結論
日本フイルコンは、紙を抄くための網(ワイヤー)を作る会社だ。王子、大王製紙、日本製紙が大株主で、売上278億円のうち、製紙向けを含む産業用フィルター・コンベアが7割を占める。
筆者の結論は、10年の価値は今の時価総額を4割ほど下回る、である。国内の紙の需要は構造的に縮み、製紙会社の設備削減も続く。利益の柱として残るのは、都心に持つ賃貸不動産と、フォトマスクの電子部材だ。
2025年11月期は減損15.8億円と特別退職金5.4億円で、最終赤字になった。会社は2026年11月期に営業利益9億円、2028年11月期に15億円を計画する。上期はすでに8.3億円と先行している。
問題は資本効率だ。自己資本222億円に対し純利益は薄く、ROEは5%に届かない。賃貸の価値が帳簿以上にある可能性は残るが、確かめられていない。
賃貸と有価証券という資産の厚みは評価するが、本業の稼ぐ力が先細りの構図は変わらない。筆者が重く見ているのは、国内の製紙会社が顧客であり、同時に大株主でもあることだ。取引条件を株主として自分の側から動かせない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社の本質は「衰える本業と、確かな賃貸資産」の組み合わせだ。本業の製紙網は縮み、電子部材は設備更新に追われている。
株主のものになる利益は薄い。ROEは直近で赤字、中立の10年でも4%に届かない。自己資本の厚さは、利益を生まない資産の積み上がりが原因だ。
安全域の面では、賃貸不動産と投資有価証券が床になる。ただ、帳簿以上の含み益があるかは確かめられていない。
筆者は、PBRの低さだけを割安の根拠にしない。ROEが資本コストを下回る会社の帳簿の価値は額面を下回るからだ。
この会社に払える値段は、賃貸と有価証券の価値に、衰える本業の稼ぎを足したものになる。本業の稼ぎには、高い倍率をつけられない。
経営の資本配分は、配当と自社株買いで株主に報いようとしているが、利益の裏づけが薄い年にも配当を維持しており、自己資本の取り崩しに近い。
賃貸の価値が帳簿を大きく上回るなら、見方は変わる。確かめるべきは、賃貸等不動産の注記にある時価だ。
何で稼ぐ会社か
事業は四つある。産業用機能フィルター・コンベアは売上の7割で、製紙用の網と、ふるい分けやろ過に使う工業用の金網を作る。電子部材・フォトマスクはおよそ16%で、半導体や液晶用の回路原版と加工を手がける。環境・水処理は学校プールなどの工事、不動産賃貸は都心の商業施設とマンションの賃貸だ。
賃貸は売上が10億円ほどだが、営業利益は8億円近く出る。全社の営業利益が6.7億円(2025年11月期)という数字の大半を、実は賃貸が稼いでいる。
製紙用の網は消耗品で、紙を抄く機械ごとに仕様が違う。製紙会社と長く取引し、日本、欧州、タイに拠点を持つ。静岡工場からタイ子会社へ生産を移す計画が進み、欧州ではフランスの販売子会社を清算してドイツに新設した。
電子部材は、半導体や液晶のパターンを焼き付けるフォトマスクの製造と、金属の薄板をエッチングで加工する事業の二本立てだ。AI関連の需要は好調だが、車載や産業機械向けが弱く、償却の増加で利益は伸びていない。
環境・水処理は、学校のプールを中心とした水処理装置の工事を請け負う。不採算案件が完工して損益は改善したが、売上は景気と学校の予算に左右される。今後はホテルやマンション向けへ広げる計画だ。
従業員は連結で約千人。製造業の人手不足と賃金の上昇は、固定費の重い工場を持つ同社に直接響く。
優良さと弱いところ
堀は、製紙会社の仕様に合わせる技術力と、長年の取引関係だ。ただ顧客が大株主を兼ねる三社に偏り、価格交渉では不利になりやすい。
収益力は弱い。2019年11月期と2020年11月期は赤字、2025年11月期も最終赤字だった。営業利益率は2%台に沈み、直近12年の最良は2016年11月期の7.0%にとどまる。
財務は並みだ。自己資本比率は52%、純有利子負債は65億円で、利払いの余裕は4.5倍ある。賃貸不動産の安定した利益が全体の下支えになっている。
経営は構造改革を進めている。静岡工場の早期退職、欧州拠点の再編、電子部材の減損処理などだ。結果が出るのはこれからで、実績で見れば優良とは言いにくい。
一方で、賃貸事業は別格に安定している。都心の商業施設とマンションを抱え、売上10億円に対して営業利益が8億円近くある。本業が縮んでも、この利益が下支えになる。
筆者は、この会社を二つの顔で見る。本業の製紙網は衰えゆく優良事業、賃貸は静かに稼ぐ資産だ。合算すると、資本の使い方は効率的とは言えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の紙需要は、ペーパーレス化と人口減で長期に縮んでいる。製紙会社は生産能力を削り、統合を進めている。同社の製紙向け売上は国内で年に数%ずつ細る前提で見る。
海外では、板紙、衛生紙、不織布の需要が堅調で、緩やかに成長する見込みだ。ただ欧州は景気後退のあとで需要が戻っていない。競合は米国のアルバニー、ドイツのフォイトなど世界大手で、同社の海外シェアは小さい。
電子部材のフォトマスクは、AI関連が好調な一方、車載や産業機械向けが弱い。設備が老朽化し、メーカーの保守終了のリスクがあるため、更新の投資が続く。
不動産賃貸は都心の物件が安定して稼働する。家賃は物価に連動しやすく、インフレの時代には数少ない追い風だ。
製紙用の網は、紙の種類ごとに網目や素材が違い、製紙会社の機械に合わせて作り込む。一度採用されると頻繁には切り替えられないが、使い捨てに近いので、機械の稼働が減れば数量も減る。
国内の製紙会社は、新聞用紙や印刷用紙の需要減に苦しみ、機械の停止や統合を進めている。一方で段ボール原紙や衛生用紙は底堅い。同社はこうした成長分野を海外で取りにいく戦略だ。
タイ子会社への生産移管は、人件費とコストの面で理にかなう。ただし立ち上げの費用と品質の安定に時間がかかる。
資本政策と M&A
還元の方針は配当性向30%以上、かつ自己資本に対する配当の利回り(DOE)2.4%以上だ。2025年11月期と2026年11月期の予想は、年間配当は据え置かれる。
2026年1月に、上限約1億円の自社株買いをした。2026年11月期の総還元性向は150%を超える見込みで、利益が薄くても配当を維持する姿勢が強い。
投資は重い。大阪工場の建て替え(2028年度末完成)、フォトマスクの設備更新、タイへの生産移管が続く。借入が増えれば、金利が3%台に上がる環境で利払いが利益を削る。
株主優待は確認できなかった。大株主は製紙大手三社で、M&Aの動きは見えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
本業の底は見えた。2025年11月期の減損と特別退職金で、膿を出し切った。2026年11月期の上期の営業利益は8.3億円と、通期予想の9億円にほぼ届き、会社予想は保守的だ。中計の最終年度には営業利益15億円、ROE6%以上を掲げる。フォトマスクはAI向けが好調で、設備を更新すれば増収に転じる。賃貸は都心の物件で、インフレの時代に賃料が物価に連動して上がる。簿価43億円の土地は、時価で大きく上回る可能性がある。配当も性向30%以上と自己資本に対する利回り2.4%の下限を守っている。PBRが1倍を割る水準は、これらの価値を織り込んでいない。 製紙向けの網は世界で堅調な板紙や衛生紙に広げられる。タイ子会社に生産を移せば、人件費の高い国内の工場から利益を出せる体制に変わる。経営は借入の返済を進めつつ、自己資本に対する配当利回りの下限を守る方針で、株主への姿勢は明確だ。 2025年11月期は特別損失で膨らんだ赤字で、営業利益は黒字を保った。賃貸の利益と受取配当が、本業の浮き沈みを和らげる。
慎重な見方
国内の紙需要は構造的に縮み、製紙会社は統合と設備削減を進めている。顧客が減れば、同社の網の売上も減る。赤字は2019年、2020年、2025年と繰り返し、営業利益率は2%台に沈んでいる。会社が掲げる15億円という営業利益は、過去12年の最高水準でもある。電子部材は老朽設備の更新で投資が重く、減損も出た。大阪工場の建て替えも借入頼みで、金利の上昇が利益を削る。賃貸の含み益は確かめられておらず、ROEが資本コストを下回る限り、帳簿の価値は額面を下回る。大株主の製紙会社は顧客であり、価格交渉は不利になりやすい。 生産移管や欧州の再編は、費用が先に出て、効果は後からしか確かめられない。会社は2026年11月期の営業利益を9億円としながら、中計の2028年に15億円を掲げる。この倍近い増益には、国内の縮小を止める材料が見当たらない。自社株買いや配当は、利益が薄い年には自己資本を取り崩す形になる。 配当の維持は、株主にはありがたいが、事業が稼ぐ以上に払えば、自己資本を食う。2026年11月期の配当性向は予想で120%を超える。
どちらに重みを置いたか
勝つのは慎重な見方だ。賃貸と有価証券が床になる点は評価するが、本業の縮小と低いROEで、利益の価値は帳簿の4割弱に留まると見た。楽観の筋書きでも資本コストに届かないROEのため、倍率は上限に近くても11倍が限度だ。確率は中立を厚く、悲観を12%とした。賃貸の含み益が確かめられれば、見方は変わる余地がある。 本業の縮小の速度と、賃貸の価値の二点が分かれ目だ。後者が確かめられていない以上、床は簿価並みで置く。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/11 期)
確率で加重した株価時価総額 559 円109 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 247 円48 億円)。 今の値に割り戻すと 404 円78 億円、今との差 −39.7%、 期待の年率 +1.9%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 1,265 円246 億円 | 309 円60 億円 | +134.6% | +8.9% | 94 円18 億円 |
| やや楽観 | 18% | 857 円166 億円 | 278 円54 億円 | +69.2% | +5.4% | 204 円40 億円 |
| 中立 | 38% | 507 円98 億円 | 278 円54 億円 | +17.0% | +1.6% | 298 円58 億円 |
| やや悲観 | 26% | 389 円76 億円 | 222 円43 億円 | −9.0% | −0.9% | 159 円31 億円 |
| 悲観 | 12% | 294 円57 億円 | 129 円25 億円 | −37.0% | −4.5% | 51 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 559 円109 億円 | 247 円48 億円 | +20.2% | +1.9% | 807 円157 億円 |
今の株価時価総額 671 円130 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 海外の製紙網と電子部材が伸び、計画を大きく超える10年 利益 21 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,265 円246 億円
国内の製紙網は縮小が続くが、タイの子会社への生産移管と欧州の販売再編が実り、海外で利益を稼ぐ体制が固まる。電子部材は高周波デバイスとセンサー向けのフォトマスクが伸び、数量は今の1.6倍に増える。
不動産賃貸は都心の物件の賃料が物価並みに上がり、利益の安定した柱として働く。全社の営業利益は30億円ほどに達し、計画の15億円の倍になる。
配当は性向4割に上がり、自己資本に対する利回りの目標も超える。借入は返済が進み、利払いの負担が軽くなる。
電子部材では、中国勢との競争を高周波デバイス向けの高付加価値品で避ける。
- 産業用機能フィルター・コンベア:数量 76.0(年間の出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 34,500(1平方メートルあたりの単価(円、推定))→ 売上 262 億円・営業利益 20 億円。海外とタイ生産で利益を確保
- 電子部材・フォトマスク:数量 1,840(フォトマスク換算の出荷枚数(枚、推定))× 価格 520(1枚あたりの単価(万円、推定))→ 売上 96 億円・営業利益 13 億円。高周波・センサー向けが伸びる
- 環境・水処理関連:数量 242(年間の完工件数(件、推定))× 価格 0.13(1件あたりの売上(億円))→ 売上 32 億円・営業利益 2 億円。学校プールからホテル向けへ
- 不動産賃貸:数量 85.0(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 1.63(1平方メートルあたりの年間賃料(万円、推定))→ 売上 14 億円・営業利益 11 億円。賃料が物価並みに上がる
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 246 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2016年11月期に営業利益率7%を付けた実績があり、海外とフォトマスクが重なれば再現しうる。国内の紙需要の縮小が続くため、確率は1割に届かせない。
やや楽観 18% 中計の利益目標を超え、緩やかに積み上がる10年 利益 15 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 857 円166 億円
国内の製紙網は縮小を海外で補い、全体の数量は1割減にとどまる。電子部材はフォトマスクの設備を更新し、AI向けや高周波向けで数量が4割増える。
営業利益は20億円前後で、中計の15億円を上回る。人件費と製造費の上昇は値上げで転嫁し、静岡工場の整理で本社費も抑える。
配当は性向30%以上と自己資本に対する利回り2.4%を守る。借入の返済は進むが、大阪工場の建て替えで投資は重い。
賃貸の利益は安定し、借入の返済を進める余裕が生まれる。海外の比重が高まる。
中計の営業利益15億円は、この筋書きでは3年後に達成し、その後も物価で伸びる。
- 産業用機能フィルター・コンベア:数量 72.0(年間の出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 34,000(1平方メートルあたりの単価(円、推定))→ 売上 245 億円・営業利益 16 億円。国内縮小を海外で埋める
- 電子部材・フォトマスク:数量 1,610(フォトマスク換算の出荷枚数(枚、推定))× 価格 500(1枚あたりの単価(万円、推定))→ 売上 81 億円・営業利益 9 億円。フォトマスクの更新投資が実り増収
- 環境・水処理関連:数量 231(年間の完工件数(件、推定))× 価格 0.13(1件あたりの売上(億円))→ 売上 31 億円・営業利益 1 億円。学校プール需要が定着
- 不動産賃貸:数量 85.0(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 1.57(1平方メートルあたりの年間賃料(万円、推定))→ 売上 13 億円・営業利益 10 億円。賃料は物価並みに近く上昇
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 166 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計は2028年11月期に営業利益15億円を掲げ、2026年11月期の上期だけで8.3億円を稼いだ。計画に近い水準が10年続く筋は十分ありうる。
中立 38% 国内の縮小を海外と賃貸が支え、利益が緩やかに戻る10年 利益 9 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 507 円98 億円
国内の製紙網は紙の需要減と製紙会社の生産能力削減で、年2%ずつ細る。海外は板紙と衛生紙の堅調で微増にとどまり、数量は全体で今の0.85倍になる。
電子部材は更新した設備で増収に転じるが、半導体向けの値下がりが重く、利益率は8%台に収まる。不動産賃貸は賃料が物価よりゆるやかに上がり、営業利益は10億円近くに伸びる。
営業利益は12億円ほど。本社費は物価で増え、大阪工場の建て替えの償却は取得時の値段で足されるが、既存設備の償却は増えない。配当は目標の利回り2.4%で下支えされ、ROEは4%に届かない。
海外の伸びは緩やかで、国内の縮小を補いきれない。賃貸の利益は、物価並みには上がらない。
電子部材の価格は、半導体向けマスクの値下がりで物価並みには上がらない。
- 産業用機能フィルター・コンベア:数量 68.0(年間の出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 33,500(1平方メートルあたりの単価(円、推定))→ 売上 228 億円・営業利益 13 億円。国内は年2%減、海外は微増。価格は物価並み
- 電子部材・フォトマスク:数量 1,380(フォトマスク換算の出荷枚数(枚、推定))× 価格 480(1枚あたりの単価(万円、推定))→ 売上 66 億円・営業利益 5 億円。数量1.2倍・価格は半導体の値下がりで1.2倍
- 環境・水処理関連:数量 220(年間の完工件数(件、推定))× 価格 0.13(1件あたりの売上(億円))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。数量横ばい・価格は物価並み
- 不動産賃貸:数量 85.0(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 1.51(1平方メートルあたりの年間賃料(万円、推定))→ 売上 13 億円・営業利益 10 億円。賃料の上昇は物価より遅い
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.7% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 98 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026年11月期の会社予想は営業利益9億円で、上期は8.3億円と先行している。そこから緩やかに戻るが、過去の山には届かないのが最も起こりやすい。
やや悲観 26% 国内の紙需要が急速に縮み、減損が続く10年 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 389 円76 億円
日本製紙や大王製紙などが生産設備を減らし、国内の抄紙網の数量は4分の3に落ちる。欧州の景気も戻らず、海外は値下げ競争になる。
電子部材はフォトマスクの価格が上がらず、更新投資の償却だけが重く残る。営業利益はほぼ賃貸の利益で、本社費をかろうじて賄う程度に落ち込む。
配当は性向30%を割り込み、自己資本に対する利回りの目標も下げる。減損と退職金の費用が利益を削る。
大株主の製紙会社との価格交渉で値下げ圧力が強まり、利益率は国内の縮小以上に削られる。賃貸の利益は残るが、本業の赤字の穴埋めに回る。
賃貸以外の事業はほぼ損益ゼロで推移する。
- 産業用機能フィルター・コンベア:数量 60.0(年間の出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 32,500(1平方メートルあたりの単価(円、推定))→ 売上 195 億円・営業利益 8 億円。国内の製紙網が急速に縮み、海外も値下げ圧力
- 電子部材・フォトマスク:数量 1,035(フォトマスク換算の出荷枚数(枚、推定))× 価格 440(1枚あたりの単価(万円、推定))→ 売上 46 億円・営業利益 1 億円。中国勢との競争で価格が伸びない
- 環境・水処理関連:数量 198(年間の完工件数(件、推定))× 価格 0.13(1件あたりの売上(億円))→ 売上 25 億円・営業利益 0 億円。不採算案件が続く
- 不動産賃貸:数量 80.8(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 1.45(1平方メートルあたりの年間賃料(万円、推定))→ 売上 12 億円・営業利益 8 億円。空室と賃料の伸び悩み
倍率:稼ぐ力は薄く、床は売れる資産の側で見る。今の自己資本222億円の約0.34倍、つまり投資有価証券と賃貸不動産の売却価値から純有利子負債を引いた額。 EV(時価総額+純有利子負債)÷営業利益は87倍と高く出るが、利益が薄い年のためで、倍率は使わず床の資産で見ている。
確率:直近12年で最終赤字は3回、営業利益率が1%未満の年もあった。国内の製紙会社の統合と設備削減が重なれば、利益はほぼ賃貸だけになる。
悲観 12% 製紙会社の統合で国内を失い、電子部材も撤退に追い込まれる10年 利益 −10 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 294 円57 億円
日本製紙、王子、大王が設備をさらに減らし、国内の抄紙網は需要が3分の2に落ちる。欧州の販売再編も実らず、海外の利益も出ない。
電子部材は老朽設備の保守が終わって受注を失い、撤退も視野に入る。減損と退職金の費用が重なり、営業赤字に陥る。
配当は減り、自己資本に対する利回りの目標も維持できない。残る価値は賃貸不動産と有価証券で、借入を返すと手元に多くは残らない。
タイと欧州の拠点も縮小し、人員の整理が続く。有価証券と不動産の売却で借入を減らす方向に動く。
製紙大手との取引は残るが、数量と価格の両面で厳しさを増す。
- 産業用機能フィルター・コンベア:数量 48.0(年間の出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 30,000(1平方メートルあたりの単価(円、推定))→ 売上 144 億円・営業利益 1 億円。製紙会社の統合で国内の需要が3分の2に
- 電子部材・フォトマスク:数量 690(フォトマスク換算の出荷枚数(枚、推定))× 価格 400(1枚あたりの単価(万円、推定))→ 売上 28 億円・営業利益 −1 億円。老朽設備で受注を失う
- 環境・水処理関連:数量 176(年間の完工件数(件、推定))× 価格 0.11(1件あたりの売上(億円))→ 売上 19 億円・営業利益 −1 億円。案件が減る
- 不動産賃貸:数量 76.5(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 1.33(1平方メートルあたりの年間賃料(万円、推定))→ 売上 10 億円・営業利益 7 億円。賃料の下落
倍率:稼ぐ力にほぼ値が付かず、床は売れる資産から借入を引いた額。今の自己資本222億円の約0.26倍。
確率:日本の紙需要は構造的に縮み、製紙会社は統合を進めている。顧客が減れば、固定費の重い工場の稼働率が保てない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
産業用機能フィルター・コンベア
製紙用の網(ワイヤー)と、ふるい分け・ろ過・搬送用の工業用金網。
| 数量年間の出荷面積(万平方メートル、推定) | 価格1平方メートルあたりの単価(円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 80.0 | 25,000 | 200 | 9 |
| 10 年後 中立 | 68.0 | 33,500 | 228 | 13 |
取り方:第3四半期までの売上146億円を通期に伸ばして約200億円と推定し、1平方メートル2.5万円ほどと置いて面積を出した(面積は開示なし・推定)。営業利益は第3四半期の累計7.3億円から通期9億円と見た。
電子部材・フォトマスク
半導体や液晶向けのフォトマスクとエッチング加工。
| 数量フォトマスク換算の出荷枚数(枚、推定) | 価格1枚あたりの単価(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 1,150 | 400 | 46 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1,380 | 480 | 66 | 5 |
取り方:第3四半期までの売上33億円から通期約46億円と推定し、換算枚数と単価に分けた(開示なし・推定)。営業利益は同期間2.5億円から通期2.4億円。減価償却の増加が利益を圧迫している。 価格は半導体向けマスクの単価下落で、物価の伸びを下回る前提。
環境・水処理関連
学校プールなどの水処理装置と工事。
| 数量年間の完工件数(件、推定) | 価格1件あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 220 | 0.10 | 22 | 0 |
| 10 年後 中立 | 220 | 0.13 | 30 | 1 |
取り方:第3四半期までの売上14億円から通期約22億円と推定し、1件1000万円ほどで件数に換算した(開示なし・推定)。不採算案件が完工し、利益は小さな黒字。
不動産賃貸
都心の商業施設・マンション・駐車場の賃貸。
| 数量賃貸面積(千平方メートル、推定) | 価格1平方メートルあたりの年間賃料(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 85.0 | 1.21 | 10 | 8 |
| 10 年後 中立 | 85.0 | 1.51 | 13 | 10 |
取り方:第3四半期までの売上7.7億円・営業利益5.8億円から通期売上約10億円・営業利益7.8億円と見た。面積と賃料は開示がなく推定。償却や固定資産税を引いた後の利益で、利益率は75%台。
リスクと懸念
国内の紙需要の構造的な縮小
ペーパーレス化と人口減で紙の需要が減り、製紙会社は設備を削っている。製紙網は消耗品だが、顧客の機械が減れば数量も減る。統合が進めば価格交渉力はさらに弱まる。
電子部材の設備更新と減損
フォトマスクの描画・検査装置が老朽化し、更新の投資が続く。2025年11月期は減損15.8億円を計上した。更新後も需要が戻らなければ、償却だけが利益を削る。
大阪工場の建て替えと借入
2028年度末の完成を目指す建て替えは、借入の増加と金利上昇による利払いの増加を招く。建築費の上昇で投資額が膨らむ恐れもある。
海外展開の不確実性
欧州ではフランスの子会社を清算してドイツに新設し、タイへの生産移管を進める。再編に失敗すれば、費用だけがかさむ。欧州の景気が戻らない点も重い。
大株主が顧客である構造
王子HD、大王製紙、日本製紙が大株主であり、同時に顧客でもある。株主還元よりも取引条件が優先される場面が出うる。
今後の分かれ目
- 2026年11月期の営業利益が9億円を大きく上回り、中計の15億円に近づく
- 構造改革の効果が出たと見て、中立から楽観の筋書きに寄る。
- 国内の大手製紙会社が統合や大型の設備停止を発表する
- 国内の製紙網の数量が急減し、やや悲観から悲観の筋書きに寄る。
- 賃貸不動産の売却や、含み益を示す開示が出る
- 売れる資産の価値が具体化し、床が上がる。確率は楽観側に動く。
- フォトマスク事業で再び減損、または撤退が発表される
- 電子部材の利益見通しが下がり、やや悲観の筋書きに寄る。
- 製紙大手が株式の買い増しや公開買付けに動く
- 少数株主にとって別の価値が出うるが、顧客でもあるため条件は読みにくい。
見ておくもの
- 国内の製紙網の売上(年2%減に収まるか)
- フォトマスクの設備更新と受注
- 賃貸等不動産の時価(有価証券報告書の注記)
- 大阪工場の建て替え費用と借入の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は正当化PERの式とROEがk以下なら1÷kが上限という決まりから置き、今の株価や過去のPBRは使っていない。床は投資有価証券の税後と賃貸・遊休不動産の売却価値から借入を引いた額で、PBRの谷から置いていない。賃貸の含み益は確かめていないので価値に足していない。リース会計の形は変わらない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→11.43 倍・やや楽観 PER 10.5→11.43 倍・中立 PER 10→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityの+1.25%を足して8.75%。赤字の期はあるが事業は傾いておらず、上乗せはない。