結論
ファインシンターは、金属の粉を型で固めて焼き、自動車のエンジンや変速機まわりの部品に仕上げる会社だ。売上の約 9 割が自動車で、トヨタとデンソーがそれぞれ 1 割強を占める。トヨタは議決権の 21.5% を持つ。筆者の結論は、10 年の価値は今の時価総額を下回るというものだ。いちばんの理由は、稼ぐ力が薄いまま電動化の逆風を受けることにある。
2026 年 3 月期は、米国子会社の減損などで 24 億円の最終赤字になった。営業利益率は 2〜3% で、資本コストを大きく下回る。純負債は 118 億円と、今の時価総額の 3 倍近い。自己資本は厚く見えるが、稼ぐ力の弱い資産は帳簿どおりには評価できない。
救いは 2 つある。米国の赤字事業をやめたこと、そして HEV 向けのリアクトルや磁性材など、電動化でも使われる製品を育てていることだ。うまくいけば利益は 2 倍以上になる。ただ、中立の見方ではそこまで届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い事業の手前にある、手のかかる事業」と見る。技術は確かだが、経済性が弱い。稼いだ利益のうち、設備の更新に回る分が多く、株主の手元に残る利益は薄い。
いちばん気になるのは、お金の使い方より、利益率の低さだ。売上が伸びても利益が増えない会社は、成長が株主に届かない。米国の事業をやめる決断は遅かったが、正しい。国内の集約も同じだ。
安全域は、純負債が重いため薄い。自己資本が厚く見えても、売れる価値はかなり落ちる。このような会社は、利益が戻る確かな証拠が出てから見る。先が読めず、確信度は低い。経営が資本をどう使うかは、利益が戻ったあとの配当や借入の返済を見て判断したい。いまは、事業を整理する局面と見る。整理が終わり、利益率が 4% を超えて安定して初めて、オーナーとして持ち続ける価値を議論できる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は自動車焼結で、2026 年 3 月期の売上 462 億円のうち 419 億円を占める。焼結とは、金属の粉を型で固めて高温で焼く製法だ。削る工程が少なく、複雑な形を安く量産できる。エンジンや変速機まわりの小さな部品に向く。
顧客はトヨタ(売上の 10.3%)とデンソー(11.3%)が大きい。トヨタは議決権の 21.5% を持つ「その他の関係会社」で、経営を握る親会社ではない。値段や数量は、取引先の完成車メーカーの事情で動く。
残りは鉄道と油圧だ。鉄道は車両のブレーキに使う焼結の摩擦材で、売上は約 24 億円。油圧は約 19 億円。どちらも規模は小さいが、自動車より利益率が高いと推定する。連結の従業員は約 2,000 人で、海外にも子会社を持つ。米国の生産は 2026 年 4 月に停止が決まり、生産は順次ほかの拠点へ移す。中国にも子会社があるが、設備の残存価額を見直したことが営業利益を押し下げた。収益の柱は、あくまで国内の自動車向けだ。海外の事業は、米国の撤退に見られるように、国内ほど利益が出ていない。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、粉末冶金の設計・評価技術と、顧客との長い取引だ。鉄道のブレーキ材は特許の技術を持ち、次期新幹線のブレーキの開発にも関わる。ただ、売上の大半を占める自動車部品では、この強みが利益に出ていない。
営業利益率は直近 12 年のうち 6 期が 3% 以下で、最良でも 6% 台だ。前の中計は売上 400 億円を超えたが、利益率 8%・ROE 10% の目標には届かなかった。売上は伸びても、利益が残らない体質が続いている。
値決めの力は弱い。トヨタやデンソーは毎年のように値下げを求める。近年は物価上昇の転嫁が進み始めたが、続くかは取引先しだいだ。財務も弱い。純負債は自己資本の 0.8 倍で、営業利益は支払利息の 3 倍ほどしかない。小さな会社の財務の余裕は乏しく、赤字が続けば借入の条件にも響く。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
自動車の駆動系は電動化で作り替えられる。エンジンと変速機は、純電気の EV にはそもそも要らない。世界の新車に占める EV の比率は約 25% で、10 年後は 4〜5 割に上がると見るのが業種全体の前提だ。
粉末冶金の業界は成長しない。電動化で 1 台あたりの部品点数が減り、小さなメーカーは淘汰されるという声が中小の経営者から出ている。大手は M&A で規模を取りに行っている。
一方で、HEV は当面増える。HEV ではエンジンも電動部品も載るので、焼結部品の使い道はすぐには消えない。モーターの磁性部品や、電力を変換するリアクトルなど、電動化で新しく生まれる焼結の用途もある。ただ、その市場はまだ小さく、エンジン部品の減少を完全には埋められない。
鉄道は更新需要が中心で、数量はゆるやかに動く。油圧は産業機械・医療機器の景気に左右される。どちらも自動車の電動化とは別の需要で動くので、事業の分散にはなる。鉄道は車両の更新サイクルが長く、需要が読みやすいのも利点だ。ただ、規模が小さく、全社の利益を動かすほどではない。
資本政策と M&A
還元は限られている。純負債 118 億円を抱え、2026 年 3 月期は最終赤字だったので、配当を増やす余地は小さい。会社は資本コストを意識した経営を掲げ、PBR と ROE の改善を目標にしているが、今の中計の数字は、売上 450 億円、営業利益率 5%、ROE 8% と控えめだ。
資本政策の中心は、事業の入れ替えだ。米国の生産をやめ、国内拠点を 6 から 4 に集約し、電動化で減る分野の生産を集める。浮いた資金は、磁性材・鉄道・油圧に回す。
親会社はなく、トヨタは議決権の 21.5% を持つ。余った現金は無く、仮に出ても、戻り方は 0.5 と見る(持株比率が高く、還元の方針が弱いため)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
米国の赤字事業をやめたことで、利益の足を引く最大の要因が消える。国内の工場も 6 から 4 に集約し、固定費は軽くなる。ここまで来れば、営業利益率が 4〜5% に戻るのは難しくない。2026 年 3 月期の最終赤字は、減損という一回限りの費用だ。
電動化は敵ではない。HEV は当面伸び、エンジンも電動部品も載る。モーターの磁性部品やリアクトルといった新しい焼結の用途は、会社が内製で一貫して作れる強みを生かせる。中計は磁性材を重点事業に置いている。設計から生産までを自社で一貫して持つので、顧客の電動化の相談を受けやすい。
時価総額は自己資本の 3 割にも届かない。利益が 2 倍になるだけで、今の値段は割安になる。トヨタが 21.5% を持つ安定株主であることも、突然の経営危機を遠ざける。国内の拠点を集約する計画も、すでに実行に入っている。春日井工場の新しい量産ラインも計画に入っている。固定費が軽くなれば、売上が横ばいでも利益は大きく変わる。
慎重な見方
利益が戻る証拠は、まだ一つも出ていない。前の中計は、売上こそ超えたが、利益率と ROE は目標に届かなかった。今期の第 1 四半期も経常は赤字で、通期の利益予想に対する進捗は低い。
トヨタとデンソーは、毎年の値下げを求める。電動化で部品点数が減るなか、値決めの力は弱まるばかりだ。電動向けの新しい用途は、まだ小さく、エンジン部品の減少を埋めるには時間がかかる。
純負債は 118 億円で、営業利益は支払利息の 3 倍しかない。借り換えの金利が上がれば、利益はさらに削られる。自己資本の厚さは、専用設備が売れる価値を考えると、見かけほど頼りにならない。米国の撤退は、事業が利益を生まなかった証拠でもある。国内の集約も、需要が縮むから進めている面が大きい。営業利益率は直近 12 年のうち 6 期で 3% 以下で、一時的な不調とは言いにくい。電動化が進むほど、この構造は重くなる。トヨタが 2 割持つとはいえ、赤字の子会社を守る義務はない。
どちらに重みを置いたか
利益率が回復する証拠が乏しく、電動化の逆風と重い借金が重なるため、確率は中立よりやや悲観側に寄せた。米国撤退の効果は認めるが、それだけで利益率が 5% に戻るとは見ない。楽観の確率は 8%、やや楽観を合わせても 25% にとどめた。逆に、やや悲観と悲観を合わせて 37% を置いたのは、会社が 12 年のうち 6 期で赤字を出している実績による。電動化の逆風と借金を同時に見ると、慎重な見方のほうがやや強い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,979 円85 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 296 円13 億円)。 今の値に割り戻すと 1,029 円44 億円、今との差 +5.4%、 期待の年率 +8.8%(資本コスト 9.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,969 円213 億円 | 818 円35 億円 | +492.9% | +19.5% | 463 円20 億円 |
| やや楽観 | 17% | 3,335 円143 億円 | 561 円24 億円 | +299.2% | +14.8% | 662 円28 億円 |
| 中立 | 38% | 2,062 円88 億円 | 327 円14 億円 | +144.7% | +9.4% | 908 円39 億円 |
| やや悲観 | 24% | 774 円33 億円 | 47 円2 億円 | −16.0% | −1.7% | 197 円8 億円 |
| 悲観 | 13% | 351 円15 億円 | 0 円0 億円 | −64.1% | −9.7% | 46 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,979 円85 億円 | 296 円13 億円 | +133.1% | +8.8% | 2,275 円97 億円 |
今の株価時価総額 976 円42 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:電動向けの磁性材・リアクトルが育ち、鉄道・油圧も伸びる 利益 18 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 4,969 円213 億円
電動化に合わせて自動車焼結の中身が入れ替わる。エンジン向けは縮むが、HEV のリアクトルや電動駆動の磁性部品が埋め、出荷量は今の 95% を保つ。単価は転嫁が通り、物価をやや上回る。
米国の赤字を断った効果と国内拠点の集約で、自動車の営業利益率は 5% まで戻る。鉄道は新幹線の次期ブレーキと海外展開で数量が 5 割増え、油圧も医療・産業機械向けで伸びる。
全社の営業利益は 36 億円ほどになる。借入を減らして利払いも軽くなり、純利益は 18 億円。ROE は 8% 台で、なお資本コストには届かない。
- 自動車焼結:数量 57.0(焼結部品の出荷量(千トン))× 価格 9.63(1 千トンあたり売上(億円。加工・組付けの付加価値込み))→ 売上 549 億円・営業利益 27 億円。電動向けが穴を埋め利益率 5%
- 鉄道焼結:数量 450(ブレーキ摩擦材の出荷(千個))× 価格 0.11(1 個あたり売上(億円/千個))→ 売上 50 億円・営業利益 5 億円。数量 1.5 倍、海外展開
- 油圧機器:数量 18.0(油圧部品の出荷(万台相当))× 価格 2.24(1 台あたり売上(万円))→ 売上 40 億円・営業利益 3 億円。数量 1.5 倍、医療・産業機械
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 200 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の目標(売上 450 億円・営業利益率 5%)を 10 年かけて超える筋書き。前の中計は利益率が目標の 8% に届かなかった実績があり、重く置かない。
やや楽観 17% やや楽観:中計に近い着地で、利益率は 4% 台 利益 12 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 3,335 円143 億円
自動車焼結の出荷量は今の 9 割弱に減る。エンジン部品の減少を HEV 向けが半分ほど埋める。単価はトヨタ・デンソーの値下げ要請を受けつつ、物価の転嫁もおおむね通る。
米国の赤字が消え、国内の工場も 6 から 4 に集約して固定費が軽くなる。自動車の営業利益率は 4%、鉄道と油圧は 2〜3 割の数量増で 7〜9% を保つ。
全社の営業利益は 26 億円ほどになる。利払いの増加を引いても純利益は 12 億円前後で、ROE は 6% 前後。還元は純利益の 2 割ほどにとどまる。会社が掲げる ROE 8% には、10 年かけても届かない見方だ。
- 自動車焼結:数量 52.8(焼結部品の出荷量(千トン))× 価格 9.35(1 千トンあたり売上(億円。加工・組付けの付加価値込み))→ 売上 494 億円・営業利益 20 億円。電動向けが半分を埋める
- 鉄道焼結:数量 360(ブレーキ摩擦材の出荷(千個))× 価格 0.11(1 個あたり売上(億円/千個))→ 売上 39 億円・営業利益 4 億円。数量 1.2 倍
- 油圧機器:数量 15.6(油圧部品の出荷(万台相当))× 価格 2.19(1 台あたり売上(万円))→ 売上 34 億円・営業利益 2 億円。数量 1.3 倍
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 129 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内拠点の集約と米国撤退の効果が出て、利益率が 4% 台に戻る筋書き。電動向けの置き換えは半分ほどにとどまる。
中立 38% 中立:エンジン部品が縮み、電動向けが半分を埋める。利益は薄いまま 利益 6 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 2,062 円88 億円
自動車焼結の出荷量は 10 年で 2 割減る。ガソリン車・HEV 向けのエンジン部品が減り、リアクトルなどの電動向けが半分を埋める。単価は物価の転嫁が通るものの、完成車メーカーの年次値下げ要請で 10 年 1.30 倍にとどまる。
米国の赤字事業をやめ、国内拠点を集約した効果で、営業利益率は 2% 台から 3% 前後へ戻る。鉄道・油圧は数量が 1 割ほど伸びる。
全社の営業利益は 17 億円ほどで、物価で見ると今とほぼ同じ水準だ。利払いが 3 億円ほど増え、純利益は 6 億円強。ROE は 3% 台半ばで、還元は純利益の 25% ほどにとどまる。
- 自動車焼結:数量 48.0(焼結部品の出荷量(千トン))× 価格 9.07(1 千トンあたり売上(億円。加工・組付けの付加価値込み))→ 売上 435 億円・営業利益 13 億円。数量 0.8 倍、価格 1.30 倍
- 鉄道焼結:数量 315(ブレーキ摩擦材の出荷(千個))× 価格 0.11(1 個あたり売上(億円/千個))→ 売上 34 億円・営業利益 3 億円。数量 1.05 倍
- 油圧機器:数量 13.2(油圧部品の出荷(万台相当))× 価格 2.14(1 台あたり売上(万円))→ 売上 28 億円・営業利益 2 億円。数量 1.1 倍
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.9% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 70 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電動化の速度は業種ノートの中心的な見通し(世界の EV 比率が 4〜5 割)に沿う。ファインシンターは米国の撤退と国内集約で赤字をやめるが、利益率は 3% 台にとどまる。最も重く置く。
やや悲観 24% やや悲観:トヨタ系の値下げと数量減が重なり、利益率は 2% 台 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 774 円33 億円
自動車焼結の出荷量は 4 割近く減る。トヨタ・デンソー向けのエンジン部品が減り、電動向けの置き換えは進まない。値下げ要請を受け、単価は物価の 5 割ほどしか転嫁できない。
固定費の重い焼結の工場は稼働が下がり、自動車の営業利益率は 1% 台半ばにとどまる。鉄道・油圧も数量が 1 割ほど減る。国内の集約は進むが、移管の費用がかさんで、利益の改善を打ち消す。
全社の営業利益は 8 億円ほどで、利払いを引くと純利益は 1 億円前後。稼ぐ力で測ると 10 億円ほどの価値にしかならず、売れる資産の側から見て、今の自己資本の 2 割ほどを置く。
- 自動車焼結:数量 37.2(焼結部品の出荷量(千トン))× 価格 8.52(1 千トンあたり売上(億円。加工・組付けの付加価値込み))→ 売上 317 億円・営業利益 5 億円。数量 0.62 倍、価格 1.22 倍
- 鉄道焼結:数量 285(ブレーキ摩擦材の出荷(千個))× 価格 0.10(1 個あたり売上(億円/千個))→ 売上 29 億円・営業利益 2 億円。数量 0.95 倍
- 油圧機器:数量 10.8(油圧部品の出荷(万台相当))× 価格 2.08(1 台あたり売上(万円))→ 売上 23 億円・営業利益 1 億円。数量 0.9 倍
倍率:稼ぐ力(純利益÷k)は 10 億円ほどで、売れる資産の税後より小さい。今の自己資本に 0.2 倍を掛けた(売れる資産の推定は floor_assets_why)。
確率:完成車メーカーの値下げ要請が続き、電動向けへの置き換えが進まない筋書き。会社は過去 20 年のうち 6 期が赤字で、この水準は十分ありうる。
悲観 13% 悲観:電動化が急で、トヨタ系の発注が細り、構造的に赤字になる 利益 −9 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 351 円15 億円
自動車焼結の出荷量は 6 割以上減る。主力のエンジン部品が電動車に入らず、トヨタ・デンソー向けの量が急に落ちる。単価の転嫁もほとんど通らない。
固定費を下げきれず、自動車は赤字になる。工場の集約が追いつかず、減損と再編の費用がさらに出る。鉄道・油圧は黒字だが、全体の赤字を埋められない。
営業利益は赤字(マイナス 3 億円ほど)、利払いが加わって純損失は 9 億円ほどになる。借入が重く、還元は止まる。株主の取り分は、売れる資産から純負債を引いた残りに近い。借り換えの条件が悪くなれば、さらに取り分は減る。
- 自動車焼結:数量 22.8(焼結部品の出荷量(千トン))× 価格 7.68(1 千トンあたり売上(億円。加工・組付けの付加価値込み))→ 売上 175 億円・営業利益 −4 億円。数量 0.38 倍、赤字
- 鉄道焼結:数量 270(ブレーキ摩擦材の出荷(千個))× 価格 0.10(1 個あたり売上(億円/千個))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。数量 0.9 倍
- 油圧機器:数量 9.6(油圧部品の出荷(万台相当))× 価格 2.00(1 台あたり売上(万円))→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円。数量 0.8 倍
倍率:赤字で PER は使えない。稼ぐ力はなく、運転資産を約 5 割の値で売って純負債を返した残り(15 億円)まで。今の自己資本に 0.1 倍強を掛けた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.126 倍・時価総額 15 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:エンジン部品の需要が急に消え、鉄道・油圧の黒字では固定費を賄えなくなる筋書き。純負債 118 億円の借り換えが重くのしかかり、純現金は残らない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
自動車焼結
金属の粉を固めて焼き、エンジン・変速機・電動部品などに仕上げる。売上の約 9 割を占める中心事業。
| 数量焼結部品の出荷量(千トン) | 価格1 千トンあたり売上(億円。加工・組付けの付加価値込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 6.98 | 419 | 8 |
| 10 年後 中立 | 48.0 | 9.07 | 435 | 13 |
取り方:有報の自動車焼結の売上は 418.95 億円。出荷量は非開示のため、焼結部品の平均売値を 1 キロ 7 百円台と推定して約 60 千トンとした(推定)。セグメント利益は非開示で、全社の営業利益 12 億円から鉄道・油圧の利益を引き、約 8 億円(利益率 1.9%)と推定。価格は物価並みが基本だが、完成車メーカーの年次値下げ要請があり、中立は 1.30 倍にとどめる。
鉄道焼結
鉄道車両のブレーキに使う焼結の摩擦材。新幹線を含む。国内の仕事量は車両の更新に左右される。
| 数量ブレーキ摩擦材の出荷(千個) | 価格1 個あたり売上(億円/千個) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 300 | 0.08 | 24 | 3 |
| 10 年後 中立 | 315 | 0.11 | 34 | 3 |
取り方:有報の鉄道焼結の売上は 23.81 億円(前年比 -0.4%)。個数は非開示のため、1 個 0.8 万円前後と推定して 30 万個とした(推定)。利益率は自動車より高い約 10% と推定。
油圧機器
油圧機器向けの焼結部品・製品。高圧化・高速化と、医療機器・産業機械向けへの展開を進める。
| 数量油圧部品の出荷(万台相当) | 価格1 台あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.0 | 1.60 | 19 | 2 |
| 10 年後 中立 | 13.2 | 2.14 | 28 | 2 |
取り方:有報の油圧機器製品の売上は 19.20 億円(前年比 +2.9%)。台数は非開示のため、1 台 1.6 万円と推定して 12 万台相当とした(推定)。利益率は約 8% と推定。
リスクと懸念
電動化が想定より速い
EV の比率が 5 割を超えると、エンジン・変速機向けの出荷量は 4 割以上減りうる。固定費の重い焼結は、稼働が下がると利益率が一気に落ちる。HEV が当面続く前提は、各国の規制で変わりうる。
完成車メーカーの値下げ要請
トヨタ・デンソーの売上は合わせて約 2 割で、毎年の価格改定の影響が大きい。物価の転嫁が通らなければ、営業利益率 3% も維持できない。親会社ではないため、トヨタに守ってもらう前提も置けない。
重い純負債と借り換え
純負債は 118 億円、営業利益は支払利息の 3 倍ほど。借り換えのたびに金利が 3.5% 前後へ上がり、利払いが 10 年で 3 億円ほど増える。財務制限条項の有無は確認できていない。
再編のコストと減損の再発
米国の生産停止と国内拠点の集約で、移管の費用と減損が続く可能性がある。2026 年 3 月期に 22 億円の減損を出しており、中国子会社でも設備の残存価額を見直した。
電動向け新製品の遅れ
磁性材やリアクトルが、エンジン部品の減少を埋められるかは未確定だ。HEV 向けリアクトルは 2024 年度に約 198 万台の計画だったが、10 年先の需要は読めない。
鉄道・油圧が小さい
利益率の高い鉄道・油圧は、合わせても売上の 1 割にならない。数量が 5 割伸びても、全社の利益を大きく変えるほどにはならない。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期の営業利益が 12 億円の予想に届き、第 2 四半期以降の経常が黒字になる
- 米国撤退と集約の効果が出たと見て、中立からやや楽観側へ確率を移す。
- トヨタ・デンソー向けの出荷量が、2 年続けて 1 割以上落ちる
- 電動化の速度が想定以上と見て、やや悲観・悲観側へ確率を移す。
- 磁性材・リアクトルの売上が、会社の計画どおり 2029 年度までに伸びる
- 電動向けが穴を埋める筋書きの重みを増やす。
- 借り換えで、金利の上乗せが 1% を大きく超える
- 利払いの重さが利益を食う筋書きに寄せる。
- トヨタが持分を増やす、または売る
- 系列の動きとして、会社の自由度と値決めの見方を見直す。
見ておくもの
- 自動車焼結の出荷量と、トヨタ・デンソー向けの売上比率
- 米国子会社の停止後の損益と、国内拠点の集約の進み具合
- 磁性材・リアクトルなど電動向けの売上
- 営業利益率(目標は 5%)と、純負債・支払利息の動き
- トヨタの持株比率と配当方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は利益ベースで置き、今の株価や過去・同業の PER は使っていない。中立は ROE 3.6% が k 9% に届かず、PER の上限は 1÷k の 10.3 倍。利益の質(薄い利益率・値決めの弱さ・縮む事業)から上限の 7 割に置いた。楽観・やや楽観も上限の 8 割台。やや悲観・悲観は、稼ぐ力ではなく、運転資産の売れる価値から純負債を引いて今の自己資本に掛けた。今の時価総額(自己資本の約 3 割)は、結果として比べただけだ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9→11.11 倍・やや楽観 PER 8.5→11.11 倍・中立 PER 7.2→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。