結論
サンコールは、車のエンジン用ばねと、AIデータセンター向けの光通信部品を二本柱にする関西の部品メーカーだ。利益の大半は、すでに光通信が生んでいる。
筆者の結論は、今の株価は割高というものだ。光通信の高い利益率が長く続くことを、ほぼ織り込んでいる。10年後の価値を確率で重みづけすると、今の時価総額を3割ほど下回る。
前期の営業利益71億円は、実力より大きい。HDD用部品の撤退に伴う一過性の利益が入っている。HDDを除いた実力は年60億円前後で、会社も今期は58億円を見込む。
それでも光通信は本物だ。配線の高密度化で売上は前期の70億円から、今期は106億円へ伸びる見通しだ。ただし利益の質には注意がいる。コネクタの規格は他社のものを借りており、顧客は少数の大手に偏る。前の期には、売上の2割を占めたHDD顧客を失ったばかりだ。
自動車側は、縮む事業を抱えている。エンジン用の弁ばねは、EV化で数量が減る。バスバーなどEV向けで穴を埋める途上にある。
財務は堅い。自己資本比率は6割で、純現金だ。配当性向30%以上の方針も出た。堅さは下値を支えるが、割高を打ち消すほどの価値ではない。
ここまでの見立てを数字にすると、中立の筋書きでも10年後の時価総額は今を1割ほど上回るだけだ。確率で重みづけした年率の期待は4%にとどまり、資本コストの9%には届かない。通信が想定以上に育つ筋書きは確かにあるが、その確率は1割に満たない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず利益の質を問う。前期の営業利益71億円のうち、HDD撤退に伴う一過性の利益が一部を占める。残りの実力でも、通信関連が大半を稼ぐ構造だ。
通信の利益を、株主のものになる利益として長く期待できるか。ここが最大の論点になる。規格は借り物で、顧客は少数の大手、供給力が武器だという事業は、数年先の姿を言い切りにくい。わかりにくい事業には、安全域を厚く取るのが筋だ。
一方、経営の資本の使い方には評価できる点がある。損を出していた事業を畳み、借金を3分の1減らし、稼ぐ事業へ資金を振った。筆者は、この決断力を高く見ている。
ただ、今の値段は、通信の利益が長く伸びる姿をかなり先取りしている。堅い財務と純現金は下値を支えるが、安全域と呼べるほど値段に余白はない。筆者は、今の値段では買い手に有利な勝負にならないと見る。
オーナー利益の目で見ても、通信は設備を増やす局面にある。稼いだ利益のすべてが株主に回るわけではない。HDDで資本を失った経験があるだけに、この会社が次の投資をどう選ぶかを、時間をかけて見たい。
何で稼ぐ会社か
事業は二つの分野に分かれる。前期の売上522億円のうち、自動車分野が約7割、電子情報通信分野が約3割だ。
自動車分野の中心は、エンジンのバルブを閉じる弁ばねと、その材料となる鋼線だ。材料関連はオイルテンパー線(ばね用の特殊な鋼線)とピストンリング材を扱い、自動車分野の売上の4分の1を占める。最大の顧客はトヨタで、全社売上の1割ほどだ。弁ばねは1台に何十本も使われるが、エンジンが減れば本数も減る。
その自動車分野で伸びているのがEV関連製品だ。バスバー(大電流を流す板状の配線部品)、電流センサー、LED関連を含み、前期の売上は43億円だった。会社は2028年3月期に84億円を目標にする。日本と米国で量産体制を広げている。
稼ぎ頭は電子情報通信分野の通信関連だ。光コネクタ、アダプタ、光ファイバー用の精密部品を作り、向け先はデータセンターが中心になる。北米とアジアで売上が伸び、生産は中国の子会社が担う。同じ分野のプリンター用紙送りローラーは、需要が細っている。
HDD用サスペンション(ディスク上でヘッドを支えるばね部品)は、2025年7月の出荷を最後に撤退した。前の期は売上の4分の1を占める最大の事業だった。撤退で売上は18%減ったが、営業利益は倍増した。損を出していた事業を切り離し、通信が利益を押し上げたからだ。
海外の売上比率は約6割ある。メキシコ、中国、米国などに拠点を持つ。
通信関連で使うSNコネクタは、従来のLCコネクタより3倍の密度で配線できる超小型の規格だ。サンコールの米国子会社は2026年3月に、規格を開発したSENKOからこの製造・販売のライセンスを取った。これで北米のデータセンター向けに、作る側として正面から入れる。
優良さと弱いところ
サンコールの強みは、材料から製品までを自社でつなぐ一貫生産だ。ばね用の鋼線を自分で作り、それを弁ばねに仕上げる。品質と供給を握れる点は、自動車メーカーに評価される。
ただし、値段を決めるのは顧客のほうだ。弁ばねは規格化された部品で、顧客は価格の見直しを毎年求める。前期の自動車分野の営業利益率は5%台で、今期予想は3%にとどまる。堀、つまり他社がまねできない強みは薄い。
通信関連の堀は、見かけより浅いと筆者は見る。光コネクタの規格(SN)は他社が開発したもので、サンコールはライセンスを受けて作る側だ。選ばれる理由は規格ではなく、量産力と供給の速さになる。供給が足りない間は高い利益率が出るが、競合が増えれば薄まる。
HDD事業の失敗は、同社の弱点を映している。特定顧客に売上の2割を預け、日本発條やハッチンソンとの特許訴訟で和解金を合わせて40億円超払った。その事業を畳む決断は評価できる。だが、同じ形を通信で繰り返さないかは、見ておく必要がある。
資本効率は低い。過去10年のROEの中央値は2.8%だ。前期の18%は、一過性の利益が押し上げた数字になる。
株主の構成は安定している。神戸製鋼所の退職給付信託と伊藤忠丸紅鉄鋼が合わせて3割強を持ち、経営に大きく口を出す大株主はいない。経営の自由度は高いが、規律を迫る圧力も弱い。2024年3月期には、HDD撤退の損失と減損で純損失が118億円に膨らんだ。この痛手を経て、財務は純現金に戻った。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
データセンターの光配線は、AIで大きく変わりつつある。GPUどうしをつなぐ配線の量が桁違いに増え、コネクタには小さく、密度の高いものが求められる。従来のLCコネクタに比べ、SNなどの超小型コネクタは同じ面積で3倍の本数をつなげる。
ただし、競争は激しくなる。コネクタの世界には、SENKO、住友電工、US Conec、モレックス、精工技研、古河電工などが並ぶ。中国の量産メーカーも加わる。コネクタは顧客が複数の調達先を持ちたがる部品で、供給不足が解けると値段は下がりやすい。筆者が気にしているのは、いまの利益率が供給不足の産物ではないかという点だ。
自動車は、エンジン用部品が先細る業界だ。ただしEV化は想定より遅れ、HVが増えている。会社も今期の見通しで、EV需要の鈍化とHV需要の増加を指摘した。弁ばねの減りは緩やかになる可能性があるが、方向は変わらない。直近の四半期も、エンジンとトランスミッション関連の部品は減っている。
EV関連のバスバーは、成長の余地がある。ただし中国勢の価格攻勢が強く、利益率は低く出やすい。会社の目標でも、2028年3月期の営業利益は9億円と、売上のわずか1割にすぎない。
プリンター関連は縮む一方で、全社への影響は小さい。
HDD用サスペンションの市場は、日本発條が世界の半分近くを押さえる寡占だった。サンコールは後発で、特許訴訟と価格競争の両方で消耗した。通信でも、規格を握る側と作る側の力関係は、同じ型になりうる。
資本政策と M&A
資本政策は、守りから攻めへ切り替わる段階にある。HDD撤退で売上債権と在庫を回収し、有利子負債は前期に3分の1ほど減った。会社はシンジケートローンで資金を確保したうえで、中期計画の営業キャッシュフロー130〜150億円を、成長投資、配当、返済に回す。
株主還元は、前期に復配した。今期は配当性向30%以上の方針を掲げる。還元は利益の3割にとどまり、残りは通信の設備投資に回る。通信関連の中国工場には、今後18億円規模の設備投資が予定されている。
株主構成には特徴がある。神戸製鋼所の退職給付信託が16.7%、伊藤忠丸紅鉄鋼が15.4%を持つ。安定株主だが、市場から見ると売り手が限られる構造でもある。買収防衛策を毎年更新している。kabufuの推計では、10年以内にTOB・買収の対象になる確率は22.4%だ。
政策保有株は、伊藤忠商事、京都フィナンシャルグループ、神戸製鋼所などを持つ。含み益の額は開示から確かめられないため、価値には入れていない。
大型の買収は目立たない。ライセンス契約で技術を取り込む姿勢が続くとみる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
データセンターの配線は、まだ入り口にいる。AIの学習用クラスターは、サーバーを光でつなぐ本数が従来の何倍にもなる。コネクタは小さく、高密度なものへ置き換わる。サンコールは、SNコネクタのライセンスを取り、北米で製造と販売の体制を整えた。中国の工場では、成形機と自動機を増やしている。
通信関連の売上は、前期の70億円から今期は106億円へ増える。四半期の営業利益は、HDDが消えたあとも15億円前後を保った。電子情報通信分野の営業利益率は、直近の四半期で4割を超えた。この利益が10年続けば、会社は車のばね屋から光部品の会社へ変わる。
自動車側も底は固い。HVの需要が増え、エンジン用部品の減りは遅い。バスバーは日米で量産に入り、2028年3月期の目標は84億円だ。会社は目標を、5月に上方修正した。
財務の余力も大きい。自己資本比率は6割で、純現金だ。利益が伸びれば、配当性向30%以上の方針のもとで、株主への還元も増える。HDDの失敗を整理した今は、成長に資本を集中できる。
加えて、会社は自社の計画を何度も上げている。中期計画の営業利益は、当初の28億円から5月に58億円へと2倍になった。数字が計画を超え続けているのは、事業が計画より強い証拠だ。
慎重な見方
通信関連の高い利益率は、供給が足りない間だけの現象だ。光コネクタは、複数の調達先を持ちたい顧客が多い部品で、需要が落ち着けば価格競争が始まる。中国の量産メーカーは、すでに参入している。サンコールが作るSNコネクタは、他社が開発した規格のライセンス品で、他社と差をつける手段は価格と納期しかない。
顧客の偏りも怖い。前の期には、売上の2割を占めたHDD顧客の撤退で、会社は大きく揺れた。通信でも主な顧客は少数の大手で、方針が変われば発注は大きく動く。AIの設備投資が一巡すれば、データセンター向けの需要も循環を免れない。
自動車は、弁ばねが減る事業だ。EV化は遅れているが、方向は変わらない。直近の四半期も、エンジンとトランスミッション関連の売上が減った。EV向けのバスバーは、中国勢との競争で利益率が上がりにくい。今期の自動車分野の営業利益率は、わずか3%の見通しだ。
前期の71億円には、HDD撤退に伴う一過性の利益が入っている。利益率の高さが一時の姿なら、今の株価は実力の利益の15倍以上を払う水準になる。
しかも会社の計画は、足元の勢いを延ばして置いたものだ。四半期の営業利益は、今期の第1四半期で前年を下回った。曲がり角が来るのは、通常は計画が最も強気になった時だ。
どちらに重みを置いたか
通信関連の需要の強さは、強気の見方が正しい。だが、10年にわたる利益率の持続は、慎重な見方のほうに説得力がある。規格が借り物で、顧客が少数に偏り、単価が競争で下がりやすい三点は、HDDの失敗と同じ型をしている。
確率は、中立をいちばん重く置いた。そのうえで、やや悲観に楽観より少し厚く寄せた。通信が続くやや楽観までの筋書きと、通信が崩れるやや悲観以下の筋書きは、ほぼ同じ重さと見る。違いを分けたのは、自動車側が縮む事業で、通信が崩れた時に支える柱がない点だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,519 円1,066 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 752 円228 億円)。 今の値に割り戻すと 1,975 円598 億円、今との差 −2.4%、 期待の年率 +7.8%(資本コスト 9.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 9,227 円2,795 億円 | 1,439 円436 億円 | +427.0% | +18.1% | 960 円291 億円 |
| やや楽観 | 22% | 5,287 円1,602 億円 | 977 円296 億円 | +209.5% | +12.0% | 1,378 円417 億円 |
| 中立 | 33% | 3,646 円1,104 億円 | 772 円234 億円 | +118.3% | +8.1% | 1,458 円442 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,079 円327 億円 | 535 円162 億円 | −20.2% | −2.2% | 371 円112 億円 |
| 悲観 | 13% | 565 円171 億円 | 231 円70 億円 | −60.7% | −8.9% | 103 円31 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,519 円1,066 億円 | 752 円228 億円 | +111.0% | +7.8% | 4,271 円1,294 億円 |
今の株価時価総額 2,024 円613 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 9% 光配線の拡大が続き、通信が全社の屋台骨になる 利益 172 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 9,227 円2,795 億円
AI向けの光配線が10年にわたり拡大を続ける。サンコールが作るSN系のコネクタが主流の一つになり、北米と中国の生産拠点で量産体制を広げる。顧客は複数の大手に分散し、供給力で選ばれる地位を築く。通信関連の売上は、前期の6倍を超える水準まで伸びる。
自動車側も底堅い。HVの需要が長く続き、エンジン用部品の減りは緩やかになる。バスバーは日米で量産が定着し、EV関連の利益率は1割に乗る。
利益が増えるなかで、会社は配当性向を高め、株主還元を厚くする。HDDで得た教訓から、特定の顧客に偏らない経営が定着する。車のばね屋から、光部品の会社へと評価が変わる、最も理想的な10年になる。
- 既存自動車(弁ばね・材料):数量 7.0(エンジン搭載車(HV含む)の世界生産(百万台)× サンコールの搭載シェア(百万台相当))× 価格 55(1(百万台相当)あたり売上(億円・名目))→ 売上 387 億円・営業利益 19 億円。HV需要が支え、数量の減りは緩やか。営業利益率5%
- EV関連製品:数量 0.9(世界の電動車(HV・PHV・EV)生産(百万台)× 搭載シェア(百万台相当))× 価格 231(1(百万台相当)あたり売上(億円・名目))→ 売上 207 億円・営業利益 21 億円。バスバーが量産化し、営業利益率10%
- 通信関連(光コネクタ・アダプタ):数量 3.0(データセンター向け光コネクタ・アダプタの世界出荷(億個)× シェア(億個相当))× 価格 160(1(億個相当)あたり売上(億円・名目))→ 売上 480 億円・営業利益 158 億円。SN系が主流になり、供給力でシェア拡大。営業利益率33%
- プリンター関連・その他:数量 14.0(紙送りローラーなどの出荷(百万個相当))× 価格 2.77(1(百万個相当)あたり売上(億円・名目))→ 売上 39 億円・営業利益 4 億円。需要の減少が緩やか。営業利益率10%
- HDD用サスペンション(撤退済み):数量 0.0(年間出荷(千万個相当・推定))× 価格 3.99(1(千万個相当)あたり売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。撤退済み。売上・利益ともにゼロ
倍率:事業の純利益 172 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.1% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 15.02 倍、時価総額 2,583 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AIの配線需要が10年続き、SN系が主流になり、顧客も分散する条件が重なる必要があり、起きれば大きいが確度は高くない。
やや楽観 22% 通信が育ち、自動車の縮みを補う 利益 102 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 5,287 円1,602 億円
データセンター向けの需要は、AIの設備投資を追い風に伸び続ける。SN系のコネクタは採用が広がり、サンコールは供給力を武器にシェアを少しずつ上げる。ただし競合も増え、単価は緩やかに下がる。通信関連の売上は、前期の4倍強になる。
自動車は、エンジン用の弁ばねが緩やかに減る。EV関連は、バスバーの量産が進み、全社の営業利益率を少しずつ押し上げる。
全社の稼ぐ力は、いまの実力を大きく上回る。通信の利益が全体を支える構造は変わらないが、事業の幅は少し広がる。配当性向は4割程度で推移し、自己資本は着実に積み上がる。HDDのような特定顧客への偏りは、複数の顧客を持つことで弱まる。
- 既存自動車(弁ばね・材料):数量 6.8(エンジン搭載車(HV含む)の世界生産(百万台)× サンコールの搭載シェア(百万台相当))× 価格 55(1(百万台相当)あたり売上(億円・名目))→ 売上 376 億円・営業利益 16 億円。弁ばねは緩やかに減る。営業利益率4.2%
- EV関連製品:数量 0.7(世界の電動車(HV・PHV・EV)生産(百万台)× 搭載シェア(百万台相当))× 価格 231(1(百万台相当)あたり売上(億円・名目))→ 売上 161 億円・営業利益 14 億円。バスバー拡大、営業利益率8.5%
- 通信関連(光コネクタ・アダプタ):数量 1.9(データセンター向け光コネクタ・アダプタの世界出荷(億個)× シェア(億個相当))× 価格 153(1(億個相当)あたり売上(億円・名目))→ 売上 291 億円・営業利益 87 億円。需要拡大を取り込む。営業利益率30%
- プリンター関連・その他:数量 13.0(紙送りローラーなどの出荷(百万個相当))× 価格 2.77(1(百万個相当)あたり売上(億円・名目))→ 売上 36 億円・営業利益 3 億円。緩やかに減る。営業利益率8%
- HDD用サスペンション(撤退済み):数量 0.0(年間出荷(千万個相当・推定))× 価格 3.99(1(千万個相当)あたり売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。撤退済み。売上・利益ともにゼロ
倍率:事業の純利益 102 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.5% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍。全体の PER 13.96 倍、時価総額 1,424 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:通信の需要拡大を取り込み、利益率が高めに保たれる筋書き。会社の中計の延長に近い。
中立 33% 中立:通信は伸びるが利益率は平常化、自動車は縮む 利益 71 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 3,646 円1,104 億円
データセンター向けの需要は伸びるが、競争も激しくなる。サンコールの通信関連は、前期の約3倍の売上になる。一方、いまの高い利益率は、供給不足が解けるにつれて平常化する。それでも、他の電子部品と比べれば高い水準だ。単価は量産効果と競争で名目ほぼ横ばいにとどまり、物価ほどは上がらない。
自動車は、エンジン搭載車の減少で数量が2割ほど減る。値上げでその分を補い、売上は微増にとどまる。営業利益率は3%台の低い水準で、全社の足を引く。
EV関連は、バスバーが育ち、売上は前期の3倍になる。ただし利益率は7%どまりだ。HDDのような大きな柱を失う出来事は起きず、通信が利益の大半を稼ぐ姿が続く。株主還元は利益の4割で、自己資本はゆっくり積み上がる。
- 既存自動車(弁ばね・材料):数量 6.4(エンジン搭載車(HV含む)の世界生産(百万台)× サンコールの搭載シェア(百万台相当))× 価格 55(1(百万台相当)あたり売上(億円・名目))→ 売上 354 億円・営業利益 12 億円。エンジン搭載車の減少で数量は2割減。営業利益率3.5%
- EV関連製品:数量 0.6(世界の電動車(HV・PHV・EV)生産(百万台)× 搭載シェア(百万台相当))× 価格 231(1(百万台相当)あたり売上(億円・名目))→ 売上 127 億円・営業利益 9 億円。バスバー・電流センサーが育つ。営業利益率7%
- 通信関連(光コネクタ・アダプタ):数量 1.5(データセンター向け光コネクタ・アダプタの世界出荷(億個)× シェア(億個相当))× 価格 146(1(億個相当)あたり売上(億円・名目))→ 売上 219 億円・営業利益 61 億円。需要は伸びるが競争で利益率は平常化。営業利益率28%
- プリンター関連・その他:数量 12.0(紙送りローラーなどの出荷(百万個相当))× 価格 2.77(1(百万個相当)あたり売上(億円・名目))→ 売上 33 億円・営業利益 2 億円。数量は4割減。営業利益率7%
- HDD用サスペンション(撤退済み):数量 0.0(年間出荷(千万個相当・推定))× 価格 3.99(1(千万個相当)あたり売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。撤退済み。売上・利益ともにゼロ
倍率:事業の純利益 71 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.2% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.1 倍、時価総額 930 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:通信は伸びるが競争で利益率が平常化し、自動車は縮む。2人の議論の落としどころ。
やや悲観 23% 通信の競争が激しくなり、成長が鈍る 利益 26 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 1,079 円327 億円
データセンター向けの光コネクタは、競合が増えて単価が下がる。複数の調達先を持ちたい顧客が、中国の量産メーカーにも発注を回す。サンコールの通信関連は、今期の水準から伸びきれず、利益率も2割を切る。
自動車は、EV化が早まり、エンジン用部品の数量が3割減る。価格転嫁も進まず、営業利益率は2%台に沈む。EV関連のバスバーは、中国勢との競争で単価が下がり、利益が出にくい。
全社の稼ぐ力は、HDDを抱えていた頃の水準まで戻る。会社の財務は堅いままで、配当は続けるが、成長の道筋が見えにくい。自己資本の蓄積も鈍る、停滞の10年になる。通信の売上は残るが、利益に変わらない。
- 既存自動車(弁ばね・材料):数量 5.6(エンジン搭載車(HV含む)の世界生産(百万台)× サンコールの搭載シェア(百万台相当))× 価格 55(1(百万台相当)あたり売上(億円・名目))→ 売上 310 億円・営業利益 8 億円。EV化が早まり数量は3割減。営業利益率2.5%
- EV関連製品:数量 0.4(世界の電動車(HV・PHV・EV)生産(百万台)× 搭載シェア(百万台相当))× 価格 207(1(百万台相当)あたり売上(億円・名目))→ 売上 72 億円・営業利益 3 億円。中国勢との競争で単価が下がる。営業利益率4%
- 通信関連(光コネクタ・アダプタ):数量 0.9(データセンター向け光コネクタ・アダプタの世界出荷(億個)× シェア(億個相当))× 価格 131(1(億個相当)あたり売上(億円・名目))→ 売上 118 億円・営業利益 21 億円。価格競争と顧客の内製で成長が鈍る。営業利益率18%
- プリンター関連・その他:数量 9.0(紙送りローラーなどの出荷(百万個相当))× 価格 2.77(1(百万個相当)あたり売上(億円・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 1 億円。数量は半分以下。営業利益率4%
- HDD用サスペンション(撤退済み):数量 0.0(年間出荷(千万個相当・推定))× 価格 3.99(1(千万個相当)あたり売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。撤退済み。売上・利益ともにゼロ
倍率:資本コスト9.0%。事業のROE4.8%がk以下なので、PERの上限は1÷k=11.1倍。稼ぐ力は落ちるが純現金と運転資本が支えるので、上限の約7割の7.5倍に置く。ROEはk未満で、ためた利益は額面より低い価値と見る。
確率:規格競争と価格競争、顧客の内製で通信の成長が鈍る筋書き。HDDで顧客依存の失敗をしている前例から、やや厚く置いた。
悲観 13% 通信も自動車も崩れ、構造的に稼ぐ力を失う 利益 −3 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 565 円171 億円
通信は、規格競争と価格競争の両方に敗れる。主要顧客が内製や他社調達に動き、サンコールの出荷は大きく減る。単価は3割近く下がり、増強した設備は遊休になる。HDDの時と同じ型で、特定の顧客と技術の変化に振り回される。
自動車は、EV化が想定より早く進み、弁ばねの需要が急減する。トヨタなど主要顧客の要求する価格も下がり、営業利益はほぼ消える。EV関連のバスバーは採用が伸びず、赤字が続く。
設備の減損が出て、拠点の整理も進む。配当は、遊休設備の売却と運転資本の圧縮で得た現金、手元の現金から払い続ける。ただし純現金と回収できる運転資本、土地・設備があるため、財務は破綻しない。優良な部品メーカーという評価は外れ、資産の価値で測られる会社になる。
- 既存自動車(弁ばね・材料):数量 4.2(エンジン搭載車(HV含む)の世界生産(百万台)× サンコールの搭載シェア(百万台相当))× 価格 50(1(百万台相当)あたり売上(億円・名目))→ 売上 210 億円・営業利益 0 億円。内燃機関の需要が急減し、価格も下がる。営業利益率0%
- EV関連製品:数量 0.2(世界の電動車(HV・PHV・EV)生産(百万台)× 搭載シェア(百万台相当))× 価格 190(1(百万台相当)あたり売上(億円・名目))→ 売上 38 億円・営業利益 −1 億円。採用が伸びず赤字。営業利益率−2%
- 通信関連(光コネクタ・アダプタ):数量 0.5(データセンター向け光コネクタ・アダプタの世界出荷(億個)× シェア(億個相当))× 価格 109(1(億個相当)あたり売上(億円・名目))→ 売上 54 億円・営業利益 4 億円。規格競争に敗れ、単価も大きく下がる。営業利益率8%
- プリンター関連・その他:数量 6.0(紙送りローラーなどの出荷(百万個相当))× 価格 2.50(1(百万個相当)あたり売上(億円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。採算が取れない。営業利益率0%
- HDD用サスペンション(撤退済み):数量 0.0(年間出荷(千万個相当・推定))× 価格 3.99(1(千万個相当)あたり売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。撤退済み。売上・利益ともにゼロ
倍率:構造的に稼ぐ力を失い、純利益は赤字で利益では測れない。売れる資産で測る。純現金・運転資本・設備・保有株を回収率で見直した約190億円(内訳は下の欄)の範囲で、今の自己資本342億円の5割、約171億円を株主の取り分とする。稼ぐ力(純利益÷k)は無いに等しい。
確率:通信が規格競争に敗れ、同時に内燃機関が想定より早く消える複合の筋書き。重なる確率は低いが、HDDの前例があり、5%を大きく超えて置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
既存自動車(弁ばね・材料)
エンジン用弁ばねと、その材料のオイルテンパー線・ピストンリング材。トランスミッション部品を含む。
| 数量エンジン搭載車(HV含む)の世界生産(百万台)× サンコールの搭載シェア(百万台相当) | 価格1(百万台相当)あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.0 | 41 | 330 | 18 |
| 10 年後 中立 | 6.4 | 55 | 354 | 12 |
取り方:世界のエンジン搭載車(HV含む)の生産を年8,000万台程度とし、サンコールの搭載シェアを約1割と推定して、搭載台数を800万台相当と置いた。シェアの開示は無く推定。前期の既存自動車分野の売上330億円(材料関連83億円、自動車関連247億円)を割り、1(百万台相当)あたり41.25億円とした。営業利益は分野の開示値18.1億円。数量の減りはエンジン車の減少、物価の分は価格に入れる。
EV関連製品
バスバー(大電流用の板状配線部品)、電流センサー、LED関連。
| 数量世界の電動車(HV・PHV・EV)生産(百万台)× 搭載シェア(百万台相当) | 価格1(百万台相当)あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.3 | 172 | 43 | 2 |
| 10 年後 中立 | 0.6 | 231 | 127 | 9 |
取り方:世界の電動車(HV・PHV・EV)の生産を年2,800万台程度とし、バスバーなどの搭載シェアを約0.9%と推定して、搭載台数を25万台相当と置いた。前期のEV関連製品の売上43億円を割り、1(百万台相当)あたり172億円(1台あたり約1.7万円)とした。営業利益は分野の開示値1.7億円。 数量は実物(電動車の搭載台数)で、名目の市場の伸びではない。
通信関連(光コネクタ・アダプタ)
データセンター向けの光コネクタ、アダプタ、光ファイバー用精密部品。
| 数量データセンター向け光コネクタ・アダプタの世界出荷(億個)× シェア(億個相当) | 価格1(億個相当)あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.5 | 146 | 70 | 30 |
| 10 年後 中立 | 1.5 | 146 | 219 | 61 |
取り方:データセンター向け光コネクタ・アダプタの世界出荷を年12億個程度、サンコールのシェアを約4%と推定し、4,800万個相当(0.48億個)と置いた(市場規模の公的な数字は取れず推定)。前期の通信関連売上70億円を割り、1(億個相当)あたり145.8億円とした。物価の分の値上げは見込まず、10年後の単価は光部品の量産効果と競争による値下がりで名目ほぼ横ばいに置く(楽観は小幅に上がり、悲観は大きく下がる)。営業利益30億円は、会社が開示する電子情報通信分野の営業利益51.4億円から、HDDの利益(一過性益を含み推定16億円)とプリンター等(推定5億円)を引いた筆者の推定。
プリンター関連・その他
プリンター用の紙送りローラーなど。電子回路検査用プローブ、歩行アシストロボットなどの小さな事業を含む。
| 数量紙送りローラーなどの出荷(百万個相当) | 価格1(百万個相当)あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 2.07 | 41 | 5 |
| 10 年後 中立 | 12.0 | 2.77 | 33 | 2 |
取り方:プリンター関連(36億円)とその他(5億円)の売上41.3億円を、紙送りローラーなどの出荷2,000万個相当と置き、1(百万個相当)あたり2.07億円とした(推定)。営業利益5.4億円は、電子情報通信分野の営業利益から通信とHDDの推定値を引いた筆者の推定。
HDD用サスペンション(撤退済み)
HDDのヘッドを支えるばね部品。2025年7月に出荷を終えた。
| 数量年間出荷(千万個相当・推定) | 価格1(千万個相当)あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 13.0 | 2.98 | 39 | 16 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 3.99 | 0 | 0 |
取り方:前期のHDD用サスペンションの売上38.7億円(2025年7月に出荷を終了)。年間出荷1.3億個相当、1(千万個相当)あたり3.0億円と置いた推定値。営業利益16億円は、撤退に伴う一過性の利益を含む筆者の推定(会社は額を開示していない)。10年後はゼロ。
リスクと懸念
通信関連の利益率の剥落
通信関連の営業利益率は、筆者の推定で4割を超える。供給が不足する間の高値で、競合が増えれば薄まる。全社の利益の大半を一つの事業が稼ぐため、剥落すれば全社の利益が大きく崩れる。
主要顧客への偏り
前の期はHDD顧客のウエスタンデジタルが売上の2割を占め、撤退で売上が18%減った。通信関連も、顧客は少数の大手に偏るとみられる。1社の方針変更で、発注量は大きく動く。
規格が借り物であること
SNコネクタは他社が開発した規格で、サンコールはライセンスを受けて作る。規格を持つ側が供給網を広げれば、作り手としての優位は薄まる。独自の技術で守られた堀ではない。
AI設備投資の循環
データセンター向けの光配線は、大手IT企業の設備投資に左右される。投資が一巡すれば、需要は急に落ちる。拡張した中国の生産設備が遊休になる恐れもある。
エンジン用部品の縮小
弁ばねと材料は、エンジン搭載車の減少で数量が減る。足元でもエンジンとトランスミッション関連は減収だ。EV関連が育つ前に縮めば、自動車分野は利益を出せなくなる。
特許・訴訟と一過性益の見極め
HDD事業では日本発條とハッチンソンの特許訴訟で、和解金を合わせ40億円超払った。通信でも特許紛争が起きる余地がある。前期の営業利益には一過性益が入り、実力の見極めを誤りやすい。
今後の分かれ目
- 通信関連の四半期売上が、今期の水準を維持して増え続けたら
- やや楽観側の筋書きに重みを移してよい。営業利益率が4割近くを保てているかを合わせて見る。
- 通信関連の売上が伸びても、営業利益率が3割を切ったら
- 供給不足が解けて価格競争が始まったとみて、やや悲観側に重みを移す。
- 通信関連の主要顧客が内製化や他社調達の動きを見せたら
- 悲観側の筋書きが近づいたと考え、通信の数量と価格を置き直す。
- バスバーなどEV関連の営業利益率が1割を超えて定着したら
- EV関連が自動車の縮みを補い始めたとみて、中立の営業利益率を上げてよい。
- エンジン・トランスミッション関連の売上が、前年割れで2年以上続いたら
- 自動車分野が構造的に縮むと見て、弁ばねの数量の前提を下げる。
- 会社が株主還元を配当性向30%から大きく引き上げたら
- 利益の使い道が株主に傾いたと見て、還元の合計を上げる。ただし利益の増加とは別に考える。
見ておくもの
- 通信関連の四半期売上と、電子情報通信分野の営業利益率
- 通信関連の主要顧客の構成と、発注の動き
- エンジン・トランスミッション関連と、EV関連の売上の推移
- 中国工場の増設の進み具合と、稼働率
倍率と資本コストの決め方
既存自動車・EV・通信・プリンター・HDDの5つで、数量(搭載台数や出荷個数)と価格(名目の単価)を分け、物価の分は価格に入れた。通信の数量は市場の出荷とシェアの推定で、単価は競争で名目の横ばいに置き、物価並みには上げていない。HDDの一過性益は実力から外して純利益の起点をならした。倍率は資本コスト9.0%とROEから式で出し、今の株価・過去の倍率には寄せていない。純現金は時価総額の3%にとどまり、余った現金は分けていない。10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえたが、同社はリースの比重が小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→15.02 倍・やや楽観 PER 11.5→13.96 倍・中立 PER 11.2→13.1 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本7.5%に quality +1.5% を足した9.0%(β・規模は使わない)。個別の懸念は確率と筋書きで表した。