結論
モリテック スチールは、ばねや歯車の材料になる特殊帯鋼を自動車部品メーカーに売る商社だ。焼入れの加工と板金の加工、アジアとメキシコの工場も持つ。筆者の結論は「割高」である。売上は 480 億円あるのに営業利益は 4 億円台で、自己資本 161 億円に対する稼ぎがあまりに薄いからだ。
単体の売上の約 7 割はエンジンや変速機の部品向けで、会社自身が電動化で売上の 3 割以上を失う恐れがあると書いている。主な顧客はエクセディやジヤトコといった変速機の会社で、電気自動車では要らなくなる部品が多い。
会社は 2030 年 3 月期に営業利益 18 億円という計画を掲げる。今の 4 倍で、過去最高の水準も大きく上回る。筆者はこの計画の半分に届けば上出来と見る。2026 年 3 月期の純利益は株の売却益で膨らんでおり、ならせば 4〜5 億円だ。PBR が 0.3 倍台と安く見えるのは、稼ぐ力の弱さの裏返しにすぎない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、帳簿の安さが目を引くが、中身は苦しい。主力の顧客の製品が 10 年かけて消えていく事業を、少ない利ざやで回している。電動化という流れに逆らって泳ぐ会社だ。
オーナーの目で見ると、自己資本の大半が在庫、売掛金、株、工場に寝ており、そこから年に数億円しか稼げない。資本コストを大きく下回る稼ぎでは、資本を積むほど価値が目減りする。
経営は計画で変化を約束しているが、利益を 4 倍にする道筋は、本社の費用を削ることと新しい製品の立ち上げにかかっている。どちらも過去の実績では裏付けがない。筆者は、株を売って得た現金を還元に回すのは評価するが、事業の稼ぐ力が変わる兆しが見えるまで、安全域があるとは見ない。売却で表に出た資産の価値も、一度きりの話だ。
買う理由があるとすれば、資産の売却と還元がさらに進む場合だ。
何で稼ぐ会社か
事業は四つに分かれる。いちばん大きいのは商事部門で、売上 335 億円。日本製鉄の販売代理店である日鉄物産から特殊帯鋼や普通鋼を仕入れ、切断して部品メーカーに売る。利益は 4 億円で、利ざやは 1% 強だ。
二つ目は焼入鋼帯部門で、帯鋼を焼き入れして硬さを持たせ、ぜんまいやばねの材料にする。1943 年の創業はこの仕事から始まった。売上 16 億円で利益は 1.4 億円と、小さいが利ざやは厚い。三つ目は鈑金加工品部門で、売上 74 億円、利益 5 億円。部品の板金加工を受け持つ。四つ目は海外で、タイ、中国、ベトナム、インドネシア、メキシコの子会社が現地の日系部品メーカーに材料と加工品を売る。売上 58 億円で利益は 3 億円だ。
部門の利益を足すと 13 億円あるが、本社の費用が 9 億円近くかかり、全社の営業利益は 4.4 億円に縮む。主な顧客は第一金属、エクセディ、ジヤトコで、自動車の変速機とエンジンの回りに集中する。単体の売上の約 7 割が内燃機関の部品向けだ。
売上は鋼材の値段の上下で大きく動くので、利益の中身は量と利ざやで見る方がよい。
優良さと弱いところ
商社としての堀は浅い。特殊帯鋼は日本製鉄などの高炉が作り、モリテックはその流通の一部を担う。切断や在庫の機能はあるが、同じことができる鋼材の商社は多い。利ざやが 1% 強にとどまるのは、その表れだ。
強みは焼入れの技術と、変速機の部品メーカーとの長い付き合いにある。焼入鋼帯の利ざやは 8% を超え、ここは技術で稼げている。ただ規模が小さく、全社を支えるほどではない。
資本の効率は低い。過去 10 年の自己資本利益率の中央値は 2.2% で、赤字の年も 2 回ある。在庫と売掛金に資本が寝ており、会社も在庫の回転を 2 割縮める計画を立てた。本社の費用が部門の利益の 3 分の 2 を食う構造も重い。筆者は、この費用の重さを崩せるかが、計画の成否を決めると見る。
在庫を減らす計画は筋がよい。ただ、在庫は顧客への即納を支える役目もあり、減らしすぎれば注文を失う。その加減が経営の腕の見せ所になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
特殊帯鋼の需要は、自動車のエンジンと変速機の部品が支えてきた。ばね、ワッシャー、クラッチの板、ベルトの部品などだ。電気自動車ではこれらの多くが要らなくなる。国内の自動車生産は横ばいからやや減り、その中で内燃機関の部品の量は 10 年で 2〜3 割減るとみる。
電動化で生まれる需要もある。モーターの部品、電池の周りの金具、軽くて強い板金の部品だ。会社が「高付加価値製品」の売上を 4 年で 6 倍にすると掲げるのは、この入れ替えを狙ってのことだ。ただ、そこには部品の専業メーカーや大手の商社も入ってくる。
鋼材の値段は、中国の過剰な生産と輸出で天井を抑えられ、物価よりゆるやかに上がる。商社の利ざやは鋼材の値段の動きと在庫の評価で振れ、値上がりの局面では膨らみ、値下がりでは縮む。海外ではタイやメキシコの日系の部品メーカーが顧客で、現地の自動車生産と、日本の自動車会社のシェアの行方に左右される。
流通の側にも変化がある。高炉の会社は販売代理店の集約を進めており、中小の鋼材商社は統合や役割の見直しを迫られている。モリテックのように加工の機能を持つ商社は残りやすいが、交渉の力が強まるわけではない。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、2026 年 3 月期は普通配当に同額の特別配当を足し、総額 2.7 億円を払った。特別配当の原資は株の売却益だ。自社株買いの実績はほとんどない。
政策保有の株は減らしている。2026 年 3 月期は 2 銘柄を全部、1 銘柄を一部売り、8 億円強の現金を得た。投資有価証券はなお 30 億円ある。会社は持つ意味を資本コストに照らして検証するとしているが、減らす額の目標は示していない。
買われる可能性はある。PBR が低く、大株主に強い親会社がいないためだ。鋼材の流通の再編で、日鉄物産や大手の商社が取り込む筋は考えられる。ただ事業の稼ぎが薄いので、買い手が高い値段を払う理由も乏しい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
計画には中身がある。2030 年 3 月期に営業利益 18 億円、自己資本利益率 8% を掲げ、単体・国内のグループ・海外のそれぞれに額を割り振った。高付加価値の製品を 4 年で 6 倍にし、在庫の回転を 2 割縮める。在庫が減れば資本が軽くなり、自己資本利益率は同じ利益でも上がる。
海外はすでに伸びている。2026 年 3 月期の海外の利益は 3 倍以上に増えた。タイやメキシコの日系部品メーカーは現地の生産を増やしており、材料と加工をまとめて任せられる相手を求めている。
電動化でも鋼は要る。モーターの部品、電池の金具、車体の軽い板金と、形を変えて需要は残る。焼入れの技術はそこでも生きる。政策保有の株を売って特別配当にした姿勢も、資本の使い方が変わり始めた証拠だ。会社の帳簿の価値に比べて今の値段は大幅に安い。
本社の費用も、在庫の圧縮と仕事の見直しで削れる。部門の利益 13 億円がそのまま残れば、それだけで営業利益は今の 3 倍になる。
慎重な見方
計画は過去と比べて大きすぎる。営業利益 18 億円は、過去最高の 2018 年 3 月期の 10 億円を 8 割も上回る。この 10 年で営業利益が 10 億円を超えた年は一度もなく、赤字の年が 2 回ある。
主力の需要は確実に減る。単体の売上の約 7 割が内燃機関の部品向けで、会社自身が電動化で売上の 3 割以上を失う恐れがあると書いている。顧客のエクセディやジヤトコは、変速機そのものが要らなくなる流れの中にいる。新しい製品で埋めようにも、商社の利ざやは 1% 強しかない。
本社の費用も重い。部門の利益 13 億円のうち 9 億円近くを本社が食う。物価と賃金が上がれば、この費用は膨らむ。2026 年 3 月期の純利益 10 億円は株の売却益で、二度は使えない。
今の値段が帳簿より安いのは、その帳簿が稼いでいないからだ。在庫と工場は、電動化が進むほど価値が下がる。株を売って配当にするのは、一度きりの話にすぎない。
どちらに重みを置いたか
計画の方向は正しいが、過去の実績と電動化の逆風を見れば、慎重な見方の方が強い。確率は中立を厚くし、やや悲観を楽観側より厚くした。計画の達成は楽観の筋に一部だけ入れ、中立では営業利益が計画の 4 割ほどにとどまると見た。海外の利益の伸びは確かな材料で、やや楽観に 2 割を置いた。ただ本社の費用の重さは構造の問題で、計画の数字だけでは崩れない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 361 円81 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 85 円19 億円)。 今の値に割り戻すと 208 円47 億円、今との差 −22.8%、 期待の年率 +5.2%(資本コスト 9.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 825 円185 億円 | 166 円37 億円 | +268.3% | +13.9% | 79 円18 億円 |
| やや楽観 | 20% | 540 円121 億円 | 121 円27 億円 | +145.7% | +9.4% | 132 円30 億円 |
| 中立 | 37% | 353 円79 億円 | 88 円20 億円 | +63.9% | +5.1% | 163 円37 億円 |
| やや悲観 | 25% | 187 円42 億円 | 43 円10 億円 | −14.7% | −1.6% | 57 円13 億円 |
| 悲観 | 10% | 94 円21 億円 | 45 円10 億円 | −48.6% | −6.4% | 14 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 361 円81 億円 | 85 円19 億円 | +65.7% | +5.2% | 446 円100 億円 |
今の株価時価総額 269 円60 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 計画に近い利益を出し、資本も軽くなる 利益 17 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 825 円185 億円
電動車の部品で新しい製品が育ち、内燃機関の部品の減りをほぼ埋める。商事部門の販売量は 10 年で 5% 減にとどまり、在庫の回転が速くなって利ざやは 1.8% に上がる。
鈑金加工と海外が伸びる。タイとメキシコの日系部品メーカーが現地の生産を増やし、海外の量は 6 割増える。焼入れの技術は電動車のモーターの部品でも使われる。
本社の費用は物価ほど増えず、営業利益は 17 億円台と計画の水準に届く。純利益は 16 億円強で、自己資本利益率は 7% 台に上がる。それでも資本コストには届かない。
政策保有の株を売った現金は自社株買いに回り、資本も軽くなる。
- 商事部門(特殊帯鋼・普通鋼の販売):数量 12.7(鋼材の販売量(万トン・推定))× 価格 32(1万トンあたりの売上(億円)。鋼材の値段で動く)→ 売上 413 億円・営業利益 7 億円。数量0.95倍・価格1.30倍
- 焼入鋼帯部門:数量 100(加工量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.21(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 21 億円・営業利益 2 億円。数量1.00倍・価格1.34倍
- 鈑金加工品部門:数量 130(加工量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.99(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 128 億円・営業利益 10 億円。数量1.30倍・価格1.34倍
- 海外事業:数量 160(販売・加工量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.77(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 124 億円・営業利益 9 億円。数量1.60倍・価格1.34倍
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 185 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2030年3月期の計画(営業利益18億円)に近い水準まで届く筋。過去最高の10億円を大きく超えるので、確率は低く置く。
やや楽観 20% 海外と板金が伸び、利益は倍以上に 利益 11 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 540 円121 億円
内燃機関の部品の減りで、商事部門の販売量は 10 年で 1 割減る。電動車の部品と産業機械向けで一部を補い、利ざやは 1.6% に改善する。
海外は量が 45% 増え、鈑金加工も 2 割増える。日系の部品メーカーが材料と加工をまとめて任せる流れに乗る。在庫を減らした分で資本は軽くなる。
営業利益は 11 億円台と今の 2.5 倍になる。純利益は 11 億円前後で、配当は性向 3 割台を続ける。自己資本利益率は 5% 台に上がるが、資本コストとの差はまだ大きい。
株の売却で得た現金は配当と在庫の圧縮に使われ、借金は増えない。
- 商事部門(特殊帯鋼・普通鋼の販売):数量 12.1(鋼材の販売量(万トン・推定))× 価格 32(1万トンあたりの売上(億円)。鋼材の値段で動く)→ 売上 385 億円・営業利益 6 億円。数量0.90倍・価格1.28倍
- 焼入鋼帯部門:数量 95.0(加工量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.21(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 20 億円・営業利益 2 億円。数量0.95倍・価格1.32倍
- 鈑金加工品部門:数量 120(加工量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.97(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 117 億円・営業利益 8 億円。数量1.20倍・価格1.32倍
- 海外事業:数量 145(販売・加工量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.76(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 110 億円・営業利益 7 億円。数量1.45倍・価格1.32倍
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.1% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 121 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画の半分強が実現する筋。海外の利益が2026年3月期に3倍に伸びた実績があり、中立に次いで置く。
中立 37% 電動化の減りを新規で半分埋める 利益 7 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 353 円79 億円
エンジンと変速機の部品が減り、商事部門の販売量は 10 年で 15% 減る。鋼材の値段は中国の過剰な生産で物価よりゆるやかに上がり、利ざやは 1.4% と今より少し良くなる。
海外は量が 3 割、鈑金加工は 1 割増える。焼入鋼帯は電動化で量が少し減るが、利ざやは保つ。
本社の費用は物価と賃金で膨らみ、部門の利益の多くを食い続ける。営業利益は 7 億円前後と、計画の 4 割ほどにとどまる。純利益は 7 億円弱、自己資本利益率は 3% 台だ。政策保有の株の売却は続くが、ゆっくりだ。
配当は性向 3 割台で続き、資本は少しずつ積み上がる。
- 商事部門(特殊帯鋼・普通鋼の販売):数量 11.4(鋼材の販売量(万トン・推定))× 価格 31(1万トンあたりの売上(億円)。鋼材の値段で動く)→ 売上 356 億円・営業利益 5 億円。数量0.85倍・価格1.25倍
- 焼入鋼帯部門:数量 90.0(加工量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.21(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 19 億円・営業利益 2 億円。数量0.90倍・価格1.30倍
- 鈑金加工品部門:数量 110(加工量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.96(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 105 億円・営業利益 7 億円。数量1.10倍・価格1.30倍
- 海外事業:数量 130(販売・加工量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.75(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 98 億円・営業利益 5 億円。数量1.30倍・価格1.30倍
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.4% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 75 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:内燃機関の部品の減少を、電動車の部品と海外で半分ほど補う筋。過去10年の利益の水準と計画の差を見て、最も厚く置く。
やや悲観 25% 主力の需要が先に減り、利益がほぼ消える 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 187 円42 億円
電気自動車の比率が早く上がり、変速機とエンジンの部品の注文が減る。商事部門の販売量は 10 年で 4 分の 1 減り、焼入鋼帯も 2 割減る。
新しい製品は育つが、量の減りを埋めるには足りない。鈑金加工は横ばい、海外は 15% 増にとどまる。値上げは物価に届かない。
本社の費用が残り、営業利益はほぼゼロになる。赤字の年もはさむ。会社は株の売却で配当を保つが、事業の稼ぐ力はほとんど残らない。工場や拠点の整理の判断を迫られる。
在庫の評価損が出る年もあり、自己資本は少しずつ目減りする。計画の数字は途中で取り下げられる。
- 商事部門(特殊帯鋼・普通鋼の販売):数量 10.1(鋼材の販売量(万トン・推定))× 価格 30(1万トンあたりの売上(億円)。鋼材の値段で動く)→ 売上 306 億円・営業利益 4 億円。数量0.75倍・価格1.22倍
- 焼入鋼帯部門:数量 80.0(加工量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.20(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。数量0.80倍・価格1.25倍
- 鈑金加工品部門:数量 100(加工量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.92(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 92 億円・営業利益 5 億円。数量1.00倍・価格1.25倍
- 海外事業:数量 115(販売・加工量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.72(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 83 億円・営業利益 3 億円。数量1.15倍・価格1.25倍
倍率:純利益がほぼゼロでPERで測れないので、今の自己資本161億円にPBR 0.2倍を掛けた。稼ぐ力はほぼ無く、床は投資有価証券30億円の税後と在庫・工場の一部の換金価値(floor_assets_oku)。中立のPBRより低い。
確率:電動化が国内外で早く進み、会社の見込む3割の売上減が10年の中に収まる筋。顧客が変速機の会社に偏っており、楽観側より厚くした。
悲観 10% 内燃機関の需要が崩れ、赤字が定着 利益 −6 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 94 円21 億円
主な顧客の変速機の会社が事業を縮め、内燃機関の部品の発注は大きく減る。商事部門の販売量は 10 年で 4 割減り、利ざやは 0.6% まで縮む。焼入鋼帯も 3 分の 1 減る。
海外と板金も伸びず、本社の費用だけが残る。営業損失は年 6 億円ほどに広がり、赤字が定着する。
会社は政策保有の株と在庫を現金に換えて耐え、配当を細く続ける。減損と整理で自己資本は減り、少数株主に残るのは売れる資産の一部だけになる。
買い手が現れても、赤字の事業に高い値段はつかない。本社の費用を削る判断も遅れ、赤字の幅は縮まらない。
- 商事部門(特殊帯鋼・普通鋼の販売):数量 8.0(鋼材の販売量(万トン・推定))× 価格 29(1万トンあたりの売上(億円)。鋼材の値段で動く)→ 売上 237 億円・営業利益 1 億円。数量0.60倍・価格1.18倍
- 焼入鋼帯部門:数量 65.0(加工量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.19(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。数量0.65倍・価格1.20倍
- 鈑金加工品部門:数量 85.0(加工量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.88(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 75 億円・営業利益 2 億円。数量0.85倍・価格1.20倍
- 海外事業:数量 100(販売・加工量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.69(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 69 億円・営業利益 1 億円。数量1.00倍・価格1.20倍
倍率:赤字なのでPBR。今の自己資本161億円に0.13倍を掛け、投資有価証券30億円の税後約21億円(floor_assets_oku)に合わせた売れる資産の床。帳簿の自己資本は床にしない。
確率:電動化と顧客の再編が重なり、商事の量が4割減る構造的な負け筋。会社自身が3割以上の売上減を見込んでおり、1割を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
商事部門(特殊帯鋼・普通鋼の販売)
日鉄物産などから仕入れた特殊帯鋼・普通鋼を切断し、自動車部品メーカーなどに売る。
| 数量鋼材の販売量(万トン・推定) | 価格1万トンあたりの売上(億円)。鋼材の値段で動く | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 13.4 | 25 | 335 | 4 |
| 10 年後 中立 | 11.4 | 31 | 356 | 5 |
取り方:販売量の開示がないため、商事部門の売上334.62億円を特殊帯鋼の平均の売値約25万円/トン(推定)で割り、年約13.4万トンとした。
焼入鋼帯部門
帯鋼を焼き入れして、ぜんまい・ばねの材料にする。
| 数量加工量の指数(2026/03期=100、推定) | 価格指数1あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.16 | 16 | 1 |
| 10 年後 中立 | 90.0 | 0.21 | 19 | 2 |
取り方:売上15.99億円を100とした加工量の指数(推定)。トン数の開示がないため。
鈑金加工品部門
自動車・産業機械向けの部品の板金加工。
| 数量加工量の指数(2026/03期=100、推定) | 価格指数1あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.74 | 74 | 5 |
| 10 年後 中立 | 110 | 0.96 | 105 | 7 |
取り方:売上73.60億円を100とした加工量の指数(推定)。個数の開示がないため。
海外事業
タイ・中国・ベトナム・インドネシア・メキシコで日系部品メーカーに材料と加工品を売る。
| 数量販売・加工量の指数(2026/03期=100、推定) | 価格指数1あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.58 | 58 | 3 |
| 10 年後 中立 | 130 | 0.75 | 98 | 5 |
取り方:売上57.70億円を100とした指数(推定)。国別の数量の開示がないため。
リスクと懸念
自動車の電動化
単体の売上の約7割が内燃機関の部品向け。会社自身が電動化で売上の3割以上を失う恐れがあると書いている。新しい製品の立ち上げが遅れれば、量の減りがそのまま利益を削る。
顧客の偏り
主な顧客は第一金属・エクセディ・ジヤトコと、変速機とその部品の会社に偏る。これらの会社の事業の縮小や再編が、そのまま注文に響く。
仕入先への依存
鋼材は主に日本製鉄の販売代理店である日鉄物産から仕入れる。流通の再編で仕入れの条件や体制が変われば、商社としての役割が細る恐れがある。
本社費用の重さ
部門の利益の3分の2近くを本社の費用が食う。物価と賃金の上昇で費用が膨らめば、量が保てても全社の利益は増えない。
鋼材価格と在庫
中国の過剰な生産で鋼材の値段が下がる局面では、在庫の評価損で利ざやが縮む。2021年3月期と2023年3月期は赤字だった。
今後の分かれ目
- 高付加価値製品の売上が計画どおり伸びる
- 電動化の減りを補う道筋が見え、やや楽観の筋に近づく。
- 営業利益が2年続けて10億円を超える
- 本社の費用を崩せた証拠で、計画の実現性が高まる。
- 政策保有の株の売却で得た現金を自社株買いに回す
- 資本が軽くなり、自己資本利益率が上がる。
- 主要顧客の変速機の事業が縮小・売却される
- 注文が一気に減り、やや悲観の筋に寄る。
- 鋼材の流通の再編で大手が取り込みに来る
- 資産の価値が表に出るが、稼ぎが薄い分だけ値段は抑えられる。
見ておくもの
- 高付加価値製品の売上
- 海外事業の利益
- 全社の営業利益と本社費用
- 在庫回転期間
- 政策保有株の売却額と還元
倍率と資本コストの決め方
数量は鋼材の販売量(売上と平均の売値からの推定)と部門の売上からの指数で、内燃機関の部品の減少を当てた。価格は業種のノートどおり鋼材が物価よりゆるやかに上がるとした。ROEは全筋書きで資本コスト9%を下回るので、PERは1÷kを上限に割り引き、赤字に近い悲観側は今の自己資本×PBR(売れる資産の床)で置いた。PBR 0.3倍台という今の値付けや過去の倍率は使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→11.11 倍・やや楽観 PER 9→11.11 倍・中立 PER 8→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+1.75%で9.25%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 9.00%。