結論
長府製作所は、石油給湯器やヒートポンプ式の給湯・空調機器を、全国の住宅向けに作る山口県の中堅メーカーだ。筆者の結論は「やや割高」。事業の稼ぎは小さく、持っている運用資産は大きい。だがその資産が株主の手に届く道筋は、まだ見えない。
売上は465億円で、営業利益は17億円にとどまる。一方、貸借対照表の資産は1,480億円あり、大半が投資有価証券だ。時価総額は673億円で、運用資産(流動の有価証券を足すと約1,045億円)のおよそ6割強しかない。数字だけを見れば、宝の山である。
だが筆者は、寝かせた資産は宝にならないと見る。運用資産は年3%ほどしか稼がず、株主が求める8%には遠い。還元は毎年の利益の流れだけで、積み上がった山には手がつかない。10年後も同じなら、価値は目減りする。
事業そのものは堅実だ。石油給湯器などに高いシェアを持ち、ヒートポンプと全館空調で次の柱を育てている。ただ営業利益率は5%前後で、大きくは伸びない。2025年12月期には、製品補償の損失も出た。
今年7月、他社へ経営の提案をしてきた投資会社が5.6%を報告した。還元が動けば筋書きは変わる。その確率を織り込んでも、筆者は今の値段に安全域を見いだせない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、長府製作所は「安く見えるが、取り分が遠い会社」だ。
良い点は、倒れないことである。借金はなく、事業は10年後も残る。給湯器は壊れれば替える必要があり、需要が突然消えることはない。
問題は、オーナー利益(株主が自由に使える利益)の小ささと、資本の使い方だ。本業の営業利益は17億円。事業に要る資産は370億円ほどで、税引き後の稼ぎは3%に届かない。残る990億円ほどは、年3%で寝ている。株主が求める8%との差が、毎年少しずつ価値を削る。
運用資産が時価総額の1.5倍ある会社を、筆者は「割安」と呼ばない。資産は株主のものだが、取り出す手立てがなければ、額面どおりには評価できない。手立ては、配当・自社株買い・資産の売却のどれかである。
経営は堅実だが、資本配分の意思が弱い。物言う株主の登場で、これが変わる可能性はある。変われば強気の筋書きになる。変わらなければ、10年かけて資産は目減りする。
安全域は、還元の確かな約束があって初めて生まれる。それが見えない今、払う値段に余裕は残らない。
何で稼ぐ会社か
長府製作所は、住宅の給湯と空調の機器を作って売る山口県の会社だ。売上の約半分が給湯機器、約4割が空調機器で、残りがシステムバス・太陽光機器・設備工事である。会社は単一の事業として開示し、部門ごとの利益は出していない。
給湯機器の出発点は石油給湯器だ。ガスが通らない地域や寒冷地では、いまも石油が主役である。ここに、微細な泡を使うウルトラファインバブル搭載機を加え、価格改定と合わせて増収が続いている。電気で湯を沸かすエコキュートも手がける。
空調機器は、ハウスメーカー向けのヒートポンプ式熱源機と全館空調が伸びている。家全体を冷暖房する仕組みだ。石油ファンヒーターなどの暖房機器は、天候で売上が振れる。欧州向けのヒートポンプ熱源機は振るわなかった。
客はハウスメーカー、工務店、販売店、設備工事会社である。新築の着工が減れば響くが、給湯器は10〜15年で替え時が来る。交換の需要が土台になる。
利益は薄い。営業利益率は過去10年、3.7〜6.9%の幅で動いた。銅・ステンレス・樹脂の値上がりを、価格改定で追いかける構図だ。一方、営業外の収益と費用の差が29億円あり、大半は運用資産の収益と見られる。会社の稼ぎは、本業より運用のほうが大きい。
従業員は約1,200人で、研究者は127人。研究開発費は11億円ほどで、売上の2.4%にあたる。
優良さと弱いところ
筆者の見る長府製作所は、「堅い事業と、動かない資産」の会社だ。
事業の強みは、住宅向けの機械を長く作ってきたことにある。石油給湯器など、高いシェアを持つ分野がある。自己資本比率は93%で、借金はない。営業利益は支払利息の170倍あり、潰れる心配は小さい。
弱みは資本の効率だ。自己資本利益率(ROE。株主のお金に対する稼ぎ)は、過去10年で1.5〜3%台にとどまった。資本コストの8%台には一度も届いていない。理由は単純で、自己資本の7割近くが事業に使われず、運用資産として眠っているからだ(筆者の推定)。
値段を決める力は強くない。給湯機器は電気・ガス・石油の熱源ごとに数社が争う成熟市場で、相手はリンナイ・ノーリツ・コロナなどだ。ヒートポンプでは、家電や空調の大手も競争相手になる。
もう1つ気になるのは、品質の費用だ。2025年12月期に製品補償損失の引当金を積み、純利益が3割減った。対象製品は確かめられなかったが、住宅設備は一度出ると費用が重い。
経営は慎重で堅実だ。ただ、資本の使い方には物足りなさが残る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の住宅設備は、新築が細り、交換とリフォームが底を支える市場だ。
新設住宅の着工は、人口と世帯数の減少で長い目で減っていく。省エネ基準の義務化や材料費の上昇も、足元の着工を押し下げた。一方、給湯器は10〜15年で寿命が来る。住宅のストックが増えるほど、替える台数は積み上がる。数量は10年で0.9〜1.0倍が目安だ。
熱源の主役は、少しずつ動いている。ガスと石油は省エネ型(エコジョーズ・エコフィール)へ替わる。電気では、空気の熱で湯を沸かすエコキュートが増える。国は補助金で後押しし、脱炭素の流れが追い風になる。石油機器は台数が減る代わりに、高効率機への切り替えで単価が上がる。
競争は熱源ごとに違う。ガス給湯器は、リンナイとノーリツで大半を握る。石油機器は、コロナや長府などが争う。エコキュートは、パナソニックやダイキンなど家電・空調の大手が強い。ヒートポンプは参入が増え、値下げ競争が利益率を削るおそれがあると、会社自身が計画に書いている。
値段は、素材と人件費の上昇を追って上がる。業界では2026年に、給湯器の値上げが相次いだ。長府のような規模の会社は、大手に合わせて上げる立場になる。
循環のどこにいるか。給湯と暖房は、景気より天候と住宅投資で動く。足元は、値上げの効果と原材料高が同時に出ている局面だ。
資本政策と M&A
資本政策の核心は、積み上がった運用資産をどうするかだ。
総資産1,480億円のうち、投資有価証券が約920億円を占める(集計サイトの値)。有報で確かめられたのは、上場の政策保有株が21銘柄で約150億円、純投資の株が約40億円という分までだ。残りの内訳は確認できなかった。時価総額の673億円は、この資産より小さい。
還元は、毎年の利益の流れに沿っている。配当は年15億円規模で、2025年12月期の配当性向は72%だった。自社株買いは2022年と2023年に行ったが、2024年と2025年は0である。積み上がった山には、手がついていない。
中期計画は「機動的な自社株取得」を掲げるだけで、PBR(株価純資産倍率)の目標も、政策保有株の売却方針も書いていない。
圧力は強まっている。2026年7月、他社へ経営の提案をしてきたBe Brave(泉田和人代表)が、5.6%の保有を報告した。米国の運用会社ファースト・イーグルは、2025年12月の9.1%から2026年4月に4.5%へ持ち分を減らした。
買収される側になる可能性もある。kabufuの推定では、10年以内に19%ほどだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方はこうなる。主役は積み上がった資産だ。時価総額は、運用資産の7割しかない。事業はただ同然で、資産も3割引きで売られている。会社が資産を事業と還元にうまく回せば、この差は縮まる。
風向きも変わった。今年7月にBe Braveが5.6%を報告した。東証が求めるPBR改善の圧力も続く。最初の一手は、政策保有株約150億円の売却と、自社株買いだ。会社は計画で「機動的な自社株取得」をうたっている。
事業も動き出す。2026年12月期の会社予想は営業利益24億円で、前期の1.4倍だ。計画の最終年には35億円を見込む。エコキュートと全館空調、海外向けヒートポンプ熱源機は、大きく伸びる計画である。
補償損失の引当は一度きりの費用で、来期は出ない。純利益は38億円の予想へ戻る。給湯器の価格改定は業界全体で通っており、素材高も転嫁できている。
事業が計画どおり育ち、資産の一部でも株主へ返れば、時価総額と還元の総額は、今の時価総額のほぼ2倍になる。物価が3%で上がる世界では、現金より事業と資産を持つ会社が有利でもある。
慎重な見方
慎重な見方は、資産の山を「動かない資産」と読む。積み上がった額は20年以上手つかずで、株価は2001年から純資産の0.45〜1.0倍の間にある。株主に、取り出す力がなかった証拠だ。
運用資産は、年3%ほどしか稼がない。資本コストは8%台で、差は毎年5ポイントある。10年続けば、同じ額を株主が自分で運用した場合より、大きく見劣りする。
本業も強くない。営業利益率は4%前後で、2024年と2025年は3%台に落ちた。石油機器は減り、ヒートポンプは大手との値下げ競争になる。会社自身が、利益率の低下を課題に挙げている。
製品補償の損失も気がかりだ。対象も総額も開示されず、追加が出ない保証はない。
物言う株主は来たが、保有は5%台にとどまる。ファースト・イーグルは、持ち分を半分以下に減らした。圧力が続くとは限らない。慎重な経営が、短期の要求に応じる保証もない。還元が動かなければ、資産は寝たままで、10年後も放置される。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。事業の力は小さく、資産が株主に届く保証がない。物言う株主の登場は、強気の筋書きの確率を押し上げた。だが5%台の持ち分では、会社を動かせると言い切れない。確率は中立から慎重の側に寄せ、強気とやや強気を合わせて35%、やや慎重と悲観を合わせて28%とした。残る37%は、今の方針が続く姿である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 2,953 円1,004 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 671 円228 億円)。 今の値に割り戻すと 1,900 円646 億円、今との差 −3.0%、 期待の年率 +6.3%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,525 円1,199 億円 | 1,176 円400 億円 | +140.0% | +9.1% | 470 円160 億円 |
| やや楽観 | 25% | 3,311 円1,126 億円 | 823 円280 億円 | +111.1% | +7.8% | 1,034 円351 億円 |
| 中立 | 37% | 3,330 円1,132 億円 | 588 円200 億円 | +100.0% | +7.2% | 1,450 円493 億円 |
| やや悲観 | 20% | 2,203 円749 億円 | 529 円180 億円 | +39.5% | +3.4% | 546 円186 億円 |
| 悲観 | 8% | 1,244 円423 億円 | 294 円100 億円 | −21.5% | −2.4% | 123 円42 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,953 円1,004 億円 | 671 円228 億円 | +84.9% | +6.3% | 3,623 円1,232 億円 |
今の株価時価総額 1,959 円666 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 還元に動き、利益率も上がる 利益 54 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 3,525 円1,199 億円
物言う株主の働きかけが実を結ぶ。政策保有株の売却と大型の自社株買いが続き、10年で400億円が株主に戻る。運用資産は890億円ほどに減る。
事業もかみ合う。エコキュートと全館空調が伸び、海外向けヒートポンプ熱源機も軌道に乗る。給湯機器は高効率機への切り替えで単価が上がり、営業利益率は7%台に乗る。会社が計画で掲げた6.7%を、さらに上回る水準だ。
運用収益は減るが、本業の利益が穴を埋める。純利益は40億円台で、株主の手元に残る額が増える。資産が事業に使われ、資本の効率が上がる姿になる。
時価総額は今より大きくなり、受け取る還元を足せば、総額は今のほぼ2倍になる。
- 給湯機器(石油・エコキュートなど):数量 10.8(給湯機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 29(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 312 億円・営業利益 33 億円
- 空調機器(ヒートポンプ熱源機・全館空調・暖房):数量 25.7(空調機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 11(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 284 億円・営業利益 21 億円
- エンジニアリング部門:数量 14.3(施工案件数(百件。推定))× 価格 283(1案件あたり売上(万円。名目))→ 売上 41 億円・営業利益 3 億円
- システム機器・ソーラー機器ほか:数量 2.5(システムバス・ソーラー機器などの出荷セット相当(万セット。推定))× 価格 20(1セットあたり売上(万円。名目))→ 売上 49 億円・営業利益 1 億円
倍率:事業の純利益 42 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)665 億円。全体の PER 13.9 倍、時価総額 1,243 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:物言う株主の働きかけが実る筋書きだ。確率は1割にとどめる。会社が5%台の保有者の提案を受け入れ、変わるには、経営の意思が要る。
やや楽観 25% 一部の資産が戻り、事業は堅調 利益 46 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 3,311 円1,126 億円
還元は動くが、徹底はしない。政策保有株を一部売って自社株買いに回し、配当も少し増える。10年の還元は280億円。運用資産は950億円ほどに減る。
事業は計画に近い。給湯機器は価格改定とエコキュートで伸び、空調は全館空調で数量が増える。営業利益率は6%近くに上がる。
補償の問題は片づき、新しい不祥事は出ない。ヒートポンプの値下げ競争は、一部の機種にとどまる。
運用資産の残りが年3%で回る点は変わらない。株主が受ける実りは、還元の増えた分だけ今より良くなる。
物言う株主の要求は通るが、買収や大型の自社株買いまでは進まない。会社が自分のペースで資産を整理するぶん、価値の上がり方は穏やかになる。
- 給湯機器(石油・エコキュートなど):数量 10.6(給湯機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 28(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 300 億円・営業利益 25 億円
- 空調機器(ヒートポンプ熱源機・全館空調・暖房):数量 24.5(空調機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 11(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 267 億円・営業利益 16 億円
- エンジニアリング部門:数量 13.7(施工案件数(百件。推定))× 価格 271(1案件あたり売上(万円。名目))→ 売上 37 億円・営業利益 2 億円
- システム機器・ソーラー機器ほか:数量 2.4(システムバス・ソーラー機器などの出荷セット相当(万セット。推定))× 価格 20(1セットあたり売上(万円。名目))→ 売上 46 億円・営業利益 1 億円
倍率:事業の純利益 33 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)710 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 1,147 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:還元が一部動き、事業は計画に近づく筋書きだ。物言う株主の登場と東証の改善要請を踏まえ、2割台半ばを置いた。
中立 37% 資産は寝たまま、事業は小幅に伸びる 利益 43 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 3,330 円1,132 億円
今の姿が10年続く。会社は配当を年15億円規模で続け、少額の自社株買いを足す。10年の還元は200億円ほどで、運用資産は事業の利益の積み上がりで1,070億円まで膨らむ。
事業は小さく伸びる。給湯機器は石油が減り、エコキュートが増えて、台数は3%減る。単価は高効率機への切り替えで、物価を少し上回る。空調はヒートポンプ熱源機が支え、数量は2%増える。営業利益率は5%台前半で、計画の6.7%には届かない。
運用収益は年30億円規模で変わらない。営業利益は33億円まで戻り、純利益は40億円台になる。それでも自己資本利益率は3%に届かない。
株主の目には、資本コストを大きく下回る会社のまま、10年が過ぎる。
- 給湯機器(石油・エコキュートなど):数量 10.4(給湯機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 28(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 293 億円・営業利益 21 億円
- 空調機器(ヒートポンプ熱源機・全館空調・暖房):数量 23.8(空調機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 11(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 255 億円・営業利益 13 億円
- エンジニアリング部門:数量 13.0(施工案件数(百件。推定))× 価格 271(1案件あたり売上(万円。名目))→ 売上 35 億円・営業利益 2 億円
- システム機器・ソーラー機器ほか:数量 2.3(システムバス・ソーラー機器などの出荷セット相当(万セット。推定))× 価格 20(1セットあたり売上(万円。名目))→ 売上 44 億円・営業利益 1 億円
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.8% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)800 億円。全体の PER 12.34 倍、時価総額 1,146 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今の方針が続く筋書きだ。20年以上動かなかった資本配分と、小さな事業の伸びを前提に、最も確率が高いとした。
やや悲観 20% 利益率が落ち、補償と値下げ競争が重なる 利益 27 億円 · PER 10.6 倍 · 株価時価総額 2,203 円749 億円
事業が弱る。ヒートポンプで大手との値下げ競争が激しくなり、空調の利益率は3%に張りつく。石油機器の台数は、想定より速く減る。素材高は、転嫁が遅れる。
製品補償の費用が追加で出て、営業利益は19億円にとどまる。会社が計画に掲げた35億円には遠い。
運用資産は、補償や設備投資に回って少し減り、675億円ほどになる。配当は守るが、増配はできない。還元の総額は180億円だ。
運用収益が利益の大半を占める構図は、むしろ強まる。事業の価値は小さく、資産の価値も目減りしていく。
物言う株主の圧力は弱まり、会社は従来の方針に戻る。株式の評価損が出れば、自己資本の厚みも少し削られる。
- 給湯機器(石油・エコキュートなど):数量 9.9(給湯機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 27(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 266 億円・営業利益 15 億円
- 空調機器(ヒートポンプ熱源機・全館空調・暖房):数量 22.2(空調機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 10(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 231 億円・営業利益 7 億円
- エンジニアリング部門:数量 12.4(施工案件数(百件。推定))× 価格 263(1案件あたり売上(万円。名目))→ 売上 33 億円・営業利益 2 億円
- システム機器・ソーラー機器ほか:数量 2.0(システムバス・ソーラー機器などの出荷セット相当(万セット。推定))× 価格 19(1セットあたり売上(万円。名目))→ 売上 38 億円・営業利益 0 億円
倍率:資本コスト7.5%。本業の稼ぎが薄く、自己資本利益率は資本コストを大きく下回るので、PERの上限は1÷k=12.1倍。補償費用で利益の質が落ちるため、上限の約8割の10.61倍にとどめる。余った現金675億円は戻り方0.5で足す。
確率:事業の弱りと追加の補償費用が重なる筋書きだ。補償損失がすでに出ていること、ヒートポンプで大手が強いことを踏まえ、2割を置いた。
悲観 8% 事業が構造的に縮み、資産も目減りする 利益 7 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,244 円423 億円
構造的な負けが出る。石油給湯器の需要は人口減と脱炭素で急に減り、ヒートポンプでは大手に価格で勝てない。給湯機器の台数は2割減り、単価も物価に追いつかない。空調の利益は赤字に沈む。
営業利益はマイナスに転じ、製品補償の費用も続く。運用資産は、事業の穴埋めや失敗した投資で半分ほどに減る。
運用収益が残るため、純利益は小さな黒字にとどまる。還元は100億円まで細り、自己資本は評価損で減る。
株主の手に残る価値は、運用資産の半分ほどと、小さな事業だけになる。
住宅設備の需要そのものは消えないが、長府は規模で大手に劣り、価格で勝てる分野が狭まる。資産を売って穴を埋めても、利益は戻らない。
- 給湯機器(石油・エコキュートなど):数量 8.4(給湯機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 25(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 210 億円・営業利益 4 億円
- 空調機器(ヒートポンプ熱源機・全館空調・暖房):数量 19.2(空調機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 9.60(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 184 億円・営業利益 −2 億円
- エンジニアリング部門:数量 10.4(施工案件数(百件。推定))× 価格 243(1案件あたり売上(万円。名目))→ 売上 25 億円・営業利益 0 億円
- システム機器・ソーラー機器ほか:数量 1.5(システムバス・ソーラー機器などの出荷セット相当(万セット。推定))× 価格 17(1セットあたり売上(万円。名目))→ 売上 26 億円・営業利益 −1 億円
倍率:資本コスト7.5%。構造的に負けた事業の稼ぎは小さい。PERの上限は1÷k=12.1倍だが、利益の質が低く、上限の約75%の9.0倍に置く。余った現金450億円は戻り方0.5で足す。
確率:構造的な負けが出る筋書きだ。石油機器の急減と大手との価格競争、運用の失敗が同時に起きる場合で、1割弱を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
給湯機器(石油・エコキュートなど)
石油給湯器・ガス給湯器・エコキュートなどの給湯機器。ウルトラファインバブル搭載機と価格改定で伸びている、会社の最大の柱。
| 数量給湯機器の出荷台数相当(万台。推定) | 価格1台あたり売上(万円。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 10.8 | 20 | 215 | 12 |
| 10 年後 中立 | 10.4 | 28 | 293 | 21 |
取り方:売上は 2025/12 期の製品分類別 215.39 億円。出荷台数は開示がないので、石油・ガス・エコキュートの混ざった平均売上を 1 台 20 万円(工事を含まない機器代の目安)と置いて 10.77 万台と推定した。会社は単一セグメントで利益は開示されないため、全社の営業利益 17 億円を給湯機器に 12 億円(5.6%)、空調に 6 億円、エンジニアリングに 2 億円、本社費・研究開発の調整を −3 億円と配分した推定。
空調機器(ヒートポンプ熱源機・全館空調・暖房)
ハウスメーカー向けヒートポンプ式熱源機、全館空調、石油ファンヒーターなどの暖房機器。天候で振れる。
| 数量空調機器の出荷台数相当(万台。推定) | 価格1台あたり売上(万円。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 23.4 | 8.00 | 187 | 6 |
| 10 年後 中立 | 23.8 | 11 | 255 | 13 |
取り方:売上は 2025/12 期の空調機器 186.85 億円(前期比 −0.5%)。暖房機器の安い台数とヒートポンプ熱源機の高い単価が混ざるので、平均 1 台 8 万円として 23.36 万台と推定した(開示なし)。利益は配分の推定で 6 億円(3.2%)。
エンジニアリング部門
集合住宅・施設向けの給湯・空調の設備工事。案件ごとの受注で、利益率は機器より高い。
| 数量施工案件数(百件。推定) | 価格1案件あたり売上(万円。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 13.0 | 202 | 26 | 2 |
| 10 年後 中立 | 13.0 | 271 | 35 | 2 |
取り方:売上は 2025/12 期の 26.32 億円(前期比 −1.2%)。年 1,300 件・1 件約 200 万円と推定した(開示なし)。利益は配分の推定で 2 億円(7.6%)。
システム機器・ソーラー機器ほか
システムバス、太陽光関連機器など。システムバスは低調で、会社の中でいちばん利益が薄い。
| 数量システムバス・ソーラー機器などの出荷セット相当(万セット。推定) | 価格1セットあたり売上(万円。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2.5 | 15 | 36 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2.3 | 20 | 44 | 1 |
取り方:システム機器 10.47 億円とソーラー機器・その他 25.98 億円の合計 36.45 億円。平均 14.6 万円・2.5 万セットと推定した(開示なし)。利益はほぼゼロと置いた推定。
リスクと懸念
運用資産が動かない
運用資産は約990億円で、時価総額を上回る。年3%ほどしか稼がず、資本コストとの差が毎年価値を削る。配当は年15億円規模で、自社株買いは2024年と2025年が0だった。還元が変わらなければ、10年かけて株主の取り分は目減りする。
製品補償の損失
2025年12月期に製品補償損失引当金を積み、純利益が3割減った。対象製品と総額は確かめられなかった。住宅設備は、一度不具合が出ると交換や点検の費用が重く、追加の損失が出るおそれがある。
ヒートポンプの値下げ競争
会社の計画は、ヒートポンプ市場の競争激化による利益率の低下を課題に挙げる。エコキュートや熱源機では、家電・空調の大手が強い。長府は規模で劣り、価格で押される場面が増えれば、空調と給湯の利益率が下がる。
石油機器の需要減
石油給湯器と暖房機器は、会社の高シェアの事業だが、人口減と脱炭素で台数が減る。高効率機への切り替えで単価は上がるものの、減る速さが想定を超えれば、固定費が重くなり利益が落ちる。
運用資産の値動き
政策保有株は上場21銘柄で約150億円あり、上位は地方銀行や運送会社などだ。株価が下がれば自己資本が減り、運用収益も落ちる。残りの運用資産の中身は確かめられておらず、その分の値動きも読めない。
新築着工と天候
給湯器の交換需要は安定しているが、新築向けは着工の減少に左右される。暖房機器は暖冬で売上が落ちる。省エネ基準の義務化や材料費の上昇で着工が細る局面では、全館空調やシステムバスの数量も伸びにくい。
素材と為替
原価の過半は素材で、銅・ステンレス・アルミ・樹脂を使う。値上がりを価格に転嫁するのが遅れると、その期の利益率は下がる。海外向けは輸出のため、為替の影響も受ける。この分析は150円で動かない前提だ。
今後の分かれ目
- 物言う株主が株主提案や面談で、還元の拡大を求めた場合
- 自社株買いや政策保有株の売却が現実味を帯び、強気の筋書きに近づく。会社が拒めば、これまでの姿が続く。
- 次の中期計画で、PBRの目標や政策保有株の売却方針が示された場合
- 資産が株主に届く道筋が見え、運用資産の価値を高く見積もれる。数字が入らなければ、変化は小さい。
- 営業利益率が計画どおり6%台へ上がった場合
- 本業の稼ぎが運用収益に並び、資本の効率が上がる。やや強気の筋書きが中心になる。
- 製品補償の損失が追加で出た場合
- 利益の質への疑いが強まり、営業利益の回復は遅れる。やや慎重の筋書きに寄る。
- ヒートポンプで大手が値下げに動いた場合
- 空調と給湯の利益率が下がり、営業利益は計画に届かない。会社の計画のうち、売上の伸びだけが残る。
- 政策保有株の評価額が大きく下がった場合
- 自己資本と運用収益が減る。ただ、本業の稼ぎは小さいので、会社の価値は資産の動きで大きく変わる。
見ておくもの
- 次の中期計画(2027年以降)での自社株買い・政策保有株の売却・PBR目標の記載
- Be Braveなど大量保有報告書の提出と、株主総会での提案
- 営業利益と営業外収益の内訳(運用資産の中身と収益率の開示)
- 製品補償損失の対象製品と、追加の引当の有無
- エコキュートと全館空調の販売台数、ヒートポンプ熱源機の海外出荷
- 石油機器の出荷台数と、原材料費の転嫁(価格改定の頻度)
倍率と資本コストの決め方
今の株価や倍率から逆算せず、セグメントの数量と価格、利益率から営業利益を積み、運用収益(運用資産×2.8%)を足して純利益を出した。事業は ROE が資本コスト以下なので、倍率は 1÷k の12.1倍を上限に、利益の質で上限の約7〜9割に置いた。余った現金は、自己資本から事業に要る資本を引いた約987億円(有価証券(流動)87億円を足した)とし、戻り方は0.5にした。投資有価証券921億円の内訳は確かめられておらず、この点が最大の不確かさである。リース会計の影響は小さい。10年後の数字は、今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→13.9 倍・やや楽観 PER 10.8→13.33 倍・中立 PER 10.3→12.34 倍・やや悲観 PER 9.5→10.61 倍)。 2026-10-22:余り資産を R4 の holdings・rental に移したので、時価総額を式で出し直した(楽観〜中立の PER は新しい上限に置き直し、ほかは倍率そのまま:楽観 1243.2 → 1126.0(PER 13.33 倍)・やや楽観 1146.7 → 1053.2(PER 13.33 倍)・中立 1146.5 → 1080.8(PER 13.33 倍)・やや悲観 731.7 → 656.8(PER 10.61 倍)・悲観 370.9 → 319.2(PER 9 倍))。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本7.5%に quality +0.75% を足した8.25%(β・規模は使わない)。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.50%。