結論
パイオラックスは、自動車のクリップやファスナー、ヒンジなど小さな機能部品を作る会社だ。売上の約 9 割が自動車向けで、残りが医療機器になる。筆者は今の値段を割高寄りと見る。自己資本の厚さに比べて、稼ぐ力があまりに低いからだ。
直近の 2026 年 3 月期は、売上 620 億円に対して営業利益が 15 億円にとどまった。中国と英国の子会社で減損も出て、最終損益は赤字に沈んだ。10 年前は営業利益率が 15% を超えていた。それが 2% 台まで落ちた。原因は、最大顧客の日産グループを含む主要メーカーの減産と、材料費・人件費の上昇を値上げで返せなかったことにある。
会社は 2025 年に、自己株の公開買付けを含む大型の自己株買いで資本を絞った。純現金は消え、自己資本比率は 60% 台になった。だが、利益が戻らなければ、絞った効果は ROE に出ない。新しい中期計画も、2030 年度の営業利益を 45 億円と置く。前の計画の半分だ。
筆者の中立の見立ては、10 年後の営業利益率が 5〜6%、ROE は 5% 前後だ。資本コストを下回るので、倍率は高く置けない。再建が計画どおりに進み、医療機器が育つ筋書きでようやく今の値段に並ぶ。強気の見方は遠く、慎重な見方のほうが筋が通ると考える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「預けた資本が増えるか」で測る。答えは今のところ否だ。自己資本に対する利益は、過去 10 年の中央値で 4% 台。資本コストの 8〜9% の半分でしかない。預けた資本が、額面より小さな価値にしかならない会社に、帳簿価額の 6 割という値札は安く見える。だが、安くはない。
オーナー利益、つまり再投資を引いて株主に残る利益は、今はほぼゼロだ。材料費・人件費の上昇は価格に乗らない。ここに、浅い堀と、完成車メーカーの強い価格交渉力が重なる。
評価できる点もある。借金は軽く、資本の扱いは株主に率直だ。大量の自己株買いは、会社が自社の値段を安いと見ている表れだ。ただ、買い付けた値段は今の値段より高い。経営者が自分の評価を信じて動くことと、その評価が正しいことは別の話だ。
筆者が値段を払ってもよいと思えるのは、再建が数字に出たあとだ。営業利益率が 3 年続けて 5% を超え、海外子会社の赤字が止まれば、見方を変える。それまでは、資本コストを下回る会社に、安全域を厚く取って低い値を付けるのが筋だと考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、自動車向けの小さな機能部品だ。売上の約 91% を占める。代表はクリップやファスナーで、内装パネルや配線、ホースを車体に留める。ヒンジや、燃料まわりの流体制御部品、ばねも作る。1 台あたりの搭載額は日系メーカー向けで 3.9 千円ほどと小さい。国内の自動車関連では首位級だと会社は説明する。同じ市場にはニフコがいて、規模では向こうが大きい。
顧客は日系の完成車メーカーが中心だ。日産グループ向けが 3 割強とされ、ホンダ、マツダ、トヨタが続く。有価証券報告書では、単独で売上の 1 割を超える相手先は示されていない。地域別では、日本が約 264 億円、北米が約 148 億円、中国が約 90 億円、インドが約 23 億円だ。
もう 1 つの柱が医療機器で、売上は約 53 億円、全体の 8.5% になる。金属加工の技術を生かし、ガイドワイヤ、体内に入れるステント、コイルを作る。国内で OEM(相手先ブランドでの供給)としてきた品を、海外へ広げている最中だ。直近の営業利益率は 4.7% で、投資が先行している。
全体でみると、自動車が売上を作り、医療機器が将来の利益の厚みを担う構図だ。セグメントに配れない全社費用が年 12 億円ほどあり、これが利益を重く押し下げている。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは浅い。クリップやファスナーは規格品に近く、価格を決めるのは完成車メーカーだ。新車の設計に食い込めば数年は安定するが、次の車種で他社に替えられる余地は残る。実際、直近の 3 年間で材料費・エネルギー費・人件費の上昇を価格に移せず、営業利益は 48 億円から 15 億円へ細った。
同じ市場にニフコが規模を持つため、国内首位級でも価格を支配する力にはつながりにくい。
財務は薄くない。自己資本比率は約 64%、純有利子負債は 14 億円にとどまる。ただ、2025 年に約 300 億円の純現金を自己株の買付けで使い切った。守りの余裕は前より小さい。
資本効率は低い。ROE は過去 10 年の中央値が 4% 台で、資本コストを大きく下回ってきた。経営の弱みは海外拠点の運営と、計画の達成率だ。中国と英国の子会社は赤字で、直近は減損を出した。2026 年 3 月期は営業利益の予想を期中に 2 度下げ、中期計画の目標も 2026 年 5 月に大きく引き下げた。
明るい点もある。1 台あたりの搭載額を日系で 3.9 千円から 4.5 千円へ上げる戦略、グループで約 150 人の人員削減、ADAS 用ブラケット・バスバー・電動ラッチの受注は、実行の証拠になる。筆者は、それが営業利益に出るまで、計画の数字を割り引いて読む。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
自動車の小物部品は、車の生産台数と、1 台に載る部品の金額で決まる。市場は成熟している。世界の生産は年 9 千万台前後で、ほぼ横ばいだ。成長は台数でなく中身で出る。電動化と運転支援で、配線を留める部品、バスバー(電気を流す金属板)、センサー用のブラケットが増える。会社は CASE 対応商品の売上を、2030 年度に 100 億円にする目標を置く。
逆風もある。内燃機関に付く燃料まわりの流体制御部品は、電気自動車では要らなくなる。ここは減る側だ。ただ、内装のクリップは電気自動車でも必要で、事業全体が消えることはない。
循環は大きい。自動車の世界生産は、2008〜09 年に 3〜4 割落ちた実例がある。部品メーカーは固定費が重く、売上が数 % 動くだけで営業利益が大きく振れる。今は主要メーカーの減産が続く局面だ。会社の営業利益率も、3 年前の 7% 台から 2% 台へ落ちた。
競争相手は、ニフコと、中国・台湾・欧州の小さな部品メーカーだ。中国では現地の完成車メーカーが日系車に取って代わりつつあり、日系頼みの部品会社は数量を失う。値段の面でも、完成車メーカーが部品の値下げを求め続ける。
医療機器は別の市場だ。高齢化で数量は伸びるが、公定の償還価格が定期的に下げられ、価格は物価に追いつきにくい。会社はステント・ガイドワイヤ・コイルの 3 群で、2030 年度に新規 30 億円を目指す。承認と保険収載に時間がかかり、立ち上がりは遅れがちだ。
資本政策と M&A
資本政策は、この会社でいちばん大きく動いた部分だ。2024 年 11 月に、3 年で 300 億円の自己株買いと、2027 年 3 月期までの配当性向 100%(配当は前期並みを下限)を打ち出した。2025 年 2 月には自己株の公開買付けを行い、市場価格に約 5% を上乗せして大量に買い取った。目的は自己資本比率を 60% 台まで絞ることだった。累計の買い戻しは約 265 億円になり、発行済み株の約 35% が自己株になっている。2026 年 2 月に決めた 10 億円の追加買いも、2026 年 10 月に終わった。
筆者が引っかかるのは、資本を絞ったのに利益が戻らないことだ。配当性向 100% の約束は、赤字に近い利益では守れない。配当は手元資金から出る形になる。2027 年 3 月期以降の方針は開示がない。2026 年 3 月期末は純有利子負債が 14 億円で、前期の純現金約 300 億円から反転した。
株主優待は 2026 年 3 月末から再開した。100 株以上で QUO カード、300 株以上でグルメギフト券が付く。年の費用は開示が確認できず、株主数と優待額から概算で 1 億円前後とみて、10 年の還元に足した。
M&A は目立たない。買収で規模を広げるより、再編の対象になる側だ。kabufu の推計では、10 年以内に TOB・買収を受ける確率は約 23% になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2026 年 3 月期は底で、ここから戻る局面にある。会社は期の途中で予想を 2 度下げ、減損も出し切った。構造改革の成果はこれから出る。グループで約 150 人を減らし、北米とメキシコ間の生産体制を見直し、中国と英国の赤字拠点にも手を入れた。変動費と固定費を下げて、損益分岐点を引き下げる狙いだ。
1 台あたりの搭載額は、日系で 3.9 千円から、2027 年度に 4.5 千円へ上げる計画だ。ADAS 用ブラケット、バスバー、電動ラッチを受注し、現代・起亜と多目的フックを共同で開発した。電動化で増える部品を取れば、台数が横ばいでも売上は伸びる。
医療機器も育つ。胆管用カバードステントは再販され、ガイドワイヤは海外で売上が立ち、コイルは 2026 年 5 月に発売した。高齢化で需要は増え、2030 年度に売上 75 億円、利益率 10% が視野に入る。
資本を絞る作業は終わった。ここから先は、同じ資本で利益が戻るだけで ROE が上がる。10 年前には営業利益率が 15% を超えた実績がある。10% に戻れば純利益は 50 億円を超え、今の時価総額は 10 倍を切る。会社自体が再編の対象になる可能性もあり、その場合は資産価値に近い値が付く。
慎重な見方
利益が戻ると決めてかかるのは危うい。会社は計画の達成を外し続けている。2026 年 3 月期は営業利益の予想を期中に 2 度下げ、中期計画の目標も 2026 年 5 月に大きく引き下げた。2030 年度の営業利益は 90 億円から 45 億円へ半減だ。
日産グループは売上の 3 割強を占める。その生産が 10 年で細れば、固定費の重い部品メーカーは営業利益を失う。日系車の中国での苦戦も続き、中国子会社は赤字で、現地の部品メーカーが価格で攻める。
完成車メーカーは、材料費の上昇を部品メーカーに被せ返す力を持つ。クリップやファスナーは規格化が進み、中国や台湾の安い品に置き換えやすい。1 台あたりの搭載額を上げる戦略も、日系メーカーが車種を絞る中では、台数の減りに追いつくかが見えない。
電動化で燃料まわりの流体制御部品は需要を失う。それを埋める新商品は、まだ受注の段階だ。医療機器も、売上目標が 2030 年度で 100 億円から 75 億円に下がり、承認や保険収載の遅れも出ている。
資本を絞って ROE を上げる策は、高く買いすぎれば残る株主の価値を下げる。公開買付けの値段は今の値段を大きく上回った。しかも、今期の会社予想(純利益 7 億円)で割ると、今の時価総額は 50 倍を超える。回復をかなり織り込んだ水準だ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが筋が通る。会社の計画は 2 度、下へ直された。利益の回復を前提に置くには、実績が足りない。強気の見方が当たれば、資本を絞った効果は ROE に出る。だが、そこへ届くには、営業利益率が過去の山の半分ほどまで戻る必要がある。確率は下側の筋書きを厚く置いた。
ただし、10 年あれば構造改革は何かの形で効く。強気の筋書きも 1 割弱は残した。再編・非上場化の可能性(kabufu の推計で 10 年内に約 2 割)は、強気側の確率に少しだけ足した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,861 円445 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 783 円187 億円)。 今の値に割り戻すと 1,369 円327 億円、今との差 −14.0%、 期待の年率 +5.2%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 4,283 円1,023 億円 | 1,381 円330 億円 | +256.0% | +13.5% | 510 円122 億円 |
| やや楽観 | 21% | 2,638 円630 億円 | 1,046 円250 億円 | +131.6% | +8.8% | 774 円185 億円 |
| 中立 | 35% | 1,776 円424 億円 | 837 円200 億円 | +64.2% | +5.1% | 914 円218 億円 |
| やや悲観 | 23% | 896 円214 億円 | 502 円120 億円 | −12.1% | −1.3% | 322 円77 億円 |
| 悲観 | 12% | 787 円188 億円 | 251 円60 億円 | −34.8% | −4.2% | 125 円30 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,861 円445 億円 | 783 円187 億円 | +66.2% | +5.2% | 2,644 円632 億円 |
今の株価時価総額 1,591 円380 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 9% 再建が計画どおりに進み、医療機器も柱に育つ 利益 77 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 4,283 円1,023 億円
再建が計画どおりに進み、さらに医療機器が柱に育つ筋書きだ。主要な日系メーカーの生産が持ち直し、搭載対象の台数は今を 6〜7% 上回る。1 台あたりの搭載額は、ADAS 用ブラケットやバスバーなど電動化の部品で、物価上昇分を超えて伸びる。海外は、北米とメキシコの拠点が整理され、中国と英国の赤字も止まる。固定費が下がり、営業利益率は 10% 近くまで戻る。
医療機器は、ステント・ガイドワイヤ・コイルがそろい、売上が 2 倍強になる。利益率も 12% に乗る。株主還元は 10 年を通じて厚いが、自己資本が増えすぎない範囲だ。会社は規模のある日系部品メーカーの標準的な姿に戻り、資本コストを上回る ROE を出す。10 年前の営業利益率 15% までは戻らない。
- 自動車関連(クリップ・ファスナー・流体制御部品ほか):数量 15.5(搭載対象の自動車生産台数(百万台))× 価格 5,750(1 台あたり搭載金額(円・名目))→ 売上 891 億円・営業利益 98 億円。日系の生産持ち直し・CASE 部品で搭載額増
- 医療機器(ガイドワイヤ・ステント・コイル):数量 119(出荷点数(万個・推定))× 価格 10,000(1 個あたり平均単価(円・名目))→ 売上 119 億円・営業利益 14 億円。新製品が立ち上がり利益率が 12% に
倍率:事業の純利益 77 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.29 倍、時価総額 1,023 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画の達成実績が弱く、営業利益率が 10% 近くまで戻るには、再建・新商品・医療機器の 3 つが同時に当たる必要がある。再編の可能性(kabufu 推計で約 2 割)を足して 9% とした。
やや楽観 21% 計画をほぼ実行し、緩やかに利益を戻す 利益 52 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,638 円630 億円
中期計画をほぼ実行し、2030 年度に営業利益 45 億円、その後も緩やかに伸びる筋書きだ。搭載対象の台数は今よりわずかに多い。1 台あたりの搭載額は、電動化の部品が増えて物価上昇を 6% ほど上回る。北米と中国の赤字は止まるが、日系メーカーの価格交渉力は変わらず、営業利益率は 7% 台にとどまる。
医療機器は、ステントなどの新製品が数年遅れで立ち上がり、売上は 2 倍弱になる。利益率は 9% まで上がる。株主還元は配当を中心に続け、自己資本は小さく増える。ROE は 7% 台まで改善するが、資本コストには届かない。
- 自動車関連(クリップ・ファスナー・流体制御部品ほか):数量 14.8(搭載対象の自動車生産台数(百万台))× 価格 5,540(1 台あたり搭載金額(円・名目))→ 売上 820 億円・営業利益 74 億円。電動化部品で搭載額増・赤字拠点が止まる
- 医療機器(ガイドワイヤ・ステント・コイル):数量 105(出荷点数(万個・推定))× 価格 9,600(1 個あたり平均単価(円・名目))→ 売上 101 億円・営業利益 9 億円。新製品が遅れて立ち上がる
倍率:事業の純利益 52 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 630 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画の 2030 年度の数字(営業利益 45 億円)に近い着地。構造改革の実績(人員削減・受注)が出始めていることを根拠に、強気側のなかでいちばん現実的な筋書きとして厚めに置いた。
中立 35% 計画の達成が遅れ、利益率は 5〜6% にとどまる 利益 35 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,776 円424 億円
計画の達成が数年遅れ、営業利益率が 5〜6% で落ち着く筋書きだ。主要な日系メーカーの海外生産は細り、搭載対象の台数は今より 4% 減る。1 台あたりの搭載額は、電動化の部品で少し増えるが、材料費の転嫁が遅れ、物価をわずかに上回る程度だ。中国と英国の赤字は 3〜4 年で止まる。
医療機器は、売上が 7 割近く増え、利益率は 7% になる。単価は公定の償還価格が下がるため、物価の 1.34 倍には届かず 1.15 倍にとどまる。会社は規模の割に薄い利益を、全社費用の削減と人員の最適化で支える。配当は業績に合わせて下がり、自己株買いは小さくなる。ROE は 5% 前後で、資本コストを下回る。会社は成熟した、普通の部品メーカーに収まる。
- 自動車関連(クリップ・ファスナー・流体制御部品ほか):数量 14.0(搭載対象の自動車生産台数(百万台))× 価格 5,300(1 台あたり搭載金額(円・名目))→ 売上 742 億円・営業利益 56 億円。台数は 4% 減・搭載額は物価を少し上回る
- 医療機器(ガイドワイヤ・ステント・コイル):数量 95.5(出荷点数(万個・推定))× 価格 9,200(1 個あたり平均単価(円・名目))→ 売上 88 億円・営業利益 6 億円。新製品が遅れ、価格は償還引き下げで物価に届かない
倍率:事業の純利益 35 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.2% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 424 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社は計画を 2 度下げており、利益を半分の水準に置き直した計画でも、完成車メーカーの価格交渉力と減産が重く、さらに遅れる姿がいちばん起こりやすい。再建は進むが、利益率の戻りは緩やかとして、最も厚い確率を置いた。
やや悲観 23% 減産と価格圧力が続き、海外の赤字が居座る 利益 12 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 896 円214 億円
主要な日系メーカーの減産が続き、搭載対象の台数は今より 12% 減る筋書きだ。完成車メーカーの値下げ要求と、中国・台湾の安い品との競争で、価格の上昇は物価に届かない。中国と英国の赤字は居座り、追加の減損も出る。営業利益率は 2% 台にとどまる。
医療機器は、償還価格の引き下げで単価が伸びず、利益率は 4% 前後だ。配当は大きく削られ、株主還元は細る。ROE は 2% 以下で、会社は手元の資産が評価の下支えになる。資産を売る形の再編が選択肢に入るが、事業の稼ぐ力に見合う値はつかない。
電動化の部品が取れても、減る燃料まわりの部品を埋めきれない。人員削減の効果は、材料費と人件費の上昇に食われる。会社は縮んだ規模に合わせて拠点を畳み、利益を守る道を探る。経営の優先順位は、成長から資本の効率へ変わる。
- 自動車関連(クリップ・ファスナー・流体制御部品ほか):数量 12.8(搭載対象の自動車生産台数(百万台))× 価格 5,070(1 台あたり搭載金額(円・名目))→ 売上 649 億円・営業利益 29 億円。台数 12% 減・搭載額は物価に届かず
- 医療機器(ガイドワイヤ・ステント・コイル):数量 79.1(出荷点数(万個・推定))× 価格 8,400(1 個あたり平均単価(円・名目))→ 売上 66 億円・営業利益 3 億円。価格が償還引き下げで伸びない
倍率:事業の ROE は約 1.8% で、稼ぐ力(純利益÷k)は 131 億円にとどまる。床は売れる資産の税後 220 億円で、これを上限に今の自己資本の約 0.33 倍に置く。ためた利益に床の倍率は掛けない。
確率:日産グループなど主要顧客の生産減と、中国・英国の赤字が尾を引く筋書き。直近 3 年で営業利益が 3 分の 1 に細った実績が下地になるため、厚めに置いた。
悲観 12% 構造的に負け、海外を畳みながら縮む 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 787 円188 億円
構造的に負ける筋書きだ。主要顧客の生産が大きく減り、搭載対象の台数は今より 28% 減る。燃料まわりの部品は電動化で需要を失い、中国の現地メーカーが日系車ごと置き換える。完成車メーカーは材料費の上昇を被せ返し、価格は物価に大きく届かない。
中国と英国の拠点は畳み、減損で自己資本は 80 億円ほど減る。営業利益は 3 億円ほどの黒字にとどまり、配当は大きく削られる。医療機器は利益がほとんど出ない。会社の評価は、売れる資産の税後が下支えになるが、売却には時間がかかり、安く叩かれる。優良な部品会社の姿は残らない。
- 自動車関連(クリップ・ファスナー・流体制御部品ほか):数量 10.5(搭載対象の自動車生産台数(百万台))× 価格 4,680(1 台あたり搭載金額(円・名目))→ 売上 491 億円・営業利益 15 億円。台数 28% 減・価格は物価に届かず
- 医療機器(ガイドワイヤ・ステント・コイル):数量 65.9(出荷点数(万個・推定))× 価格 7,600(1 個あたり平均単価(円・名目))→ 売上 50 億円・営業利益 1 億円。価格引き下げで利益がほぼ消える
倍率:稼ぐ力はほぼゼロで、価値は売れる資産の税後 220 億円が下支え。売却に時間がかかり叩かれるので、今の自己資本の約 0.29 倍に置く。減損で自己資本は減るが、床の倍率は今の自己資本に掛ける。
確率:日産グループ依存の高さ、電動化での燃料まわり部品の縮小、中国の現地メーカーによる置き換えが同時に進む筋書き。営業利益が 3 年で 3 分の 1 に落ちた実績と、計画の達成率の低さから、悲観は 1 割より少し厚い 12% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
自動車関連(クリップ・ファスナー・流体制御部品ほか)
完成車メーカー向けの樹脂・金属の小さな機能部品。内装の留め具、ヒンジ、燃料まわりのバルブなど。
| 数量搭載対象の自動車生産台数(百万台) | 価格1 台あたり搭載金額(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 14.6 | 3,900 | 568 | 24 |
| 10 年後 中立 | 14.0 | 5,300 | 742 | 56 |
取り方:会社の開示は 1 台あたり搭載金額(主要日系 3.9 千円、主要非日系 0.3 千円)。売上 567.7 億円を日系の 3.9 千円で割り、搭載対象の生産を 14.56 百万台と置いた(非日系の小さな分も台数に含めて換算した推定)。台数は実質、価格は名目。
医療機器(ガイドワイヤ・ステント・コイル)
金属加工の技術を生かした血管・消化管用の医療機器。国内の OEM 供給品を海外へ広げている。
| 数量出荷点数(万個・推定) | 価格1 個あたり平均単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 65.9 | 8,000 | 53 | 3 |
| 10 年後 中立 | 95.5 | 9,200 | 88 | 6 |
取り方:点数と単価は非開示。売上 52.7 億円を、ガイドワイヤ(数千円)とステント・コイル(数万円)の混ざりで平均 8 千円とみて 65.9 万個と置いた推定。数量は実質、価格は名目で、償還価格の引き下げは価格に入れる。
リスクと懸念
最大顧客の減産が続く
日産グループ向けが売上の 3 割強を占める。同社の再建で工場が減れば、搭載対象の台数が直接減る。固定費が重い部品メーカーは、台数の数 % の減少で営業利益が大きく崩れる。代わりの顧客を取るには、新車の設計に食い込む数年が要る。
中期計画の再度の未達
2026 年 3 月期は営業利益の予想を期中に 2 度下げ、2026 年 5 月には計画の目標も半分近くに引き下げた。2027 年度の営業利益 25 億円、2030 年度の 45 億円も、材料費・人件費の上昇や顧客の減産で届かない恐れがある。
海外子会社の赤字と減損
中国と英国の子会社は赤字で、2026 年 3 月期は減損を出した。北米も利益率が低い。拠点の整理が遅れれば、追加の減損と現金の流出が続き、自己資本が目減りする。
電動化で減る部品
燃料まわりの流体制御部品は、内燃機関の車に付く。電気自動車が増えるほど要らなくなる。CASE 対応商品(2030 年度 100 億円)がこの穴を埋めるまでの間、売上の一部が縮む。
規格品の価格競争
クリップやファスナーは規格化が進み、ニフコや中国・台湾の部品メーカーに置き換えられやすい。完成車メーカーは材料費の上昇を部品側に被せ返す力が強く、値上げが通りにくい。
資本政策の読めなさ
配当性向 100% の約束は 2027 年 3 月期までで、その先の方針は開示がない。利益が戻らないまま配当を続ければ自己資本が減り、減らせば株主の失望を招く。大量の自己株買いは、買い付けた値段が今より高く、結果として残る株主の価値を下げた面もある。
医療機器の立ち上がり遅れ
生分解性消化管用ステントは保険償還の手続きが長引き、発売が 2026 年度の第 4 四半期にずれ込む見込みだ。売上目標は 2030 年度で 100 億円から 75 億円に下がった。承認・保険収載・価格引き下げで、利益率 10% の目標は後ろにずれやすい。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 3 年続けて 5% を超える
- 再建が数字に出たと見て、中立より上の筋書きの確率を上げる。海外の赤字が止まったかも合わせて確かめる。
- 日産グループ向けの売上が大きく減る
- 台数の筋書きを悲観側に動かす。固定費の削減が追いつくかを確認する。
- 2027 年 3 月期以降の配当・還元方針が示され、配当性向が下がる
- 自己資本が積み上がる前提に変え、ROE の見立てを下げる。逆に、還元を保つなら流れの前提は今のままでよい。
- 中国・英国の子会社が再び減損を出す
- 悲観の確率を上げる。拠点整理の遅れと現金の流出を織り込む。
- 自己株の公開買付けや、大株主による非上場化の提案が出る
- 再編で資産価値に近い値が付く可能性を、強気側の確率に足す。条件は価格と少数株主の扱いを見る。
- ADAS 用ブラケット・バスバー・電動ラッチの量産が始まり、搭載額が 4.5 千円に近づく
- 1 台あたり搭載額の伸びを上げ、強気側の確率を少し増やす。
- 医療機器の生分解性消化管用ステントが保険収載され、売上が立ち上がる
- 医療機器の利益率が 10% に近づく筋書きの確率を上げる。
見ておくもの
- 日産グループなど主要顧客の世界生産台数
- 営業利益率の 5% 超えが続くか(半期ごと)
- 中国・英国・北米の子会社の損益
- 2027 年 3 月期以降の配当・還元方針
- 医療機器の売上(BD ステントの保険収載)
- 1 台あたり搭載金額(主要日系)の推移
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに式から置いた。k は基本 7.5% に quality +1.25% を足した 8.75%。中立の事業の ROE は 5% 台で k を下回るので、PER の上限は 1÷k の 11.4 倍、式の値は約 8.7 倍。中立は式の約 9 割の 8.0 倍にした。強気側は ROE が k を超える楽観だけ式(RONIC)で置き、やや楽観は上限の約 8 割にした。悲観側は稼ぐ力でなく、売れる資産の税後(220 億円)を床にした。
セグメントは台数(実質)と搭載額(名目)で積み、物価 3% は搭載額に入れて台数には混ぜていない。全社費用は物価で増やし、人員削減の実績の分だけ下げた。株主優待は概算 1 億円前後を、10 年の還元に足した。株数は期末以降の自己株買いを織り込んだ値で、equity_start と還元の両方から外している。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.9→13.29 倍・やや楽観 PER 9→12.12 倍・中立 PER 8→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.25% を足して 8.75%。同じ領域の 5991・5985(+1.5%)より 0.25 低いのは、HDD や光コネクタのような別の需要の波がなく、借金も軽いため。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.25%。