結論
立川ブラインド工業は、ブラインドやロールスクリーン、間仕切を作る窓まわりの国内最大手だ。売上の 8 割以上をこの事業が占め、残りは子会社の富士変速機が立体駐車場と減速機を受け持つ。筆者の結論は「やや割高」。事業は堅いが、稼ぐ力が資本コストにまだ届かない。
強みは、国内で上位 3 社が市場の 9 割を握る寡占の安定感だ。値上げが通り、自己資本比率は 83%、純現金は時価総額の 3 割近い。倒れにくい会社である。
ただ、倒れにくいことと、株主のお金を増やすことは別の話だ。自己資本利益率(ROE)は 6% 前後で、会社自身が置く資本コストの 5.5〜6% をようやく超える程度にとどまる。厚い現金が利益を薄めている面も大きい。
需要の土台は住宅着工で、人口減とともに細る。単価の上げと電動・調光といった高付加価値品で穴を埋める構図だが、台数の減りを 10 年続けて打ち消し切るのは簡単ではない。
今回は増配と DOE 4% の下限、3 年で 95 億円の還元という新しい方針が出た。筆者は評価するが、余った現金の半分は事業に再投資されて価値が薄まるとみる。そのうえで 10 年の筋書きを重ねると、本質価値は今の時価総額を 2 割ほど下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見て、まず評価したいのは「分かりやすい事業」であることだ。窓に付ける物は 10 年後も必要で、技術に置き換えられて消える製品ではない。寡占で値上げが通る点も、守りの強さとして申し分ない。
次に、オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益を考える。営業利益は 44 億円あるが、工場の老朽化対策や新棟の投資が続き、3 年で維持投資に 45 億円を使う。稼いだ利益の大半は設備に消え、株主へ回るのは一部だ。ROE が資本コストを超えられない理由もここにある。
資本の使い方は、いま最も評価が分かれる。余った現金と有価証券をため込んだ歴史は長いが、増配と DOE 下限で姿勢は明確に変わった。問題は M&A だ。リフォーム施工や設計会社の買収は、買う値段しだいで株主の価値を壊す。
安全域は、純現金の厚みにある。倒産や減配の心配はほぼない。ただ、安全域は「割安」とは違う。事業が稼ぐ力そのものが資本コストを下回るうちは、現金の厚みだけで高い値段を払う理由にならない。
筆者は、この会社を「手堅いが増やしてくれない会社」と位置づける。ROE が 8% を安定して超える道筋が見えれば、評価は大きく変わる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は窓まわり製品だ。ブラインド、ロールスクリーン、カーテンレール、パネル型の可動間仕切を、住宅メーカーや工務店、内装・設計の事務所、商業施設やオフィスの施工業者へ卸す。売上の 84% を占め、営業利益率は 10% 前後。主要な販売先は 1 社も 10% に届かず、特定の客に依存しない。
高く売れる製品へ寄せているのが最近の動きだ。光の量を細かく調整できる調光ファブリック(ルミエ、エアレ)、スマホで動かす電動製品(ホームタコス)、間仕切(プレイス)を成長製品に据えた。2025 年は主力のファブリック製品を作り直して値上げに踏み切り、販売台数が減る中でも売上を伸ばした。
残りの 16% は子会社の富士変速機が担う。駐車場装置は、低コスト型の立体駐車場「パズルタワー」と高機能型が主力で、利益率は 15% 台と高い。ただし大型物件の計上時期で振れが大きい。減速機は工作機械と無人搬送車(AGV)向けで、利益率は 5% 台だ。
2026 年 2 月に新しい中期経営計画「タチカワビジョン 2028」を出した。2028 年 12 月期に売上高 458 億円、営業利益 48 億円、ROE 7% 以上を掲げる。3 年で成長投資に 90 億円、維持投資に 45 億円を使い、ファブリックの生産棟とスマートファクトリー、北海道の生産・物流拠点の統合を進める。M&A は内装の施工業者や空間設計に強い会社を候補にし、リフォーム需要の取り込みを狙う。ここは従来の同社が避けてきた領域だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、「国内の寡占」と「窓まわりをまとめて提案できる品ぞろえ」だ。ブラインドはタチカワ、ニチベイ、トーソーの 3 社で国内の約 9 割を占めるとされる。参入が少なく、価格競争も限られる。
値決めの力は 2025 年に試された。ファブリック製品の作り直しと同時に値上げをしたが、台数は減っても売上と利益は崩れなかった。中東情勢による原材料高にも、取引先の要請を受けて再び改定する構えだ。
一方で、強い堀とまでは言えない。窓まわりはカーテンという代替品があり、小売店や施工業者の側にも選択肢がある。国内の最終需要は住宅着工に結びつき、人口が減る国では長く細る。堀は「守る」力であって、市場の縮みを止める力ではない。
資本効率は低い。ROE は過去 10 年の中央値で 6% 台、直近も 5.9% だ。総資産が膨らみ、現預金と投資有価証券が事業に使われずにたまってきた。2025 年の過去最高益にも、政策保有株や固定資産の売却益と税負担の減少が入っていた。
経営の意識は変わりつつある。ROE 7% 以上と PBR(株価純資産倍率)1 倍以上を明言し、資本コストも自分で見積もるようになった。筆者は、この姿勢の転換が最大の変化だとみる。ただ、数字に表れるのはこれからだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
窓まわり市場は、国内の需要が緩やかに縮む成熟産業だ。トーソーの開示では、窓装飾品の卸売市場は約 2,000 億円で、カーテンレールとブラインド類を合わせて約 900 億円だった。タチカワの窓まわり売上は 359 億円で、この領域の 3 割強にあたると推定する。
需要の背骨は新築住宅の着工と、既存住宅の取り替えだ。新築は人口減、資材高、住宅ローン金利の上昇で減り続けると会社自身が見る。取り替え需要は、古くなった製品の入れ替えで安定している。省エネや日射の調整、デザインの流行で買い替えが促される面もあり、ここが下支えになる。
競争は 3 社の寡占で、ニチベイとトーソーが相手だ。トーソーはカーテンレールで国内の半分近いシェアを持ち、ブラインドでもシェア拡大を狙う。タチカワはブラインドと間仕切、電動で厚みを出す。価格競争は限られるが、値上げのたびに量が逃げないかを試される。
海外は、輸入のロールスクリーンや家具量販店の安価な製品が脅威になりうる。ただし日本は採寸や取り付け、アフターサービスへの要求が細かく、オーダー品では国産が有利とみる。
駐車場装置は、機械式立体駐車場の新設が都市部の再開発に限られる成熟市場で、改修の需要が続く。減速機は工作機械の循環と AGV の増加が左右する。どちらも会社の利益の 15% 程度だ。
タチカワの強みは、窓まわりの種類が広いことだ。ブラインドからロールスクリーン、間仕切、電動までそろえ、設計事務所や施工業者に「窓と間仕切をまとめて」提案できる。国内の寡占は安定しているが、成長の源は市場の拡大ではなく、1 台あたりの単価の上昇とシェアの小さな積み上げにある。
資本政策と M&A
資本政策は大きく動いた。2026 年の配当は前期の約 1.7 倍に引き上げ、累進配当を続けたうえで DOE(自己資本配当率)4% を下限にする。3 年で 95 億円を配当と自社株買いに回す計画だ。自社株買いは経営環境を見て機動的に行うとしている。
政策保有株式は売却を進め、現預金は成長投資に回す方針だ。2025 年の利益には売却益も入った。上期には余剰資金のうち約 24 億円を社債と定期預金へ振り向けた。
M&A はこれまで限定的だった。今回は内装の施工業者や、空間設計に強い会社を探し、候補のロングリストを作る段階にある。借入の活用も排除していない。筆者がもっとも見守るのはここだ。純現金 151 億円の使い道を誤れば、増配の効果が簡単に消える。
株主では、有限会社立川恒産が 19.8%、取引先持株会が 8.9%、更生保護法人立川更生保護財団が 6.4% を持つ。安定株主が多く、買収されやすい形ではない。kabufu の推定で 10 年以内に TOB(株式公開買い付け)を受ける確率は 18% ある。
還元は方針(累進配当・DOE4%を下限、3年で95億円)どおりで、中立は純利益の合計の約85%。余った現金100億円は還元に入れず時価総額に足すので二重にしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
住宅着工が減っても、窓まわりの売上は台数ではなく単価で決まる。2025 年はファブリックの作り直しと値上げで、台数減を覆して売上を伸ばした。調光ファブリック、電動、間仕切は、1 台あたりの単価が普通のブラインドの数倍になる。これが売上の中身を入れ替えていく。
3 社の寡占は崩れない。ニチベイ、トーソーとも同じ原材料高と人手不足に直面しており、値上げが業界全体で通りやすい。タチカワは国内最大手で、施工まで含めた提案力に最も厚みがある。
純現金 151 億円は大きな武器だ。内装の施工業者や設計会社を買えば、住宅の新築に頼らず、リフォームとオフィス改装から売上を取れる。買った会社が窓まわりの需要を持ち込み、既存の販売網と組み合わさる。
株主還元は新しい段階に入った。DOE 4% の下限で、配当は利益が増えれば自動的に増える。自社株買いが加われば、1 株あたりの利益はさらに押し上げられる。駐車場装置も大型案件が続き、減速機は AGV の拡大で伸びる。
営業利益率が過去最高の 11% を超えて 12% に乗れば、ROE も 8% に届く。この変化を、今の値段はまだ織り込んでいない。
人口減の中でも、既存住宅の窓は古くなり続ける。取り替えの波は止まらず、そこに電動と調光を乗せれば、同じ台数でも売上は増える。
慎重な見方
着工戸数の減少は、10 年単位で止まらない。人口減に加え、資材高と金利上昇が住宅購入を遠ざけている。会社自身が住宅着工は減り続けると言っている。単価の上げで売上を保っても、台数を落とせば工場の稼働は下がり、固定費が利益を削る。
値上げの余地にも限りがある。電動や調光の高付加価値品は、ニチベイやトーソーがすぐ追随する。カーテンという安い代替品もあり、値上げ幅が大きいほど顧客は軽い製品へ流れる。2025 年の増益には、政策保有株などの売却益と税負担の減少が含まれており、事業の実力を上に見せている。
ROE は 6% 前後で、資本コストを下回る。厚い現金は安全に見えるが、ROE を押し下げる原因でもある。DOE 4% の下限は評価できるが、3 年で 95 億円の還元は純利益の 9 割以上にあたり、ためた現金の取り崩しはほとんどない。
M&A が最も危ない。施工や設計の会社は人に依存し、買収後に主要な人が抜ければ価値が消える。同社は本格的な M&A の経験が乏しい。純現金を使い切っても、のれんの減損で株主の価値を減らす可能性がある。
駐車場装置の利益率 15% は大型案件の計上時期による山で、平常ではない。減速機は 5% 台と低い。
人が減る国で、窓の数は増えない。資材と人件費は物価で上がり続けるため、価格転嫁が一巡すれば、利益率の改善も止まる。
どちらに重みを置いたか
事業の守りの強さでは強気の意見に分があるが、利益が資本コストに届かないという慎重な指摘のほうが、数字で確かめやすい。厚い現金と寡占が下値を支えるので、悲観の確率は 1 割にとどめた。そのうえで、台数減の長期化と M&A の失敗というやや悲観の道筋を 25%、中立を 37% に置いた。強気の見立ては、営業利益率 11% 超を条件とする上振れとして、合わせて 28% を残している。確率は、やや悲観側に寄せた形である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 2,793 円561 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,399 円281 億円)。 今の値に割り戻すと 2,509 円504 億円、今との差 −4.5%、 期待の年率 +4.8%(資本コスト 6.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,955 円996 億円 | 1,796 円361 億円 | +157.1% | +9.9% | 540 円109 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,938 円792 億円 | 1,612 円324 億円 | +111.3% | +7.8% | 1,110 円223 億円 |
| 中立 | 37% | 3,223 円648 億円 | 1,478 円297 億円 | +79.0% | +6.0% | 1,739 円350 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,389 円279 億円 | 1,303 円262 億円 | +2.5% | +0.2% | 673 円135 億円 |
| 悲観 | 10% | 696 円140 億円 | 602 円121 億円 | −50.6% | −6.8% | 130 円26 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,793 円561 億円 | 1,399 円281 億円 | +59.6% | +4.8% | 4,192 円843 億円 |
今の株価時価総額 2,626 円528 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 調光・電動が単価を押し上げ、M&A も当たる 利益 53 億円 · PER 18.0 倍 · 株価時価総額 4,955 円996 億円
調光・電動・間仕切が単価を押し上げ、リフォーム市場への M&A が当たる。台数は横ばいを保ち、1 台あたりの単価は物価を上回って上がる。内装施工会社の買収で、新築に頼らない売上の柱ができる。営業利益率は過去最高を超えて 11% 台に乗り、駐車場装置と減速機も伸びる。DOE 4% の下限が機能し、配当と自社株買いで株主還元は厚く続く。
ROE は 8% 台に達し、資本コストを超える。寡占と値決めの力を保ったまま、資本の使い方も改まる。強気の見方が何一つ外れない、最良の 10 年だ。
筋書きの鍵は、買った会社をきちんと束ねられるかだ。同社の売上の 8 割以上を占める窓まわり事業が、施工と設計の力を取り込めば、市場の縮みに関係なく伸びる領域が生まれる。
- 室内外装品:数量 600(販売数(万組・年。1 窓分の製品を 1 組と数える推定))× 価格 0.84(1 組あたり卸売単価(万円・名目))→ 売上 503 億円・営業利益 60 億円。組数は横ばい、単価は電動・調光の比率上昇で物価を上回る
- 駐車場装置:数量 700(国内の機械式駐車装置の新設・改修市場(億円・実質))× 価格 6.7%(自社シェア × 物価の倍率)→ 売上 47 億円・営業利益 7 億円。シェア 5.0%、利益率 14%
- 減速機:数量 1,725(国内の減速機・ギヤードモーター市場(億円・実質))× 価格 3.8%(自社シェア × 物価の倍率)→ 売上 65 億円・営業利益 5 億円。AGV で市場 1.15 倍、シェア 2.8%
倍率:事業の純利益 51 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 17.99 倍、時価総額 996 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率 11% 超と M&A の成功が 10 年続く必要があり、会社の目標(営業利益 48 億円)を大きく上回る。実現すれば大きいが、連続して当てるのは難しい。
やや楽観 20% 取り替えと高付加価値品が減少を打ち消す 利益 44 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 3,938 円792 億円
住宅着工の減少を、取り替え需要と高付加価値品が大半打ち消す。台数は 5% ほど減るが、単価は物価並みに上がり、調光・電動の比率が高まる分、営業利益率は 11% 前後へ改善する。M&A は小粒にとどまるが、失敗もしない。
駐車場装置は改修需要で安定し、減速機は AGV の増加が追い風になる。還元は純利益の約 85% を保ち、現金は少しずつ減る。ROE は 7% 台に乗るが、資本コストを大きく超えるまでは届かない。着実だが、驚きのない 10 年だ。
電動と調光は、住宅だけでなくオフィスや病院、ホテルの改装にも広がり、販売先の裾野が広がる。大きな上振れはないが、ここでの積み上げが下支えになる。
- 室内外装品:数量 570(販売数(万組・年。1 窓分の製品を 1 組と数える推定))× 価格 0.80(1 組あたり卸売単価(万円・名目))→ 売上 458 億円・営業利益 50 億円。組数 0.95 倍、単価は物価並み
- 駐車場装置:数量 650(国内の機械式駐車装置の新設・改修市場(億円・実質))× 価格 6.2%(自社シェア × 物価の倍率)→ 売上 40 億円・営業利益 5 億円。市場 0.93 倍、シェア 4.6%
- 減速機:数量 1,650(国内の減速機・ギヤードモーター市場(億円・実質))× 価格 3.4%(自社シェア × 物価の倍率)→ 売上 55 億円・営業利益 4 億円。市場 1.10 倍、シェア 2.5%
倍率:事業の純利益 42 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 16.86 倍、時価総額 792 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期経営計画の線(営業利益 48 億円、ROE 7%)が 10 年続く程度の上振れ。会社が自分で掲げた目標に近く、実現しやすい。
中立 37% 台数は細り、単価で守る 利益 38 億円 · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 3,223 円648 億円
国内の台数は 10 年で 1 割強減る。新築の減少を、取り替えと電動・調光の浸透が一部打ち消す。単価は物価並みに上がるが、人件費と原材料の上昇で、営業利益率は 10% 前後にとどまる。
駐車場装置は大型案件の山が引いて 12% 台に戻り、減速機は 6% 前後で推移する。配当は DOE 4% の下限が効き、還元は純利益の 85% 前後を保つ。純現金は設備投資と M&A で減るが、ROE は 6% 台で資本コストに届かない。堅いが増やしてくれない会社のまま、10 年が過ぎる。
この筋書きでは、政策保有株の売却や遊休資産の整理も進み、総資産は小さくなる。ただし、その分の現金を株主へ返すか、投資に回すかで評価が大きく動く。
- 室内外装品:数量 528(販売数(万組・年。1 窓分の製品を 1 組と数える推定))× 価格 0.80(1 組あたり卸売単価(万円・名目))→ 売上 424 億円・営業利益 42 億円。組数 0.88 倍、単価は物価並み 1.34 倍
- 駐車場装置:数量 595(国内の機械式駐車装置の新設・改修市場(億円・実質))× 価格 5.9%(自社シェア × 物価の倍率)→ 売上 35 億円・営業利益 4 億円。市場 0.85 倍、シェア横ばい、利益率は山が引く
- 減速機:数量 1,575(国内の減速機・ギヤードモーター市場(億円・実質))× 価格 3.3%(自社シェア × 物価の倍率)→ 売上 52 億円・営業利益 3 億円。市場 1.05 倍、シェア横ばい
倍率:事業の純利益 36 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 6.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 15.87 倍、時価総額 648 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:台数は減り単価で守る構図が最も自然。2025 年の値上げで台数が減っても売上が保たれた実績が、中心の根拠になる。
やや悲観 25% 台数減が深まり、M&A も実らない 利益 26 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,389 円279 億円
新築着工の減少が取り替え需要を上回り、台数は 2 割以上減る。値上げの余地は物価並みにとどまり、稼働の落ちた工場の固定費が、営業利益率を 8% へ押し下げる。ニチベイとトーソーが電動・調光で攻勢を強め、タチカワも一部の価格で追随を迫られる。
リフォーム向けの M&A は、想定した相乗効果を出せない。のれんの一部を減損し、買収に使った現金も戻らない。DOE の下限は守るが、余裕は縮む。ROE は 4% 台に落ち、資本コストを大きく下回る 10 年になる。
中立との違いは、台数の落ち込みの深さと、M&A の出来である。どちらか一方でも外れれば、この筋書きに近づく。
- 室内外装品:数量 468(販売数(万組・年。1 窓分の製品を 1 組と数える推定))× 価格 0.80(1 組あたり卸売単価(万円・名目))→ 売上 376 億円・営業利益 30 億円。組数 0.78 倍、稼働低下で利益率 8%
- 駐車場装置:数量 525(国内の機械式駐車装置の新設・改修市場(億円・実質))× 価格 5.6%(自社シェア × 物価の倍率)→ 売上 30 億円・営業利益 3 億円。市場 0.75 倍、シェア 4.2%
- 減速機:数量 1,350(国内の減速機・ギヤードモーター市場(億円・実質))× 価格 3.1%(自社シェア × 物価の倍率)→ 売上 42 億円・営業利益 2 億円。市場 0.90 倍、シェア 2.3%
倍率:ROE が 4% 台で資本コストを大きく下回り、上限は 1÷k の 13.3 倍。稼ぐ力が細り、買収も実らない筋書きなので、上限の約 7 割より低い 9.0 倍に置く(引き上げない)。
確率:住宅着工の減少が取り替えを上回る道筋は、人口減を踏まえると十分ありうる。M&A は経験が乏しく、期待どおりに行かない確率も高い。
悲観 10% 着工急減と価格競争で寡占が崩れる 利益 8 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 696 円140 億円
着工の急減と、安価な輸入品や量販店の自社ブランドが重なり、窓まわり事業の台数は 4 割減る。3 社の寡占は崩れ、価格競争で単価が物価に追いつかなくなる。工場の稼働が落ち、営業利益率は 3% 台まで低下する。
リフォーム M&A は失敗し、純現金の 3 分の 1 が使われ、減損も出る。駐車場装置と減速機も、景気の谷で赤字に近づく。配当は DOE の下限を守れず、実質的な減配に追い込まれる。事業の稼ぐ力は小さくなり、価値の大半は残った現金と資産に頼る 10 年になる。
同社の自己資本比率は 83% あり、事業が傷んでも財務は耐える。ただし耐えることと、株主の価値が保たれることは別で、この筋書きでは前者だけが残る。
- 室内外装品:数量 360(販売数(万組・年。1 窓分の製品を 1 組と数える推定))× 価格 0.72(1 組あたり卸売単価(万円・名目))→ 売上 259 億円・営業利益 9 億円。組数 0.60 倍、価格競争で単価は 1.20 倍止まり
- 駐車場装置:数量 350(国内の機械式駐車装置の新設・改修市場(億円・実質))× 価格 4.7%(自社シェア × 物価の倍率)→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。市場 0.5 倍、シェア 3.5%、低採算
- 減速機:数量 1,050(国内の減速機・ギヤードモーター市場(億円・実質))× 価格 2.7%(自社シェア × 物価の倍率)→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。市場 0.70 倍、シェア 2.0%、利益率 2%
倍率:構造的に負ける 10 年で、事業の純利益は 8 億円にとどまる。稼ぐ力(約 7 億円 ÷ k 6.5%)に余った現金の戻り分を足しても約 120 億円で、純現金 151 億円を税引き後で見た床(140 億円)のほうが大きい。床は今の自己資本 564 億円に PBR 0.248 倍を掛けて置く。
確率:純現金と寡占が下値を支えるため、悲観は 1 割にとどめた。ただ、住宅着工の急減と価格競争が重なれば、窓まわりの稼ぐ力は大きく損なわれる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
室内外装品
ブラインド・ロールスクリーン・カーテンレール・可動間仕切の製造・販売と施工。調光ファブリック、電動、間仕切が成長製品。
| 数量販売数(万組・年。1 窓分の製品を 1 組と数える推定) | 価格1 組あたり卸売単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 600 | 0.60 | 359 | 37 |
| 10 年後 中立 | 528 | 0.80 | 424 | 42 |
取り方:台数は開示がない。窓まわりの国内卸売市場を約 1,200 億円(トーソー IR の 2020 年の 900 億円に、スクリーン・間仕切・施工と物価を加えた推定)とみて、自社シェア約 30% の売上 359 億円を 1 組 0.6 万円弱(卸売)で割り、約 600 万組と置いた。
駐車場装置
子会社の富士変速機が担う機械式立体駐車場(パズルタワーなど)の製造・販売・保守。
| 数量国内の機械式駐車装置の新設・改修市場(億円・実質) | 価格自社シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 700 | 4.4% | 31 | 5 |
| 10 年後 中立 | 595 | 5.9% | 35 | 4 |
取り方:開示は売上だけで市場規模が無い。国内の新設と改修を合わせて約 700 億円と粗く推定し、売上 30.8 億円から逆算したシェア約 4.4% を使う。大型物件の計上時期で振れが大きく、精度は低い。
減速機
子会社の富士変速機が担う汎用減速機・ギヤードモーターと、AGV 向けのサーボモーター等の製造・販売。
| 数量国内の減速機・ギヤードモーター市場(億円・実質) | 価格自社シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,500 | 2.5% | 37 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1,575 | 3.3% | 52 | 3 |
取り方:国内の汎用減速機とギヤードモーターの市場を約 1,500 億円と粗く推定し、売上 36.8 億円から逆算したシェア約 2.5% を使う。工作機械と AGV の循環に左右される。
リスクと懸念
住宅着工の長期的な減少
窓まわりの需要は新築住宅の着工に強く結びつく。人口減、資材高、住宅ローン金利の上昇で着工が減り続ければ、台数は 10 年単位で細る。単価の上げで売上を守っても、工場の稼働が落ちれば固定費の負担が利益率を押し下げる。
M&A の失敗と現金の使い方
リフォーム施工や空間設計の会社を買う方針だが、これらは人に依存する事業で、買収後に主要な人が抜ければ価値が消える。同社は本格的な M&A の経験が乏しい。純現金 151 億円の使い道を誤れば、のれんの減損で株主の価値を減らす。
値上げの限界と競合の追随
2025 年のファブリック作り直しと値上げは通ったが、ニチベイとトーソーも同じ原材料高に直面している。高付加価値品で追随されれば、単価を上げる余地は狭まる。カーテンなど安い代替品へ顧客が流れる可能性もある。
利益の質と一過性の押し上げ
2025 年の純利益は過去最高だが、政策保有株や固定資産の売却益と、税負担率の低下が含まれる。売却益は 1 回きりで、今後は事業そのものの利益で ROE 7% を作る必要がある。売却が進むほど、見かけの利益は減っていく。
駐車場装置の利益の振れ
駐車場装置は上期の利益が前年の 2.4 倍だが、大型物件の計上が早まった面がある。都市部の再開発に左右され、新設の受注は年ごとに大きく振れる。利益率 15% は平常の水準とは言えない。
原材料と人件費の上昇
アルミや樹脂、生地など原材料は中東情勢の影響を受けやすい。人件費も物価で上がるため、値上げが追いつかなければ利益率は低下する。値上げは取引先の要請を受けて実施する段階で、タイミングがずれれば利益が一時的に削られる。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 3 年続けて 11% を超えたら
- 単価の上昇が台数減を上回る構造が確かめられたとみて、やや楽観・楽観の確率を上げる。
- リフォーム施工・設計会社の M&A を発表し、買収額が自己資本の 1 割を超えたら
- 買収の値段と相乗効果の見通しを確認する。割高に買えば、悲観寄りの筋書きに重みを移す。
- 自社株買いを連続して実施し、DOE 4% 超の配当と合わせて還元が利益を上回ったら
- 余った現金が株主へ戻る比率が高まる。現金の評価(戻り方)を上げて見直す。
- 住宅着工が急減し、販売台数が 2 年続けて 1 割以上減ったら
- 工場の稼働低下による固定費負担を見込み、やや悲観・悲観の筋書きに近づく。
- ニチベイまたはトーソーが主力製品で大幅な値下げを始めたら
- 寡占の値決めが崩れる前兆とみて、悲観の確率を引き上げる。
- 他社が TOB を提案し、立川恒産などの主要株主が応じる姿勢を示したら
- 事業の本質価値は変わらないが、買い手の提示額を確認し、筋書きの確率に別枠で織り込む。
見ておくもの
- 室内外装品の販売台数と 1 組あたり単価の推移
- 営業利益率(特に室内外装品の 10% 台維持)
- M&A の発表と買収価格、のれんの額
- 自社株買いの実施と DOE 4% 以上の配当
- 住宅着工戸数と取り替え需要の動き
- 駐車場装置の受注残と利益率の平常水準
倍率と資本コストの決め方
倍率は式(正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g))と事業の経済性だけで置いた。今の株価や過去・同業の倍率は使っていない。中立の ROE は資本コスト(7.5%)を下回るので、PER の上限は 1÷k の 13.3 倍。その約 8.6 割の 11.5 倍に置いた。やや悲観・悲観は 7 割へ引き上げず、悲観は稼ぐ力と純現金の床で測った。純現金 151 億円は時価総額の 28% なので、事業に要らない 100 億円を分け、戻り方 0.5 で足した(数字の帳尻合わせはしていない)。10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形(新リース会計の影響は小さい)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→17.99 倍・やや楽観 PER 11.5→16.86 倍・中立 PER 11.5→15.87 倍)。
資本コスト 6.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality 0%(β・規模は使わない)。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 6.50%。