結論
エイチワンは、車の骨格にあたるフレーム部品を、ホンダに納める会社だ。売上の 86% がホンダ向けで、北米の売上が半分を占める。ホンダは筆頭株主(21%)でもある。
筆者の結論は、本質価値は今の値段をやや上回る、である。ただし、安さの大半は理由がある。顧客が 1 社に偏り、3 年連続の営業赤字を出したばかりだ。
今の利益は立て直しの成果だ。中国の溶接ラインを半分に削り、インド事業を手放し、国内の拠点を集約した。営業利益は赤字から 146 億円まで戻った。ここを評価する。
問題は、この先だ。三重とテキサスなどに 700 億円規模の新規投資を進める。営業利益の 5 倍近い。利益率は 7% から 6% に戻り、自己資本利益率は資本コストに届かない、と筆者は置く。
時価総額は自己資本の半分以下だが、安さを根拠にはしない。売る側の都合でなく、稼ぐ力で測っても、今の値段は下振れの危険を織り込みすぎていると見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10 年後にこの会社が今より強いか」を問う。答えは、そうとも言えない。顧客が 1 社に偏る構造は、どれだけ立て直しても変わらない。堀、つまり他社がまねできない強みも、STAF が量産に乗るまでは見えない。
次に、株主のものになる利益を見る。最近の純利益は 110 億円だが、設備投資は減価償却を大きく上回り、自由に使える現金は薄い。利益が出ても、工場に消える。
良い点は 2 つある。経営が赤字の拠点を畳み、ポートフォリオを組み替えた実行力と、ホンダという安定株主だ。
払う値段の安全域は、中立でも今の値段を上回るが、薄いと筆者は見る。悲観の筋書きでは株主の取り分がほとんど消える。顧客が崩れたときに逃げ場がないからだ。
最後に、資本の使い方だ。700 億円規模の投資が、資本コストを上回る見返りを生むか。見返りの大半はホンダの台数次第で、経営が自分で決められない。持ち続けたいオーナーの目では、手を出しにくい。
何で稼ぐ会社か
エイチワンの稼ぎは、自動車フレームという 1 つの製品に集まる。フレームは、車体の骨格を支える大きな鋼板部品だ。プレスで成形し、ロボットで溶接してつくる。金型、鋳物、超高強度の鋼板の加工が得意で、車の衝突安全に直結する。
売上の地域別の内訳は、北米が約半分、日本と中国がそれぞれ 2 割弱、アジアが 1 割弱だ。顧客はほぼホンダ一色で、米国ホンダの製造会社が 40%、本田技研が 17%、ホンダ・カナダが 11% を占める。
稼ぎ頭は北米で、営業利益は 59 億円。日本が 51 億円、中国が 31 億円と続く。アジアはほぼ利益が出ていない。
新しい芽もある。住友重機械と開発した STAF は、超高強度の鋼板を薄く軽く成形する工法だ。日系メーカーでの採用が決まった。燃料電池用の部品も量産に入ったが、売上の 0.3% と小さい。
従業員は連結で約 4,600 人。国内は群馬・埼玉・三重などに工場があり、北米はオハイオとカナダに拠点を持つ。
要するに、ホンダの車の台数に利益が連動する会社だ。そこに、中国と国内の縮小、北米の増設という動きが重なる。
優良さと弱いところ
エイチワンは、規模や技術で勝つというより、ホンダの内側に入って生きてきた会社だ。1952 年のオートバイ部品に始まる取引は半世紀を超え、ホンダは筆頭株主として研究開発でも組む。これは強みであり、同時に首輪でもある。
値段を決める力は弱い。フレームの価格は顧客との交渉で決まり、材料費の上昇も時間差でしか転嫁できない。営業利益率は過去 12 年のほとんどで 5% を下回り、最近の 7.0% が突出している。
資本効率は低い。自己資本利益率は過去 10 年の中央値で 5% 台、資本コストを下回る年が大半だ。直近の 13.8% は、赤字の翌年の反動で高く出ている。
経営の実行力は、ここ 2 年で試された。事業本部制と投資審議会を入れ、不採算の拠点を畳み、計画の初年度・2 年目の営業利益目標をどちらも上回った。筆者はこの実行力を評価する。
ただし、北米子会社の決算体制が崩れた過去がある。2024 年 3 月期には内部統制の重要な不備を開示した。人材と仕組みの弱さは、完全に消えたと言い切れない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
自動車のフレーム事業は、完成車メーカーの台数と戦略に左右される。ホンダは今、揺れている。電気自動車の損失が 2026 年 3 月期に 1.4 兆円を超え、米国の関税は 3,000 億円超の減益要因になった。いまはハイブリッド車に軸足を移し、利益を戻しつつある。
エイチワンにとって追い風は北米だ。ハイブリッド車の生産が増えれば、フレームの数量も増える。逆風は国内と中国だ。人口が減る国内は縮み、中国ではホンダ自体が中国勢に押されて生産が落ちた。エイチワンは中国の溶接能力を半分に減らしたが、需要が戻る保証はない。
競合は、同じホンダ系のジーテクト、ホンダや日産を主な顧客とするプレス部品会社のほか、海外ではゲスタンプなどの大手がある。超高強度の鋼板や、鋳造で車体を一体成形するギガキャストなど、車体のつくり方が変われば、プレス部品の点数や単価が動く。
中国では価格競争が激しく、部品の値段は物価に追いつかない。筆者は、中国の価格を 10 年で 1.15 倍にとどまると見る。
材料の鋼板は、中国の過剰生産で上がりにくい。人件費は国内も北米も上がる。利益は、台数よりも、この差し引きで決まる。
資本政策と M&A
資本の使い方は、守りから攻めに動いている。1 株配当は 2 年で 3 倍超に増え、2027 年 3 月期も増配の予定だ。ただ、配当性向は 18% ほどで、会社が目安とする 30% に届いていない。自社株買いはない。
一方、投資は重い。三重県亀山市の新工場(約 200 億円)、テキサスの新会社、カナダと北米の増設を合わせて、数年で 700 億円規模になる。毎年の営業キャッシュフローは 290 億円ほどで、設備投資はそれを上回る。借金は減らない。
大株主はホンダ(21%)、信託銀行、従業員持株会、地銀の順だ。ホンダは持分法適用の関連会社として扱う。kabufu の推計では、10 年以内に買収される確率は 33% とされる。ホンダが完全子会社化に動く可能性は否定できないが、価値の計算には入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
営業利益は 3 年の赤字から 146 億円まで戻った。中国の溶接ラインを半分にし、インドを手放し、国内の拠点を集約した。固定費の削減は実行済みで、会社の目標も 2 年続けて上回った。2027 年 3 月期の営業利益は 160 億円と見込まれ、体質利益(一過性を除いた力)は 188 億円とされる。
北米はホンダのハイブリッド車の生産増で伸びる。亀山とテキサスの新工場は、ホンダ以外の注文を取る足場になる。STAF は超高強度の鋼板を軽く成形でき、電動車の軽量化需要にも合う。日系メーカーでの採用はすでに決まった。
ホンダは筆頭株主で、ホンダの調達網の中で代わりの利かない地位にある。ホンダが今期の営業利益を 6,500 億円に引き上げたことで、最悪期は過ぎたと見てよい。
時価総額は自己資本の半分以下で、純利益の 4 倍弱だ。ホンダが完全子会社化に動けば、プレミアムがつく。配当性向 30% の方針が守られれば、配当だけでも利回りは 5% を超える。
10 年後に営業利益が 200 億円を超え、自己資本利益率が 10% に乗れば、評価は大きく変わる。
慎重な見方
売上の 86% がホンダだ。ホンダは電気自動車の失敗で 1.4 兆円の損失を出し、関税でも 3,000 億円超の減益になった。中国では生産が落ち込み、エイチワンも中国の売上が 15% 減った。ホンダが崩れれば、エイチワンは逃げ場がない。
営業利益率 7% は、過去 12 年で突出して高い。2018 年までは 4% 台、その後は赤字まで落ちた。今の水準は、減損が消えた年の反動で高く見えているだけかもしれない。
投資が重い。三重・テキサス・カナダ・オハイオに 700 億円規模の投資が続き、営業キャッシュフローを上回る。借金は減らず、金利は上がる。需要が計画を下回れば、新工場の減価償却だけが残る。
北米子会社は、決算が間に合わず株主総会が継続会になり、内部統制の重要な不備まで出した。体制の弱さは過去のことと言い切れない。
配当性向は 18% で、会社の方針の 30% に届かない。投資が優先されれば、株主への還元は後回しになる。自己資本が積み上がっても、ROE が資本コストを下回れば、その厚みに値段はつかない。
どちらに重みを置いたか
どちらにも根拠があるが、慎重な見方のほうが強い。ホンダ向け 86% という構造と、700 億円の投資は、立て直しの成果より重いと筆者は見る。利益率は 6% に戻る前提を中立に置いた。確率は中立に 35% を置き、ホンダの縮小が現実に進んでいる点を重く見て、やや悲観に 27%、悲観に 13% を割り当てた。強気の筋書きは、ホンダ以外の注文と新工法が揃う必要があり、6% にとどめた。それでも評価が今の値段を上回るのは、今の値段が悲観に傾きすぎているためだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,973 円1,113 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 942 円264 億円)。 今の値に割り戻すと 2,202 円617 億円、今との差 +60.7%、 期待の年率 +13.6%(資本コスト 9.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 7,661 円2,146 億円 | 1,706 円478 億円 | +583.8% | +21.2% | 562 円157 億円 |
| やや楽観 | 19% | 6,604 円1,850 億円 | 1,392 円390 億円 | +483.7% | +19.3% | 1,519 円426 億円 |
| 中立 | 35% | 5,211 円1,460 億円 | 1,232 円345 億円 | +370.3% | +16.7% | 2,255 円632 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,440 円403 億円 | 432 円121 億円 | +36.6% | +3.2% | 505 円142 億円 |
| 悲観 | 13% | 357 円100 億円 | 214 円60 億円 | −58.3% | −8.4% | 74 円21 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,973 円1,113 億円 | 942 円264 億円 | +258.8% | +13.6% | 4,916 円1,377 億円 |
今の株価時価総額 1,370 円384 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 6% ホンダが復調し、新しい顧客と新技術も実る 利益 180 億円 · PER 11.2 倍 · 株価時価総額 7,661 円2,146 億円
ホンダがハイブリッド車で北米の販売を伸ばし、関税の負担も価格に転嫁して利益を戻す。エイチワンの北米は台数が 3 割増える。テキサスの新会社で、ホンダ以外の日系メーカーの注文も取り、ホンダ向けは売上の 75% ほどに下がる。
超高強度の鋼板を軽く成形する新工法 STAF が、複数の完成車メーカーに広がる。1 点あたりの単価が上がり、価格は物価を上回る。中国は縮小後の身の丈で黒字を保つ。
営業利益率は 7% 台に乗る。過去 12 年の最高だった今の 7.0% を超えるのは、不採算の拠点を畳み、能力を半分にした実行の実績があるからだ。借金は返せ、配当は性向 30% を守ったうえで自社株買いも加わる。
- 日本:数量 110(ホンダ国内向け納入台数相当(万台))× 価格 8.12(1 万台相当あたり売上(億円・名目))→ 売上 893 億円・営業利益 67 億円。新工法で単価が上がる。利益率 7.5%
- 北米:数量 221(ホンダ北米向け納入台数相当(万台))× 価格 9.27(1 万台相当あたり売上(億円・名目))→ 売上 2,049 億円・営業利益 139 億円。台数 3 割増、新顧客も。利益率 6.8%
- 中国:数量 55.0(ホンダ中国向け納入台数相当(万台))× 価格 7.48(1 万台相当あたり売上(億円・名目))→ 売上 411 億円・営業利益 31 億円。縮小後の規模で黒字を保つ。利益率 7.5%
- アジア:数量 48.0(ホンダのアジア向け納入台数相当(万台))× 価格 6.44(1 万台相当あたり売上(億円・名目))→ 売上 309 億円・営業利益 15 億円。タイ・インドネシアが回復。利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 180 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.2 倍。全体の PER 11.22 倍、時価総額 2,020 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ホンダの復調、ホンダ以外の顧客の獲得、超高強度の新工法の量産が 10 年のうちに重なる必要がある。成功すれば利益は今の 1.7 倍だが、実績のない前提が多く 6% にとどめた。
やや楽観 19% ホンダ向けを守り、北米が伸びる 利益 149 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 6,604 円1,850 億円
ホンダのハイブリッド車が北米で売れ、エイチワンの北米は台数が 15% 増える。新設の亀山工場と北米の増設も、ホンダの新型車の立ち上げに合わせて動く。国内は人口減で少し縮み、中国は縮小後の水準で底を打つ。
価格は材料費の転嫁が時間差でできて、物価並みに近い伸びになる。営業利益率は 7% 近くで、会社の目標の線だ。
自己資本利益率は 8〜9% まで上がる。資本コストには届かないが、借金は軽くなる。配当は性向 30% 前後を守る。
新しい工場の償却は重いが、増えた台数で薄まる。ホンダの調達網の中で、エイチワンの存在感は今より少し高まる。
- 日本:数量 106(ホンダ国内向け納入台数相当(万台))× 価格 7.95(1 万台相当あたり売上(億円・名目))→ 売上 840 億円・営業利益 59 億円。国内は微減、単価は物価並み。利益率 7.0%
- 北米:数量 196(ホンダ北米向け納入台数相当(万台))× 価格 9.07(1 万台相当あたり売上(億円・名目))→ 売上 1,773 億円・営業利益 112 億円。台数 15% 増。利益率 6.3%
- 中国:数量 53.4(ホンダ中国向け納入台数相当(万台))× 価格 7.18(1 万台相当あたり売上(億円・名目))→ 売上 383 億円・営業利益 29 億円。底を打ち黒字。利益率 7.5%
- アジア:数量 44.0(ホンダのアジア向け納入台数相当(万台))× 価格 6.30(1 万台相当あたり売上(億円・名目))→ 売上 277 億円・営業利益 12 億円。緩やかに回復。利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 149 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.0 倍。全体の PER 10.98 倍、時価総額 1,636 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画(2027/03 期に営業利益 160 億円、利益率 7%)に近い道を 10 年続ける筋書き。ホンダの北米生産が堅調で、中国と国内の縮小は止まる。実行力は 3 年の黒字で一定の裏づけがあるため、中立の次に厚くした。
中立 35% ホンダ頼みのまま、薄い利益率で平凡に続く 利益 116 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 5,211 円1,460 億円
ホンダの北米生産は、ハイブリッド車を軸に小幅に増える。エイチワンの北米は台数が 5% ほど増え、国内は人口減と生産の海外移管で 1 割近く減る。中国は縮小後の水準を保つが、価格の下落が続く。
価格は、材料費の上昇を時間差で顧客に転嫁し、物価並みに近づくにとどまる。大きな設備投資で減価償却費が膨らみ、利益率を押し下げる。営業利益率は 6% で、会社が掲げる 7% には届かない。
中国の価格は、価格競争が続くため 10 年で 1.15 倍にとどまる。売上は 3 割ほど増えるが、利益は今より 1 割強しか増えない。自己資本は積み上がり、ROE は 7% 台。ホンダ頼みの構造は変わらず、評価は上限の 7 割ほどにとどまる。
- 日本:数量 101(ホンダ国内向け納入台数相当(万台))× 価格 7.77(1 万台相当あたり売上(億円・名目))→ 売上 786 億円・営業利益 51 億円。国内は 1 割近く減。利益率 6.5%
- 北米:数量 179(ホンダ北米向け納入台数相当(万台))× 価格 8.87(1 万台相当あたり売上(億円・名目))→ 売上 1,583 億円・営業利益 84 億円。台数 5% 増。利益率 5.3%
- 中国:数量 52.2(ホンダ中国向け納入台数相当(万台))× 価格 6.88(1 万台相当あたり売上(億円・名目))→ 売上 359 億円・営業利益 25 億円。縮小後の規模。中国は価格競争で物価を下回る伸びにとどまる。利益率 7.0%
- アジア:数量 42.0(ホンダのアジア向け納入台数相当(万台))× 価格 6.16(1 万台相当あたり売上(億円・名目))→ 売上 259 億円・営業利益 9 億円。微増。利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 116 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 1,222 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ホンダの北米が底堅い一方、国内と中国は細り、関税と材料費の負担も残る。利益率は今の 7.0% より低い 6% に戻る。過去 12 年の中央値が 2〜3% であることを考えれば、6% でも十分に強気だ。最も厚い確率にした。
やや悲観 27% ホンダが数量を落とし、赤字すれすれに戻る 利益 36 億円 · PER 6.6 倍 · 株価時価総額 1,440 円403 億円
ホンダの世界販売が中国勢との競争で縮み、北米も関税とハイブリッド車の値下げ競争で伸びない。エイチワンの国内は 2 割、中国は 3 割、北米も 1 割落ちる。
価格は、顧客の値下げ要請で物価に追いつかない。能力の削減はもう済んでおり、これ以上の固定費の圧縮は難しい。新工場の減価償却は重く、利益率は 3% に近づく。
営業利益は今の半分以下になり、借金の利払いが重くのしかかる。配当は性向を下げてでも守るが、増配は止まる。
ホンダの調達の方針が変わり、一部の車種が内製化や他社に移る恐れもある。電動化で部品の仕様が変わるたびに、投資の判断を迫られる。
- 日本:数量 88.0(ホンダ国内向け納入台数相当(万台))× 価格 7.54(1 万台相当あたり売上(億円・名目))→ 売上 664 億円・営業利益 20 億円。国内が 2 割減、利益率 3%
- 北米:数量 153(ホンダ北米向け納入台数相当(万台))× 価格 8.61(1 万台相当あたり売上(億円・名目))→ 売上 1,317 億円・営業利益 40 億円。台数 1 割減、利益率 3%
- 中国:数量 38.5(ホンダ中国向け納入台数相当(万台))× 価格 6.58(1 万台相当あたり売上(億円・名目))→ 売上 253 億円・営業利益 8 億円。3 割減、利益率 3%
- アジア:数量 36.0(ホンダのアジア向け納入台数相当(万台))× 価格 5.98(1 万台相当あたり売上(億円・名目))→ 売上 215 億円・営業利益 2 億円。1 割減、利益率 1%
倍率:資本コスト 9.5%。事業の ROE 2.9% は k を大きく下回り、PER の上限は 1÷k=約 10.8 倍。利益が縮み成長を見込めず、借金の負担も重いので、上限の約 6 割の 6.6 倍に置いた。床は稼ぐ力(純利益÷k)で、PBR 約 0.19 倍は ROE 約 3% の会社の水準として妥当とみる。
確率:ホンダは電気自動車の失敗で巨額の損失を出し、関税の負担も続く。中国は 2 年で半減しており、他の地域でも数量が落ちる余地は十分にある。エイチワン自身、直近の 5 年のうち 3 年は営業赤字だった。この筋書きを中立の次に厚く置いた。
悲観 13% ホンダが急速に縮み、赤字と減損が続く 利益 −110 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 357 円100 億円
ホンダが中国勢との競争で数量を大きく落とし、北米も関税と電気自動車の失敗で投資を絞る。エイチワンの国内は 4 割、北米は 3 割強、中国は半分以上の台数を失う。
工場の稼働が落ちて固定費が重くのしかかり、営業利益は赤字に戻る。拠点の閉鎖と減損が続き、新しい工場の投資も回収できない。借金の借り換えは厳しい条件になる。
こうなると、株主に残るのは稼ぐ力ではなく、売れる資産の価値だ。売れる資産を全部売っても負債に届かない公算が大きく、残るのはホンダが供給網を守るために支える分だけになる。配当は大きく減る。
- 日本:数量 66.0(ホンダ国内向け納入台数相当(万台))× 価格 7.25(1 万台相当あたり売上(億円・名目))→ 売上 478 億円・営業利益 −5 億円。4 割減。赤字
- 北米:数量 111(ホンダ北米向け納入台数相当(万台))× 価格 8.28(1 万台相当あたり売上(億円・名目))→ 売上 915 億円・営業利益 −14 億円。3 割強減。赤字
- 中国:数量 24.8(ホンダ中国向け納入台数相当(万台))× 価格 6.28(1 万台相当あたり売上(億円・名目))→ 売上 156 億円・営業利益 −5 億円。半分以下。赤字
- アジア:数量 28.0(ホンダのアジア向け納入台数相当(万台))× 価格 5.75(1 万台相当あたり売上(億円・名目))→ 売上 161 億円・営業利益 −5 億円。3 割減。赤字
倍率:利益では測れない。売れる資産で測る。現金・売掛金・棚卸資産は 6〜9 割、土地建物は 5〜7 割、専用の設備と金型は 1 割ほどで回収すると見ても、約 1,000 億円で、負債約 1,260 億円に届かない。残るのは、ホンダが供給網を守るために支える価値だけで、約 100 億円(今の自己資本の約 13%)と置いた。
確率:ホンダ向けが 86% という集中は、顧客が崩れたときに逃げ場がない。ホンダ自身が大きな損失を出した直後で、中国では生産が激減している。起きにくいが、実際に 3 年連続の営業赤字を経験した会社であり、無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本
国内の自動車フレームなど。ホンダの国内工場向けと、海外拠点への供給。
| 数量ホンダ国内向け納入台数相当(万台) | 価格1 万台相当あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 110 | 5.80 | 638 | 51 |
| 10 年後 中立 | 101 | 7.77 | 786 | 51 |
取り方:セグメント売上 638 億円(グループ内の取引を含む)を、ホンダ国内向けの 1 台あたり約 5.8 万円の部品で割り、110 万台相当と置いた。台数は推定。開示は金額だけ。連結の売上は、グループ内の消去 180 億円ほどを引いて 2,097 億円になる。
北米
オハイオ・カナダなどの拠点から、ホンダの北米工場に納めるフレーム部品。
| 数量ホンダ北米向け納入台数相当(万台) | 価格1 万台相当あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 170 | 6.62 | 1,126 | 59 |
| 10 年後 中立 | 179 | 8.87 | 1,583 | 84 |
取り方:北米の売上 1,126 億円を、ホンダの北米生産(米国・カナダ・メキシコ)への 1 台あたり約 6.6 万円で割り、170 万台相当と置いた。台数は推定。主な納入先は米国ホンダの製造会社(連結売上の 39.7%)とホンダ・カナダ(11.3%)。
中国
広州・武漢の拠点。ホンダの中国合弁向け。溶接ラインは 2 年で能力を半減した。
| 数量ホンダ中国向け納入台数相当(万台) | 価格1 万台相当あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 55.0 | 5.98 | 329 | 31 |
| 10 年後 中立 | 52.2 | 6.88 | 359 | 25 |
取り方:中国の売上 329 億円を、1 台あたり約 6 万円で割り、55 万台相当と置いた。台数は推定。ホンダの中国生産が落ち込み、売上は前期から 15% 減った。
アジア
タイ・インドネシアなど。インドは譲渡した。
| 数量ホンダのアジア向け納入台数相当(万台) | 価格1 万台相当あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 4.60 | 184 | 1 |
| 10 年後 中立 | 42.0 | 6.16 | 259 | 9 |
取り方:アジアの売上 184 億円を、1 台あたり約 4.6 万円で割り、40 万台相当と置いた。台数は推定。インド子会社の譲渡で売上が 74 億円減った。
リスクと懸念
ホンダ 1 社への依存
売上の 86% がホンダ向けで、北米の 2 社だけで半分を占める。ホンダの台数や調達の方針が変われば、代わりの顧客がいない。ホンダは筆頭株主でもあるため、交渉で値下げ要請を断りにくい。
投資の回収
亀山、テキサス、カナダ、オハイオで 700 億円規模の投資が続く。営業キャッシュフローを上回るため、借金は増える。ホンダの新型車の立ち上げが遅れれば、減価償却だけが先に重くのしかかる。
利益率の反動
今の営業利益率 7.0% は、過去 12 年の最高だ。3 年連続の赤字の後で、減損が消え、構造改革の効果が出た結果でもある。この水準を保てなければ、利益は 3 割以上減る。
中国とアジアの縮小
ホンダの中国生産が落ち、エイチワンの中国売上は 15% 減った。溶接能力を半分にしても、需要が戻らなければ再び減損になる。アジアはほぼ無利益で、インドを手放した後の立て直しはこれからだ。
車体のつくり方の変化
鋳造で車体を一体成形する技術が広がれば、プレス部品の点数が減る。STAF が量産に乗らなければ、軽量化の競争で後れをとる。電動化で部品の仕様が変わるリスクもある。
北米子会社の管理体制
2023 年 3 月期は北米子会社の決算が間に合わず、株主総会が継続会になった。2024 年 3 月期には内部統制の重要な不備を開示した。人材と仕組みの弱さが残れば、会計の誤りが利益を揺らす。
関税と為替
米国の関税は、ホンダの利益を 3,000 億円超削った。部品の取引条件にもしわ寄せが来る。円安はエイチワンの海外利益を押し上げるが、材料の調達コストの変動は抑えにくい。
今後の分かれ目
- ホンダが北米生産を計画より増やし、ハイブリッド車の販売が伸び続けたら
- 北米の台数の前提を上げ、やや楽観側に確率を寄せる。
- ホンダ以外の注文(テキサスなど)が売上の 15% を超えたら
- 依存度が下がったと見て、寿命の資本コストを下げ、楽観側の確率を上げる。
- 営業利益率が 2 年続けて 7% を超えたら
- 構造改革が定着したと見て、中立の利益率の前提を引き上げる。
- ホンダの中国・国内の生産がさらに大きく落ちたら
- 中国と国内の台数を下げ、やや悲観側に確率を寄せる。
- 新工場の稼働が遅れ、投資の回収が見えなくなったら
- 減価償却と借金の負担を重く見て、悲観の確率を上げる。
- ホンダが保有比率を引き上げ、完全子会社化に動いたら
- 公開買付けの値段を確認し、本質価値と比べる。
- 配当性向が会社の目安の 30% に近づいたら
- 株主還元の優先度が上がったと見て、還元の前提を引き上げる。
見ておくもの
- ホンダの北米・中国・国内の生産計画と、エイチワン向け受注の動き
- 営業利益率(7% を保てるか)と、減価償却費の増え方
- 亀山とテキサスの新工場の稼働時期と、ホンダ以外の受注
- 有利子負債の増え方と、営業キャッシュフローに対する設備投資
- 配当性向(30% の目安への接近)と、ホンダの保有比率の変化
倍率と資本コストの決め方
数量はホンダ向けの納入台数相当(推定)、価格は 1 台あたりの売上の指数とし、物価の分は価格に入れた。中立の営業利益率 6% は、過去 12 年の最高(今の 7.0%)を下回る。中立の純利益÷営業利益は 0.70 で、過去の中央値 0.75 に利払いの増加(10 年で約 11 億円)を入れた形。倍率は資本コスト 9.5% と事業の ROE から式で出した上限の 6〜9 割に置いた。今の株価・今の PER・過去の PBR は使っていない。会社は国際会計基準で、リースはすでに貸借対照表に載っている。10 年後の数字は今と同じ形でそろえた。還元は会社の方針(連結配当性向 30%)に沿って置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→11.22 倍・やや楽観 PER 8.4→10.98 倍・中立 PER 7.6→10.53 倍)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.75% を足した 9.25%。同じ領域の東プレ・ジーテクト(+1.0%)より高いのは、顧客の偏り(ホンダ 86%)と、赤字から戻った直後で投資が重い点を、寿命と借金で反映したため。個別のリスクは k でなく筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 9.50%。