結論
スーパーツールは、堺市に本社工場を構える作業工具と吊クランプのメーカーだ。売上は54億円、うち46億円が工具とクランプの金属製品で、残りは撤退を決めた太陽光の施工である。
筆者の結論は割高だ。自己資本は103億円あるが、事業が生む純利益は2億円前後にとどまる。資本コストに届かない稼ぎに、帳簿どおりの値段は付かない。
強みは100年の鍛造技術と、鉄鋼・造船の現場で信頼される吊クランプだ。管理アプリ「S・M・A・Я・T」でクランプの点検記録を握る試みも始まった。ただし売上の半分近くをトラスコ中山と山善の2社に頼り、値決めの主導権は流通側にある。
今は14億円の新工場を建てている最中だ。生産性が上がり、金属製品の利益率が15%台に戻れば利益は増える。それでも全社の営業利益率は6%前後で、自己資本の厚さに見合う稼ぎにはならない。
帳簿の大半は再評価済みの工場の土地と在庫で、株主の手には戻りにくい。10年後の中立の時価総額は20億円台とみる。土地と在庫の厚さを価値に数えたい人には安く見えるが、筆者はそこに安全域を見ない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、帳簿の厚さに惑わされてはいけない会社だ。
自己資本103億円のうち45億円は本社工場の土地で、すでに時価に近い値で再評価してある。37億円は製品と仕掛品の在庫だ。どちらも事業を続ける限り現金にならない。株主にとっての価値は、事業が毎年いくら稼ぐかで決まる。
その稼ぎが2億円前後だ。オーナー利益、つまり設備の維持に要る投資を引いて自由に使える現金は、新工場の期間はさらに細る。資本コストを8%強とすると、2億円の利益の値打ちは20億円台にとどまる。
10年後もこの事業は残る。吊クランプの信頼は簡単に崩れない。ただ堀は狭く、流通に値決めを握られている。新工場で利益率が上がれば話は変わるが、全社費の重さを考えると、資本に見合う稼ぎまでは遠い。
安全域は、土地と在庫の厚さではなく、稼ぐ力で測るべきだ。その目で見ると、今の値段に余裕はない。持ち続けたい事業かと問われれば、吊クランプの部分だけならそうだが、会社全体では答えに迷う。
何で稼ぐ会社か
創業は1918年。スパナやレンチの鍛造から始まり、1977年に吊クランプを出した。吊クランプは、鋼板をクレーンで吊り上げる時につかむ金具だ。鉄鋼、造船、橋梁の現場で使う。
事業は金属製品と環境関連の2つに分かれる。稼ぎ頭は金属製品で、2026年3月期の売上は46億円、セグメント利益は6億円だった。中身は作業工具、吊クランプ、門型クレーンなどの工場機械の3つである。プーラと呼ぶ部品の抜き取り工具や、アルミ製の持ち運べる門型クレーンが最近の売れ筋だ。
環境関連は子会社のスーパーツールECOが手がける水上の太陽光発電所の施工だ。収益とシナジーが見込めず、撤退を決めた。受注済みの案件を終えれば、売上は消える。
売り先は機械工具の商社が中心だ。トラスコ中山が売上の29%、山善が17%を占める。海外は韓国の子会社が窓口で、韓国の建設不況で落ち込んだが、造船向けのクランプは受注が増えている。
工場は堺市の本社に集める。14億円で新工場を建て、2026年秋の完成を目指す。従業員は連結で95人の小さな会社だ。在庫は売上の7割に近く、多品種の工具を作り置きして商社の注文に応える形が、資本を重くしている。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、吊クランプの安全への信頼だ。
重い鋼板を吊る道具は、外れれば人が死ぬ。現場は実績のある銘柄を変えたがらない。点検の記録をアプリで管理する仕組みは、乗り換えの手間をさらに増やす。この部分の値決め力は本物だ。
ただ、会社全体で見ると堀は浅い。作業工具はKTCやTONEなどの国内ブランドと、通販に並ぶ安い海外品に挟まれる。トラスコ中山は自社ブランドの工具も売っており、仕入れ先の1社にすぎない。
数字も弱さを示す。ROE、つまり自己資本に対する純利益の割合は、過去10年の中央値で3.9%、直近は1.9%だ。資本コストの8%台に遠い。在庫は売上の7割に近く、資本が寝ている。
環境関連の失敗も見ておきたい。本業と縁の薄い事業に手を出し、2025年3月期に4.9億円の撤退損を出した。資本の使い方に課題が残る。新工場がその反省の上に立つ投資かどうかは、まだ数字で示されていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
作業工具は成熟した市場だ。工場の保全、設備の据え付け、建設の現場で使われ、数量は国内の設備投資と人手の数にゆるやかに連動する。
国内では整備士や工員が減っていく。道具の本数は細るが、1人あたりの作業を速める工具や、軽いアルミのクレーンの需要は残る。通販の普及で、価格は比べられやすくなった。工具商社が自社ブランドを広げ、メーカーの値決めの余地は狭まっている。
吊クランプは事情が違う。鉄鋼の生産量は国内で頭打ちだが、造船は韓国と日本で受注が戻りつつある。安全規制が厳しくなるほど、記録の残る信頼品に需要が寄る。アジアと欧州での販売は堅調だ。
鋼材と人件費は物価とともに上がる。ブランドのあるクランプは値上げが通るが、汎用の工具は流通の顔色をうかがう。この差が利益率を分ける。
筆者の見立てでは、国内の工具の数量は10年で1割近く減り、海外のクランプがそれを埋める。金属製品の数量は横ばいがせいぜいだ。
競合の顔ぶれも見ておく。工具ではKTCとTONEがブランドで先を行き、クランプではイーグル・クランプなどの専業と競う。スーパーツールは両方に足を置くが、どちらでも首位ではない。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。2026年3月期の配当性向は83%に達した。2027年3月期は1割強の減配を予想している。利益の大半を配っているため、自己資本はほとんど増えない。自社株買いの実績は乏しい。
大きな使い道は新工場だ。総額14億円を、借入と新株の発行で賄うと有価証券報告書に書いている。株を新たに出せば、今の株主の取り分は薄まる。
政策保有株は4.8億円あり、山善とトラスコ中山の株が中心だ。売り先との関係を保つための持ち合いで、売る方針は示していない。
時価総額は46億円と小さく、自己資本の半分にも届かない。買収の受け皿としては魅力があるが、経営陣が株の多くを握る形ではなく、具体的な動きは見えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
見落とされているのは、吊クランプの強さだ。鋼板を吊る道具は命にかかわり、現場は実績のある銘柄から動かない。造船の受注は韓国と日本で戻りつつあり、海外向けの機種を増やしたクランプの受注は増えている。アジアと欧州でも販売は堅調だ。
新工場は守りの投資ではない。老朽化した設備を入れ替え、鍛造から組み立てまでを一気通貫にする。リードタイムが縮まり、原価が下がる。2025年3月期の金属製品の利益率は15.6%あった。新工場がそれを取り戻せば、営業利益は倍になる。
環境関連の撤退は、むしろ前向きだ。本業と縁の薄い事業を畳み、経営の目が工具とクランプに戻る。撤退損は既に出し切った。
資産も厚い。自己資本は時価総額の2倍あり、土地だけで時価総額に近い。配当性向は8割を超え、株主に報いる姿勢ははっきりしている。小さな会社だが、利益が戻れば今の値段は安かったことになる。管理アプリで点検記録を握れば、クランプは道具の売り切りから、記録とつながる商売に変わる。
慎重な見方
自己資本の厚さは、株主の手に届かない。45億円の土地は新工場が建つ本社の敷地で、売る話ではない。37億円の在庫は売上の7割に近く、資本の効率の悪さそのものだ。
稼ぎは長く細っている。売上は10年で年6%強のペースで縮み、ROEは過去10年の中央値で3.9%しかない。資本コストに届かない会社が利益をため込んでも、価値は増えない。
値決めの力も弱い。トラスコ中山と山善で売上の46%を占める。トラスコは自社ブランドの工具も売る。メーカーの代わりはいくらでもいる、というのが流通の本音だ。通販には安い海外品が並ぶ。
新工場の14億円は、売上の4分の1にあたる。資金は借入と新株の発行だ。純現金は純負債に変わり、金利は3.5%の時代になる。取り壊しの特別損失で、今期の第1四半期は赤字に落ちた。
環境関連で失敗した経営が、新工場で成果を出せる保証はない。全社費は物価とともに膨らみ、利益率の改善を食う。95人の会社に4億円の全社費は重く、規模の小ささがそのまま弱点になる。
どちらに重みを置いたか
強いのは慎重な見方だ。吊クランプの信頼は本物だが、会社全体の稼ぎは小さく、流通に値決めを握られている。新工場で金属製品の利益率が戻っても、全社費の重さで資本コストには届かない。
確率は中立を厚くし、悲観側をやや厚めに置いた。土地と在庫の厚さは稼ぐ力に結びつかないため、上振れの確率は小さく見ている。新工場の成果が2期続けて数字に出れば、見方を改める。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,084 円26 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 581 円14 億円)。 今の値に割り戻すと 897 円21 億円、今との差 −53.2%、 期待の年率 −1.4%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,121 円50 億円 | 847 円20 億円 | +54.8% | +4.5% | 208 円5 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,647 円39 億円 | 720 円17 億円 | +23.4% | +2.1% | 426 円10 億円 |
| 中立 | 40% | 1,139 円27 億円 | 635 円15 億円 | −7.5% | −0.8% | 710 円17 億円 |
| やや悲観 | 23% | 592 円14 億円 | 466 円11 億円 | −44.9% | −5.8% | 243 円6 億円 |
| 悲観 | 12% | 394 円9 億円 | 254 円6 億円 | −66.2% | −10.3% | 78 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,084 円26 億円 | 581 円14 億円 | −13.2% | −1.4% | 1,665 円39 億円 |
今の株価時価総額 1,918 円45 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 新工場が効き、クランプが海外で伸びる 利益 4 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,121 円50 億円
新工場が2026年秋に動き出し、鍛造から組み立てまでの一気通貫で原価が下がる。金属製品の利益率は16.5%と、2025年3月期の15.6%を上回る。
吊クランプは造船の回復と海外向け機種の拡充で、アジアと欧州に広がる。アプリで点検記録を握る仕組みが海外でも採用され、乗り換えを防ぐ。数量は1.15倍、単価は物価をわずかに上回る1.36倍だ。
環境関連は撤退を終える。全社費は物価とともに増えるが、売上の伸びがそれを吸収する。営業利益は6億円台に戻り、純利益は4億円になる。
配当は利益に合わせて増え、10年の還元は20億円。それでもROEは3%台で、資本コストに届かない。
- 金属製品(作業工具・吊クランプ・工場機械):数量 106(出荷数量(万個))× 価格 6,800(1個あたりの平均単価(円))→ 売上 72 億円・営業利益 12 億円。営業利益率 16.5%
- 環境関連(太陽光の施工・撤退中):数量 0.0(施工案件数(件))× 価格 0.70(1件あたりの売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 0.0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.5% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 50 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新工場で利益率が過去の山まで戻り、海外のクランプが大きく伸び、流通の値下げ圧力も弱い、という3つが揃う必要がある。小さな会社で確度は低い。
やや楽観 18% 利益率が戻り、売上は物価並みに伸びる 利益 3 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,647 円39 億円
新工場が予定どおり動き、金属製品の利益率は15.5%まで戻る。過去の実績の範囲だ。
国内の工具は人手の減少で本数が細るが、プーラやアルミのクレーンなど作業を速める品が補う。海外のクランプは造船向けに伸び、数量は全体で1.08倍になる。単価は物価並みの1.34倍だ。
全社費は物価とともに5.3億円に増える。営業利益は5億円、純利益は3億円になる。
配当は減配の後に少しずつ戻し、10年の還元は17億円。自己資本は111億円で、ROEは2.7%にとどまる。資本に見合う稼ぎには届かない。環境関連の撤退で経営の目が本業に戻ったことは、この筋書きを支える。
- 金属製品(作業工具・吊クランプ・工場機械):数量 99.4(出荷数量(万個))× 価格 6,700(1個あたりの平均単価(円))→ 売上 67 億円・営業利益 10 億円。営業利益率 15.5%
- 環境関連(太陽光の施工・撤退中):数量 0.0(施工案件数(件))× 価格 0.70(1件あたりの売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 0.0%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.8% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 39 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新工場の目的は生産性の向上で、2025年3月期の利益率15.6%は実績がある。クランプの受注増も短信で確認できる。ただ流通の圧力は残る。
中立 40% クランプが工具の減りを埋め、利益は横ばい 利益 2 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,139 円27 億円
国内の工具の本数は1割近く減り、海外のクランプがそれを埋める。金属製品の数量は1.02倍だ。単価は流通の圧力で物価にわずかに届かず、1.32倍とみる。
新工場は原価を少し下げ、利益率は14.5%になる。今の13%よりは高いが、山には届かない。新しい建物と設備の償却は、取得時の値段で年0.5億円ほど足される。既存の設備の償却は物価で増えない。
全社費は物価で5.4億円に膨らむ。営業利益は3.6億円、純利益は2.2億円だ。新工場の借入で、利息が年0.3億円ほど増える。
配当は今の予想の水準を保ち、10年の還元は15億円。自己資本は109億円、ROEは2%だ。
- 金属製品(作業工具・吊クランプ・工場機械):数量 93.8(出荷数量(万個))× 価格 6,600(1個あたりの平均単価(円))→ 売上 62 億円・営業利益 9 億円。営業利益率 14.5%
- 環境関連(太陽光の施工・撤退中):数量 0.0(施工案件数(件))× 価格 0.70(1件あたりの売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 0.0%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.0% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 27 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新工場の効果は一部にとどまり、流通の値下げ圧力と全社費の増加が相殺する。過去10年の稼ぎの水準が続く最も自然な姿。
やや悲観 23% 流通の値下げ圧力で、利益がほぼ消える 利益 1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 592 円14 億円
トラスコ中山が自社ブランドの工具を広げ、山善も仕入れ値を絞る。国内の工具の本数は減り、単価は1.25倍にとどまる。金属製品の数量は0.92倍だ。
新工場は完成するが、稼働率が上がらない。利益率は12.5%に下がり、全社費5.4億円を引くと営業利益は1億円そこそこだ。借入の利息が重なり、純利益は0.7億円になる。
配当はさらに2割ほど下がり、10年の還元は11億円。自己資本は105億円あるが、その大半は工場の土地と在庫だ。
稼ぐ力で測る価値は8億円しかない。土地を一部手放す選択肢はあるが、決めるのは経営で、少数株主ではない。
- 金属製品(作業工具・吊クランプ・工場機械):数量 84.6(出荷数量(万個))× 価格 6,250(1個あたりの平均単価(円))→ 売上 53 億円・営業利益 7 億円。営業利益率 12.5%
- 環境関連(太陽光の施工・撤退中):数量 0.0(施工案件数(件))× 価格 0.70(1件あたりの売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 0.0%
倍率:稼ぐ力(純利益0.7億円÷k)は約8億円。売れる資産の税後から純負債を引いた額に戻り方0.5を掛けた床(約14億円)の方が大きく、その手前の今の自己資本の0.125倍に置いた。
確率:売上の46%を2社に頼る構造と、流通の自社ブランドの広がりは現に進んでいる。新工場の借入と全社費の増加が重なれば、利益はほとんど残らない。
悲観 12% 工具の値崩れと新工場の失敗で赤字が続く 利益 −2 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 394 円9 億円
通販で安い海外品が並び、汎用の工具の値段は崩れる。国内の工員は減り、金属製品の数量は0.75倍に縮む。単価は1.12倍しか上がらない。
新工場は稼働率が低く、償却と利息だけが重い。利益率は8%に落ち、全社費を賄えない。営業損失は2億円を超え、赤字が続く。
配当はまず半分になり、やがて止まる。10年の還元は6億円。赤字の穴埋めに借入が膨らみ、純負債は20億円近くに達する。
残る価値は工場の土地だ。ただ売るかどうかは経営が決める。少数株主が手にできるのは、その一部にとどまる。吊クランプの信頼だけは残り、会社は小さく続く。
- 金属製品(作業工具・吊クランプ・工場機械):数量 69.0(出荷数量(万個))× 価格 5,600(1個あたりの平均単価(円))→ 売上 39 億円・営業利益 3 億円。営業利益率 8.0%
- 環境関連(太陽光の施工・撤退中):数量 0.0(施工案件数(件))× 価格 0.70(1件あたりの売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 0.0%
倍率:赤字で稼ぐ力の床は無い。売れる資産の税後から純負債を引いた額に戻り方0.5を掛けた床(約9.5億円)の手前で、今の自己資本の0.09倍に置いた。
確率:流通の値下げ、安い海外品、国内の人手の減少、新工場の稼働不足が重なる構造的な負け。吊クランプの信頼が下支えするので1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
金属製品(作業工具・吊クランプ・工場機械)
レンチ・プーラなどの作業工具、鋼板を吊る吊クランプ、門型クレーン。トラスコ中山・山善など機械工具商社に売る。
| 数量出荷数量(万個) | 価格1個あたりの平均単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 92.0 | 5,000 | 46 | 6 |
| 10 年後 中立 | 93.8 | 6,600 | 62 | 9 |
取り方:2026年3月期の金属製品のセグメント売上46.0億円・利益6.0億円(短信)。数量の開示は無く、工具とクランプ・クレーンを混ぜた平均単価を5千円と置いて約92万個とした推定。
環境関連(太陽光の施工・撤退中)
子会社スーパーツールECOの水上設置型の太陽光発電所の施工と部材の販売。撤退方針で受注済み案件を施工中。
| 数量施工案件数(件) | 価格1件あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.0 | 0.70 | 8 | 1 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 0.70 | 0 | 0 |
取り方:2026年3月期の環境関連のセグメント売上8.4億円・利益0.9億円(短信)。件数の開示は無く、1件0.7億円として12件と推定。2028年までに撤退するため10年後は0とする。
リスクと懸念
販売先の集中
トラスコ中山と山善で売上の46%を占める。両社は自社ブランドの工具も扱い、仕入れ値の引き下げを求める力が強い。取引条件が変われば利益率はすぐに削られる。
新工場の投資と希薄化
総額14億円の新工場は売上の4分の1にあたる。資金は借入と新株の発行で、株を出せば今の株主の取り分が薄まる。稼働率が上がらなければ償却と利息だけが残る。
資本効率の低さ
ROEは過去10年の中央値で3.9%、直近は1.9%。在庫は売上の7割に近い。資本コストを下回る稼ぎが続けば、自己資本が厚くても価値は増えない。
国内の人手の減少と海外品
工場や現場の工員が減り、作業工具の本数は細る。通販では安い海外品が並び、汎用品ほど値段を比べられる。
韓国と造船の景気
海外の主力は韓国で、建設と不動産の不況で販売が落ちた。造船向けのクランプは伸びているが、造船は受注の山谷が大きい。
今後の分かれ目
- 新工場の稼働後、金属製品の利益率が15%を2期続けて超えたら
- やや楽観の確率を厚くする。全社のROEが4%に届くかを見る。
- 新工場の資金で新株を発行したら
- 株主の取り分が薄まるので、発行の規模に応じて価値を下げる。
- トラスコ中山か山善との取引条件が悪化し、売上比率が下がったら
- やや悲観・悲観の確率を厚くする。
- 吊クランプの海外売上が2期続けて1割超伸びたら
- クランプの数量を上げ、やや楽観の確率を厚くする。
- 政策保有株の売却や自社株買いの方針が数字で示されたら
- 資本の使い方の改善とみて、中立の倍率を上限に近づける。
見ておくもの
- 金属製品のセグメント利益率
- 新工場の完成と資金の調達方法
- トラスコ中山・山善の売上比率
- 吊クランプの海外受注
- 配当の水準と性向
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、金属製品の数量と単価、全社費から10年後の利益を積んだ。ROEは各筋書きで資本コスト8%を下回るため、PERは1÷k(約12.1倍)を上限に利益の質で8〜9割に置いた。悲観側は稼ぐ力が小さいので、土地と政策保有株の税後から純負債を引き、戻り方0.5を掛けた床で置いた。自己資本の厚さや今のPBRには寄せていない。中立のPBRが0.2倍を割るのは、自己資本の大半が事業用の土地と在庫でROEが2%しかないためで、売れる資産の床(約14.5億円)は中立の値を下回ることを確かめた。新リース会計基準の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.9→12.5 倍・やや楽観 PER 10.3→12.5 倍・中立 PER 9.7→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。