結論
ネツレンは、金属に電気を流して中から熱し、硬くする「高周波熱処理」の最大手だ。自動車のばね用の鋼線、新幹線に使う補強材、熱処理の受託加工、加熱装置と、手がけるのは地味だが国内シェアの高い品ばかりである。
筆者の結論は「割高」だ。10年後に見込める価値は、今の時価総額を4割近く下回る。理由は単純で、シェアが高いのに儲けが薄いからだ。営業利益率は3%台、自己資本利益率は2〜4%にとどまる。資本コストの半分にも届かない。
資産は厚い。自己資本比率は66%、自己資本は580億円ある。だが、資産が厚いことと資産が稼ぐことは別である。稼ぎの薄い資産は、帳簿の価値を額面どおりには評価できない。
追い風はある。値上げが通り始め、今期の営業利益は前期の1.5倍の28億円を見込む。ただ、会社の中期計画は目標の引き下げを繰り返してきた。筆者は、10年後の営業利益率を5%前後までの回復と見る。かつての山である7%台には戻らない。
株主還元は手厚い。だが配当だけで純利益を上回る年があり、稼ぎを超える還元は長くは続かない。良い会社になる余地はある。ただ、払う値段に安全域はない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ネツレンは「良い資産を持つが、良い事業とは言い切れない会社」だ。国内シェアは高く、財務は強い。しかし、持ち続けたい事業の条件は、シェアでも財務でもなく、投じたお金に見合う利益を、毎年安定して出せることである。
この会社の利益は、投じた資本の2〜4%だ。国債の利回りは3%で、資本コストは8%と置いた。資本コストを下回る事業では、利益を内部にためるほど価値が減る。だから筆者は、帳簿の自己資本を価値の土台にしない。
オーナー利益、つまり株主が自由に使えるお金も、見た目の利益より少ない。2026年3月期の営業キャッシュフローは18億円で、設備投資と買収に使い切った。配当と自社株買いは借入と現金の取り崩しで賄ったことになる。
一方、経営が株主を意識し始めたことは評価する。政策保有株の削減、DOE4%、自社株買いは、いずれも正しい方向だ。あとは利益率を上げられるかだけである。
結論として、今の値段に安全域はない。10年で見込める価値は、今の時価総額より4割近く低い。事業の質に確信が持てない以上、倍率は上限まで使わない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は大きく2本ある。「製品」と「IH」だ。IHとは電磁誘導加熱のことで、金属を外から熱するのではなく、金属自身に電気を流して内側から熱する技術を指す。
製品事業部は売上の6割強、363億円を占める。主力は自動車の懸架ばね(サスペンションのばね)に使う高強度鋼線のITWで、国内の約半分を握る。このほか、新幹線の高架橋に使うPC鋼棒、建築の柱を補強する高強度せん断補強筋、建設機械の旋回輪がある。鋼材を仕入れて加工し、重さで売る商売だ。売上の大半が鋼材代なので、営業利益率は1%台と薄い。
IH事業部は売上195億円で、会社の利益の大半を稼ぐ。柱は熱処理の受託加工と加熱装置だ。受託は顧客の部品を預かり、硬さを出して返す仕事で、国内シェアは約47%。装置は自社で設計して売り、国内で約2割を持つ。装置は納めたあとも保守と部品交換が続く。
その他は、2025年に傘下に入れたドーケン(プレキャストコンクリート)の24億円だ。
売り先は自動車が56%を占める。建築と土木で約2割、建設機械と工作機械が各1割。海外は4割弱で、中国、米国、インドネシアなど6カ国16拠点を持つ。国内は25拠点だ。
優良さと弱いところ
筆者は、堀(他社がまねできない強み)を「中くらい」と見る。熱処理の受託は国内で約47%、ITWは約48%と、どちらも首位である。だがシェアの高さは、値段を決める力を意味しない。
買い手が自動車大手だからだ。鋼材や電気代の上昇を価格に移すのに時間がかかる。2024年に販売価格を改定すると、営業利益は一気に2割増えた。裏返せば、それまで転嫁が遅れていたということだ。
数字が実力を語っている。営業利益率は過去10年で2〜7%の間を動き、2008年3月期の13%には遠い。自己資本利益率の中央値は2.4%。シェア首位の会社として、物足りない。
弱みは3つある。第一に、売上の6割を占める製品事業部の利益が薄い。第二に、投資が重い。2026年3月期は営業キャッシュフロー18億円に対し、投資のキャッシュフローは52億円の流出だった。第三に、約束が軽い。中期計画は売上700億円、営業利益率6.5%で始まったが、目標の引き下げが続いた。
強みもある。政策保有株を2019年度比で約7割減らし、自己資本比率が高いまま配当と自社株買いを厚くした。親会社はなく、資本の使い方は株主を向き始めている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
最大の需要先は自動車だ。電気自動車(EV)は、この会社にとって追い風でも向かい風でもある。エンジンのクランクシャフトやカムシャフトは電気自動車では要らず、受託の処理量は長い目で細る。一方、モーターシャフトや減速機のギアは新しい仕事になる。足回りのばねは、車が重くなるEVでも残る。
米国の関税は、ITWには追い風だ。海外から輸入するより国内で作る方が有利になり、今期のITWは15%近い増収を見込む。ただ、関税は政策で決まるもので、永続するとは限らない。
建築と土木は、北海道新幹線の高架橋で補強筋とPC鋼棒の採用が増えた。大型案件は一巡するため、数量の伸びは一時的と見る。国内の建設は人口とともに細る。建設機械向けの旋回輪は回復が遅れ、今期も減収の計画だ。
熱処理の競合は、DOWAサーモテックなどの専業と、自動車メーカーや部品大手の内製部門である。専業は技術で並び、値段で争う場面もある。誘導加熱装置は、ガス炉に比べてCO2を大きく減らせるため、脱炭素の設備投資が追い風になる。ただ、装置の仕事は自動車と鉄鋼の設備投資の波を受ける。
中国は日系自動車メーカーの苦戦で、現地子会社の収益が重い。海外の成長は、米国とインドネシアが中心になる。
資本政策と M&A
還元の方針は手厚い。配当は自己資本に対する率(DOE)で4%以上と、従来の3%から引き上げた。配当の総額は年に23億円ほどで、2026年3月期の純利益13億円を上回る。自社株買いも2024年度からの3年で60億円を予定し、期初からすでに約7億円分が進んでいる。
手元の資金は減っている。純現金は1年で108億円から26億円に細った。ドーケンなどの買収、工場の再編投資、還元が重なったためだ。自己資本比率は74%から66%に下がり、会社は60〜65%を目安にしている。
会社はROE8%以上とPBR1倍以上を掲げる。ただ、ROEは直近で2%台だ。還元を増やして自己資本を絞る手は、見かけのROEを押し上げる。だが、稼ぐ力を上げなければ価値は増えない。
買収は小粒だ。ドーケンは2025年に過半を取り、その後ほぼ全株に引き上げた。大型買収で価値を壊す心配は小さい。
大株主は信託銀行、日本製鉄(9.5%)、メガバンクなどで、支配する株主はいない。時価総額が小さく、帳簿より安い。他社の見積りでは、10年以内に買われる確率は2割台前半である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
値上げの効果は、これから本格的に出る。2024年の価格改定のあと、製品事業部は利益が大きく伸びた。今期はITWの米国向けの転嫁が加わり、営業利益は28億円と前期の1.5倍を見込む。第1四半期はすでに前年の4倍の7億円を稼いだ。
売上の6割を占める製品事業部の利益率は、まだ1%台だ。ここが3%に届くだけで、会社全体の利益は5割近く増える。ITWは国内の約半分を握り、米国で生産能力を1.4倍にした。関税で国内回帰が進めば、数量も伸びる。
誘導加熱装置は、脱炭素でガス炉から電気への切り替えが進む。保守が積み上がる事業で、利益率は高い。EVで減るエンジン部品の熱処理も、モーターシャフトや足回りが埋める。
資本政策も変わった。政策保有株を7割減らし、DOE4%と自社株買いを打ち出した。PBR1倍を掲げる経営が、利益率の改善に本気で取り組むなら、ROEは8%に近づく。帳簿の厚い会社が収益を上げ始めれば、再評価の余地は大きい。
慎重な見方
最大の問題は、儲けの薄さが10年変わっていないことだ。営業利益率は2〜7%の間を行き来し、ROEの中央値は2.4%である。シェア首位でこの水準なら、値段を決める力が弱いということだ。
中期計画は目標の引き下げを繰り返した。売上700億円、営業利益率6.5%の目標は、3.3%まで下がっている。今期の営業利益28億円も、関税の転嫁と一時的な新幹線の案件に支えられている。
自動車が売上の56%を占める。エンジン部品の熱処理はEV化で細る。専業の競合と自動車大手の内製もあり、価格競争が起きやすい。中国の子会社は日系メーカーの苦戦で重い。
資金繰りも安心できない。営業キャッシュフロー18億円に対し、投資は52億円だった。配当と自社株買いを含め、現金が1年で33億円減った。DOE4%の配当は純利益を上回り、続ければ自己資本が削られる。
帳簿が厚いことは、利益が出るなら価値になる。だが利益が出ない資産は、額面どおりに売れるとは限らない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方には、値上げの効果と第1四半期の増益という足元の事実がある。慎重な見方には、10年変わらない儲けの薄さと計画の引き下げ、資金の流出という、より長い事実がある。
筆者は、長い事実の方が重いと見る。そのため確率は、中立と、やや悲観に厚く置いた。強気の筋書きは、利益率が7%台に乗る場合で、確率は1割に届かない。
結果は割高である。強気の筋書きでも、今の時価総額を超えるのは1つだけだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,075 円345 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 748 円240 億円)。 今の値に割り戻すと 1,007 円323 億円、今との差 −27.7%、 期待の年率 +2.7%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,470 円792 億円 | 1,075 円345 億円 | +154.7% | +9.8% | 284 円91 億円 |
| やや楽観 | 19% | 1,714 円550 億円 | 919 円295 億円 | +89.2% | +6.6% | 500 円161 億円 |
| 中立 | 35% | 1,188 円381 億円 | 851 円273 億円 | +46.5% | +3.9% | 714 円229 億円 |
| やや悲観 | 25% | 383 円123 億円 | 586 円188 億円 | −30.4% | −3.6% | 242 円78 億円 |
| 悲観 | 13% | 305 円98 億円 | 327 円105 億円 | −54.5% | −7.6% | 82 円26 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,075 円345 億円 | 748 円240 億円 | +30.9% | +2.7% | 1,822 円585 億円 |
今の株価時価総額 1,392 円447 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 値上げが定着し、鋼線と装置が伸びる 利益 59 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 2,470 円792 億円
米国と国内回帰でITWの出荷は1.5倍になり、値上げは物価を上回って通る。鋼線の営業利益率は7%台半ばまで上がる。
誘導加熱装置は、脱炭素の電化投資で伸びる。装置が増えれば、保守と部品の売上も積み上がる。熱処理の受託は、エンジン部品の減少をモーターシャフトや足回りが埋め、処理量は横ばいを保つ。
建築・土木の補強筋は、新幹線のあとも採用が続く。製品事業部は、薄利から抜け出す。
会社全体の営業利益率は7%台前半に乗り、かつての山に近づく。利益の伸びで自己資本利益率は9%台になり、資本コストを超える。DOE4%の配当は、利益で賄えるようになる。ここまで揃う確率は高くない。
- 高強度ばね鋼線(ITW):数量 97.5(ITWの出荷量(千トン・推定))× 価格 4.22(1千トンあたり売上(億円)=鋼材代込みの単価)→ 売上 412 億円・営業利益 31 億円。米国向け増産と国内回帰で出荷1.5倍、値上げは物価を上回る
- 建築・土木・建機の鋼材製品:数量 52.5(出荷量(千トン換算・推定))× 価格 4.68(1千トンあたり売上(億円))→ 売上 245 億円・営業利益 11 億円。新幹線案件のあとも補強筋の採用が続き横ばい
- 熱処理受託加工:数量 137(処理量(千トン・推定))× 価格 1.33(1千トンあたり加工賃(億円))→ 売上 182 億円・営業利益 16 億円。エンジン部品の減りを足回り・EV部品の増が埋める
- 誘導加熱装置・保守:数量 247(装置・保守の取扱量(装置1台換算・推定))× 価格 0.63(1台換算あたり売上(億円))→ 売上 155 億円・営業利益 16 億円。電化・省エネ需要で装置と保守が1.7倍
- プレキャストコンクリート(ドーケン)ほか:数量 24.0(出荷量(千立方メートル換算・推定))× 価格 1.61(1千立方メートルあたり売上(億円))→ 売上 39 億円・営業利益 3 億円。プレキャストの需要増
倍率:事業の純利益 59 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍。全体の PER 13.43 倍、時価総額 792 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率が過去の山の7%台に乗るには、鋼線の増産、装置の伸び、自動車の底堅さが連続して要る。会社の計画の引き下げが続いた実績もあり、確率は1割に届かない。
やや楽観 19% 製品事業部の利益率が3%台に乗る 利益 44 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,714 円550 億円
ITWは出荷が1.35倍に伸び、価格転嫁も物価をわずかに上回る。誘導加熱装置と保守は1.5倍になる。
熱処理の受託は、エンジン部品が減る分だけ処理量が1割弱落ちるが、加工賃は物価並みに通る。建築・土木は数量が横ばいで、利益率が3%台に乗る。
会社全体の営業利益率は6%台に上がる。かつての山には届かないが、中期計画の当初の目標、6.5%に近い。自己資本利益率は7%台で、資本コストにあと一歩のところまで来る。
配当と自社株買いは、利益の範囲でほぼ賄える。ここが、筆者の見る「うまくいった場合」の現実的な上限だ。
- 高強度ばね鋼線(ITW):数量 87.8(ITWの出荷量(千トン・推定))× 価格 4.10(1千トンあたり売上(億円)=鋼材代込みの単価)→ 売上 360 億円・営業利益 23 億円。出荷1.35倍、価格は物価をわずかに上回る
- 建築・土木・建機の鋼材製品:数量 50.0(出荷量(千トン換算・推定))× 価格 4.54(1千トンあたり売上(億円))→ 売上 227 億円・営業利益 8 億円。数量は横ばい、旋回輪の回復が支える
- 熱処理受託加工:数量 126(処理量(千トン・推定))× 価格 1.30(1千トンあたり加工賃(億円))→ 売上 164 億円・営業利益 12 億円。処理量は1割弱減、価格転嫁は物価並み
- 誘導加熱装置・保守:数量 218(装置・保守の取扱量(装置1台換算・推定))× 価格 0.61(1台換算あたり売上(億円))→ 売上 134 億円・営業利益 13 億円。装置と保守が1.5倍
- プレキャストコンクリート(ドーケン)ほか:数量 22.0(出荷量(千立方メートル換算・推定))× 価格 1.61(1千立方メートルあたり売上(億円))→ 売上 35 億円・営業利益 2 億円。プレキャストは1割増
倍率:事業の純利益 44 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 550 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げは実際に通り始めており、第1四半期は前年の4倍の営業利益を出した。製品事業部が3%台に乗る姿は十分にありうる。
中立 35% 値上げは通るが、利益率は5%前後で止まる 利益 31 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,188 円381 億円
値上げは通るが、買い手が自動車大手である以上、利益率の改善は途中で止まる。ITWの出荷は2割増え、価格は物価並みに上がる。営業利益率は5%に届く。
熱処理の受託は、エンジン部品の減少で処理量が15%減る。モーターシャフトなどの新しい仕事が埋めるが、全部は埋まらない。誘導加熱装置と保守は3割増える。
建築・土木は、人口の減少で数量が5%落ちる。新幹線の案件が一巡したあと、利益率は2%台にとどまる。
会社全体の営業利益率は5%に近づく。2028年3月期の会社予想、4%台前半より少し高い。自己資本利益率は5%台で、資本コストを下回ったままだ。それでも赤字はなく、配当は続く。
- 高強度ばね鋼線(ITW):数量 78.0(ITWの出荷量(千トン・推定))× 価格 4.04(1千トンあたり売上(億円)=鋼材代込みの単価)→ 売上 315 億円・営業利益 16 億円。出荷1.2倍、価格は物価並み、利益率5%
- 建築・土木・建機の鋼材製品:数量 47.5(出荷量(千トン換算・推定))× 価格 4.48(1千トンあたり売上(億円))→ 売上 213 億円・営業利益 5 億円。国内の建設需要は人口で細り、数量は5%減
- 熱処理受託加工:数量 116(処理量(千トン・推定))× 価格 1.27(1千トンあたり加工賃(億円))→ 売上 148 億円・営業利益 9 億円。自動車のエンジン部品が減り処理量は15%減
- 誘導加熱装置・保守:数量 189(装置・保守の取扱量(装置1台換算・推定))× 価格 0.60(1台換算あたり売上(億円))→ 売上 113 億円・営業利益 9 億円。装置と保守が1.3倍
- プレキャストコンクリート(ドーケン)ほか:数量 20.0(出荷量(千立方メートル換算・推定))× 価格 1.61(1千立方メートルあたり売上(億円))→ 売上 32 億円・営業利益 2 億円。数量横ばい
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.4% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 381 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げの定着と、EV化・国内建設の細りを足して割った中心の筋書き。最も厚く置いた。
やや悲観 25% 顧客の値下げ要求で、儲けが細る 利益 14 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 383 円123 億円
顧客の自動車メーカーから、値下げの要求が続く。ITWの出荷は横ばいで、価格は物価に届かない。
熱処理の受託は、EV化で処理量が3割近く減り、固定費が重くなる。新しい設備の償却が、利益を削る。建築・土木は、数量が1割減り、値上げも通らず、利益率は1%まで落ちる。
会社全体の営業利益率は3%台に落ち、利益は今とほぼ同じ水準にとどまる。物価で人件費が増える分だけ、実質では減益だ。
自己資本利益率は2%台で、資本コストを大きく下回る。配当はDOE3%に戻り、自社株買いは細る。事業は残るが、シェア首位の会社とは言えなくなる。
- 高強度ばね鋼線(ITW):数量 65.0(ITWの出荷量(千トン・推定))× 価格 3.86(1千トンあたり売上(億円)=鋼材代込みの単価)→ 売上 251 億円・営業利益 8 億円。出荷は横ばい、顧客の値下げ要求で価格は物価に届かない
- 建築・土木・建機の鋼材製品:数量 44.0(出荷量(千トン換算・推定))× 価格 4.28(1千トンあたり売上(億円))→ 売上 188 億円・営業利益 2 億円。数量1割減、値上げが通らず利益率1%
- 熱処理受託加工:数量 98.6(処理量(千トン・推定))× 価格 1.21(1千トンあたり加工賃(億円))→ 売上 120 億円・営業利益 5 億円。処理量が3割近く減り固定費が重い
- 誘導加熱装置・保守:数量 160(装置・保守の取扱量(装置1台換算・推定))× 価格 0.58(1台換算あたり売上(億円))→ 売上 93 億円・営業利益 6 億円。装置は1割増にとどまる
- プレキャストコンクリート(ドーケン)ほか:数量 18.0(出荷量(千立方メートル換算・推定))× 価格 1.56(1千立方メートルあたり売上(億円))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。数量1割減
倍率:事業のROE 2.5%がk 8%を下回り、価格を押される構造的な筋書きなので、稼ぐ力から約7.5割の8.8倍に置く(上限1÷k=11.8倍)。
確率:10年変わらない儲けの薄さと、中期計画の引き下げの繰り返しが、現実に起きている。慎重な見方の確率を厚めに置いた。
悲観 13% EV化と価格競争で、構造的に負ける 利益 4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 305 円98 億円
EV化が予想より速く進み、エンジン部品の熱処理は半減近くまで減る。ITWは中国勢と関税の巻き戻しでシェアを失い、価格は物価の半分しか上がらない。
建築・土木は数量が2割減り、固定費が残って赤字になる。誘導加熱装置も、自動車の設備投資が細って縮む。
営業利益はほぼゼロまで下がる。工場の再編投資で積んだ設備に減損が出て、自己資本も減る。配当は利益に合わせて絞る。
もう優良な会社ではなく、設備と土地を抱えた加工業になっている。この筋書きでは、時価総額は稼ぐ力ではなく、土地や設備の売却額で決まる。
中国の子会社は撤退や縮小を迫られ、工場の移転に続く減損が重なる。顧客は複数の加工先を競わせ、受託の加工賃は物価に追いつかない。米国の工場も、稼働が上がらず固定費がかさむ。
- 高強度ばね鋼線(ITW):数量 52.0(ITWの出荷量(千トン・推定))× 価格 3.47(1千トンあたり売上(億円)=鋼材代込みの単価)→ 売上 180 億円・営業利益 1 億円。中国勢と関税の巻き戻しでシェア縮小、価格は物価の半分
- 建築・土木・建機の鋼材製品:数量 40.0(出荷量(千トン換算・推定))× 価格 4.01(1千トンあたり売上(億円))→ 売上 160 億円・営業利益 −1 億円。数量2割減、固定費が残り赤字
- 熱処理受託加工:数量 75.4(処理量(千トン・推定))× 価格 1.14(1千トンあたり加工賃(億円))→ 売上 86 億円・営業利益 1 億円。EV化で処理量が半減近く、設備の償却が重い
- 誘導加熱装置・保守:数量 131(装置・保守の取扱量(装置1台換算・推定))× 価格 0.54(1台換算あたり売上(億円))→ 売上 70 億円・営業利益 2 億円。装置の需要が減り、利益率3%
- プレキャストコンクリート(ドーケン)ほか:数量 16.0(出荷量(千立方メートル換算・推定))× 価格 1.44(1千立方メートルあたり売上(億円))→ 売上 23 億円・営業利益 0 億円。数量2割減
倍率:稼ぐ力(純利益4億円÷k=約47億円)より、土地・設備などの売れる資産の税後(約98億円)が上回るので、今の自己資本575億円に0.17を掛けて床に置いた。
確率:EV化、中国勢、関税の巻き戻しが重なる構造的な負け。起こる確度は低いが、設備が重く、軽くは見られない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
高強度ばね鋼線(ITW)
自動車の懸架ばね向けに、冷間成形に向く高強度の鋼線を作る。国内で約半分を持つ主力製品。
| 数量ITWの出荷量(千トン・推定) | 価格1千トンあたり売上(億円)=鋼材代込みの単価 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 65.0 | 3.02 | 196 | 4 |
| 10 年後 中立 | 78.0 | 4.04 | 315 | 16 |
取り方:ITWの売上は2027年3月期の計画225億円(前期比+14.8%)から逆算して約196億円。出荷量は開示がなく、1トンあたり約30万円(鋼材代込み)と置いて約65千トンと推定した。営業利益4.0億円は開示がなく、製品事業部の営業利益4.6億円を建築・建機と割って推定した。数量は実質の出荷量で、物価は価格に入れた。
建築・土木・建機の鋼材製品
PC鋼棒、高強度せん断補強筋、建設機械の旋回輪など。建築と土木が中心で、利益率は低い。
| 数量出荷量(千トン換算・推定) | 価格1千トンあたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 50.0 | 3.34 | 167 | 1 |
| 10 年後 中立 | 47.5 | 4.48 | 213 | 5 |
取り方:製品事業部の売上363億円からITWの約196億円を引いた約167億円。内訳はPC鋼棒約51億円、せん断補強筋約46億円、旋回輪約38億円、その他。出荷量は開示がなく、1トンあたり約33万円と置いて約50千トンと推定。営業利益0.6億円は製品事業部の4.6億円からITW分を引いた推定。物価は価格に入れた。
熱処理受託加工
自動車、建設機械、工作機械の部品に高周波焼入れをして返す受託加工。国内で約47%のシェア。
| 数量処理量(千トン・推定) | 価格1千トンあたり加工賃(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 137 | 0.95 | 130 | 9 |
| 10 年後 中立 | 116 | 1.27 | 148 | 9 |
取り方:2027年3月期の熱処理受託の計画128億円(前期比-1.5%)から逆算して約130億円。処理量は開示がなく、1トンあたり約9.5万円の加工賃と置いて約137千トンと推定した。営業利益8.5億円はIH事業部の13億円を装置・保守と割って推定。数量は実質の処理量で、物価は価格に入れた。
誘導加熱装置・保守
自社で設計する高周波の加熱装置と、その保守・部品。国内の装置市場で約2割のシェア。
| 数量装置・保守の取扱量(装置1台換算・推定) | 価格1台換算あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 145 | 0.45 | 65 | 5 |
| 10 年後 中立 | 189 | 0.60 | 113 | 9 |
取り方:IH事業部の売上195億円から熱処理受託の約130億円を引いて約65億円。計画では装置39億円、保守26億円。台数は開示がなく、1台換算あたり約4,500万円と置いて推定した。営業利益4.5億円は推定。物価は価格に入れた。
プレキャストコンクリート(ドーケン)ほか
2025年に傘下に入れた福岡のドーケンが中心。建築・土木のコンクリート部材を作り、施工する。
| 数量出荷量(千立方メートル換算・推定) | 価格1千立方メートルあたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 1.20 | 24 | 1 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 1.61 | 32 | 2 |
取り方:その他セグメントの売上約24億円、営業利益1.2億円。出荷量は開示がなく、部材と生コンの混ざった単価を1立方メートルあたり約12万円と置いて推定。2027年3月期は売上28億円の計画。
リスクと懸念
売上の56%が自動車
EV化でエンジン部品の熱処理が細る。モーターシャフトなどの新しい仕事が埋めきれるかは分からない。自動車の生産が落ちると、鋼線も受託も装置も同時に減る。
値上げが続かない
買い手が自動車大手なので、鋼材や電気代の上昇を価格に移すのに時間がかかる。ITWの米国向けの転嫁は関税が前提で、政策が変われば巻き戻る。
儲けの薄い事業が売上の6割
製品事業部の営業利益率は1%台だ。鋼材の値動きと数量の波で、すぐ赤字に近づく。今期の黒字転換が続くかが問われる。
稼ぎを超える還元と投資
2026年3月期は営業キャッシュフロー18億円に対し、投資が52億円だった。現金は33億円減り、自己資本比率は66%まで下がった。この水準が続くと財務が細る。
中期計画の信頼性
売上700億円、営業利益率6.5%の目標は、3.3%まで下がった。経営は繰り返しを反省し、次の計画で達成を目指すと言うが、実行の裏づけはこれからだ。
中国の事業の重さ
日系自動車メーカーの苦戦で、現地子会社の収益が重い。軸承の工場を移転する費用と減損が出た。ASEANへの展開で埋められるかは見えない。
今後の分かれ目
- 製品事業部の営業利益率が2期続けて3%を超えたら
- 薄利から抜け出した証拠。中立の利益率を上げ、強気側の確率を増やす。
- 営業キャッシュフローが設備投資を上回る年が続いたら
- 還元が稼ぎで賄えている証拠。資本政策の評価を上げる。
- 米国の関税が引き下げられたら
- ITWの転嫁と国内回帰が巻き戻る。ITWの価格と数量の見通しを下げる。
- EV向けの熱処理受託が全体の1割を超えたら
- エンジン部品の減少を埋められる。熱処理の処理量の減りを小さく見る。
- 会社が次の中期計画で営業利益率の目標を示したら
- 達成の根拠(値上げの実績・撤退の実行)があるかを確かめる。根拠が薄ければ割り引く。
- 自動車メーカーが熱処理の内製を広げたら
- 構造的な負けに近づく。悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 製品事業部とIH事業部の営業利益率(四半期の決算短信)
- ITWの売上と米国の関税の動き
- 営業キャッシュフローと設備投資の差、現金の残高
- 次の中期計画の数値目標と、配当・自社株買いの実績
倍率と資本コストの決め方
事業は5つ(ITW、建築・土木の鋼材、熱処理受託、誘導加熱装置、ドーケン)に分け、数量は実質の出荷量・処理量・取扱量、価格は物価3%を含む名目の単価で積んだ。出荷量と処理量は開示がなく推定である。倍率は資本コスト8%から出し、事業のROEが資本コストを下回るため上限は1÷kとし、中立はその8割に置いた。今の株価・過去のPER・同業の倍率は使っていない。還元は会社の方針(DOE4%、自社株買い60億円の残り)に沿い、利益が減る筋書きでは絞った。10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形のまま置いた(新リース会計基準の影響は小さい)。指示書の領域は「表面処理(溶射加工)」だったが、実際の事業は高周波熱処理・鋼線・加熱装置であり、溶射を持たないので、この会社の事業の領域で前提を置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→13.43 倍・やや楽観 PER 10→12.5 倍・中立 PER 9.4→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質の調整+1.0%を足した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。