結論
J-MAX は、自動車の車体まわりの金属プレス部品を作る中堅だ。売上は 519 億円、営業利益は 19 億円。旧社名は丸順で、ホンダとその関係先が売上の約半分を占める。筆者の結論は、今の値段は妥当か、やや高いということだ。
稼ぎの軸は、日本とタイ、中国の 3 拠点に分かれる。売上の半分超が中国で、広汽ホンダと東風ホンダ向けが合わせて 2 割、電池大手の寧徳時代(CATL)向けが 1 割強ある。ホンダ向けは細り、電池と中国の新興メーカー向けが伸びる入れ替わりが起きている。
問題は借金だ。純有利子負債は 161 億円で時価総額の 2 倍を超え、自己資本比率は 31%。営業利益は支払利息の 3 倍弱しかない。借り換えで金利が上がると、利益がさらに削られる。
10 年後の中立では、ホンダ中国向けが 6 割に減り、中資系向けが 2 倍に伸びる。営業利益は 32 億円まで増える。それでも借金の利息を引くと、純利益は 16 億円で ROE は 5% 台にとどまる。
資産の安全域は借金に食われて薄い。悪い筋書きでは、金利と値下げ、ホンダ中国の失速が同時に来て、株主の取り分はほとんど残らない。確率で重みづけした総合は 2 割弱の割高になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、これは「借金で運転している、客先に値段を握られた会社」と映る。強い堀は見えない。時価総額が自己資本の 4 割弱でも、安さの理由は説明がつく。
まず、資本の使い方だ。営業利益を超える設備投資を続け、借金は 235 億円ある。利益は伸びても、利息と投資に消える。株主に残るオーナー利益は、まだ小さい。
次に、事業の寿命だ。車体プレスは EV 化でも残る点は良い。だが客先の集中が高く、ホンダの中国失速が直撃する。中国の新しい客先は成長しているが、価格競争が激しく、利益率の高さは続きにくい。
一方、改善の兆しは本物だ。構造改革で固定費を落とし、赤字だった中国は黒字になった。営業利益は前年のほぼゼロから 19 億円まで回復した。この勢いが続けば、価値は増える。
だから筆者は、確信度を低めに置く。借金が重い会社は、先が少し外れただけで株主の取り分が大きく変わる。安全域は、価格が資産の 4 割弱でも、借金で削られてしまう。
何で稼ぐ会社か
J-MAX は、自動車用の車体プレス部品、電動化プレス部品、精密プレス部品を作る。ほかにプレス用の金型、溶接治具、検査具も作って売る。冷間プレスという、熱を使わずに超高張力鋼板(超ハイテン材)を成形する技術が武器だ。熱間のホットスタンプより、製造時の CO2 を約 3 割減らせると会社は説明する。
拠点は日本、タイ、中国の 3 区分で、2026 年 3 月期から区分を変えた。売上は日本が約 194 億円、タイが約 60 億円、中国が約 269 億円。中国が全体の半分超を占め、海外売上比率は 62.6% に上る。連結従業員は約 1,080 人で、うち中国が約 560 人だ。
顧客の集中は強い。東プレ 16.2%、寧徳時代(CATL)13.1%、広汽ホンダ 11.4%、東風ホンダ 9.1%。ホンダ本体と関係会社への売上依存度は 49.8% である。東プレは議決権の 20.6% を持つ「その他の関係会社」だが、支配株主ではなく、顧客の一社という位置づけが近い。
日本では 2025 年に岡山工場が稼働し、日産ルークスと三菱デリカミニという軽自動車の部品を過去最多の点数で受注した。タイは国内外向けの自動車部品と汎用エンジン部品を作る。
中国は、ホンダの減産で苦しむ一方、CATL をはじめ吉利 LOTUS、小鵬汽車など中資系の電動車向けを増やしている。会社は、中国のプレス部品売上に占める中資系の比率が約 4 割まで高まると説明する。
なお、本稿の依頼文にあった「マツダ系」は、有報の顧客一覧にマツダの名は無く、当たらない。ホンダ系である。
優良さと弱いところ
優良さは低めに見る。技術はあるが、価格を決める力は弱い。車体プレスは客先が図面と価格を握り、毎年の値下げ要請が続く。営業利益率は 2021 年 3 月期の 10.0% から 2025 年 3 月期の 0.0% まで振れ、直近は 3.6% だ。
財務の脆さが最大の弱点である。借入は短期 114 億円、1 年内返済の長期 25 億円、社債 25 億円、長期 71 億円で、合計は 235 億円。タームローンには財務制限条項があり、2 期連続の経常赤字と、純資産の 75% 割れが禁じられている。2025 年 3 月期に純損失が 33 億円出た会社には、軽くない条件だ。
救いは、構造改革の効果が出てきたことだ。2023〜2024 年度に中国で人員と生産能力を絞り、タイでも金型事業を縮めた。北米のインディアナ子会社は清算した。中国の営業利益は前期の赤字から黒字に戻った。
集中の高さも弱点になる。ホンダの中国生産は 2025 年に 68 万台で、能力 120 万台の 6 割に届かなかった。ホンダ向けが売上の半分である以上、客先の失速がそのまま利益に出る。
経営は電動化サプライヤーへの転換を掲げ、5 か年計画「J-VISION 30」を進める。ただし目標への到達は、当初より約 3 年遅れる見通しだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
自動車の車体部品は、完成車の生産台数と、1 台あたりの使用部品金額で決まる。車体は EV になっても残る。むしろ電池を守る構造部品が増え、超高張力鋼板の需要は強い。EV 化でも、車体プレスは内燃機関の部品ほど縮まない。
中国は、世界でいちばん急速に変わる市場だ。EV と PHEV が新車の過半を占め、日系のシェアは縮小している。ホンダの中国合弁 2 社は、年 120 万台の能力に対し 2025 年の生産は 68 万台。稼働率は 6 割を割る。
代わりに、中資系の自動車メーカーと電池メーカーが部品を求める。CATL は 2020 年度から取引が始まり、売上の 13% まで育った。ただし中国の部品価格は競争が激しく、値下げは物価を超えて進む。中資系向けは数量が伸びても、価格は物価並みには上がらない。
日本は、軽自動車と主要客先向けの部品で横ばいを見込む。人口減で国内の新車は緩やかに減るが、岡山工場の新機種で当面は支えられる。
競争は日系の同業(ジーテクト、エイチワン、東プレなど)と、中国の現地プレスメーカーだ。鋼板価格の転嫁は遅れがちで、利益を振らせる。
分かれ目は、ホンダ中国向けの減りを、電池と中資系の増加が上回り続けるかである。
資本政策と M&A
資本政策は守りだ。配当性向 20% を基準とし、直近の配当性向は 1 割台。成長投資と構造改革で自己資本比率が下がったと会社自身が説明し、財務の安定を優先する。自社株買いの余力はない。
現預金は半期末で約 60 億円あり、借入は 235 億円。余った現金はなく、純有利子負債は 161 億円だ。金利が上がる局面では、利払いが利益を削る。借り換えで 10 年後に年 4 億円ほど利益が減ると見る。
投資は重い。直近の設備投資は 43 億円で、中国の新工場と電動化部品の新ラインに 39 億円を使った。減価償却を上回る投資が続けば、借金は減りにくい。
M&A では、売る側の動きが目立つ。北米の子会社を清算した。買う側の余力は乏しい。東プレが 2 割を持つ関係で、資本提携や再編の可能性は残るが、規模の小さい J-MAX が単独で攻める局面ではない。
財務制限条項は、2 期連続の経常赤字と純資産の 75% 割れを禁じる。抵触すれば借入の条件が変わる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
構造改革の効果が出て、営業利益は前年のほぼゼロから 19 億円に戻った。次期予想は 24 億円、その先の中期計画は 5% の利益率を目指す。中国は赤字から黒字に変わった。
成長の軸も具体的だ。CATL との取引は 2020 年度の開始から売上の 13% まで育ち、吉利 LOTUS や小鵬汽車の受注も加わった。電動化部品は冷間プレスの強みが効く。中国の中資系比率は 4 割に高まる。
ホンダ依存は、むしろ緩んでいく。ホンダ中国向けが減る一方、日産ルークスや三菱デリカミニなど日本の新機種が岡山工場で立ち上がった。受注点数は過去最多だ。
財務も改善する方向にある。営業キャッシュフローは半期で 29 億円、フリーキャッシュフローは 15 億円の黒字だ。設備投資のピークは過ぎ、借金を減らして利息を落とせる。時価総額が自己資本の 4 割弱の会社は、利益が戻れば再評価の余地が大きい。
株主構成も追い風になりうる。東プレが 2 割を持ち、同業再編の受け皿になる可能性がある。借金を抱えていても、事業が回復して信用力が上がれば、借り換え条件は改善に向かう。
慎重な見方
売上の半分がホンダ向けで、そのホンダの中国生産は能力の 6 割に届かない。広汽ホンダと東風ホンダ向けは売上の 2 割を占め、さらに減る。ホンダが世界で電動化戦略を見直す中、この依存は構造的な弱点だ。
借金が重い。純有利子負債は時価総額の 2 倍、営業利益は支払利息の 3 倍弱だ。借り換えで金利が上がれば、利益は年に数億円削られる。財務制限条項は、2 期連続の経常赤字を許さない。
CATL 向けの成長は、価格競争と集中の裏返しだ。中国の電池・EV メーカーは値下げ要請が厳しく、取引を絞られることもある。13% の顧客が失われれば、新工場への投資は回収できない。
過去 10 年で純損失の期は 3 回あった。2025 年 3 月期は 33 億円の赤字だ。回復が見えたからといって、構造改革が一度で終わった保証はない。電動化部品の利益率が続くかどうかも、まだ検証されていない。
日本の工場は稼働が一部の主要客先に偏り、軽自動車の新機種が終われば、数量が一気に落ちる。人手の確保と賃上げの負担も、プレス加工の現場では重い。
どちらに重みを置いたか
構造改革の効果と電池向けの成長は本物だが、借金の重さとホンダ中国の失速は構造的で、同じ重みを持つ。金利が上がる世界では、借金が利益を食う度合いが強まる。そのため確率は悪い側へ寄せ、悲観を 16% と重く置いた。楽観は、中資系向けが 2.8 倍に伸びる筋書きに限られるので 6% にとどめた。中立でも、利払いと投資を引いた株主の取り分は小さい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,297 円149 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 202 円23 億円)。 今の値に割り戻すと 679 円78 億円、今との差 +10.3%、 期待の年率 +9.3%(資本コスト 9.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 3,353 円385 億円 | 467 円54 億円 | +520.1% | +20.0% | 229 円26 億円 |
| やや楽観 | 17% | 2,322 円267 億円 | 315 円36 億円 | +328.2% | +15.7% | 448 円51 億円 |
| 中立 | 33% | 1,549 円178 億円 | 239 円27 億円 | +190.2% | +11.2% | 590 円68 億円 |
| やや悲観 | 28% | 589 円68 億円 | 130 円15 億円 | +16.7% | +1.6% | 201 円23 億円 |
| 悲観 | 16% | 157 円18 億円 | 35 円4 億円 | −68.9% | −11.0% | 31 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,297 円149 億円 | 202 円23 億円 | +143.4% | +9.3% | 1,499 円172 億円 |
今の株価時価総額 616 円71 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:ホンダ中国は持ちこたえ、中資系向けが 3 倍近くに伸びる 利益 34 億円 · PER 11.3 倍 · 株価時価総額 3,353 円385 億円
ホンダの中国向けは今の 85% を保ち、中資系向けは CATL を軸に 2.8 倍に伸びる。冷間プレスの電動化部品が評価され、吉利や小鵬の受注が積み上がる。日本は岡山工場の新機種で堅調だ。
営業利益は 57 億円、利益率は 6.5% に上がる。借金は返済が進んで利息が軽くなり、純利益は 34 億円に達する。
自己資本は 370 億円ほどに増え、ROE は 9% になる。配当性向は 25% に上がり、財務が安定した会社として再評価される。ただし、中国で値下げ圧力を抑えながら、この速度で伸びる前提は重い。
- 日本(車体プレス部品・金型):数量 125(搭載車両台数換算(万台))× 価格 21,700(1 台あたり納入額(円))→ 売上 271 億円・営業利益 10 億円。岡山の新機種が寄与
- タイ(自動車部品・汎用エンジン部品):数量 44.0(搭載車両台数換算(万台))× 価格 19,960(1 台あたり納入額(円))→ 売上 88 億円・営業利益 5 億円。要員適正化の効果が定着
- 中国・日系向け(ホンダ中心):数量 85.0(搭載車両台数換算(万台))× 価格 19,200(1 台あたり納入額(円))→ 売上 163 億円・営業利益 7 億円。85% を保つ
- 中国・中資系向け(電池・新興メーカー):数量 196(搭載車両台数換算(万台))× 価格 18,680(1 台あたり納入額(円))→ 売上 366 億円・営業利益 37 億円。中資系が 2.8 倍
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.6% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.3 倍。全体の PER 11.32 倍、時価総額 385 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中資系向けが 2.8 倍に伸び、利益率も 10% を保つ必要がある。価格競争を考えると条件が重いので 6% にとどめた。
やや楽観 17% やや楽観:ホンダ中国は 7 割に減るが、中資系向けが 2.4 倍に伸びる 利益 24 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 2,322 円267 億円
ホンダの中国向けは 7 割に減るが、中資系向けが 2.4 倍に伸び、中国全体の売上は今より増える。日本とタイは物価並みに価格が上がり、利益率も緩やかに上向く。
営業利益は 43 億円、利益率は 5.5% 前後。借金は少しずつ減り、利息は今より少し重い 7 億円ほどで収まる。純利益は 24 億円になる。
投資のピークが過ぎて営業キャッシュフローが借金返済に回り、財務制限条項への不安は薄れる。配当性向は 2 割台前半で、配当は今の 3 倍に増える。
日本と中国で、新機種の部品点数が積み上がる。会社が目標とする 5% の営業利益率に、手が届く水準である。
- 日本(車体プレス部品・金型):数量 118(搭載車両台数換算(万台))× 価格 21,380(1 台あたり納入額(円))→ 売上 252 億円・営業利益 8 億円。新機種で堅調
- タイ(自動車部品・汎用エンジン部品):数量 43.0(搭載車両台数換算(万台))× 価格 19,370(1 台あたり納入額(円))→ 売上 83 億円・営業利益 4 億円。緩やかに上向く
- 中国・日系向け(ホンダ中心):数量 72.0(搭載車両台数換算(万台))× 価格 18,720(1 台あたり納入額(円))→ 売上 135 億円・営業利益 4 億円。7 割に減る
- 中国・中資系向け(電池・新興メーカー):数量 168(搭載車両台数換算(万台))× 価格 18,220(1 台あたり納入額(円))→ 売上 306 億円・営業利益 28 億円。中資系が 2.4 倍
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 267 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電池・中資系向けの伸びがホンダ中国の減りを十分に埋める筋書き。構造改革の効果が出ている現状からありうるので 17%。
中立 33% 中立:ホンダ中国は 6 割に減り、中資系向けが 2 倍に伸びて利益は倍増 利益 16 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,549 円178 億円
ホンダの中国向けは 10 年で 6 割に減る。中資系向けは CATL の増産と新興メーカーの開拓で 2 倍に伸びる。日本は岡山工場の新機種で数量を保ち、タイは緩やかに伸びる。
中国の価格は競争で物価を下回る 1.15 倍にとどまる。営業利益は 32 億円、利益率は 4.7% だ。借り換えで金利が上がり、利払いは 7〜8 億円に増える。
純利益は 16 億円。今の 9 億円からほぼ倍増するが、名目の売上が 1.3 倍に膨らむ世界での話で、実質の成長は小さい。配当性向は 2 割程度で、増配は緩やかだ。
- 日本(車体プレス部品・金型):数量 115(搭載車両台数換算(万台))× 価格 21,060(1 台あたり納入額(円))→ 売上 242 億円・営業利益 6 億円。数量はほぼ維持
- タイ(自動車部品・汎用エンジン部品):数量 42.0(搭載車両台数換算(万台))× 価格 19,370(1 台あたり納入額(円))→ 売上 81 億円・営業利益 3 億円。緩やかに伸びる
- 中国・日系向け(ホンダ中心):数量 60.0(搭載車両台数換算(万台))× 価格 18,400(1 台あたり納入額(円))→ 売上 110 億円・営業利益 3 億円。6 割に減る
- 中国・中資系向け(電池・新興メーカー):数量 140(搭載車両台数換算(万台))× 価格 17,900(1 台あたり納入額(円))→ 売上 251 億円・営業利益 20 億円。中資系が 2 倍
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 178 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ホンダ中国の縮みと中資系の伸びが拮抗する筋書き。借金の重さは変わらず、もっとも重みを置く筋書きで 33%。
やや悲観 28% やや悲観:ホンダ中国は 4 割に細り、価格競争と利払いで利益が残らない 利益 6 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 589 円68 億円
ホンダの中国向けは 4 割まで減り、中資系向けも 1.4 倍にとどまる。中国の価格競争が激しく、価格は物価の 3 分の 1 程度しか上がらない。日本とタイは数量を落とす。
営業利益は 18 億円と今とほぼ同じだ。借り換えで利払いは 8〜9 億円に増え、経常利益は薄くなる。純利益は 6 億円ほどだ。
配当は最低限で、借金の返済は進まない。財務制限条項への警戒が続き、投資の抑制を迫られる。
新工場の稼働が遅れ、減価償却だけが先に膨らむ。構造改革の第 2 弾を迫られ、特別損失がたびたび出る。それでも赤字には沈まず、配当を細く出し続けるのがやっとの水準だ。
- 日本(車体プレス部品・金型):数量 105(搭載車両台数換算(万台))× 価格 20,250(1 台あたり納入額(円))→ 売上 213 億円・営業利益 4 億円。数量が 1 割減
- タイ(自動車部品・汎用エンジン部品):数量 38.0(搭載車両台数換算(万台))× 価格 18,625(1 台あたり納入額(円))→ 売上 71 億円・営業利益 2 億円。競争で利益率が低下
- 中国・日系向け(ホンダ中心):数量 40.0(搭載車両台数換算(万台))× 価格 17,600(1 台あたり納入額(円))→ 売上 70 億円・営業利益 1 億円。4 割に細る
- 中国・中資系向け(電池・新興メーカー):数量 100(搭載車両台数換算(万台))× 価格 17,130(1 台あたり納入額(円))→ 売上 171 億円・営業利益 11 億円。中資系が 1.4 倍
倍率:PER 6.5 倍。利益が小さく ROE は 2〜3% 台。構造的な負けに近づく筋書きなので、上限の 7 割を超えて引き上げない。
確率:借金が重く、金利と値下げ、ホンダ中国の失速が重なる筋書き。実績の振れ幅と財務の弱さから 28% と厚く置いた。
悲観 16% 悲観:ホンダ中国が崩れ、価格競争と金利で赤字、借入条件も悪化 利益 −8 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 157 円18 億円
ホンダの中国向けは 25% まで崩れ、中資系向けも価格競争と顧客の淘汰で伸びきらない。日本とタイも利益が出ない。固定費の重い工場を抱え、営業利益は 3 億円に落ちる。
利払いは 8 億円を超えて経常赤字になり、純損失は 8 億円。財務制限条項に抵触して借入条件が悪化し、追加の資金や資産売却を迫られる。
自己資本は減損で今より 40 億円ほど減り、株主に残る取り分は工場や土地などの処分価値で測られる。構造的に収益力を失った専業部品メーカーの姿である。
配当は止まり、自社株買いや投資の余力は消える。東プレや取引銀行が支援する場合でも、既存株主の取り分は大きく削られる。
- 日本(車体プレス部品・金型):数量 95.0(搭載車両台数換算(万台))× 価格 18,630(1 台あたり納入額(円))→ 売上 177 億円・営業利益 0 億円。固定費を吸収できない
- タイ(自動車部品・汎用エンジン部品):数量 34.0(搭載車両台数換算(万台))× 価格 17,135(1 台あたり納入額(円))→ 売上 58 億円・営業利益 0 億円。赤字すれすれ
- 中国・日系向け(ホンダ中心):数量 25.0(搭載車両台数換算(万台))× 価格 16,800(1 台あたり納入額(円))→ 売上 42 億円・営業利益 −1 億円。4 分の 1 に崩れる
- 中国・中資系向け(電池・新興メーカー):数量 70.0(搭載車両台数換算(万台))× 価格 16,350(1 台あたり納入額(円))→ 売上 115 億円・営業利益 3 億円。成長が止まる
倍率:PBR 0.09 倍を今の自己資本に掛けた約 18 億円。赤字で稼ぐ力はなく、床は工場・土地・売掛金から有利子負債を返した後に株主に残る分。EV÷営業利益は 69 倍だが、利益がほぼ無い局面のため意味を持たない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.094 倍・時価総額 18 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:構造的に負ける筋書き。借金が重い会社で、金利・客先・価格の 3 つが同時に悪化する。起こりうる範囲として 16% と置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本(車体プレス部品・金型)
ホンダ・日産・三菱向けの車体プレス部品と、金型・溶接治具・検査具。岡山工場が新機種で立ち上がった。
| 数量搭載車両台数換算(万台) | 価格1 台あたり納入額(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 16,200 | 194 | 3 |
| 10 年後 中立 | 115 | 21,060 | 242 | 6 |
取り方:有報の日本セグメント売上 194 億円。搭載車両台数換算 120 万台、1 台あたり 1.62 万円は推定(金型売上を含む)。営業利益は日本の経常 6 億円が子会社配当を含むとみて、2.5 億円(利益率 1.3%)と推定した。
タイ(自動車部品・汎用エンジン部品)
国内外向けの自動車部品と汎用エンジン部品。要員適正化と金型事業の圧縮が済んだ。
| 数量搭載車両台数換算(万台) | 価格1 台あたり納入額(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 14,900 | 60 | 2 |
| 10 年後 中立 | 42.0 | 19,370 | 81 | 3 |
取り方:有報のタイセグメント売上 59.7 億円。台数換算 40 万台、1 台 1.49 万円は推定。営業利益は経常 0.75 億円と中間期の営業利益 1.45 億円から年 2 億円と推定(利益率 3.4%)。
中国・日系向け(ホンダ中心)
広汽ホンダ・東風ホンダなど日系合弁向けの車体プレス部品。ホンダの中国減産で細っている。
| 数量搭載車両台数換算(万台) | 価格1 台あたり納入額(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 16,000 | 160 | 3 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 18,400 | 110 | 3 |
取り方:中国セグメント売上 269 億円のうち、広汽ホンダ 59 億円・東風ホンダ 47 億円とその他日系を合わせて約 160 億円と推定。台数換算 100 万台、1 台 1.6 万円。営業利益は 2% と推定(中国全体で 14 億円の営業利益を中資系向けとの 2 区分に割り振った推定)。
中国・中資系向け(電池・新興メーカー)
CATL をはじめ吉利 LOTUS・小鵬汽車などの電動化部品。成長している側。
| 数量搭載車両台数換算(万台) | 価格1 台あたり納入額(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 70.0 | 15,570 | 109 | 11 |
| 10 年後 中立 | 140 | 17,900 | 251 | 20 |
取り方:中国セグメント売上 269 億円から日系向けを引いた約 109 億円(CATL 68 億円を含む)と推定。台数換算 70 万台は電池ケース等を車両換算した推定。営業利益 10.9 億円(利益率 10%)は、全社の営業利益 18.6 億円と他区分から逆算した推定で、確度は高くない。
リスクと懸念
ホンダ中国の失速
ホンダ本体と関係会社への依存は 49.8%、広汽ホンダと東風ホンダだけで 2 割。ホンダの中国生産は能力の 6 割に届かず、さらに減れば固定費を吸収できなくなる。
重い借金と金利
有利子負債は 235 億円、純有利子負債は 161 億円。借り換えで金利が上がれば、10 年後に利益が年 4 億円ほど削られる。営業利益は支払利息の 3 倍弱しかない。
財務制限条項
タームローンには、2 期連続の経常赤字禁止と純資産 75% 維持の条項がある。2025 年 3 月期に 33 億円の純損失を出した実績があり、再び赤字になれば借入条件に響く。
CATL への集中
CATL 向けは売上の 13.1%。中国の電池・EV メーカーは値下げ要請が強く、取引を絞られれば新工場の投資が回収できなくなる。
中国の価格競争
中資系向けは数量が伸びても、部品価格は物価並みに上がらない。EV 市場の淘汰で顧客が経営不振に陥れば、売掛金の回収にも影響する。
設備投資の負担
減価償却を上回る投資が続き、岡山と福建の新工場の稼働が遅れれば、フリーキャッシュフローが細る。借金の返済が進みにくくなる。
今後の分かれ目
- 中国の営業利益が 2 年続けて 10 億円を超える
- 電池・中資系向けの利益率が定着したと見て、中立の中国の利益率を上方に直す。
- ホンダの中国生産が 2027 年に 50 万台を割る
- 日系向けの縮みが速いとみて、やや悲観・悲観の重みを増やす。
- 有利子負債が 200 億円を割り、利払いが営業利益の 3 分の 1 未満になる
- 借金の重さの分だけ k の quality を下げ、中立の倍率を上げる余地が出る。
- 2 期連続で経常損失に近づく
- 財務制限条項の抵触を警戒し、悲観の確率を引き上げる。
- 東プレなど大株主が資本提携や買い増しを発表する
- 時価総額が自己資本の 4 割弱のため上振れ余地が大きい。ただし債務の扱い次第で取り分が変わる。
見ておくもの
- 中国セグメントの営業利益と、ホンダ中国向けの売上
- CATL 向け売上の動きと新工場の稼働率
- 有利子負債と、営業利益の支払利息に対する倍数
- 財務制限条項の抵触余地(経常損益と純資産)
- 岡山工場の新機種の受注点数
- 中期経営計画 J-VISION 30 の進み具合
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。ROE が k 未満なので PER の上限は 1÷k の約 10.3 倍で、中立はその約 7 割強。今の株価や同業の PER は使っていない。借金が重いため EV÷営業利益も見て、中立で 12 倍前後と過大でないことを確かめた。新リース会計基準は工場を賃借する比率が低く影響は小さいとみて、10 年後の数字は今と同じ形で置いた。依頼文の「マツダ系」は有報で確認できず、ホンダ系として書いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8.5→11.32 倍・やや楽観 PER 7.8→11.11 倍・中立 PER 7.4→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +2.2% を足して 9.7%。借金と客先集中は quality で表し、個別リスクを k にさらに足していない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.70% → 9.00%。