低い。家賃を営業費用に入れた形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.5→17.91 倍・やや楽観 PER 12.5→16.32 倍・中立 PER 12.5→14.93 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。