結論
駒井ハルテックは、橋と建物の鉄骨をつくる中堅だ。売上の6割が建築鉄骨、4割弱が鋼橋で、最近は洋上風車のタワーという新しい事業に手を出している。筆者の結論は、本質価値は今の時価総額を下回る「やや割高」。時価総額は自己資本の3割に沈むが、その自己資本を使って稼ぐ力が薄く、数字ほどの安さはないと見る。
稼ぎの質が低い。営業利益率は過去10年で1〜5%台にとどまり、足元は1%台だ。会社は2030年3月期に営業利益20億円を掲げるが、前の計画は売上目標を430億円から340億円へ引き下げたばかりだ。
救いは財産の厚さだ。投資有価証券が121億円あり、会社は政策保有株の縮減を決めて実際に売っている。ただし売却代金は風車タワーへの投資に回す方針で、株主に戻る道筋は弱い。
筆頭株主にシンガポールの投資家が上がってきた点は気になる。会社の動きを変える力にはなりうるが、現時点で筆者はそれを価値に織り込まない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、帳簿の安さに引かれてはいけない会社だ。自己資本の350億円に対し時価総額は100億円で、数字の上では3分の1以下だ。しかし自己資本の中身は工場、機械、保有株、土地だ。工場と機械は、稼ぐ力が弱ければ帳簿どおりには売れない。
株主のものになる利益は、年に10億円台前半しかない。そこから新しい事業の立ち上げ費用が出ていく。厚い自己資本が低い稼ぎしか生まないなら、貯めた利益は額面を下回る価値しかない。
安全域はある。保有株を売って借入を返せば、悲観の姿でも価値はゼロにならない。ただし、新規事業の成否が読めず、橋も鉄骨も値段を決める力が弱い。筆者は、10年持つ事業として確信を持てない。資産を使って稼ぐ形が見えたときに、評価を改める。
数字が安いことと、価値があることは別の話だ。この会社は、前者は満たしているが後者はまだ示せていない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ口は二つある。建築鉄骨は、大型ビルや工場の骨組みを工場で作って現場で組む仕事だ。民間の再開発や設備投資で動くため、景気に敏感になる。売上の約6割を占めるが、利益率は低く、都内の再開発の延期で足元の受注は大きく落ちている。
橋梁は、道路橋や鉄道橋の鋼橋を設計・製作・架設する事業だ。国や高速道路会社が発注し、入札で決まる。売上は約4割で、受注残は積み上がっている。老朽橋の補修が長く続くが、新しく架ける橋は減る。
新しく育てているのが、洋上風車のタワーなどを作るインフラ環境事業だ。開始は2027年度に延期された。立ち上げの費用が先行し、2025年3月期は営業利益を7億円ほど押し下げた。成功すれば売上は中計で100億円を見込むが、国内の洋上風力の需要が前提になる。
保有地の賃貸もある。売上は小さいが、利益率は高い。
工事の利益は、鋼材と人手の値段に左右される。受注のときに決めた値段で数年かけて作るため、資材や労務が上がる局面では利益が削られる。この数年の利益の薄さは、受注の落ち込みとこの値決めの仕組みの両方から来ている。
優良さと弱いところ
堀は薄い。橋も鉄骨も発注者が値段を決める面が強く、技術力は受注の取りやすさにはなっても、高い値段をつける力にはならない。設計から施工まで一貫でこなす力は売りだが、大手ゼネコンや同業の大手には規模で劣る。
収益性は低い。営業利益率は2010年代後半の5%台が山で、足元は1%台だ。自己資本利益率は過去10年の中央値で2%台にとどまり、資本コストを大きく下回る。利益が出ても、厚い自己資本に比べて小さいのが問題だ。
財務は一見堅い。自己資本比率は5割を超える。一方で、純有利子負債は65億円あり、営業利益で支払利息の3.6倍しか稼げていない。借入の金利が上がる局面では、利益がさらに削られる。
経営の資本配分は評価が分かれる。政策保有株の縮減に動いた点は前向きだが、売却代金を新規事業へ回す方針は、これまでの稼ぐ力を考えると不安が残る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
橋梁は、公共工事の予算に左右される。高度成長期に架けた橋の更新と補修が長期の追い風だが、新しく架ける橋は人口減で細る。国内の橋梁・高架構造物の工事金額は年2兆円前後で、足元は横ばいだ。各社とも補修へ軸足を移しており、価格競争が起きやすい。
建築鉄骨は、民間の再開発や物流倉庫の投資で動く。都内の大型再開発は、建築費の上昇と人手不足で見直しや延期が相次ぐ。鋼材の価格は中国の過剰生産で上値が重く、利益は工場の稼働で決まる。大手同業との価格競争も厳しい。
洋上風力は、国の計画では2030年代に大きく伸びる。ただし入札の撤退や事業費の上昇で、計画は遅れ気味だ。浮体式の鋼構造物は国内の製造の担い手がまだ定まらず、先に参入する旨みと、需要が来ない怖さが同居する。
全体として、10年の需要は物価並みに伸びるだけで、数量はほぼ横ばいと筆者は見る。
人手不足も効く。溶接や架設の技能者が足りず、受注を取っても工事をこなせない会社が出る。賃金は物価を上回って上がるため、値段を転嫁できる会社と、できない会社の差が開いていく。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、年3億円強を安定して払う方針だ。中計2026でも「安定配当を基本」とし、自社株買いやDOEには触れていない。過去の自社株買いは1〜4億円と小さい。
政策保有株は2024年5月に縮減を決め、同年中に約13億円の売却益を出した。売却代金は風車タワーなどの成長投資に回す方針で、株主への還元には向かわない。
株主では、シンガポールの投資家が2026年5月に筆頭株主へ上がった。保有比率は約10%で、会社は実質保有を確認できていないと注記している。時価総額が自己資本の3割という状況は、買収や株主提案を招きやすい。ただし、動きは確認できる範囲でここまでだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額は自己資本の3割で、投資有価証券だけで時価総額に迫る。会社は政策保有株を売る方針で、売却益も出した。資本効率を上げる動きが始まっている以上、市場の評価は低すぎる。
橋梁の受注残は積み上がり、老朽橋の補修需要は10年続く。風車タワーが2027年度に動き出せば、売上100億円の新しい柱になる。筆頭株主に外部の投資家が入り、資本の使い方に圧力がかかる点も見逃せない。開発費が消えるだけで、営業利益は計画の20億円に近づく。物価が3%で続く世界では、土地と設備の価値も名目で上がり、帳簿はむしろ控えめになる。
配当は年3億円強で、利益の3割に満たない。余力は十分で、増配や自社株買いに動く余地がある。市場は新規事業の失敗だけを織り込みすぎている。鋼材の高騰が一服し、鉄骨の利益率が3%から5%に戻るだけでも、営業利益は5億円ほど増える。数字が動けば、評価は一気に変わりうる。橋梁の受注残が前年より1割以上厚いことも、足元の追い風だ。
慎重な見方
利益率が低い。営業利益率は1〜5%台にとどまり、自己資本利益率は資本コストを大きく下回る。厚い自己資本は稼ぎにつながっておらず、貯めた資産が割安に見えるのは見かけだ。
計画の未達が続いている。前の計画は売上を3割近く下方修正し、鉄骨の受注は4割減り、足元の受注も落ちている。風車タワーは需要が見えないまま設備に数十億円を投じ、減損のリスクがある。売却代金は株主に戻らず、借入の金利上昇が利益を削る。筆頭株主の登場も、買い手の価格が高いと保証するものではない。人手不足と賃金の上昇が続けば、橋も鉄骨も工事の利益はさらに薄くなる。
利益が小さいまま配当を続ければ、内部に残る金は増えない。時価総額が安いのは、市場が資産の価値を正しく割り引いているからだ。工場と機械は稼働が落ちれば簿価で売れず、保有株も売却益に税がかかる。帳簿の自己資本を、そのまま取り分とは見られない。計画の目標が高く置かれてきた歴史を考えると、新しい計画も割り引いて見るべきだ。
どちらに重みを置いたか
稼ぐ力が資本コストを下回る点が重い。資産の厚さは悲観の床として効くが、中立の価値を押し上げる力は小さい。確率はやや悲観側に寄せ、中立は4割弱に抑えた。強気の見方で最も説得力があるのは政策保有株の売却と還元の拡大だが、実行の証拠はまだない。弱気の見方では、計画の未達が続いてきた実績が重く、この点で慎重な見方がやや強い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,073 円187 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 689 円32 億円)。 今の値に割り戻すと 2,260 円104 億円、今との差 +3.9%、 期待の年率 +8.2%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 8,387 円384 億円 | 1,200 円55 億円 | +341.0% | +16.0% | 479 円22 億円 |
| やや楽観 | 17% | 6,720 円308 億円 | 982 円45 億円 | +254.3% | +13.5% | 1,309 円60 億円 |
| 中立 | 38% | 5,179 円237 億円 | 786 円36 億円 | +174.4% | +10.6% | 2,267 円104 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,613 円74 億円 | 480 円22 億円 | −3.7% | −0.4% | 565 円26 億円 |
| 悲観 | 13% | 829 円38 億円 | 262 円12 億円 | −49.8% | −6.7% | 142 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,073 円187 億円 | 689 円32 億円 | +119.1% | +8.2% | 4,762 円218 億円 |
今の株価時価総額 2,174 円100 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 5% 風車タワーが立ち上がり、橋と鉄骨も強い 利益 27 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 8,387 円384 億円
洋上風車タワーが2027年度に始まり、10年後には年40本ほどを納める。浮体式の洋上風力が国の計画どおり広がり、鋼構造物の製造に参加できた姿だ。橋梁は老朽橋の補修と更新で受注が安定し、営業利益率は12%まで上がる。鉄骨は都心の再開発が戻り、工場の稼働が上がって5%台に乗る。
新規事業の開発費は売上の中に吸収され、本社の費用は物価並みに抑えられる。利益は計画の20億円を大きく超え、配当に加えて自社株買いも出る。保有株の売却益と合わせ、自己資本の使い方が変わる。
ただしこの姿には、洋上風力の需要が国内で本当に立ち上がることと、受注を価格競争に負けずに取れることの両方が要る。筆者は低い確率でも無視はできないと見る。
- 橋梁:数量 7.6(鋼橋の製作・架設量(千トン・年、推定))× 価格 24(1 千トンあたり売上(億円・名目、設計・架設を含む))→ 売上 183 億円・営業利益 22 億円。7.6×24.12、営業利益率 12.0%
- 鉄骨:数量 60.0(鉄骨の製作量(千トン・年、推定))× 価格 4.69(1 千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 281 億円・営業利益 16 億円。60.0×4.69、営業利益率 5.5%
- インフラ環境(風車タワー):数量 40.0(風車タワーなど(本・年、推定))× 価格 2.68(1 本あたり売上(億円・名目))→ 売上 107 億円・営業利益 11 億円。40.0×2.68、営業利益率 10.0%
- 不動産:数量 20.0(賃貸面積(千㎡、推定))× 価格 0.27(1 千㎡あたり賃料(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 4 億円。20.0×0.268、営業利益率 78.0%
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)80 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 384 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:洋上風車タワーの立ち上げ、橋梁の保全、再開発の再開が同時にそろう必要がある。計画の未達が続いてきた会社なので、確度は低い。
やや楽観 17% 橋は堅調、風車タワーは小さく立ち上がる 利益 21 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 6,720 円308 億円
橋梁は老朽橋の補修が増え、新設の減少を補う。営業利益率は10%台前半で安定する。鉄骨は再開発の見直しが一巡して受注が戻るが、価格競争は残り、利益率は5%に届かない。
洋上風車タワーは遅れながらも始まり、10年後に年28本ほどを納める。陸上風車の部品と合わせて、インフラ環境事業が売上の1割強になる。開発費の負担は消え、全社の営業利益は計画に近づく。
還元は配当が中心で、利益の伸びに合わせて少しずつ増える。財務の安全度は上がるが、資本効率はまだ資本コストに届かない。筆者は、この姿を妥当な上振れと見る。
- 橋梁:数量 7.4(鋼橋の製作・架設量(千トン・年、推定))× 価格 24(1 千トンあたり売上(億円・名目、設計・架設を含む))→ 売上 179 億円・営業利益 19 億円。7.4×24.12、営業利益率 10.5%
- 鉄骨:数量 58.0(鉄骨の製作量(千トン・年、推定))× 価格 4.69(1 千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 272 億円・営業利益 13 億円。58.0×4.69、営業利益率 4.8%
- インフラ環境(風車タワー):数量 28.0(風車タワーなど(本・年、推定))× 価格 2.68(1 本あたり売上(億円・名目))→ 売上 75 億円・営業利益 6 億円。28.0×2.68、営業利益率 8.5%
- 不動産:数量 20.0(賃貸面積(千㎡、推定))× 価格 0.27(1 千㎡あたり賃料(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 4 億円。20.0×0.268、営業利益率 78.0%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)80 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 308 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:橋梁の受注残が積み上がっている点は確度が高い。風車タワーが小さくても動き出す程度なら、現実的な範囲に入る。
中立 38% 橋は物価並み、鉄骨は横ばい、利益は薄いまま 利益 15 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 5,179 円237 億円
橋梁は10年でトン数が3%ほど減り、値段は物価並みに上がる。営業利益率は10%を割る水準に落ち着く。足元の16%に近い数字は、受注残が厚い今の山と見る。鉄骨は再開発の延期が続いたあと横ばいに戻り、利益率は4%台前半にとどまる。
洋上風車タワーは始まるが遅れ、10年後に年18本ほどにとどまる。立ち上げの費用は重く、利益率は7%に届かない。不動産の賃貸は物価並みに増えるが、全体の中では小さい。
全社では営業利益が18億円前後、売上は490億円前後になる。借入の金利が上がる分が利益を削る。会社の計画の20億円にはわずかに届かない姿だ。還元は配当が中心で、利益の2割強にとどまる。
- 橋梁:数量 7.1(鋼橋の製作・架設量(千トン・年、推定))× 価格 24(1 千トンあたり売上(億円・名目、設計・架設を含む))→ 売上 171 億円・営業利益 16 億円。7.1×24.12、営業利益率 9.5%
- 鉄骨:数量 56.0(鉄骨の製作量(千トン・年、推定))× 価格 4.69(1 千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 263 億円・営業利益 11 億円。56.0×4.69、営業利益率 4.3%
- インフラ環境(風車タワー):数量 18.0(風車タワーなど(本・年、推定))× 価格 2.68(1 本あたり売上(億円・名目))→ 売上 48 億円・営業利益 3 億円。18.0×2.68、営業利益率 7.0%
- 不動産:数量 20.0(賃貸面積(千㎡、推定))× 価格 0.27(1 千㎡あたり賃料(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 4 億円。20.0×0.268、営業利益率 78.0%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.1% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)80 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 237 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は新設が細り補修が補う形でほぼ横ばい、値段は物価並み、利益率は計画の4%台を下回る。この会社の過去の利益率と計画の未達の歴史に最も近く、厚く置いた。
やや悲観 27% 入札が荒れ、風車タワーが立ち上がらない 利益 5 億円 · PER 3.8 倍 · 株価時価総額 1,613 円74 億円
新設橋の入札が荒れ、値段は物価の分を取り切れない。橋梁の営業利益率は7%台、鉄骨は3%に下がる。受注の落ち込みが続き、工場の稼働が落ちる。
洋上風車タワーは需要が見えず、投資は小さく、年6本ほどにとどまる。開発費に見合う利益は出ない。全社の営業利益は5億円台で、借入の金利の上昇がそのまま純利益を削る。
配当は無理のない水準まで下げざるをえない。保有株の売却代金は借入の返済と設備の更新に回り、株主に戻る分は小さくなる。筆頭株主の動きがあっても、利益を生む力が戻らない限り、評価の底上げにはつながらない。
- 橋梁:数量 6.6(鋼橋の製作・架設量(千トン・年、推定))× 価格 23(1 千トンあたり売上(億円・名目、設計・架設を含む))→ 売上 154 億円・営業利益 12 億円。6.6×23.4、営業利益率 7.5%
- 鉄骨:数量 52.0(鉄骨の製作量(千トン・年、推定))× 価格 4.48(1 千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 233 億円・営業利益 7 億円。52.0×4.48、営業利益率 3.0%
- インフラ環境(風車タワー):数量 6.0(風車タワーなど(本・年、推定))× 価格 2.40(1 本あたり売上(億円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。6.0×2.4、営業利益率 0.0%
- 不動産:数量 20.0(賃貸面積(千㎡、推定))× 価格 0.26(1 千㎡あたり賃料(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 4 億円。20.0×0.26、営業利益率 75.0%
倍率:事業の ROE は1%台で k 8.5% を大きく下回る。RONIC=8.75%+1/2×(1.2%−8.75%)=5.0% で、g 4% から正当化 PER は 4 倍弱。稼ぐ力が資本コストに届かない分を見て3.8倍に置いた。余った現金は谷で食うとみて今の額の0.75倍を戻り方0.5で足している。
確率:新設の橋が細る中で入札の競争が荒れる素地がある。鉄骨の受注は足元で大きく落ちており、風車タワーの延期も続いている。
悲観 13% 入札の崩れと投資の失敗、稼ぐ力が消える 利益 −7 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 829 円38 億円
新設橋が3割減り、入札の値段は物価が上がっても上がらない。橋梁の利益率は5%、鉄骨は1〜2%に落ちる。洋上風車タワーの設備は稼働が上がらず、減損を出す。
全社の営業利益は赤字に沈み、借入の返済が重くなる。配当は2年ほどで止まり、自己資本は減損の分だけ減る。
この姿では、稼ぐ力ではなく売れる資産が価値を決める。保有株を売り、借入を返した残りが、株主の手元に残る価値になる。筆頭株主が動いても、買い手が付くのは資産の価値までで、事業の価値は払われない。
配当は早い段階で止まり、保有株を売って借入を返す局面が続く。それでも倒産に至る姿ではなく、資産の安さが下値を支える。
- 橋梁:数量 5.8(鋼橋の製作・架設量(千トン・年、推定))× 価格 23(1 千トンあたり売上(億円・名目、設計・架設を含む))→ 売上 131 億円・営業利益 7 億円。5.8×22.5、営業利益率 5.0%
- 鉄骨:数量 45.0(鉄骨の製作量(千トン・年、推定))× 価格 4.40(1 千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 198 億円・営業利益 3 億円。45.0×4.4、営業利益率 1.5%
- インフラ環境(風車タワー):数量 6.0(風車タワーなど(本・年、推定))× 価格 2.40(1 本あたり売上(億円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 −2 億円。6.0×2.4、営業利益率 -15.0%
- 不動産:数量 20.0(賃貸面積(千㎡、推定))× 価格 0.22(1 千㎡あたり賃料(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 3 億円。20.0×0.22、営業利益率 75.0%
倍率:稼ぐ力は赤字で、価値は売れる資産の税後で決まる。投資有価証券121億円の税後約103億円から純有利子負債65億円を引いた約38億円を床にし、今の自己資本に近い318億円に0.12倍を掛けた。工場や機械は売れても帳簿を大きく割るので数えない。
確率:2000年代に橋梁各社が経験した入札価格の崩れが再び起き、風車タワーの投資が回収できない。確度は低いが、過去に赤字の期が5回ある。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
橋梁
道路橋・鉄道橋の鋼橋を設計・製作・架設する、会社の柱の一つ。
| 数量鋼橋の製作・架設量(千トン・年、推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目、設計・架設を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7.3 | 18 | 131 | 12 |
| 10 年後 中立 | 7.1 | 24 | 171 | 16 |
取り方:橋梁の売上は2026年3月期に約132億円(売上の38%)。橋建協の統計で道路橋は1トンあたり約156万円(2018年度)、その後の鋼材と労務の値上がりで180万円(1千トン18億円)とみて、年の量を約7.3千トンと推定した。開示は金額のみで推定。利益は全社の営業利益4.7億円と事業開発費の約9億円から逆算した推定で、一次の開示は確かめられなかった。
鉄骨
超高層・大型ビル・工場の鉄骨を製作・施工する、売上の6割を占める事業。
| 数量鉄骨の製作量(千トン・年、推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 58.6 | 3.50 | 205 | 9 |
| 10 年後 中立 | 56.0 | 4.69 | 263 | 11 |
取り方:鉄骨の売上は2026年3月期に約205億円(売上の60%)。建築鉄骨の加工・施工は1トンあたり35万円前後とみて(1千トン3.5億円)、年約5.9万トンと推定した。開示は金額のみ。利益率は4%台前半と推定(全社から逆算)。
インフラ環境(風車タワー)
洋上・陸上の風車タワーや部品を作る新しい事業。今は立ち上げの費用が先行する。
| 数量風車タワーなど(本・年、推定) | 価格1 本あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 2.00 | 2 | −6 |
| 10 年後 中立 | 18.0 | 2.68 | 48 | 3 |
取り方:売上は2億円ほどで、洋上風車タワーの量産は2027年度に延期された。中期計画の2030年3月期の目標は売上100億円、年産30本の体制(2024年版の計画)。1本あたり売上を数億円とみた推定。営業損失は事業開発費(2025年3月期で7.1億円)が中心。
不動産
保有地・建物の賃貸。小さいが利益率が高い。
| 数量賃貸面積(千㎡、推定) | 価格1 千㎡あたり賃料(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 0.20 | 4 | 3 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 0.27 | 5 | 4 |
取り方:売上は4億円ほど、利益率は8割前後と推定。面積は賃料を年2万円/㎡とみた推定。開示は金額のみ。
リスクと懸念
風車タワーへの投資が回収できない
洋上風力の国内需要が計画どおり立ち上がらなければ、設備投資の数十億円が遊ぶ。開始はすでに2027年度へ延期された。減損が出れば自己資本が減り、利益も数年止まる。
入札価格の悪化
新設橋は減る一方で、補修へ各社が流れ込む。入札が荒れると、橋梁の利益率は一気に落ちる。2000年代の橋梁業界の価格崩れは、この会社の赤字の期にも重なっている。
建築鉄骨の受注の落ち込み
鉄骨の受注高は2026年3月期に4割減り、2027年3月期の第1四半期も大きく落ちた。再開発の延期が続くと、工場の稼働が下がり、利益が消える。
金利の上昇
純有利子負債は65億円。借り換えで金利が3.5%前後になると、利払いは年2億円ほど増える。営業利益が数億円の会社には重い。
計画未達の繰り返し
前の計画は売上目標を430億円から340億円へ引き下げた。中計2026の営業利益20億円も、過去の実績からは高い目標だ。未達なら株主還元の拡大も遠のく。
資本の使い方への不信
政策保有株の売却代金が成長投資に回り、株主に戻らない。投資が稼ぎにつながらなければ、厚い自己資本は低い評価のまま残る。
今後の分かれ目
- 風車タワーが2027年度に量産を始め、2期続けて営業黒字になったら
- 新規事業の費用負担が消え、全社の営業利益は計画に近づく。楽観とやや楽観の確率を上げてよい。
- 政策保有株の売却代金を、自社株買いや増配に回すと発表したら
- 余った現金の戻り方を1.0へ引き上げる根拠になる。価値は大きく上がる。
- 鉄骨の受注が2期続けて前年を下回ったら
- 工場の稼働が落ち、利益率が3%を割る。やや悲観の確率を上げる。
- 筆頭株主が株主提案や買い増しに動いたら
- 資本政策が変わる可能性がある。保有株の売却や還元の拡大が早まる方向で、確率を見直す。
- 橋梁の入札で落札率が大きく下がったら
- 2000年代の価格崩れの再来を疑う。悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 鉄骨・橋梁の受注高と受注残
- 風車タワーの量産開始時期と設備の稼働
- 政策保有株の売却と代金の使い道
- 筆頭株主の持株比率の変化
- 借入金利と支払利息
倍率と資本コストの決め方
倍率は、k 8.5%と長期の成長率4%から、利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)で決めた。事業のROEは4%前後で k を下回るため、中立のPERは8倍弱の式の値の約94%に置いた。今の株価や過去のPER・PBRは使っていない。時価総額が自己資本の3割という安さは、ROEが低いことの結果であり、式の外の割安とは見ていない。悲観の床は投資有価証券の税後から純有利子負債を引いた額で、過去のPBRの底からは置いていない。10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.8→11.76 倍・やや楽観 PER 8.6→11.76 倍・中立 PER 7.4→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。