結論
トーアミは、コンクリートの中に入れる溶接金網と鉄筋の加工品を作り、型枠の工事も請け負う大阪の会社だ。売上は184億円あるが、純利益は2億円に届かない。
筆者の結論は割高だ。自己資本は110億円と時価総額の3倍あり、一見すると安い。しかしROEは過去10年の中央値で1%強しかない。資本コストに遠く届かない稼ぎに、帳簿どおりの値段は付かない。
本業の溶接金網は、線材を仕入れて加工する汎用品だ。鋼材の値段と建設の数量に振り回され、利益は売上の1〜3%しか残らない。会社は型枠工事の会社を次々と買い、職人を抱える工事の側に重心を移しつつある。人手不足の時代に職人を持つことは強みだが、利益率はまだ低い。
借入は41億円あり、金利が上がれば利払いが利益を削る。10年後の中立の時価総額は30億円台とみる。土地と政策保有株の厚さを価値に数えたい人には安く見えるが、筆者は稼ぐ力にしか安全域を見ない。今期の増益見通しが2期続くかどうかが、最初の試金石になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、帳簿の厚さに惑わされてはいけない会社だ。
自己資本110億円のうち43億円は工場の土地で、事業を続ける限り現金にならない。政策保有株は取引の関係を保つためのもので、売る方針は無い。株主にとっての価値は、事業が毎年いくら稼ぐかで決まる。
その稼ぎが年2億円前後だ。資本コストを9%近くとすると、その値打ちは20億円台にとどまる。オーナー利益、つまり設備の維持に要る投資を引いた自由な現金は、溶接機の更新と買収でさらに細る。
10年後も事業は残る。建物にはコンクリートが要り、コンクリートには金網が要る。ただ汎用品で値決めの力が無く、鋼材の相場に利益を左右される。型枠工事の買収は筋が良いが、利益率はまだ低い。
筆者は、この会社を持ち続けたいとは思わない。安全域は土地の厚さではなく稼ぐ力で測るべきで、その目で見ると今の値段に余裕は無い。
何で稼ぐ会社か
トーアミは1950年代に溶接金網の製造から始まった。事業は土木建築用資材と土木・建築工事の2つに分かれる。
土木建築用資材は売上の4分の3を占める。中身は棒線加工品、つまり溶接金網と鉄筋の加工品だ。溶接金網は細い鉄線を格子に溶接したもので、建物の床や壁、道路、コンクリートの二次製品の中に入れて強度を出す。メッシュフェンスや、イノシシやシカを防ぐ獣害用の金網も作る。2026年3月期は売上140億円、セグメント利益5.9億円だった。大型の建築の着工が延びて出荷は減ったが、製品ごとの値ざやを確保して利益は増えた。
土木・建築工事は売上の4分の1だ。型枠大工の工事を柱に、コンクリート工事、造成、舗装、外構を手がける。2025年にエアード、2026年にアラキヂ工務店を買い、売上は47億円と2割強伸びた。利益は1.2億円である。
2026年10月には、主要な仕入先の1つで建設資材の販売と工事を営むテクノを9.5億円で買った。ベトナムには持分50%の合弁会社がある。連結の従業員は406人だ。
資材と工事の2つを持つことで、金網を納めた現場の型枠まで請け負える。これが会社の描く姿である。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは薄い。
溶接金網は線材を仕入れて溶接するだけの汎用品で、技術の差は小さい。競合は全国に中小のメーカーが多く、鋼材の商社も扱う。値段は主材料の線材の相場で決まり、転嫁が遅れると利益はすぐ消える。過去12年で営業赤字が4期あったことが、その弱さを物語る。
強みを挙げるなら、全国の工場網と、工事の会社を抱えて材料から施工までを一括で請け負える点だ。型枠大工は人手不足が深刻で、職人を持つ会社に仕事が集まる。買収で職人を増やす戦略は筋が通っている。
資本効率は低い。ROE、つまり自己資本に対する純利益の割合は、過去10年の中央値で1%強だ。資本コストの9%近くに遠い。自己資本の4割近くは工場の土地で、事業を続ける限り現金にならない。借入は41億円あり、短期の借入が大半を占める。中期経営計画は数値の目標を持たず、資本効率を上げる道筋は見えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
溶接金網の需要は、国内の建設の量で決まる。
建設の数量は長い目で細る。人口が減り、住宅の着工は年80万戸を割り込んだ。公共の土木は老朽化した橋やトンネルの更新で底堅いが、新設は増えない。首都圏の再開発や物流倉庫、データセンターの計画は多いものの、人手不足と時間外労働の上限規制で工期は延び、着工が後ろへずれている。筆者は、溶接金網の数量は10年で1割近く減るとみる。
伸びる隙間もある。獣害用の金網は、シカやイノシシの被害が広がる地方で需要が増えている。コンクリートの二次製品の工場化も、金網の使用を後押しする。
値段は鋼材の相場で動く。中国の過剰生産で鋼材は物価ほどは上がらず、金網の単価も物価をやや下回って上がるとみる。
工事の側は事情が違う。型枠大工は高齢化で減り続け、職人の単価は物価を上回って上がる。工事を請け負う力を持つ会社ほど、値段を通しやすくなる。トーアミが工事の会社を買い進めるのは、この流れに乗るためだ。
同じ考えの会社は多く、型枠の会社の買収は値段が上がりつつある。高く買えば、職人を得ても資本の稼ぎは上がらない。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。2026年3月期は配当を前期より増やし、配当総額は1億円弱だった。利益の半分以上を配っている。2023年と2026年には自社株買いもした。ただ方針は「安定配当」で、配当性向の目標は無い。
使い道の中心は買収だ。2025年から2026年にかけて、エアード、アラキヂ工務店、テクノと工事と資材販売の会社を3社買った。テクノの取得額は9.5億円である。
政策保有株は上場44銘柄で4億円強ある。阪和興業や小野建など鋼材の商社が中心で、取引の関係を保つための持ち合いだ。2019年には伊藤忠丸紅住商テクノスチールが株を買い集めた。鋼材の商社との関係は深く、再編の受け皿になる可能性は残る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
帳簿を見れば安さは明らかだ。自己資本は時価総額の3倍あり、工場の土地だけで43億円ある。古くから持つ土地で、時価は簿価を上回る可能性が高い。政策保有株も4億円強ある。
利益も底を打った。2026年3月期は値ざやの確保で資材の利益が8割近く増え、会社は今期の営業利益を6億円と、前期の3倍近くに見込む。買収した工事の会社が通年で効き、テクノの資材販売も加わる。
型枠大工の不足は、職人を抱える会社にとって追い風だ。工事の単価は上がり続け、人を持つ会社が仕事を選べる。資材と工事を一括で請け負える会社は少なく、ゼネコンにとって頼れる相手になる。
獣害用の金網も伸びている。地方のシカとイノシシの被害は増える一方で、自治体の予算も付く。配当は増え、自社株買いも続ける。鋼材の商社が株主に入っており、再編の受け皿になれば、帳簿の価値が表に出る。
利益が今期の見通しの水準に戻るだけで、ROEは3%を超える。帳簿の3分の1の値段は、その回復を織り込んでいない。
慎重な見方
帳簿の厚さは株主の手に届かない。土地は工場の敷地で、事業を続ける限り売れない。政策保有株は取引の関係を保つ持ち合いで、売る方針も無い。
稼ぎは長く弱い。過去12年で営業赤字が4期あり、ROEの中央値は1%強だ。資本コストの9%近くに遠く及ばない会社が利益をため込んでも、価値は増えない。
溶接金網は汎用品だ。値段は線材の相場で決まり、転嫁が遅れれば利益は消える。建設の数量は人口とともに細り、大型の着工は人手不足で延び続ける。
借入は41億円あり、大半が短期だ。金利が上がれば利払いは年1億円近く増え、今の純利益の半分を削る。買収は続くが、工事の会社の利益率は3%に届かない。買えば買うほど売上は増えるが、資本の稼ぎは上がらない。中期経営計画に数値の目標が無いことも、資本効率への意識の薄さを示している。
今期の増益の見通しも、過去に何度も外れてきた。2025年3月期は営業赤字だった。1期の回復で稼ぐ力が変わったと見るのは早い。
どちらに重みを置いたか
強いのは慎重な見方だ。土地と政策保有株の厚さは、株主の手に届く価値ではない。溶接金網は汎用品で、稼ぎは資本コストに遠い。型枠工事の買収は筋が良いが、利益率を上げるにはまだ時間がかかる。
確率は中立を厚くし、悲観側を楽観側より厚く置いた。今期の増益見通しが2期続き、ROEが5%に届けば、見方を改める。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 768 円43 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 214 円12 億円)。 今の値に割り戻すと 482 円27 億円、今との差 −20.7%、 期待の年率 +4.9%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 2,376 円134 億円 | 443 円25 億円 | +363.6% | +16.6% | 141 円8 億円 |
| やや楽観 | 17% | 1,501 円85 億円 | 319 円18 億円 | +199.3% | +11.6% | 309 円17 億円 |
| 中立 | 43% | 780 円44 億円 | 230 円13 億円 | +66.1% | +5.2% | 434 円25 億円 |
| やや悲観 | 23% | 229 円13 億円 | 142 円8 億円 | −39.1% | −4.8% | 85 円5 億円 |
| 悲観 | 12% | 49 円3 億円 | 53 円3 億円 | −83.2% | −16.3% | 12 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 768 円43 億円 | 214 円12 億円 | +61.5% | +4.9% | 982 円55 億円 |
今の株価時価総額 608 円34 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 5% 職人を抱える一括請負が強みになり、利益率が戻る 利益 11 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,376 円134 億円
型枠大工の不足が極まり、職人を抱える会社に仕事が集まる。トーアミは資材から施工までを一括で請け負い、工事の数量は買収込みで1.5倍になる。単価は物価を上回る1.5倍で、利益率は6%だ。
資材は獣害用の金網とコンクリートの二次製品向けが伸び、数量は1.05倍。値ざやを確保し、利益率は7.5%と2000年代の水準に近づく。
全社費は6.1億円に増えるが、売上の伸びが吸収する。営業利益は15億円、純利益は11億円台になる。
配当と自社株買いを増やし、10年の還元は25億円。それでもROEは7%台で、資本コストには届かない。
- 土木建築用資材(溶接金網・鉄筋加工品・フェンス):数量 86,400(出荷重量(トン))× 価格 23(1トンあたりの単価(万円))→ 売上 197 億円・営業利益 15 億円。営業利益率 7.5%
- 土木・建築工事(型枠工事・コンクリート・造成):数量 1,397(型枠の施工面積(千平方メートル))× 価格 0.75(1平方メートルあたりの単価(万円))→ 売上 105 億円・営業利益 6 億円。営業利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 134 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:資材の値ざやの改善、工事の買収の成功、建設の数量の回復が揃う必要がある。過去12年で営業利益率が4%に届いた年は無く、5%とした。
やや楽観 17% 買収の工事が効き、今期の増益が続く 利益 7 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,501 円85 億円
工事の会社の買収が続き、工事の数量は1.4倍になる。職人の単価は物価を少し上回り、利益率は5.5%に上がる。
資材の数量は建設の細りと獣害用の伸びが相殺し、0.98倍。単価は鋼材の相場に沿って1.29倍、利益率は6%だ。
全社費は6.2億円に膨らむ。営業利益は9.7億円、純利益は7億円強になる。借入の利払いは増えるが、利益の伸びで吸収できる。
配当を利益に合わせて増やし、10年の還元は18億円。自己資本は143億円に増え、ROEは5%だ。資本コストにはなお遠い。事業は良くなっても、厚い自己資本が分母にある限り、資本の稼ぎは大きく上がらない。
- 土木建築用資材(溶接金網・鉄筋加工品・フェンス):数量 80,600(出荷重量(トン))× 価格 22(1トンあたりの単価(万円))→ 売上 177 億円・営業利益 11 億円。営業利益率 6.0%
- 土木・建築工事(型枠工事・コンクリート・造成):数量 1,303(型枠の施工面積(千平方メートル))× 価格 0.74(1平方メートルあたりの単価(万円))→ 売上 96 億円・営業利益 5 億円。営業利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.0% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 85 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社は今期の営業利益を前期の3倍近くと見込み、買収した会社が通年で効く。値ざやの確保も2026年3月期に実績がある。
中立 43% 金網は細り、工事が補って名目で少し伸びる 利益 4 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 780 円44 億円
溶接金網の数量は建設の細りで0.92倍になる。単価は鋼材が物価ほど上がらず1.25倍、利益率は値ざやの確保で5%とする。
工事は買収した会社が通年で効き、数量は1.25倍だ。職人の単価は物価を上回って1.45倍になるが、利益率は4.5%にとどまる。
既存の工場の償却は取得時の値段のまま増えず、溶接機の更新の分だけ年1億円ほど新しい値段の償却が足される。全社費は物価で6.3億円に膨らむ。営業利益は5.5億円、純利益は3.7億円になる。借入の借り換えで利払いは年1億円近く増える。
配当は今の水準から少しずつ増やし、10年の還元は13億円。自己資本は128億円、ROEは3%弱だ。
- 土木建築用資材(溶接金網・鉄筋加工品・フェンス):数量 75,700(出荷重量(トン))× 価格 21(1トンあたりの単価(万円))→ 売上 161 億円・営業利益 8 億円。営業利益率 5.0%
- 土木・建築工事(型枠工事・コンクリート・造成):数量 1,164(型枠の施工面積(千平方メートル))× 価格 0.73(1平方メートルあたりの単価(万円))→ 売上 84 億円・営業利益 4 億円。営業利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.9% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 44 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:建設の数量の細りと工事の買収が相殺し、利益率は過去12年の山を超えない。会社の今期の見通しに近い稼ぎが名目で続く、もっとも自然な姿。
やや悲観 23% 鋼材の転嫁が遅れ、赤字に戻る 利益 −2 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 229 円13 億円
線材の値上げが続く一方、大型の着工は延び続け、金網の値上げが通らない。資材の数量は0.8倍、単価は1.18倍にとどまり、利益率は2.5%に落ちる。
工事は職人の確保に苦しみ、買収の効果も薄れる。数量は1.05倍、利益率は2%だ。
全社費6.4億円を賄えず、営業損失が続く。借入の利払いが重なり、純損失は2億円近い。
配当は減らし、10年の還元は8億円。稼ぐ力の床は無い。残るのは土地と政策保有株だが、売るかどうかは経営が決める。赤字の穴埋めで借入は少しずつ増え、純負債は25億円に膨らむ。帳簿の厚さが、少数株主の手に届かない筋書きだ。
- 土木建築用資材(溶接金網・鉄筋加工品・フェンス):数量 65,800(出荷重量(トン))× 価格 20(1トンあたりの単価(万円))→ 売上 132 億円・営業利益 3 億円。営業利益率 2.5%
- 土木・建築工事(型枠工事・コンクリート・造成):数量 978(型枠の施工面積(千平方メートル))× 価格 0.68(1平方メートルあたりの単価(万円))→ 売上 67 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 2.0%
倍率:赤字で稼ぐ力の床は無い。土地と政策保有株の税後から純負債を引き、戻り方0.5を掛けた床(約12.9億円)を、今の自己資本110億円の約0.12倍で置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.117 倍・時価総額 13 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:過去12年で営業赤字が4期あり、線材の値上げの転嫁の遅れは繰り返し起きている。建設の着工の遅れも常態化している。
悲観 12% 汎用品の値崩れと借入の重さで、赤字が続く 利益 −7 億円 · PBR 0.0 倍 · 株価時価総額 49 円3 億円
人口減少で建設の数量が縮み、商社は安い海外の金網を扱う。資材の数量は0.65倍、単価は1.09倍しか上がらず、利益は出ない。
工事は職人が集まらず、買収した会社の稼ぎも消える。数量は0.9倍で、利益は無い。
全社費を賄えず、営業損失が年6億円近く続く。配当は止まり、10年の還元は3億円にとどまる。
赤字の穴埋めで借入は膨らみ、純負債は45億円に達する。土地と政策保有株を足しても、借入を引くと残りはわずかだ。工場を畳んで土地を売れば借入は返せるが、それを決めるのは経営と銀行で、少数株主ではない。ベトナムの合弁も稼ぎを生まず、会社は縮みながら続く。
- 土木建築用資材(溶接金網・鉄筋加工品・フェンス):数量 53,500(出荷重量(トン))× 価格 19(1トンあたりの単価(万円))→ 売上 99 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 0.0%
- 土木・建築工事(型枠工事・コンクリート・造成):数量 838(型枠の施工面積(千平方メートル))× 価格 0.64(1平方メートルあたりの単価(万円))→ 売上 54 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 0.0%
倍率:赤字で稼ぐ力の床は無い。土地と政策保有株の税後から膨らんだ純負債を引き、戻り方0.5を掛けた床(約2.5億円)の近くで、今の自己資本の0.025倍に置いた。
確率:建設の数量の縮小、海外品や商社の自社調達、金利の上昇が重なる構造的な負け。コンクリートの補強材は残るので1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
土木建築用資材(溶接金網・鉄筋加工品・フェンス)
線材を格子に溶接した溶接金網、鉄筋の加工品、メッシュフェンス、獣害用の金網。建設会社・コンクリート二次製品メーカー・商社に売る。
| 数量出荷重量(トン) | 価格1トンあたりの単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 82,300 | 17 | 140 | 6 |
| 10 年後 中立 | 75,700 | 21 | 161 | 8 |
取り方:2026年3月期の土木建築用資材の売上139.85億円・セグメント利益5.85億円(短信)。重量の開示は無く、線材の加工品として1トン17万円と置いて約8.2万トンと推定。
土木・建築工事(型枠工事・コンクリート・造成)
型枠大工の工事を柱に、コンクリート工事、造成、舗装、外構。子会社の渡部建設・中條工務店・エアード・アラキヂ工務店などが担う。
| 数量型枠の施工面積(千平方メートル) | 価格1平方メートルあたりの単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 931 | 0.50 | 47 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,164 | 0.73 | 84 | 4 |
取り方:2026年3月期の土木・建築工事の売上46.54億円・セグメント利益1.19億円(短信)。面積の開示は無く、型枠と附帯工事を1平方メートル5千円に均して約93万平方メートルと推定。
リスクと懸念
鋼材の相場と転嫁の遅れ
主材料の線材の値段が上がると、溶接金網の値上げが追いつくまで利益が消える。過去12年で営業赤字が4期あり、その多くが転嫁の遅れによるものだ。
建設の数量の縮小
住宅の着工は細り、大型の建築は人手不足と時間外労働の規制で工期が延びる。溶接金網の出荷量は長い目で減っていく。
借入と金利
借入は41億円で大半が短期だ。金利が上がれば利払いは年1億円近く増え、今の純利益の半分を削る。
買収の採算
エアード、アラキヂ工務店、テクノと買収が続く。工事の会社の利益率は3%に届かず、のれんの償却と取得費が利益を圧迫する。
資本効率の低さ
ROEは過去10年の中央値で1%強だ。自己資本の4割近くが工場の土地で、中期経営計画に数値の目標も無い。帳簿の厚さが株主の価値に結びつかない。
今後の分かれ目
- 今期の営業利益6億円を達成し、翌期も続いたら
- 値ざやの確保が定着したとみて、やや楽観の確率を厚くする。
- ROEや配当性向の数値目標を出したら
- 資本の使い方の改善とみて、中立の倍率を上限に近づける。
- 工場の土地や政策保有株を売る方針を数字で示したら
- 売却額の税後を価値に足す。
- 線材の値上げで資材が再び赤字になったら
- やや悲観の確率を厚くする。
- 鋼材の商社による買収や再編の提案が出たら
- その条件で価値を見直す。
見ておくもの
- 土木建築用資材のセグメント利益率
- 線材の価格と金網の値上げ
- 工事の会社の買収と利益率
- 借入の額と金利
- 配当と自社株買い
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、金網の重量と単価、型枠の面積と単価、全社費から10年後の利益を積んだ。どの筋書きでもROEは資本コスト8.5%を下回るため、PERは1÷k(約11.4倍)を上限に利益の質で8〜9割に置いた。悲観側は赤字で稼ぐ力の床が無く、土地と政策保有株の税後から純負債を引き、戻り方0.5を掛けた床で置いた。PBRが0.3倍と低いことは割安の根拠にしていない。償却は物価で増やさず、溶接機の更新分だけ新しい値段で足した。リースは小さく、新リース会計基準の影響は軽い。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.3→11.76 倍・やや楽観 PER 9.7→11.76 倍・中立 PER 9.1→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。