結論
オーネックスは、神奈川の厚木を地盤に、金属の部品を熱で硬くする熱処理を請け負う会社だ。自動車や建設機械の歯車、軸、金型が主な仕事だ。筆者の結論は、今の値段は高いというものだ。本業の稼ぎは細く、そのうえ株主の取り分を揺るがす資本政策が動き出したからだ。
2026年6月期は営業利益3.7億円と、前の期の赤字から大きく戻した。ただ今期は2.6億円に減る見通しで、過去10年のROEの中央値は3%に届かない。電気自動車が広がれば、変速機の歯車のように熱処理を要する部品は減る。
2026年9月、会社はAIデータセンターに関わる新事業を決めた。香港の品香事業有限公司に新株と新株予約権を割り当て、全部行使されれば株数はほぼ倍になる。新株は払い込みが無く失権したが、新株予約権は残った。
本業と無関係な事業に、大きな希薄化を伴う資金を投じる計画は、安全域を削る。筆者はこの会社の10年後の価値を、今の時価総額の6割前後とみる。
本業だけなら、純現金を含めても今の値段に届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、地味な本業の価値を、資本政策の霧が覆っている会社だ。
本業の熱処理は、製造業がある限り必要な工程だ。厚木の工場と長い客との付き合いは、小さいながら確かな事業の土台になる。純現金は約11億円あり、借金の心配は無い。
しかし、株主のものになる利益は年2億円前後で、炉の更新の投資を引けばさらに細る。ROEは資本コストの3分の1ほどだ。電気自動車の広がりで、10年後の需要は今より小さい。
そこへ、本業と関わりの薄いAIデータセンターの事業が加わった。割当先の素性や事業の中身の開示は乏しく、払い込みの失権も起きた。経営が少数株主の利益を第一に考えているかを、筆者はまだ確かめられない。わからないものには高い値段を払わない。それがこの会社に対する筆者の答えだ。
本業だけを見ても、安全域は厚くない。純現金があっても、使い道を決めるのは少数株主ではない。
何で稼ぐ会社か
1951年創業の、金属熱処理の専業の会社だ。工場は神奈川の厚木を中心に、関東と東北に構える。子会社のオーネックステックセンターも熱処理を手がけ、運送の子会社が部品の集荷と配達を担う。
熱処理は、鋼の部品を炉で加熱し、急に冷やして硬さと粘りを出す工程だ。浸炭や窒化といった方法で、表面だけを硬くすることもできる。歯車や軸は、熱処理をしないと摩耗や割れですぐに壊れる。部品メーカーから部品を預かり、処理して返す請負で、1キロや1個あたりの加工賃が売上になる。
2026年6月期の売上は53億円で、熱処理が47億円と8割超を占める。残りは運送だ。客は自動車、建設機械、工作機械の部品メーカーで、関東の中小の部品工場が多い。景気がよく工場が忙しいと注文が増え、設備投資が止まると減る。
炉はガスと電気を大量に使う。エネルギーの値段が上がると原価が膨らみ、加工賃に移すまで利益が削られる。2025年6月期の赤字には、この遅れが響いた。
従業員は連結で300人ほどだ。熱処理は装置の産業で、炉の更新に毎年まとまった投資が要る。2026年6月期も8億円近くを投じた。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、関東の工場の近くで、多くの種類の熱処理を早く仕上げられることだ。だが、その堀は狭い。
熱処理は部品の性能を左右する工程で、品質が安定した業者を客は簡単に変えない。不良が出れば、部品も製品も作り直しになるからだ。オーネックスは浸炭や窒化など幅広い方法を持ち、関東の部品メーカーと長い付き合いがある。
しかし、熱処理は全国に中小の業者が多く、大手の部品メーカーは自社に炉を持つ。加工賃は客との交渉で決まり、値上げは遅れてしか通らない。営業利益率は過去12年で7%が最高で、赤字の年も4回あった。
資本の使い方には疑問が残る。自己資本比率は7割近くと堅いが、ROEは長く2〜4%だ。そのうえ、本業と関わりの薄いAIデータセンターの事業に、大きな希薄化を伴う資金を呼び込もうとしている。
品質の記録と客との長い付き合いだけが、確かな財産だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の受託の熱処理は、製造業の国内回帰と電気自動車の波の間にある。
熱処理の需要は、自動車と機械の部品の生産量で決まる。国内の自動車の生産は年800万台前後で、この先は人口の減少と海外生産で細る。建設機械と工作機械は、世界の設備投資の循環で大きく振れる。
電気自動車は熱処理にとって逆風だ。エンジンと変速機が消えれば、歯車やクランクシャフトのように熱処理を要する部品は大きく減る。モーターの軸や減速機の歯車は残るが、部品の数は内燃機関の車より少ない。日本の電気自動車への移り方は遅いが、10年で確実に進む。
費用の側では、ガスと電気の値段が重い。業界は加工賃の値上げを進めてきたが、中小の業者の廃業も続く。残った業者に注文が集まる面はあるが、同時に客の部品工場も減っている。
筆者の見立てでは、熱処理の数量は10年で2割減り、加工賃は物価並みに上がる。売上はほぼ横ばいで、利益率は過去の平均の5%前後に落ち着く。
一方、航空機や半導体の製造装置の部品のように、高い精度の熱処理を求める分野は伸びる。ここに入り込めるかが、10年後の姿を分ける。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、総額は年0.3億円ほどだ。配当性向は1〜2割にとどまり、自社株買いの実績は乏しい。
資本政策は2026年9月に大きく動いた。会社はAIデータセンターに関わる新事業を決め、香港の品香事業有限公司に新株24.9万株と新株予約権141.1万株分を割り当てた。行使価格は今の株価を1割ほど下回り、全部行使されれば約20億円が入り、株数はほぼ倍になる。品香事業の議決権は過半に届く計算だった。
新株は払込期日までにお金が届かず、10月に全部失権した。それでも新株予約権は払い込まれて残り、品香事業は潜在株を含め46%を持つと報告した。誰がどんな事業を営むのか、開示はまだ乏しい。筆者はこの資本政策を、少数株主にとっての大きな不確かさとみる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
本業は底を打った。2026年6月期は営業利益3.7億円と、前の期の赤字から一気に戻した。エネルギーの値上がりを加工賃に移し終え、利益率は7%に乗った。熱処理の業者は廃業が続き、残った会社に注文が集まる。
財務も堅い。純現金は約11億円、自己資本比率は7割近い。時価総額は自己資本の半分ほどで、帳簿の上では安い。厚木や東北の工場と土地も持つ。
AIデータセンターは大きな転機になりうる。データセンターは電力と土地と冷却の設備を要し、工場の跡地や電力の契約を持つ会社には入口がある。新株予約権が行使されれば約20億円が入り、借金をせずに投資できる。行使価格は今の株価に近く、株主の価値を大きく損なう値段ではない。
新しい大株主が経営に関わることで、眠っていた資本が動き出す可能性もある。資本効率が上がれば、ROEは今の倍になってもおかしくない。
電気自動車の移行も、日本ではゆっくりしか進まない。残った熱処理の業者として、値上げも通しやすくなる。
慎重な見方
本業は細る。電気自動車が広がれば、変速機の歯車のように熱処理を要する部品は減る。客の部品工場も廃業が続く。今期は営業利益が3割減る見通しで、前期の7%の利益率は続かない。過去12年で赤字の年は4回あった。
AIデータセンターの話はもっと危うい。熱処理の会社が、データセンターを営む力を持つとは思えない。割当先の品香事業有限公司の素性も、事業の中身も開示が乏しい。新株の払い込みは期日までに届かず失権した。資金を出すと言った相手が、約束を果たしていない。
新株予約権が全部行使されれば、株数はほぼ倍になり、今の株主の取り分は半分強に薄まる。入った約20億円が失敗した事業に消えれば、残るのは薄まった本業だけだ。
こうした資本政策で、少数株主が報われた例は多くない。帳簿の安さは、清算されない限り株主のものにならない。
本業の価値も、新事業の行方次第で大きく揺らぐ。電気自動車と資本政策という二つの逆風が、同時に吹いている。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方に分がある。本業の回復は数字で確かめられるが、電気自動車の逆風と低いROEは変わらない。資本政策は、開示の乏しさと失権という事実が重い。確率は中立を厚くし、悲観側を楽観側より厚く置いた。新事業の中身と割当先の素性が開示で確かめられれば、見方を改める。逆に新株予約権が消却されれば、悲観の厚みは減らしてよい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 1,486 円25 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 196 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 771 円13 億円、今との差 −53.6%、 期待の年率 +0.1%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,617 円43 億円 | 332 円6 億円 | +77.7% | +5.9% | 236 円4 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,140 円35 億円 | 272 円5 億円 | +45.3% | +3.8% | 482 円8 億円 |
| 中立 | 40% | 1,811 円30 億円 | 211 円4 億円 | +21.8% | +2.0% | 809 円13 億円 |
| やや悲観 | 20% | 422 円7 億円 | 98 円2 億円 | −68.7% | −11.0% | 104 円2 億円 |
| 悲観 | 12% | 332 円6 億円 | 91 円2 億円 | −74.5% | −12.8% | 51 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,486 円25 億円 | 196 円3 億円 | +1.3% | +0.1% | 1,682 円28 億円 |
今の株価時価総額 1,660 円27 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 生き残りとして注文を集め、利益率7%を保つ 利益 3 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 2,617 円43 億円
関東の熱処理の業者の廃業が続き、オーネックスに注文が集まる。電気自動車の逆風はあるが、減速機やモーターの軸、建設機械の部品が埋める。処理量の減りは5%にとどまる。加工賃は物価を少し上回って上がり、利益率は7%を保つ。
運送も客の部品の量に沿って横ばいで、利益率は4%に上がる。
AIデータセンターの計画は大きく広がらず、本業の邪魔をしない。新株予約権は行使されないまま期限を迎える。営業利益は4.6億円、純利益は3億円強だ。配当は少しずつ増え、10年の還元は5.5億円。ROEは4%で、資本コストにはまだ遠い。
- 金属熱処理加工:数量 28.5(熱処理の処理量(千トン))× 価格 22(1トンあたりの加工賃(万円))→ 売上 61 億円・営業利益 4 億円。処理量0.95倍・加工賃1.38倍・利益率7%
- 運送:数量 41.0(運ぶ量(千トン))× 価格 2.07(1トンあたりの運賃(万円))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。量横ばい・運賃1.38倍・利益率4%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.3% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)4 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 40 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:熱処理の業者の廃業で注文が集まり、電気自動車の逆風を跳ね返す必要がある。2026年6月期の7%を10年保つ姿で、過去12年の天井に張りつくため確度は低い。新株予約権は行使されず、資本政策は落ち着く前提。
やや楽観 20% 本業が利益率6%で踏みとどまる 利益 2 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 2,140 円35 億円
電気自動車の広がりで変速機の歯車は減るが、建設機械と工作機械の部品が支え、処理量は1割強減る。加工賃は物価並みに上がり、利益率は6%を保つ。運送は客の量に沿って少し減る。
AIデータセンターの事業は小さな規模で試され、会社の現金を少し使う。利益への貢献はほとんど無い。新株予約権は行使されない。
営業利益は3.4億円、純利益は2.4億円になる。配当は据え置きから少し増え、10年の還元は4.5億円。自己資本は76億円に積み上がり、ROEは3%台にとどまる。
新しい大株主との関係は落ち着き、経営は本業に集中する。
- 金属熱処理加工:数量 26.4(熱処理の処理量(千トン))× 価格 21(1トンあたりの加工賃(万円))→ 売上 56 億円・営業利益 3 億円。処理量0.88倍・加工賃1.36倍・利益率6%
- 運送:数量 39.0(運ぶ量(千トン))× 価格 2.04(1トンあたりの運賃(万円))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。量0.95倍・運賃1.36倍・利益率3.5%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.5% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)4 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 30 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:エネルギー高を加工賃に移した実績があり、今期の予想でも利益率は4.6%を保つ。電気自動車の逆風を少しずつ受けつつ、過去の良い年並みに稼ぐ姿。
中立 40% 熱処理は2割細り、新事業は利益を生まない 利益 2 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,811 円30 億円
処理量は10年で2割減る。電気自動車で変速機やエンジンの部品が減り、客の部品工場の廃業も続く。加工賃は物価並みに上がるが、利益率は過去の平均の5%に戻る。炉の償却は取得時の値段のままで軽いが、炉を建て替える時は建築費の上がった値段で払う。
AIデータセンターの事業は試しの段階にとどまり、費用だけが年0.2億円ほどかかる。新株予約権の行使は進まない。
営業利益は2.5億円、純利益は1.8億円になる。配当は年0.3億円台が続き、10年の還元は3.5億円。ROEは2%台で、帳簿の厚みに見合う稼ぎは無い。新しい大株主の動きも見えないまま、会社は静かに縮む。
- 金属熱処理加工:数量 24.0(熱処理の処理量(千トン))× 価格 21(1トンあたりの加工賃(万円))→ 売上 50 億円・営業利益 3 億円。処理量0.8倍・加工賃1.34倍・利益率5%
- 運送:数量 36.9(運ぶ量(千トン))× 価格 2.01(1トンあたりの運賃(万円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。量0.9倍・運賃1.34倍・利益率3%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.8% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)4 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 24 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電気自動車の広がりと国内の部品工場の減少は確かな流れで、過去12年の平均の利益率は5%前後だ。新事業が本業の稼ぎを少し削る、実績に沿った姿を中心に置いた。
やや悲観 20% 新株予約権が行使され、新事業で資金が消える 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 422 円7 億円
品香事業有限公司が新株予約権を行使し、約20億円が入る。株数はほぼ倍になり、今の株主の取り分は0.54に薄まる。資金はAIデータセンターに投じられるが、電力と客の確保に苦しみ、投資の大半を減損する。新事業は毎年赤字を出す。
本業も電気自動車の逆風で処理量が3割減り、エネルギー高を移し切れず利益率は2%に落ちる。全社の営業損益はほぼゼロだ。
配当は細り、10年の還元は3億円。残る価値は、純現金と工場の土地を売った税後で、その使い道を決めるのは新しい大株主と経営だ。
帳簿の厚みは、薄まった株数で割られて消えていく。
- 金属熱処理加工:数量 21.0(熱処理の処理量(千トン))× 価格 20(1トンあたりの加工賃(万円))→ 売上 41 億円・営業利益 1 億円。処理量0.7倍・加工賃1.25倍・利益率2%
- 運送:数量 34.9(運ぶ量(千トン))× 価格 1.88(1トンあたりの運賃(万円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。量0.85倍・運賃1.25倍・利益率1.5%
倍率:赤字で稼ぐ力の床は無い。純現金と行使の残りの現金、工場の土地の税後に戻り方0.5を掛けた床(会社全体で約12億円)で、今の自己資本56.7億円の0.212倍に置いた。株主の取り分0.54はbuildが掛ける。
確率:新株予約権は払い込まれて残り、割当先は潜在株で46%を持つ。行使された資金がAIデータセンターに投じられ、うまくいかない道は、開示の乏しさと新株の失権から十分にありうる。
悲観 12% 本業が崩れ、会社の現金も新事業に消える 利益 −2 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 332 円6 億円
電気自動車の広がりが速まり、変速機やエンジンの部品の注文が消える。客の部品工場は海外に移り、処理量は半分近くに減る。炉は稼働が落ち、熱処理は赤字に沈む。
新株予約権は株価が行使価格を下回り行使されない。その代わり、会社は自分の現金でAIデータセンターの事業を続け、毎年赤字を重ねる。純現金は細る。
配当は止まり、10年の還元は1.5億円にとどまる。残る価値は、工場の土地と細った現金だ。使い道を決めるのは経営と大株主で、少数株主の取り分は小さい。
70年続いた熱処理の会社は、規模を縮めて残る。株主に報いる力は、もう残っていない。
- 金属熱処理加工:数量 16.5(熱処理の処理量(千トン))× 価格 18(1トンあたりの加工賃(万円))→ 売上 30 億円・営業利益 −1 億円。処理量0.55倍・加工賃1.15倍・赤字
- 運送:数量 32.8(運ぶ量(千トン))× 価格 1.73(1トンあたりの運賃(万円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。量0.8倍・運賃1.15倍・収支ゼロ
倍率:赤字で稼ぐ力の床は無い。新事業で細った現金と工場の土地の税後に戻り方0.5を掛けた床(約5.5億円)で、今の自己資本56.7億円の0.097倍に置いた。
確率:電気自動車の広がりが速まり、客の部品工場が国内から消える構造的な負け。会社の現金を新事業に回して失う道も重なる。純現金と工場があるので、一気に消える会社ではない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
金属熱処理加工
自動車・建設機械・工作機械の部品を預かり、浸炭・窒化・焼入れなどの熱処理をして返す請負。
| 数量熱処理の処理量(千トン) | 価格1トンあたりの加工賃(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 30.0 | 16 | 47 | 4 |
| 10 年後 中立 | 24.0 | 21 | 50 | 3 |
取り方:2026年6月期の金属熱処理の売上46.80億円(有報の監査報告)。処理量の開示は無く、浸炭や窒化をならした1トン約15.6万円と置いて約3万トンとした推定。セグメント利益は全社の営業利益3.71億円の大半とみて約3.5億円と推定。
運送
部品の集荷と配達を担う運送の子会社。
| 数量運ぶ量(千トン) | 価格1トンあたりの運賃(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 41.0 | 1.50 | 6 | 0 |
| 10 年後 中立 | 36.9 | 2.01 | 7 | 0 |
取り方:連結売上52.94億円から熱処理46.80億円を引いた約6.1億円を運送とみた。量の開示は無く、1トン約1.5万円と置いて約4.1万トンとした推定。利益は約0.2億円と推定。
リスクと懸念
新株予約権の行使と希薄化
品香事業有限公司の新株予約権が全部行使されれば、株数はほぼ倍になり、今の株主の取り分は0.54に薄まる。割当先は議決権の過半に近づき、会社の行方を左右できる。
AIデータセンターという異業種
熱処理の会社が、電力と客の確保が要るデータセンターを営む力は見えない。事業の中身の開示は乏しい。投じた資金が減損で消えれば、株主の価値は大きく傷む。
割当先の素性と払い込み
新株は払込期日までに着金が無く、全部失権した。資金を出すと言った相手が約束を果たさなかった事実は重い。新株予約権の行使も、同じく確かではない。
電気自動車の広がり
エンジンと変速機が消えれば、歯車やクランクシャフトのように熱処理を要する部品が大きく減る。客の部品工場の廃業や海外移転も続く。
エネルギーの値段
熱処理の炉は大量のガスと電気を使う。値上がりは加工賃に遅れてしか移せず、2025年6月期の赤字もこれが響いた。
今後の分かれ目
- 新株予約権が行使され、資金がAIデータセンターに投じられたら
- やや悲観の確率を厚くし、株主の取り分0.54を前提に見直す。
- AIデータセンターの事業の中身と採算が開示で確かめられたら
- 新事業の利益を筋書きに入れ、見方を改める。
- 新株予約権が消却され、資本政策が白紙に戻ったら
- やや悲観の確率を下げ、本業だけで評価し直す。
- 熱処理の利益率が2期続けて6%を超えたら
- やや楽観の確率を厚くし、本業の利益率を上げる。
- 自動車向けの処理量が2期続けて1割超減ったら
- 悲観の確率を厚くし、処理量を下げる。
見ておくもの
- 新株予約権の行使の状況
- AIデータセンター事業の開示
- 品香事業有限公司の持株比率
- 熱処理の売上と利益率
- 自動車の国内生産と電気自動車の比率
- ガスと電気の値段
倍率と資本コストの決め方
今の株価やPBRは見ずに、熱処理の処理量と加工賃、運送から10年後の利益を積んだ。どの筋書きもROEは資本コスト8.75%を大きく下回るので、PERは1÷k(約11.4倍)を上限に利益の質で7〜83%に置いた。悲観側は純現金と工場の土地の税後に戻り方0.5を掛けた床で置いた。新株予約権の行使は、資金が入って事業に消えるやや悲観にだけ入れ、取り分0.54をbuildが掛ける。今のPBR0.5倍弱は割安の根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→11.43 倍・やや楽観 PER 8.5→11.43 倍・中立 PER 8→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。