結論
テクニスコは、レーザーや半導体素子が出す熱を逃がす小さな金属部品(ヒートシンク)と、微細加工ガラスをつくる会社だ。ディスコの子会社だった時期があり、今は社長の資産管理会社が 54% を持つ。2026 年 6 月期の売上は 37 億円、営業損益は 0.7 億円の赤字。2 年前の 2025 年 6 月期は、売上 34 億円に対し営業赤字が 14 億円、純損失は 30 億円だった。
株価は、生成 AI のデータセンター向けの期待で急騰した。2026 年 9 月にはデータセンターの通信装置向けの大口受注を発表し、会社は 2027 年 6 月期に売上 59 億円・営業利益 2.5 億円を見込む。ただ、自己資本は 18 億円に対し、有利子負債は 42 億円ある。筆者は、利益で測った本質価値を今の時価総額の 1 割に満たないと見て、割高とする。
テクニスコは 2023 年に上場した新しい会社で、財務のデータは 2021 年 6 月期からしか取れない。実績の短さそのものが、判断の不確かさを増やしている。
バリュー投資の観点から
この会社は、まだ質の良い地味な会社とは言えない。熱を逃がす部品という必要な仕事をしているが、利益がついてこない。3 期のうち 3 期が営業赤字で、直近の 4〜6 月期にやっと営業利益 2 億円が出ただけだ。
資本の使い方は、拡張に偏っている。借入で新工場を建て、中国とシンガポールの設備を増やしたが、中国向けの需要は消え、2025 年 6 月期に 30 億円の損失で自己資本が 3 分の 1 になった。
安全域はない。時価総額は 197 億円で、自己資本の 11 倍にのぼる。AI という物語に対する期待が、実績のない利益を先に値段に織り込んでいる。筆者は、利益で測った本質価値を今の時価総額の 1 割に満たないと見る。
良い会社は、待てば買い手の期待に追いつく利益を出す。この会社が今の時価総額に追いつくには、年 20 億円ほどの純利益が要る。直近の実績は 0.05 億円だ。
何で稼ぐ会社か
テクニスコは、切断・研削・研磨・メタライズ(金属膜の形成)・接合を組み合わせ、顧客の仕様どおりに小さな部品をつくる。単一の事業だが、製品は三つに分かれる。ヒートシンク製品、ガラス製品、そしてシリコン部品などのその他だ。2025 年 6 月期の売上は、ヒートシンクが 13.7 億円、ガラスが 11.2 億円だった。
ヒートシンクは、半導体レーザーやパワー半導体の熱を逃がす部品だ。産業用レーザー、光通信、データセンターに使われる。独自材料「シルバーダイヤ」(銀とダイヤの複合材)は、シンガポールで 2018 年から製造している。ガラス製品は、センサーや検査機器向けに微細な穴や回路を加工する。本社は東京、主力工場は広島県呉市で、中国の蘇州にも工場がある。海外売上は半分を超える。
顧客は、レーザーメーカー、光通信機器メーカー、センサー・検査機器メーカーなど。受注生産が基本で、顧客と一緒に設計する。会社は「クロスエッジ Technology」と呼ぶ加工技術群を強みに掲げ、全工程を自社で行うため、仕様変更に応えやすいと説明する。連結の従業員は 265 名(2025 年 6 月期末)で、中国子会社で早期退職を募集したため、1 年で 49 名減った。
優良さと弱いところ
強みは、小さな部品を一貫して加工する技術と、独自材料「シルバーダイヤ」だ。複数の案件がサンプルから試作受注に進み、米国のハイテク企業から生成 AI やハイエンド CPU 向けの引き合いが増えていると伝えられる。2026 年 9 月には、データセンターの通信装置向けの大口受注を発表した。
弱みは、財務と顧客だ。2025 年 6 月期は営業損失が 14 億円に達し、一部の金融機関との財務制限条項に抵触した。有利子負債は総資産の 64% で、自己資本比率は 26% しかない。中国の産業用レーザー向けは価格競争で不採算になり、実質的に撤退した。AI 向けの受注先も金額も非開示だ。堀があるかを示す証拠は、まだ受注の中身にも利益率にも見えない。
独自材料を持つ点は評価できる。ただ、製造のライセンスは海外企業との契約に基づく。独占的な堀ではなく、受注が量産に変わった実績で測る必要がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ヒートシンクの需要は、レーザーと半導体の投資に連動する。産業用レーザー向けは、高出力化で需要が伸びる一方、中国メーカーの価格競争が激しい。テクニスコの中国向けは、価格競争と顧客の需給調整で苦戦し、ヒートシンク全体の売上は 2025 年 6 月期に 46% 減った。光通信とデータセンター向けは、光源の高出力化と半導体の消費電力の増加で、放熱部品の単価が上がる方向にある。
筆者は、ヒートシンクの対象市場を世界で 700 億円前後と置く(推定で、開示はない)。10 年で数量は 1.9 倍とし、AI 向けの伸びと産業用レーザー向けの値下がりを相殺する。単価は物価の 1.34 倍に届かず 1.15 倍と置く。ガラス製品はセンサー・検査機器向けで 1.5 倍。業界の競合社名は確認できていない。小型の独立系部品会社は、顧客の設計変更ひとつで売上が動く。
AI の電力と熱の問題は、確かに放熱部品の需要を押し上げる。しかし、市場が伸びる局面でも、小さな部品会社の利益は、顧客の設計変更と中国メーカーの追随で簡単にぶれる。
資本政策と M&A
配当は出していない。2026 年 6 月期も、2027 年 6 月期の予想も、無配だ。親会社だった時期を経て、2014 年に経営陣による買収(MBO)で独立した。社長の関家圭三氏の資産管理会社(合同会社 XE ホールディングス)が 54.6% を持ち、個人でも 5.9% を持つ。
設備投資は、広島県東広島市に新工場(計画 13.5 億円)、シンガポールのシルバーダイヤ増強、蘇州の工場移転だ。資金は上場時の調達資金と借入に頼る。2025 年 6 月期は短期借入金を 13.6 億円増やした。自己資本は 2025 年 6 月期に 47 億円から 16 億円に減り、増資は予定されていない。財務の立て直しが先で、株主への還元は後回しになる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AI のデータセンターは、レーザーと光通信の部品を何倍にも増やし、その全部が熱を出す。熱を逃がす部品は、性能を決める部品だ。テクニスコの「シルバーダイヤ」は、既存品より放熱効率が高く、米国のハイテク企業の試作が量産に乗れば、数量は桁で変わる。2026 年 9 月に、データセンターの通信装置向けの大口受注を発表し、2027 年 6 月期の売上 59 億円・営業利益 2.5 億円の予想に織り込んだ。
固定費は、新工場とシンガポールの設備で先に積んである。数量が増えれば、利益率は 2022 年 6 月期の 11.3% に戻るどころか、超える余地もある。2026 年 4〜6 月期に営業利益 2 億円(利益率 19.6%)を出した事実は、不採算品を切った後の体質を示す。10 年後に売上 170 億円、営業利益 20 億円は、届く範囲にある。
時価総額 197 億円は、その姿を織り込んだ値段だ。
借入は重いが、増資をせず、営業キャッシュフローで返せる水準まで利益が戻れば、財務の不安は消える。
慎重な見方
実績が何も裏づけていない。2026 年 6 月期の営業損益は赤字で、2 期の大赤字で自己資本は 47 億円から 18 億円に減った。有利子負債は 42 億円で、自己資本の 2 倍を超える。営業利益が利払いを賄えず、財務制限条項に抵触した。AI 向けの大口受注も、受注先と金額が非開示で、会社の予想(営業利益 2.5 億円)は時価総額の 1% にしかならない。
利益率は 2022 年 6 月期の 11.3% が最高で、その後は 5%、−10%、−43%、−2% と下がり続けた。AI 向けの数量が 6 倍になっても、中国の追随で単価が崩れれば、利益は出ない。しかも借入を返し終えるまでは、配当も出せない。
時価総額が自己資本の 11 倍という値段は、利益のほぼ全部が 10 年先にあることを前提にしている。それを割り引いた価値は、時価総額の 1 割にも届かない。
小型の会社の受注は、顧客の都合ひとつで消える。AI のブームが続いても、その利益をテクニスコが取るとは限らない。
どちらに重みを置いたか
AI 向けの伸びは本物だろう。ただ、戻った先の利益率は 6〜7% で、ROE は 7〜8% と資本コスト 10% を下回る。強気の筋書きでも、時価総額 197 億円を正当化する利益には届かない。借金が重く、悲観の深さも大きいので、慎重な見方に確率を寄せた。 会社の予想どおりに回復しても、10 年後の価値は時価総額に遠く届かない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 385 円35 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 34 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 169 円16 億円、今との差 −90.5%、 期待の年率 −13.5%(資本コスト 10.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,678 円154 億円 | 163 円15 億円 | +3.5% | +0.3% | 147 円14 億円 |
| やや楽観 | 20% | 647 円60 億円 | 65 円6 億円 | −60.0% | −8.7% | 142 円13 億円 |
| 中立 | 34% | 305 円28 億円 | 22 円2 億円 | −81.7% | −15.6% | 111 円10 億円 |
| やや悲観 | 24% | 54 円5 億円 | 0 円0 億円 | −96.9% | −29.4% | 13 円1 億円 |
| 悲観 | 14% | 33 円3 億円 | 0 円0 億円 | −98.2% | −33.0% | 5 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 385 円35 億円 | 34 円3 億円 | −76.5% | −13.5% | 418 円38 億円 |
今の株価時価総額 1,780 円164 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 10.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:AI 向けの独自材料が量産に乗り、利益率が山に並ぶ 利益 13 億円 · PER 11.6 倍 · 株価時価総額 1,678 円154 億円
生成 AI のデータセンターで、レーザー光源と光通信の部品が桁違いに増える。熱を逃がす部品の需要は、10 年で大きく伸びる。テクニスコの独自材料「シルバーダイヤ」は、既存品より放熱効率を大きく高められる。米国のハイテク企業の試作が量産に乗り、ヒートシンクの数量は今の 6 倍になる。
価格は物価並みに上がる。広島の新工場とシンガポールの能力が埋まり、固定費の負担が軽くなって、ヒートシンクの利益率は 13% に上がる。ガラス製品も数量が 2.2 倍になる。
売上は約 172 億円、営業利益は約 20 億円(利益率 11.4%)。利益率は 2022 年 6 月期の山(11.3%)に並ぶ。借金を返し、後半に配当が始まる。
- ヒートシンク製品(半導体レーザー・パワー半導体向けのサブマウント・放熱部品):数量 84.0(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 134(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 113 億円・営業利益 15 億円。数量 6.0 倍(データセンター向けの高機能品とシルバーダイヤが量産に乗る)・単価 1.34 倍、利益率 13%
- ガラス製品(電子部品用ガラスの微細加工・金属回路形成):数量 29.7(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 134(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 40 億円・営業利益 4 億円。数量 2.2 倍・単価 1.34 倍、利益率 10%
- その他(シリコン製品・精密加工品):数量 15.0(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 134(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。数量 1.5 倍、利益率 5%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.3% が k 10.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.6 倍。全体の PER 11.6 倍、時価総額 154 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI のデータセンター向けで独自材料が量産に乗る上振れ。試作から量産に移る例は増えているが、受注先も金額も非開示で、過去に 2 期連続の大赤字を出した会社なので 8% にとどめた。
やや楽観 20% やや楽観:データセンター向けの受注が定着する 利益 6 億円 · PER 10.4 倍 · 株価時価総額 647 円60 億円
データセンター向けの大口受注(2027 年 6 月期に売上計上)が定着し、ヒートシンクの数量は 2.8 倍になる。産業用レーザー向けは中国の価格競争が続き、単価は 1.25 倍にとどまる。
ガラス製品はセンサー向けが伸びて 1.7 倍。利益率はヒートシンク 11%、ガラス 9% で、全社で 9.2% になる。新工場の償却は、新しい建築費の分だけ足される。
売上は約 97 億円、営業利益は約 9 億円。借入の返済が進み、財務制限条項の問題は消える。ただし、産業用レーザー向けの不採算は残り、単価は物価に届かない。受注の増加に合わせて人員と設備を増やすため、固定費の負担は重いままだ。
- ヒートシンク製品(半導体レーザー・パワー半導体向けのサブマウント・放熱部品):数量 39.2(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 125(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 49 億円・営業利益 5 億円。数量 2.8 倍・単価 1.25 倍(産業用レーザー向けの値下がりが続く)、利益率 11%
- ガラス製品(電子部品用ガラスの微細加工・金属回路形成):数量 23.0(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 134(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 31 億円・営業利益 3 億円。数量 1.7 倍・単価 1.34 倍、利益率 9%
- その他(シリコン製品・精密加工品):数量 13.0(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 134(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。数量 1.3 倍、利益率 4%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 10.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 10.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.4 倍。全体の PER 10.43 倍、時価総額 60 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:データセンター向けの大口受注が定着し、2027 年 6 月期の予想(売上 59 億円)に近い伸びが続く筋書き。
中立 34% 中立:AI 向けは伸びるが、値下がりが重く利益率は 6〜7% 利益 3 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 305 円28 億円
AI 向けの高機能品は伸びるが、産業用レーザー向けの値下がりが重く、ヒートシンクの数量は今の 1.9 倍、単価は物価を下回る 1.15 倍になる。ガラス製品は 1.5 倍、その他は 1.2 倍。会社は 2027 年 6 月期に売上 59 億円・営業利益 2.5 億円を見込むが、筆者は 10 年後の売上を 72 億円と置く。
利益率は、不採算の中国製品から撤退した効果と、能力が埋まる効果で上がる。ヒートシンク 8%、ガラス 7%、その他 3%。広島の新工場(建設費は約 13 億円の計画)の償却が、今ある設備の分に加わる。今ある設備の償却は据え置かれるが、新工場の分は新しい建築費で足される。
売上は約 72 億円、営業利益は約 5 億円(利益率 6.6%)。過去の山(11.3%)には届かない。借入の利払いが利益を食い、純利益は 2.8 億円にとどまる。
- ヒートシンク製品(半導体レーザー・パワー半導体向けのサブマウント・放熱部品):数量 26.6(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 115(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 31 億円・営業利益 2 億円。数量 1.9 倍・単価 1.15 倍(中国の価格競争で物価に届かない)、利益率 8%
- ガラス製品(電子部品用ガラスの微細加工・金属回路形成):数量 20.3(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 130(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 26 億円・営業利益 2 億円。数量 1.5 倍・単価 1.30 倍、利益率 7%
- その他(シリコン製品・精密加工品):数量 12.0(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 130(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。数量 1.2 倍・単価 1.30 倍、利益率 3%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 10.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.0 倍。全体の PER 10 倍、時価総額 28 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI 向けの伸びと、産業用レーザー向けの値下がりがともに起きる、最も起きやすい姿。不採算製品から撤退した後の利益率は、まだ 1 年分の実績しかない。
やや悲観 24% やや悲観:受注を取り込めず、固定費と利払いが重荷になる 利益 0 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 54 円5 億円
AI の需要は伸びるが、受注はテクニスコの手に落ちない。大口受注は一過性で終わり、産業用レーザー向けの値下がりも続く。ヒートシンクの数量は 1.2 倍、単価は 1.05 倍。
新工場の固定費と、3.5% に上がる借入の利払いが、薄い粗利を食う。全社の利益率は 2.2% で、純利益はほぼゼロ。配当は出せず、借入の返済に回す。財務制限条項に再び触れ、金融機関との交渉が続く。
この筋書きでは、AI 向けの高機能品の売上が伸びても、不採算の産業用レーザー向けが足を引き、2027 年 6 月期の予想(営業利益 2.5 億円)も達成できない。会社の資金繰りは銀行の支援に頼る時間が続く。
売上は約 50 億円、営業利益は約 1 億円。今の水準(−2%)からわずかに上がるだけだ。
- ヒートシンク製品(半導体レーザー・パワー半導体向けのサブマウント・放熱部品):数量 16.8(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 105(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。数量 1.2 倍・単価 1.05 倍、利益率 3%
- ガラス製品(電子部品用ガラスの微細加工・金属回路形成):数量 16.2(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 125(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。数量 1.2 倍・単価 1.25 倍、利益率 3%
- その他(シリコン製品・精密加工品):数量 10.0(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 125(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。数量は横ばい、利益率 0%
倍率:稼ぐ力は今の自己資本に見合わない。ROE は約 1% で k を大きく下回り、PER では価値を測れない。今の自己資本 17.6 億円の約 3 割(5 億円)に置く。事業を続けながら資産を現金化しても、借金を返した後に残る額は限られる。EV(時価総額 5 億円+純負債 22 億円)÷営業利益 1.1 億円は約 25 倍と高く見えるが、利益が小さすぎて倍率で価値を測れないため、売れる資産から負債を引いた額で置いた。
確率:AI の需要を取り込めず、新工場の固定費と利払いが重荷になる筋書き。営業赤字の期が過去 3 期のうち 3 期ある。
悲観 14% 悲観:中国の追随と財務の行き詰まりで構造的に縮む 利益 −2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 33 円3 億円
構造的に負ける筋書き。中国の放熱部品メーカーが価格と品質で追いつき、産業用レーザーと光通信の主要顧客を奪う。AI 向けの試作は量産に至らない。ヒートシンクの数量は今の半分、単価は 0.9 倍に下がる。
広島の新工場とシンガポールの設備は稼働が上がらず、固定費だけが残る。財務制限条項への抵触が続き、金融機関が追加の返済を求める。資産を切り売りして耐える。
1 期でも営業赤字が続けば、金融機関は貸出条件を厳しくする。人員の削減と設備の売却が進み、技術者の流出で、残った事業も縮む。上場の維持も難しくなる。
売上は約 26 億円、営業利益は約 -1 億円の赤字。価値は、借入を返した後に残る資産の見込みで測り、少数株主にはほとんど残らない。
- ヒートシンク製品(半導体レーザー・パワー半導体向けのサブマウント・放熱部品):数量 7.0(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 90(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。中国メーカーに押されて数量 0.5 倍・単価 0.9 倍、利益率 −5%
- ガラス製品(電子部品用ガラスの微細加工・金属回路形成):数量 10.8(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 110(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。数量 0.8 倍・単価 1.1 倍、利益率 −2%
- その他(シリコン製品・精密加工品):数量 7.0(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 110(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。数量 0.7 倍、利益率 −5%
倍率:価値は借入を返した後に残る資産で測る。回収見込み約 43 億円に対し負債は約 48 億円で、差し引きは残らない。ごく小さな残余(floor_assets_oku)3 億円を、今の自己資本 17.6 億円に対する PBR にして 0.17 倍。
確率:中国の追随と財務制限条項への抵触で構造的に負ける筋書き。自己資本比率 26%、営業利益が利払いを賄えていない会社なので、業界の標準より厚い 14% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ヒートシンク製品(半導体レーザー・パワー半導体向けのサブマウント・放熱部品)
レーザーや半導体素子が出す熱を逃がす、金属と銅・タングステン・ダイヤの複合材の小さな部品。産業用レーザー、光通信、データセンター向けが中心。独自材料「シルバーダイヤ」もここに入る。
| 数量対象市場の実質規模(億円)× シェア | 価格値段の指数(今 100。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 14.0 | 100 | 14 | −1 |
| 10 年後 中立 | 26.6 | 115 | 31 | 2 |
取り方:2025/06 期のヒートシンクは 13.7 億円(前期比 45.7% 減)。2026/06 期は中国の産業用レーザー向けの不採算製品から実質撤退し、売上は同水準と推定(決算短信の製品別は取れていない)。半導体レーザー用ヒートシンクの世界市場を 700 億円前後(実質・推定)と置き、シェアは約 2%。営業損益は全社の −0.7 億円を、粗利が改善した 4〜6 月期と中国の損失を踏まえ −0.9 億円と按分した推定。
ガラス製品(電子部品用ガラスの微細加工・金属回路形成)
センサーや検査機器、自動車、ライフサイエンス向けに、ガラスへ微細な穴や溝を加工し、金属の回路を付ける。ヒートシンクとは別の顧客を持つ。
| 数量対象市場の実質規模(億円)× シェア | 価格値段の指数(今 100。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 13.5 | 100 | 14 | 1 |
| 10 年後 中立 | 20.3 | 130 | 26 | 2 |
取り方:2025/06 期のガラスは 11.2 億円(前期比 16.0% 減)。2026/06 期は全社で 11% 増収のため、13.5 億円と推定。対象市場(センサー・検査機器向け加工ガラス)を 450 億円前後(実質・推定)、シェア約 3% と置いた。営業損益は +0.5 億円の推定(利益率 3.7%)。
その他(シリコン製品・精密加工品)
半導体関連のシリコン部品と、顧客の仕様に合わせた精密加工品。顧客の在庫調整で数量が大きく振れる。
| 数量対象市場の実質規模(億円)× シェア | 価格値段の指数(今 100。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 10.0 | 100 | 10 | 0 |
| 10 年後 中立 | 12.0 | 130 | 16 | 0 |
取り方:2025/06 期のその他は約 8.8 億円(全社 33.6 億円から二つを引いた残り)。2026/06 期は 10 億円と推定。対象市場を 400 億円前後(実質・推定)、シェア 2.5% と置いた。営業損益は −0.3 億円の推定。
リスクと懸念
財務の脆さ
有利子負債は総資産の 64% で、自己資本比率は 26%。2025 年 6 月期には財務制限条項に抵触した。営業利益が利払いを賄えない期が続けば、資金調達が行き詰まる。
AI 期待の剝落
データセンター向けの大口受注は、受注先も金額も非開示だ。試作から量産に進まなければ、株価は実績の水準に戻る。信用買い残が厚く、値動きが大きい。
中国の価格競争
産業用レーザー向けのヒートシンクは、中国市場で価格競争が続く。不採算品から実質撤退したが、残る事業でも単価は物価に届かない。
新工場の固定費
広島の新工場(計画 13.5 億円)とシンガポールの設備は、稼働が上がるまで償却と人件費だけが先に出る。建築費の上昇で、更新の投資も膨らむ。
顧客の集中
2024 年 6 月期は最大の顧客(中国のレーザーメーカー)が売上の 19% を占めた。小型の部品会社は、顧客の設計変更や内製化で売上が動く。
大株主への依存
社長の資産管理会社が 54.6% を持ち、流通する株は少ない。有価証券報告書も、大株主への依存による株価・流動性への影響をリスクに挙げる。
為替と海外事業
海外売上は半分を超え、中国・シンガポールに子会社を持つ。為替差損で営業外損益がぶれ、中国子会社の損失(2025 年 6 月期の経常損失 3.5 億円)が続くリスクがある。
今後の分かれ目
- データセンター向けの大口受注が、2 件目、3 件目と続いたら
- ヒートシンクの数量が 3 倍を超える筋書き(やや楽観〜楽観)の確率を上げる。
- シルバーダイヤの量産契約が、受注先と金額つきで開示されたら
- 楽観の確率を上げる。非開示のままなら、確率は動かさない。
- 営業利益が 2 四半期連続で 2 億円を超えたら
- 不採算品から撤退した後の利益率が定着したと見て、中立の確率を上げ、やや悲観を下げる。
- 財務制限条項への再抵触、または借入の条件変更が発表されたら
- 悲観の確率を引き上げる。
- 増資や新株予約権の発行が発表されたら
- 株数の増加を織り込み、1 株の価値を下げる。
- 配当の再開が発表されたら
- 借入の返済が進んだ証拠として、還元の額を引き上げる。
見ておくもの
- 四半期の営業利益率(4〜6 月期は 19.6%)と、ヒートシンクの売上
- データセンター向けの大口受注の続報と、受注先・金額の開示
- 有利子負債と自己資本比率(今は 42 億円と 26%)
- 広島新工場の稼働と、償却費の増え方
- 中国子会社の損益と、産業用レーザー向けの単価
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価(PBR 約 11 倍。1 株利益がほぼゼロで PER は意味をもたない)から置いていない。事業の ROE は中立で 7〜8% と資本コスト 10% を下回るので、正当化 PER の上限は 1÷k の 9.5 倍で、中立は 84% の 8.0 倍に置いた。楽観のみ ROE が k を超え、式から約 10.8 倍。中立の営業利益率 6.6% は過去の山 11.3% より低い。会社の 2027 年 6 月期の予想(売上 59 億円)は筋書きの根拠に使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.8→11.6 倍・やや楽観 PER 8.8→10.43 倍・中立 PER 8→10 倍)。
資本コスト 10.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5%+quality 3.0%=10.5%。同じ半導体関連の部品・材料会社の中でも高い。借金の重さと業績の振れの大きさを、値決めに入れた。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 10.50% → 10.00%。