結論
日本製罐は、食用油や塗料を入れる18リットル缶と、菓子や贈答品の美術缶を作る缶の専業メーカーだ。筆者の結論は、今の値段は割高だというものだ。売上は114億円あるが、過去25年で営業利益率が3%を超えた年は一度もない。
主力の18リットル缶は、長く縮む市場にいる。業務用の油や塗料の量が減り、顧客の工場は海外へ移る。缶の材料のぶりきは鉄鋼の大手から買い、値上がりを値上げに移すまでに時間がかかる。
2期続けて営業赤字を出し、会社は千葉工場を閉じて本社工場に集めた。2028年3月期の黒字化を目指すが、黒字に戻っても利益率は2%前後が精一杯だと筆者は見る。
支えになるのは、さいたま市の本社の敷地の賃貸だ。物流の会社に貸し、年0.8億円の利益を生む。ただ、その利益を足しても、自己資本利益率は資本コストに遠く届かない。縮む市場で薄い利益しか出せない会社に、今の値段は高い。株価は自己資本の半分以下だが、資本コストに届かない会社の帳簿は割安の根拠にならない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「わかりやすいが、縮む市場で薄く稼ぐ」事業だ。18リットル缶は10年後も使われているだろう。だが、量は確実に減り、値段を決めるのは材料の売り手と缶の買い手の側である。
経営は千葉工場を閉じ、身の丈に合わせ始めた。そこは評価したい。だが、工場を減らして黒字に戻すことは、守りの手であって、事業の稼ぐ力を高める手ではない。過去25年で営業利益率3%を超えた年がない会社に、計画の数字を前提にした値段は払えない。
筆者がいちばん気にしているのは、利益の出どころだ。過去の純利益の多くは、有価証券の売却益や受取配当、本社の敷地の賃料から来ている。缶の事業そのものは、資本コストに遠く届かない稼ぎしか生んでいない。
安全域の目で見ると、自己資本39億円は床にならない。資本コストに届かない稼ぎでは、ためた利益は額面未満の値打ちしかない。賃貸の建物と土地は確かな資産だが、少数株主にはそれを現金に換えさせる手立てがない。
何で稼ぐ会社か
事業は金属缶の製造販売と不動産の賃貸の2つだ。売上の99%が缶で、賃貸は1.6億円にすぎないが、利益では賃貸が缶の赤字を埋めている。
缶のうち8割近くが18リットル缶で、88億円ある。一斗缶とも呼ばれ、食用油、塗料、化学品、業務用の食品を入れる四角い缶だ。大口の顧客は容器の卸の西部容器で、売上の17%を占める。2016年には大阪の新生製缶を買って51%の子会社にし、関西の工場を手に入れた。関東では日本製罐が新生製缶の分も作る。
残りの2割弱が美術缶で、21億円ある。菓子や茶、贈答品を入れる印刷の凝った缶で、明治が売上の7%を占める大口だ。新しい設備を入れたが立ち上げが大きく遅れ、2025年5月にようやく動き出した。
工場はさいたま市の本社工場が中心で、千葉工場は2025年9月に閉じた。賃貸は本社の敷地に建てた3階建ての建物で、延べ8,200平方メートルを物流の篠崎運輸に貸している。缶の材料のぶりきは、主要株主の伊藤忠丸紅鉄鋼から買う。利益の形は、材料の値段と値上げの時期のずれ、工場の稼働の2つでほぼ決まる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは薄いと筆者は見る。18リットル缶は規格の決まった商品で、作れる会社は国内に何社もある。顧客にとって大事なのは値段と納期で、作り手を替えることはそれほど難しくない。
値段を決める力も弱い。材料のぶりきは鉄鋼の大手が値段を決め、缶の買い手は油や塗料の大手だ。日本製罐は、その間に挟まれている。値上げは原料の上昇から数か月遅れで通り、その間の利益が削られる。
資本の効率は低い。過去10年の自己資本利益率の中央値は4%台で、資本コストの半分ほどだ。利益の多くは投資有価証券の売却益や受取配当で、缶の事業そのものの稼ぎは薄い。
良い点は、経営が手を打ち始めたことだ。千葉工場を閉じ、人員を減らし、借入を返し、有価証券を計画的に売ると表明した。本社の敷地の賃貸という、缶と関係のない安定した稼ぎも持つ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
18リットル缶の市場は、長く縮んでいる。国内の生産は1990年代の半分ほどまで減ったとされる。食用油や塗料の業務用の量が人口とともに減り、樹脂の容器や、段ボールの中に袋を入れたバッグ・イン・ボックスへの置き換えも進む。顧客の工場が海外へ移ると、その分の缶の注文も消える。
一方で、作り手も減っている。業界の再編が進み、大手の撤退や事業の譲渡が続いてきた。日本製罐が2016年に新生製缶を買ったのも、その流れの中にある。作り手が減れば、残った会社の値上げは通りやすくなる。10年の中立では、市場の量は2割減り、値段は物価並みに上がると置く。
美術缶は、菓子や茶の贈答の需要に連動する。高級な菓子の缶は訪日客の土産にも使われ、凝った印刷の小さなロットは大手の東洋製罐グループや大和製罐が手を出しにくい分野だ。ただ、市場は小さく、紙の箱との競争もある。
材料のぶりきは、鉄鋼の大手が値段を決める。中国の過剰な生産が鋼材全体の値段を抑える一方、国内の電気代と物流費は上がり続ける。缶の会社の利益率が薄いのは、この構造が長く変わらないからだ。
資本政策と M&A
配当は安定配当が基本で、2026年3月期は普通配当の総額0.27億円を出した。2024年3月期の3分の1ほどの水準だ。自社株買いはしていない。2026年6月の株主総会には、配当の方針をめぐる株主からの提案が出たと有報にあり、取締役会は反対した。
大株主の伊藤忠丸紅鉄鋼は、材料の仕入れ先でもある。会社は有利子負債を減らし、投資有価証券を計画的に売ると表明している。売った現金を借入の返済に回すか、株主に戻すかが、少数株主の手取りを左右する。
2016年には新生製缶を買い、18リットル缶の作り手の再編に加わった。縮む市場では、日本製罐自身が同業や商社に取り込まれる道もありうるが、会社は何も示していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
最悪期は過ぎた。千葉工場を閉じて本社工場に集め、人員を減らした。会社は営業赤字を5.4億円から3.1億円、さらに1億円へと縮める計画を出し、2028年3月期の黒字化を掲げる。固定費が下がった分は、量が戻らなくても利益に効く。
美術缶の新しい設備は、立ち上げの遅れを越えてようやく動き出した。売上は8%伸び、明治のような大口もいる。凝った印刷の小さなロットは、大手が手を出しにくい分野だ。
18リットル缶の作り手は減り続けている。残った会社には注文が集まり、値上げも通りやすくなる。日本製罐は新生製缶を傘下に持ち、関東と関西の両方に工場がある。
本社の敷地の賃貸は、年0.8億円の利益を安定して生む。投資有価証券を売れば借入はさらに減る。時価総額は自己資本の半分以下で、資産の裏づけは厚い。
物価が年3%上がる世界では、古い工場と土地を持つ会社が有利になる。新しく缶の工場を建てる会社は現れず、今の作り手の席は守られる。
慎重な見方
18リットル缶の市場は、何十年も縮み続けている。業務用の油や塗料の量は人口とともに減り、樹脂の容器への置き換えも進む。顧客の工場が海外へ移れば、注文は戻らない。会社自身が、市場は中長期的に縮小すると有報に書いている。
利益率の天井は低い。過去25年で営業利益率3%を超えた年は一度もない。黒字の年の純利益の多くは、有価証券の売却益と受取配当だった。缶の事業そのものは、ほとんど稼いでいない。
美術缶の新設備は、予定より大幅に遅れて動き出した。設備の判断と実行の力に不安が残る。立ち上げの遅れは、そのまま2期の赤字になった。
自己資本比率は30%まで下がり、借入とリースは31億円ある。金利が上がれば利払いが増え、薄い利益を削る。資産の裏づけは帳簿の上の話で、少数株主がそれを現金に換えることはできない。
配当も減った。2024年3月期の3分の1ほどに落ち、株主から配当の方針をめぐる提案まで出た。経営と少数株主の間の溝は浅くない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方の方が強い。市場の縮みと利益率の天井の低さは、長い記録がはっきり示している。強気の見方で確かなのは、千葉工場の閉鎖で固定費が下がることと、賃貸の安定した利益だけだ。どちらも利益率を過去の最良の水準に戻すのが精一杯で、資本コストに届くほどではない。中立は2%前後の薄い利益に置き、確率は悲観の側に厚く寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,106 円15 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 162 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 572 円8 億円、今との差 −59.1%、 期待の年率 −1.0%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 3,118 円42 億円 | 421 円6 億円 | +153.0% | +9.7% | 177 円2 億円 |
| やや楽観 | 17% | 2,054 円28 億円 | 296 円4 億円 | +68.0% | +5.3% | 399 円5 億円 |
| 中立 | 36% | 1,153 円16 億円 | 200 円3 億円 | −3.3% | −0.3% | 487 円7 億円 |
| やや悲観 | 25% | 548 円7 億円 | 59 円1 億円 | −56.6% | −8.0% | 152 円2 億円 |
| 悲観 | 17% | 288 円4 億円 | 22 円0 億円 | −77.8% | −14.0% | 53 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,106 円15 億円 | 162 円2 億円 | −9.4% | −1.0% | 1,268 円17 億円 |
今の株価時価総額 1,399 円19 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 5% 美術缶が育ち、18リットル缶は少数の作り手に集まる 利益 4 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 3,118 円42 億円
10年後、日本製罐は小さいながら筋肉質の缶の会社になっている。18リットル缶の市場は縮むが、同業の撤退や統合で作り手が減り、残った会社に注文が集まる。量の減りは1割で止まり、値上げも物価より少し強く通る。
美術缶は新しい設備が軌道に乗り、菓子や贈答品の缶で量を3割増やす。小さなロットの凝った印刷は、大手が手を出しにくい仕事だ。千葉工場を閉じた効果で固定費は軽くなり、全社の営業利益率は5%近くに上がる。
本社の敷地の賃貸も満室を保ち、安定した利益を足す。それでも自己資本利益率は7%台で、資本コストに届かない。缶という成熟した商品で、資本を大きく上回って稼ぐのは難しい。
- 18リットル缶:数量 26.3(推定出荷数(百万缶))× 価格 414(1缶あたり平均単価(円))→ 売上 109 億円・営業利益 3 億円。作り手が減り注文が集まる
- 美術缶・その他:数量 21.7(推定出荷数(百万缶))× 価格 207(1缶あたり平均単価(円))→ 売上 45 億円・営業利益 2 億円。新設備が軌道に乗る
- 不動産賃貸:数量 8.2(賃貸面積(千平方メートル))× 価格 2.59(1平方メートルあたり年間賃料(万円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。満室を保つ
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 42 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:工場の集約と美術缶の新設備が両方うまくいく筋書き。過去25年で営業利益率3%を超えた年がなく、確率は小さい。
やや楽観 17% 2028年3月期に黒字化し、小さな利益を積む 利益 3 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 2,054 円28 億円
10年後、日本製罐は計画どおり黒字に戻り、小さな利益を積み上げている。18リットル缶の量は人口減と顧客の海外移転で15%減るが、値上げは物価並みに通る。千葉工場を閉じて本社工場に集めた効果で、工場の稼働は上がる。
美術缶は新しい設備の立ち上げの遅れを取り戻し、量を2割伸ばす。全社の営業利益率は3%強で、過去の最良をわずかに上回る。賃貸の建物は物流の会社に貸し続け、毎年1億円前後の利益を生む。
配当は利益の3割ほどに戻る。投資有価証券の売却で借入は減り、利払いの重さも和らぐ。自己資本利益率は5%前後で、資本コストの6割にとどまる。
- 18リットル缶:数量 24.9(推定出荷数(百万缶))× 価格 408(1缶あたり平均単価(円))→ 売上 101 億円・営業利益 2 億円。黒字化
- 美術缶・その他:数量 20.0(推定出荷数(百万缶))× 価格 204(1缶あたり平均単価(円))→ 売上 41 億円・営業利益 1 億円。立ち上げを取り戻す
- 不動産賃貸:数量 8.2(賃貸面積(千平方メートル))× 価格 2.49(1平方メートルあたり年間賃料(万円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃貸を続ける
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.3% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 28 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社が掲げる2028/03期の黒字化と、過去の利益率の山(2%前後)が続く道。工場の閉鎖で固定費が下がるので2割弱。
中立 36% 縮む18リットル缶を、工場の集約と賃貸でしのぐ 利益 1 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,153 円16 億円
10年後、日本製罐は小さな黒字を保つ缶の会社だ。18リットル缶の量は、食用油や塗料の業務用の需要が細り、顧客の工場が海外へ移ることで2割減る。値段は物価並みに上がり、売上は133億円ほどになる。
営業利益率は2%前後で、過去25年の最良の水準に並ぶ。千葉工場の閉鎖で固定費は下がり、古い設備の償却は物価で増えない。それでも、ぶりき(缶の材料の鋼板)の値上がりを値上げに移すまでの遅れが、毎年のように利益を削る。
本社の敷地の賃貸は、物流の会社への貸し出しで年1億円弱の利益を足す。借入の金利が上がり、利払いは増える。自己資本利益率は3%台で、資本コストの3分の1ほどにとどまる。
- 18リットル缶:数量 23.4(推定出荷数(百万缶))× 価格 402(1缶あたり平均単価(円))→ 売上 94 億円・営業利益 1 億円。業務用の需要が細る
- 美術缶・その他:数量 18.3(推定出荷数(百万缶))× 価格 201(1缶あたり平均単価(円))→ 売上 37 億円・営業利益 1 億円。新設備で少し伸びる
- 不動産賃貸:数量 8.2(賃貸面積(千平方メートル))× 価格 2.39(1平方メートルあたり年間賃料(万円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃料は物価より弱い
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.2% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 16 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:18リットル缶の市場の縮みと、会社の黒字化の計画の中ほど。営業利益率は過去25年の最良の水準に並ぶ。
やや悲観 25% 18リットル缶の縮みが速く、赤字が続く 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 548 円7 億円
10年後、日本製罐は赤字から抜け出せていない。18リットル缶の量は3分の1以上減り、樹脂の容器やバッグ・イン・ボックス(段ボールの中に袋を入れた容器)に置き換わる。顧客の工場の海外移転も続く。値上げは物価に届かない。
美術缶も菓子の需要の伸び悩みで量が1割減る。営業利益率はわずかなマイナスで、賃貸の利益が缶の赤字をかろうじて埋める形だ。配当は細り、会社は投資有価証券や土地を売って借入を返す。
少数の株主に残る価値は、賃貸の建物と土地、売れる資産のうち借入を返した残りの一部にとどまる。缶の事業そのものに、値段を付ける買い手は少ない。
- 18リットル缶:数量 19.0(推定出荷数(百万缶))× 価格 384(1缶あたり平均単価(円))→ 売上 73 億円・営業利益 −1 億円。置き換えが進む
- 美術缶・その他:数量 15.0(推定出荷数(百万缶))× 価格 192(1缶あたり平均単価(円))→ 売上 29 億円・営業利益 0 億円。伸び悩む
- 不動産賃貸:数量 8.2(賃貸面積(千平方メートル))× 価格 2.19(1平方メートルあたり年間賃料(万円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃料は横ばい
倍率:赤字でPERは使えない。今の自己資本39億円に0.19倍。床の資産7.5億円(floor_assets)に合わせた。
確率:2期続く営業赤字と、18リットル缶の市場の縮みの記録から可能性は高い。
悲観 17% 缶の事業が構造的に負け、整理に追い込まれる 利益 −2 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 288 円4 億円
10年後、日本製罐は構造的に負けている。18リットル缶の量は半分になり、美術缶も3割減る。値上げは通らず、缶の事業は毎年赤字を出す。
工場の減損と赤字で、自己資本は4割減る。借入の金利の上昇が追い打ちをかけ、会社は缶の事業の売却や同業との統合を探る。作り手が減る業界で、買い手が値を付けるのは工場の土地と顧客の名簿くらいだ。賃貸の建物と土地は残るが、その価値の多くは借入の返済に消える。
少数の株主には、資産の使い道を決める力がない。帳簿の自己資本は床にならず、価値は売れる資産のわずかな残りだけになる。賃料の安定した稼ぎも、缶の赤字と利払いに吸い取られる。
- 18リットル缶:数量 14.6(推定出荷数(百万缶))× 価格 360(1缶あたり平均単価(円))→ 売上 53 億円・営業利益 −2 億円。需要が半分になる
- 美術缶・その他:数量 11.7(推定出荷数(百万缶))× 価格 180(1缶あたり平均単価(円))→ 売上 21 億円・営業利益 −1 億円。量が細る
- 不動産賃貸:数量 8.2(賃貸面積(千平方メートル))× 価格 1.99(1平方メートルあたり年間賃料(万円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃料が伸びない
倍率:赤字でPERは使えない。今の自己資本39億円に0.1倍。床の資産4.0億円(floor_assets)に合わせた。
確率:2012年と2025年に大きな赤字を出した前例と、自己資本比率30%の薄さから、2割近く置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
18リットル缶
食用油・塗料・化学品・業務用食品を入れる四角い缶。子会社の新生製缶を含む。
| 数量推定出荷数(百万缶) | 価格1缶あたり平均単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 29.3 | 300 | 88 | −2 |
| 10 年後 中立 | 23.4 | 402 | 94 | 1 |
取り方:製品別の売上87.77億円(有報)だけが開示。数量は開示が無く、1缶の平均単価(円)を300と置いて約2,900万缶と推定した。利益は金属缶の営業損失3.91億円を、立ち上げの遅れた美術缶と分けた推定。中立の数量は市場の縮みと顧客の海外移転から10年0.8倍、価格は物価並み1.34倍。
美術缶・その他
菓子・茶・贈答品の印刷の凝った缶と、その他の缶。
| 数量推定出荷数(百万缶) | 価格1缶あたり平均単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 16.7 | 150 | 25 | −2 |
| 10 年後 中立 | 18.3 | 201 | 37 | 1 |
取り方:美術缶20.55億円とその他4.47億円(有報)を合わせた。1缶の平均単価(円)を150と置いて約1,700万缶と推定。新設備の立ち上げの遅れで赤字が大きいと見て、金属缶の営業損失の約半分を割り振った推定。中立の数量は新設備で10年1.1倍、価格は物価並み。
不動産賃貸
さいたま市の本社敷地内の3階建ての建物を物流の会社に貸す。
| 数量賃貸面積(千平方メートル) | 価格1平方メートルあたり年間賃料(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.2 | 1.99 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 8.2 | 2.39 | 2 | 1 |
取り方:賃貸の売上1.63億円・営業利益0.83億円(有報)。面積は篠崎運輸への賃貸8,207平方メートル(有報)。賃料は契約が年ごとで物価より弱いと見て中立10年1.2倍。償却は今の建物の取得原価のままで物価で増やさず、利益率はほぼ保つ。
リスクと懸念
18リットル缶の市場の縮み
業務用の油や塗料の量は人口とともに減り、樹脂の容器やバッグ・イン・ボックスへの置き換えも進む。顧客の工場が海外へ移れば、その分の注文は戻らない。会社自身が、市場は中長期的に縮小すると書いている。
材料のぶりきの値上がり
缶の材料のぶりきは鉄鋼の大手が値段を決める。値上げは数か月遅れでしか通らず、その間の利益が削られる。営業利益率が2%前後の会社では、この遅れだけで赤字になる。
大口の顧客への依存
容器の卸の西部容器が売上の17%、明治が7%を占める。大口が調達先を変えたり量を絞ったりすれば、工場の稼働が下がり、固定費が重くなる。
借入と金利の上昇
借入とリースは31億円あり、自己資本比率は30%まで下がった。借り換えのたびに金利が上がれば、利払いが薄い利益を削る。赤字が続けば、資金繰りの余裕も細る。
設備の判断と実行
美術缶の新設備は予定より大幅に遅れて動き出し、2期の赤字の一因になった。工場の集約や次の設備の更新でも、同じつまずきが起きれば計画はさらに遅れる。
今後の分かれ目
- 2027年3月期に営業損失を計画どおり1億円まで縮めたら
- 工場の集約の効果が確かめられ、中立の黒字化の道筋が固まる。ただ、利益率が2%を超えない限り、価値の見方は大きく変わらない。
- 営業利益率が2年続けて3%を超えたら
- 作り手の減少で値上げが通る構造に変わったと見て、やや楽観の側へ確率を移す。
- 18リットル缶の数量が年5%以上減り続けたら
- 置き換えと海外移転が速いと見て、やや悲観・悲観の確率を厚くする。
- 閉じた千葉工場の土地を売り、手取りを株主に戻すと示したら
- 売れる資産が少数株主に届く道ができる。額と還元の形を見て、床と中立の見方を引き上げる。
- 同業や商社から事業の統合や買収の提案が出たら
- 本質価値の外の話として、条件と少数株主の扱いを見て判断する。
見ておくもの
- 18リットル缶の販売数量と値上げの時期
- 美術缶の売上と新設備の稼働
- 営業損益と2028年3月期の黒字化の進み
- 借入とリースの残高、投資有価証券の売却
- 千葉工場の跡地の扱い
倍率と資本コストの決め方
18リットル缶・美術缶・賃貸の3つに分け、缶の数量は推定(市場の縮みから10年0.8倍、美術缶は新設備で1.1倍)、価格は物価並み、賃料は1.2倍で積んだ。中立の営業利益率2%は過去25年の最良2.9%以下で、千葉工場の閉鎖と物価で増えない償却(年3.8億円のまま)の効果を含む。倍率はROEがk9%を大きく下回るため1÷kの7割、悲観側は賃貸と売れる資産の床で置き、今のPBR0.5倍から逆算していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8.9→11.11 倍・やや楽観 PER 8.3→11.11 倍・中立 PER 7.8→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+1.5%。2期続く営業赤字だが、継続企業の前提の注記は無く、会社は黒字化の計画を出しているので上乗せは置かない。