結論
三協立山は、アルミサッシやエクステリアなど建材を作る国内3位の会社だ。ほかに、アルミ形材の素材、自動車や鉄道向けの部材、店舗の什器も手がける。売上は3,575億円で、アルミの加工が事業の骨格だ。
筆者の結論は「適正」に近い。今の時価総額は245億円と、売上に比べて小さい。純有利子負債が約700億円あり、利益が少し動くだけで、株主の取り分は大きく動く。会社は2026年5月期に建材の減損162億円を出し、純損失が135億円に膨らんだ。
ただ、足元は変わり始めた。2027年5月期の6〜8月は、営業利益が26億円と前年同期の赤字から黒字に転じた。通期の計画40億円の6割強を、一気に稼いだ。価格改定、アルミ地金の値上がりに伴う販売価格の上昇、自動車向けの物量増が効いた。
筆者は、10年後の中立で営業利益を90億円弱、純利益を46億円と見る。過去12年で営業利益率が3%を超えたことはない。借金の重さと、中計を何度も下げた実績を考えると、その確率は低く見るべきだ。この会社は、利益が戻れば大きく報われるが、戻らなければ株主の取り分はほとんど残らない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「割安に見えるが、割安とは言えない会社」だ。
PBRは約0.27倍。しかし、帳簿の自己資本は、借金3,000億円規模の貸借対照表の上に載っている。売上に対する利益が1%に届かない会社で、帳簿を額面で評価すると誤る。利益が戻らなければ、その資産は価値を生まない。
堀は薄い。アルミ加工の一貫体制は強みだが、建材でLIXILとYKK APに追われる3位だ。値決めは地金に左右され、利益は上下する。10年後も事業は続くが、強くなっているとは言いにくい。
資本の使い方は、うまくない。新しいサッシと自動車向けに巨額を投じたが、減損162億円が出た。投資のリターンが資本コストを下回った証拠だ。中計の目標を何度も下げた点も、経営の予測力に疑問を残す。
安全域は、薄い。ただし利益が戻る局面では、借金が大きいぶん、株主の取り分は大きく伸びる。筆者が見たいのは、価格改定が地金下落でも維持されるか、新サッシと工場集約で固定費が下がるかだ。
何で稼ぐ会社か
売上3,575億円の内訳は、建材事業が1,675億円、国際事業が792億円、マテリアル事業が677億円、商業施設事業が426億円。従業員は約9,500人。
建材事業は、住宅とビルのアルミサッシ、玄関ドア、カーポートやフェンスなどのエクステリアを作る。国内で首位のLIXIL、YKK APに次ぐ位置にいる。売上の半分近くを占めるが、2026年5月期の利益は11億円。売上の0.6%にすぎない。
マテリアル事業は、アルミの形材(押出材)などを外部に売る。利益は24億円で、4事業で最も稼ぐ。国際事業は、欧州、中国、タイで自動車と鉄道向けのアルミ部品を作る。欧州子会社のSTEP-Gが鉄道向け部材を抱え、事業全体は24億円の赤字だ。商業施設事業は、店舗の什器や内装を請け負う。
原料はアルミ地金。国際相場で動くので、利益は値上げの速さに左右される。地金が上がると、売価も遅れて上がるが、先に原価が出る。
会社は新しいサッシを投入し、生産拠点を7工場から5工場に集約する。2028年を目途に完了する。同時に自動車向けに3年で115億円を投じる。これらの設備が償却費となって、利益を重くしている。
優良さと弱いところ
堀は薄い。建材は3位で、LIXIL、YKK APに価格で追われる立場だ。
強みは、アルミの加工を一貫して持つことだ。地金から形材、サッシ、自動車部品まで、一つの会社が作る。押出機の台数と技術は、新規参入を許さない。商業施設の什器や、自動車向けの大型押出機の導入は、他社に代えにくい。
弱さは、値決め力と資本効率だ。営業利益率は過去12年で0.2〜2.9%、直近の4年は1%前後。ROEの10年中央値はマイナス。中計は目標を何度も下げた。当初の営業利益110億円は70億円に直され、2026年5月期は40億円の見直し値に対して15億円で終わった。
財務は重い。純有利子負債は自己資本の0.77倍。営業利益は支払利息の0.8倍で、利息すら稼げていない。支払利息は2021年5月期の6億円から2026年5月期の20億円へ増えた。自己資本比率は30%まで下がった。
大株主は、信託口、住友化学、そして社員の持株会だ。住友化学は持株を減らしている。経営は、固定費の削減と値上げに軸足を移した。この姿勢は評価できるが、その成果はまだ決算に出ていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
建材の需要は、住宅着工に左右される。2025年の新設住宅着工は約74万戸で、前年比6.5%減。過去20年で最も少なかった。2025年4月の省エネ基準の義務化で駆け込みがあった反動もあるが、構造的な減少が大きい。野村総合研究所は、2040年度に61万戸まで減ると見る。
筆者は、今後10年の住宅向けの数量を、年1%弱の減少とみる。断熱サッシへの切り替えと、リフォームの需要が、減少を一部相殺する。ZEH(ゼロエネルギー住宅)の補助金も追い風だ。
価格は、アルミ地金の動きが決める。地金が上がれば、サッシの値上げが進む。会社は価格改定を進め、2027年5月期の6〜8月の利益が急回復した。ただし地金の下落局面では、売価の低下が先に出る。
自動車向けの需要は、EV(電気自動車)の軽量化で伸びる見通しだった。しかし欧州のEV市場の回復が遅れ、国際事業の赤字が続いた。タイと日本では物量の増加が見える。中国の競合との価格競争も激しい。
商業施設は、インバウンドの増加と店舗の改装需要に支えられる。コンビニやドラッグストアの出店が減ると、需要が落ちる。
競合は、建材で首位級のLIXILとYKK AP。アルミ押出では、国内の形材メーカーと中国メーカーが価格を揺さぶる。鉄道向けでは、欧州の部材メーカーが競う。
資本政策と M&A
還元は、1株あたりの最低額を決めた安定配当だ。ROEが8%以上なら、配当性向30%か純資産配当率2%の高いほうを採る方針。今はその条件を満たさず、最低額に近い。中計の3年間の株主還元は、見直し後で25億円。
投資が優先されている。見直し後の設備投資は3年で490億円。うち成長・戦略投資が240億円で、自動車事業が115億円、海外が40億円。収益基盤の再構築に120億円。営業キャッシュフローは約220億円で、資金調達と資産売却の290億円で補う。
借金は増え続けた。純有利子負債は2021年5月期の466億円から、2026年5月期は694億円になった。金利が上がった影響は、すでに支払利息に出ている。
欧州のSTEP-Gでは、約100名を減らし、工場の土地建物の一部を売る。2026年5月期の一時費用は約12億円、売却益は約19億円の見込みで、2027年5月期以降に年15億円の改善を見込む。
経営は、PBR1倍以上、2031年5月期にROE10%以上を掲げる。ただ、中計を下方修正し続けてきた実績があり、鵜呑みにはできない。M&Aは、現時点では見えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
最悪期は過ぎた。2027年5月期の6〜8月に、営業利益が26億円と前年同期の赤字から黒字へ戻った。通期40億円の6割強を、3か月で稼いだ。価格改定が進み、アルミの売価も上がり、自動車向けの物量が増えた。
減損162億円は、将来の償却費を減らす。建材の固定費は、これから軽くなる。工場は7から5へ集約され、押出ラインも止まる。欧州のSTEP-Gの約100名の削減と土地売却で、国際事業は年15億円良くなる。建材の営業利益率は、0.6%から2%台に戻るのが自然だ。
自動車向けは、大型の押出機を入れ、タイと日本で物量が伸びる。EVが回復すれば、国際事業の赤字も消える。マテリアルは、すでに年24億円を稼ぐ。
借金は重いが、金利はすでに上がりきった。支払利息は20億円で頭打ちに近く、営業利益が90億円に戻れば、純利益は40億円を超える。時価総額245億円に対して、PERは5倍台になる。株価の戻りは大きい。
慎重な見方
この会社は、何度も約束を破った。当初の営業利益110億円は、見直しで70億円になり、2026年5月期は40億円の見直し値に対して15億円で終わった。3年続けて純損失で、減損は162億円。数字の信頼性が低い。
第1四半期の急回復は、アルミ地金の値上がりが生んだ面が大きい。地金が上がると、先に買った安い在庫の評価で利益が増える。逆に地金が下がれば、同じ要因で利益が減る。回復が構造的かどうか、1四半期では判断できない。
借金が重すぎる。純有利子負債は約700億円で、営業利益は支払利息の0.8倍。自己資本比率は30%まで下がった。金利がもう一段上がる、または景気が悪化すれば、株主の取り分は消える。配当は下限の水準で、増える余地はない。
住宅着工は20年で最少の74万戸で、2040年度には61万戸に減る見通しだ。建材の数量は構造的に縮む。LIXILやYKK APが価格で攻めれば、3位の三協立山は利益を出しにくい。欧州の鉄道とEV向けの国際事業も、赤字が続いている。
どちらに重みを置いたか
足元の利益の急回復は事実で、強気の指摘に理があるのは、減損後の固定費の軽さだ。慎重な見方の指摘も重い。中計の達成実績がなく、借金が重く、1四半期の回復は地金の値上がりに助けられている。中立の営業利益率は、過去の最高(2.9%)を超えない1.9%に置いた。確率は、中立を最大にしつつ、やや悲観と悲観に合わせて38%を置き、悲観側に寄せた。借金の重さは、悲観の確率を厚めにした理由でもある。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 1,573 円495 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 349 円110 億円)。 今の値に割り戻すと 928 円292 億円、今との差 +19.4%、 期待の年率 +9.5%(資本コスト 8.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,512 円1,418 億円 | 700 円220 億円 | +570.7% | +21.0% | 417 円131 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,907 円914 億円 | 477 円150 億円 | +335.5% | +15.9% | 677 円213 億円 |
| 中立 | 34% | 1,709 円537 億円 | 334 円105 億円 | +163.0% | +10.2% | 695 円218 億円 |
| やや悲観 | 28% | 142 円45 億円 | 254 円80 億円 | −48.9% | −6.5% | 111 円35 億円 |
| 悲観 | 10% | 102 円32 億円 | 127 円40 億円 | −70.5% | −11.5% | 23 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,573 円495 億円 | 349 円110 億円 | +147.4% | +9.5% | 1,922 円604 億円 |
今の株価時価総額 777 円244 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 価格改定と自動車で、利益率が3%台後半へ 利益 118 億円 · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 4,512 円1,418 億円
価格改定が地金下落の局面でも維持され、建材の営業利益率は3.5%まで戻る。新サッシと工場の集約で、固定費は大きく下がる。住宅の数量は2%減にとどまり、断熱サッシへの切り替えが単価を押し上げる。
国際事業は、欧州のEV市場が回復し、タイと日本の物量が伸びる。STEP-Gの再編も効き、利益率は3.5%まで上がる。マテリアルは自動車向けの形材が伸び、利益率は4.5%。商業施設も出店の増加を受けて3.5%になる。
全社の営業利益は約200億円、利益率は3.7%。純利益は約120億円になる。借金は返済が進み、配当は純資産配当率2%の方針に沿って増える。中計の長期目標だったROE10%には届かないが、PBR1倍に近づく。
- 建材事業:数量 110(販売量(千トン換算・推定))× 価格 21(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 1.5 千円相当))→ 売上 2,332 億円・営業利益 82 億円。数量 0.98 倍・価格 1.42 倍・営業利益率 3.5%
- 国際事業:数量 124(販売量(千トン換算・推定))× 価格 11(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.8 千円相当))→ 売上 1,387 億円・営業利益 49 億円。数量 1.25 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 3.5%
- マテリアル事業:数量 124(販売量(千トン換算・推定))× 価格 8.40(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.6 千円相当))→ 売上 1,042 億円・営業利益 47 億円。数量 1.10 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 4.5%
- 商業施設事業:数量 895(受注案件数(件・年、推定))× 価格 0.70(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 627 億円・営業利益 22 億円。数量 1.05 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 118 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.01 倍、時価総額 1,418 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:価格改定の定着、固定費の削減、自動車向けの物量増がそろう必要がある。中計の目標を何度も下げた実績から、8%にとどめた。
やや楽観 20% 固定費が下がり、利益率が2%台後半に戻る 利益 78 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,907 円914 億円
固定費が下がり、価格改定も一定程度続く。建材の営業利益率は2.6%、国際事業は2.2%の黒字に転じる。マテリアルは3.8%、商業施設は2.8%。住宅の数量は4%減だが、断熱サッシとリフォームが下支えする。
EVは緩やかに回復し、国際事業の赤字は消える。マテリアルは自動車向けの形材が安定して伸び、価格改定の効果も一部は残る。工場の集約は計画どおり2028年に完了し、年間の固定費が数十億円減る。
営業利益は約137億円、利益率は2.7%。過去12年の最高(2.9%)を少し下回る水準だ。営業利益が過去の山に近づくので、確率は20%にとどめた。純利益は約78億円、ROEは6〜7%。借金の返済も進むが、資本コストにはまだ届かない。
- 建材事業:数量 107(販売量(千トン換算・推定))× 価格 21(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 1.5 千円相当))→ 売上 2,219 億円・営業利益 58 億円。数量 0.96 倍・価格 1.38 倍・営業利益率 2.6%
- 国際事業:数量 114(販売量(千トン換算・推定))× 価格 11(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.8 千円相当))→ 売上 1,247 億円・営業利益 27 億円。数量 1.15 倍・価格 1.37 倍・営業利益率 2.2%
- マテリアル事業:数量 118(販売量(千トン換算・推定))× 価格 8.22(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.6 千円相当))→ 売上 973 億円・営業利益 37 億円。数量 1.05 倍・価格 1.37 倍・営業利益率 3.8%
- 商業施設事業:数量 852(受注案件数(件・年、推定))× 価格 0.69(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 584 億円・営業利益 16 億円。数量 1.00 倍・価格 1.37 倍・営業利益率 2.8%
倍率:事業の純利益 78 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 914 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027年5月期の1四半期の急回復と減損後の固定費の軽さが下支えになる。ただし継続性に疑問が残り、20%を置いた。
中立 34% 数量は微減、価格は物価並み。利益率は1%台後半 利益 46 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,709 円537 億円
数量は住宅着工の減少で10年に7%ほど減り、価格は物価並みに上がる。建材の営業利益率は1.8%、国際は1.0%、マテリアルは3.2%、商業施設は2.2%。減損後の軽い固定費が、利益率を2026年5月期より1ポイントほど押し上げる。
EVの回復は緩やかで、国際事業はやっと黒字になる程度。地金の変動で利益は上下する。営業利益は約88億円、利益率は1.9%。支払利息が約20億円残るので、純利益は46億円になる。
ROEは4%台で、資本コストに届かない。借金は少しずつ返すが、設備投資が重く、純有利子負債は大きく減らない。「利益は戻ったが、稼ぐ力は弱い」会社として10年が過ぎる。
- 建材事業:数量 104(販売量(千トン換算・推定))× 価格 20(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 1.5 千円相当))→ 売上 2,088 億円・営業利益 38 億円。数量 0.93 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 1.8%
- 国際事業:数量 104(販売量(千トン換算・推定))× 価格 11(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.8 千円相当))→ 売上 1,115 億円・営業利益 11 億円。数量 1.05 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 1.0%
- マテリアル事業:数量 113(販売量(千トン換算・推定))× 価格 8.04(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.6 千円相当))→ 売上 907 億円・営業利益 29 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 3.2%
- 商業施設事業:数量 826(受注案件数(件・年、推定))× 価格 0.67(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 553 億円・営業利益 12 億円。数量 0.97 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 2.2%
倍率:事業の純利益 46 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 537 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率が過去の高い年(2〜3%)の手前で止まる筋書き。実績の範囲に収まるので最大の34%を置いた。
やや悲観 28% 地金高の転嫁が遅れ、利益率が今の水準に張り付く 利益 6 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 142 円45 億円
地金の値上がりを売価に写すのが遅れ、価格改定の効果も薄れる。建材の営業利益率は0.8%、マテリアルは2.2%、商業施設は1.2%。国際事業は赤字が続き、欧州の再編の効果も限定的だ。
住宅着工は減り続け、数量は10%減る。新サッシの投資は回収できず、減損が追加で出る。
営業利益は約28億円、利益率は0.7%と今の水準に張り付く。2026年5月期の15億円から少し増えるだけで、減損後の軽い固定費の効果もほとんど出ない。支払利息の約20億円を引くと、純利益は7億円ほど。配当は下限を保つのが精いっぱいで、借金は減らない。ROEは1%に届かない。株価は純資産を大きく下回ったまま、利益が戻る時期を待つ展開になる。
- 建材事業:数量 101(販売量(千トン換算・推定))× 価格 20(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 1.5 千円相当))→ 売上 1,960 億円・営業利益 16 億円。数量 0.90 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 0.8%
- 国際事業:数量 94.0(販売量(千トン換算・推定))× 価格 10(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.8 千円相当))→ 売上 978 億円・営業利益 −10 億円。数量 0.95 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 -1.0%
- マテリアル事業:数量 104(販売量(千トン換算・推定))× 価格 7.80(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.6 千円相当))→ 売上 810 億円・営業利益 18 億円。数量 0.92 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 2.2%
- 商業施設事業:数量 784(受注案件数(件・年、推定))× 価格 0.65(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 510 億円・営業利益 6 億円。数量 0.92 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 1.2%
倍率:ROE 0.7%(事業の純利益÷自己資本)が k 8.5% 以下なので、伸びても価値は増えず(ためた利益は額面未満)、正当化 PER の上限は 1÷k=10.5 倍。伸びと堀の持ちを低く見て、上限の 6.7 割の 7.0 倍に置いた。
確率:地金高の転嫁の遅れと住宅着工の減少が続く確率は高い。直近4年の営業利益率は1%前後だった。28%を置いた。
悲観 10% 着工減と価格競争で、再び赤字に沈む 利益 −55 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 102 円32 億円
住宅着工が急減し、LIXILとYKK APが価格で攻める。建材は値下げを迫られ、営業利益率はマイナスに沈む。国際事業は欧州のEV不振と鉄道事業の損失が続き、マテリアルの利益も消える。
追加の減損と構造改革の費用が重なり、純損失が数年続く。自己資本は400億円近く削られ、自己資本比率は20%台前半に落ちる。金融機関は借り換えに応じるが、金利は高く、配当は大きく減る。
会社は工場の売却や事業の切り離しに動くが、赤字を止めるには足りない。大株主や取引先による支援の可能性も出てくる。株主の取り分は、帳簿の自己資本の一部にとどまる。
- 建材事業:数量 94.9(販売量(千トン換算・推定))× 価格 18(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 1.5 千円相当))→ 売上 1,737 億円・営業利益 −17 億円。数量 0.85 倍・価格 1.22 倍・営業利益率 -1.0%
- 国際事業:数量 84.1(販売量(千トン換算・推定))× 価格 9.60(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.8 千円相当))→ 売上 807 億円・営業利益 −24 億円。数量 0.85 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 -3.0%
- マテリアル事業:数量 95.9(販売量(千トン換算・推定))× 価格 7.20(1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.6 千円相当))→ 売上 691 億円・営業利益 7 億円。数量 0.85 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 1.0%
- 商業施設事業:数量 767(受注案件数(件・年、推定))× 価格 0.60(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 460 億円・営業利益 0 億円。数量 0.90 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 0.0%
倍率:営業赤字が続き、事業の稼ぐ力から価値を測れない筋書き。清算価値は借金(約760億円)を引くとほぼ残らず、純現金も無い。自己資本(赤字で削られた分)に0.05を掛けた。借金の返済に追われ、株主に戻る額は小さいとみる。
確率:着工の減少、LIXILとYKK APの価格攻勢、欧州事業の赤字が重なる筋書き。借金が重く悪化の幅が大きいので、10%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建材事業
住宅・ビルのアルミサッシ、玄関ドア、エクステリア(カーポート・フェンスなど)。
| 数量販売量(千トン換算・推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 1.5 千円相当) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 112 | 15 | 1,676 | 11 |
| 10 年後 中立 | 104 | 20 | 2,088 | 38 |
取り方:建材の売上1,675億円を、サッシ・ドア・エクステリアの平均売価(1kg あたり約 1.5 千円と推定)で割り、約11万トン(111.7 千トン)とした。住宅着工の減少は数量に、物価3%とアルミ地金は価格に入れた。セグメント利益は10.7億円(利益率0.6%)。
国際事業
欧州・中国・タイの自動車、鉄道向けアルミ部材。
| 数量販売量(千トン換算・推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.8 千円相当) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 99.0 | 8.00 | 792 | −24 |
| 10 年後 中立 | 104 | 11 | 1,115 | 11 |
取り方:国際の売上792億円を、自動車・鉄道向けアルミ部材の平均売価(1kg あたり約 0.8 千円と推定)で割り、約9.9万トンとした。数量は実質、物価と地金は価格に入れた。セグメント利益は−24億円(利益率−3.1%)。
マテリアル事業
アルミ形材(押出材)など素材の外販。
| 数量販売量(千トン換算・推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目、平均売価 1kg あたり 0.6 千円相当) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 113 | 6.00 | 677 | 24 |
| 10 年後 中立 | 113 | 8.04 | 907 | 29 |
取り方:マテリアルの売上677億円を、アルミ形材の平均売価(1kg あたり約 0.6 千円と推定)で割り、約11万トンとした。数量は実質、物価と地金は価格に入れた。セグメント利益は23.5億円(利益率3.5%)。
商業施設事業
店舗の什器・内装・ショーケースの設計と施工。
| 数量受注案件数(件・年、推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 852 | 0.50 | 426 | 7 |
| 10 年後 中立 | 826 | 0.67 | 553 | 12 |
取り方:商業施設の売上426億円を、1件あたり約0.5億円と推定して割り、年約850件とした。件数は実質、物価と大型案件の増減は1件あたり売上に入れた。セグメント利益は7.2億円(利益率1.7%)。
リスクと懸念
借金の重さ
純有利子負債は約700億円で、営業利益は支払利息の0.8倍。自己資本比率は30%まで下がった。金利がもう一段上がる、または利益が戻らなければ、株主の取り分が消える。
中計の未達と下方修正
当初の営業利益110億円は70億円に、2026年5月期は40億円の見直し値に対して15億円で終わった。3期続けて純損失で、162億円の減損も出た。計画の信頼性が低い。
アルミ地金の変動
地金が上がると売価は遅れて上がり、下がると売価の低下が先に出る。2027年5月期の第1四半期の回復には、地金の値上がりの追い風が含まれる。逆風に変われば利益が減る。
住宅着工の構造的な減少
2025年の新設住宅着工は約74万戸で20年で最少。野村総合研究所は2040年度に61万戸と見る。建材は売上の半分近くで、数量が縮み続ける。
欧州事業の赤字
国際事業は24億円の赤字で、STEP-Gの鉄道部材とEV向けの回復が遅れている。再編で年15億円の改善を見込むが、欧州の景気と中国メーカーとの競争で遅れる可能性がある。
投資の回収
新サッシと自動車向けの押出機の投資は、減損で一部が失われた。成長・戦略投資240億円の回収に失敗すれば、減損が追加で出て、自己資本が削られる。
今後の分かれ目
- 2027年5月期の通期で営業利益が40億円を超え、第2四半期以降も黒字が続いたら
- やや楽観以上の確率を上げてよい。固定費の軽さが定着した合図になる。
- アルミ地金が下落し、売価が先に下がって営業利益が急減したら
- 第1四半期の回復が一時的だったと判断し、やや悲観の確率を上げる。
- 欧州のSTEP-Gの再編が計画どおり進み、国際事業の赤字が消えたら
- 国際事業の利益率を上方修正する。年15億円の改善が確認できる。
- 金融機関が借り換えで金利を上げ、支払利息が25億円を超えたら
- 純利益が大きく削られる。悲観の確率を上げる。
- 住宅着工が年70万戸を割り込んだら
- 建材の数量の見通しを下げ、国内事業の利益率を下方修正する。
- 減損や構造改革の追加が発表されたら
- 短期は特別損失で純利益が落ちるが、固定費が下がるなら長期の利益率は上がる。内容を見て判断する。
見ておくもの
- 四半期ごとの建材・国際・マテリアルの各セグメント利益
- アルミ地金(LME)の価格と、会社の価格改定の発表
- 新設住宅着工戸数と、断熱サッシ(新サッシ)の受注
- 支払利息の水準と、純有利子負債の推移
- 中計の見直しと、2031年5月期のROE10%・PBR1倍の目標に向けた進み
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。資本コストは基本7.5%に品質の合計+2.0%を足した9.5%。借金の重さは quality の debt(上限+1.0%)で数え、distress の上乗せは足していない。10年後の中立のROEは4%台でkを下回るため、PERの上限は1÷k(10.5倍)の約8割に置いた。今のPERは純損失で意味を持たず、過去の倍率や同業の倍率には寄せていない。営業利益率は、過去12年の山(2014年5月期の5.6%、直近10年の山の2.9%)を超えない1.9%に置いた。利払いは、実際の支払利息が2021年5月期の6億円から2026年5月期の20億円へ上がってすでに新しい金利になっているので、10年後も約20億円で置いた(下調べの推定とは別に、実額を優先した)。純利益は、一時の減損で起点が歪むため、net_start に2027年5月期の会社予想10億円を使った。工場や店舗の賃借の約束は、悲観で固定費として残る前提にした。新リース会計基準(2028年5月期以降に影響)で数字の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。