結論
RS Technologiesは、半導体工場で使い終えたシリコンウェーハを磨き直して売る、再生ウェーハの世界最大手だ。筆者は、本質価値は今の時価総額をやや下回る、つまりやや割高だと見る。再生事業は一級品だが、中国の新品ウェーハと装置・部材が利益を薄め、集中投資の期間に入ったからだ。
稼ぎの中心は再生事業だ。売上は全体の3分の1ほどだが、営業利益はセグメント合計の6割強を占める。直近の四半期の営業利益率は38%に達した。AI向けの先端工場が増えるほど試験用ウェーハの使用枚数も増え、会社は2028年までに月産を約120万枚へ広げる計画だ。
弱いのは、その外側だ。中国の新品ウェーハは8インチの単価が下がり、12インチの合弁は赤字が続く。2026年9月の再編で、この合弁も傘下に取り込む。7月には売上がほぼ無いエピウェーハ会社を、約107億円で買った。資本の使い方には疑問が残る。
財務は厚く、純現金は750億円ほどと時価総額の半分を超える。ただ中計は設備と買収に資金を振り向ける期間だ。中国子会社には少数株主もいる。筆者は、この現金のうち株主に戻る分を4割ほどと見て分けた。
10年後の中立の姿は、再生が今の1.7倍の枚数に育ち、営業利益が250億円前後になる姿だ。中立の10年後の時価総額は2,200億円ほどだが、年8%を超える資本コストで割り戻すと、今の値段には届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、再生事業は持ち続けたい種類の商売だ。大手顧客の工程に組み込まれ、寡占の中でトップの座を持ち、営業利益率が4割近い。資本の面でも、増設した枚数がそのまま稼働に結びつく。
しかし株主が買うのは再生事業だけではない。利益の3分の1は新品ウェーハや装置・部材に支えられ、そこでは中国の価格競争と少数株主への利益の流出が重い。筆者は、再投資なしに株主が自由にできる利益は、見かけの純利益より小さいと見ている。
経営者の資本の使い方も、評価を分ける点だ。売上が20万元の会社を約107億円で買った判断は、少なくとも説明が足りない。再編でも、対価の条件は確定していない。創業者が約44%を持つ会社では、少数株主は資本配分に口を出せない。
安全域の面では、純現金が厚いことが救いになる。だが集中投資の期間に入ったため、現金がそのまま株主の手に戻るとは考えにくい。本質価値は、再生の伸びを素直に認めても、今の時価総額をやや下回ると見る。
何で稼ぐ会社か
事業は3つに分かれる。1つめはウェーハ再生だ。半導体の工場は、装置の状態を確かめるために試験用のウェーハを大量に流す。使った後は捨てず、表面を削って磨き直し、もう一度試験用に回す。この磨き直しを請け負うのが再生事業で、売上の約9割は12インチだ。国内の三本木と台湾の台南が主力で、顧客はTSMC、キオクシア、ソニーセミコンダクタ、米国のマイクロンやインテルなどが並ぶ。
2つめはプライムウェーハ、つまり新品のウェーハだ。中国の上場子会社GRITEKが、5〜8インチを中心にパワー半導体やアナログ向けを作る。売上の約3割はシリコン部材だ。12インチは持分法の合弁SGRSで立ち上げの最中にあり、まだ赤字を出している。RS自身の出資比率はGRITEKで約39%にとどまる。連結はするが、利益の多くは少数株主に流れる。
3つめが装置・部材等だ。光ピックアップや車載カメラのモジュールを作るRSPDHが半分ほどを占め、ほかに半導体装置の消耗部材、装置の商社、バナジウム電池向け電解液がある。売上は2025年に8割以上伸びたが、営業利益率は5%程度にとどまる。再生とは稼ぎ方がまるで違う。
2026年からの中計は、再生への大型投資を柱に置く。三本木の第7工場の再稼働や台南の第2工場の取得を進め、2027年以降のM&Aも想定している。
優良さと弱いところ
再生事業の堀は、顧客の工程に深く入り込んでいることだ。試験用ウェーハは品質が揺れると工場の歩留まりの判断を狂わせる。顧客は安いだけの業者には切り替えにくい。世界の再生市場は6社で9割を占める寡占で、会社の推計では12インチの数量で約33%のトップだ。三本木と台南の増設も、この地位を固める方向に働く。直近の営業利益率は38%台と、素材系の会社では際立って高い。
ただし、堀の強さは信越化学やSUMCOが持つ新品ウェーハの技術力とは性格が違う。再生は技術の壁よりも、品質の安定と納期、顧客との長い付き合いで守る事業だ。TSMCなど大口への依存が高く、価格の交渉力は顧客の側に傾きやすい。
もう1つ気になるのは資本の使い方だ。中国子会社GRITEKは出資が約39%で、新株発行や株式交換のたびに持ち分が変わる。2025年12月期は、売上が3割近く伸びたのに純利益は減った。装置・部材の拡大と少数株主への利益の流出が重なったためだ。
経営は創業者の方永義社長が率い、資産管理会社と個人を合わせて約44%を持つ。長期の視点で投資を続けやすい一方、少数株主の声は届きにくい。筆者は、この会社が再生に資本を集中できるかを、いちばんの見どころと考えている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
再生ウェーハの需要は、半導体の工場が動く量と、回路の微細化の進み具合で決まる。微細化が進むほど、工程の確認に使う試験用ウェーハの数は増える。AI向けの先端ロジックやHBMの工場が増えている今は、数量の追い風が強い。2025年の再生事業は月産5万枚の増設を終え、下半期から満稼働に入った。
世界のシリコンウェーハ市場は、2025年の193億ドルから年率7%ほどで伸びるという見立てがある。再生はその副次的な市場で、新品の出荷が増えれば後を追って伸びる。競合は国内のハマダレックテックと、信越化学グループの三益半導体工業、台湾の3社などだ。各社とも増設を急いでおり、供給が需要を超える局面が来れば、単価の下げ圧力が強まる。
新品ウェーハは事情が異なる。8インチのパワー半導体向けは、中国の新規参入で単価が前年に約1割下がった。12インチでも信越化学、SUMCO、台湾のGlobalWafersに加え、中国勢が立ち上がっている。中国の国産化政策は追い風にも向かい風にもなる。需要は国内に守られるが、競争相手も国内で増えるからだ。
米中の対立と輸出管理は、中国子会社の売上と資金調達の両方に影響する。再生は台湾・日本が主力で、地政学の影響は新品より小さい。
資本政策と M&A
還元の姿勢は控えめだ。配当は増配を続けているが、配当性向は20%ほどを目安とし、自社株買いはほとんどない。利益のほとんどを成長投資に回してきた。純現金は2018年以降に積み上がり、直近では750億円ほどになった。
M&Aは積極的だ。2017年末に中国の有色金属研究機関系の会社を子会社にして中国へ進出し、2026年7月にはGRITEKが安徽晶隆半導体科技の6割を約107億円で取得した。買った先の売上は2025年にほぼ無く、赤字だった。2026年9月には、12インチ合弁のSGRSと山東の8インチ会社をGRITEKの完全子会社にする再編を決めた。完了は2027年の予定で、対価は新株と現金の組み合わせだ。
再編で12インチの赤字がGRITEKの中に入る。持ち分の変動と、中国の上場子会社の新株発行による薄まりが、RSの株主の取り分にどう効くかを見る必要がある。
中計は2028年まで集中投資の期間とし、2027年以降の新規M&Aも想定する。投資の判断を、再生の高い利益率で測れるかが焦点になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AI向けの先端工場の投資は、まだ序盤だ。回路が微細になるほど、試験用ウェーハの使用枚数は増える。再生は新品の出荷より一段遅れて、確実に伸びる市場である。会社は三本木と台南に加え、月産を2028年末に約120万枚へ広げる計画を持つ。直近の四半期の営業利益率は38%台で、増設した設備はすぐに稼働に入る。再生事業だけで、今の営業利益を大きく超える稼ぎが見込める。
中国の新品ウェーハも、国産化の流れを取り込める。8インチは出荷数量が前年に2割以上伸びた。12インチのSGRSは、月産11万枚から2028年に25万枚へ広げる計画で、軌道に乗れば2桁の利益率に届く。純現金が750億円あり、設備もM&Aも自前の資金でこなせる。借金に頼らない拡大である。
装置・部材等は薄利だが、売上は急速に伸びている。バナジウム電池向け電解液が立ち上がれば、新しい柱になる余地がある。今の値段は、こうした複数の成長の芽をまだ織り込んでいない。
慎重な見方
稼いでいるのは再生事業だけで、残りは利益を薄める。2025年12月期は売上が3割伸びたのに純利益は減った。新品ウェーハは8インチの単価が約1割下がり、装置・部材は利益率が5%程度に過ぎない。12インチのSGRSは2025年に売上2億元に対して営業赤字が2億元あった。再編でその赤字をGRITEKの中に抱えるのだから、利益を食う期間は長引く。
再生の増設も楽観はできない。国内の三本木、台湾の台南、中国と3拠点で月産を2倍近くに増やす。同業各社も増設を急ぎ、台湾の大口顧客は価格の交渉力が強い。供給が需要を上回れば、営業利益率は38%から落ちる。
資本の使い方も不安だ。売上が20万元の会社を約107億円で買った。中国の子会社は上場しており、新株発行で出資比率が薄まる。純現金は大きく見えるが、集中投資と買収、少数株主の取り分を考えれば、株主のものとして残る額は小さい。米中の対立が強まれば、中国の売上と資金調達が同時に傷む。
どちらに重みを置いたか
再生事業の質は、慎重な見方を含めて否定されていない。弱いのは、その外側の資本の使い方だ。純現金と成長の芽を評価しても、中国の新品ウェーハの単価下落と、少数株主への利益の流出、投資の重さが利益を削る。確率は、慎重な見方がやや強いと判断し、やや悲観と悲観にあわせて3分の1を置いた。強気の筋書きに残した重みは、再生の増設が計画通りに進めば、利益がまだ大きく伸びる余地があるためだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 12,407 円3,300 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,123 円299 億円)。 今の値に割り戻すと 6,802 円1,809 億円、今との差 +37.6%、 期待の年率 +10.6%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 24,586 円6,539 億円 | 1,805 円480 億円 | +433.7% | +18.2% | 2,639 円702 億円 |
| やや楽観 | 22% | 18,407 円4,896 億円 | 1,429 円380 億円 | +301.1% | +14.9% | 4,364 円1,161 億円 |
| 中立 | 34% | 13,950 円3,710 億円 | 1,241 円330 億円 | +207.2% | +11.9% | 5,165 円1,374 億円 |
| やや悲観 | 22% | 4,434 円1,179 億円 | 752 円200 億円 | +4.9% | +0.5% | 1,141 円303 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,508 円401 億円 | 338 円90 億円 | −62.7% | −9.4% | 222 円59 億円 |
| 加重平均 | 100% | 12,407 円3,300 億円 | 1,123 円299 億円 | +173.6% | +10.6% | 13,530 円3,599 億円 |
今の株価時価総額 4,945 円1,315 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 再生が計画どおり倍増し、中国の12インチも軌道に乗る 利益 296 億円 · PER 20.7 倍 · 株価時価総額 24,586 円6,539 億円
10年間、AI向けの先端工場の投資が続き、再生ウェーハは月産が2028年に約120万枚に達したあと、さらに伸びて今の2.2倍の枚数になる。顧客の工程に組み込まれた地位が保たれ、単価も物価並みに上がる。営業利益率は37%台を維持する。
中国では12インチの合弁が量産を軌道に乗せ、新品ウェーハの出荷が今の2.7倍の面積に広がる。8インチの単価下落は止まり、利益率は2割を超える。装置・部材でも電解液が新しい柱になる。
純現金の一部は買収と設備に使われるが、利益の積み上がりが上回り、還元も厚くなる。中国子会社の少数株主への流出が増える分を、再生の伸びが吸収する。もっとも理想的な10年である。
- ウェーハ再生:数量 145(再生ウェーハの月産相当枚数(12インチ換算・万枚/月、稼働ベース))× 価格 5.59(月産1万枚あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 810 億円・営業利益 300 億円
- プライムウェーハ(中国):数量 90.0(出荷面積(8インチ換算・万枚/月、稼働ベース))× 価格 7.12(8インチ換算の月産1万枚あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 641 億円・営業利益 141 億円
- 装置・部材等:数量 1,143(出荷のモジュール換算個数(万個。部材・商社売上は平均単価で個数に換算した推定))× 価格 0.50(1個あたり売上(億円/万個・名目))→ 売上 571 億円・営業利益 51 億円
倍率:事業の純利益 291 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.4% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)225 億円。全体の PER 20.65 倍、時価総額 6,242 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI向けの投資が10年続き、再生の増設計画が計画どおり稼働し、12インチの合弁も黒字化する必要があり、全部がそろう確度は高くない。
やや楽観 22% 再生が着実に伸び、中国は採算を保つ 利益 222 億円 · PER 20.1 倍 · 株価時価総額 18,407 円4,896 億円
再生ウェーハは月産が計画に近い形で育ち、10年で今の1.9倍の枚数になる。単価は物価並みに上がり、営業利益率は35%を保つ。台湾の大口顧客との関係も続き、増設した設備はおおむね埋まる。
中国の新品ウェーハは、8インチの単価が下がっても数量で補い、12インチも月産が増えて、損益は小さな黒字になる。面積では今の2.1倍まで広がるが、利益率は1割台後半にとどまる。装置・部材は薄利のまま緩やかに伸びる。
投資と買収で現金は減るが、利益の積み上がりで財務は厚いままだ。還元は配当を中心に着実に増える。物価並みの値上げは再生だけで、新品ウェーハは単価の下落を数量で補う形になる。台湾の大口顧客や同業との力関係は大きく変わらず、再生の営業利益率は高水準のまま保たれる。会社の中計に近い、穏当な成功の10年である。
- ウェーハ再生:数量 125(再生ウェーハの月産相当枚数(12インチ換算・万枚/月、稼働ベース))× 価格 5.59(月産1万枚あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 699 億円・営業利益 245 億円
- プライムウェーハ(中国):数量 70.0(出荷面積(8インチ換算・万枚/月、稼働ベース))× 価格 6.84(8インチ換算の月産1万枚あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 479 億円・営業利益 86 億円
- 装置・部材等:数量 990(出荷のモジュール換算個数(万個。部材・商社売上は平均単価で個数に換算した推定))× 価格 0.46(1個あたり売上(億円/万個・名目))→ 売上 456 億円・営業利益 30 億円
倍率:事業の純利益 218 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)225 億円。全体の PER 20.12 倍、時価総額 4,601 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再生は事業の質が高く、AI向けの需要も追い風だが、増設の消化や中国の採算など、うまくいかない要素が残る。
中立 34% 再生は伸びるが、中国と部材が利益を薄める 利益 171 億円 · PER 19.3 倍 · 株価時価総額 13,950 円3,710 億円
再生ウェーハは、需要の伸びと増設で、10年後には今の1.7倍の枚数になる。同業の増設と顧客の交渉力で単価は物価をやや下回って上がり、営業利益率は33%に落ち着く。それでも高水準で、全体の稼ぎは再生が支える。
中国の新品ウェーハは、8インチの単価が引き続き下がり、12インチも黒字化に時間がかかる。出荷面積は1.8倍まで増えるが、単価は物価の半分ほどしか上がらず(現地の価格競争で、中立でも1.15倍に置いた)、営業利益率は14%と今より低い。装置・部材は5%台の薄利のままだ。
中国子会社の少数株主への利益の流出は残り、純利益の伸びは営業利益の伸びを下回る。純現金は投資とM&Aに回り、積み上がり方は鈍る。還元は配当性向20%ほどを軸に、じわりと増える。再生という優良な事業を持つ、ごく普通の成長企業という姿だ。
- ウェーハ再生:数量 112(再生ウェーハの月産相当枚数(12インチ換算・万枚/月、稼働ベース))× 価格 5.42(月産1万枚あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 607 億円・営業利益 200 億円
- プライムウェーハ(中国):数量 59.0(出荷面積(8インチ換算・万枚/月、稼働ベース))× 価格 6.55(8インチ換算の月産1万枚あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 387 億円・営業利益 54 億円
- 装置・部材等:数量 915(出荷のモジュール換算個数(万個。部材・商社売上は平均単価で個数に換算した推定))× 価格 0.46(1個あたり売上(億円/万個・名目))→ 売上 421 億円・営業利益 23 億円
倍率:事業の純利益 166 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)225 億円。全体の PER 19.3 倍、時価総額 3,438 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再生の高い利益率は維持されるが、新品ウェーハ・装置部材の薄利と少数株主への流出が全体の利益を抑えるという、筆者がいちばんありそうと見る姿。
やや悲観 22% 再生の単価が緩み、中国の価格競争が長引く 利益 92 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 4,434 円1,179 億円
再生ウェーハは増設が需要を上回り、単価の上昇は物価の6割ほどにとどまる。出荷は今の1.4倍で止まり、営業利益率は28%まで下がる。台湾の大口顧客の価格交渉が強まり、利益が顧客に移る。
中国の新品ウェーハは、地元メーカーの増産で8インチの単価がほとんど上がらず、12インチも大きな黒字にならない。営業利益率は8%に落ちる。装置・部材は価格競争が厳しく3%にとどまる。
投資で積み上げた設備の償却が重く、中国子会社の少数株主に利益が流れる構図も残る。純現金は買収と設備で食われ、還元は小さくなる。再生は優良なまま、全体は資本効率の低い会社になる。
- ウェーハ再生:数量 90.0(再生ウェーハの月産相当枚数(12インチ換算・万枚/月、稼働ベース))× 価格 5.01(月産1万枚あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 450 億円・営業利益 126 億円
- プライムウェーハ(中国):数量 45.0(出荷面積(8インチ換算・万枚/月、稼働ベース))× 価格 5.98(8インチ換算の月産1万枚あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 269 億円・営業利益 22 億円
- 装置・部材等:数量 800(出荷のモジュール換算個数(万個。部材・商社売上は平均単価で個数に換算した推定))× 価格 0.42(1個あたり売上(億円/万個・名目))→ 売上 336 億円・営業利益 10 億円
倍率:資本コスト7.5%。事業のROEがk以下なのでPERの上限は1÷k=12.1倍で、その約7割の8.5倍に置く。再生の単価が緩み中国が足を引っ張る筋書きで、稼ぐ力の7割。
確率:大口顧客の交渉力と同業の増設で再生の利益率が下がる展開に、中国の価格競争が重なる。資本の使い方への疑問を踏まえ厚めに置く。
悲観 12% 再生の需給が崩れ、中国の新品ウェーハは赤字に沈む 利益 8 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,508 円401 億円
再生ウェーハは、同業の増設と大口顧客の内製化や調達の見直しで、需給が崩れる。出荷は今の8割台に減り、単価は物価に追いつかない。営業利益率は15%まで落ちる。
中国の新品ウェーハは、8インチ・12インチとも地元メーカーとの価格競争に負け、赤字に沈む。12インチ合弁の損失の穴埋めに資金を出し、買収したエピウェーハ事業も立ち上がらない。装置・部材は利益を生まなくなる。
純現金は投資の失敗と赤字の穴埋めで大きく減り、少数株主への利益の流出だけが残る。のれんと投資の減損で自己資本も傷む。事業としては残るが、もはや優良な再生会社ではなくなった10年である。
- ウェーハ再生:数量 55.0(再生ウェーハの月産相当枚数(12インチ換算・万枚/月、稼働ベース))× 価格 4.17(月産1万枚あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 229 億円・営業利益 34 億円
- プライムウェーハ(中国):数量 33.0(出荷面積(8インチ換算・万枚/月、稼働ベース))× 価格 5.13(8インチ換算の月産1万枚あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 169 億円・営業利益 −5 億円
- 装置・部材等:数量 600(出荷のモジュール換算個数(万個。部材・商社売上は平均単価で個数に換算した推定))× 価格 0.38(1個あたり売上(億円/万個・名目))→ 売上 228 億円・営業利益 0 億円
倍率:構造的に再生の優位を失い、純利益はほぼ出ない。稼ぐ力では測れないので、売れる資産と現金で測る。今の自己資本802億円の5割を株主の取り分とする。
確率:再生の需給が緩む中で中国の新品ウェーハが赤字に沈み、巨額の投資と買収が重荷になる複合の筋書き。起こりにくいが無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ウェーハ再生
半導体工場で試験用・監視用に使った12インチなどのシリコンウェーハを、研磨・洗浄して再び使える状態に戻して売る事業。国内の三本木と台湾の台南が中心。
| 数量再生ウェーハの月産相当枚数(12インチ換算・万枚/月、稼働ベース) | 価格月産1万枚あたりの年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 | 66.0 | 4.17 | 275 | 102 |
| 10 年後 中立 | 112 | 5.42 | 607 | 200 |
取り方:2025年12月期の売上275.3億円・営業利益101.7億円(決算説明)。数量は2024年6月末の12インチ月産54万枚(国内31万・台湾23万)に2025年の月産5万枚増設(三本木・台南)と中国の約5万枚を加えた年末の能力約70万枚から、年間の平均稼働を引いた推定66万枚。価格は売上÷数量で逆算した値で、1枚の単価ではなく月産1万枚あたりの年間売上。
プライムウェーハ(中国)
中国の子会社GRITEKが作る新品の5〜8インチ・シリコンウェーハとシリコン部材。パワー半導体やアナログ向けが中心。12インチは持分法の合弁SGRSで立ち上げ中。
| 数量出荷面積(8インチ換算・万枚/月、稼働ベース) | 価格8インチ換算の月産1万枚あたりの年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 | 33.0 | 5.70 | 188 | 42 |
| 10 年後 中立 | 59.0 | 6.55 | 387 | 54 |
取り方:2025年12月期の外部売上188.0億円・営業利益41.6億円。数量は8インチ月産25万枚・6インチ約20万枚・5インチ約5万枚の能力(2024年時点の月産は5インチ5万・6インチ20万・8インチ17万、2025年末に8インチ25万)を面積で8インチ換算し、稼働を掛けた推定33万枚。シリコン部材(売上の約3割)も同じ面積の単価に含めた。12インチ(SGRS)は持分法で売上に入らない。
装置・部材等
光ピックアップ・車載カメラのモジュール(RSPDH)、半導体装置の消耗部材(DG Technologies)、半導体装置の商社事業、VRFB用電解液などの雑多な集まり。利益率は低い。
| 数量出荷のモジュール換算個数(万個。部材・商社売上は平均単価で個数に換算した推定) | 価格1個あたり売上(億円/万個・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 | 762 | 0.40 | 305 | 16 |
| 10 年後 中立 | 915 | 0.46 | 421 | 23 |
取り方:2025年12月期の売上304.7億円・営業利益16.2億円(決算説明)。カメラ・光ピックアップのモジュールがセグメントの約半分、残りが消耗部材・商社・電解液。個数は開示がなく、モジュールの平均単価を約4千円と置いて売上全体を個数換算した推定762万個。単価の置き方は粗く、伸びの読みは売上の伸びで確かめている。
リスクと懸念
再生の増設が需要を上回る
国内の三本木、台湾の台南、中国と3拠点で月産を2028年に約120万枚へ広げる計画だ。同業の増設も続く中で供給が先行すれば、単価と稼働が同時に落ち、営業利益率38%台の前提が崩れる。大口の顧客が価格の交渉力を強めれば、利益が顧客側へ移る。
中国の新品ウェーハの単価下落
8インチは2025年に単価が約1割下がった。中国の地元メーカーの増産と、安いシリコン部材の拡販が利益率を押し下げている。国産化は需要を守る一方、競争相手も同じ国内で増やすため、利益率を保つのは簡単でない。
12インチ合弁の赤字と再編
SGRSは2025年に売上2億元に対し営業損失2億元を出した。2026年9月の再編で、残りの出資を株式と現金の対価で取り込む。完了は2027年で、条件はまだ確定していない。立ち上がりが遅れれば、赤字の期間が延び、新株発行で既存株主の取り分が薄まる。
資本配分と買収の規律
2026年7月、売上がほぼ無い安徽晶隆を約107億円で取得した。エピウェーハは新しい成長の芽だが、買収額に見合う利益が出るかは未知数だ。2027年以降は新規M&Aも想定しており、同じ判断が重なれば、純現金は株主の価値に変わらない。
少数株主への利益の流出
中国子会社GRITEKは出資が約39%にとどまり、連結した利益のかなりの部分は少数株主に流れる。2026年の中間期は、非支配株主に約22億円が帰属した。中国事業が育つほど、RSの株主の取り分は営業利益の伸びを下回る。
顧客集中と半導体の循環
再生は台湾の大手ファウンドリなど少数の顧客に大きく依存する。半導体の投資が停滞すれば、試験用ウェーハの使用枚数も減る。装置・部材の売上も前年の反動で振れやすく、2026年の中間期には利益率の低下が株価の急落を招いた。
米中の対立と為替
中国子会社は米中の輸出管理や規制の影響を受けやすい。人民元と円の動きで、経常利益も振れる。筋書きでは為替を動かしていないが、現実には業績の読みを難しくする。
今後の分かれ目
- 再生の月産が計画どおり2027年に47万枚(三本木)まで増え、営業利益率が35%を超えて保たれたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。増設が需要に追いつく証拠になる。
- 再生の営業利益率が3四半期続けて30%を割ったら
- やや悲観・悲観に重みを移す。同業の増設か顧客の交渉力の強まりが効き始めたと見る。
- 2027年に中国の再編が完了し、12インチが黒字に近づいたら
- 中国の新品ウェーハの利益率の前提を引き上げる。新株発行の規模も合わせて確かめる。
- 新たな大型M&Aが発表され、買収先が赤字のままなら
- 資本配分への疑問が強まったと見て、中立の倍率を一段下げる見直しをする。
- 中国向けの輸出管理が強化され、GRITEKの調達や資金に影響が出たら
- 中国の新品ウェーハの筋書きを悲観側に寄せる。再生の台湾・日本の拠点は影響が小さい。
- 自社株買いや配当性向の引き上げなど、純現金を株主に戻す方針が示されたら
- 余った現金の戻り方を上げる見直しをする。価値が増える方向に働く。
見ておくもの
- 再生ウェーハの月産枚数と営業利益率(三本木・台南の増設の進み具合)
- プライムウェーハの8インチ単価とシリコン部材の利益率
- SGRSの12インチの月産と損益、2027年の再編の対価と新株発行の規模
- 安徽晶隆などエピウェーハ事業の売上と赤字の推移
- 装置・部材等の営業利益率と電解液事業の立ち上がり
- 純現金の推移と配当・自社株買いの方針
倍率と資本コストの決め方
数量は再生・プライム・装置部材ごとに実質で置き、物価3%は価格に入れた(再生は競争と顧客の交渉力を見て1.30倍、プライムは単価下落を見て1.15倍)。倍率は資本コスト7.5%(基本7.5%に品質+0.75%)と堀の残る割合1/2から式で出し、上限の約9割に置いた。純現金751億円のうち株主に戻る分を300億円と推定し、戻り方0.5で足した。今の株価からは倍率を決めていない。売上の数字は決算説明の事業別の開示と中計の月産計画から置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.8→20.65 倍・やや楽観 PER 12.9→20.12 倍・中立 PER 12.5→19.3 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。再生は需要が半導体の稼働に連なり、新品ウェーハや部材は市況で振れるため循環は+0.5。値決めは顧客が握る面と寡占が相殺して0。純現金で借金は0。TSMCなど大口顧客への依存と中国の規制を寿命の面で+0.25。合計+0.75%で資本コストは7.5%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.50%。