結論
中国工業は、広島県呉市の工場で家庭用のLPガス容器を作る会社だ。国内で使われる容器の 3 本に 1 本がここの製品で、この分野では最大手にあたる。筆者の結論は、今の値段はやや割高だ。
容器の作り手としての地位は固い。だが買い手のLPガス販売会社の数は減り、家庭の電化で容器の本数も細っていく。会社は鋼材の値上がりを売値に移すことには成功したが、営業利益率は 2〜3% にとどまる。自己資本の利益率は 5% 台で、会社自身が見積もる株主資本コスト 8% に届いていない。
帳簿には 24 億円の持ち合い株があり、時価総額とほぼ同じ額だ。ただし多くは顧客のガス会社の株で、売る方針は一部にとどまる。配当は利益に入っているので、この株を別の値打ちとして足すことはしない。
10 年で見ると、利益は値上げで横ばいを保つのがやっとだ。今の時価総額は、その平凡な稼ぎにほぼ見合っている。安全域、つまり値段と価値の間のゆとりは、ほとんど無いと筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い地位を持つ、平凡な事業」だ。国内の容器の 3 分の 1 を作る立場は、簡単には崩れない。だが市場は毎年少しずつ縮み、買い手は値上げを渋る。稼いだ利益の多くは再投資にも配当にも使われず、持ち合い株や現金として積み上がってきた。
筆者がいちばん気にしているのは、この積み上がった資本の行き先だ。ROE が資本コストを下回る会社では、ためた利益は帳簿の額ほどの値打ちを持たない。会社は資本コストを意識した経営を掲げたが、配当性向 2 割台では株主に戻る速さが遅すぎる。
持ち合い株の 24 億円は、売って配るなら株主の財産になるが、今は顧客との関係を保つ道具になっている。オーナーとして持つには、還元の方針がもう一段はっきりする必要がある。事業そのものは 10 年後も残る。問題は値段に見合う稼ぎが残るかどうかだ。
何で稼ぐ会社か
事業は四つあるが、稼ぎの柱は高圧機器だ。2026 年 3 月期の売上 138 億円のうち 91 億円を占め、セグメントの営業利益 6.3 億円のほとんどをここで稼ぐ。製品は家庭の軒先に置く 20kg・50kg の鋼製容器、軽いアルミ合金の容器、集合住宅や店舗に置くバルク貯槽、液化塩素などの特殊容器だ。買い手は全国のLPガス販売会社で、持ち合い株の銘柄にもミツウロコ、日本瓦斯、エア・ウォーター、TOKAI が並ぶ。
施設機器は畜産農家向けの FRP 製飼料タンクが主力で、2026 年 8 月に資材の仕入れ先だった若柳化成工業を 2 億円で買った。鉄構機器は変圧器の容器などで規模は小さい。運送は子会社の中鋼運輸が担い、売上 22 億円に対し利益はほぼ出ていない。
容器は冬に需要が集まるので、毎年上期は赤字、下期で取り返す形になる。
子会社の高圧プラント検査は、充填所などの高圧ガス設備の検査と配管工事を請け負い、高圧機器の中で容器の販売を支える。容器を売り、設置し、検査まで面倒を見る一貫の体制が、販売会社との長い取引を支えている。
優良さと弱いところ
強みは、国内の容器の 3 分の 1 を作る規模と、70 年かけて築いた販売会社との取引の厚さだ。高圧ガスの容器は国の検査を通さないと売れず、新しく参入する会社はまず出てこない。2022 年からの鋼材高では、販売単価を 1〜2 割上げて利益率を守った。
一方で、値決めの力は強くない。買い手のLPガス販売会社は統合で大きくなり、容器は規格品なので他社との違いを出しにくい。その結果、全社の営業利益率は過去 12 年で最高でも 3% にとどまる。
資本の使い方も物足りない。自己資本 60 億円の 4 割を持ち合い株が占め、ROE を押し下げている。会社も資本コストを下回っていると認め、借入の活用や増配を口にするが、配当性向はまだ 2 割台だ。経営は堅実だが、資本の効率より取引の安定を優先してきた会社と言える。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
LPガスは全国の約 4 割の世帯が使う熱源で、地方と郊外に多い。ただ需要は年に 1.5% 前後のペースで減っている。人口と世帯の減少に加え、新築の住宅ではオール電化が広がり、給湯器の効率も上がったからだ。容器の本数はこの需要に沿って細る。
救いは更新の需要だ。容器には検査の期限と寿命があり、使われている限り作り直しが要る。2000 年前後に広く入ったバルク貯槽は設置から 20 年を超え、今も入れ替えが続いている。災害に強い分散型の熱源として、LPガスを見直す動きもある。
作り手は国内に数社しかなく、中国工業が最大手だ。目先の懸念は、海外の安い容器と、軽い複合容器への置き換えだ。複合容器は会社も開発しているが、売上に効くのはまだ先になる。
10 年で見ると、業界の数量は 1 割強減り、値段は物価並みに上がるのが中立の姿だ。数量の減りを値上げで埋められるかどうかが、作り手の利益を決める。鋼材は中国の過剰生産で値上がりが抑えられやすく、その点は作り手に追い風になる。逆に販売会社の統合は、買い手の値切る力を強める。
資本政策と M&A
配当は 2026 年 3 月期に総額約 0.75 億円、配当性向は 24% だった。2024 年に株主優待をやめ、その分を配当の積み増しに回している。自社株買いの実績はほとんどない。
持ち合い株は上場分だけで 24 億円あり、その多くが顧客のガス会社と取引銀行の株だ。日本瓦斯の株は相手と協議して減らす方針で、本業と関係の薄い銘柄は売る予定とする。ただし全体を売る数字の方針はない。
買収は小さく、本業の周りに限られる。2026 年の若柳化成工業の取得は 2 億円で、仕入れ先を取り込んで利益率を上げる狙いだ。大株主に親会社はなく、日本製鉄や日本鉱泉が数%ずつ持つ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
容器は消耗品だ。LPガスを使う家庭が残る限り、期限の来た容器は作り直さなければならない。国内の 3 分の 1 を作る中国工業には、需要が細っても一定の仕事が回ってくる。2022 年からの鋼材高では、販売単価を 1〜2 割上げて利益を守った。値決めの力が無いという見方は、この実績で半ば否定された。
バルク貯槽の更新はまだ続く。2000 年前後に入った貯槽が順に 20 年を超え、取り替えの山が来ている。飼料タンクでは仕入れ先を買い、利益率を上げる手も打った。2026 年 4 月の営業拠点の統廃合で、費用の伸びも抑えられる。
帳簿には時価総額並みの持ち合い株がある。会社が資本コストを意識した経営を掲げた以上、売却と還元が進めば株主の取り分は大きく増える。容器の地位と持ち合い株の両方を考えれば、今の値段は守りの堅い投資に見える。
借金も軽い。純有利子負債は 8 億円弱で、営業利益で利息を払う力は 30 倍を超える。金利が上がっても、利益が大きく削られる心配は少ない。冬に偏る季節性はあるが、年で見れば赤字の年はこの 10 年一度も無い。
慎重な見方
LPガスの需要は構造的に減っている。新築の住宅はオール電化が主流で、地方の人口も減る。容器の本数は 10 年で 1 割から 2 割減るとみるのが自然だ。値上げを通せたのは、鋼材高で業界全体が同時に上げたからで、需要が細る中で同じことができるとは限らない。
営業利益率は過去 12 年で最高でも 3% だ。高圧機器で稼いだ利益を、運送と本社の費用が食ってしまう。ROE は 5% 台で、会社自身が見積もる資本コスト 8% に届かない。
持ち合い株は顧客の株だ。売れば取引に響くので、大きく減ることはないだろう。配当性向も 2 割台にとどまり、積み上がった資本は株主に戻らない。そうであれば、帳簿の自己資本は価値の目安にならない。運送と本社の費用が利益を食う構造にも、手が付いていない。
海外の安い容器や軽い複合容器が広がれば、国内の 3 分の 1 という地位そのものが揺らぐ。規格品は、品質で差がつきにくいからだ。
どちらに重みを置いたか
地位の固さは本物だが、慎重な見方のほうが強い。値上げの実績は評価できる。それでも市場の縮小と、資本を株主に戻さない姿勢は変わっていない。確率は中立を最も重くし、悲観側を楽観側よりやや厚くした。持ち合い株は、売る数字の方針が出るまで価値に足さない。容器の更新需要は下を支えるが、上に押し上げる力にはならない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,286 円42 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 280 円9 億円)。 今の値に割り戻すと 771 円25 億円、今との差 −3.9%、 期待の年率 +6.9%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,713 円89 億円 | 464 円15 億円 | +296.1% | +14.8% | 254 円8 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,967 円64 億円 | 345 円11 億円 | +188.3% | +11.2% | 462 円15 億円 |
| 中立 | 42% | 1,315 円43 億円 | 272 円9 億円 | +97.8% | +7.1% | 666 円22 億円 |
| やや悲観 | 20% | 481 円16 億円 | 253 円8 億円 | −8.4% | −0.9% | 147 円5 億円 |
| 悲観 | 10% | 273 円9 億円 | 92 円3 億円 | −54.5% | −7.6% | 36 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,286 円42 億円 | 280 円9 億円 | +95.3% | +6.9% | 1,566 円51 億円 |
今の株価時価総額 802 円26 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 容器の更新と新製品で稼ぐ力が戻る 利益 7 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,713 円89 億円
LPガスの需要は細るが、容器は期限が来れば作り直しが要る。1990 年代後半から 2000 年代に入れたバルク貯槽が順に 20 年を超え、更新が 10 年続く。軽い複合容器が家庭用で認められ、アルミ合金の容器と合わせて単価が上がる。施設機器は若柳化成工業を取り込み、飼料タンクを内製に切り替えて利益率が上がる。2026 年に統廃合した営業拠点の効果も出る。国内の容器の 3 本に 1 本を作る立場は守られ、値上げは鋼材とバルブの値上がりに遅れずに通る。それでも自己資本の利益率は資本コストに届かず、優良な会社に変わるわけではない。
- 高圧機器:数量 48.0(容器の販売本数(20kg 容器に換算・万本・推定))× 価格 2.54(1 万本あたりの売上(億円・名目。バルク貯槽・特殊容器を含む))→ 売上 122 億円・営業利益 11 億円。48 × 単価 2.5393(今の 1.4 倍)、営業利益率 9.0%
- 施設機器・鉄構機器:数量 1,350(飼料タンク・設備の納入基数(基・推定))× 価格 0.03(1 基あたりの売上(億円・名目))→ 売上 46 億円・営業利益 4 億円。1350 × 単価 0.0344(今の 1.38 倍)、営業利益率 8.0%
- 運送:数量 60.0(運送に使うトラックの台数(台・推定))× 価格 0.50(1 台あたりの年間の運賃収入(億円・名目))→ 売上 30 億円・営業利益 0 億円。60 × 単価 0.5033(今の 1.38 倍)、営業利益率 1.2%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.8% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 85 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:バルク貯槽の更新、複合容器の採用、飼料タンクの買収効果が同時にそろう必要があり、どれも会社の実績はまだ小さい。軽く置いた。
やや楽観 20% 値上げが通り、更新需要が下を支える 利益 5 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,967 円64 億円
容器の本数は年に 1% ほど減るが、値上げが鋼材の値上がりに追いつき、本数の減りを単価で埋める。バルク貯槽の更新が続き、高圧機器の利益率は今の 7% から 8% へ戻る。施設機器は畜産の飼料タンクで地盤を保ち、若柳化成工業の分だけ売上が上乗せされる。運送はほぼ収支とんとんのまま、グループの荷物を運ぶ役目を続ける。本社の費用は物価並みに増えるが、拠点の統廃合で伸びは抑えられる。持ち合い株の配当も少しずつ増え、純利益は今の 1.6 倍になる。それでも ROE は 6% に届かず、資本コストとの差は縮まるだけで消えはしない。
- 高圧機器:数量 46.0(容器の販売本数(20kg 容器に換算・万本・推定))× 価格 2.48(1 万本あたりの売上(億円・名目。バルク貯槽・特殊容器を含む))→ 売上 114 億円・営業利益 9 億円。46 × 単価 2.4849(今の 1.37 倍)、営業利益率 8.0%
- 施設機器・鉄構機器:数量 1,200(飼料タンク・設備の納入基数(基・推定))× 価格 0.03(1 基あたりの売上(億円・名目))→ 売上 41 億円・営業利益 3 億円。1200 × 単価 0.0339(今の 1.36 倍)、営業利益率 7.0%
- 運送:数量 58.0(運送に使うトラックの台数(台・推定))× 価格 0.49(1 台あたりの年間の運賃収入(億円・名目))→ 売上 29 億円・営業利益 0 億円。58 × 単価 0.4923(今の 1.35 倍)、営業利益率 0.8%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 60 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げを通した実績が 2022 年以降にあり、バルク貯槽の更新は有報にも書かれている。今の延長より少し良い筋書きとして中立の半分の重みを置いた。
中立 42% 容器の本数は細り、値上げで横ばいを保つ 利益 3 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,315 円43 億円
家庭のLPガスは、電化と人口の減少で 10 年に 1 割強減る。容器の本数もそれに沿って細るが、国内の 3 分の 1 を作る立場は変わらない。鋼材やバルブの値上がりは、遅れながらも販売単価に通る。高圧機器の利益率は 7% 前後にとどまる。施設機器は若柳化成工業を足して売上が 1 割増え、運送は収支とんとんが続く。本社の費用は物価で膨らみ、営業利益は今とほぼ同じ 3 億円台にとどまる。会社は配当を少しずつ増やすが、利益の 3 割弱しか配らず、自己資本は積み上がる。ROE は 4% 前後に下がり、資本コストとの差は開いたままだ。
- 高圧機器:数量 44.0(容器の販売本数(20kg 容器に換算・万本・推定))× 価格 2.43(1 万本あたりの売上(億円・名目。バルク貯槽・特殊容器を含む))→ 売上 107 億円・営業利益 7 億円。44 × 単価 2.4305(今の 1.34 倍)、営業利益率 7.0%
- 施設機器・鉄構機器:数量 1,100(飼料タンク・設備の納入基数(基・推定))× 価格 0.03(1 基あたりの売上(億円・名目))→ 売上 37 億円・営業利益 2 億円。1100 × 単価 0.0334(今の 1.34 倍)、営業利益率 6.0%
- 運送:数量 55.0(運送に使うトラックの台数(台・推定))× 価格 0.49(1 台あたりの年間の運賃収入(億円・名目))→ 売上 27 億円・営業利益 0 億円。55 × 単価 0.4887(今の 1.34 倍)、営業利益率 0.5%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.1% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 39 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:LPガスの需要は年 1.5% 前後の減りが業界の共通の見方で、会社の値上げの実績もある。両方を足した今の延長として最も重く置いた。
やや悲観 20% 値上げが遅れ、利益がほぼ消える 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 481 円16 億円
電化が想定より速く進み、容器の本数は 10 年で 2 割減る。LPガスの販売会社は統合で大きくなり、容器の値上げに強く抵抗する。高圧機器の利益率は 5% 台に落ち、施設機器も畜産農家の減少で数量が伸びない。運送は燃料と運転手の賃金に押されて利益が出ない。本社の費用を物価並みに払うと、営業利益はほぼゼロになる。持ち合い株の配当で純利益はかろうじて黒字を保つが、株主に残る価値は帳簿の 2 割ほどにとどまる。会社は持ち合い株を売らず、配当も増やせないので、資本は眠ったままになる。容器の地位は残っても、それが株主の利益に変わらない筋書きだ。
- 高圧機器:数量 41.0(容器の販売本数(20kg 容器に換算・万本・推定))× 価格 2.30(1 万本あたりの売上(億円・名目。バルク貯槽・特殊容器を含む))→ 売上 94 億円・営業利益 5 億円。41 × 単価 2.3035(今の 1.27 倍)、営業利益率 5.5%
- 施設機器・鉄構機器:数量 1,000(飼料タンク・設備の納入基数(基・推定))× 価格 0.03(1 基あたりの売上(億円・名目))→ 売上 32 億円・営業利益 1 億円。1000 × 単価 0.0317(今の 1.27 倍)、営業利益率 4.0%
- 運送:数量 52.0(運送に使うトラックの台数(台・推定))× 価格 0.46(1 台あたりの年間の運賃収入(億円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 0 億円。52 × 単価 0.4632(今の 1.27 倍)、営業利益率 0.0%
倍率:営業利益がほぼゼロで純利益は持ち合い株の配当頼みになるので、PER では測らない。稼ぐ力(純利益÷k)は約 12 億円、持ち合い株を税後で売って純負債を返した残りも約 12 億円。今の自己資本 59.6 億円に PBR 0.207 倍を掛け、その床をわずかに上回る程度に置いた。純有利子負債 7.7 億円を足した EV÷営業利益は 35 倍と高く出るが、営業利益がほぼゼロのためで、利益の倍率では測らず資産の床で見た。
確率:鋼材の値上がりを売値に移すのが遅れた年は過去に何度もあり、営業利益率が 1% を切った期が 2018〜2022 年に続いた。中立の半分の重みを置いた。
悲観 10% 電化と海外品で容器の需要が崩れる 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 273 円9 億円
家庭の熱源が電気に移り、LPガスの需要は 10 年で 3 割近く減る。韓国や中国の安い容器が輸入され、国内の作り手の値決めの力が崩れる。容器の本数は今の 7 割を割り、高圧機器の利益率は 2% に落ちる。施設機器と運送も稼げず、本社の費用を賄えずに営業赤字が続く。会社は持ち合い株を売って赤字と借金の返済に充てるが、その現金が少数株主に戻る保証はない。呉の工場の土地と持ち合い株の売却代が、価値の最後の支えになる。容器の作り手が国内から一社減るような、業界の再編の中で起きる負け方だ。帳簿の自己資本はまだ 50 億円以上残るが、それが株主の手に届く道筋は見えない。
- 高圧機器:数量 34.0(容器の販売本数(20kg 容器に換算・万本・推定))× 価格 2.09(1 万本あたりの売上(億円・名目。バルク貯槽・特殊容器を含む))→ 売上 71 億円・営業利益 1 億円。34 × 単価 2.0859(今の 1.15 倍)、営業利益率 2.0%
- 施設機器・鉄構機器:数量 800(飼料タンク・設備の納入基数(基・推定))× 価格 0.03(1 基あたりの売上(億円・名目))→ 売上 23 億円・営業利益 0 億円。800 × 単価 0.0287(今の 1.15 倍)、営業利益率 1.0%
- 運送:数量 45.0(運送に使うトラックの台数(台・推定))× 価格 0.44(1 台あたりの年間の運賃収入(億円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 0 億円。45 × 単価 0.4376(今の 1.2 倍)、営業利益率 -1.0%
倍率:営業赤字が続くので PER は使えない。稼ぐ力は床にならず、持ち合い株を税後で売って純負債を返した残り約 12 億円が床だが、赤字の穴埋めに使われ株主に戻るのは半分ほどとみる。今の自己資本 59.6 億円に PBR 0.15 倍を掛けた。床の 12 億円を下回るのは、清算されない限り売却代の使い道を少数株主が決められないため(戻り方 0.75 の考えで約 9 億円)。
確率:家庭のオール電化と海外製の安い容器が同時に効く筋書き。単一の市場に頼る会社なので、資本コストの寿命の上乗せとは別に、構造的な負けの重みとして 1 割を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
高圧機器
LPガス容器(鋼製・アルミ合金製)、バルク型容器・バルク貯槽、液化塩素などの特殊容器、充填所の設備。
| 数量容器の販売本数(20kg 容器に換算・万本・推定) | 価格1 万本あたりの売上(億円・名目。バルク貯槽・特殊容器を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 50.0 | 1.81 | 91 | 6 |
| 10 年後 中立 | 44.0 | 2.43 | 107 | 7 |
取り方:本数の開示は無いので、バルク貯槽や特殊容器を含めた 20kg 容器換算の平均単価を約 1.8 万円と置き、セグメント売上 90.69 億円から年 50 万本と推定した(推定)。本数は実質、物価と値上げは単価に入れる。
施設機器・鉄構機器
FRP 製の飼料タンク・コンテナなど畜産の設備と、変圧器の容器などの鉄構品。
| 数量飼料タンク・設備の納入基数(基・推定) | 価格1 基あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,000 | 0.02 | 25 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1,100 | 0.03 | 37 | 2 |
取り方:施設機器 19.57 億円と鉄構機器 5.36 億円を合わせた。基数の開示は無いので 1 基あたり約 250 万円と置き、年 1,000 基と推定した(推定)。
運送
子会社の中鋼運輸による貨物の運送。グループの製品と外部の荷物を運ぶ。
| 数量運送に使うトラックの台数(台・推定) | 価格1 台あたりの年間の運賃収入(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 0.36 | 22 | 0 |
| 10 年後 中立 | 55.0 | 0.49 | 27 | 0 |
取り方:台数の開示は無いので、1 台あたり年 3,600 万円強の運賃収入と置き、売上 21.88 億円から 60 台と推定した(推定)。
リスクと懸念
家庭の電化で容器の需要が縮む
新築の住宅ではオール電化が主流になり、地方の人口も減っている。LPガスの需要は年 1.5% 前後で減っており、容器の本数もそれに沿って細る。電化の速さが想定を上回れば、本数の減りは 10 年で 2 割を超える。
鋼材とバルブの値上がりを売値に移せない
原価の大半は鋼材とバルブだ。2022 年からは値上げを通したが、買い手の販売会社は統合で大きくなっている。値上げが半年遅れるだけで、2〜3% しかない営業利益率はすぐに消える。
海外の安い容器と複合容器への置き換え
韓国や中国の容器が安く入ってくれば、国内の作り手の値決めの力は崩れる。軽い複合容器が普及すると、鋼製容器の設備と技術の価値が下がる。会社も複合容器を開発しているが、売上に効くのはまだ先だ。
持ち合い株に資本が眠る
自己資本の約 4 割にあたる 24 億円が持ち合い株だ。多くは顧客のガス会社の株で、売れば取引に響く。売らない限り株主に戻らず、ROE を押し下げ続ける。株価が下がれば自己資本も目減りする。
運送と本社の費用が利益を食う
運送は売上 22 億円で利益がほぼ出ず、運転手の賃金と燃料の値上がりで赤字に転じうる。本社の費用も年 5 億円近くあり、物価で膨らむ。高圧機器の利益の大半がここで消える構造は変わっていない。
今後の分かれ目
- 持ち合い株を売る額と、その使い道(配当・自社株買い)を数字で示したら
- 株主に戻る資本が見えるので、売る分を税後で価値に足し、強気の筋書きの重みを上げる。
- 容器の値上げが鋼材の値上がりに遅れ、高圧機器の利益率が 5% を割ったら
- 値決めの力が弱まったとみて、やや悲観の筋書きに重みを移す。
- 複合容器が家庭用で認められ、受注が始まったら
- 単価の上がる新製品として、楽観側の筋書きの確率を上げる。
- 配当性向を 4 割以上に上げる方針を出したら
- 積み上がる資本が株主に戻る速さが上がるので、戻り方を引き上げる。
- LPガスの販売会社の統合で大口の買い手が海外製に切り替えたら
- 構造的な負けが始まったとみて、悲観の筋書きを重くする。
見ておくもの
- 高圧機器の売上と営業利益率(下期の数字)
- 容器の販売単価と鋼材価格の差
- 持ち合い株の売却額と配当性向
- LPガスの国内販売量の推移
- 若柳化成工業を足した施設機器の利益率
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE が k 8.25% を下回るので 1÷k の 11.8 倍を上限とし、利益の質に応じてその 85〜95% に置いた。悲観側は稼ぐ力と持ち合い株の税後の売却額から置き、過去の PBR は使っていない。今の PBR 0.4 倍台は見て比べただけで、倍率の根拠にしていない。持ち合い株の 24 億円は配当を利益に残すので、価値に足すのは悲観の床だけにした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.12 倍・やや楽観 PER 10.6→12.12 倍・中立 PER 10→12.12 倍・やや悲観 PBR 0.22→0.207 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 1.0%。黒字が続き存続の懸念はないので上乗せはしない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.25%。