結論
ワイズホールディングスは、京都のねじメーカー「ヤマシナ」を中核とする持株会社だ。自動車と家電向けのねじ・精密ばねが売上の3分の2を占め、化成品、電子部品、不動産賃貸が加わる。筆者の結論は、今の値段は10年の見通しに対して割高というものだ。
財務は堅い。自己資本比率は65%で、現金は約40億円、借入を引いた純現金は22億円ある。ただ稼ぐ力は薄い。営業利益率は4%台で、純利益は4億円にとどまり、ROEは3%台だ。
時価総額は自己資本の0.9倍で、一見すると割安に見える。だが利益を生まない資産は、帳簿の額ほどの価値をもたない。10年後の中立の姿は、売上160億円、営業利益6億円。ROEは3%台のままで、資本コストに届かない。
VTホールディングスが3割強を持つ筆頭株主だが、狙いは開示から読み取れず、今回は価値に織り込まない。
見る価値があるのは、財務の安全性と、賃貸不動産という地味だが安定した収益だ。ただし、それだけでは株主の取り分は増えない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は堅いが、眠っている。純現金22億円と賃貸不動産を持ちながら、株主に返せる利益が薄い。
価値は帳簿の厚みでなく、稼ぐ力で決まる。純利益は4億円、ROEは3%台で、資本コストの半分にも届かない。ためた現金は、使われなければ額面の半分ほどの価値しかない。
救いは財務だ。倒産の危険はほとんどなく、安全域は大きい。ただし、安全は割安を意味しない。
10年先の中立の姿は、売上160億円、純利益5億円。この利益を資本コストで割り引くと、今の時価総額の半分に届かない。筆者は、この会社の価値を事業より資産で見ている。
配当や自社株買いで現金を戻す意思が見えない限り、筆者は帳簿の資産を満額で評価しない。現金は戻して初めて株主のものになる。
それでも持つ理由があるとすれば、資産の下値の堅さに限られる。
何で稼ぐ会社か
事業は5つに分かれる。売上の約65%が金属製品だ。ヤマシナが十字穴付きねじを自動車・家電・産業機器向けに作り、プレス加工品や精密ばね部品も手がける。十字穴付きねじを国産化した老舗で、創業は1917年だ。
売上の約18%が化成品で、精密ばねのLADVIKが担う。約14%が電子部品で、三陽工業が電線・ケーブルを作り、ヤマヤエレクトロニクスが半導体・電子部品の仕入れ販売をする。後者は2023年に買った。
ほかに不動産賃貸と太陽光発電がある。売上は2%強だが、不動産賃貸の利益率は約49%と高く、利益の2割近くを稼ぐ。
海外はタイにねじの工場をもつ。2026年7月には、そのタイの子会社をグループ内でヤマシナの傘下に移した。連結の範囲は変わらない。
親会社の単体の従業員は4人で、実務は子会社が担う。連結では約440人だ。2024年10月の持株会社化は、会社側が意思決定を速めるためと説明している。
金属製品の顧客は自動車・家電のメーカーとその部品会社で、特定の1社に偏らない。ねじは小さな部品だが、1台に使う本数が多い。
優良さと弱いところ
一言でいえば、堅実だが、強みと呼べるものが薄い。
ねじは規格品に近く、自動車や家電の部品として価格競争にさらされる。値段を決めるのは買い手だ。十字穴付きねじを日本で最初に作った歴史と、精密ばねの技術はあるが、他社がまねできない強みとまでは言えない。
利益率は4〜5%台で、過去の最高でも6%台後半だ。過去10年のROEの中央値は3%台で、資本コストを一度も超えていない。
救いは財務の堅さだ。自己資本比率は65%、純現金は22億円。不況で赤字になった年は、過去20年で1回しかない。借りて伸ばすより、貯めて待つ経営といえる。
経営は、買収と持株会社化で動き始めたが、成果はまだ数字に出ていない。不動産賃貸の利益率の高さは目を引くが、規模が小さい。
一方で、小さな会社ならではの機動力はある。意思決定が速く、必要な設備だけを更新する身軽さが、過去の少ない赤字につながっている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ねじの需要は、自動車と家電の生産量で決まる。日本の自動車生産は横ばいから緩やかな減少、家電も人口に連動して頭打ちだ。筆者は、10年の数量を5%減とみる。
電動化の影響は二重にある。エンジン関連の小さなねじは減るが、電池やモーターの周りで使うねじと精密ばねは増える。差し引きは小さく、数量の増減を決めるほどではない。
ねじの価格は鋼材の値段で動き、顧客の原価低減の要請も強い。物価が3%上がる世界でも、納入価格は物価に届かないことが多い。タイや中国のメーカーとの価格競争もある。
電子部品の商社は、半導体の景気に左右される。成長市場ではあるが、同社の規模は小さく、取り扱い品目で差をつけにくい。
化成品は、精密ばねと同じ会社が扱う。自動車の電装向けなどの需要は底堅いが、売上の2割弱にとどまる。
業界では、小さな会社の再編が進む流れもある。ワイズHDは買い手にも売り手にもなりうる。
この点で、筆者は規模の小ささを弱みよりも身軽さとして見る。ただし、それが利益率の改善につながるかは別の話だ。
タイの拠点は、日系の自動車メーカーの現地調達に応える足場になる。
資本政策と M&A
資本政策は慎重だ。現金は5年で約3倍に増え、借入を引いても22億円の純現金がある。配当は純利益の3分の1ほどで、自社株買いの実績は見当たらない。使い道を決めかねている姿が見える。
買収は小ぶりだ。精密ばねのLADVIK(2014年)、半導体商社のヤマヤエレクトロニクス(2023年)がある。ただし電子部品が営業利益に占める割合は5%ほどで、成果は限られる。
筆頭株主はVTホールディングスで、持株比率は3割強。ワイズHDはVTの持分法適用の関連会社でもある。出資の経緯と狙いは確認できていない。この関係が価値を動かすとは置かない。
株主優待のポイント制度があるが、費用は開示から確認できず、規模も小さい。価値の計算には入れない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
数量が減っても、利益率は上がる。ねじとばねは、自動車の電動化で使う場所が変わるだけで、需要がなくなるわけではない。電池やモーター周りの精密部品は付加価値が高く、LADVIKの精密ばねが伸びる。
不動産賃貸は利益率が約49%、太陽光も17%と高い。この安定収益が、景気の変動の下支えになる。現金は40億円、借入17億円を引いた純現金は22億円で、買収の弾薬も十分にある。小ぶりでも、利益率の高い会社を買えば、利益は一気に増える。
VTホールディングスが3割強を持つことは、将来の資本提携や再編の余地を示している。
10年の上の姿は、売上190億円、営業利益10億円。営業利益率は5%台で、ROEは5%近くまで上がる。時価総額が自己資本を下回っていることも、下値の堅さを示す。
また、純現金を使った自社株買いが始まれば、1株あたりの価値は大きく動く。経営がその選択をする可能性は、残っている。
配当の増額や自社株買いの発表が出れば、現金の戻り方の評価は一段上がる。
慎重な見方
数量は減り、値段は物価に届かない。ねじは規格品に近く、顧客の原価低減の要請は毎年続く。タイや中国のメーカーが安い値段で追い上げる。営業利益率は4%台が山で、過去の最高でも6%台後半にとどまる。
電子部品の商社は営業利益率が2%台と低く、半導体の景気で振れる。買収した事業が、利益に十分つながっていない。
現金の積み上がりは、強みというより、使い道がないことの裏返しだ。配当は純利益の3分の1ほどで、自社株買いもない。VTホールディングスが筆頭株主でも、少数株主に利益を返す動きは見えない。
ROEが3%台の会社は、資本コストに届かない。資産が帳簿にあるだけでは、株主の価値は増えない。10年の中立の営業利益6億円では、時価総額に見合う利益は出ない。
結局、積み上がった現金が使われないままなら、時価総額が自己資本を下回る状態は、市場の正しい評価だ。
電動化でエンジン周りのねじが減る分を、新しい分野で埋められる保証はない。
どちらに重みを置いたか
強気の根拠は、財務の堅さと買収の余地だ。慎重な見方の根拠は、長く続いた3%台のROEという実績だ。後者のほうが重い。中立を37%に置き、上下の配分は慎重な側に厚くした。最も強気の筋書きでも、ROEは資本コストに届かない。そのため強気側の合計は20%にとどめた。
慎重な側が正しければ、悲観の筋書きでは稼ぐ力が消え、残るのは純現金の戻り分と賃貸不動産の価値だけになる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 43 円58 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 11 円14 億円)。 今の値に割り戻すと 27 円36 億円、今との差 −65.1%、 期待の年率 −3.5%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 84 円112 億円 | 21 円28 億円 | +36.4% | +3.2% | 5 円7 億円 |
| やや楽観 | 15% | 68 円91 億円 | 16 円22 億円 | +9.8% | +0.9% | 13 円17 億円 |
| 中立 | 37% | 57 円77 億円 | 13 円17 億円 | −9.0% | −0.9% | 26 円35 億円 |
| やや悲観 | 28% | 20 円26 億円 | 7 円10 億円 | −64.7% | −9.9% | 8 円10 億円 |
| 悲観 | 15% | 15 円20 億円 | 2 円3 億円 | −77.2% | −13.7% | 3 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 43 円58 億円 | 11 円14 億円 | −29.7% | −3.5% | 54 円72 億円 |
今の株価時価総額 77 円103 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 5% 電動化向けの精密部品が伸び、買収も当たる 利益 8 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 84 円112 億円
自動車の電動化で、電池やモーター周りの精密ばねとねじが伸び、金属製品の数量が5%増える。化成品と電子部品も成長市場の恩恵を受け、売上は190億円まで育つ。
営業利益率は金属製品で6%に改善する。不動産賃貸と太陽光は安定収益として続く。
VTホールディングスとの連携や小ぶりな買収が当たり、利益が増える。営業利益は10億円、純利益は7億円。配当は純利益の4割に増える。ROEは5%近くで、資本コストには届かない。現金は買収と配当に使われ、一部は事業に戻る。
創業100年を超える老舗の技術が、新しい分野で再評価される。
- 金属製品(ねじ・ばね・プレス):数量 105(金属製品の数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 1.11(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 116 億円・営業利益 7 億円。金属製品 営業利益率6.0%
- 化成品:数量 120(化成品の数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.31(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 38 億円・営業利益 2 億円。化成品 営業利益率6.5%
- 電子部品:数量 140(電子部品の数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.23(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 33 億円・営業利益 1 億円。電子部品 営業利益率3.5%
- 不動産・太陽光・その他:数量 100(賃貸・太陽光・その他の数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.05(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。不動産・ 営業利益率50.0%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)26 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 112 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:精密部品の伸び、買収の成功、現金の活用がそろう筋書き。低収益が長く続いた実績を踏まえ、5%にとどめた。
やや楽観 15% 数量は横ばい、利益率が少し上がる 利益 6 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 68 円91 億円
金属製品の数量は横ばいを保ち、鋼材の値上がりを価格に転嫁する力が少し戻る。電子部品の商社は半導体の伸びに乗る。
営業利益率は金属製品で5%台、全体で4.5%となる。売上は180億円、営業利益は8億円、純利益は5.7億円。
配当は純利益の3分の1を保つ。現金は積み上がるが、使い道は決まらない。ROEは4%近くで、資本コストを下回る。
不動産賃貸と太陽光の収益は、変わらず下支えを続ける。電動化で増える精密部品の取り込みも、小さな追い風になる。
10年後も事業の規模は小さく、大きく姿を変えることはない。
- 金属製品(ねじ・ばね・プレス):数量 100(金属製品の数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 1.09(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 109 億円・営業利益 6 億円。金属製品 営業利益率5.2%
- 化成品:数量 110(化成品の数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.31(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 35 億円・営業利益 2 億円。化成品 営業利益率5.5%
- 電子部品:数量 125(電子部品の数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.23(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 29 億円・営業利益 1 億円。電子部品 営業利益率2.8%
- 不動産・太陽光・その他:数量 100(賃貸・太陽光・その他の数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.04(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。不動産・ 営業利益率45.0%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.8% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)26 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 91 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は横ばいで、鋼材の転嫁が進み利益率が少し上がる筋書き。足元の営業利益は4%台後半で、実現しやすいので15%に置いた。
中立 37% 中立:数量は小さく減り、値段は物価に届かない 利益 5 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 57 円77 億円
自動車と家電の生産が緩やかに減り、金属製品の数量は5%減る。値段は鋼材の転嫁を含めても物価に届かない。化成品は横ばい、電子部品は半導体の伸びで少し増える。
営業利益率は金属製品で4.5%、全体で4.0%となる。売上は160億円、営業利益は6億円、純利益は4.6億円。
配当は純利益の3分の1ほどを保ち、自社株買いはしない。現金は積み上がり、買収に使われても成果は小さい。ROEは3%台で、資本コストを下回る。
不動産賃貸と太陽光の利益は横ばいで、全体の利益の下支えを続ける。
自己資本比率は引き続き60%台を保ち、財務の安全性は揺らがない。
- 金属製品(ねじ・ばね・プレス):数量 95.0(金属製品の数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 1.08(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 102 億円・営業利益 5 億円。金属製品 営業利益率4.5%
- 化成品:数量 100(化成品の数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.31(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 31 億円・営業利益 2 億円。化成品 営業利益率5.0%
- 電子部品:数量 110(電子部品の数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.22(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 25 億円・営業利益 1 億円。電子部品 営業利益率2.3%
- 不動産・太陽光・その他:数量 100(賃貸・太陽光・その他の数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.04(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。不動産・ 営業利益率45.0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.8% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)25 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 76 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:最も重みを置く筋書き。ただし長く続いた低収益を踏まえ、確率は慎重な側に厚く配分した。
やや悲観 28% 値決めが崩れ、買収が成果を生まない 利益 3 億円 · PER 7.2 倍 · 株価時価総額 20 円26 億円
顧客の原価低減の要請が強まり、金属製品の価格は物価に届かない。数量も自動車と家電の生産減で1割以上減る。電子部品は利益がほぼ出ない。
営業利益率は金属製品で3%、全体で2.4%にとどまる。売上は145億円、営業利益は3億円、純利益は2.3億円。
配当は減らされる。現金は残るが、使い道がなく、買収に使えば失敗する。ROEは2%に満たない。
不動産賃貸と太陽光の利益だけが、全体の利益を支える形になる。
それでも自己資本比率は高く、赤字には陥らない。
VTホールディングスの持株比率は変わらず、経営の方向も大きくは動かない。小さな会社が静かに細っていく10年だ。
- 金属製品(ねじ・ばね・プレス):数量 88.0(金属製品の数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 1.03(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 91 億円・営業利益 3 億円。金属製品 営業利益率3.0%
- 化成品:数量 95.0(化成品の数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.29(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。化成品 営業利益率4.0%
- 電子部品:数量 100(電子部品の数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.21(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 21 億円・営業利益 0 億円。電子部品 営業利益率1.0%
- 不動産・太陽光・その他:数量 110(賃貸・太陽光・その他の数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.04(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。不動産・ 営業利益率40.0%
倍率:事業のROE 1.9%は k 8.25%を大きく下回る(上限 1÷k = 11.8 倍)。構造的に利益率が低いので、上限の 7 割に満たない 7.2 倍に置いた。余った現金は谷で食われるとして 0.75 倍にした。
確率:顧客の原価低減と海外メーカーの追い上げで利益率が下がる筋書き。過去の低い利益率に近いので28%に置いた。
悲観 15% 価格競争に負け、買収も失敗する 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 15 円20 億円
タイや中国のメーカーに価格で負け、金属製品の数量が3割減る。電子部品は赤字になり、買収した事業の減損も出る。
営業利益は赤字に沈み、純利益は0.4億円の赤字になる。配当はほぼなくなる。
純現金は残るが、事業の価値が低く、少数株主に戻る額は限られる。残る価値は、賃貸不動産と太陽光の資産と、純現金の戻り分が中心になる。
売上は約105億円まで減り、自己資本は減損で100億円まで減る。
それでも財務は直ちに行き詰まらず、整理しながら存続する。
筆頭株主のVTホールディングスが持株を手放せば、需給は悪化する。買い手が現れて再編が進めば、現金が評価される余地もあるが、ここでは置かない。
- 金属製品(ねじ・ばね・プレス):数量 70.0(金属製品の数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.95(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 67 億円・営業利益 0 億円。金属製品 営業利益率0.5%
- 化成品:数量 80.0(化成品の数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.28(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 23 億円・営業利益 0 億円。化成品 営業利益率1.0%
- 電子部品:数量 70.0(電子部品の数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.18(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。電子部品 営業利益率-2.0%
- 不動産・太陽光・その他:数量 100(賃貸・太陽光・その他の数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.04(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。不動産・ 営業利益率30.0%
倍率:赤字の筋書きなので、稼ぐ力でなく売れる資産で測る。純現金の戻り分と賃貸不動産・太陽光の税引き後の価値から整理費用を引いた約 20 億円を床とし、今の自己資本 120 億円の 0.17 倍(約 20 億円)に置いた。EV÷営業利益は営業利益が赤字で意味を失う。
確率:価格競争と買収の失敗が重なる筋書き。自己資本比率が高く不況でも赤字になりにくいので、15%にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
金属製品(ねじ・ばね・プレス)
ねじ・プレス加工品・精密ばね部品。自動車・家電・産業機器向け。
| 数量金属製品の数量指数(2026/03期=100、推定) | 価格指数1あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.83 | 83 | 4 |
| 10 年後 中立 | 95.0 | 1.08 | 102 | 5 |
取り方:金属製品の売上は約83億円、利益は4.1億円(開示)。数量は自動車・家電の生産に連動するため中立は0.95倍と推定。価格は鋼材の転嫁を含めても顧客の原価低減で物価に届かず1.30倍。
化成品
精密ばねメーカーLADVIKが担う化成品の販売。
| 数量化成品の数量指数(2026/03期=100、推定) | 価格指数1あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.23 | 23 | 1 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.31 | 31 | 2 |
取り方:化成品の売上は約23億円、利益は1.2億円(開示)。需要は底堅く数量は横ばいの1.0倍と推定。価格は原料の転嫁で物価並みの1.34倍。
電子部品
電線・ケーブルの製造販売と、半導体・電子部品の仕入れ販売。
| 数量電子部品の数量指数(2026/03期=100、推定) | 価格指数1あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.18 | 18 | 0 |
| 10 年後 中立 | 110 | 0.22 | 25 | 1 |
取り方:電子部品の売上は約18億円、利益は0.4億円(開示)。半導体市場の伸びで数量は1.1倍と推定。商社の販売価格は電子部品の値下がりで物価に届かず1.25倍。
不動産・太陽光・その他
不動産賃貸、太陽光発電の売電、その他。
| 数量賃貸・太陽光・その他の数量指数(2026/03期=100、推定) | 価格指数1あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.04 | 4 | 2 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.04 | 4 | 2 |
取り方:不動産賃貸約2.5億円・太陽光約0.7億円・その他約0.5億円の合計約3.7億円で、利益は約1.9億円(開示)。太陽光の売電価格は固定のため数量は横ばいの1.0倍、価格は賃料の改定が遅れて物価に届かず1.20倍。
リスクと懸念
金属製品の値決め
ねじは規格品に近く、顧客の原価低減の要請が毎年続く。タイや中国のメーカーが追い上げ、物価が上がっても値段が上がりにくい。
自動車・家電の生産減
売上の3分の2が自動車と家電向けだ。国内の生産が減れば、数量と固定費の回収に直接響く。
資本の使い道
純現金22億円を持ちながら、配当は純利益の3分の1、自社株買いはない。買収に使っても成果が出ていない。
電子部品商社の薄利
電子部品の利益率は2%台で、半導体の景気に左右される。買収した事業が利益の柱になる保証はない。
大株主の意図が不明
VTホールディングスが3割強を持つが、出資の狙いは開示から確認できない。再編や持株の売却が起きれば、需給に影響する。
今後の分かれ目
- 金属製品の営業利益率が6%を超えて定着したら
- 中立の利益率を上げ、強気側へ確率を移す。
- 自社株買いや増配など、現金の還元を厚くしたら
- 余った現金の戻り方を上げる。
- VTホールディングスが持株を増やす、または買収・非公開化の話が出たら
- 再編の筋書きを見直す。
- 電子部品や買収した事業で減損が出たら
- 悲観側の確率を上げる。
- 主要顧客の生産計画が大きく下がったら
- 数量を下げ、やや悲観側へ確率を移す。
見ておくもの
- 金属製品の営業利益率と電子部品の利益
- 純現金の推移と還元の変化
- VTホールディングスの持株比率の動き
- 自動車・家電向けの生産動向
- 不動産賃貸・太陽光の利益
倍率と資本コストの決め方
倍率は式の上限(ROEが k を下回るので 1÷k = 11.8 倍)の 6.1〜8.2 割に置いた。市場の PER・PBR は使っていない。時価総額が自己資本の0.9倍でも、稼ぐ力が資本コストに届かないので割安の根拠にしていない。余った現金は戻り方0.5で足し、中立より上の筋書きは、利益の残りが現金として積み上がるとして余った現金を筋書きごとに置いた。悲観側は戻り分と賃貸不動産の価値から床を置いた。新リース会計基準で BS の形が変わるが、数字は今と同じ形(家賃を営業費用に含める形)でそろえた。結果は今の時価総額より低く出たが、計算を株価に寄せる調整はしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.6→12.12 倍・やや楽観 PER 9.2→12.12 倍・中立 PER 8.8→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% を足した 8.5%。大株主の狙いが不明な点は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.25%。