結論
カネソウは、道路の側溝にかぶせる溝ぶたやマンホールのふた、ビルの屋上の排水口、建物のすき間を覆う金物を作る三重県の会社だ。筆者の結論は「やや割高」だ。本業は地味だが近年は稼ぐ力が上がり、借金は無く、預金は時価総額を超える。ただ、その預金は創業家の下で長く眠り、少数株主に戻る見込みは薄い。株価は今年ほぼ倍になり、利益率の山と預金の額面をすでに映している。
売上は84億円、営業利益は9億円だ。2022年3月期まで営業利益率は数%にとどまったが、資材高を値上げで取り返し、ここ4年は11〜15%に上がった。ビルの再開発、物流倉庫、データセンターの建設が続き、建物の継ぎ目を覆う金物の需要が強い。
長い目で見ると、国内の建設の量は人口とともに細る。公共工事の側溝も新設より補修が中心になる。筆者は、利益率が近年の山から少し下がり、量は横ばいから微減と見る。
株主の構成は大きな論点だ。創業家の資産管理会社と見られる小林鋳造と、個人の大株主で約4分の3を握る。現金と定期預金は94億円あるが、自社株買いの実績は無い。この会社の値打ちは、本業の稼ぐ力に、眠った預金の半分ほどを足した額だと筆者は考える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、カネソウは「堅い小さな事業と、使われない大きな預金を持つ会社」だ。
本業には小さな堀がある。図面に品番が載れば替えにくく、金物の値段は建物全体から見れば小さいので値上げが通る。設備は鋳物の工場1か所で、利益の多くが現金で残る。本業に使う資本だけで見れば、稼ぎは資本コスト並みだ。
問題は預金だ。94億円の現金と預金は、定期預金の金利でしか回らない。株主に戻せば、株主自身がもっと良い使い道を選べる。だが、創業家が約4分の3を握るこの会社では、戻る時期も額も読めない。オーナーとして持つなら、この預金は半分ほどの値打ちと見るのが筆者の考えだ。
安全域はあるように見える。今の時価総額は預金と有価証券の合計より小さい。だが、その安全域は少数株主の手の届かない所にあり、株価が今年ほぼ倍になった今、本業の山の利益まで織り込んだ値段になっている。本業の利益率が近年の山から下がれば、時間は味方にならない。
何で稼ぐ会社か
事業は建築・土木の金物の製造販売の1本だ。2026年3月期の売上は、鋳鉄器材が23億円、スチール機材が12億円、製作金物が43億円、その他が6億円だった。
鋳鉄器材は、鉄を溶かして型に流して作るマンホールのふた、溝ぶた、屋上の排水口(ルーフドレン)だ。スチール機材は、鋼板を格子に組んだグレーチングと呼ぶ溝ぶたが中心になる。どちらも道路、駐車場、工場、学校などで使われ、品番と寸法の種類の多さが強みだ。
製作金物は、建物ごとに設計して作る金物で、売上の半分を占める。代表は、建物と建物のすき間や、地震の揺れを逃がす免震の建物の継ぎ目を覆うエキスパンションジョイントだ。免震の建物は地震の時に水平に大きく動くので、継ぎ目の金物にも大きな動きが求められる。設計事務所の図面に品番が載る段階から営業する。
販売は代理店と販売店を通す。最大の販売先はヒルカワ金属で、売上の17%を占める。上位20社で販売額の7割を超える。工場は三重県朝日町にあり、従業員は246名だ。
受注は建設の工程に沿って入り、建物が完成する前の内装の時期に納める。大型の再開発やデータセンターの工事が増えると、製作金物の受注が厚くなる。
優良さと弱いところ
強みは、品番の多さと、設計の段階から図面に載る営業の仕組みにある。溝ぶたもエキスパンションジョイントも、一度図面に品番が書かれれば、工事の現場で他社に替えるのは手間がかかる。建物の総工費に比べて金物の値段は小さく、値上げが通りやすい。
実際、資材の高騰が続いた2023年3月期以降、値上げが浸透して営業利益率は11〜15%に上がった。2015〜2022年の平均の5%前後から大きく改善した。会社は売上高経常利益率12%以上を目標に掲げる。
弱みは、量が国内の建設に縛られることだ。人口が減り、新築の着工は細る。公共工事の側溝やマンホールは、新設より補修と更新が中心になる。競合には中部コーポレーションなど同じ品目をそろえるメーカーがあり、汎用のグレーチングでは価格の勝負になる。
資本の使い方にも課題がある。自己資本156億円のうち約6割が預金で、ROEは過去10年の中央値で2%にすぎない。本業は資本コストに近い稼ぎを上げるのに、眠った預金が全体の効率を下げている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
建築金物の需要は、国内の建設投資で決まる。住宅の着工は人口減で年々細るが、非住宅、つまり物流倉庫、工場、データセンター、都市の再開発は底堅い。とくに半導体の工場とデータセンターの建設は、ここ数年の大きな追い風だ。
免震の建物も増えている。病院、庁舎、データセンターなど、地震の後も止められない建物で免震の採用が広がる。免震の継ぎ目の金物は、通常の建物より大きく動く必要があり、単価が高い。筆者は、この分野は10年で量が少し増えると見る。
一方、土木の溝ぶたとマンホールのふたは、新しい道路や下水道の延長が止まり、交換の需要が中心になる。マンホールのふたの耐用年数は車道で15年ほどとされ、古いふたの交換は続くが、自治体の予算で速さが決まる。
建設業界の人手不足も効く。工事の担い手が減れば、着工が遅れ、金物の納期も後ろにずれる。一方で、現場で手間のかからない製品は選ばれやすくなる。
競合は中部コーポレーション、ダイクレなどの建材メーカーと、各地の鋳物メーカーだ。市場は細かく分かれ、品目ごとに数社が競う。大手の再編は起きにくく、地域と品番の積み重ねで地位が決まる業界だ。筆者は、市場全体の量は10年で横ばいから1割減と見る。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。年2回の安定配当で、2026年3月期は中間と期末を合わせて約2.9億円を払った。純利益の45%にあたる。自社株買いの実績は無く、借入金も無い。
その結果、現金と預金は94億円に積み上がった。うち80億円ほどは3か月を超える定期預金だ。投資有価証券も8億円ある。合わせると時価総額を超える。
株主は、創業家の資産管理会社と見られる小林鋳造が26%、個人の大株主が合わせて約5割を持つ。経営の判断は創業家の意向で決まり、少数株主が預金の使い道を決める力は無い。
2026年9月には1株を2株に分割し、株を買いやすくした。株主の裾野を広げる動きではあるが、預金を株主に戻す方針は示していない。買収の歴史も無い。創業家の世代交代や東証の要請で、還元を厚くするかMBOに動く可能性は残るが、筆者は価値の計算に入れない。株主優待は無い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額73億円に対し、現金と預金は94億円、有価証券を合わせると100億円を超える。借金は無い。本業の営業利益9億円をただでもらえる勘定だ。
本業も強くなった。値上げが浸透し、営業利益率は4年続けて11%を超えた。会社は経常利益率12%以上を掲げる。データセンター、半導体の工場、都市の再開発は今後も続き、免震の建物も増える。単価の高いエキスパンションジョイントの需要は、10年で量が増えておかしくない。
図面に品番が載る営業は、一度根づけば長く効く。溝ぶたやマンホールのふたも、古いものの交換は止まらない。
そして、この預金の厚さは、非公開化や還元の強化を呼び込む。株式分割で株主を広げたのは、市場の目を意識し始めた証拠だ。世代交代のどこかで、預金が株主に戻る局面が来る。
待つ間も本業は毎年数億円の現金を生み、配当性向45%で株主にも渡している。下値の支えがこれほど厚い会社は珍しい。預金の一部が戻るだけでも、今の値段は報われる。
慎重な見方
預金が厚いのは事実だが、何十年もそのままだ。自社株買いは無く、創業家が約4分の3を握る。株式分割は株主に現金を渡すことではない。この先10年も預金は眠り続けると見るのが自然だ。
本業の利益率も山にある。2022年3月期までは営業利益率が1〜7%だった。今の11%は資材高の値上げが一巡した結果で、建設の波が引けば元に戻る。国内の新築は人口とともに細り、公共工事も補修が中心だ。データセンターの建設ブームも、いずれは落ち着く。
汎用のグレーチングやマンホールのふたは、価格の勝負になりやすい。鋳物の工場は人手と電気を多く使い、人件費とエネルギーの上昇が利益を削る。
帳簿の上で安い会社が、安いまま何十年も過ごすことはよくある。少数株主には、預金を引き出す手段が無い。
名証にしか上場しておらず、売買も細い。市場の目が届きにくい会社では、経営に還元を迫る声も起きにくい。本業の利益が過去の平均に戻り、預金も戻らないなら、時間は少数株主の敵になる。
どちらに重みを置いたか
どちらも事実に基づく。決め手は、預金が株主に戻るかどうかと、利益率が近年の山を保てるかだ。預金は過去の実績から半分の値打ちで数え、利益率は山より少し低い所を中立にした。建設の波で利益率が元に戻る筋書きは十分ありうるので、やや悲観を中立に次ぐ重さにし、楽観は低めにした。MBOや買収の可能性は、値段が読めないので確率の寄せ方には使わなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,615 円131 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 948 円27 億円)。 今の値に割り戻すと 2,899 円83 億円、今との差 +12.6%、 期待の年率 +8.0%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 7,372 円210 億円 | 1,405 円40 億円 | +240.7% | +13.0% | 614 円17 億円 |
| やや楽観 | 20% | 6,159 円175 億円 | 1,194 円34 億円 | +185.4% | +11.1% | 1,471 円42 億円 |
| 中立 | 40% | 5,189 円148 億円 | 1,019 円29 億円 | +141.0% | +9.2% | 2,483 円71 億円 |
| やや悲観 | 23% | 2,903 円83 億円 | 702 円20 億円 | +40.0% | +3.4% | 829 円24 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,233 円35 億円 | 421 円12 億円 | −35.8% | −4.3% | 165 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,615 円131 億円 | 948 円27 億円 | +115.9% | +8.0% | 5,563 円158 億円 |
今の株価時価総額 2,576 円73 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:免震とデータセンターで製作金物が伸び、利益率12%台 利益 11 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 7,372 円210 億円
データセンター、半導体の工場、都市の再開発が10年続き、免震の建物も病院や庁舎で広がる。単価の高いエキスパンションジョイントの案件は10年で2割増える。規格品の器材は、古いふたの交換で量がほぼ保たれる。
値上げは物価を少し上回って通り、営業利益率は12.5%と、近年の山に近い所を保つ。人件費の上昇も製品の値段に移せる。
配当は利益とともに増え、配当性向は4割台を保つ。ただ、預金は積み上がったままで、少数株主に戻るのは配当だけだ。本業の稼ぐ力は資本コストを上回り、会社は建設の追い風を素直に利益に変える。
- 器材(鋳鉄器材・スチール機材):数量 7.2(出荷量(千トン。推定))× 価格 6.16(千トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 45 億円・営業利益 6 億円。7.22 千トン × 6.16 億(物価 1.34 倍)、利益率 12.5%
- 製作金物・その他(エキスパンションジョイントほか):数量 1,440(案件数(件。推定))× 価格 0.06(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 82 億円・営業利益 10 億円。1,440 件 × 0.057 億(物価をやや上回る 1.40 倍)、利益率 12.5%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)66 億円。全体の PER 14.48 倍、時価総額 204 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:非住宅の建設と免震の採用が 10 年続き、利益率も山に近い所を保つ筋書き。建設の波が 10 年続く例は少ないので 1 割未満。
やや楽観 20% やや楽観:値上げが定着し、利益率11%を保つ 利益 9 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 6,159 円175 億円
非住宅の建設は底堅く、製作金物の案件は10年で1割増える。規格品の器材は1割減るが、値段は物価並みに上がる。
営業利益率は11%を保つ。値上げは定着し、図面に品番が載る営業の強みが効き続ける。鋳物の工場の人件費とエネルギーの上昇も、値段に移せる。
配当は増えるが、配当性向は4割前後のままだ。預金はさらに積み上がり、少数株主の取り分は預金の半分ほどの値打ちにとどまる。本業は地味ながら、資本コスト並みの稼ぎを10年続ける。図面に載る品番の積み重ねが、ゆっくりと地位を固める。古いマンホールのふたの交換も、自治体の予算の範囲で着実に続く。
- 器材(鋳鉄器材・スチール機材):数量 6.8(出荷量(千トン。推定))× 価格 6.16(千トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 42 億円・営業利益 5 億円。6.84 千トン × 6.16 億(物価 1.34 倍)、利益率 11%
- 製作金物・その他(エキスパンションジョイントほか):数量 1,320(案件数(件。推定))× 価格 0.05(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 72 億円・営業利益 8 億円。1,320 件 × 0.0545 億(物価 1.34 倍)、利益率 11%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)66 億円。全体の PER 13.55 倍、時価総額 166 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:近年の値上げの成果が定着し、非住宅の建設も底堅い筋書き。会社も利益率の目標を掲げるので中立に次ぐ重さ。
中立 40% 中立:量は横ばいから微減、利益率は9%に落ち着く 利益 7 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 5,189 円148 億円
国内の建設は、新築が人口とともに細り、非住宅と補修がそれを支える。規格品の器材は10年で1割5分減り、製作金物の案件はほぼ横ばいだ。値段は物価並みに上がり、売上は137億円を少し超える。
営業利益率は9%に落ち着く。値上げの力は残るが、建設の波が引く年には価格の競争が戻る。近年の11〜15%は資材高の転嫁が重なった山で、2015〜2022年の5%前後には戻らないが、山も保てない。
配当性向は4割台で、残りは預金に積み上がる。自己資本は190億円を超え、全体のROEは3%台にとどまる。少数株主に戻るのは配当だけで、預金は眠ったままだ。
- 器材(鋳鉄器材・スチール機材):数量 6.5(出荷量(千トン。推定))× 価格 5.98(千トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 39 億円・営業利益 3 億円。6.46 千トン × 5.98 億(資材の値下がりで 1.30 倍)、利益率 9%
- 製作金物・その他(エキスパンションジョイントほか):数量 1,200(案件数(件。推定))× 価格 0.05(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 65 億円・営業利益 6 億円。1,200 件 × 0.0545 億(物価 1.34 倍)、利益率 9%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)66 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 137 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:建設の量が細り、利益率が近年の山と過去の平均の間に落ち着く、もっとも起こりやすい形。
やや悲観 23% やや悲観:建設の波が引き、利益率は5%に戻る 利益 3 億円 · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 2,903 円83 億円
データセンターと再開発の建設が一巡し、非住宅の着工も細る。製作金物の案件は10年で1割5分減り、規格品の器材は4分の1減る。
価格の競争が戻り、値段は物価に届かず10年で1.2倍にとどまる。営業利益率は2015〜2022年の平均に近い5%に戻る。鋳物の工場の人件費とエネルギーの上昇が利益を削る。
配当は細り、預金の一部は工場の更新と設備に使われる。本業は資本コストを下回る稼ぎに沈み、少数株主にとって預金の値打ちはさらに遠のく。
免震の金物のような単価の高い品も、競合との入札で値段が下がる。会社は縮む本業を預金で耐える形になり、資本の効率はさらに下がる。
- 器材(鋳鉄器材・スチール機材):数量 5.7(出荷量(千トン。推定))× 価格 5.52(千トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 32 億円・営業利益 2 億円。5.7 千トン × 5.52 億(1.20 倍)、利益率 5%
- 製作金物・その他(エキスパンションジョイントほか):数量 1,020(案件数(件。推定))× 価格 0.05(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 50 億円・営業利益 2 億円。1,020 件 × 0.0488 億(1.20 倍)、利益率 5%
倍率:本業の ROE が k を下回るので上限は 1÷k の 12.5 倍。稼ぐ力が落ちた筋書きとして中立の 10.5 倍より下の 9.71 倍。余った現金は今の額の 0.75 倍に戻り方 0.5 を掛けて足した。
確率:建設の波が引き、利益率が 2015〜2022 年の平均に戻る筋書き。過去の実績に近いので中立に次ぐ重さ。
悲観 10% 悲観:国内の建設が大きく縮み、本業はほぼ稼がない 利益 1 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,233 円35 億円
人口減と人手不足で国内の建設の量が大きく縮み、非住宅の投資も止まる。規格品も製作金物も、量は10年で4割前後減る。
値段はほとんど上がらず、鋳物の工場の固定費が重くのしかかる。営業利益率は1%まで下がり、本業はほとんど稼がない。
預金は残るが、創業家の下で使い道は決まらず、一部は工場の維持や失敗した投資に消える。少数株主に戻るのは、残った預金の半分ほどの値打ちにすぎない。会社は存続するが、優良な会社ではなくなる。工場の集約と人員の削減が避けられず、配当も普通の水準を保てなくなる。名証の小さな会社として、市場からも忘れられていく。
- 器材(鋳鉄器材・スチール機材):数量 4.6(出荷量(千トン。推定))× 価格 5.06(千トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 23 億円・営業利益 0 億円。4.56 千トン × 5.06 億(1.10 倍)、利益率 1%
- 製作金物・その他(エキスパンションジョイントほか):数量 780(案件数(件。推定))× 価格 0.04(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 35 億円・営業利益 0 億円。780 件 × 0.0448 億(1.10 倍)、利益率 1%
倍率:本業はほぼ稼がず ROE は k を大きく下回るので、PER は 1÷k の 12.5 倍より下の 8 倍。価値の大半は余った現金(今の額の 0.5 倍)に戻り方 0.5 を掛けた分。
確率:国内の建設の構造的な縮小と価格の競争が重なる負け。預金が下支えになるので 1 割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
器材(鋳鉄器材・スチール機材)
マンホールのふた・溝ぶた・ルーフドレン・グレーチングなどの規格品。
| 数量出荷量(千トン。推定) | 価格千トンあたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7.6 | 4.60 | 35 | 4 |
| 10 年後 中立 | 6.5 | 5.98 | 39 | 3 |
取り方:鋳鉄器材 23.2 億+スチール機材 11.7 億=35.0 億を、加工済みの鋳鉄・鋼製品の平均単価をトンあたり 40〜50 万円と推定して約 7,600 トン相当と置いた。数量・製品別利益の開示は無く、営業利益は全社の利益率 11.1% で按分した推定。
製作金物・その他(エキスパンションジョイントほか)
建物ごとに設計するエキスパンションジョイント(免震対応を含む)などの製作金物と、その他の製品。
| 数量案件数(件。推定) | 価格1 件あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,200 | 0.04 | 49 | 5 |
| 10 年後 中立 | 1,200 | 0.05 | 65 | 6 |
取り方:製作金物 42.9 億+その他 5.8 億=48.8 億を、1 件あたり約 400 万円(中規模のビル 1 棟分の継ぎ目の金物の推定)で割り約 1,200 件と置いた。営業利益は全社の利益率で按分した推定。
リスクと懸念
利益率の山からの戻り
営業利益率は2022年3月期まで1〜7%だった。近年の11〜15%は資材高の値上げが浸透した結果で、建設の波が引けば価格の競争が戻る。過去の平均に戻れば、利益は今の半分になる。
国内の建設の縮小
人口減で新築の着工は細り、公共工事も新設より補修が中心になる。データセンターや再開発の建設ブームが一巡すれば、製作金物の案件も減る。
預金が株主に戻らない
現金と預金は時価総額を超えるが、自社株買いは無く、創業家が約4分の3を握る。少数株主には使い道を決める力が無く、帳簿の上の安さが長く続く恐れがある。
販売先の集中
最大の販売先のヒルカワ金属が売上の17%、上位20社で7割を超える。代理店の再編や取引の見直しがあれば、売上が一度に減る。
鋳物の工場のコスト
鋳物は電気と人手を多く使う。電気代と人件費の上昇を値段に移せなければ、利益率が下がる。工場は三重県の1か所で、災害の時の代わりが無い。
人手不足と工事の遅れ
建設業界の人手不足で着工や工期が遅れれば、金物の納期も後ろにずれ、年度の売上が振れる。
今後の分かれ目
- 自社株買いや特別配当で預金を株主に戻す方針が出たら
- 眠った預金が株主に戻り始めた証拠で、戻り方を引き上げる。価値は大きく上に動く。
- 創業家によるMBOや他社による買収が提案されたら
- 少数株主に値段が付く。預金の厚さから、今の時価総額を上回る値段になりうる。
- 営業利益率が2期続けて7%を割ったら
- 値上げの力が弱まり建設の波が引いた証拠で、やや悲観に寄せる。
- 免震やデータセンター向けの製作金物の受注が増え続けたら
- 量の伸びが見え、やや楽観に寄せる。
- 預金を本業と関係の薄い投資に回したら
- 預金の値打ちがさらに下がる。戻り方を引き下げる材料になる。
見ておくもの
- 営業利益率(9〜11%の維持)
- 製作金物の売上の伸び
- 非住宅の建設着工
- 自社株買い・配当性向
- 現金と定期預金の残高
- 創業家の持株の変化
倍率と資本コストの決め方
本業の倍率は正当化 PER の式(k 7.5%・残る割合 1/2・g 4%)と、本業の ROE が k 並みの時の上限 1÷k から置き、預金の利息を除いた純利益に掛けた。預金と有価証券約 102 億のうち 88 億を余った現金とし、創業家支配と自社株買いの無さから戻り方 0.5 で足した。今の PBR 0.5 倍や同業の値付けは根拠にしていない。facts の純現金が現金同等物だけで定期預金を取りこぼしている点は BS で確かめて直した。2026 年 9 月の 1→2 の分割は株数と株価の両方に当たっている。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→14.48 倍・やや楽観 PER 11.5→13.55 倍・中立 PER 10.5→13.33 倍・やや悲観 PER 9→9.71 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。