結論
特殊電極は、製鉄所やセメント工場の機械がすり減った所に、硬い金属を溶かし盛って直す会社だ。この「肉盛溶接」の工事が売上の 4 分の 3 を占め、残りは溶接の材料と工場の装置だ。日本製鉄と JFE スチールの 2 社で売上の 4 分の 1 になる。
筆者の結論は「やや割高」だ。技術は本物で、顧客の製鉄所に長く入り込んでいる。だが顧客の国内の生産は 10 年で 1〜2 割縮む。ROE(自己資本で稼ぐ力)は 5〜6% で、株主の求める利回りに届かない。
会社は 2030/03 期に ROE 8% 超を掲げた。値上げが通り、熟練の溶接を外に任せる流れを取り切れば、届かない目標ではない。だが今の値段は、その達成をかなりの程度まで先に織り込んでいる。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を 1 割ほど下回る。2026 年 7 月には、株の 4 分の 1 を持っていた光通信のグループが全株を手放した。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、特殊電極は「よい職人の会社だが、市場が縮む中にいる」会社だ。肉盛溶接の技術と顧客との長い取引は本物で、10 年後も製鉄所の補修の現場にこの会社はいるだろう。設備を大きく持たない工事の事業なので、稼いだ利益の多くは手元に残る。
だがオーナーとして見ると、伸びしろが限られる。顧客の国内の製鉄所は減り、残る製鉄所も値段に厳しい。ROE は 5〜6% で、株主の求める利回りに届かない。会社自身が資本コストを 10% 近くと見ているのは誠実だが、目標の 8% でもまだ届かない。
株価は帳簿の自己資本の 5 割強だ。値上げが通り、外注の広がりとインドで数量を補えれば、今の値段は妥当になる。会社を丸ごと買うつもりで見ても、払う値段に見合う伸びは楽観の側にしか無い。筆者は、その筋書きはありうるが、安全域を取れるほどの確かさは無いと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は工事だ。製鉄所の圧延ロールや、セメント工場の粉砕機、焼結のシュートなど、硬い原料にこすられてすり減る部分に、特別な合金を溶かして盛り付ける。新品に替えるより安く、寿命も延びる。売上は 81 億円で、部門の利益は 11 億円と会社の稼ぎのほとんどを生む。
工事のやり方は職人の仕事に近い。顧客の工場に人を送り込み、設備が止まる定期修理の短い間に作業を終える。どの合金をどう盛れば長持ちするかは、50 年以上の現場の記録が支える。顧客は日本製鉄・JFE スチールのほか、セメント・自動車・石油化学の工場だ。上位 10 社で売上の半分になる。
残りは溶接の材料と装置だ。フラックス入りのワイヤーや、耐摩耗のクラッド鋼板「トッププレート」を売る。環境の装置では、金型の冷却・加熱や AGV の搬送ラインを作る。海外ではタイと中国に拠点を持ち、2026 年 6 月にはインドに子会社を作ると決めた。従業員は連結で 268 人と小さな会社だ。工事の現場の多くは協力会社の職人が支えており、その確保が事業の天井を決める。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みはある。肉盛溶接は、合金の配合と盛り方の勘所に長い経験が要る。顧客の定期修理の短い期間に確実に終える段取りも、何十年の取引で積み上げた信頼だ。顧客はよほどの失敗が無い限り業者を替えない。
ただし、その堀は顧客の数に縛られる。売上の 4 分の 1 が日本製鉄と JFE の 2 社に集まり、国内の製鉄所が減れば工事の総量も減る。値段の交渉でも、大手の製鉄会社の力は強い。過去 12 年の営業利益率は 1.7〜8.3% で、平均は 6% 前後だ。
財務は堅い。自己資本比率は 66% で、借金より現金が少し多い。経営は「資本コストや株価を意識した経営」の開示で、株主資本コストを 10% 近くと見ていると率直に書いた。自らの稼ぐ力の弱さを認めている点は評価できる。あとは目標を数字で達成できるかだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の鉄鋼は縮む局面にある。2025 年度の粗鋼生産は 8,033 万トンと、1968 年度以来の低さに落ちた。高炉の休止と設備の集約が続き、10 年でさらに 1〜2 割縮むというのが業界の共通の見立てだ。セメントも国内の建設の減少で生産が細り、火力発電の補修の需要も脱炭素で消えていく。
それでも補修の需要は、生産量ほどには減らない。残った製鉄所の設備は古く、ロールや粉砕機の交換と補修の頻度はむしろ上がる。製鉄所は熟練の溶接工を自前で抱えにくくなり、補修を外に任せる流れが強まる。特殊電極にとっては、顧客の数が減る逆風と、外注が増える追い風が同時に吹く。
海外では、インドと東南アジアの製鉄所の新設が続く。インドの粗鋼生産は 10 年で大きく伸びる見通しで、補修の市場も育つ。ただ現地の業者は安く、日本の技術の高さがどこまで値段に乗るかは未知数だ。耐摩耗の部材では、セラミックスや超硬の新しい素材が溶接の代わりになる場面も増えている。補修の市場で勝つのは、素材と工事の両方を提案できる会社になるだろう。
資本政策と M&A
還元は DOE(自己資本に対する配当の割合)2% を目処にした安定配当だ。2026/03 期は年 1.6 億円を配り、純利益の 3 分の 1 強に当たる。自社株買いはしていない。
株主の構成は 2026 年 7 月に大きく変わった。2024 年から 4 分の 1 を持っていた光通信のグループが、全株を手放した。会社はそれまで光通信を「その他の関係会社」としていた。
会社は 2026 年 7 月、2030/03 期に ROE 8% 超・PBR 0.8 倍超を目標に掲げた。M&A は小さな装置の会社を取り込む程度で、大きな買収の話は無い。インドの子会社は、自前で海外を広げる最初の大きな一歩になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
肉盛溶接は、まねのできない技術だ。合金の配合と盛り方の勘所は、50 年以上の現場の記録が支える。顧客の定期修理の短い期間に確実に作業を終える段取りは、新しい業者には難しい。だから顧客はよほどのことが無い限り業者を替えない。
国内の製鉄所が減っても、補修の需要は生産量ほどには減らない。残った設備は古くなり、補修の頻度はむしろ上がる。製鉄所は熟練の溶接工を自前で抱えにくくなり、工事を外に任せる流れが強まる。特殊電極はその受け皿の筆頭だ。
インドの子会社は大きな上積みになりうる。インドの製鉄所は新設が続き、補修の市場も育つ。会社は 2030/03 期に ROE 8% 超を掲げ、資本コストを意識した経営に舵を切った。光通信のグループが株を手放して重しが外れ、還元の強化も期待できる。値上げが通れば、利益率は 2020/03 期の 8% 台に戻る。借金はほとんど無く、谷が来ても会社が揺らぐ心配は小さい。
慎重な見方
顧客が縮む。売上の 4 分の 1 が日本製鉄と JFE の 2 社で、両社は国内の高炉を休止し続けている。セメントの工場も減り、火力発電の補修は脱炭素で消える。補修の頻度が上がっても、工場そのものが無くなれば需要は消える。
値段の力も弱い。大手の製鉄会社は補修の費用にも厳しく、人件費と外注費の上昇を工事の値段に乗せるのに時間がかかる。会社自身が、原料と外注費の高騰で利益率が下がったと認めている。2027/03 期の会社の予想も減益で、営業利益は 4.5 億円に落ちる見込みだ。
ROE は 5〜6% で、会社が自ら見積もった資本コストの 10% 近くに遠い。目標の 8% に届いても、まだ資本コストの下だ。インドの子会社は始まったばかりで、現地の業者は安い。耐摩耗の部材では、セラミックスや超硬の新しい素材が溶接の代わりになる場面も増えている。光通信のグループが株を手放したのも、この会社の伸びに見切りをつけた表れかもしれない。
どちらに重みを置いたか
両者の言い分は拮抗するが、慎重な見方がやや強い。補修の外注が増える流れは本物だが、顧客の国内の製鉄所が減る力のほうが確かだ。確率は中立に厚く、やや楽観にも 2 割強を置いた。強気の見方が言う技術の堀は認めつつ、ROE が資本コストを超える筋書きは楽観だけに残した。悲観の側は、高炉の休止の速さを見て 3 割を置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,407 円70 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,026 円16 億円)。 今の値に割り戻すと 2,796 円44 億円、今との差 +7.6%、 期待の年率 +7.7%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 9,707 円154 億円 | 1,389 円22 億円 | +326.9% | +15.6% | 888 円14 億円 |
| やや楽観 | 22% | 6,842 円108 億円 | 1,262 円20 億円 | +211.8% | +12.0% | 1,783 円28 億円 |
| 中立 | 40% | 4,633 円73 億円 | 1,136 円18 億円 | +122.0% | +8.3% | 2,308 円37 億円 |
| やや悲観 | 20% | 1,138 円18 億円 | 757 円12 億円 | −27.1% | −3.1% | 379 円6 億円 |
| 悲観 | 10% | 442 円7 億円 | 316 円5 億円 | −70.9% | −11.6% | 76 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,407 円70 億円 | 1,026 円16 億円 | +109.0% | +7.7% | 5,433 円86 億円 |
今の株価時価総額 2,599 円41 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 熟練の溶接を外に任せる流れを取り切る 利益 11 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 9,707 円154 億円
製鉄所とセメント工場では、ベテランの溶接工の引退が続き、ロールや粉砕機の補修を自前で回せなくなる。特殊電極は肉盛溶接の工事を丸ごと請け負い、国内の高炉の休止で減る数量を外注の広がりで上回る。新しく作ったインドの子会社は、伸びるインドの製鉄所の補修を取り、タイと中国の拠点も育つ。溶接材料とトッププレートは国内外で数量が 3 割増える。営業利益は 15 億円近くになり、ROE は会社の目標の 8% に届く。資本コストとほぼ並ぶ水準で、帳簿の自己資本に近い値が付いてよい会社になる。配当も DOE 2% のまま膨らみ、株主の取り分は利益に沿って増える。
- 工事施工(肉盛溶接):数量 4,676(工事の件数(件・年、推定))× 価格 0.03(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 129 億円・営業利益 19 億円。4,676 件 × 0.0276 億円、利益率 15%
- 溶接材料・装置・その他:数量 2,730(受注の件数(件・年、推定。材料は出荷の口数))× 価格 0.02(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 52 億円・営業利益 6 億円。2,730 件 × 0.0189 億円、利益率 12%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍。全体の PER 13.44 倍、時価総額 154 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:製鉄所やセメント工場が熟練の溶接工を自前で抱えられなくなり、外注が一気に広がる筋書き。工事の利益率 15% は過去の山に近く、低く置いた。
やや楽観 22% 値上げが通り、資本効率の目標に近づく 利益 8 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 6,842 円108 億円
国内の鉄鋼の生産は少しずつ減るが、設備の老朽化で補修の工事はむしろ増える。特殊電極は人件費と外注費の上昇を工事の値段に乗せ、利益率を取り戻す。溶接材料と環境の装置は、自動車のダイカストの部品や AGV の搬送ラインで数量を伸ばす。インドの子会社は小さく黒字になる。営業利益は 11 億円ほどで、ROE は 6〜7% と会社の目標の 8% に近づくが、届き切らない。配当は DOE 2% に沿って増え、手元の現金も少しずつ厚くなる。資本コストとの差はまだ残るが、10 年前より確かに縮む。株の値打ちは、利益の伸びに沿って素直に上がる。
- 工事施工(肉盛溶接):数量 4,188(工事の件数(件・年、推定))× 価格 0.03(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 114 億円・営業利益 17 億円。4,188 件 × 0.0272 億円、利益率 14.5%
- 溶接材料・装置・その他:数量 2,415(受注の件数(件・年、推定。材料は出荷の口数))× 価格 0.02(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 45 億円・営業利益 5 億円。2,415 件 × 0.0188 億円、利益率 11%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 108 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2020/03 期と 2023/03 期に営業利益率 8.3% を出した実績があり、外注費と人件費の値上げが通れば届く範囲。
中立 40% 鉄鋼の縮みを補修の需要で埋める 利益 6 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 4,633 円73 億円
国内の高炉と電炉は設備を集約し、工場の数は減る。だが残った設備は古くなり、ロールやシュートの補修の頻度は上がる。特殊電極の工事の件数は 10 年で 5% ほど減るにとどまり、値段は物価並みに上がる。工事の利益率は 13.5% と今より少し下がり、本社の人件費も物価で膨らむ。営業利益は 7 億円ほどで、ROE は 5% 前後だ。配当は DOE 2% で着実に増えるが、資本コストには届かない。インドの子会社は小さく育つが、全社の利益を動かすほどではない。技術は残り、会社も残るが、株主の取り分の伸びは物価をわずかに上回る程度だ。
- 工事施工(肉盛溶接):数量 3,863(工事の件数(件・年、推定))× 価格 0.03(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 104 億円・営業利益 14 億円。3,863 件 × 0.0268 億円(物価並み)、利益率 13.5%
- 溶接材料・装置・その他:数量 2,100(受注の件数(件・年、推定。材料は出荷の口数))× 価格 0.02(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 39 億円・営業利益 4 億円。2,100 件 × 0.0186 億円、利益率 10%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.1% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 73 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の粗鋼生産が 10 年で 1〜2 割縮むという鉄鋼の前提に、外注の広がりとインドの小さな上積みを合わせた中心の筋書き。
やや悲観 20% 高炉の休止が重なり、工事が細る 利益 2 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,138 円18 億円
国内の高炉の休止が想定より速く進み、日本製鉄と JFE スチールの補修の発注が 2 割減る。セメントの工場も統廃合が続く。人件費と外注費の上昇を値段に乗せきれず、工事の利益率は 12% に下がる。本社の費用は減らせず、全社の営業利益は 2.5 億円ほどに沈む。配当は DOE を守るが、利益を上回る年も出る。インドの子会社は赤字を抜けられない。会社が掲げた ROE 8% の目標は遠のき、資本の効率は 2% 前後に沈む。株の値打ちは、細い稼ぐ力と手元の現金に支えられる形になる。光通信が去った後の株主も、還元の強化を強くは求めない。
- 工事施工(肉盛溶接):数量 3,253(工事の件数(件・年、推定))× 価格 0.03(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 85 億円・営業利益 10 億円。3,253 件 × 0.026 億円、利益率 12%
- 溶接材料・装置・その他:数量 1,800(受注の件数(件・年、推定。材料は出荷の口数))× 価格 0.02(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 33 億円・営業利益 3 億円。1,800 件 × 0.0181 億円、利益率 8%
倍率:ROE 2% 前後で k を大きく下回る。価値は稼ぐ力(純利益÷k)までで、1÷k の 6.6 割の 8.0 倍。床の資産 7 億円をやや上回る。
確率:2013〜2014 年のように営業利益率 2% 前後の年が続く筋書き。日本製鉄と JFE の高炉休止が想定より速い場合。
悲観 10% 製鉄所の縮小と技術の置き換えで赤字に落ちる 利益 −6 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 442 円7 億円
国内の高炉は半分近くに減り、残った製鉄所も補修を海外の安い業者や自社の機械化に切り替える。耐摩耗の部材は、セラミックスや超硬の新しい素材に置き換わり、肉盛溶接の出番が減る。火力発電の補修の需要も消える。工事の件数は 3 分の 2 に縮み、本社と工場の固定費が重くのしかかる。営業損益は赤字に落ち、設備の減損で自己資本が 8 億円ほど削られる。配当は大きく減る。会社は手元の現金で持ちこたえるが、職人の集団を保つ固定費が重い。株の値打ちは、手元の現金と売れる資産の範囲まで落ちる。職人の技術は残っても、それを買う顧客がいなくなる。
- 工事施工(肉盛溶接):数量 2,643(工事の件数(件・年、推定))× 価格 0.03(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 66 億円・営業利益 4 億円。2,643 件 × 0.025 億円(物価に追いつかない)、利益率 6%
- 溶接材料・装置・その他:数量 1,575(受注の件数(件・年、推定。材料は出荷の口数))× 価格 0.02(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。1,575 件 × 0.0174 億円、利益率 2%
倍率:赤字なので PBR で今の自己資本 78 億円に掛ける。稼ぐ力は無く、価値は床の資産(純現金・政策保有株の税後・貸駐車場の土地)の 7 億円まで。
確率:国内の高炉が大きく減り、耐摩耗の部材が溶接なしの新素材や海外の安い部材に置き換わる構造的な負けの筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
工事施工(肉盛溶接)
製鉄所・セメント工場などの摩耗した部品に耐摩耗の合金を溶接で盛る補修の工事。
| 数量工事の件数(件・年、推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,066 | 0.02 | 81 | 11 |
| 10 年後 中立 | 3,863 | 0.03 | 104 | 14 |
取り方:件数の開示は無い。ロール・粉砕機・シュートの補修 1 件あたりの平均を 0.02 億円と見て、売上 81.3 億円から年約 4,000 件と推定(推定)。数量は実質、物価は単価に入れる。部門の利益は本社費の前。
溶接材料・装置・その他
フラックス入りワイヤー、トッププレート、金型の冷却・加熱装置、AGV 搬送ライン、ダイカスト部品。
| 数量受注の件数(件・年、推定。材料は出荷の口数) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,000 | 0.01 | 28 | 3 |
| 10 年後 中立 | 2,100 | 0.02 | 39 | 4 |
取り方:溶接材料 13.8 億円・環境関連装置 6.7 億円・その他 7.3 億円の合計を、平均 0.014 億円の受注が年約 2,000 件と推定(推定)。部門の利益は本社費の前。
リスクと懸念
国内の高炉の休止
売上の 4 分の 1 が日本製鉄と JFE スチールの 2 社だ。高炉の休止が想定より速ければ、補修の工事の件数が大きく減る。
人件費と外注費の上昇
工事は人の仕事で、溶接工と協力会社の費用が上がり続ける。値段に乗せるまでの間、利益率が削られる。2027/03 期の会社の予想も減益だ。
熟練の溶接工の確保
肉盛溶接の腕は一朝一夕には育たない。若い溶接工が集まらなければ、外注の広がりという追い風も取り込めない。
素材の置き換え
セラミックスや超硬の新しい耐摩耗の素材が広がれば、溶接で直す場面が減る。技術の転換の速さは読みにくい。
仕入れ先への依存
溶接材料の一部はニツコー熔材工業に、混合粉末は昭和 KDE に作ってもらっている。供給が止まれば工事と材料の両方に響く。
海外の立ち上げ
インドの子会社は始まったばかりで、現地の業者は安い。赤字が長引けば、小さな会社の利益を食う。
今後の分かれ目
- 工事の値上げが通り、営業利益率が 8% に戻る
- やや楽観の確率を上げる。
- 日本製鉄か JFE が高炉の追加の休止を発表する
- 工事の件数の見通しを悲観の側へ寄せる。
- インドの子会社が 3 年で黒字になる
- 海外の数量の伸びを楽観の側で見直す。
- 自社株買いや増配で ROE 8% の目標へ動く
- 資本の効率が上がる筋書きの確率を上げる。
- 新しい大株主が経営に関わる
- 資本政策の変化を見て、還元の見通しを見直す。
見ておくもの
- 国内の粗鋼生産と高炉の休止の発表
- 工事施工の部門の利益率
- インドの子会社の受注
- ROE 8% 目標の進み具合
- 新しい大株主の顔ぶれ
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価と PBR 0.52 倍を見ずに決めた。楽観を除く筋書きで ROE は k 7.75% を下回るので、PER は 1÷k=12.1 倍を上限に ROE÷k に沿って 6.6〜9.5 割に置いた。楽観は ROE が k をわずかに上回るが、式の値 12.2 倍の 9.4 割の 11.5 倍にとどめた。会社が自ら示した PBR の目標を倍率の根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→13.44 倍・やや楽観 PER 10.8→12.9 倍・中立 PER 9.7→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 0.75%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.75%。