結論
イワブチは、電柱や信号機、通信線に取り付ける金具を作る会社だ。顧客は電力会社、NTTなどの通信会社、警察や自治体である。売上は135億円、自己資本比率は75%と、財務は極めて堅い。筆者の結論は、10年で見れば今の値段は割高というものだ。
2026年3月期は営業利益が前期の1.7倍に増え、営業利益率は10.8%と5年で最高になった。老朽化した電力設備の更新と、通信の工事が重なった。ただし、会社の今期予想では営業利益が3分の1ほど減るとされ、この水準は続かないとみる。
事業の質は悪くない。金具は小さな部品だが、電力会社の規格に合わせた承認が必要で、簡単には他社に代わられない。一方で、顧客は数社に偏り、値段は相手が決める面が強い。成長は物価の分が中心で、数量はほぼ横ばいである。
いちばんの課題は資本効率だ。自己資本の2割余りが現金で、ROEは5%に届かない。自社株買いと増配は進めているが、利益に比べて値段が高めに付いている。現金の厚さは安心材料でも、割安の根拠にはならない。
10年の見立てでは、数量は更新需要と防衛関連で少し増え、価格は物価並みに上がる。利益率は7%台半ばに戻る。それでも自己資本の厚さに対して利益が小さく、倍率を高く置ける会社ではない。現金は半分以上が事業に要る分なので、割安に見せる材料にはならない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、イワブチは「堅実だが、割安ではない会社」と映る。事業は電力や通信という社会の基盤に根ざし、規格に守られた小さな金具を作る。値上げは物価並みにできるが、それ以上は難しい。成長の力はあまり強くない。
資本の使い方は、悪くないが十分でもない。借金はなく、自己資本比率は75%。増配と自社株買いを続け、株主を意識していることは伝わる。ただ、ROEは5%に届かず、自己資本の2割余りが現金のままだ。会社が儲けたお金を事業に投じて、資本コストを超える利益を生み出せていない。
10年後に今より強いと言える材料は多くない。更新需要は続くが、無電柱化や顧客の調達効率化が逆風になりうる。2026年3月期の利益率10.8%は、素晴らしい数字に見えるが、会社自身が今期の減益を見込んでいる。この水準に高い倍率を払うのは危うい。
安全域は、現金の厚さにある。ただし、現金を除いた事業に払う値段が、利益に比べて高めに付いている。筆者は、この会社を持ち続けたいとは思うが、今の値段で買いたいとは思わない。
何で稼ぐ会社か
イワブチの仕事は、電柱や鉄塔に取り付ける金具を作ることだ。電線を支える腕金や、碍子を留める金具、コンクリートポールの付属品などである。単価は小さいが、強度や防錆に厳しい基準があり、電力会社の承認を得た製品だけが使える。
売上は需要の分野で分かれる。配電線路用が最大で、全体の3分の1ほどと推定する。次に、NTTなど通信会社向けの情報通信、交通信号や標識、学校の防球ネットの支持金具、CATVや防災無線用がある。その他に、鉄道用、工場内の配電、防衛関連の無線システム装置が含まれる。
製造の拠点は国内と中国にある。子会社のHOKUEI、協和興業、須田製作所が製造に加わり、中国には海陽岩淵金属製品を持つ。協和興業は2017年、須田製作所は2022年に取得した。販売は本体と協和興業が中心で、通信や防災には専門の販売会社がある。
開示は単一セグメントのため、4つの区分に分けた数字は筆者の推定である。従業員は連結で約430人と少なく、研究開発費は3億円台、設備投資は2億円台と、投資は小さい。経営は、既存の金具を「ジョイント事業」、新しい領域を「コネクト事業」と呼び、2024年度から資本収益性を重視する方針に切り替えた。
顧客との関係は長い。電力会社やNTTは、仕様書に沿って部材を指定し、承認を受けた会社から継続して買う。新規参入は、試験と実績づくりに年単位の時間がかかる。この仕組みが、小さな部品でも利益率を支えている。
優良さと弱いところ
強みは、規格と承認に守られた金具の事業を長く続けてきた点にある。電力会社や通信会社は、仕様に合う部材を決まった取引先から買う。品質に問題があれば停電や通信障害につながるため、実績のある会社が選ばれる。この切り替えにくさが、利益を安定させる土台だ。
国内の金具の市場にはシェアの公表がなく、競合は小規模なメーカーが多い。ただ、全国に取引網を持ち、電力、通信、信号、防災と顧客を分散していることは、1社への依存を避ける点で評価できる。
弱みは、値決めの力と規模である。買い手が電力会社や通信会社に偏り、相手が値段を決める面が強い。売上は130億円台で、従業員は約430人。大手の鉄構メーカーのような資金力はない。営業利益率は、2018年3月期に2.9%、2019年3月期に1.8%まで落ちた時期がある。
資本効率は低い。ROEは過去10年の中央値が3.6%で、資本コストを大きく下回る。自己資本の4分の1近くが現金で、使い道に乏しいことの表れでもある。ここ2年は自社株買いと増配を進めており、方向は正しい。変化が数字に表れるまでには時間がかかる。
経営の姿勢は、近年変わってきた。資本収益性の重視を掲げた2024年度以降、自社株買いの頻度が上がり、配当も増やした。株主に向き合う意思は読み取れるが、成果が利益率とROEに出るかが次の評価の焦点だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要の柱は、電力網の更新だ。1970年代の高度成長期に建てた電柱や設備が、更新の時期に入っている。2023年度から始まったレベニューキャップ制度は、電力会社の収入に上限を設ける代わりに、老朽設備の更新費用を認める。配電設備の更新工事が増え、金具の需要を押し上げている。
通信は、光ネットワークの工事と、携帯キャリアの基地局工事が中心だ。基地局の投資には山と谷があり、工事が一巡すると需要が減る。信号や標識は、警察庁の要請に応じた更新が続く。学校体育施設や防災無線は、自治体の予算に左右される。
逆風もある。国は2026年度から5年間で約1,000kmの無電柱化を目指す。電線を地中に埋めれば、電柱の金具は要らなくなる。もっとも、全国の電柱は数千万本規模で、5年で1,000kmの進み方なら、影響は小さい。地震や台風に備えた強靭化の工事は、むしろ金具の需要を支える。
防衛関連の無線システムは、防衛費の増加を背景に伸びる分野だ。ただ、全体に占める比率は小さい。
競合は、鉄塔や金具を作る中小メーカーが多く、価格競争は穏やかだ。素材は鋼材と亜鉛で、中国の鋼材輸出が価格を抑える。売値に同じ圧力がかかるため、利益率を物価で押し上げる余地は限られる。
2028年度から始まるレベニューキャップの次の期間で、電力会社の調達費への効率化要求が強まるかが、業界全体の焦点になる。
新しい需要の芽は、再生可能エネルギーだ。太陽光や風力の発電所は送電網への接続設備を要し、その金具や支持物の需要が生まれる。ただ、現時点で金具メーカーの売上に占める比率は小さい。
資本政策と M&A
還元は、増配と自社株買いの両輪で進んでいる。配当性向は3割台半ばで、自己資本に対する配当率は1.5%だ。自社株買いは、2025年に約2.8億円、2026年に約1.9億円と続き、2026年8月にも市場外で買い付けた。自己株式は貸借対照表で約4億円ある。純利益に対する総還元は5割台に乗る。
株式の流動性は低い。発行済みは約110万株、株主は955人で、取引先持株会が11%、米国の証券会社が9%、住友商事が5%、財団法人が4.5%を持つ。取引先持株会と従業員持株会は、安定株主として機能している。
買収は、2017年に協和興業、2022年に須田製作所を取得した。いずれも小規模で、金具の製造と防衛関連の無線に事業を広げた。今後も、金具の周辺での小さな買収が中心になるとみる。大型の買収で現金を使う可能性は低いが、小さくても外れれば資本効率はさらに下がる。
TOBの可能性は、kabufuの推定で10年に2割ほどだ。自己資本比率が75%と高く、現金が厚い会社は、買い手から見て取り込みやすい。ただ、取引先持株会や財団法人の持株が多く、買収には説得が要る。
資本コストを意識した経営を2024年度から掲げており、今後の還元の厚みが、現金の評価を左右する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
老朽設備の更新は、10年単位で続く。1970年代に建てた配電設備が寿命を迎え、電力会社は更新を急いでいる。レベニューキャップで更新費用が認められ、金具の需要は底堅い。通信は光ネットワークの工事が広がり、防災無線や信号の更新も続く。
防衛費の増加は、新しい追い風だ。須田製作所が持つ防衛関連の無線システムは、需要が伸びる分野で、利益率も高い。コネクト事業で新しい領域を広げれば、金具の単価を上げられる。
2026年3月期に営業利益率が10.8%に達したことは、会社の実力を示している。値上げが通り、生産性も改善した。この水準を保てるなら、利益は10年で倍近くになる。
資本面でも改善余地がある。資本収益性を重視する方針のもと、自社株買いと増配を続ければ、ROEは上がる。現金が厚く、借金がないため、還元を厚くする余裕は大きい。流動性が低く、買い手がつきやすい面もあり、TOBが出れば株価は大きく動く。
海外にも余地がある。中国の子会社は製造拠点にとどまるが、東南アジアの電力網整備に合わせて販路を広げれば、売上は大きく変わる。新しい領域を広げる方針も、地道に積み上げれば10年で別の柱になりうる。
慎重な見方
2026年3月期の利益率10.8%は、一時的な山だと考えるべきだ。会社自身が今期の営業利益を3分の1ほど減らす予想を出している。基地局工事や更新工事が重なった結果で、これが続く保証はない。過去には、利益率が2%を割った年もある。
電力会社はレベニューキャップのもとで、調達費の効率化を求められる。2028年度からの次の期間で、金具の価格が抑えられる可能性がある。通信も、基地局投資が一巡すれば工事が減る。無電柱化が広がれば、電柱の金具そのものが要らなくなる。
顧客は数社に偏り、値段は相手が決める。値上げは物価並みが限度で、鋼材や亜鉛の高騰を転嫁するのが遅れる局面もある。海外に頼れる成長もない。
資本効率の低さは長年の課題だ。ROEは過去10年の中央値で3.6%。現金が厚いのは、使い道に困っていることの裏返しでもある。自社株買いは評価できるが、小さな規模では全体のROEを動かせない。現金を除いた事業に高い倍率を払うのは危うい。
最後に、流動性の低さも見逃せない。発行済みは約110万株と少なく、買い手が限られる。需給の悪化は、株価を事業の価値より大きく下げる。
どちらに重みを置いたか
2026年3月期の高い利益率は続かない、という慎重な見方のほうが筋が通っている。会社自身が減益を予想している点は、強気の論拠を弱める。一方で、更新需要の追い風と、現金の厚さ、増配と自社株買いの継続は、強気の見方の確かな根拠である。
中立は、利益率を直近の山から7%台半ばまで戻し、数量は配電と防衛関連でわずかに増やす形とした。確率は、顧客の偏りと資本効率の低さを重く見て、悲観の側をやや厚くした。余った現金は、還元の実績があるので帳簿どおりに数えた。その結果、値段には安全域がないという判断になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 13,490 円139 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 5,144 円53 億円)。 今の値に割り戻すと 9,387 円96 億円、今との差 −36.4%、 期待の年率 +2.4%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 21,091 円217 億円 | 7,251 円75 億円 | +91.9% | +6.7% | 2,834 円29 億円 |
| やや楽観 | 22% | 17,091 円176 億円 | 6,161 円63 億円 | +57.4% | +4.6% | 5,115 円53 億円 |
| 中立 | 38% | 14,803 円152 億円 | 5,411 円56 億円 | +36.9% | +3.2% | 7,682 円79 億円 |
| やや悲観 | 22% | 6,947 円71 億円 | 3,698 円38 億円 | −27.9% | −3.2% | 2,342 円24 億円 |
| 悲観 | 8% | 5,840 円60 億円 | 2,414 円25 億円 | −44.1% | −5.7% | 660 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 13,490 円139 億円 | 5,144 円53 億円 | +26.2% | +2.4% | 18,633 円191 億円 |
今の株価時価総額 14,770 円152 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 更新需要と防衛関連が重なり利益が伸びる 利益 16 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 21,091 円217 億円
老朽設備の更新が10年続き、配電向けの出荷が15%増える。電力会社は更新を急ぎ、金具の価格も物価を上回って通る。通信は光ネットワークの工事が堅調で、数量が1割増える。
防衛関連の無線システムは、防衛費の増加に乗って大きく伸びる。その他の区分の数量は3分の1増え、利益率も高い。信号・標識は人口減で数量が減るが、更新の予算が下支えする。
営業利益率は10%台に乗り、直近の山を維持する。余った現金は自社株買いと増配で戻り、ROEは資本コストを上回る。値決めの力が一段と強まった姿で、うまくいった10年である。
コネクト事業の新製品が金具の単価を押し上げ、顧客との関係もさらに深くなる。
- 配電線路用の金具:数量 7.2(出荷量(千トン、推定))× 価格 98(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 71 億円・営業利益 8 億円。更新需要で出荷15%増
- 情報通信用の金具:数量 4.5(出荷量(千トン、推定))× 価格 92(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 41 億円・営業利益 5 億円。通信工事が堅調
- 信号・標識・CATV・防災・学校施設:数量 3.6(出荷量(千トン、推定))× 価格 98(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 35 億円・営業利益 3 億円。信号は数量減も更新で下支え
- その他(鉄道・工場内配電・防衛関連の無線):数量 4.3(出荷量換算(千トン、推定))× 価格 160(1トンあたり単価(万円、推定。システム装置を含むため高い))→ 売上 69 億円・営業利益 8 億円。防衛関連が伸びる
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 217 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:配電の更新と防衛関連の無線が伸び、値上げも物価を上回って通る筋書き。2026年3月期の実績はあるが、会社自身が減益を予想しているため1割とした。
やや楽観 22% 更新需要が続き利益率が高めに保たれる 利益 13 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 17,091 円176 億円
配電向けは更新需要が続き、数量が1割増える。価格は物価をわずかに上回る。通信は光ネットワークの工事が続き、基地局の山はならされる。
防衛関連の無線が伸び、その他の区分の数量は3割近く増える。信号・標識は更新がつなぎ、数量はやや減る。営業利益率は8%台半ばに乗り、直近の山には届かない。
自社株買いと増配は続くが、現金は完全には戻らない。ROEは5%台にとどまり、資本コストには届かない。堅実な成長が続くが、突き抜けはしない10年である。
小さな買収で金具の周辺を広げ、利益に少し寄与する。
電力会社との関係は変わらず、更新工事が一定のペースで続く。配電の出荷の増加は、設備の寿命から来る確かな需要である。
- 配電線路用の金具:数量 6.9(出荷量(千トン、推定))× 価格 96(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 67 億円・営業利益 6 億円。更新需要で1割増
- 情報通信用の金具:数量 4.3(出荷量(千トン、推定))× 価格 90(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 39 億円・営業利益 4 億円。光工事が続く
- 信号・標識・CATV・防災・学校施設:数量 3.5(出荷量(千トン、推定))× 価格 96(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 34 億円・営業利益 2 億円。防衛関連が伸びる
- その他(鉄道・工場内配電・防衛関連の無線):数量 4.1(出荷量換算(千トン、推定))× 価格 156(1トンあたり単価(万円、推定。システム装置を含むため高い))→ 売上 64 億円・営業利益 6 億円。更新がつなぐ
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 176 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:更新需要が続き、利益率が直近の山の手前で保たれる筋書き。更新と防衛の追い風は具体的だが、電力会社の調達効率化もあり、2割強とした。
中立 38% 更新需要は続くが利益率は平均へ戻る 利益 11 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 14,803 円152 億円
配電向けは更新需要で数量が8%増える。価格は物価並みに上がり、売上は4割強の増加になる。通信は基地局の山が引いた後も光ネットワークの工事が続き、数量は横ばいに収まる。
信号・標識は人口減とデジタル化で数量が1割弱減る。その他の区分は防衛関連の無線で数量が2割増える。全体の売上は10年で4割強増える。
営業利益率は7.6%で、直近の山より低く、過去10年の平均よりは高い。更新と防衛関連の追い風の分だけ、平均を上回る。本社費と販管費は物価で増え、減価償却は設備が小さく影響が小さい。還元は総額で純利益の55%ほどを続け、ROEは資本コストを下回り続ける。現金を抱える構造は変わらない。
2028年度からの規制期間の調達効率化は、一部の価格に出るが、全体を揺るがすほどではない。
- 配電線路用の金具:数量 6.8(出荷量(千トン、推定))× 価格 94(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 64 億円・営業利益 5 億円。更新需要で8%増
- 情報通信用の金具:数量 4.1(出荷量(千トン、推定))× 価格 90(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 37 億円・営業利益 3 億円。横ばい
- 信号・標識・CATV・防災・学校施設:数量 3.5(出荷量(千トン、推定))× 価格 96(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 34 億円・営業利益 2 億円。人口減で減
- その他(鉄道・工場内配電・防衛関連の無線):数量 3.8(出荷量換算(千トン、推定))× 価格 153(1トンあたり単価(万円、推定。システム装置を含むため高い))→ 売上 59 億円・営業利益 5 億円。防衛関連で2割増
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.7% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 152 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:配電の更新と防衛関連でわずかに数量が増え、価格は物価並み、利益率は直近の山から平均へ戻る。最も普通の姿として4割弱を置いた。
やや悲観 22% 調達効率化で利益率が低下する 利益 6 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 6,947 円71 億円
2028年度からの規制期間で、電力会社が調達費の効率化を強める。金具の価格は物価に追いつかず、10年で2割台後半の上昇にとどまる。配電向けの数量は横ばいである。
通信は基地局の工事が一巡し、数量が1割減る。信号・標識も数量が減り、防衛関連の無線は伸びるが全体を支えるには小さい。
営業利益率は5%に近づき、2023年3月期の谷に近づく。還元は純利益の半分ほどに下がる。ROEは2%台で、資本コストを大きく下回る。現金だけが積み上がり、事業の稼ぐ力は弱い。電力会社の都合で利益が決まる構造が表に出る10年である。
小さな買収で補おうとしても、外れれば資本効率はさらに下がる。
- 配電線路用の金具:数量 6.2(出荷量(千トン、推定))× 価格 90(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 55 億円・営業利益 3 億円。価格が物価に追いつかず
- 情報通信用の金具:数量 3.7(出荷量(千トン、推定))× 価格 84(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 31 億円・営業利益 2 億円。基地局が一巡して減
- 信号・標識・CATV・防災・学校施設:数量 3.2(出荷量(千トン、推定))× 価格 90(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 29 億円・営業利益 1 億円。数量減
- その他(鉄道・工場内配電・防衛関連の無線):数量 3.2(出荷量換算(千トン、推定))× 価格 146(1トンあたり単価(万円、推定。システム装置を含むため高い))→ 売上 47 億円・営業利益 3 億円。防衛関連は小さい
倍率:ROE 2.4%は資本コスト 8.5% を大きく下回る。式の正当化 PER は 5.6 倍。調達効率化で利益が圧縮される筋書きなので、やや悲観は 8.5 倍に置いた(稼ぐ力は純利益÷k の約12.9倍が上限)。余った現金は谷で食うとして 0.75 倍で数えた。
確率:次期レベニューキャップで調達効率化が強まり、通信工事も一巡する筋書き。会社自身が今期の減益を予想しており、悪化の方向は具体的だ。2割強を置いた。
悲観 8% 顧客の集約と地中化で構造的に縮む 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 5,840 円60 億円
電力会社が調達先を絞り、価格競争が厳しくなる。無電柱化が加速し、配電の金具の数量が15%減る。通信の無線化も進み、光ネットワークの工事が減る。
防衛関連の無線も思うように伸びず、固定費の重い国内の拠点と人員を縮められない。営業利益率は2%前後に落ち、利益はほぼ消える。
もう優良な会社ではなくなっている。それでも、純現金と工場・在庫の売却価値が下値を支える。清算されない限り、少数株主に現金の使い道を決める力はない。
配当は半分になり、自社株買いは止まる。事業の整理と人員の削減に費用がかかる。
流動性が低い株式は、悪い知らせが出ると売りが続きやすい。買い手が限られるため、事業の価値より安い値段で放置される。
- 配電線路用の金具:数量 5.4(出荷量(千トン、推定))× 価格 84(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 45 億円・営業利益 1 億円。配電が15%減
- 情報通信用の金具:数量 3.1(出荷量(千トン、推定))× 価格 77(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。無線化で減
- 信号・標識・CATV・防災・学校施設:数量 2.7(出荷量(千トン、推定))× 価格 82(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 22 億円・営業利益 0 億円。地中化と集約で減
- その他(鉄道・工場内配電・防衛関連の無線):数量 2.6(出荷量換算(千トン、推定))× 価格 137(1トンあたり単価(万円、推定。システム装置を含むため高い))→ 売上 35 億円・営業利益 1 億円。伸びない
倍率:事業の稼ぐ力はほぼ無く(純利益は 2 億円に届かない)、帳簿の自己資本でなく純現金と売れる資産で測る。今の自己資本 204 億円に 0.29 倍を掛けた 60 億円。
確率:電力会社の調達集約、無電柱化の加速、通信の無線化が重なり、金具の需要が構造的に縮む筋書き。流動性も低く、8%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
配電線路用の金具
電力会社向けの配電線路用装柱用品とコンクリートポール用品。
| 数量出荷量(千トン、推定) | 価格1トンあたり単価(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.3 | 70 | 44 | 5 |
| 10 年後 中立 | 6.8 | 94 | 64 | 5 |
取り方:開示は単一セグメント。需要分野別の売上(開示の並びから読み取った推定)で配電線路用を約44億円とし、1トンあたり約70万円で出荷量を推定。利益は筆者の配分。
情報通信用の金具
NTTなど通信会社向けの通信線路用装柱用品。光ネットワークと基地局工事に連動。
| 数量出荷量(千トン、推定) | 価格1トンあたり単価(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.1 | 67 | 28 | 4 |
| 10 年後 中立 | 4.1 | 90 | 37 | 3 |
取り方:情報通信向けの売上約27億円を、1トンあたり約67万円で割って出荷量を推定した。利益は筆者の配分。
信号・標識・CATV・防災・学校施設
交通信号・道路標識の装柱用品、CATV・防災行政無線用、学校の防球ネット支持金具。
| 数量出荷量(千トン、推定) | 価格1トンあたり単価(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.8 | 72 | 27 | 2 |
| 10 年後 中立 | 3.5 | 96 | 34 | 2 |
取り方:信号・標識(約17億円)とCATV・防災(約10億円)を合わせた約27億円を、1トンあたり約72万円で割って推定。利益率は低めに配分。
その他(鉄道・工場内配電・防衛関連の無線)
鉄道用装柱用品、工場内の配電線路用品、防衛関連の無線システム装置。
| 数量出荷量換算(千トン、推定) | 価格1トンあたり単価(万円、推定。システム装置を含むため高い) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.2 | 114 | 37 | 4 |
| 10 年後 中立 | 3.8 | 153 | 59 | 5 |
取り方:その他の区分の売上約36億円を、システム装置を含む高めの単価(1トンあたり約114万円)で割った換算量。利益は筆者の配分。
リスクと懸念
利益率の山からの反動
2026年3月期の営業利益率10.8%は5年で最高で、会社の今期予想は営業利益が3分の1ほど減る。老朽設備の更新と基地局工事が重なった山と見る。過去には2%を割った年もあり、振れの大きさは無視できない。
電力会社の調達効率化
レベニューキャップのもとで、電力会社は調達費の効率化を求められる。2028年度からの次の期間で、金具の価格に圧力がかかる可能性がある。買い手が少数のため、値下げ要求は直接利益に響く。
顧客の偏りと価格交渉力
売上は電力会社、通信会社、警察・自治体に偏る。大口の発注先が調達先を絞れば、売上と稼働率が同時に落ちる。上位顧客の比率は開示されず、確認できない。
無電柱化と通信の無線化
国は2026年度から5年で約1,000kmの無電柱化を目指す。電線を地中に埋めれば電柱の金具は不要になる。通信の無線化も長期では逆風になる。短期の影響は小さいが、10年を超えると効いてくる。
資材高と転嫁の遅れ
金具の素材は鋼材と亜鉛で、相場が上がれば原価が増える。契約の改定には時間がかかり、転嫁が遅れると利益が削られる。中国の鋼材輸出が価格を抑える局面では、売値にも同じ圧力がかかる。
現金の戻り方と資本効率
自己資本の2割余りが現金で、ROEは5%に届かない。自社株買いは続けているが、規模は小さい。方針が変わるか、買収に使われれば、現金の価値は帳簿ほどにならない。
株式の流動性の低さ
発行済みは約110万株、株主は955人と少ない。買い手が限られ、株価が大きく振れやすい。大株主が売れば、需給が悪化するおそれもある。
今後の分かれ目
- 2028年度からの次期レベニューキャップで調達効率化が強まる
- 配電向けの金具の価格に圧力がかかり、利益率が5%台に落ちる。やや悲観の筋書きの確率が上がる。
- 老朽設備の更新が加速し、数量が増える
- 配電の出荷が1割以上増え、利益率が高水準で定着する。強気の筋書きに近づく。
- 防衛関連の無線システムの受注が拡大する
- 高い利益率の売上が増え、全社の利益率を押し上げる。ただし比率が小さく、効果は限定的。
- 自社株買いや増配が大きく拡大する
- 現金の戻り方が改善し、ROEが上がる。現金の評価を引き上げられる。
- 基地局や光ネットワークの工事が一巡する
- 通信向けの出荷が減り、利益率が低下する。2019年3月期のような谷に近づく。
- TOBが発表される
- 現金が厚く、買い手には取り込みやすい。ただし取引先持株会などの同意が要り、実現は簡単でない。
見ておくもの
- 営業利益率(8%を保てるか)
- 次期レベニューキャップの調達効率化の内容
- 配電向けの出荷と更新工事の量
- 通信(基地局・光)の工事量
- 自社株買いと配当性向
- 防衛関連の無線システムの受注
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。資本コスト8.5%、成長4%、ROEから正当化PERを求め、中立は上限の8.5割に置いた。ROEが資本コストを下回るため、式の倍率は低く出る。今の株価やPERは使っていない。悲観の床は、過去のPBRの底ではなく、純現金と売れる資産の見立てから出した。結果は割高の側に出たが、これはROEが低く、利益の水準に比べて自己資本が厚いことが主因である。今の株価を見て決めたのではない。余った現金は戻り方1.0で数え、自社株買いを続ける実績を根拠にした。会計基準の形は、今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.58→11.76 倍・やや楽観 PER 8.84→11.76 倍・中立 PER 7.66→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.25% を足して 7.75%。事業が傾いている様子はなく extra は 0。顧客の偏りと無電柱化は k に足さず、数量・価格・利益率と確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 8.50%。