結論
ノーリツは、ガス給湯器で国内2位の住宅設備メーカーだ。家庭の風呂やキッチンのお湯を沸かす機械を、全国の工事店とガス会社を通じて売る。筆者の結論は「割高」。事業は安定しているが、稼ぐ力が弱い。
売上は2,000億円を超えるのに、営業利益は43億円しかない。利益率は2%だ。同じ給湯器で首位のリンナイは13%を稼ぐ。同じ寡占の中で、これだけ差がついている。
足元の利益は見かけより小さい。2026年12月期の純利益は86億円を見込むが、うち44億円は持ち合い株の売却益で、一回きりだ。本業の稼ぎは40億円前後と見る。
救いは手元の厚さだ。借金は無く、純現金が166億円ある。値上げも進み、北米と豪州は伸びている。ただ、10年後の中立の姿でも自己資本利益率(株主のお金に対する稼ぎ)は5%程度で、資本コストの8%に届かない。強気の筋書きが実現して、ようやく今の値段に並ぶ。
取り替え需要が相手の事業なので、需要は読みやすい。読みにくいのは、ガスから電気への転換だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ノーリツは「良い守り、薄い攻め」の会社と映る。
事業の本質は、壊れたら誰かが交換する給湯器を、工事店とガス会社の網で売ることにある。10年後もこの事業は存在する。堀は広がらないが、急には崩れない。
ただ、オーナー利益(株主が自由に使える利益)が薄い。営業利益43億円のうち、株主に残るのは30億円台。時価総額の1,000億円に対して、利回りは3〜4%にすぎない。国債の3%と、ほとんど変わらない。
資本の使い方には評価できる点もある。借金が無く、配当を厚くし、持ち合い株を減らして自社株買いを始めた。言葉だけでなく、実際の行動が出ている。筆者はこの変化を好意的に見る。
一方で、給湯器の市場は構造的に先細る可能性がある。脱炭素の流れでガスからヒートポンプへの転換が進めば、堀(販路と修理網)は価値を保てるのか。答えが見えない。
安全域は、純現金の166億円と持ち合い株の含み益にある。しかし、事業そのものの価値は、中立の筋書きで現在の値段を下回る。払う値段に十分な余裕は無い。
何で稼ぐ会社か
ノーリツは、お湯をつくる機械の専業メーカーだ。ガス給湯器、ハイブリッド給湯機、温水暖房、浴室まわりが中心で、キッチンのビルトインコンロも持つ。
国内の売上は1,367億円。このうち温水機器が約8割を占め、残りが厨房機器だ(内訳は筆者の推定)。客は直接の一般家庭ではなく、工事店・ガス会社・住宅メーカーだ。給湯器は壊れた時に取り替える商品なので、工事店が「どこの製品を入れるか」を決める。販路と修理網が勝負になる。
国内ガス給湯器の市場は、リンナイが41%、ノーリツが36%とされる。2社でほぼ8割を握る寡占だ。
海外の売上は653億円で、全体の3割を占める。北米では高効率の瞬間式給湯器と業務用の機器を売る。中国は不動産不況で市況が重いが、上海では高級ブランドとして通用している。豪州ではヒートポンプ給湯機が伸びる。タイのカンガルー社は持分法の会社で、利益だけが入る。
利益率は低い。2025年12月期は、国内が1.5%、海外が3.2%だ。値上げが続いているのに、利益率が上がりにくい点が、この会社の弱みになる。
2026年8月からは、一部の製品で出荷価格を5〜30%引き上げた。部材と物流費の高騰に加え、下請け取引の新しい法律への対応が理由だ。
優良さと弱いところ
筆者の見るノーリツは「堀はあるが、堀の中で稼げていない」会社だ。
堀は、全国の工事店とガス会社につながる販路と、修理網にある。給湯器は壊れると家庭が困るので、早く直せる会社が選ばれる。この仕組みは新参にまねしにくい。国内シェア36%は、その結果だ。
問題は稼ぎの薄さにある。営業利益率は過去10年、1〜4%台にとどまった。自己資本利益率の中央値は3.7%。リンナイの9%に遠く及ばない。同じ給湯器を作る寡占の2番手なのに、これだけ差が開いている。
理由は、規模と海外の稼ぎ方にある。リンナイは中国と豪州で高い利益率を出す。ノーリツは国内の住宅向けに偏り、中国は赤字から回復したばかりだ。国内も、新築の着工減と部材高を、値上げで追いかける展開が続いた。
過去10年で最高の営業利益は89億円(2016年12月期)。前の計画「Vプラン23」は営業利益80億円を掲げて届かず、今の「Vプラン26」も90億円から45億円へ目標を下げた。目標を2回外した経営は、割り引いて見る。
良い点もある。自己資本比率は59%と厚く、借金も無い。経営が守りの姿勢を取る限り、潰れる心配は小さい。ただ、守りが厚いほど資本が眠り、自己資本利益率が下がるという悪循環にもなっている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の給湯器は、新築が細っても、取り替え需要が底を支える市場だ。
給湯器の寿命は10〜15年。国内には膨大なストックがあり、毎年一定数が壊れて入れ替わる。新築の着工は人口減で細るが、更新の数は急には減らない。数量は10年で0.9〜1.0倍が普通の見方で、会社の予想も大きくは違わない。
値段は上がりやすい。部材・物流・人件費が上がり、メーカー各社が値上げを通している。リンナイは2026年9月から平均6.8%、ノーリツも5〜30%引き上げた。取り替え需要は「壊れた時に買う」性格なので、値上げが通りやすい。
構造の変化は、燃料の転換から来る。政府は脱炭素のために、ガスの給湯器から電気のヒートポンプ給湯機への切り替えを促している。ガス給湯器の高効率化(エコジョーズ、ハイブリッド)は、その橋渡しだ。ただ、10年後にガス機器の台数が今のまま残るかは分からない。
競争は2強が支配する。リンナイとノーリツで国内の8割弱。これに加えて、パーパス、長府製作所、さらに中国・アジアの大手が控える。海外の北米ではリームや A. O. スミスが強く、ノーリツは小さな挑戦者にすぎない。
循環のどこにいるか。2025年は取り替え需要と値上げで、国内は増収増益になった。部材の高騰が落ち着けば利益率が戻る局面だが、新築の落ち込みと中国の不振は残る。
資本政策と M&A
資本政策は、守りから攻めへ移る途中にある。
配当は「連結配当性向50%」か「自己資本の2.5%」のどちらか高い方だ。今期は純利益が政策保有株の売却益で膨らむため、配当は年間43億円規模になる。足元の本業の利益を超える水準だ。さらに自社株買いを上限10億円で進めている。
手元の資金は厚い。純現金は166億円で、時価総額の16%に当たる。ただ、3年で325億円を海外と工場の刷新に投じる計画があり、全額を事業に不要とは言えない。
政策保有株(持ち合い株)は、純資産の20%未満へ減らす方針だ。2026年1〜3月期に44億円の売却益を出した。売却で得た資金が株主還元に回るかが焦点になる。残る含み益(評価差額金で税引後およそ100億円と推定)は、戻り方を半分とみて余った現金に足している。
再編の見方では、時価総額が1,000億円と小さく、純現金があって、国内2位の寡占を持つ。買い手にとっては、買いやすい規模に見える。ただ、利益率が低いため、買収後に高い値段を正当化しにくい。TOBの確率は10年で18%程度と推定される。
還元は方針(配当性向50%かDOE2.5%の高い方、自社株買い上限10億円)の範囲で、中立は純利益の合計の約8割。余った現金120億円は還元に入れず時価総額に足すので二重にしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方はこうなる。ノーリツは今、底から上がる途中にいる。
2025年12月期の営業利益は43億円で、前期の2倍近い。国内は値上げと高付加価値品の販売で増益、海外は全地域で増益に転じた。原価低減も、3年累計で13億円以上積み上がり、来年はさらに17億円積む。
値上げの効果はこれからだ。2026年8月からの5〜30%の値上げが年間で効けば、国内の利益率は2%台から4%台へ上がる余地がある。国内の取り替え需要は堅く、リンナイの値上げも同じ方向で、業界が足並みを揃える形だ。
海外は本物の伸びしろがある。北米で業務用のヒートポンプ給湯機を日本イトミックと進め、豪州ではヒートポンプの売上が伸びる。海外の利益率が3%台から8〜9%に上がれば、会社全体の利益は今の4〜5倍になる。
資本の面でも変わった。持ち合い株の売却、自社株買い、配当性向50%。ROE6%超の目標を会社が掲げ、行動も伴っている。リンナイとの差を半分でも縮めれば、10年後の時価総額は今の1.5倍が見える。
慎重な見方
慎重な見方は、まず「利益が続かない」ことを指摘する。
2026年12月期の純利益86億円のうち、44億円は持ち合い株の売却益だ。本業の稼ぎは40億円前後で、2027年12月期は35億円と見込まれている。リンナイが13%を稼ぐ寡占の中で、ノーリツだけが2%に沈んでいる。10年以上この状態が続き、目標を2回外した。
値上げは、利益率の改善ではなく、部材高の後追いにすぎない。値上げで売上は増えても、同じ分だけコストが上がれば、利益は増えない。国内の営業利益は21億円と、売上の1.5%だ。
構造も怪しい。脱炭素でガス給湯器がヒートポンプへ移れば、ノーリツの国内の本丸が細る。ヒートポンプはリンナイも、パナソニックなど家電大手も狙う。電気機器の戦いは、ガス機器の寡占より競争が激しい。
海外は中国が不動産不況で重く、北米は黒字化したばかりで規模が小さい。325億円の投資を3年で積んでも、リターンが資本コストの8%を超える保証は無い。
そして今の値段は、本業の利益に対して高い。純現金が下値を支えるが、それは事業の価値ではない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が少し強い。強気の言う値上げと原価低減は本物だが、筆者はそれが利益率の定着に結びつくとまでは見ない。稼ぎの薄さが10年以上続き、目標を2回外した事実は重い。ただ、借金が無く、純現金があり、持ち合い株の整理も進むため、悲観を大きく厚くはしなかった。確率は、中立を最も厚くしつつ、やや悲観を強気の側より厚く置き、悲観を1割強とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 2,440 円1,116 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 890 円407 億円)。 今の値に割り戻すと 1,671 円765 億円、今との差 −25.9%、 期待の年率 +4.0%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 5,086 円2,327 億円 | 1,312 円600 億円 | +183.5% | +11.0% | 384 円176 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,694 円1,690 億円 | 1,137 円520 億円 | +114.0% | +7.9% | 870 円398 億円 |
| 中立 | 38% | 2,615 円1,196 億円 | 962 円440 億円 | +58.5% | +4.7% | 1,359 円622 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,460 円668 億円 | 787 円360 億円 | −0.5% | 0.0% | 584 円267 億円 |
| 悲観 | 12% | 810 円371 億円 | 306 円140 億円 | −50.6% | −6.8% | 134 円61 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,440 円1,116 億円 | 890 円407 億円 | +47.6% | +4.0% | 3,331 円1,524 億円 |
今の株価時価総額 2,257 円1,033 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 値上げと海外で利益率が倍になる 利益 165 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 5,086 円2,327 億円
値上げが定着し、原価低減も積み上がる。国内の温水機器は利益率が6%台まで上がる。取り替えの需要は堅く、高効率品とハイブリッド給湯機の比率が増えて、台数が減っても単価で補う。
北米では業務用のヒートポンプ給湯機が当たり、台数が2倍近くに増える。豪州と東南アジアでもヒートポンプが伸びて、海外の利益率は9%近くになる。会社全体の営業利益は200億円を超え、今の5倍近い。
リンナイに近い稼ぐ力を得た会社になり、配当と自社株買いも増える。ガス給湯器からヒートポンプへの転換を、自社の商品で取りに行けた形だ。
- 国内の温水機器(給湯器・暖房・バス):数量 157(給湯器など出荷台数相当(万台。推定))× 価格 9.54(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 1,495 億円・営業利益 97 億円
- 国内の厨房機器ほか(ビルトインコンロなど):数量 50.0(厨房機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 7.76(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 388 億円・営業利益 16 億円
- 北米(高効率給湯器・業務用):数量 47.5(給湯器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 13(1台あたり売上(万円。名目・150円換算))→ 売上 612 億円・営業利益 55 億円
- 中国(給湯器・厨房):数量 84.0(給湯器・厨房機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 3.85(1台あたり売上(万円。名目・150円換算))→ 売上 324 億円・営業利益 19 億円
- 豪州・東南アジアほか海外:数量 48.0(給湯機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 9.01(1台あたり売上(万円。名目・150円換算))→ 売上 432 億円・営業利益 39 億円
倍率:事業の純利益 163 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)120 億円。全体の PER 12.52 倍、時価総額 2,165 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率が6%を超えるのは、過去25年で2000年12月期の一度だけ。国内の利益率をリンナイの半分に近づけ、海外も伸ばす筋書きは起こりにくいため、6%にした。
やや楽観 18% 国内は堅く、北米と豪州が伸びる 利益 119 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 3,694 円1,690 億円
国内は取り替え需要と値上げで利益率が5%まで改善する。リンナイとの値上げの足並みがそろい、競争は価格より機能に移る。
北米と豪州が伸び、海外の数量は5割以上増える。海外の利益率は7%前後に上がる。中国は横ばいで、大きくは崩れない。
営業利益は160億円ほど。今の4倍近いが、新築の減少と、ヒートポンプへの投資負担が足を引っ張る。強気には届かない。自己資本利益率は資本コストに届かず、事業の質は「普通」にとどまる。
国内の取り替えは10〜15年周期で、この安定は筋書きの土台になる。省エネ補助金が続けば、高効率品の比率はさらに上がる。
- 国内の温水機器(給湯器・暖房・バス):数量 154(給湯器など出荷台数相当(万台。推定))× 価格 9.33(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 1,434 億円・営業利益 72 億円
- 国内の厨房機器ほか(ビルトインコンロなど):数量 47.5(厨房機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 7.59(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 361 億円・営業利益 11 億円
- 北米(高効率給湯器・業務用):数量 42.5(給湯器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 13(1台あたり売上(万円。名目・150円換算))→ 売上 536 億円・営業利益 38 億円
- 中国(給湯器・厨房):数量 80.0(給湯器・厨房機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 3.85(1台あたり売上(万円。名目・150円換算))→ 売上 308 億円・営業利益 14 億円
- 豪州・東南アジアほか海外:数量 43.5(給湯機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 8.81(1台あたり売上(万円。名目・150円換算))→ 売上 383 億円・営業利益 27 億円
倍率:事業の純利益 117 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)120 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 1,500 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げと原価低減が定着し、北米・豪州の伸びも続く筋書きは、足元の実績から無理なくたどれる。ただ、過去10年で営業利益率が4%を超えたのは1度だけなので、2割弱にとどめた。
中立 38% 利益は戻るが、資本コストには届かない 利益 77 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,615 円1,196 億円
国内の数量は10年で1割弱減る。新築は細るが、取り替えが支える。値上げで売上は保たれ、温水機器の利益率は3%台に上がる。
海外は北米で数量が5割増え、豪州などもヒートポンプを中心に伸びる。海外の利益率は5%前後になる。
営業利益は100億円ほどで、今の2.4倍。ただ、売上が2,800億円まで伸びても、利益率は3〜4%台で止まる。自己資本利益率は5%前後で、資本コストの8%に届かない。
筆者は、これを最も起こりやすい姿と見る。回復はするが、株主への実りは小さい。リンナイとの差は縮まらない。
国内ではハイブリッド給湯機や高効率品が増え、単価は物価並みに上がる。ヒートポンプへの転換は緩やかに進み、ガス機器の台数は1割弱の減少にとどまる。北米・豪州の黒字は定着し、中国は下げ止まる。
- 国内の温水機器(給湯器・暖房・バス):数量 152(給湯器など出荷台数相当(万台。推定))× 価格 9.13(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 1,388 億円・営業利益 46 億円
- 国内の厨房機器ほか(ビルトインコンロなど):数量 46.0(厨房機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 7.42(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 341 億円・営業利益 9 億円
- 北米(高効率給湯器・業務用):数量 37.5(給湯器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 12(1台あたり売上(万円。名目・150円換算))→ 売上 462 億円・営業利益 23 億円
- 中国(給湯器・厨房):数量 76.0(給湯器・厨房機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 3.85(1台あたり売上(万円。名目・150円換算))→ 売上 293 億円・営業利益 9 億円
- 豪州・東南アジアほか海外:数量 39.0(給湯機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 8.62(1台あたり売上(万円。名目・150円換算))→ 売上 336 億円・営業利益 17 億円
倍率:事業の純利益 75 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.3% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)120 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 1,006 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:取り替え需要と値上げで利益は今の2倍強に戻るが、利益率は3〜4%台で止まる。足元の実績と会社の計画から、いちばん無理なくたどれる形なので、最も厚くした。
やや悲観 26% ヒートポンプへ押され、薄利のまま 利益 41 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 1,460 円668 億円
ガスから電気への転換が進み、ガス給湯器の台数が1割強減る。ヒートポンプでは、家電大手とリンナイが先を行き、ノーリツは追いかける側になる。
値上げは部材高の後追いにとどまり、価格競争もあって、価格は物価並みには上がらない。国内の温水機器の利益率は2%の水準にとどまる。
海外は中国が縮み、北米と豪州は伸びても、投資の負担で利益は薄い。営業利益は50億円ほどで、今とあまり変わらない。
純利益も40億円ほどで、配当を維持するのに利益を使い切る。自己資本は増えず、自己資本利益率は3%に近い。純現金があるので潰れはしないが、株主の取り分は薄いまま続く。
- 国内の温水機器(給湯器・暖房・バス):数量 141(給湯器など出荷台数相当(万台。推定))× 価格 8.86(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 1,247 億円・営業利益 26 億円
- 国内の厨房機器ほか(ビルトインコンロなど):数量 42.5(厨房機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 7.20(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 306 億円・営業利益 5 億円
- 北米(高効率給湯器・業務用):数量 30.0(給湯器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 12(1台あたり売上(万円。名目・150円換算))→ 売上 359 億円・営業利益 11 億円
- 中国(給湯器・厨房):数量 64.0(給湯器・厨房機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 3.68(1台あたり売上(万円。名目・150円換算))→ 売上 236 億円・営業利益 4 億円
- 豪州・東南アジアほか海外:数量 33.0(給湯機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 8.36(1台あたり売上(万円。名目・150円換算))→ 売上 276 億円・営業利益 8 億円
倍率:資本コスト8.5%。事業の自己資本利益率2.9%は資本コスト以下で、PERの上限は1÷k=12.5倍。稼ぎがさらに薄く、構造の逆風も続くため、上限の約7割に置く。余った現金は75%の52.5億円を足す。 余った現金に持ち合い株の含み益(約100億円×0.5)を加え、120億円を足している。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 8.8 倍・時価総額 440 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:値上げが部材高の後追いにとどまり、ヒートポンプやアジアの安価な製品に押される展開は現実味がある。過去10年で利益率が1〜2%にとどまった年が多いので、2割台半ばを置いた。
悲観 12% ガス給湯器が細り、事業を縮める 利益 −40 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 810 円371 億円
構造的に負ける。ガスから電気への転換が想定を超えて早く進み、給湯器の国内の台数が4分の1減る。ヒートポンプでは主導権を取れず、リンナイと家電大手に挟まれる。
中国は価格競争に負けて、事業を半分ほどに縮める。北米と豪州の投資も実らず、減損と整理の費用が出る。営業利益は赤字になり、純利益は大きな赤字だ。
配当は大きく削られる。固定費を吸収できず、工場の整理と人員の削減で、純現金を取り崩して生き延びる。
事業の稼ぐ力はほぼ無くなり、価値は、残る現金と売れる資産の範囲に近づく。ブランドと販路は残るが、収益に結びつかない。
配当の削減で、還元の合計は純利益の合計を上回るが、足りない分は純現金で払う。
床の額は、取り崩し後の現金と持ち合い株の売却手取りで置いた。
- 国内の温水機器(給湯器・暖房・バス):数量 120(給湯器など出荷台数相当(万台。推定))× 価格 8.31(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 997 億円・営業利益 8 億円
- 国内の厨房機器ほか(ビルトインコンロなど):数量 35.0(厨房機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 6.65(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 233 億円・営業利益 0 億円
- 北米(高効率給湯器・業務用):数量 22.5(給湯器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 11(1台あたり売上(万円。名目・150円換算))→ 売上 248 億円・営業利益 0 億円
- 中国(給湯器・厨房):数量 40.0(給湯器・厨房機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 3.16(1台あたり売上(万円。名目・150円換算))→ 売上 126 億円・営業利益 −4 億円
- 豪州・東南アジアほか海外:数量 27.0(給湯機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 7.72(1台あたり売上(万円。名目・150円換算))→ 売上 208 億円・営業利益 2 億円
倍率:悲観の床は稼ぐ力でなく、売れる資産の税後(純現金・持ち合い株・土地の約370億円)を今の自己資本1,398億円に掛けた値。
確率:10年では、ガスから電気への転換が想定より早く進み、給湯器の台数と値段が同時に崩れる構造的な負けが起きうる。海外の投資も実らない筋書きに、1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内の温水機器(給湯器・暖房・バス)
ガス給湯器・ハイブリッド給湯機・温水暖房・バスを国内で売る主力。リンナイと並ぶ寡占の一角だが、利益率は低い。
| 数量給湯器など出荷台数相当(万台。推定) | 価格1台あたり売上(万円。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 160 | 6.81 | 1,090 | 17 |
| 10 年後 中立 | 152 | 9.13 | 1,388 | 46 |
取り方:国内売上1,367億円のうち、温水機器を約1,090億円と置いた(内訳は開示が粗いので推定)。国内ガス給湯器の市場を年450万台前後、ノーリツのシェアを36%として約160万台、1台あたり約6.8万円。国内の営業利益21億円のうち17億円を温水に置く(利益率1.6%、推定)。
国内の厨房機器ほか(ビルトインコンロなど)
ビルトインコンロ・レンジフード・食洗機など。高級品PROGREが好調で、非住宅向けにも広げている。
| 数量厨房機器の出荷台数相当(万台。推定) | 価格1台あたり売上(万円。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 50.0 | 5.54 | 277 | 4 |
| 10 年後 中立 | 46.0 | 7.42 | 341 | 9 |
取り方:国内売上の残り約277億円を厨房機器ほかとした(推定)。ビルトインコンロ・レンジフード・食洗機を合わせて約50万台、1台約5.5万円。営業利益は国内21億円の残り4億円(利益率1.4%、推定)。
北米(高効率給湯器・業務用)
米国・カナダで高効率の瞬間式給湯器と業務用機器を売る。直近は増収増益で黒字化した。
| 数量給湯器の出荷台数相当(万台。推定) | 価格1台あたり売上(万円。名目・150円換算) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 25.0 | 9.20 | 230 | 8 |
| 10 年後 中立 | 37.5 | 12 | 462 | 23 |
取り方:海外売上653億円のうち、北米を約230億円と置いた(開示は地域別に粗く推定)。業務用のラック納入と家庭用を合わせ約25万台、1台約9.2万円(600ドル強)。営業利益は海外21億円のうち8億円とした(利益率3.5%、推定)。ドル円は150円で動かない前提。 数量は実物(出荷台数)で、名目の市場の伸びではない。
中国(給湯器・厨房)
中国で給湯器とガスコンロ・レンジフードを売る。市況の低迷が続くが、上海の高級帯は堅い。
| 数量給湯器・厨房機器の出荷台数相当(万台。推定) | 価格1台あたり売上(万円。名目・150円換算) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 80.0 | 2.88 | 230 | 7 |
| 10 年後 中立 | 76.0 | 3.85 | 293 | 9 |
取り方:中国を約230億円と置いた(推定)。不動産不況で減収が続くが増益。約80万台、1台約2.9万円。営業利益は7億円(利益率3.0%、推定)。
豪州・東南アジアほか海外
豪州のヒートポンプ給湯機などが伸びる。タイのカンガルー社は持分法で、売上には入らない。
| 数量給湯機器の出荷台数相当(万台。推定) | 価格1台あたり売上(万円。名目・150円換算) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 30.0 | 6.43 | 193 | 6 |
| 10 年後 中立 | 39.0 | 8.62 | 336 | 17 |
取り方:海外売上の残り約193億円(推定)。豪州ではヒートポンプ給湯機が伸びている。約30万台、1台約6.4万円。営業利益は6億円(利益率3.1%、推定)。持分法のカンガルー社の利益は営業利益の外で、純利益に入る。
リスクと懸念
ガスから電気への転換
政府は脱炭素のため、ガス給湯器からヒートポンプ給湯機への切り替えを促している。ノーリツの国内売上の約8割は温水機器で、主力がガス機器に偏る。転換が想定より早いと、台数と価格の両方が崩れる。ヒートポンプでは家電大手も参入しており、寡占の利益を守りにくい。
利益率の低さが続く
営業利益率は過去10年、1〜4%台で、リンナイの13%に遠く及ばない。前の計画Vプラン23の営業利益80億円と、今のVプラン26の当初90億円は、どちらも届かなかった。値上げが部材高の後追いにとどまれば、売上が増えても利益は増えない。
足元の純利益の質
2026年12月期の純利益86億円には、持ち合い株の売却益44億円が入る。この益は一回きりで、本業の稼ぎは40億円前後だ。2027年12月期は35億円の見込みで、見かけの利益に引きずられて判断を誤るおそれがある。
中国の市況悪化
中国は不動産不況が続き、減収が続いている。上海の高級帯は堅いが、全体の数量は戻りにくい。中国向けは地場メーカーとの値下げ競争もあり、利益は薄いまま、減損の対象にもなりうる。海外を稼ぎ頭にする計画の足を引っ張る。
戦略投資の見返り
3年で325億円の戦略投資を、海外と工場の刷新に積む。ところが、これまでの投資は利益率の改善にほとんど結びつかなかった。新たな投資が資本コストの8%を超えて稼げなければ、純現金を使いつつ、価値は増えない。
部材と物流費の高騰
鋼材・銅・樹脂部品・物流費の上昇は、給湯器の原価に直結する。2026年8月からの5〜30%の値上げで転嫁するが、工事店との関係で、転嫁の遅れや競合に押される場面もありうる。転嫁が遅れた期は、利益率がすぐ下がる。
下請け取引の新しい法律
中小受託取引適正化法への対応で、部品の仕入れ先への支払い条件や価格交渉のルールが厳しくなる。値上げの理由の1つにもなっているが、取引先への支払いが増える分は、コストとして残る。
今後の分かれ目
- 給湯器の値上げが、部材高を上回って定着した場合
- 国内の温水機器の利益率が4%台に乗り、10年後の利益は強気の筋書きに近づく。会社全体の営業利益は今の2倍を超える。
- ヒートポンプ給湯機で、ノーリツが国内で一定のシェアを取れた場合
- ガス機器の縮小を新しい商品で埋め、国内の寡占的な地位を保てる。反対に出遅れれば、国内の本丸が細り、悲観の筋書きに近づく。
- 北米の業務用ヒートポンプが軌道に乗った場合
- 海外の利益率が7〜9%まで上がる余地が出る。北米の売上が今の2倍になれば、会社の利益構成が変わる。
- 持ち合い株の売却資金が、増配と自社株買いに回った場合
- 資本の使い方が改善し、自己資本利益率が上がる。ただし、本業の稼ぎが変わらなければ、価値の増加は限られる。
- 中国の事業が赤字に戻った場合
- 海外の利益が目減りし、減損の費用も出る。戦略投資の見直しを迫られ、純現金が減る。
- 同業・投資会社による買収の動きが出た場合
- 時価総額が小さく、純現金もあるので、買い手は付きやすい。ただ、利益率が低く、高い値段を付けるのは難しい。
見ておくもの
- 国内の温水機器の営業利益率(値上げが利益に残っているか)
- ヒートポンプ給湯機の販売台数と、ガス給湯器の出荷台数
- 北米・豪州の売上と営業利益の伸び
- 中国の売上の下げ止まりと、営業利益の黒字
- 持ち合い株の売却額と、その資金の使い道(配当・自社株買い)
- 次の中期経営計画の営業利益の目標と、原価低減の進み方
倍率と資本コストの決め方
今の株価や今のPERから逆算せず、セグメントごとに数量と価格、利益率を積んで利益を出し、その利益に式から決まる倍率を掛けた。自己資本利益率が資本コスト以下の筋書きは、PERの上限1÷kの約7〜8.5割に置いた。純現金166億円のうち70億円を余った現金として分け、戻り方は1.0で足した。やや悲観は上限の約7割と余った現金の75%、悲観は純現金と売れる資産の床で測った。リース会計は、店舗を借りる事業ではなく影響が小さい。10年の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 持ち合い株の含み益(推定100億円)は戻り方0.5で余った現金に足し、悲観の床は現金・持ち合い株・土地の手取り370億円で置いた。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。給湯器は取り替え需要が中心で景気にほぼ左右されず、循環は0。リンナイとの2強で値上げは通るが、利益率が低く値決め力は強くないので0。借金は無く0。ただ、ガスからヒートポンプへの転換で主力の給湯器が細る可能性があり、寿命は+0.5。合計+0.5%(k=8.5%)。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 8.50%。