結論
ロブテックスは、エビ印の名前でプライヤやモンキーレンチ、リベットを打つ工具を作る大阪の工具メーカーだ。筆者の結論は割高寄りである。ブランドと販路はあるが、営業利益率は 3% まで落ち、自己資本利益率(ROE)は 2〜3% と資本コストの 3 分の 1 にも届かない。
2026 年 3 月期の売上は 57 億円で横ばい、営業利益は 1.8 億円だった。韓国向けのプライヤが落ち込み、新しいシリーズの立ち上げと在庫の評価の費用が利益を削った。利益の 6 割強を、ゴルフ練習場が稼いでいるのが実情だ。
筆者は、10 年後の営業利益を 5 億円弱と見る。省人化のためのリベットの自動機とファスナーは伸びるが、国内の職人は減り、工具の数量は横ばいがやっとだ。ROE は 5% 前後にとどまる。今の値段は、利益率が 2018 年ごろの 9% 台に戻る姿を、ある程度先取りしている。
財務は堅く、借金で傾く心配は小さい。問題は倒れることではなく、資本を抱えたまま稼がないことだ。配当は性向 5 割弱で据え置かれ、自社株買いもない。筆者は、本業の利益率が戻る兆しを確かめてから評価を見直す。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ロブテックスは「名前の通った道具屋が、稼ぐ力を失いかけている」会社だ。エビ印の工具は職人に知られ、リベットの自動機には工場の省人化という追い風もある。財務も健全で、借金に追われる心配はない。
しかし、資本に対する稼ぎが足りない。自己資本 50 億円に対して純利益は 1 億円強で、ROE は 2〜3% しかない。株主が求める 8% 台の資本コストを大きく下回り、毎年の利益を内部に貯めても、価値はほとんど増えない。しかも全社の利益の 6 割は、本業ではなくゴルフ練習場が出している。
PBR は 0.45 倍で安く見えるが、ROE がこの水準なら帳簿の値段は払いすぎになる。利益率が 6% 以上に戻る姿が 2〜3 年続いて見えるまで、筆者は待つ。
それまでは、帳簿の値段より安くても、急いで買う理由は乏しい。
何で稼ぐ会社か
ロブテックスの事業は 2 つある。金属製品と、ゴルフ練習場だ。
金属製品は売上の 96% を占める。中身は大きく 3 つに分かれる。1 つめは手で使う工具で、プライヤ、ニッパ、モンキーレンチ、圧着工具などだ。エビ印の名前は、電気工事や設備の職人の間で長く知られている。2025 年からは新しいシリーズの J-CRAFT99 を売り込み、国内外で取扱店を増やしている。生産の中心は子会社の鳥取ロブスターツールだ。
2 つめはファスニングで、リベットを打つ工具と自動機、リベットやコンストラクションファスナーを売る。工場の省人化の流れで、自動機とシステムの案件が増えている。2024 年に専門商社のロブテックスファスニングシステムを完全子会社にした。3 つめは電設工具と切削工具だ。
販路は工具の問屋とホームセンター、そして海外の代理店だ。海外では韓国の比重が大きく、その市況が利益を揺らす。
レジャー事業はゴルフ練習場の運営で、売上は 2.4 億円と小さいが、営業利益は 1.1 億円あり、全社の利益の 6 割を占める。
優良さと弱いところ
強みは、エビ印の名前と販路だ。プライヤやリベットの工具は、職人が手に馴染んだ道具を使い続ける商品で、ブランドが一度定着すると簡単には替わらない。リベットの自動機は、客の工場の生産ラインに組み込まれ、保守と部品の注文も続く。
弱さは利益率の低さだ。営業利益率は 2015 年の 10% から、いまは 3% に落ちた。KTC やトネのような車の整備向けの強いブランドと、中国や台湾の安い工具に挟まれ、値上げが通りにくい。金属製品の事業そのものの利益率は 1% 強しかなく、ゴルフ練習場が全社を支えている。
財務は堅い。自己資本比率は 59% で、純負債は 6〜8 億円と小さい。ただし規模が小さく、研究開発と販路の開拓に回せるお金は限られる。
同業と比べると差がはっきりする。KTC は車の整備の職人向けの高いブランドで営業利益率 10% 前後、スーパーツールは利益率 10% を超える年もある。ロブテックスは、その半分にも届かない。手工具の品ぞろえは広いが、どの分野でも一番手ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
作業工具の国内市場は成熟している。プライヤやレンチを使う電気工事、設備、自動車整備の職人は、高齢化と人手不足で少しずつ減る。一方で、1 人あたりの道具の質へのこだわりは強く、高めの国内ブランドの工具は根強く売れる。ホームセンターとネット通販では、安い輸入品との値段の比べ合いが激しい。
伸びている所もある。工場や建設の現場の省人化で、リベットを自動で打つ機械や、建物の部材をつなぐファスナーの需要が増えている。電気工事は、データセンターや再生可能エネルギーの設備投資で底堅い。
海外は、韓国や東南アジアの代理店を通じて売る。韓国の建設と製造の市況が冷えると、すぐに数量が落ちる。円安は輸出の追い風だが、原材料の鋼材とエネルギーの値上がりは原価を押し上げる。
筆者は、10 年で手工具の数量は 1 割減り、ファスニングは 2〜3 割増え、合わせて会社の数量は横ばいからわずかに増えると見る。値段は物価並みに上がる前提を置いた。
国内の手工具の大手は KTC、トネ、ロブテックス、フジ矢などで、どこも規模は大きくない。再編が起きれば、販路を持つ中堅は買われる側に回りうる。
資本政策と M&A
還元は配当だけだ。1 株あたりの配当は据え置きで、総額は年 0.56 億円、配当性向は 46% になる。自社株買いはここ数年ない。2022 年には株主優待を始め、100 株以上の株主に少額の QUO カードを年 1 回贈る。費用は小さく、価値の計算への影響は 1 ポイントに満たない。
借入は短期と長期を合わせて約 25 億円で、現預金 20 億円とほぼ見合う。純負債は 6〜8 億円で、ここ 2 年は長期借入を返して減らしてきた。投資有価証券を 7.5 億円持ち、含み益は 3 億円ほどある。取引先との持ち合いとみられ、売って還元に回す姿勢は見えない。
M&A は、2024 年にファスナーの専門商社の残りの株を買い、完全子会社にした程度だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利益率は底だ。2026 年 3 月期の金属製品の利益は、新しいシリーズの立ち上げと在庫の評価という一時の費用で削られた。J-CRAFT99 の取扱店は国内外で増えており、立ち上げの費用が消えれば利益率は戻る。2015〜2018 年には 9〜10% の営業利益率を出していた会社だ。
ファスニングには構造的な追い風がある。工場と建設の現場は人が足りず、リベットを自動で打つ機械とシステムの案件が増えている。2024 年に専門商社を完全子会社にし、販路の強化にも手を打った。
財務は堅く、純負債は小さい。利益率が 6% に戻るだけで営業利益は今の 2.5 倍になり、自己資本の 0.45 倍の値段は安すぎる。ゴルフ練習場と投資有価証券という手堅い資産もある。
小さな会社なので、利益率が少し動くだけで株主の取り分は大きく変わる。下値は資産が支える。電設工具も、データセンターと再生可能エネルギーの工事で底堅い。
慎重な見方
利益率の低下は一時のものではない。営業利益率は 2015 年の 10% から、ほぼ毎年下がってきた。値上げが通らず、中国や台湾の工具が安さで、KTC やトネが品質で攻める。中堅の工具メーカーは、その間に挟まれている。
本業の稼ぐ力はもっと弱い。金属製品の営業利益は 0.7 億円、利益率 1.2% しかなく、全社の利益の 6 割はゴルフ練習場が出す。工具の会社として見ると、ほとんど利益を出していない。
国内の職人は減り続け、韓国の市況は読めない。会社の 2027 年 3 月期の予想も横ばいで、回復の道筋は示されていない。ROE は 2〜3% で、資本コストを大きく下回る。株主の資本を年々薄めながら抱え込んでいる会社に、帳簿の半分の値段は安くない。
ゴルフ練習場の利益に頼る構造は、本業の弱さを覆い隠しているにすぎない。
在庫は売上の 4 割近くあり、売れ残れば評価損がまた利益を削る。小さな会社の研究開発では、品ぞろえの広さを保つのがやっとだ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。ファスニングの追い風と財務の堅さは認めるが、本業の利益率は 10 年かけて下がってきた構造の話で、一時の費用だけでは説明できない。確率は中立を厚くし、利益率 8% への回帰は楽観側に小さく置いた。財務が堅いので、悲観は 1 割にとどめた。ゴルフ練習場の利益は 10 年でほぼ横ばいと置き、本業の回復の度合いで筋書きを分けた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,724 円32 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 449 円8 億円)。 今の値に割り戻すと 1,083 円20 億円、今との差 −8.6%、 期待の年率 +6.3%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,572 円67 億円 | 696 円13 億円 | +260.2% | +13.7% | 299 円6 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,597 円49 億円 | 589 円11 億円 | +168.9% | +10.4% | 637 円12 億円 |
| 中立 | 40% | 1,949 円36 億円 | 482 円9 億円 | +105.2% | +7.5% | 973 円18 億円 |
| やや悲観 | 23% | 600 円11 億円 | 321 円6 億円 | −22.3% | −2.5% | 212 円4 億円 |
| 悲観 | 10% | 370 円7 億円 | 161 円3 億円 | −55.3% | −7.7% | 53 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,724 円32 億円 | 449 円8 億円 | +83.4% | +6.3% | 2,173 円41 億円 |
今の株価時価総額 1,185 円22 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 新しいシリーズとリベットの自動機が育ち、利益率が 2018 年の水準に戻る 利益 6 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 3,572 円67 億円
J-CRAFT99 が国内外の取扱店に定着し、エビ印の名前で値上げも通る筋書きだ。工場と建設の省人化でリベットの自動機とシステムの案件が増え、ファスナーの数量は 3 割以上伸びる。手工具の数量の減りを補い、金属製品の数量は 15% 増える。
値段は物価をやや上回り、新しい工場の設備で原価も下がる。金属製品の利益率は 8% に戻り、全社の営業利益は 9 億円に近づく。ROE は 8% 弱で、資本コストにほぼ届く。配当も増え、株主の取り分は今の数倍になる。ゴルフ練習場の比重は下がり、工具の会社としての姿が戻る。
- 金属製品:数量 4.2(出荷点数(百万点、推定。リベットとファスナーは 1 箱を 1 点))× 価格 21(1 点あたりの平均売上(百円))→ 売上 88 億円・営業利益 7 億円。420 万点(1.15 倍)× 平均 2,100(1.40 倍)、8%
- レジャー(ゴルフ練習場):数量 21.0(来場者数(万人、推定))× 価格 1.70(1 人あたりの売上(千円))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。21 万人(1.05 倍)× 1,700(1.39 倍)、48%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.8% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 67 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率 8% 超は 2018/03 期が最後で、その後は 8 年で下がり続けた。手工具の販路の拡大とファスニングの伸び、値上げが重なる必要があり 7%(KTC・スーパーツールと同じ)。
やや楽観 20% ファスニングが伸び、利益率が 6% まで戻る 利益 4 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,597 円49 億円
リベットの自動機とファスナーが伸び、手工具の減りを補う筋書きだ。金属製品の数量は 8% 増え、値段は物価をわずかに上回る。新しいシリーズの立ち上げの費用が消え、在庫の評価損もなくなる。
金属製品の利益率は 6% に戻り、全社の営業利益は 6 億円を超える。ゴルフ練習場も来場者を保つ。ROE は 6% 強で、資本コストにはまだ届かない。配当は少しずつ増えるが、自己資本も積み上がり、株主の資本の効率は大きくは上がらない。持ち合いの有価証券も、ほとんど動かない。株主の取り分は少しずつ厚くなる。在庫も少し軽くなる。
- 金属製品:数量 4.0(出荷点数(百万点、推定。リベットとファスナーは 1 箱を 1 点))× 価格 21(1 点あたりの平均売上(百円))→ 売上 81 億円・営業利益 5 億円。395 万点(1.08 倍)× 平均 2,050(1.37 倍)、6%
- レジャー(ゴルフ練習場):数量 20.5(来場者数(万人、推定))× 価格 1.65(1 人あたりの売上(千円))→ 売上 3 億円・営業利益 2 億円。20.5 万人(1.03 倍)× 1,650(1.35 倍)、46%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 48 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:省人化のための自動機とファスナーの案件はすでに増えており、新しいシリーズの立ち上げの費用も一時のもの。利益率の半分の回復は現実的なので 20%。
中立 40% ファスニングが手工具の減りを補い、利益率は 4% 台にとどまる 利益 3 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,949 円36 億円
手工具の数量は職人の減少で 1 割近く減るが、リベットの自動機とファスナーが伸び、金属製品の数量はわずかに増える筋書きだ。値段は物価並みに上がる。
新しいシリーズの立ち上げの費用は消えるが、海外の安い工具との値段の比べ合いと人件費の上昇で、利益率は 4.5% にとどまる。全社の営業利益は 5 億円弱で、ゴルフ練習場がその 3 割を出す。純利益は 3 億円、ROE は 5% 前後だ。配当はやや増えるが、利益の多くは内部に残り、資本の効率は上がらない。今の姿が少しだけ良くなった形だ。ゴルフ練習場も来場者をほぼ保つ。
- 金属製品:数量 3.8(出荷点数(百万点、推定。リベットとファスナーは 1 箱を 1 点))× 価格 20(1 点あたりの平均売上(百円))→ 売上 75 億円・営業利益 3 億円。375 万点(1.03 倍)× 平均 2,010(物価並み 1.34 倍)、4.5%
- レジャー(ゴルフ練習場):数量 20.0(来場者数(万人、推定))× 価格 1.60(1 人あたりの売上(千円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。20 万人(横ばい)× 1,600(1.31 倍)、45%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.9% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 36 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ファスニングの伸びと手工具の縮み、値上げと原価の上昇が打ち消し合う落としどころで、最も起こりやすい。40%(KTC・スーパーツールと同じ)。
やや悲観 23% 手工具が値段で負け、本業はほぼ利益が出ない 利益 1 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 600 円11 億円
手工具が安い輸入品と強いブランドに挟まれ、数量が減る筋書きだ。ファスニングは伸びるが、手工具の減りを埋めきれず、金属製品の数量は 7% 減る。値上げも物価に届かない。
金属製品の利益率は 2% にとどまり、全社の営業利益は 2.4 億円ほどだ。半分近くをゴルフ練習場が出す。純利益は 1.4 億円で、ROE は 2% 台に沈む。配当は据え置かれ、自己資本は少しずつ増えるが、株主の資本の効率は今と変わらない。工具の会社として見ると、利益はほとんど出ていない姿が続く。在庫の評価損も、ときどき利益を削る。
- 金属製品:数量 3.4(出荷点数(百万点、推定。リベットとファスナーは 1 箱を 1 点))× 価格 19(1 点あたりの平均売上(百円))→ 売上 65 億円・営業利益 1 億円。340 万点(0.93 倍)× 平均 1,900(1.27 倍、物価に届かない)、2%
- レジャー(ゴルフ練習場):数量 18.0(来場者数(万人、推定))× 価格 1.50(1 人あたりの売上(千円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。18 万人(0.9 倍)× 1,500(1.23 倍)、40%
倍率:ROE 2.5% は k 8.25% を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)で見て 1÷k の 11.8 倍の 7 割弱の 8.0 倍。PBR では約 0.2 倍で、中立の約 0.46 倍より低い。
確率:利益率は 8 年続けて下がり、会社の予想も横ばいで回復の道筋は見えない。今の姿が続く筋書きを 23%(同業と同じ)とした。
悲観 10% 手工具が構造的に負け、本業が赤字になる 利益 −1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 370 円7 億円
手工具の国内需要が縮み、韓国も冷え、安い輸入品が売り場を取る筋書きだ。金属製品の数量は 2 割近く減り、値段も物価に届かない。鳥取の工場の稼働が落ち、固定費が残って金属製品は赤字になる。
ゴルフ練習場の黒字で全社の営業利益はゼロ近くにとどまるが、純利益は赤字が続く。配当は減らされ、自己資本は横ばいだ。株主の値打ちは、有価証券と土地、売れる在庫を現金に換えた後の残りに近づく。経営は清算を選ばないので、その一部しか株主に届かない。再編で買われても、値段は低い。ゴルフ練習場だけが細く利益を出し続ける。
- 金属製品:数量 3.0(出荷点数(百万点、推定。リベットとファスナーは 1 箱を 1 点))× 価格 18(1 点あたりの平均売上(百円))→ 売上 54 億円・営業利益 −1 億円。300 万点(0.82 倍)× 平均 1,800(1.2 倍)、−1.5%
- レジャー(ゴルフ練習場):数量 16.0(来場者数(万人、推定))× 価格 1.40(1 人あたりの売上(千円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。16 万人(0.8 倍)× 1,400(1.15 倍)、35%
倍率:赤字なので PBR で置く。稼ぐ力の床は無いので、売れる資産の税後から純負債を引き、清算しない分として半分を掛けた約 6.9 億円を床にし、今の自己資本 49.6 億円の 0.14 倍。
確率:2008〜2009 年の赤字の前例があり、手工具の国内需要は縮む。ただ財務は堅く、借金で追い込まれる形ではないので 10%(KTC と同じ)。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
金属製品
プライヤ・レンチ・圧着工具などの手工具(エビ印・J-CRAFT99)、リベットを打つ工具と自動機、リベット・ファスナー、電設工具と切削工具。生産は鳥取ロブスターツール。
| 数量出荷点数(百万点、推定。リベットとファスナーは 1 箱を 1 点) | 価格1 点あたりの平均売上(百円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.6 | 15 | 55 | 1 |
| 10 年後 中立 | 3.8 | 20 | 75 | 3 |
取り方:点数の開示がないため推定。金属製品のセグメント売上 54.68 億円を、手工具と箱入りのリベットを合わせた 1 点あたり約 1,500 で割った約 365 万点。利益はセグメント利益 0.67 億円。
レジャー(ゴルフ練習場)
ゴルフ練習場の運営。
| 数量来場者数(万人、推定) | 価格1 人あたりの売上(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 1.22 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 1.60 | 3 | 1 |
取り方:来場者数の開示がないため推定。セグメント売上 2.44 億円を、打席とボールの 1 人あたり約 1,220 で割った約 20 万人。利益はセグメント利益 1.15 億円。
リスクと懸念
本業の利益率の低下
営業利益率は 2015 年の 10% から 3% に下がった。金属製品の利益率は 1.2% しかなく、値上げが通らない状態が続けば、本業は赤字に近づく。
韓国と海外の市況
海外の売上は韓国の比重が大きく、2026 年 3 月期はその市況の低迷でプライヤが落ち込んだ。代理店を通じた販売で、数量が市況に大きく振れる。
輸入品とブランドとの競争
ホームセンターとネット通販では中国や台湾の安い工具が、職人向けでは KTC やトネが強い。中堅のブランドは値段でも品質でも挟まれる。
ゴルフ練習場への依存
全社の利益の 6 割をゴルフ練習場が出している。来場者の減少や設備の更新の費用、土地の扱いが変われば、全社の利益が大きく動く。
資本の効率
ROE は 2〜3% で、持ち合いとみられる有価証券と厚い在庫を抱える。還元は配当だけで、資本の効率を上げる手は打たれていない。
今後の分かれ目
- 金属製品のセグメント利益率が 2 期続けて 4% を超えたら
- 新しいシリーズとファスニングの伸びが利益に乗った証拠として、やや楽観の確率を上げる。
- 自社株買いか、持ち合いの有価証券の売却を発表したら
- 資本の効率を上げる姿勢とみて、還元の見通しと戻り方を見直す。
- 金属製品のセグメントが赤字になったら
- 手工具の構造的な負けが表に出たとみて、悲観の確率を上げる。
- ゴルフ練習場の土地の売却や再開発を発表したら
- 土地の価値と練習場の利益の扱いを積み直す。
- 同業や商社から買収や資本提携の提案が出たら
- ブランドと販路に値段が付く。再編の筋書きを見直す。
見ておくもの
- 金属製品のセグメント利益率
- J-CRAFT99 の取扱店と海外の売上
- リベットの自動機とファスナーの受注
- ゴルフ練習場の来場者と利益
- 配当・自社株買いと有価証券の扱い
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や PBR 0.45 倍を見ずに、ROE と k 8.25% から決めた。中立の ROE は 4.9% で k を下回るので、PER の上限は 1÷k の 11.8 倍になり、KTC・スーパーツールと同じ 8 割を使った。k は同業より値決めの弱さの分だけ高い。中立の営業利益率 6.1% は過去 12 年の中央値並みで、山の 10% より下に置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→12.12 倍・やや楽観 PER 10→12.12 倍・中立 PER 9.4→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。