結論
東洋シヤッターは、工場・倉庫・ビル向けの重いシャッターと防火の扉を作る、国内3番手のメーカーだ。筆者の結論は、今の値段は割安だということだ。時価総額は自己資本の半分ほどで、毎年8億円前後の純利益を出す会社としては安すぎる。
稼ぎの柱は2つある。1つは新しい建物に付けるシャッターと扉で、売上の4分の3を占める。もう1つは、すでに付いているシャッターの修理と点検だ。後者は売上の4分の1にすぎないが、利益の半分近くを生んでいると筆者は見る。
点検の仕事が伸びる理由ははっきりしている。2016年から、防火シャッターと防火扉は年1回の検査と報告が法律で義務になった。一度付いたシャッターは数十年使われ、その間ずっと点検と部品の交換の仕事が続く。新築が減っても、この稼ぎは簡単には減らない。
弱みもある。三和ホールディングスと文化シヤッターに比べて規模が小さく、新築の入札では値段で押される。前期も受注の競争で利益率が下がった。それでも、10年の中立で営業利益は今の1.4倍ほどになり、本質価値は今の時価総額を大きく上回る。独ヘルマンが2割を持つ株主構成も、長い目では選択肢を広げる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、地味だが持っていたい部類の会社だ。理由は、点検の仕事にある。一度付いたシャッターは数十年使われ、法律が年1回の検査を求める。新設で売った製品が、その後ずっと稼ぎを生む形は、バリュー投資家の好むものだ。
オーナー利益、つまり再投資を引いた株主に残る利益は、純利益とほぼ同じと見る。工場の設備は軽く、年の設備投資は3億円台だ。利益の多くは、配当か手元の現金として残る。
弱いのは新設の値決めの力だ。2強に入札で押されると、利益率はすぐ削られる。ただ、新設の利益が細っても、点検の稼ぎが床を支える。前期の減益局面でも、営業利益は12億円を保った。
安全域は厚い。今の時価総額は、自己資本の半分ほどにすぎない。中立の10年でも、純利益は12億円近くに増え、配当も増える。筆者が心配するのは、資本効率が資本コストにわずかに届かない点だ。ためた利益を配らずに抱えるなら、その価値は割り引かれる。配当性向の引き上げが本当に進むかを見たい。
何で稼ぐ会社か
事業は、シャッターと扉の製造・取り付けと、その修理・点検の2つに分けて見ると分かりやすい。開示上は1つのセグメントだが、製品別の売上は出ている。
新設の側は、重量シャッター63億円、軽量シャッター26億円、シャッター関連26億円、スチールドア39億円、建材7億円で、合計161億円だ。重量シャッターは工場・倉庫・商業施設の大きな開口部に付き、防火や防煙の機能を持つものが多い。売り先はゼネコンなど建設会社で、建物の工事の中の1つの品目として入札で決まる。
修理・点検は54億円で、全体の4分の1を占める。すでに付いているシャッターと扉の故障の修理、部品の交換、法定の点検を請け負う。自社が付けた製品だけでなく、他社製の点検も取れる。
工場は茨城のつくば、奈良、九州の3か所に持つ。子会社は九州の南東洋シヤッター1社だけで、ほぼ単体の会社だ。従業員は540人ほどで、営業と施工・点検の技術者が多い。
利益の構造はこうだ。新設は鋼材と人件費の上昇を、入札の値段に乗せられるかで利益率が決まる。前期は受注の競争で粗利が削られた。修理・点検は、技術者の数と、点検の契約の積み上げで決まる。こちらは景気に左右されにくく、値段も通りやすい。新設で付けたシャッターが、後の何十年分の点検の仕事を生む。この循環が、会社の土台になっている。
成長の種もある。止水板「TSウォータータイト」は、豪雨で建物に水が入るのを防ぐ製品で、内閣官房の国土強靭化の事例集にも選ばれた。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、新設では薄く、点検では厚いと筆者は見る。新設の入札では、三和ホールディングスと文化シヤッターという2強と並び、値段の勝負になりやすい。国内の重量シャッターは上位数社の寡占だが、東洋シヤッターは規模で劣る3番手だ。
点検の側は事情が違う。防火シャッターは1台ごとに危害防止の装置や連動の仕組みが違い、付けた会社が構造をいちばんよく知っている。建物の持ち主は、検査を毎年同じ会社に頼むことが多い。切り替えの手間が、そのまま小さな堀になる。
資本効率は、資本コストに少し届かない水準だ。過去10年の自己資本利益率の中央値は7.7%で、資本コストの8.0%をわずかに下回る。会社は中期経営計画で2030年3月期に営業利益20億円、ROE10%を掲げる。営業利益率では8%にあたり、過去の最良の7.8%を少し超える目標だ。
財務は堅い。自己資本比率は58%で、借金と現金がほぼ釣り合う。土地は工場3か所と支店で帳簿36億円を持つ。
弱いところは、新設の値決めの力と規模だ。鋼材や人件費が上がった時に、2強より転嫁が遅れやすい。前期の減益は、それを示している。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のシャッターの市場は、新築と改修・点検の2つの流れでできている。新築は、工場・倉庫・商業施設の着工に左右される。人口が減る国内では、新築の数量は10年で緩やかに減ると見るのが自然だ。
ただ、建物の種類で差がある。物流倉庫は通販の広がりで建ち続け、半導体などの工場の国内回帰も重量シャッターの需要を生む。一方、商業施設とオフィスは縮む。新築の数量は、10年で1割弱減る程度に収まると筆者は見る。
改修と点検は、逆に増える流れにある。高度成長期からバブル期に建った建物のシャッターが更新の時期を迎えている。2016年の建築基準法の改正で、防火シャッター・防火扉の定期検査の報告が義務になった。点検の対象は、新築が減っても、すでに建っている建物の数だけある。
競争の構図は、三和ホールディングスが国内の半分超を握り、文化シヤッターが2番手、東洋シヤッターはその後ろだ。2強は全国の施工と点検の網を持ち、海外の買収でも規模を広げた。東洋シヤッターは独ヘルマンと2012年から資本業務提携を結び、欧州の製品や技術を取り入れている。
値段の面では、鋼材が分かれ目になる。中国の鉄鋼の輸出が過去最高の水準にあり、鋼材の値上がりは物価より緩やかと見る。これは原価には追い風だ。だが人件費、特に施工と点検の技術者の賃金は物価以上に上がる。人手不足で技術者を集められる会社ほど、点検の仕事を取れる。
豪雨の増加で、止水板や防水の扉の需要も伸びている。10年先の分かれ目は、新築の入札で値段を守れるかと、点検の技術者をどれだけ増やせるかの2つだ。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、自社株買いの実績はほとんど無い。前期の配当は総額2.7億円で、配当性向は32%だった。中期経営計画では、2030年3月期に配当性向40%を目標にしている。利益の4割を配り、残りを設備と人に回す方針だ。
株主の構成は安定している。独ヘルマンの持株会社が約20%を持つ筆頭株主で、取引先の持株会が13%、従業員の持株会が8%、みずほ銀行が5%と続く。安定した株主で半分近くを占め、買収の対象になりにくい形だ。
ヘルマンは欧州で最大級の扉とシャッターのメーカーである。2012年の提携以来、持株を2割に保ってきた。日本の市場に本格的に入る時に、東洋シヤッターを丸ごと取りにくる道はありうる。筆者はこれを本質価値の外の選択肢と見て、筋書きの確率には入れていない。
政策保有株は9億円ほどで、愛知電機やタクマなど取引先の株が中心だ。配当は利益に入っているので、価値に別には足していない。土地の帳簿は36億円で、奈良工場だけで20億円を占める。
資本の使い方で気になるのは、純利益が自己資本の8%前後なのに、現金を配らずにため込む癖が過去にあったことだ。配当性向40%の目標は、その癖を直す一歩になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
点検の稼ぎは、これから10年で一段と太る。防火シャッターの定期検査は2016年に義務になったばかりで、検査の網はまだ全国に行き渡っていない。高度成長期とバブル期の建物のシャッターは、部品の交換や丸ごとの更新の時期に入った。修理・点検の売上は、10年で今の1.5倍を超えうる。
新設も悪くない。物流倉庫と半導体の工場は国内で建ち続ける。重量シャッターは前期も売上を伸ばした。止水板のような防災の製品は、豪雨が増えるほど需要が伸びる。
会社は変わり始めた。中期経営計画は営業利益20億円とROE10%を掲げ、配当性向も40%へ上げる。今の時価総額は自己資本の半分で、利益の7倍ほどしかない。資本効率が上がれば、この差は大きく縮む。
筆頭株主のヘルマンも見逃せない。欧州最大級の扉のメーカーが2割を持ち続けているのは、日本の市場への足場として価値を認めているからだ。技術や製品の面でも、提携の効果は出てくる。
慎重な見方
新設の入札で、東洋シヤッターは2強に勝てない。前期は売上が増えたのに、受注の競争で粗利が削られて減益だった。受注高は3%減り、受注残も7%減った。来期以降の売上には、すでに陰りが見える。
国内の新築は人口とともに縮む。物流倉庫も建ちすぎの声が出ており、着工はいずれ落ちる。工場の国内回帰も、補助金が終われば勢いを失う。新設が売上の4分の3を占める会社にとって、これは重い。
点検の稼ぎも、2強が全国の網で取りにくる。三和ホールディングスや文化シヤッターは、点検とサービスを利益の柱として強めている。3番手の東洋シヤッターが、点検の取り合いで勝てる保証はない。技術者の賃金は物価以上に上がり、点検の利益率も削られる。
中期経営計画の営業利益率8%は、過去の最良の7.8%を超える。過去10年の実績は3〜7%で、目標に届いた記録はない。資本効率が資本コストを超えない限り、ためた利益の値打ちは帳簿を下回る。配当を増やしても、自己資本は積み上がり続ける。
どちらに重みを置いたか
強気の見方の方が、やや強い。点検の義務化と更新の需要は、数字で裏づけられた構造の変化だ。慎重な見方が突く新設の値決めの弱さと受注の減少も確かだが、それは今の利益の水準にすでに出ている。新設の利益が細っても、点検が床を支える形は崩れにくい。一方、中期経営計画の目標は過去の最良を超えるので、中立には置かない。中立は営業利益率6%強の、過去の実績の上の方に置いた。確率は文化シヤッターと似た形で、規模の不利の分だけ悲観を少し厚くした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,394 円152 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 588 円37 億円)。 今の値に割り戻すと 1,571 円99 億円、今との差 +81.0%、 期待の年率 +13.1%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,557 円289 億円 | 812 円51 億円 | +518.5% | +20.0% | 376 円24 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,651 円231 億円 | 720 円46 億円 | +403.6% | +17.5% | 874 円55 億円 |
| 中立 | 36% | 2,791 円177 億円 | 633 円40 億円 | +294.5% | +14.7% | 1,233 円78 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,179 円75 億円 | 479 円30 億円 | +91.0% | +6.7% | 414 円26 億円 |
| 悲観 | 12% | 379 円24 億円 | 325 円21 億円 | −18.9% | −2.1% | 85 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,394 円152 億円 | 588 円37 億円 | +243.5% | +13.1% | 2,982 円189 億円 |
今の株価時価総額 868 円55 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 点検が1.4倍に育ち、中計の利益率を超える 利益 17 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 4,557 円289 億円
10年後、東洋シヤッターは点検の会社としての顔を強めている。防火設備の検査が全国に行き渡り、修理・点検の件数は今の1.4倍になる。利益率は13%に上がり、新設と同じくらいの利益を稼ぐ。
新設も踏みとどまる。物流倉庫と半導体の工場の需要に、止水板などの防災の製品が加わり、台数は今と同じ水準を保つ。ヘルマンとの提携で欧州の高機能な扉を取り入れ、入札でも値段を守れるようになる。営業利益率は8%近くに上がり、中期経営計画の目標を超える。
配当性向40%の方針は守られ、自己資本利益率は資本コストを上回る。資本を上手に配る会社として評価が変わる。
- 新設(シャッター・ドア・建材):数量 41,030(推定出荷台数(台))× 価格 55(1台あたり平均単価(万円))→ 売上 227 億円・営業利益 12 億円。防災製品で台数を保つ
- 修理・点検:数量 50,092(推定作業件数(件))× 価格 21(1件あたり平均単価(万円))→ 売上 104 億円・営業利益 13 億円。点検が1.4倍
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍。全体の PER 15.97 倍、時価総額 278 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:点検の拡大と新設の値決めの改善がそろう必要があり、確率は低い。
やや楽観 20% 中計の営業利益20億円に届く 利益 15 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 3,651 円231 億円
10年後、中期経営計画の営業利益20億円は少し遅れて達成されている。修理・点検の件数は1.3倍に増え、利益率は12%になる。新築の台数は少し減るが、重量シャッターと防災の製品で単価を上げる。
営業利益率は7%で、過去の最良に近い水準を続けられる形になる。配当性向は40%に上がり、純利益の4割が毎年株主に戻る。自己資本利益率は資本コストをわずかに上回り、ためた利益にも帳簿並みの値打ちがつく。2強との差は縮まらないが、点検の網で地域の顧客を固める。
止水板のような防災の製品は、豪雨の増加で官公庁や物流の施設に広がり、新設の単価を押し上げる。前期の減益は、一時のつまずきだったことになる。
- 新設(シャッター・ドア・建材):数量 39,018(推定出荷台数(台))× 価格 54(1台あたり平均単価(万円))→ 売上 212 億円・営業利益 10 億円。台数は少し減る
- 修理・点検:数量 46,514(推定作業件数(件))× 価格 20(1件あたり平均単価(万円))→ 売上 95 億円・営業利益 11 億円。点検が1.3倍
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍。全体の PER 15.11 倍、時価総額 219 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の目標に届く道。点検の義務化という裏づけがあり、2割と置いた。
中立 36% 点検が育ち、新設の縮みを埋める 利益 12 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 2,791 円177 億円
10年後、東洋シヤッターは点検の稼ぎで新設の縮みを埋める会社になっている。新築の台数は1割弱減り、入札の値段は物価並みにしか上がらない。新設の利益率は4%にとどまる。
修理・点検の件数は1.2倍に増え、利益率は11%を保つ。営業利益は17億円台で、今の1.4倍だ。その半分を点検が稼ぐ。
配当性向は中期経営計画どおり40%に上がる。それでも利益の6割が社内に残り、自己資本は1.6倍に膨らむ。自己資本利益率は7%台で、資本コストにわずかに届かない。中期経営計画の目標には届かないが、地味に稼ぎ続ける会社であり続ける。ヘルマンが株を買い増す道は残るが、この筋書きには入れていない。
- 新設(シャッター・ドア・建材):数量 37,409(推定出荷台数(台))× 価格 54(1台あたり平均単価(万円))→ 売上 201 億円・営業利益 8 億円。新築が1割弱減る
- 修理・点検:数量 42,936(推定作業件数(件))× 価格 20(1件あたり平均単価(万円))→ 売上 86 億円・営業利益 9 億円。点検が1.2倍
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍。全体の PER 13.95 倍、時価総額 163 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:点検の義務化と新築の緩やかな縮みという、裏づけのある2つの流れを置いた中心の見通し。
やや悲観 25% 入札の値下げ競争で新設が薄利に 利益 7 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,179 円75 億円
10年後、新設の入札の競争が東洋シヤッターの利益を削っている。物流倉庫の建設が一服し、工場の国内回帰も補助金の終わりとともに鈍る。新築の台数は2割近く減り、2強との値下げ競争で新設の利益率は2%に落ちる。
点検は件数を少し増やすが、技術者の賃金が上がり、利益率は9%に下がる。2強も点検を強め、地域の顧客の取り合いになる。営業利益は10億円で、今を下回る。
配当は利益の4割を守るが、額は今とほぼ同じだ。自己資本は積み上がる一方で、自己資本利益率は5%を割る。ためた利益の値打ちは帳簿を大きく下回る。
- 新設(シャッター・ドア・建材):数量 32,984(推定出荷台数(台))× 価格 52(1台あたり平均単価(万円))→ 売上 172 億円・営業利益 3 億円。値下げ競争
- 修理・点検:数量 38,642(推定作業件数(件))× 価格 20(1件あたり平均単価(万円))→ 売上 75 億円・営業利益 7 億円。賃金高で利益率低下
倍率:ROE4.6%がk7.5%以下なので上限は1÷k=12.5倍。稼ぐ力(純利益÷k)の約7割の9.0倍。7割へ引き上げるのでなく、ためた現金が配られない分を割り引いた。
確率:受注高と受注残が減り始めており、2強との値段の競争が続く可能性は高い。
悲観 12% 新設が赤字になり、点検だけが残る 利益 2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 379 円24 億円
10年後、東洋シヤッターは構造的に負けている。国内の非住宅の新築が3割減り、2強が値段で入札を取りにいく。新設は赤字に転じ、工場の統合と減損に追い込まれる。
点検も、2強の全国の網に顧客を奪われ、件数は今を少し下回る。利益率は7%に落ちる。営業利益は3億円ほどで、純利益は2億円だ。
配当は利益に合わせて減る。自己資本は減損で削られ、稼ぐ力は資本コストに遠く届かない。少数の株主には工場や土地を売る判断を決める力が無く、帳簿の自己資本は床にならない。残る価値は、土地と持ち合いの株、手元の現金の一部だけになる。
- 新設(シャッター・ドア・建材):数量 28,158(推定出荷台数(台))× 価格 50(1台あたり平均単価(万円))→ 売上 141 億円・営業利益 −1 億円。赤字に転じる
- 修理・点検:数量 33,991(推定作業件数(件))× 価格 19(1件あたり平均単価(万円))→ 売上 64 億円・営業利益 4 億円。顧客を奪われる
倍率:稼ぐ力(純利益2億円÷k)は約25億円。売れる資産(土地36億円の7割・政策保有株9億円の税後・純現金)約33億円に戻り方0.75を掛けた約25億円と同じ水準で、今の自己資本104億円に0.23倍。
確率:2010〜11年の赤字の実績と、3番手の規模の不利から1割強と置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
新設(シャッター・ドア・建材)
工場・倉庫・ビルに付ける重量・軽量シャッター、スチールドア、建材。ゼネコンから入札で受注する。
| 数量推定出荷台数(台) | 価格1台あたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40,225 | 40 | 161 | 7 |
| 10 年後 中立 | 37,409 | 54 | 201 | 8 |
取り方:有報の製品別売上(重量63.4・軽量26.0・関連25.5・ドア39.3・建材6.6億円)の合計。台数は開示が無く、重量と軽量・ドアの混ざった平均を1台40万円と置いて約4万台と推定。利益は単一セグメントで開示が無く、全社の営業利益12.5億円を新設4%台・点検11%と割り振った推定(本社費も配って含める)。中立の数量は国内の非住宅新築の縮みで10年0.93倍、価格は物価並み1.34倍(鋼材は物価より緩やかだが人件費が上がるので利益率で調整)。
修理・点検
付いているシャッター・扉の修理、部品交換、防火設備の法定点検。他社製も請け負う。
| 数量推定作業件数(件) | 価格1件あたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 35,780 | 15 | 54 | 6 |
| 10 年後 中立 | 42,936 | 20 | 86 | 9 |
取り方:有報の修理・点検の売上53.7億円。件数は開示が無く、点検と修理の混ざった平均を1件15万円と置いて約3.6万件と推定。利益率は11%の推定(技術者の人件費が主で、材料の負担が軽い)。中立の数量は2016年の防火設備の定期検査の義務化と更新の需要で10年1.20倍、価格は物価並み。
リスクと懸念
新設の入札で2強に値段で押される
新設は売上の4分の3を占め、ゼネコンの入札で決まる。三和ホールディングスと文化シヤッターが値段で取りにくれば、3番手の利益率はすぐ削られる。前期の減益は、受注の競争で粗利が落ちたためだ。値決めの弱さは、この会社のいちばんの弱点である。
受注の減少と非住宅の着工の一服
前期の受注高は3%減り、受注残は7%減った。物流倉庫の建ちすぎや、補助金が終わった後の工場の着工の鈍りが重なれば、新設の台数は一段と減る。受注残の減少は、1〜2年先の売上の減少として表に出る。
点検の技術者が集まらない
点検と修理の稼ぎは、技術者の数で決まる。建設の人手不足で施工と点検の人材の賃金は物価以上に上がり、採用もむずかしい。人を集められなければ、点検の義務化という追い風を取り逃がし、2強に顧客を奪われる。
資本効率が資本コストに届かない
過去10年の自己資本利益率の中央値は7.7%で、資本コストの8%をわずかに下回る。配当性向を40%に上げても、利益の6割は社内に残る。使い道のない現金がたまれば、その価値は割り引かれる。自社株買いの実績が乏しい点も、この懸念を強める。
鋼材と部品の値上がり
シャッターの原価の多くは鋼板とモーター・部品だ。鋼材は中国の輸出増で上がりにくいと見るが、急な値上がりが起きれば、入札で決まった値段との差が利益を削る。受注から施工まで時間がかかるので、転嫁が遅れやすい。
大株主の動き
独ヘルマンが約2割を持つ筆頭株主である。提携を見直して株を売れば需給が崩れ、逆に買収に動けば少数株主は売り値を選べない。どちらも会社の本質価値とは別の所で、株主の結果を左右しうる。
今後の分かれ目
- 修理・点検の売上が3年続けて年5%以上伸びたら
- 点検の義務化の効果が出ていると見て、やや楽観の側へ確率を移す。
- 新設の受注高が2年続けて減り、粗利率も下がったら
- 2強との値段の競争が構造的と見て、やや悲観の確率を厚くする。
- 配当性向40%に加えて自社株買いを始めたら
- ためた利益が株主に戻る道が太くなる。資本効率が上がり、ためた利益の割引を小さくできる。
- ヘルマンが持株を引き上げる、または買収を提案したら
- 本質価値とは別に、株主の結果が買収の値段で決まる。提案の中身と、少数株主への扱いを見る。
- 中期経営計画の営業利益20億円に2030年3月期で届いたら
- 目標の達成実績として中立の利益率を引き上げ、倍率も上限に近づける。
- 非住宅の着工が2割以上落ちる不況が来たら
- 新設は赤字の側に振れるが、点検が利益の床になる。悲観の筋書きの深さを点検の落ち方で見直す。
見ておくもの
- 修理・点検の売上の伸び
- 新設の受注高と受注残、粗利率
- 配当性向と自社株買いの有無
- 独ヘルマンの持株比率
- 非住宅(工場・倉庫)の着工面積
- 中期経営計画の営業利益20億円・ROE10%への進み具合
倍率と資本コストの決め方
新設と修理・点検の2つに分け、数量は推定(新設は非住宅の新築の縮みで10年0.93倍、点検は法定検査と更新で1.20倍)、価格は物価並み1.34倍で積んだ。中立の営業利益率6.1%は過去12年の最良7.8%以下で、中計の8%は使っていない。償却は設備投資並みの年3〜4億円(推定)で取得した時の値段のまま、工場は軽く、名目の売上の伸びで利益率を上げていない。倍率は中立のROE7.1%がk7.5%を下回るため上限1÷k=12.5倍の88%。今のPER7倍台・PBR0.5倍台や時価総額からは逆算していない。悲観は稼ぐ力と売れる資産(土地・政策保有株・純現金)に戻り方0.75を掛けた床で置いた。リースは少なく、新リース基準で形はほぼ変わらない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→15.97 倍・やや楽観 PER 12→15.11 倍・中立 PER 11→13.95 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+0.5%を足した8.0%。事業は傾いていないので上乗せは置かない。堀は普通(残る割合1/2)。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。