結論
ジェイテックコーポレーションは、放射光施設やX線レーザー施設で使う、原子の大きさに迫る精度のX線集光ミラーを作る会社である。筆者の結論は「技術は本物だが、利益の振れが大きく、いまの値段は成功を先に払っている」だ。
稼ぎの柱はオプティカル事業で、売上14億円、部門利益は6.4億円と利益率は4割を超える。受注残は19億円と前期の1.4倍に増え、足元の需要は強い。
ところが連結の営業利益は0.7億円しかない。部門に属さない費用が4.6億円あり、ライフサイエンスと子会社の電子科学は赤字だからだ。しかも直近期は、顧客の設計変更と材料不具合で納期がずれ、会社の予想を大きく下回った。
過去10年の営業利益率は、マイナス33%からプラス34%の間を行き来している。山の年の利益に高い倍率を掛ければ割安に見え、谷の年を使えば割高に見える。筆者は、山と谷を均した水準を中立に置いた。
その水準で10年先を積んでも、価値はいまの時価総額の4分の1ほどにとどまる。大きく外れるのは、SPring-8-IIなどの更新需要を取り切る楽観の筋書きだけだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「優れた技術を持つが、利益の予測がつかない小企業」である。先が読めない事業には、高い値段を払わない。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、過去10年で赤字と黒字を行き来しており、均すと営業利益率は1割に届かない。研究開発費が売上の約2割を占め、その成果が利益に変わるまでに時間がかかる。
受注残の増加と、更新需要の追い風は、本物だと筆者は見る。ただ、それが営業利益に変わる幅は、費用の重さで削られる。部門利益が6億円あっても、連結の営業利益は1億円に満たない。
経営の資本配分は、研究に偏る。電子科学の買収は成果を出せていない。株主への還元はなく、内部留保は積み上がる。
安全域は薄い。時価総額は純資産の約3倍で、稼ぐ力に比べて先を払っている。筆者は、営業利益が複数年にわたり3億円を超えるまで、評価を上げない。
何で稼ぐ会社か
事業は3つある。直近期(2026年6月期)の売上は19.6億円で、従業員は連結73人と小さい。
オプティカル事業は売上14.3億円、部門利益6.4億円。大阪大学との共同研究で磨いた、形状誤差が1ナノメートル以下のX線ナノ集光ミラーや、形状を変えられるミラー、回転楕円ミラーなどを、施設ごとの注文で作る。顧客は公的研究機関が約5割、企業が約5割だ。
納め先は、国内ではNanoTerasu、SPring-8、SACLA。海外では中国のSHINE・HEPSなど、台湾のTPS、米国のLCLS、欧州のESRF・MAX-IVなどである。中国の商社経由の売上が全体の15%を占める。
ライフサイエンス・機器開発事業は売上2.8億円で、細胞の自動培養装置と、水晶やSiC、ダイヤの研磨装置を扱う。赤字が続くが、水晶基板の量産加工では大型の受注を得た。
その他事業は子会社の電子科学で、半導体や液晶の分析に使う昇温脱離分析装置を作る。売上は半減し、赤字になった。研究開発費は年3.6億円と、売上の約2割にのぼる。決算期は6月だったが、3月への変更が決まり、次期は9か月の変則決算になる。
優良さと弱いところ
筆者の評価は「ごく狭い領域で替えの利きにくい技術を持つが、会社は小さく、利益は案件ごとに揺れる」だ。
X線ミラーは、ナノメートル以下の形状精度が出せなければ使えない。会社は有報で「この技術を超える精度は極めて困難」と書く。施設の設計段階から相談を受け、一品ずつ作るため、一度採用されれば後続の更新案件も取りやすい。ここは堀である。ただし、世界シェアの数字は開示されておらず、強い堀とまでは言い切れない。
弱みは多い。第一に、売上が数台の納入に左右され、検収が1期ずれるだけで利益が消える。第二に、顧客の半数が公的研究機関で、予算の事情に縛られる。第三に、単結晶シリコン基板の材料不具合のように、外注先の品質が納期を左右する。第四に、赤字の子会社と機器開発が足を引っ張る。
財務は軽くない。借入には、経常損益が2期連続で赤字にならないこと、純資産を直前期末の75%以上に保つことを求める条項が付く。配当は出しておらず、内部留保を優先している。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
放射光施設は、世界で更新と新設の時期に入っている。日本では、2024年4月にNanoTerasuが稼働した。SPring-8は、2027年夏までの運転ののち、SPring-8-IIへの更新に入る。整備期間は2024〜2028年度で、予算は約500億円。ビームラインの再編は、2025〜2028年度に重点の4本、2029年度以降にさらに広がる計画である。中国、欧州、米国でも、新しい光源の整備が続いている。
ミラーは、そうした施設の性能を決める消耗品に近い部品で、更新のたびに注文が出る。ただし納入は施設の工事日程に縛られ、年によって数が大きく変わる。予算が通る年は受注が重なり、通らない年は途絶える。数量は右肩上がりより、段差で増えると見るのが近い。
競合の詳細は開示されていない。会社は精度と、施設に合わせたカスタム対応で差をつける。
半導体向けでは、SiCやダイヤの研磨装置が芽を出しつつある。ただし規模は小さく、量産装置で大手と戦える段階ではない。筆者は、オプティカルの数量が10年で4〜5割増えると中立に置く。
資本政策と M&A
還元は無配で、内部留保を優先する方針だ。現金は5.1億円、有利子負債は4.2億円と、純現金はわずか1億円ほどしかない。三井住友銀行からの借入は2031年5月が最終期限で、財務の条項が付いている。
資本の使い道は、研究開発と設備である。研究開発費は年3.6億円、設備投資は1.8億円、減価償却は1.3億円だった。償却は今の設備の分が取得原価のまま続き、更新の投資は建築費や機械の値上がりで膨らむ。
2021年に半導体分析装置の電子科学を買収した。のれんの回収は進まず、直近期は赤字になった。ここで減損が出れば、財務の条項に触れかねない。
2026年6月期の後に決算期を3月に変え、次期は9か月の変則決算となる。2018年に上場した新しい会社で、今後、増資や資本政策で動く余地はある。TOBの確率は、ほかの小型株と大きくは変わらず、材料も見当たらない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
世界で放射光施設の更新が重なる。SPring-8-IIは2029年度に利用を始め、ビームラインの再編も続く。中国のHEPS、欧州のESRFなど、会社の納入実績が並ぶ施設で、次の更新が控える。
受注残は19億円と、前期の1.4倍に増えた。直近期の未達は、顧客の設計変更と材料不具合という一過性の要因だ。納期のずれは、利益が消えたのでなく、先に送られただけである。
オプティカルの部門利益率は45%と高い。売上が2倍になれば、全社の固定費は薄まり、営業利益率は2割に届く。会社は研究機関との関係が深く、設計の段階から入るため、競合が割り込みにくい。
半導体向けの研磨装置も、水晶基板で量産の受注を得た。SiCやダイヤの加工が実用化すれば、装置として売上が伸びる。
上場以来の営業利益は、2019年6月期に34%の利益率を記録した。需要の山が来れば、その水準に戻る。研究開発費の多くはすでに製品に結びついており、売上が伸びる局面では費用の増え方が鈍る。受注の裏づけがあるのは、他の小型の技術企業との大きな違いだ。
慎重な見方
利益の振れが大きすぎる。営業利益率は、マイナス33%から34%の間を動き、直近は3.7%まで落ちた。会社の予想すら、直近期は大きく外した。この会社の利益は、予想できない。
連結の営業利益は0.7億円で、時価総額の1%にもならない。部門利益6億円の大半は、本社の費用と赤字の事業に消える。研究開発費は売上の約2割で、いつ回収できるかが見えない。
顧客の約半分は公的研究機関で、予算と日程に縛られる。中国の商社経由の売上が15%あり、地政学や輸出管理の影響を受ける。更新需要が大きくても、会社が取れるのはその一部にすぎない。
外注先の材料不具合のように、自分で制御できない要因が納期を壊す。電子科学は買収後に成果が出ず、減損の恐れがある。
借入には、経常損益が2期連続の赤字を避ける条項がある。谷の年が続けば、財務が一気に苦しくなる。受注残が増えても、検収の時期が合わなければ、利益は期をまたいで消える。会社は無配で、株主への還元の見通しも示していない。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は受注残と更新需要という事実に、慎重な言い分は利益の振れと費用の重さという事実に基づく。筆者は、山と谷を均した利益率を1割前後に置き、需要の追い風はオプティカルの数量で反映した。
確率は中立に4割弱、楽観に1割、やや悲観にも2割台半ばを置いた。谷の年が続く筋書きは、財務の条項があるため軽く扱えない。悲観は、技術の優位が崩れる筋書きなので1割未満にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 804 円47 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 54 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 400 円24 億円、今との差 −70.8%、 期待の年率 −4.6%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,422 円143 億円 | 169 円10 億円 | +89.1% | +6.6% | 259 円15 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,285 円76 億円 | 85 円5 億円 | +0.0% | +0.0% | 301 円18 億円 |
| 中立 | 36% | 637 円38 億円 | 51 円3 億円 | −49.8% | −6.7% | 248 円15 億円 |
| やや悲観 | 24% | 169 円10 億円 | 0 円0 億円 | −87.6% | −18.9% | 41 円2 億円 |
| 悲観 | 8% | 119 円7 億円 | 0 円0 億円 | −91.3% | −21.7% | 9 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 804 円47 億円 | 54 円3 億円 | −37.4% | −4.6% | 858 円51 億円 |
今の株価時価総額 1,370 円81 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:更新需要を取り切り、利益率が2割に乗る 利益 10 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 2,422 円143 億円
SPring-8-IIや中国・欧州の更新需要を会社が取り込み、オプティカルの数量は2.2倍、価格は物価を少し上回って1.4倍になる。部門利益率は46%を保つ。
機器開発は水晶・SiCの量産装置が当たり、数量が3倍に伸びて黒字化する。電子科学も半導体向けの分析装置が戻り、利益を出す。
本社と研究開発の費用は物価で増えるが、売上が3倍超になるため吸収できる。営業利益は13億円台、営業利益率は2割強まで上がる。
配当を始め、自己資本利益率は17%に近づく。ただしこの水準は、過去10年で最高の年に近い。山だけが続く筋書きで、確率は低い。
- オプティカル(X線集光ミラー):数量 55.0(納入ミラー・光学系(セット,推定))× 価格 7,990(1セットあたり売上(万円,名目,推定))→ 売上 44 億円・営業利益 20 億円。営業利益率46.0%
- ライフサイエンス・機器開発(研磨装置・培養装置):数量 24.0(納入装置(台,推定))× 価格 4,799(1台あたり売上(万円,名目,推定))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。営業利益率12.0%
- 電子科学(昇温脱離分析装置):数量 15.6(納入装置(台,推定))× 価格 5,469(1台あたり売上(万円,名目,推定))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。営業利益率12.0%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.4% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍。全体の PER 14.59 倍、時価総額 143 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:SPring-8-IIと海外の更新を会社が広く受注し、赤字の事業も黒字化する筋書き。受注残の増加と更新需要を踏まえ、1割にとどめた。
やや楽観 22% やや楽観:更新需要の一部を取り、利益率が16%に乗る 利益 6 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,285 円76 億円
更新需要の一部を取り、オプティカルの数量は1.75倍に伸びる。価格は物価並みに上がり、部門利益率は43%を保つ。SPring-8-IIのビームライン再編で、複数の注文が取れる。中国向けの輸出も、一定の水準で続く。
機器開発は数量が2倍強になるが、利益率は低い。電子科学は黒字を取り戻す。
本社と研究開発の費用は物価で増えるが、売上が2.5倍になるため、営業利益は8億円に届く。営業利益率は16%台で、過去10年の中央値を上回る。
配当は少額で始まる。自己資本利益率は11〜12%で、資本コストをやや上回る。
受注が数台ずつ積み上がり、年ごとの振れは残る。
- オプティカル(X線集光ミラー):数量 43.8(納入ミラー・光学系(セット,推定))× 価格 7,762(1セットあたり売上(万円,名目,推定))→ 売上 34 億円・営業利益 15 億円。営業利益率43.0%
- ライフサイエンス・機器開発(研磨装置・培養装置):数量 17.6(納入装置(台,推定))× 価格 4,764(1台あたり売上(万円,名目,推定))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。営業利益率7.0%
- 電子科学(昇温脱離分析装置):数量 12.0(納入装置(台,推定))× 価格 5,469(1台あたり売上(万円,名目,推定))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。営業利益率9.0%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.7% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.31 倍、時価総額 76 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:更新需要の一部を取り、受注残が着実に売上へ変わる筋書き。直近の受注残の増加(1.4倍)を踏まえ、2割強。
中立 36% 中立:山と谷を均して、利益率は1割前後 利益 3 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 637 円38 億円
オプティカルの数量は10年で1.4倍に増え、価格は物価並みに上がる。年によって受注の山谷があるが、均すと部門利益率は40%と、直近の45%から少し戻る。
機器開発と電子科学は赤字を脱するが、利益率は数%にとどまる。研究開発費は物価で増え、本社の費用も7億円に膨らむ。
営業利益は4億円台、営業利益率は11%前後で、過去の中央値と並ぶ。
設備の償却は今の分が取得原価のまま続き、更新の投資は物価で膨らむ。償却を上回る分は借入か自己資金で賄う。
配当は少額で、現金が積み上がる。自己資本利益率は7%台で、資本コストには届かない。山の年に高い倍率を掛けず、均した水準で見る。
- オプティカル(X線集光ミラー):数量 35.0(納入ミラー・光学系(セット,推定))× 価格 7,647(1セットあたり売上(万円,名目,推定))→ 売上 27 億円・営業利益 11 億円。営業利益率40.0%
- ライフサイエンス・機器開発(研磨装置・培養装置):数量 14.4(納入装置(台,推定))× 価格 4,764(1台あたり売上(万円,名目,推定))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。営業利益率3.0%
- 電子科学(昇温脱離分析装置):数量 9.6(納入装置(台,推定))× 価格 5,469(1台あたり売上(万円,名目,推定))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。営業利益率6.0%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 38 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益の山谷は均した水準で置く。受注残と更新需要を反映したオプティカルの数量(10年1.4倍)と、過去の均し(営業利益率1割前後)に沿った中心。
やや悲観 24% やや悲観:更新需要を取れず、いまの水準にとどまる 利益 1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 169 円10 億円
オプティカルの数量は1.1倍にとどまり、価格も物価に追いつかない。更新需要は競合に流れるか、日程が遅れる。
機器開発と電子科学は赤字が続き、減損を出す。本社と研究開発の費用は物価で増え、営業利益は1億円にとどまる。新しい光源が建っても、注文の多くは既存の取引先の更新にとどまり、新規の顧客は増えない。
配当は出せず、現金は積み上がらない。借入の条項に触れないよう、投資を絞る。
時価総額は稼ぐ力でなく、売れる資産で測る。自己資本利益率は2%にとどまる。会社が谷にとどまり続ける姿である。受注の谷が10年のうち大半を占め、検収が期末に集中する年だけ黒字になる程度の利益しか残らない。固定費の重さが利益を削り続ける。
- オプティカル(X線集光ミラー):数量 27.5(納入ミラー・光学系(セット,推定))× 価格 7,419(1セットあたり売上(万円,名目,推定))→ 売上 20 億円・営業利益 7 億円。営業利益率36.0%
- ライフサイエンス・機器開発(研磨装置・培養装置):数量 9.6(納入装置(台,推定))× 価格 4,444(1台あたり売上(万円,名目,推定))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。営業利益率-2.0%
- 電子科学(昇温脱離分析装置):数量 6.0(納入装置(台,推定))× 価格 5,101(1台あたり売上(万円,名目,推定))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。営業利益率-2.0%
倍率:稼ぐ力は純利益0.7億円を資本コストで割ると約8億円にとどまる。売れる資産の税後(約10億円)を床とし、今の自己資本28.5億円に対するPBR0.35倍(時価総額10億円)に置いた。
確率:受注残が売上に変わっても、更新需要を取り込めず、利益が直近並みにとどまる筋書き。直近期の営業利益率3.7%の延長線上で、2割台半ば。
悲観 8% 悲観:技術の優位が崩れ、赤字と条項抵触が続く 利益 −3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 119 円7 億円
海外の競合が精度で追いつき、更新案件の多くを失う。オプティカルの数量は3割減り、価格も物価の半分しか上がらない。
機器開発と電子科学は赤字が拡大し、電子科学ではのれんが減損される。営業損失は3億円台になる。
経常損益が2期続けて赤字になり、借入の条項に触れる。借入条件が悪化し、増資や事業の売却を迫られる。研究者や熟練の職人が流出し、技術の蓄積も傷む。
時価総額は稼ぐ力でなく、売れる資産で測る。自己資本は減損で22億円に減り、少数株主に戻る額は小さい。装置の受注は数が少なく、1件を落とすだけで年の売上が大きく欠ける。信用が傷めば新規の引き合いも細り、立て直しには長い年月がかかる。
- オプティカル(X線集光ミラー):数量 17.5(納入ミラー・光学系(セット,推定))× 価格 6,848(1セットあたり売上(万円,名目,推定))→ 売上 12 億円・営業利益 3 億円。営業利益率25.0%
- ライフサイエンス・機器開発(研磨装置・培養装置):数量 7.2(納入装置(台,推定))× 価格 4,088(1台あたり売上(万円,名目,推定))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。営業利益率-10.0%
- 電子科学(昇温脱離分析装置):数量 3.0(納入装置(台,推定))× 価格 4,489(1台あたり売上(万円,名目,推定))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。営業利益率-10.0%
倍率:赤字では稼ぐ力は測れない。床は売れる資産の税後で測り、今の自己資本28.5億円に対するPBR0.25倍(時価総額7億円)に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.32 倍・時価総額 7 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:精度で競合に追いつかれ、更新案件を失う筋書き。技術の優位は本物と見るので、1割未満にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
オプティカル(X線集光ミラー)
X線ナノ集光ミラーなどの光学素子。放射光・X線レーザー施設向け。売上の約73%、部門利益はほぼ全て。
| 数量納入ミラー・光学系(セット,推定) | 価格1セットあたり売上(万円,名目,推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 25.0 | 5,707 | 14 | 6 |
| 10 年後 中立 | 35.0 | 7,647 | 27 | 11 |
取り方:有報の部門売上14.27億円・部門利益6.42億円(利益率45%)をそのまま使い、数量は納入セット数の推定(年25セット前後、1セット約5,700万円と置いた)。数量はSPring-8-IIなどの更新需要で10年1.4倍(山と谷を均した値)、価格は物価並み1.34倍。受注残18.9億円は足元の追い風として織り込んだ。
ライフサイエンス・機器開発(研磨装置・培養装置)
細胞の自動培養装置と、水晶・SiC・ダイヤの研磨装置。売上の約15%、赤字。
| 数量納入装置(台,推定) | 価格1台あたり売上(万円,名目,推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 8.0 | 3,555 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 14.4 | 4,764 | 7 | 0 |
取り方:有報の部門売上2.84億円・部門損失0.37億円。数量は台数の推定(年8台、1台約3,600万円と置いた)。数量は水晶基板の量産加工などで10年1.8倍、価格は物価並み1.34倍。利益は開発費が重く、中立でもわずかな黒字にとどまる。
電子科学(昇温脱離分析装置)
半導体・液晶向けの昇温脱離分析装置(子会社・電子科学)。売上の約13%、赤字。
| 数量納入装置(台,推定) | 価格1台あたり売上(万円,名目,推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 6.0 | 4,081 | 2 | −1 |
| 10 年後 中立 | 9.6 | 5,469 | 5 | 0 |
取り方:有報の部門売上2.45億円・部門損失0.68億円(前期は売上4.71億円・利益0.41億円)。直近期は1台しか売れておらず、谷の年。数量は10年1.6倍、価格は物価並み1.34倍。均した利益率は6%と置いた(前期の8.7%を下回る)。
リスクと懸念
利益の山谷と検収のずれ
売上は数台の納入で決まり、検収が1期ずれれば利益が消える。直近期は設計変更と材料不具合で、会社予想を大きく下回った。営業利益率は過去10年でマイナス33%から34%の間にある。
公的予算と更新日程
顧客の約半分は公的研究機関。予算の削減や工事日程の延期で、受注が数年単位で動く。SPring-8-IIは2027年夏から運転を止めて更新に入るため、日程の遅れは納入時期に直結する。
中国向けと商社経由の売上
中国の商社経由の売上が全体の15%を占め、HEPSなど中国の施設にも納める。輸出管理や地政学の変化で、この売上は一気に止まりうる。
財務制限条項
借入には、経常損益を2期連続で赤字にしない、純資産を直前期末の75%以上に保つ、電子科学の議決権を100%保つ、の条項がある。谷の年が続けば、借入条件が悪化する。
赤字の事業と減損
電子科学は売上が半減して赤字になり、機器開発も赤字が続く。買収で生じたのれんの減損が出れば、純資産を削り、条項に触れる恐れがある。
外注先と技術の置き換え
単結晶シリコン基板のように、外注先の不具合が納期を壊す。長期には、別方式の光学素子や海外メーカーが精度で追いつく可能性もある。
今後の分かれ目
- SPring-8-IIのビームライン更新で、会社が複数のミラーを受注する
- 受注残がさらに積み上がり、オプティカルの数量が2倍に近づく。楽観の筋書きに寄る。
- 受注残の売上化が、設計変更や材料不具合でさらに遅れる
- 営業利益は0.7億円前後にとどまり、財務の条項への余裕が薄れる。やや悲観の筋書きに寄る。
- 電子科学で減損が出る
- 純資産が減り、財務の条項に触れる恐れが出る。悲観の筋書きに寄る。
- 中国向けの輸出が制限される
- 売上の15%と、中国の施設への納入が止まる。オプティカルの数量が2割以上減る。
- 半導体向けの研磨装置が量産装置として複数社に採用される
- 機器開発の数量が数倍になり、全社の利益率が上がる。ただし現時点では織り込まない。
見ておくもの
- 受注高と受注残、売上化の時期
- SPring-8-IIのビームライン再編と発注
- オプティカルの部門利益率
- 電子科学と機器開発の赤字の縮小
- 財務制限条項への余裕
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。利益の山谷は、均した水準(営業利益率1割前後)を中立に置き、山の利益に高い倍率を掛けていない。10年後の自己資本利益率は7%台で資本コスト8.25%に届かず、正当化PERの85%に置いた。今の株価や同業の倍率は使っていない。やや悲観・悲観は稼ぐ力ではなく売れる資産で値を付けた。新リース会計基準の影響は小さいとみて、10年後は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.1→14.59 倍・やや楽観 PER 10.8→13.31 倍・中立 PER 9.3→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。