結論
昭和鉄工は、福岡県宇美町の熱の機械の老舗だ。業務用のボイラーやヒートポンプ給湯機、空調機を作り、橋の防護柵と鋳物を手がけ、据え付けた機械の取り替えと保守で稼ぐ。筆者の結論はやや割安である。利益率の立て直しは 3 年続いた本物の変化で、今の時価総額はその稼ぎを半分ほどしか映していない。
10 年ほど前まで、この会社の営業利益率は 0〜3% だった。2023 年度からの中期経営計画で、原材料の値上がりに合わせて売値を改め、工場を自動化した。利益率は 4.9%、8.4%、8.9% と 3 年続けて計画を上回った。会社は 2028 年度に売上 180 億円、利益率 8.9% を目指す。
筆者は 10 年後の営業利益を 17 億円ほどと見る。熱の機械はガスから電気への置き換えが進み、取り替えの需要が土台になる。資本の使い方には不満が残る。配当性向は 1 割ほどで、地元の銀行などの株を 88 億円も持ち、自己資本は積み上がるばかりだ。それでも、今の値段は 10 年の稼ぎに比べて安い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、昭和鉄工は「事業はよくなったが、資本の置き場所が悪い会社」だ。本業は九州の病院や工場に熱を届け、据え付けたあとも面倒を見る地味な仕事である。値付けを改めてから 3 年、利益率は 9% 近くに上がった。今の時価総額は、この本業の稼ぎの 5 年分ほどにすぎない。
気になるのは、稼いだお金の行き先だ。配当は利益の 1 割ほどで、残りは地元の銀行やガス会社の株と現金に積み上がる。これらの株は配当を生むが、株主が自由に使えるお金ではない。持ち合いは、経営を守る盾にもなる。筆者は、この資産を価値の半分ほどにしか数えない。
それでも安全域、つまり払う値段と価値の差はある。本業の稼ぎが 10 年でゆっくり伸びるだけで、今の値段は安い。悲観の筋書きでも、持ち合い株という床がある。経営が持ち合いを解き、配当を厚くすれば、価値はさらに表に出る。オーナーとして見るなら、本業の立て直しが続くかと、資本の使い方が変わるかの 2 点を見続けたい。
何で稼ぐ会社か
事業は 3 つある。柱の機器装置は売上の 54% で、業務用のボイラー、業務用エコキュートなどのヒートポンプ給湯機、空調機、それに工業用の熱処理炉や特殊な電気ヒーターを作る。病院、ホテル、学校、工場、温浴施設が主な客だ。素形材加工は売上の 16% で、橋の防護柵や街路の車止めといった景観製品と、砂型や精密の鋳物を手がける。
残る 30% がサービスエンジニアリングで、据え付けた機械の点検、修理、取り替えの工事を請け負う。ボイラーや給湯機は 15〜20 年で取り替える。九州を中心に長年入れてきた機械が、そのまま次の仕事の種になる。2026 年 3 月期の営業利益率は機器装置が 9.0%、サービスが 10.4%、素形材が 5.3% だった。
成長の芽は 2 つある。1 つは脱炭素だ。ガスや油のボイラーを、電気のヒートポンプとの組み合わせに替える提案を強めている。もう 1 つは半導体で、後工程に使う熱風循環式の電気炉を開発し、特殊ヒーターの新しい客を探している。
本社と工場は福岡県にあり、宇美町と古賀に工場を持つ。売上の 97% は国内だ。福岡証券取引所だけに上場し、株の売買は少ない。
優良さと弱いところ
昭和鉄工の優良さは、熱の機械を作るだけでなく、据え付けたあとも面倒を見る形にある。九州の病院やホテルに入れたボイラーや給湯機は、点検と修理で毎年の仕事を生み、15〜20 年後には取り替えの注文になる。この「売ったあとの稼ぎ」が、全社の利益の 3 分の 1 を占める。
いちばんの変化は値付けだ。かつては原材料の値上がりを売値に乗せきれず、利益率は 0〜3% に沈んでいた。2023 年度からは原価と売値をデータで管理し、値上げを通した。工場にはパンチレーザーの複合機やマシニングセンタを入れ、手間を大きく減らした。3 年続けて計画を上回った実績は、偶然の追い風だけでは説明しにくい。
弱さもある。規模が小さく、業務用の給湯・空調ではノーリツやリンナイ、ダイキン工業、三菱電機のような大手と同じ客を取り合う。素形材は公共工事の予算に左右される。そして資本の使い方だ。自己資本の 3 割超が投資有価証券で、本業の稼ぎを薄めている。堀、つまり他社がまねできない強みは、九州の据え付けの厚みという地域の堀にとどまる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業務用の熱の機械の市場は、新しく建てる建物と、古い機械の取り替えの 2 つで動く。国内の新築は人口減で細るが、取り替えは 15〜20 年ごとに必ず来る。1990 年代から 2000 年代に入れたボイラーや給湯機が、いま取り替えの時期を迎えている。
変化の芯は脱炭素だ。ガスや油を燃やすボイラーから、電気のヒートポンプへの置き換えが進む。国はビルの省エネ基準を引き上げ、ZEB と呼ぶエネルギー消費ゼロの建物を後押ししている。大手の空調メーカーもこの市場に力を入れるので、競争は厳しくなる。一方で、ヒートポンプとボイラーを組み合わせる設計や、据え付けたあとの省エネの見直しは、地域で客に寄り添う中堅の会社が得意とする仕事だ。
人手の不足も効く。建設と設備の工事の担い手が足りず、工事の遅れが目立つ。保守と取り替えの網を持つ会社は、値段を守りやすい。景観製品は橋の補修の予算に連れて動き、国の老朽インフラ対策が下支えする。
10 年の流れでは、筆者は機器の台数は実質で 5% ほど増え、保守と取り替えの件数は 15% ほど増えると見る。値段は物価並みに上がる。業界は 2008 年の金融危機や 2020 年代初めの資材高で利益を失った歴史があり、景気と資材の波は残る。
資本政策と M&A
資本の使い方は、この会社のいちばんの弱点だ。2026 年 3 月期の配当は普通配当に、その 2 倍の特別配当を足したが、総額は 1.2 億円、配当性向は 11% にとどまる。自社株買いはしていない。会社は「安定的な配当の継続」と内部留保の充実を方針に掲げる。
その内部留保は、地元の株に眠っている。投資有価証券は 2026 年 6 月末で 88 億円と、時価総額を上回る。大株主には福岡銀行、西日本シティ銀行、北九州銀行、西部ガスホールディングス、西日本鉄道が並び、持ち合いの色が濃い。株の値上がりで自己資本は 1 年で 29 億円増えたが、多くは評価の差額だ。
借入は 32 億円、現金は 30 億円で、ほぼ差し引きゼロである。M&A の歴史は乏しい。福証だけの上場で株の売買は少なく、東証の上場維持の圧力も受けにくい。持ち合い株を売って還元に回す方針が示されれば、株主の価値は大きく変わる。逆に、示されなければ現金と株は会社の中にとどまり続ける。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利益率の立て直しは本物だ。2023 年度から 3 年続けて、会社は自ら掲げた売上と利益率の目標を上回った。原価と売値をデータで管理し、工場を自動化した成果で、資材が下がった追い風ではない。新しい中期経営計画でも 2028 年度に利益率 8.9% を掲げ、手堅い会社の計画として信じてよい。
需要の土台も厚い。九州の病院やホテル、工場に入れたボイラーと給湯機は、15〜20 年ごとに取り替えが来る。脱炭素でガスのボイラーをヒートポンプに替える流れは、その取り替えの単価を押し上げる。工事の担い手が足りない中、据え付けと保守の網を持つ会社は値段を守れる。半導体の後工程の電気炉や特殊ヒーターは、新しい客を開く。
資産の裏づけは時価総額を上回る。投資有価証券だけで 88 億円あり、今の時価総額は本業の利益の 5 倍ほどだ。持ち合いの見直しは東証も企業も避けられない流れで、売って還元に回せば株主の価値は一気に表に出る。
慎重な見方
利益率 9% はこの会社の 30 年の歴史で初めての水準だ。10 年ほど前までは 0〜3% で、2022 年度と 2023 年度は赤字だった。今期の会社予想はすでに 7.7% へ下がる。資材高と人手不足の中で値上げが通った時期の山を、地の力と取り違えてはいけない。
競争も厳しくなる。業務用のヒートポンプ給湯と空調には、ダイキン工業や三菱電機、リンナイ、ノーリツが本気で入ってくる。九州の地盤は強いが、規模で劣る中堅が大手と同じ土俵で値段を守れる保証はない。景観製品は公共工事の予算次第で、鋳物は客の設備投資で振れる。
資本の使い方も変わる兆しがない。配当性向は 1 割ほどで、自己資本の 3 割超が地元の銀行などの株だ。福証だけの上場で、東証の圧力も届きにくい。持ち合い株は株主の手に渡らないお金で、帳簿の価値を足し上げても株主の価値にはならない。
今期は 1Q から売上が 1 割減り、サーモデバイスの大口の反動が出た。受注も前の期に 1% 減っており、山の利益が続く前提には立てない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方がやや勝つ。利益率の立て直しは 3 年続き、計画を毎年上回った記録がある。値付けと自動化という中身があり、資材の追い風だけではない。一方で、山の利益を割り引く慎重な見方にも理がある。中立は会社の計画より少し低い利益率 8% に置き、確率は中立を厚く、楽観側をやや厚くした。持ち合い株は価値の半分ほどしか数えず、悲観の床としてだけ使った。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 19,383 円160 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,829 円15 億円)。 今の値に割り戻すと 10,223 円84 億円、今との差 +49.2%、 期待の年率 +12.0%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 30,963 円255 億円 | 2,671 円22 億円 | +391.0% | +17.2% | 3,363 円28 億円 |
| やや楽観 | 22% | 26,349 円217 億円 | 2,186 円18 億円 | +316.6% | +15.3% | 6,278 円52 億円 |
| 中立 | 38% | 21,358 円176 億円 | 1,821 円15 億円 | +238.4% | +13.0% | 8,808 円73 億円 |
| やや悲観 | 20% | 10,019 円83 億円 | 1,457 円12 億円 | +67.5% | +5.3% | 2,295 円19 億円 |
| 悲観 | 10% | 3,703 円31 億円 | 971 円8 億円 | −31.8% | −3.7% | 467 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 19,383 円160 億円 | 1,829 円15 億円 | +209.7% | +12.0% | 21,212 円175 億円 |
今の株価時価総額 6,850 円56 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 脱炭素の取り替えに乗り、利益率 10% 超 利益 20 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 30,963 円255 億円
立て直した利益率がさらに上がり、脱炭素の波に乗る筋書きだ。九州の病院やホテル、工場で、ガスのボイラーをヒートポンプとの組み合わせに替える工事が相次ぐ。昭和鉄工は設計から据え付け、保守まで一貫して請け負い、取り替えの単価は物価より速く上がる。半導体の後工程の電気炉と特殊ヒーターも、九州に集まる半導体の工場で客をつかむ。
機器の台数は 3 割、保守と取り替えの件数も 3 割増える。営業利益率は 10% を超え、営業利益は 26 億円ほどになる。経営は持ち合い株の一部を売り、配当を増やす。それでも自己資本は積み上がり、ROE は資本コストにわずかに届かない。
- 機器装置:数量 3,510(出荷台数(台、推定))× 価格 420(1 台あたりの売上(万円。物価と機種の構成を含む))→ 売上 147 億円・営業利益 15 億円。3,510 台(1.30 倍)× 420 万円(1.39 倍、ヒートポンプとの組み合わせで単価が上がる)、営業利益率 10%
- 素形材加工:数量 5,040(出荷量(トン、推定))× 価格 69(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 35 億円・営業利益 2 億円。5,040 トン(1.05 倍)× 69 万円(1.38 倍)、営業利益率 6%
- サービスエンジニアリング:数量 11,700(工事・保守の件数(件、推定))× 価格 70(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 82 億円・営業利益 9 億円。11,700 件(1.30 倍)× 70 万円(1.39 倍)、営業利益率 11%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 255 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率 10% 超はこの会社に前例がない。ただ 3 年続けて計画を上回った勢いと、脱炭素の取り替えの厚みを考えて 1 割とした。
やや楽観 22% 新中計を達成し、その先もゆっくり伸びる 利益 17 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 26,349 円217 億円
新しい中期経営計画が達成され、その先もゆっくり伸びる筋書きだ。2028 年度に売上 180 億円、利益率 8.9% に届き、その後も取り替えの需要が続く。ヒートポンプ給湯と ZEB 向けの空調が機器の台数を押し上げ、保守の件数も据え付けた機械とともに増える。
営業利益は 22 億円ほどになる。景観製品は老朽インフラの補修の予算で底堅い。配当は利益とともに増えるが、配当性向は 1 割台のままで、持ち合い株も持ち続ける。自己資本は 2 倍に膨らみ、ROE は 7% ほどにとどまる。
株主にとっては、本業の稼ぎが着実に増える一方で、ためた利益の多くが会社の中にとどまる姿だ。持ち合いを解く動きが出なければ、価値の伸びは稼ぎの伸びより遅い。
- 機器装置:数量 3,240(出荷台数(台、推定))× 価格 411(1 台あたりの売上(万円。物価と機種の構成を含む))→ 売上 133 億円・営業利益 12 億円。3,240 台(1.20 倍)× 411 万円(1.36 倍)、営業利益率 9%
- 素形材加工:数量 4,800(出荷量(トン、推定))× 価格 68(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 33 億円・営業利益 2 億円。4,800 トン(横ばい)× 68 万円(1.36 倍)、営業利益率 5.5%
- サービスエンジニアリング:数量 11,000(工事・保守の件数(件、推定))× 価格 69(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 75 億円・営業利益 8 億円。11,000 件(1.22 倍)× 68.5 万円(1.36 倍)、営業利益率 10.5%
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 217 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:前の中計を 3 年続けて上回った会社が、少し高い目標を置いた。達成の見込みは十分にあるので 22% とした。
中立 38% 立て直しは定着し、利益率 8% 前後 利益 14 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 21,358 円176 億円
利益率の立て直しは定着するが、山からは少し下がる筋書きだ。値付けの管理と工場の自動化の効果は残り、昔の 0〜3% には戻らない。一方で、資材高が落ち着くと値上げの勢いは鈍り、大手との競争で利益率は 8% 前後に落ち着く。
機器の台数は実質で 5% 増え、保守と取り替えの件数は 15% 増える。値段は物価並みに上がる。営業利益は 17 億円ほどで、持ち合い株の配当が利益を下支えする。配当は安定配当の方針のまま小さく、自己資本は 230 億円ほどに膨らむ。ROE は 6% ほどで、資本コストを下回る。ためた利益は地元の株と現金に積み上がり、株主の手に届くのは一部だけだ。
- 機器装置:数量 2,840(出荷台数(台、推定))× 価格 402(1 台あたりの売上(万円。物価と機種の構成を含む))→ 売上 114 億円・営業利益 9 億円。2,840 台(1.05 倍)× 402 万円(物価並み 1.33 倍)、営業利益率 8%
- 素形材加工:数量 4,560(出荷量(トン、推定))× 価格 67(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 31 億円・営業利益 1 億円。4,560 トン(0.95 倍)× 67 万円(1.34 倍)、営業利益率 4.5%
- サービスエンジニアリング:数量 10,350(工事・保守の件数(件、推定))× 価格 67(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 69 億円・営業利益 7 億円。10,350 件(1.15 倍)× 67 万円(1.33 倍)、営業利益率 9.5%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 176 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値付けと自動化の効果は残るが、山からは下がる落としどころ。会社の今期予想 7.7% と 2028 年度目標 8.9% の間で、最も起こりやすい。
やや悲観 20% 値上げが止まり、利益率は 4% 台へ 利益 8 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 10,019 円83 億円
値上げの勢いが止まり、利益率が半分に戻る筋書きだ。業務用のヒートポンプ給湯と空調に大手が本気で入り、九州でも値段の勝負になる。資材と人件費の上昇を売値に乗せきれず、機器の利益率は 5% に下がる。
新築の減少で機器の台数は 5% 減り、景観製品は公共工事の予算の絞り込みで細る。保守と取り替えの件数は横ばいを保つ。営業利益は 9 億円ほどに沈み、ROE は 4% ほどだ。配当は据え置かれ、持ち合い株と現金はそのまま会社の中にとどまる。株主の価値は、本業の稼ぎがゆっくり細る中で伸び悩む。地元の銀行株が下がれば、自己資本も評価の差額の分だけ目減りする。
- 機器装置:数量 2,570(出荷台数(台、推定))× 価格 375(1 台あたりの売上(万円。物価と機種の構成を含む))→ 売上 96 億円・営業利益 5 億円。2,570 台(0.95 倍)× 375 万円(1.24 倍、物価に届かない)、営業利益率 5%
- 素形材加工:数量 4,080(出荷量(トン、推定))× 価格 63(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。4,080 トン(0.85 倍)× 63 万円、営業利益率 2%
- サービスエンジニアリング:数量 9,050(工事・保守の件数(件、推定))× 価格 64(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 58 億円・営業利益 4 億円。9,050 件(横ばい)× 64 万円、営業利益率 7%
倍率:ROE 4.1% は k 8% を下回る。稼ぐ力(純利益÷k で約 99 億円)で見て、1÷k の 11.8 倍の 7 割の 8.2 倍。床(持ち合い株の税後×0.5 など約 30 億円)を上回る。
確率:利益率 9% は 30 年で初めての水準で、今期予想はすでに下がる。大手との競争で半分に戻る筋書きは十分ありうるので 2 割とした。
悲観 10% 立て直しが山で終わり、利益はほぼゼロ 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 3,703 円31 億円
立て直しが一時の山で終わる筋書きだ。資材の高騰が再び来て、今度は値上げが通らない。大手のヒートポンプと空調が九州の客を奪い、機器の台数は 25% 減る。鋳物は客の設備投資の冷え込みで赤字になり、景観製品も予算の削減で細る。
営業利益はほぼゼロに戻り、2022 年度の赤字の姿に近づく。持ち合い株の配当だけが利益を支える。経営は持ち合いを解かず、配当も減る。株主の価値は、地元の株を売った時の税引き後の額と、本業の細い稼ぎに近づく。その株も、会社の中にある限り株主の自由にはならない。残るのは、九州に据え付けた機械の点検と修理という細い稼ぎだけになる。
- 機器装置:数量 2,030(出荷台数(台、推定))× 価格 345(1 台あたりの売上(万円。物価と機種の構成を含む))→ 売上 70 億円・営業利益 0 億円。2,030 台(0.75 倍)× 345 万円、営業利益率 0%
- 素形材加工:数量 3,360(出荷量(トン、推定))× 価格 58(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 20 億円・営業利益 −1 億円。3,360 トン(0.70 倍)× 58 万円、営業利益率 −3%
- サービスエンジニアリング:数量 7,700(工事・保守の件数(件、推定))× 価格 60(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 46 億円・営業利益 2 億円。7,700 件(0.86 倍)× 60 万円、営業利益率 4%
倍率:稼ぐ力(純利益 2.3 億円÷k で約 27 億円)と売れる資産の床(約 30 億円)の大きい方で、今の自己資本 122 億円の 0.25 倍の約 30.5 億円。
確率:2022〜2023 年度に赤字だった会社で、昔の姿に戻る道は記録が示す。ただ保守と取り替えの土台と値付けの仕組みは残るので 1 割とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
機器装置
業務用のボイラー・ヒートポンプ給湯機(業務用エコキュート)・空調機・暖房機、工業用の熱処理炉・特殊電気ヒーター(サーモデバイス)。
| 数量出荷台数(台、推定) | 価格1 台あたりの売上(万円。物価と機種の構成を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,700 | 302 | 82 | 7 |
| 10 年後 中立 | 2,840 | 402 | 114 | 9 |
取り方:台数の開示がないため推定。セグメント売上 81.5 億円を、業務用の給湯機・ボイラー・空調機と工業炉を合わせた 1 台あたり約 300 万円で割った約 2,700 台。利益はセグメント利益 7.34 億円(開示)。
素形材加工
橋梁用の防護柵・街路の車止めなどの景観製品と、砂型・精密の鋳物。
| 数量出荷量(トン、推定) | 価格1 トンあたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,800 | 50 | 24 | 1 |
| 10 年後 中立 | 4,560 | 67 | 31 | 1 |
取り方:トン数の開示がないため推定。セグメント売上 24.0 億円を、鋳鉄の防護柵と鋳物の加工込みの 1 トンあたり約 50 万円で割った約 4,800 トン。利益はセグメント利益 1.27 億円(開示)。
サービスエンジニアリング
据え付けた熱源・空調機器の点検・修理・取り替え工事、空調・給排水設備の工事。
| 数量工事・保守の件数(件、推定) | 価格1 件あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9,000 | 50 | 45 | 5 |
| 10 年後 中立 | 10,350 | 67 | 69 | 7 |
取り方:件数の開示がないため推定。セグメント売上 45.3 億円を、点検・修理の小口と取り替え工事の大口をならした 1 件あたり約 50 万円で割った約 9,000 件。利益はセグメント利益 4.71 億円(開示)。
リスクと懸念
利益率の山の終わり
営業利益率 8.9% は、この会社の 30 年の歴史で初めての水準だ。資材高の中で値上げが通った時期の山の面もある。今期の会社予想はすでに 7.7% に下がる。資材が落ち着いて値下げの圧力が強まれば、利益率は半分に戻りうる。
大手との競争
業務用のヒートポンプ給湯と空調には、ダイキン工業、三菱電機、リンナイ、ノーリツなどの大手がいる。脱炭素で市場が育つほど、大手は本気で入ってくる。九州の据え付けの網は強みだが、規模で劣る中堅が値段を守れる保証はない。
持ち合い株と資本の使い方
投資有価証券は 88 億円と時価総額を上回り、地元の銀行や西部ガスホールディングス、西日本鉄道の株とみられる。配当性向は 1 割ほどで自社株買いも無い。利益が会社の中に積み上がり続ければ、株主の手に届く価値は帳簿よりずっと小さい。
株価の値下がりで自己資本が揺れる
自己資本の 4 割近くが有価証券の評価の差額だ。地元の銀行株が下がれば、自己資本は大きく減る。本業の稼ぎとは関係なく帳簿が揺れ、株の配当が減れば利益も削られる。
公共工事と建設の波
景観製品は橋や道路の補修の予算に、機器は病院や工場の建て替えに左右される。工事の担い手の不足で、工事の遅れが売上の時期をずらす。2022〜2023 年度の赤字は、資材高と受注の谷が重なった結果だった。
株の売買の少なさ
福岡証券取引所だけの上場で、株の売買は少ない。値段が付きにくく、価値と値段の差が長く埋まらないこともある。東証の上場維持の基準の圧力を受けないことは、資本の使い方が変わりにくい理由にもなる。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期の営業利益率が会社予想の 7.7% を上回り、8% 台を保ったら
- 立て直しの定着の証拠として、やや楽観の筋書きの確率を上げる。
- 持ち合い株を売り、その資金で特別配当や自社株買いを始めたら
- 戻り方を 0.5 から 0.75〜1.0 に上げ、持ち合い株の価値を株主の価値に数える。価値は大きく上がる。
- 利益率が 2 期続けて 6% を下回ったら
- 値上げの勢いが止まったとみて、やや悲観の筋書きに重みを移す。
- ヒートポンプ給湯や半導体の電気炉で大口の受注が続いたら
- 機器の台数と単価の見通しを上に直す。
- 地元の企業や同業から資本提携や買収の提案があったら
- 持ち合い株と本業の両方に値段が付き、帳簿の価値に近い値段での再編がありうる。
見ておくもの
- 四半期の営業利益率と受注高(機器装置・サービス)
- 投資有価証券の残高と売却の有無
- 配当性向と特別配当の継続
- ヒートポンプ給湯・空調の新製品と大手の価格
- 公共工事(橋梁補修)の予算
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や PBR を見ずに、ROE と k 8% から決めた。中立の ROE は 6% ほどで k を下回るので、PER の上限は 1÷k の 11.8 倍になり、その 8 割を使った。ROE が低いのは自己資本の 3 割超が持ち合い株と評価差額で、配当性向が 1 割と低いため。営業利益率は過去 12 年の山(8.8%)より下の 8% に置いた。持ち合い株の配当は利益に残し、余り資産には足していない。PER 5 倍の今の値段に寄せてはいない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→12.5 倍・やや楽観 PER 10→12.5 倍・中立 PER 9.4→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。