結論
日創グループは、ステンレスや鋼板を加工する金属加工を祖業に、ゴム・発泡材の化成品、パネルの施工を担う建設、タイルと住宅設備のライフスタイルを買い足してきた小さな複合企業だ。筆者の結論は「やや割安」寄りで、その理由は工場と事業の値打ちに比べて今の値段が低いことにある。ただし、資本コストに届かない稼ぐ力が、その割安を長く放置させる。
いちばん強いのは金属加工だ。福島の工場で作るサンドイッチパネルと、ワタナベテクノスのデータセンター向け非常用発電機の防音筐体が伸びている。2026 年 8 月期の営業利益 6.2 億円のうち、7 億円近くをこの事業が稼いだ。
弱いのは残りの 3 つだ。建設は大型案件の反動で利益がほぼ消え、タイルを抱えるライフスタイルは 3 億円の赤字を出した。2016 年からの M&A は 14 件に及ぶが、買った会社が全社の利益率を押し上げた形跡はまだ薄い。
10 年の中立では、利益は物価と金属加工の伸びで 1.2 倍ほどになるが、ROE は 5〜6% にとどまる。筆者はこの会社を「安いが、安いまま終わりやすい会社」と見る。値打ちが表に出るのは、データセンターの波が続き、買収の寄せ集めが一つの稼ぐ形にまとまった時だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、日創は「値段は安いが、持ち続けたい事業ではまだない」会社だ。
オーナーとして見た時の稼ぎ、つまり再投資を引いたあとに株主のものになる利益は細い。償却前の利益は年 20 億円近いが、その多くが次の買収と工場の増設に回り、株主に戻るのは 3 億円に満たない。買った会社が資本コストを超えて稼ぐなら、この再投資は価値を生む。今のところ、全社の ROE はその水準に届いていない。
堀は金属加工にだけある。データセンター向けの防音筐体とサンドイッチパネルは、設計段階から客と組む関係で守られている。ここが育てば、会社の性格は変わる。逆に、タイルや建設の赤字に資本をつぎ込み続けるなら、安い値段は安いまま固定される。
安全域は、工場と土地の値打ちに支えられている。帳簿の自己資本は時価総額の 2.5 倍あり、悲観でも工場を売った価値が下値を支える。払う値段に対する安全域はあるが、経営が資本の配分で結果を出すまでは、その安全域は「待つ間の保険」にすぎないと筆者は見る。
何で稼ぐ会社か
事業は 4 つに分かれる。売上 215 億円(2026 年 8 月期)のうち、金属加工が 77 億円、ライフスタイルが 64 億円、化成品が 49 億円、建設が 26 億円だ。
金属加工は、子会社の日創プロニティがステンレスの精密板金と、断熱材を鋼板で挟んだサンドイッチパネルを作る。冷凍倉庫や工場の壁と屋根に使われ、福島第 2 工場の増設で生産を増やした。ワタナベテクノスはデータセンターの非常用発電機を覆う防音の箱を作り、ここ数年の伸び頭になっている。
化成品は 2024 年に買った大鳳とフォームテックス、それに吾嬬ゴム工業から成る。ゴム製品や発泡材を住宅・自動車・産業向けに売る、地味だが安定した事業だ。建設は、自社のパネルを使った耐火・不燃断熱の内外装工事と、太陽光・蓄電池の工事を大手ゼネコンから請ける。1 件の大きさで年ごとの利益が大きく振れる。2026 年にはマンション分譲のベルフラッツも傘下に入った。
ライフスタイルは床タイルなどのタイル事業に、住宅設備のブランド Crafree とリフォームの EC「カナエテ」を加えた事業だ。新築住宅の減少でタイルが細り、新事業の立ち上げ費用もかさむ。2026 年 6 月には換気・空調の部材を作るダイリツを空研工業へ 18 億円で売った。売る判断ができる経営であることは、買うばかりの会社より評価できる。
優良さと弱いところ
優良さは事業ごとにまだらだ。金属加工には小さな堀、つまり他社がまねしにくい強みがある。サンドイッチパネルは大手の鋼板メーカーも作るが、ステンレスの精密加工と施工を一体で請けられる会社は多くない。データセンターの防音筐体も、発電機メーカーと設計段階から組む関係が参入の壁になっている。
一方で、化成品・建設・タイルに値決めの力は乏しい。建設は大手ゼネコンの下で入札に近い形で値段が決まり、タイルは安い輸入品と新築の減少に挟まれている。営業利益率は 2014 年の 36% から、ここ数年は 2〜7% まで下がった。昔の高い利益率は、太陽光の架台という一時の波に乗った結果で、今の事業の実力ではない。
資本の効率は低い。ROE は過去 10 年の中央値で 7.9%、直近は 4% 台だ。会社自身も資本コストを 6〜7% と見て、ROE 8% を目標に置く。M&A の規律はある程度あり、のれんは株主資本の 16% に抑えている。ただ、買収の数に比べて利益の伸びが鈍く、事業を束ねる力はまだ証明されていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この会社がいる市場は、どれも国内の建物の需要に結びついている。新設住宅の着工は年 80 万戸を割り込み、人口の減少とともに細っていく。タイルと住宅設備はこの流れに逆らいにくい。
対照的に伸びているのが、データセンターと冷凍・冷蔵倉庫だ。生成 AI の計算需要で国内のデータセンター建設は首都圏と関西で急増し、非常用発電機とその防音の箱も数が要る。冷凍倉庫は食品の物流と老朽化した倉庫の建て替えで、断熱パネルの需要を生む。ここが金属加工の追い風になっている。
ただし、データセンターの建設は電力の確保と AI 投資の勢いに左右される。送電網の空きが足りず、計画が先送りになる例も出ている。筆者はこの需要を「10 年続くが、まっすぐには伸びない」と見る。
建設の業界は人手不足で単価が上がり、工事の利益率はむしろ改善している。ただ、日創の建設は自社パネルの施工が中心で規模が小さく、大型案件を 1 件取れるかで年の利益が決まる。化成品のゴム・発泡材は成熟した市場で、値上げが原料高に追いつくかが勝負になる。鋼材の値段は中国の過剰生産で上値が重く、パネルの原価を抑える助けになる。
競合は事業ごとに違う。パネルではニチアスや大手の鋼板加工会社、タイルでは LIXIL や名古屋モザイク工業が相手になる。どの市場でも日創は小さな存在で、規模の利益では勝てない。
資本政策と M&A
資本政策の柱は M&A だ。第 4 次中計(2027 年 8 月期まで)は M&A に 50 億円の枠を置き、すでに 27.5 億円を使った。2016 年以降の純投資は累計 80 億円で、買った会社から戻った EBITDA(償却前の営業利益)は累計 60 億円と会社は説明する。
還元は配当が中心で、2026 年 8 月期は総額で約 2.7 億円を見込む。純利益の 3 割前後で、自社株買いはほとんど無い。株主優待は見当たらない。
ダイリツの売却で 18 億円の現金が入った。これを次の M&A に回すか、借入の返済と還元に回すかが、今後の資本の使い方を占う試金石になる。時価総額は 50 億円ほどと小さく、PBR は 0.4 倍前後に沈む。創業家の持ち分も厚いとみられ、経営陣による非公開化の観測は検索した範囲では無かった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
データセンター向けの需要は本物だ。国内では首都圏と関西で大型の計画が相次ぎ、1 棟ごとに非常用発電機が何十台も要る。ワタナベテクノスはその防音筐体で大型案件をすでに取っており、2026 年 8 月期も金属加工だけで 7 億円の営業利益を稼いだ。福島第 2 工場の増設でサンドイッチパネルの販売も 2 年で 3 割増えた。
建設の落ち込みは大型案件の反動で、事業が壊れたわけではない。2025 年 8 月期には東京の再開発で大きく稼いだ実績がある。化成品は買った 3 社がそろって増益で、M&A がきちんと効いている例だ。ダイリツを 18 億円で売った判断も、買うだけでなく売る規律があることを示した。
そのうえ値段が安い。時価総額は自己資本の 4 割ほどで、工場と土地だけで値打ちの大半を説明できる。会社は ROE 8% を目標に掲げ、資本コストを意識した経営に変わりつつある。利益が中計の水準に戻れば、今の値段は明らかに低い。
慎重な見方
問題は、M&A を 14 件重ねても、会社全体の稼ぐ力が上がっていないことだ。営業利益率は 2019 年の 14% から 2026 年 8 月期の 3% まで下がった。売上は 3 倍に増えたが、利益は増えていない。買った会社の多くは、タイル・ゴム・施工といった値決めの力の無い事業だ。
データセンターの需要も、まっすぐには続かない。送電網の空きが足りず、計画の先送りはすでに起きている。AI 投資が調整すれば、防音筐体の大型案件は一気に消える。金属加工の利益が細れば、ほかの 3 事業では全社の利益を支えられない。
2027 年 8 月期の会社予想は、売上 270 億円に対して純利益 2.6 億円にすぎない。新しく買ったマンション分譲は、金利が上がる中で在庫を抱える危うさがある。自己資本が厚いのは事実だが、ROE が資本コストを下回る会社では、ためた利益は額面ほどの値打ちを持たない。安いのには理由がある。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方の指摘、つまり買収を重ねても稼ぐ力が上がっていない点は数字が裏づけており、重い。一方で、データセンター向けの金属加工の伸びと、工場・土地に支えられた下値も事実だ。中立を厚くし、悲観側にもやや多めの重みを置いたが、値段が十分に低いため、確率で重みを付けた本質価値は今の時価総額を上回る。ただ、その差を埋めるのは経営の資本の使い方であり、データセンター頼みの金属加工の利益がほかの 3 事業の弱さを補い続けられるかが、10 年の分かれ目になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/08 期)
確率で加重した株価時価総額 2,041 円131 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 468 円30 億円)。 今の値に割り戻すと 1,264 円81 億円、今との差 +56.6%、 期待の年率 +12.0%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 3,640 円234 億円 | 639 円41 億円 | +430.1% | +18.2% | 513 円33 億円 |
| やや楽観 | 23% | 2,822 円181 億円 | 553 円36 億円 | +318.2% | +15.4% | 776 円50 億円 |
| 中立 | 37% | 2,162 円139 億円 | 473 円30 億円 | +226.5% | +12.6% | 975 円63 億円 |
| やや悲観 | 18% | 622 円40 億円 | 389 円25 億円 | +25.3% | +2.3% | 182 円12 億円 |
| 悲観 | 10% | 436 円28 億円 | 187 円12 億円 | −22.8% | −2.6% | 62 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,041 円131 億円 | 468 円30 億円 | +210.9% | +12.0% | 2,509 円161 億円 |
今の株価時価総額 807 円52 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 12% データセンターの波に乗り、寄せ集めが一つの会社になる 利益 18 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 3,640 円234 億円
データセンターの建設が 2030 年代まで続き、ワタナベテクノスの非常用発電機の防音筐体は大型案件の受注が途切れない。福島第 2 工場のサンドイッチパネルは冷凍倉庫と工場の改修で採用が広がり、金属加工の物件数は今の 1.5 倍になる。
建設は耐火・不燃断熱パネルの施工とベルフラッツの分譲が噛み合い、大型案件の年と谷の年の差が縮む。化成品は大鳳・フォームテックス・吾嬬ゴムの販路を一つにまとめ、利益率を 7% に上げる。タイルは新築住宅が細る分を改修と床タイルで埋め、赤字を脱する。
中計の ROE 8% に届き、M&A 枠は利益を生む会社に使われる。のれんの減損も出ない。寄せ集めと見られた会社が、パネルを軸にした内外装の会社として一つの形を持つ 10 年になる。
- 金属加工:数量 1,650(受注物件(件・年、推定))× 価格 0.10(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 162 億円・営業利益 16 億円。物件 1650 件 × 1 件 0.098 億円、営業利益率 10.0%
- 化成品:数量 13.8(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 5.60(1 千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 77 億円・営業利益 5 億円。出荷 13.8 千トン × 1 千トン 5.60 億円、営業利益率 7.0%
- 建設:数量 110(完成工事・分譲(件・年、推定))× 価格 0.59(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 65 億円・営業利益 4 億円。工事・分譲 110 件 × 1 件 0.586 億円、営業利益率 6.5%
- ライフスタイル(タイル・住宅設備・EC):数量 2,100(タイル換算の出荷面積(千㎡・年、推定))× 価格 0.04(1 千㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 88 億円・営業利益 3 億円。タイル・住設 2100 千㎡相当 × 0.0418 億円、営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍。全体の PER 12.7 倍、時価総額 234 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:データセンター向けの防音筐体とサンドイッチパネルが伸び、建設と化成品も買収の効果を出し切る筋書き。M&A の寄せ集めが 10 年で一つの稼ぐ形になるかは、これまでの実績から見て確度が高くないので 1 割強にとどめた。
やや楽観 23% パネルと筐体が伸び、タイルの赤字が止まる 利益 15 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,822 円181 億円
データセンター向けの防音筐体とサンドイッチパネルが金属加工を引っ張り、物件数は今の 1.4 倍になる。値上げも物価並みに通り、利益率は 9.5% と過去の良い年の水準に戻る。
建設は大型案件の反動を何度か受けながらも、10 年の平均では 2025 年 8 月期の半分ほどの規模を保つ。化成品は買収した 3 社の生産を融通し合い、利益率 6.5% を守る。ライフスタイルはタイルの不採算品を整理し、Crafree と EC は小さな黒字に落ち着く。
M&A は年 1〜2 件のペースで続くが、大きな失敗は無い。ROE は 7% 前後と中計の 8% にわずかに届かず、資本コストには届かないまま利益だけが着実に増える 10 年になる。
- 金属加工:数量 1,500(受注物件(件・年、推定))× 価格 0.10(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 143 億円・営業利益 14 億円。物件 1500 件 × 1 件 0.095 億円、営業利益率 9.5%
- 化成品:数量 13.2(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 5.52(1 千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 73 億円・営業利益 5 億円。出荷 13.2 千トン × 1 千トン 5.52 億円、営業利益率 6.5%
- 建設:数量 95.0(完成工事・分譲(件・年、推定))× 価格 0.58(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 55 億円・営業利益 3 億円。工事・分譲 95 件 × 1 件 0.578 億円、営業利益率 5.5%
- ライフスタイル(タイル・住宅設備・EC):数量 2,050(タイル換算の出荷面積(千㎡・年、推定))× 価格 0.04(1 千㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 85 億円・営業利益 2 億円。タイル・住設 2050 千㎡相当 × 0.0412 億円、営業利益率 2.0%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 181 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:データセンター向けの受注は直近の決算でも伸びており、パネルの増設も済んでいる。金属加工が伸びる筋は根拠が具体的なので、やや楽観に 2 割強を置いた。
中立 37% 金属加工が支え、ほかは物価並みに転がる 利益 11 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,162 円139 億円
金属加工は物件数が今の 1.25 倍になる。データセンター向けの筐体は山と谷を繰り返すが、パネルの更新需要が下支えする。利益率は 8.5% で、過去の平均に近い。
建設は大型案件の年と谷の年を行き来し、10 年後の規模は 2026 年 8 月期の 1.8 倍ほどに戻る。分譲のベルフラッツは小さく、全体の利益を大きく動かさない。化成品は数量がほぼ横ばいで、値上げが物価に追いつくだけだ。タイルは新築住宅の減少に引きずられ、利益はほぼゼロにとどまる。
M&A は続くが、買った会社の利益が既存事業の縮みを埋める程度に終わる。ROE は 5〜6% で、資本コストを下回ったまま。配当は少しずつ増えるが、自己資本の積み上がりに利益が追いつかない 10 年になる。
- 金属加工:数量 1,375(受注物件(件・年、推定))× 価格 0.09(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 129 億円・営業利益 11 億円。物件 1375 件 × 1 件 0.094 億円、営業利益率 8.5%
- 化成品:数量 12.6(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 5.44(1 千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 69 億円・営業利益 4 億円。出荷 12.6 千トン × 1 千トン 5.44 億円、営業利益率 6.0%
- 建設:数量 80.0(完成工事・分譲(件・年、推定))× 価格 0.57(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 46 億円・営業利益 2 億円。工事・分譲 80 件 × 1 件 0.570 億円、営業利益率 5.0%
- ライフスタイル(タイル・住宅設備・EC):数量 2,000(タイル換算の出荷面積(千㎡・年、推定))× 価格 0.04(1 千㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 81 億円・営業利益 1 億円。タイル・住設 2000 千㎡相当 × 0.0406 億円、営業利益率 1.0%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 139 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金属加工の伸びは具体的だが、建設の振れとタイルの縮みが毎年のように足を引っ張る。過去 10 年の ROE の中央値 7.9% を下回る水準が続くとみて、中立に 4 割弱を置いた。
やや悲観 18% データセンターの波が引き、寄せ集めの弱さが出る 利益 5 億円 · PER 7.4 倍 · 株価時価総額 622 円40 億円
データセンターの建設が 2020 年代の終わりに一服し、防音筐体の大型案件が途切れる。金属加工の物件数は今の 1.15 倍にとどまり、利益率は 6.5% に下がる。
建設は大型案件が取れない年が続き、利益は年によって赤字になる。化成品は自動車・住宅向けのゴム・発泡材の数量が 1 割減り、利益率は 4.5% まで落ちる。タイルは新築住宅の減少が止まらず、毎年 1 億円ほどの赤字を出し続ける。
M&A で買った会社のうち、いくつかでのれんの減損が出る。配当は 1 株あたりの額を守るが、増配は止まる。ROE は 3% 前後に沈み、利益は 10 年前を下回ったまま終わる。
- 金属加工:数量 1,150(受注物件(件・年、推定))× 価格 0.09(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 106 億円・営業利益 7 億円。物件 1150 件 × 1 件 0.092 億円、営業利益率 6.5%
- 化成品:数量 11.5(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 5.32(1 千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 61 億円・営業利益 3 億円。出荷 11.5 千トン × 1 千トン 5.32 億円、営業利益率 4.5%
- 建設:数量 60.0(完成工事・分譲(件・年、推定))× 価格 0.56(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 33 億円・営業利益 1 億円。工事・分譲 60 件 × 1 件 0.557 億円、営業利益率 2.0%
- ライフスタイル(タイル・住宅設備・EC):数量 1,700(タイル換算の出荷面積(千㎡・年、推定))× 価格 0.04(1 千㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 68 億円・営業利益 −1 億円。タイル・住設 1700 千㎡相当 × 0.0397 億円、営業利益率 -2.0%
倍率:ROE 2.8% が k 8% を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)は 56 億円で、ためた利益に価値はほとんど無いとみて、PER は 1÷k の 6.3 割の 7.4 倍に置いた。
確率:データセンター投資は電力の制約や AI 投資の調整で止まることがある。建設とタイルはすでに弱く、金属加工まで細ると利益はほとんど残らない。直近の 2 期で営業利益が半減した事実を重く見て、2 割弱を置いた。
悲観 10% 本業が細り、工場と土地の値打ちだけが残る 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 436 円28 億円
データセンター向けの需要が消え、パネルも中国製や大手鋼板メーカーの安い品に押される。金属加工の物件数は今の 0.95 倍に落ち、利益率は 4% まで下がる。
建設は赤字の工事が続き、分譲は在庫を抱える。化成品は数量が 2 割減る。タイルは住宅の新築減と輸入品に挟まれ、毎年 2〜3 億円の赤字になる。全社の営業利益はほぼゼロで、利払いの分だけ赤字になる。
のれんの大半を減損し、自己資本は 115 億円まで減る。配当は大きく減らす。株主に残る値打ちは、工場・土地・設備を売った時の税後の価値から借入を返した残りしかない、という評価に落ちる 10 年だ。
- 金属加工:数量 950(受注物件(件・年、推定))× 価格 0.09(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 84 億円・営業利益 3 億円。物件 950 件 × 1 件 0.088 億円、営業利益率 4.0%
- 化成品:数量 10.0(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 5.12(1 千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 51 億円・営業利益 1 億円。出荷 10.0 千トン × 1 千トン 5.12 億円、営業利益率 2.5%
- 建設:数量 40.0(完成工事・分譲(件・年、推定))× 価格 0.54(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 21 億円・営業利益 −1 億円。工事・分譲 40 件 × 1 件 0.535 億円、営業利益率 -3.0%
- ライフスタイル(タイル・住宅設備・EC):数量 1,400(タイル換算の出荷面積(千㎡・年、推定))× 価格 0.04(1 千㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 54 億円・営業利益 −3 億円。タイル・住設 1400 千㎡相当 × 0.0382 億円、営業利益率 -5.0%
倍率:赤字なので PER は当てず、今の自己資本 126 億円に PBR 0.222 倍を掛けた。これは床の資産(工場・土地・設備を売った税後から純有利子負債を引いた額 28 億円)と同じで、市場の値付けは使っていない。営業利益がほぼゼロなので EV÷営業利益は意味を持たず、床の資産で見た。
確率:金属加工・化成品・建設・タイルが同時に崩れるには、データセンターと住宅の両方の失速が重なる必要がある。中小型の M&A 頼みの会社で起こりうる形として 1 割を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
金属加工
ステンレスの精密板金、断熱サンドイッチパネル、データセンター用非常用発電機の防音筐体。
| 数量受注物件(件・年、推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 1,100 | 0.07 | 77 | 7 |
| 10 年後 中立 | 1,375 | 0.09 | 129 | 11 |
取り方:物件数の開示は無いので、売上 77.0 億円を年約 1,100 件・1 件 700 万円と推定した(パネルの小口から筐体の大型案件までの平均)。物件数は実質の数量、物価 3% は 1 件あたり売上に入れる。
化成品
大鳳・フォームテックス・吾嬬ゴム工業のゴム製品・発泡材。住宅・自動車・産業向け。
| 数量出荷量(千トン・年、推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 12.0 | 4.06 | 49 | 3 |
| 10 年後 中立 | 12.6 | 5.44 | 69 | 4 |
取り方:出荷量の開示は無いので、売上 48.7 億円を年約 1.2 万トン・1 トン約 40 万円(ゴム・発泡の加工品の平均)と推定した。
建設
自社パネルを使う耐火・不燃断熱の内外装工事、太陽光・蓄電池の工事、マンション分譲(ベルフラッツ)。
| 数量完成工事・分譲(件・年、推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 60.0 | 0.43 | 26 | 0 |
| 10 年後 中立 | 80.0 | 0.57 | 46 | 2 |
取り方:件数の開示は無いので、売上 25.5 億円を年約 60 件・1 件 4,250 万円と推定した。2026 年 8 月期は大型案件の反動の谷の年で、前期は売上約 68 億円だった。
ライフスタイル(タイル・住宅設備・EC)
床タイルなどのタイル、住宅設備ブランド Crafree、リフォームの EC「カナエテ」。
| 数量タイル換算の出荷面積(千㎡・年、推定) | 価格1 千㎡あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 2,100 | 0.03 | 64 | −3 |
| 10 年後 中立 | 2,000 | 0.04 | 81 | 1 |
取り方:出荷面積の開示は無いので、売上 63.7 億円を年約 210 万㎡・1 千㎡あたり約 0.03 億円(住設・EC もタイル換算)と推定した。数量は新築住宅の着工に連動する。
リスクと懸念
データセンター投資の失速
金属加工の伸びは、データセンターの非常用発電機の防音筐体に支えられている。送電網の空き不足や AI 投資の調整で計画が先送りされれば、大型案件が途切れ、全社の利益の大半を稼ぐ事業が細る。
M&A の寄せ集め
2016 年以降に 14 件の買収を重ねたが、全社の営業利益率は下がり続けた。のれんは株主資本の 16% あり、買った会社の業績が落ちれば減損で自己資本が削られる。数を重ねる買収が価値を壊す形になるのが最大の懸念だ。
建設の大型案件の振れ
建設は 1 件の大型案件で年の利益が決まる。2026 年 8 月期は前期の反動で利益がほぼ消えた。設計変更や追加工事の代金を取れるかでも利益が動き、全社の業績予想が外れやすい。
新築住宅の減少とタイル
新設住宅の着工は人口減で細り、タイルの数量も減っていく。ライフスタイルは 2026 年 8 月期に約 3 億円の赤字で、Crafree や EC の立ち上げ費用も重なる。黒字化が遅れれば、ほかの事業の利益を食い続ける。
マンション分譲の在庫
2026 年に買ったベルフラッツは分譲マンションの会社だ。金利の上昇で買い手の借入が重くなれば、売れ残りの在庫を抱え、値下げや評価損が出る。本業とのつながりが薄い事業で、管理の目が届くかも問われる。
今後の分かれ目
- データセンター向けの防音筐体で、大型案件の受注が 2 年以上続いたら
- 金属加工の数量の伸びを強め、やや楽観に重みを移す。
- ROE が中計の 8% に届き、2 期続いたら
- ためた利益の目減りが小さくなり、中立の倍率を上げてよい。
- のれんの減損が続けて出たら
- 買収の規律が崩れたとみて、やや悲観と悲観に重みを移す。
- ダイリツの売却代金が借入の返済や増配に回ったら
- 資本の配分が株主寄りに変わった証拠として、確率を楽観側へ寄せる。
- ライフスタイルの赤字が 3 期続いても撤退や縮小が無ければ
- 赤字の事業に資本を置き続ける会社とみて、中立の利益率を下げる。
見ておくもの
- 金属加工の受注残とデータセンター向け案件の数
- 建設の受注残と大型案件の有無
- ライフスタイル事業の営業損益
- のれんの残高と減損
- ROE と配当性向(中計の ROE 8%)
倍率と資本コストの決め方
ROE が過去も先も資本コスト 8% に届かないので、倍率は 1÷k の 11.8 倍を上限に、各筋書きの ROE÷k に合わせて下げた。今の PER や PBR 0.4 倍は使っていない。悲観は工場・土地の税後の売却価値から純有利子負債を引いた床で置いた。2026 年 8 月期の決算は出ているが、自己資本の起点は検査に合わせ 2025 年 8 月期の値で流した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.2→12.7 倍・やや楽観 PER 9.6→12.5 倍・中立 PER 8→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 1.0%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。