結論
兼房は、丸鋸(チップソー)、木工用の平らな刃物、ダイヤモンドを付けた精密工具を作る、愛知の専業メーカーである。売上は209億円、自己資本比率は82%、純現金が48億円ある。
筆者の結論は、値段は資産に比べて大きく安いが、稼ぐ力に対しては中立から少し高い、というものだ。営業利益は11億円、ROEは3.3%で資本コストに届かない。時価総額106億円に対し、純資産は313億円ある。
問題は、資産が稼ぎに結びついていない点だ。営業利益率は過去12年で2.9〜10.5%、中央値は7.5%。直近は5%台にとどまる。国内の生産は本社工場1か所で、固定費が重い。
10年後の中立は、営業利益18億円、純利益14億円ほど。国内の縮小を海外が補い、数量は実質で1割前後増える。ROEは4%弱で、倍率は式の上限の7割に置いた。余った現金の戻り方は0.5と見た。
見るべきは、海外工場の稼働、原料の超硬の値段、現金の使い道だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、兼房は安全域は厚いが、稼ぐ力に疑問の残る会社だ。
資産は厚い。純資産313億円は時価総額の3倍で、事業が谷に入っても現金と設備が残る。会社が倒れる心配は小さい。
問題は、その資産を会社が何に使うかだ。ROEは3%台、持っている資産に対して営業利益は3%にも満たない。ためた利益は、額面を下回る価値しかない。
オーナーが持ち続けたい会社かと問われれば、利益率が改善する具体策を見たい、というのが筆者の答えだ。海外の工場が稼働を上げる流れは確かで、足元の利益は増えている。ただし、これが資本コストを超える稼ぎに育つかは、まだ見えない。
安全域は、資産の面で大きい。稼ぎの面では薄い。会社が倒れる前に、株主へ現金が戻る仕組みがあるかも見る。この二つを合わせて、値段は中立から少し高い、と筆者は見る。
何で稼ぐ会社か
兼房は1948年創業の工業用刃物メーカーで、連結子会社10社を持つ。木材、金属、紙を切ったり削ったりする刃物を、機械メーカーと加工現場に納める。
2026年3月期の売上209億円は、丸鋸類が97億円、平刃類が70億円、精密刃具類が38億円、仕入商品が4億円。丸鋸はチップソーと金属切断用、平刃は木工の鉋刃や合板用、精密刃具はルータービットやダイヤ製品である。
地域別では、日本が108億円で半分を占める。アジア(インドネシア・ベトナム)が25億円、北米が25億円、欧州が23億円、ブラジルが8億円、中国が9億円。営業利益は、インドネシアが4億円、日本が3億円と、アジアが稼ぎ頭だ。
10%を超える販売先はなく、顧客は分散している。用途は住宅関連の比重が高いが、自動車関連も増えている。国内の生産は本社工場1か所で、災害時のリスクを会社自身が挙げる。従業員は連結1,135人。
筆頭株主は大口興産で議決権の16.6%(2026年3月)、個人2人が約1割ずつ、従業員持株会が5.4%。創業家と関係者が株主の中心で、機関投資家の持ち分は小さい。
優良さと弱いところ
優良さは、財務の堅さと海外の生産体制にある。ただし、利益の水準は資本コストに届かない。
強みは三つある。第一に、自己資本比率82%で純現金が48億円ある。第二に、インドネシアとベトナムに自前の工場を持ち、アジアの営業利益が全社の稼ぎを支える。第三に、顧客が分散し、10%を超える販売先がない。
弱みも三つある。第一に、国内の売上の半分が住宅と木工に連動し、人口の減少で細る。第二に、利益率が2.9%から10.5%まで振れ、直近は5%台と低い。第三に、超硬の原料のタングステンが高騰すると、転嫁の遅れで利益が削られる。
資本効率は低い。過去10年のROEの中央値は3.8%で、資本コストの半分に満たない。総資産384億円に対し営業利益11億円と、持っている資産の割に稼げない。
筆者は、技術と財務は本物だが、資本が眠っていると見る。会社は営業利益率5%以上を中計の目標に置くが、これは今の水準とほぼ同じで、資本効率の改善を示す目標ではない。堀は普通と置いた。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界は、木材・金属・紙の加工に使う工具で、需要は住宅と製造業の稼働に連動する。
国内は新設住宅の着工が人口の減少で細り、木工機械も縮む。一方、東南アジア・南米・インドの住宅と製造業は伸びる余地がある。会社は、ブラジルの大手ユーザーの獲得、インドの機械メーカーとの協業、ベトナム工場の増設、インドネシアの熱処理設備の導入を、前の中計の成果に挙げた。
足元は回復の途中にある。2026年3月期は営業利益が46%増の11億円、2027年3月期の第1四半期は売上が17%増、営業利益が2.2倍と、海外の稼働と為替が効いた。
競合は、同じチップソーを作る天龍製鋸、海外の大手工具メーカー、アジアの低価格メーカーである。精密刃具は用途が広く、ダイヤモンド工具は切削の高度化で需要が伸びる。
10年では、国内の数量は縮み、海外で伸びる。超硬の原料の値動きと、中国・アジアの低価格品が、利益率の上限を決める。
国内の木造住宅の工法が変わっても、刃物は消耗品として買い替えられる。ただし、工場の自動化で使う刃の数が減る方向の変化もあり、数量の伸びは売上の伸びほど大きくはない。
資本政策と M&A
資本の使い方は、堅いが動きが遅い。現金は79億円、有利子負債は31億円で、純現金は10年を通して30〜59億円の範囲にある。
配当は、年間の下限を設け、連結配当性向35%をめどとする。2026年3月期の配当は前の期より増えた。自社株買いの記載はない。2027年3月期は減配の予想で、利益が減る前提だ。
政策保有株式は、上場株が7億円、非上場が7億円と小さい。うちマキタが5億円を占める。持ち合い株の売却で現金を作る余地は小さい。
設備投資は、2026年度に本社工場の更新で約8億円、ベトナムで7億円、インドネシアで2億円を予定する。M&Aの実績は限られる。
筆者は、現金と固定資産が眠っていると見る。株主は創業家と関係者が中心で、現金の戻りを求める力は強くない。10年以内の買収の確率は3割弱という統計もあるが、筋書きには入れていない。余った現金の戻り方は0.5とした。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
値段は資産に比べて大きく安い。純資産313億円に対し時価総額は106億円で、純現金だけでも時価総額の半分に近い。事業を実質ただで買える計算だ。
海外の工場が育っている。インドネシアとベトナムの営業利益は全社の稼ぎの半分以上を占め、ブラジルとインドの新しい顧客も加わる。2027年3月期の第1四半期は営業利益が2.2倍になった。
精密刃具は、ダイヤモンド工具を含めて用途が広い。自動車の軽量化、電子・金属加工の高精度化で、需要が伸びる余地がある。
国内の生産は本社工場に集中しているが、設備更新が進めば効率が上がる。利益率が過去の水準の7〜8%に戻れば、営業利益は20億円を超える。資本効率の改善を求められる局面で、配当性向の引き上げや現金の活用が始まる可能性もある。
さらに、持ち合い株の整理は進んでおらず、売却や配当の増額で現金が株主に戻れば、時価総額との差はそのまま株主の利益になる。中計の営業利益率5%は保守的な目標で、海外の稼働が上がるほど上振れしやすい。
慎重な見方
営業利益率は、直近12年のうち9年が8%を下回る。ROEは資本コストの半分以下で、資産がいくらあっても稼げない会社に、倍率はつかない。
国内は住宅の縮小で細り、国内の営業利益は3億円と薄い。海外で稼ぐアジアも、中国やアジアの低価格品の追い上げにあう。ブラジルは赤字だ。
超硬の原料は価格が大きく動く。転嫁が遅れれば、利益は簡単に削られる。国内の生産が本社工場1か所なので、災害や稼働の落ち込みの影響が集中する。
株主は創業家と関係者が中心で、現金の戻りを求める力は弱い。配当には下限の定めがあるが、利益が減る局面では減らす余地がある。純現金も、過去10年で30〜59億円と積み上がっていない。ためた現金は、株主に戻って初めて価値になる。
さらに、2026年3月期の増益は円安の効果が大きく、為替が戻れば消える。中計の営業利益率5%も、今の水準と変わらず、改善を約束していない。会社は国内に生産が集中する構造を変えられていない。
どちらに重みを置いたか
資産の厚さは強気の言い分が強い。ただし、利益率の低さと国内の縮小は、弱気の言い分が重い。確率は、中立を4割弱に置き、やや悲観を3割近くに寄せた。悲観は、国内工場の固定費で赤字が続く姿を1割とし、床を純現金と売れる資産の税後で置いた。最後は、国内の縮小を海外が補っても、利益率は中計の目標の少し上にとどまる姿を、いちばん確からしいと見た。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,308 円182 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 294 円41 億円)。 今の値に割り戻すと 822 円114 億円、今との差 +7.4%、 期待の年率 +7.7%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,486 円346 億円 | 432 円60 億円 | +280.9% | +14.3% | 204 円28 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,924 円268 億円 | 374 円52 億円 | +200.1% | +11.6% | 414 円58 億円 |
| 中立 | 38% | 1,534 円213 億円 | 345 円48 億円 | +145.3% | +9.4% | 714 円99 億円 |
| やや悲観 | 27% | 599 円83 億円 | 201 円28 億円 | +4.4% | +0.4% | 216 円30 億円 |
| 悲観 | 10% | 432 円60 億円 | 108 円15 億円 | −29.6% | −3.4% | 54 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,308 円182 億円 | 294 円41 億円 | +109.1% | +7.7% | 1,602 円223 億円 |
今の株価時価総額 766 円106 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 海外の工場が伸び続け、精密工具が育って利益率が上がる 利益 24 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,486 円346 億円
ベトナムとインドネシアの工場の増設が実り、ブラジルの大手ユーザーやインドの機械メーカーとの協業が数量を押し上げる。精密刃具は、自動車の軽量化部材の加工やダイヤモンド工具で用途が広がり、台数が5割増える。
国内は住宅の縮小で細るが、工場の自動化で採算を保つ。丸鋸と平刃も海外の稼働が上がり、数量は実質で3割増える。
営業利益は30億円、純利益は24億円ほど。ためた現金は70億円まで積み上がるが、配当性向35%の方針は続き、還元は10年で60億円。
ただし、この水準でもROEは7%に届かず、資本コストの手前にとどまる。筋書きが上振れしても、倍率は式の上限の8割までだ。
- 平刃類・商品:数量 390(出荷点数(万点、推定))× 価格 3,323(1点あたりの売上(円、名目))→ 売上 130 億円・営業利益 10 億円。海外の稼働が上がる
- 精密刃具類(ダイヤ製品を含む):数量 180(出荷点数(万点、推定))× 価格 4,208(1点あたりの売上(円、名目))→ 売上 76 億円・営業利益 8 億円。ダイヤ工具と自動車向けが拡大
- 丸鋸類(チップソー・金属切断用):数量 247(出荷枚数(万枚、推定))× 価格 6,868(1枚あたりの売上(円、名目))→ 売上 170 億円・営業利益 12 億円。ブラジル・インドで数量増
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)52 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 346 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ベトナム・インドネシアの工場が稼働率を上げ、中計の「営業利益率5%以上」を超える水準が続く筋書き。過去12年の最高は10.5%で、そこまで届くには国内の縮小を海外が補って余りある必要があるため、1割を切る確率にした。
やや楽観 18% 海外で数量が伸び、国内の縮小を補って利益率が6%台に乗る 利益 18 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,924 円268 億円
海外の工場が稼働率を保ち、精密刃具は自動車と金属加工向けに伸びる。国内は住宅の縮小を、産業用の需要で小さく補う。
数量は実質で2〜3割増え、価格は物価並みに上がる。営業利益率は6%台。
営業利益は22億円、純利益は18億円。余った現金は62億円まで積み上がる。
国内の住宅は縮むが、工場の自動化と製品の組み替えで採算を保つ。超硬の原料の値上げは、価格に転嫁できる範囲に収まる。
ベトナムの増設工場が計画どおり立ち上がり、ブラジルの赤字も解消へ向かう。会社の中計の目標は超えるが、過去の山の利益率には届かない。
- 平刃類・商品:数量 345(出荷点数(万点、推定))× 価格 3,323(1点あたりの売上(円、名目))→ 売上 115 億円・営業利益 7 億円。海外が伸び、国内は横ばい
- 精密刃具類(ダイヤ製品を含む):数量 156(出荷点数(万点、推定))× 価格 4,208(1点あたりの売上(円、名目))→ 売上 66 億円・営業利益 6 億円。精密刃具の用途が広がる
- 丸鋸類(チップソー・金属切断用):数量 219(出荷枚数(万枚、推定))× 価格 6,868(1枚あたりの売上(円、名目))→ 売上 150 億円・営業利益 9 億円。海外の稼働が支える
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.2% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)46 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 268 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027年3月期の第1四半期は営業利益が2.2倍と、海外の稼働と為替が効いた。足元の勢いを10年の水準とは見ないが、中計の5%を超えて定着する可能性は2割弱あると置いた。
中立 38% 国内は縮み、海外が補う。利益率は中計の目標の少し上に落ち着く 利益 14 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,534 円213 億円
国内の木造住宅と木工は人口の減少で細り、平刃と丸鋸の数量は国内で1割減る。海外ではインドネシア・ベトナム・ブラジル・インドの需要が伸び、工場の稼働が保たれる。全体の数量は実質で5〜15%増える。
価格は物価並みに上がるが、超硬の原料や人件費も同じ速さで上がるため、利益率は物価で勝手に下がらない。営業利益率は6%弱、営業利益は18億円。
純利益は14億円。配当性向35%を守り、残りで現金と設備が積み上がる。ROEは3〜4%と資本コストに届かない。
この筋書きは、10年の間に大きな事件を想定しない。景気の谷は途中にあるが、平均すれば利益率は目標の5%を少し上回る。
- 平刃類・商品:数量 315(出荷点数(万点、推定))× 価格 3,323(1点あたりの売上(円、名目))→ 売上 105 億円・営業利益 6 億円。国内の縮小を海外が補う
- 精密刃具類(ダイヤ製品を含む):数量 138(出荷点数(万点、推定))× 価格 4,208(1点あたりの売上(円、名目))→ 売上 58 億円・営業利益 5 億円。用途の広がりでやや増える
- 丸鋸類(チップソー・金属切断用):数量 200(出荷枚数(万枚、推定))× 価格 6,868(1枚あたりの売上(円、名目))→ 売上 137 億円・営業利益 7 億円。数量は横ばい圏
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.0% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)41 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 213 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去12年の営業利益率は2.9〜10.5%で中央値は約7.5%。中計の目標は5%以上。10年後の中立は6%弱と、中央値の下、目標の少し上に置いた。国内の縮小と海外の伸びが釣り合う姿だ。
やや悲観 27% 海外の低価格品に押され、数量と利益率が同時に下がる 利益 7 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 599 円83 億円
国内の住宅と製造業の投資が縮み、中国やアジアの低価格の工具が輸出市場に入ってくる。丸鋸と平刃は値引きに追い込まれ、数量も1〜2割減る。
本社工場が国内の生産を一手に担うため、数量が落ちると固定費が重い。営業利益率は4%台まで下がり、営業利益は9億円。
配当は下限を守るが、利益が細り、還元は10年で28億円にとどまる。余った現金も一部は赤字の穴埋めで減る。
海外の拡大も、現地の低価格競争に阻まれ、利益に結びつきにくい。国内の木工需要の縮小は、この筋書きでさらに速まる。
本社工場の更新投資は進めるが、設備の更新費が物価で膨らむ一方、売上が追いつかず、会計の利益よりも現金の減りが大きくなる。
- 平刃類・商品:数量 270(出荷点数(万点、推定))× 価格 3,323(1点あたりの売上(円、名目))→ 売上 90 億円・営業利益 3 億円。値引きと数量減
- 精密刃具類(ダイヤ製品を含む):数量 114(出荷点数(万点、推定))× 価格 4,208(1点あたりの売上(円、名目))→ 売上 48 億円・営業利益 3 億円。ダイヤ工具は堅い
- 丸鋸類(チップソー・金属切断用):数量 162(出荷枚数(万枚、推定))× 価格 6,868(1枚あたりの売上(円、名目))→ 売上 111 億円・営業利益 3 億円。低価格品に押される
倍率:事業の稼ぎ率は資本コスト7.75%を大きく下回り、PERの上限は1÷k=12.1倍。その約75%(9.0倍)に置いた。余った現金は今の額の0.75倍(約34億円)を足した。
確率:2021年3月期に営業利益率が2.9%まで落ち、2025年3月期も3.7%と、薄い利益が現実に起きている。10年の間にもう一度、数量減と値引きが重なる筋書きを3割弱に置いた。
悲観 10% 需要が構造的に縮み、国内工場の固定費で赤字が続く 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 432 円60 億円
住宅の新設が大きく減り、海外の工場も稼働が落ちる。数量は3割前後減り、価格は物価に届かず、営業利益は赤字になる。
本社工場の固定費、海外工場の減価償却、人件費が重く、赤字が数年続く。会社は人員と生産拠点を減らす。
稼ぐ力が消えるので、価値は純現金と売れる資産の税後で測る。持ち合い株は小さく、土地・建物の売却益も期待しにくい。少数株主は現金の使い方を決められず、戻り方は5割とみる。
会社は人員と拠点を整理するが、リストラの費用が先に出て、立て直しには数年かかる。国内の工場の売却が進めば、土地の価値が手がかりになる。
- 平刃類・商品:数量 210(出荷点数(万点、推定))× 価格 2,976(1点あたりの売上(円、名目))→ 売上 63 億円・営業利益 0 億円。価格が崩れ数量も減る
- 精密刃具類(ダイヤ製品を含む):数量 96.0(出荷点数(万点、推定))× 価格 3,768(1点あたりの売上(円、名目))→ 売上 36 億円・営業利益 1 億円。ダイヤ工具は残る
- 丸鋸類(チップソー・金属切断用):数量 124(出荷枚数(万枚、推定))× 価格 6,150(1枚あたりの売上(円、名目))→ 売上 76 億円・営業利益 0 億円。採算割れ
倍率:稼ぐ力は消え、純現金と売れる資産の税後が床になる。今の自己資本313億円に0.19倍を掛けた約60億円。内訳は床の資産の欄に書いた。
確率:世界の製造業が縮み、住宅は着工が半分になる、さらに関税と中国勢の低価格が重なる構造的な負けの筋書き。会社は現金と固定資産が厚く倒れにくいので、1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
平刃類・商品
木工用の平鉋刃、合板用、製本・紙工用、チッパー刃など、機械に取り付ける平らな刃物と仕入商品。
| 数量出荷点数(万点、推定) | 価格1点あたりの売上(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 300 | 2,480 | 74 | 4 |
| 10 年後 中立 | 315 | 3,323 | 105 | 6 |
取り方:開示は平刃類70.5億円(前期比+5.5%)と商品3.9億円。点数は開示がなく、年300万点・1点2,480と推定した。営業利益は製品別の開示がなく、全社10.9億円を製品の性格から配分した推定(利益率5.4%)。
精密刃具類(ダイヤ製品を含む)
カッター、ルータービット、ダイヤモンドの刃先を付けた工具、高精度の刃具。自動車や電子・金属加工にも使われる。
| 数量出荷点数(万点、推定) | 価格1点あたりの売上(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 3,140 | 38 | 3 |
| 10 年後 中立 | 138 | 4,208 | 58 | 5 |
取り方:開示は精密刃具類37.7億円(前期比横ばい)。ダイヤモンド工具は独立した区分でなく、この中に入る。点数は年120万点・1点3,140と推定。営業利益は推定配分(利益率7.4%)。
丸鋸類(チップソー・金属切断用)
木材や金属を切る円形の鋸。超硬チップ付きのチップソーが中心で、住宅・家具・金属加工に使う。
| 数量出荷枚数(万枚、推定) | 価格1枚あたりの売上(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 190 | 5,125 | 97 | 4 |
| 10 年後 中立 | 200 | 6,868 | 137 | 7 |
取り方:開示は丸鋸類97.4億円(前期比+2.6%)で最大の製品。枚数は年190万枚・1枚5,125と推定した。営業利益は推定配分(利益率4.2%)。価格は超硬の原料(タングステン)の値段に左右される。
リスクと懸念
国内の住宅と木工の縮小
国内の売上は108億円で半分を占め、新設住宅の着工と木工機械の稼働に連動する。人口の減少で長期に細り、国内の営業利益は3億円と薄い。
超硬の原料の値動き
丸鋸の刃先に使う超硬の原料のタングステンは、価格が大きく動く。会社も原料の高騰をリスクに挙げる。転嫁が遅れれば、丸鋸の利益が削られる。
低価格品との競争
中国やアジアの低価格の工具が輸出市場に入る。中国の営業利益はほぼゼロ、ブラジルは赤字で、海外の拡大がそのまま利益にならない面がある。
国内の生産の集中
国内の生産拠点は愛知の本社工場1か所で、地震や火災で止まれば国内の供給が止まる。会社自身がリスクに挙げている。
眠る資産
総資産384億円に対し営業利益は11億円。現金79億円と設備が稼ぎに結びつかない。ROEが資本コストを下回り続ければ、少数株主にとっては資産が額面を下回る。
為替と海外
海外売上が5割を超え、為替が利益に効く。筋書きでは為替を固定して扱うが、足元の増益には円安が効いている。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2期続けて7%を超えたら
- 海外の稼働が構造的に効いているとして、やや楽観の確率を厚くする。
- 配当性向の引き上げや自社株買いで、現金を戻し始めたら
- 戻り方を0.75〜1.0に引き上げ、中立の値を上げる。
- 超硬の原料の価格が2倍になり、転嫁が遅れたら
- 丸鋸の利益率が下がるので、やや悲観の確率を上げる。
- ブラジル・中国が赤字を続け、撤退や減損が出たら
- 海外の拡大が利益に結びつかないとして、悲観の確率を上げる。
- 創業家や大口興産が持株を売却し、公開買付けが出たら
- 買収価格に収れんするため、筋書きを置き直す。
見ておくもの
- 地域別(日本・アジア・北米・欧州・ブラジル)の営業利益
- 営業利益率と中計の目標(5%以上)
- 超硬の原料価格と販売価格の転嫁
- 現金と配当性向、自社株買い
- 本社工場の更新投資の規模
- 大口興産などの持株比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は、10年後のROEと資本コスト7.75%から、利益ベースで置いた。事業のROEは中立で4%と資本コストを大きく下回るため、PERの上限は1÷k=12.1倍で、その約7割(8.5倍)にした。今の株価や自己資本に対する倍率には寄せていない。営業利益率は過去12年の中央値(約7.5%)の下、中計の目標(5%以上)の少し上の6%弱。本社費・人件費・原料は物価で増やす。減価償却は今の設備の取得原価のままで、更新の投資は建築費・機械の値上がりで膨らむので、会計の利益ほど現金は残らない。余った現金は純現金48億円と同じ水準の約45億円で、戻り方は0.5。リースは小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.7→12.9 倍・やや楽観 PER 9.2→12.9 倍・中立 PER 8.5→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足して決めた。事業が傾いているわけではないので上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.75%。